説明

固形製剤及びその製造方法

【課題】崩壊性が改善された固形製剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】固形製剤は、活性成分(ビタミンB類など)とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体(グルクロン酸又はそのアミド、グルクロノラクトンなど)とを含んでおり、さらに、グリコサミノグリカン類を含んでいてもよい。カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とグリコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸又はその塩)とは、群分けされた形態(ビタミンB類とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とを含む製剤群と、ビタミンB類とビタミンB12類とグリコサミノグリカン類とを含む製剤群との群分け形態)で含有されていてもよい。固形製剤は、崩壊剤を実質的に含まなくても高い崩壊性を示す。固形製剤はコーティング錠であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体(グルクロノラクトンなど)を含み、経口投与に適した固形製剤(ビタミン含有製剤など)及びその製造方法並びに固形製剤の崩壊性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルクロン酸は、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などの構成成分であり、そのラクトンであるグルクロノラクトンは肝機能の改善を促す成分であり、肝機能改善剤として使用されている。例えば、グルクロノラクトンは、「疲れ・だるさ」の原因である「有害物・有毒物質」を対外へ排泄する機能の促進を期待して、滋養強壮、肉体疲労時などの栄養補給として服用するビタミン含有保健剤(ビタミン製剤)などに配合されている。
【0003】
特開2004−10533号公報(特許文献1)には、グルクロン酸、その塩またはグルクロン酸前駆体(グルクロノラクトンなど)を有効成分として含有する、軟骨生成促進剤、軟骨損傷に由来する疾病(例えば関節炎、リュウマチなど)の予防または治療剤、又はグリコサミノグルカンおよび/またはプロテオグルカンの生成促進剤が開示され、さらにグルコサミン塩を有効成分として含有してもよいことも記載されている。
【0004】
一方、前記ビタミン製剤について種々の固形製剤が提案されている。例えば、特開2002−316930号公報(特許文献2)には、(1)ビタミンB類を、ビタミンB12類含有溶剤を用いて造粒・乾燥したビタミンB類の顆粒と、(2)コハク酸トコフェロールまたはその塩と、(3)他の有効成分を結合剤と混合し、ビタミンB12類含有溶剤を用いて造粒・乾燥して他の有効成分顆粒とを混合した後、打錠して製剤化するビタミン製剤の製造方法とともに、溶剤を用いてビタミンB類を造粒・乾燥したビタミンB類の顆粒と、ビタミンB12類含有溶剤を用いて他の有効成分を造粒・乾燥した他の有効成分顆粒とを混合し、造粒・乾燥し、ビタミンB12類を安定化する方法が開示されている。しかし、この方法では、固形製剤の崩壊性が低いため、賦形剤を含有させて製剤化する必要がある。一方、賦形剤を含有させると、製剤が大型化しやすくなり、服用性を向上させることができない。
【0005】
特開2004−26846号公報(特許文献3)には、ビタミンB類とグルコサミン類とを含有する組成物であって、ビタミンB類1重量部に対してグルコサミン類を0.1〜1000重量部の割合で含む関節痛治療または予防用組成物が開示されている。この文献には、さらに、グリコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸ナトリウムなど)を含んでいてもよいこと、ビタミンB類1重量部に対してグルコサミン類を10〜500重量部の割合で含み、ビタミンB類とグルコサミン類との総量100重量部に対してグリコサミノグリカン類を30〜200重量部の割合で含んでいてもよいこと、さらに、ビタミンB類およびビタミンB12類から選択された少なくとも一種を含んでもよいことが記載されている。しかし、グルコサミン類を含有する製剤は崩壊性を改善できない。そのため、この製剤でも崩壊性を改善するためには崩壊剤を必要とする。また、錠剤の形態に成形しても、錠剤に割れが生じる場合がある。なお、前記特許文献3には、グルクロノラクトン、グルクロン酸などをさらに含有してもよいことも記載されている。しかし、グルクロノラクトンなどをさらに併用すると、変色や着色が生じ、保存安定性及び製剤品質を低下させる場合がある。
【0006】
特開平9−169651号公報(特許文献4)には、ビタミンBを75〜97重量%含む顆粒状造粒物にビタミンB、ビタミンB12及びその他の有効成分を配合して製錠した錠剤であって、全有効成分の合計含有量が素錠中65〜80重量%であるビタミン含有製剤が開示されている。この文献には、ビタミンB、ビタミンB12及びその他の有効成分を顆粒状造粒物として添加すること、ビタミンBとビタミンB12とを共存させると含量低下が生じることも記載されている。
【0007】
特開2004−256517号公報(特許文献5)には、素錠中に塩酸フルスルチアミン、コンドロイチン硫酸ナトリウムおよびビタミンB12類(シアノコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、メコバラミンなど)を含有し、素錠重量に対して、8%(w/w)以上の、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合したフィルム層でコーティングされたフィルムコーティング錠が開示されている。この特許文献5の実施例1には、塩酸フルスルチアミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、粉末還元麦芽糖水アメ、シアノコバラミン、およびヒドロキシプロピルセルロースを含むT群整粒末を得たこと、塩酸ピリドキシン、塩酸グルコサミン、粉末還元麦芽糖水アメ、およびヒドロキシプロピルセルロースを含むB群整粒末を得たこと、得られたT群整粒末、B群整粒末、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウムを混合し、混合末を打錠して、素錠を得たこと、この素錠に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、タルク7、酸化チタン、黄色三二酸化鉄及び精製水を含むコーティング液をコーティングし、フィルムコーティング錠を得たことも記載されている。
【0008】
しかし、これらの製剤でも崩壊性を向上させるためには、崩壊剤を必要とする。また、特許文献5には、グルクロノラクトン、グルクロン酸アミドなどをさらに含有してもよいことも記載されている。しかし、グルクロノラクトンなどをさらに併用すると、変色又は着色が生じ、保存安定性が低下する場合がある。
【特許文献1】特開2004−10533号公報(特許請求の範囲、発明の効果)
【特許文献2】特開2002−316930号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特開2004−26846号公報(特許請求の範囲、段落[0029])
【特許文献4】特開平9−169651号公報((特許請求の範囲、段落[0005])
【特許文献5】特開2004−256517号公報(特許請求の範囲、段落[0008]、実施例1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、崩壊剤を使用しなくても崩壊性が改善された固形製剤(ビタミン製剤など)及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、着色がなく安定性(保存安定性)に優れた固形製剤及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、崩壊性が改善され、かつ着色がなく活性成分の安定性に優れた固形製剤(ビタミン含有固形製剤など)及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明にさらに他の目的は、崩壊剤を含有させなくても固形製剤(ビタミン製剤など)の崩壊性を改善できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、グルコサミン類は固体製剤の崩壊性を低下させるのに対して、グルクロン酸及びその誘導体(アミド、塩及びラクトンなど)を固形製剤の担体として用いると、崩壊剤を用いなくても崩壊性を向上できること、グルクロン酸及びその誘導体とグリコサミノグリカン類とを併用すると、崩壊剤を用いなくても固形製剤の崩壊性がさらに向上すること、グルクロン酸及びその誘導体とグリコサミノグリカン類との直接的接触を抑制又は防止できる形態で固形製剤化すると、着色を有効に防止できることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の固形製剤は、活性成分とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とを含んでいる。カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体は、ウロン酸(グルクロン酸など)又はそのアミド(グルクロン酸アミドなど)、その塩(グルクロン酸塩など)若しくはラクトン(グルクロノラクトンなど)であってもよい。固形製剤は、さらに、グリコサミノグリカン類を含んでいてもよい。グリコサミノグリカン類は、固形製剤において、カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体と接触して共存していてもよいが、カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とは直接的に接触することなく、群分け(グループ分け)などにより共存していてもよい。例えば、カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体を含む群(例えば、活性成分とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とを含む製剤群)と、グリコサミノグリカン類を含む群(例えば、活性成分とグリコサミノグリカン類とを含む製剤群)とに群分けされた形態で含有されていてもよい。カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とグリコサミノグリカン類との重量割合は、前者/後者=5/95〜95/5程度であってもよい。活性成分の種類は、特に制限されず、ビタミン類、例えば、ビタミンB類、ビタミンB類及びビタミンB12類から選択された少なくとも一種であってもよい。
【0015】
本発明の固形製剤は、ビタミンB類とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とを含む製剤であってもよく、ビタミンB類とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とを含む群と、ビタミンB類とビタミンB12類とグリコサミノグリカン類とを含む群とに群分けされた製剤であってもよい。例えば、固形製剤は、ビタミンB類と、グルクロン酸又はそのアミド、その塩若しくはグルクロノラクトンとを含む造粒末群と、ビタミンB類とビタミンB12類とコンドロイチン硫酸又はその塩とを含む造粒末群とを含んでいてもよい。さらに、本発明の固形製剤は、グルコサミン類を実質的に含まなくてもよい。固形製剤は、崩壊剤を含んでいてもよいが、崩壊剤を実質的に含まなくても高い崩壊性を示す。なお、固形製剤はコーティング製剤、例えば、コーティング錠であってもよい。
【0016】
本発明は、活性成分とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とを造粒するか又は造粒物を打錠し、固形製剤を製造する方法も包含する。この方法において、ビタミンB類とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とを含む造粒末群と、ビタミンB類とビタミンB12類とグリコサミノグリカン類とを含む造粒末群とを含む混合物を打錠し、固形製剤を製造してもよい。
【0017】
さらに本発明は、活性成分と担体とを含む固形製剤の崩壊性を改善する方法であって、担体としてカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体を用い、固形製剤の崩壊性を改善する方法も包含する。この方法において、カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とグリコサミノグリカン類とを組み合わせ(又は併用し)、固形製剤の崩壊性を改善してもよい。
【0018】
なお、本明細書において、「カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体」を単に「カルボキシル基含有糖成分」という場合がある。また、前記単糖類のラクトンとは、カルボキシル基とヒドロキシル基とが分子内でエステル結合を形成した環状エステル化合物を意味する。
【0019】
「群分け」とは、複数の成分の直接的な接触を抑制するための手段又は形態を意味し、通常、複数の成分は、製剤の担体成分や被膜成分などの介在成分(不活性な薬学的に許容可能な成分)により分離されて製剤化(グループ分けにより製剤化)されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、カルボキシル基含有糖成分を含むため、崩壊剤を使用しなくても固形製剤(ビタミン製剤など)の崩壊性を改善できる。また、グリコサミノグリカン類との併用により、固形製剤の崩壊性をさらに向上できる。さらに、カルボキシル基含有糖成分とグリコサミノグリカン類との群分けにより、崩壊性を向上できるとともに、着色を有効に防止でき安定性(保存安定性)に優れた固形製剤を得ることができる。さらには、ビタミン製剤にあっては、着色がなく活性成分の安定性も向上でき、活性成分の含量低下をもたらすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の固形製剤は、崩壊性を向上させるため、カルボキシル基含有糖成分を含む。カルボキシル基含有単糖類の「単糖類」は、アルドース、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、キシロースなどであってもよい。「単糖類」は、通常、グルコースである。カルボキシル基含有単糖類としては、糖酸(例えば、アルダン酸、グリカン酸などのポリオキシジカルボン酸)、ウロン酸(例えば、グルクロン酸、マンヌロン酸、ガラクツロン酸などのアルドウロン酸(ホルミル基又はカルボニル基とカルボキシル基とを有するポリオキシカルボン酸))、アルドン酸(例えば、D−グルコン酸などのポリオキシカルボン酸)などが例示できる。カルボキシル基含有単糖類の誘導体としては、例えば、アミド(糖酸アミド;グルクロン酸アミドなどのウロン酸アミド;グルコン酸アミドなどのアルドン酸アミドなど)、塩(金属塩、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩など;アンモニウム塩;アミン塩など)、エステル又は非環状エステル(メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、t−ブチルエステルなどのアルキルエステルなど)、環状エステルであるラクトン(糖酸のモノ又はジラクトン;δ−D−グルクロノラクトン、γ−D−グルクロノラクトンなどのグルクロノラクトン、マンヌロン酸ラクトン、ガラクトノラクトンなどのウロノラクトン(又はウロン);δ−D−グルコノラクトン、γ−D−グルコノラクトンなどのアルドノラクトンなど)などが例示できる。これらの成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
これらのカルボキシル基含有糖成分のうち、アルドン酸類(グルコン酸類、例えば、グルコン酸、グルコン酸アミド、グルコン酸塩、グルコン酸エステル、グルコノラクトンなど)、およびウロン酸類(アルドウロン酸(例えば、グルクロン酸)、アルドウロン酸アミド(例えば、グルクロン酸アミド)、グルクロン酸塩、グルクロン酸エステル、ウロン(例えば、グルクロノラクトン)など)から選択された少なくとも一種が好ましい。特に、ウロン酸類、中でもグルクロン酸類(例えば、グルクロン酸、グルクロン酸アミド、グルクロン酸塩、グルクロン酸C1−6アルキルエステル、およびグルクロノラクトンから選択された少なくとも一種)を用いる場合が多い。
【0023】
なお、カルボキシル基含有糖成分は合成してもよく市販品(例えば、グルクロノラクトンは住友化学(株)から入手できる)をそのまま用いてもよい。また、カルボキシル基含有糖成分は、ハンマーミルなどの粉砕機で粉砕処理し、適度な粒度、例えば、平均粒子径として5〜1000μm、好ましくは10〜500μm(例えば15〜200μm)、さらに好ましくは20〜100μm(例えば、20〜80μm)程度に調整して用いてもよい。
【0024】
カルボキシル基含有糖成分の使用量は、活性成分の種類に応じて活性成分1重量部に対して、0.01〜10000重量部(例えば、0.1〜5000重量部)程度の範囲から選択でき、通常、1〜1000重量部(例えば、3〜500重量部)、好ましくは5〜300重量部(例えば、6〜100重量部)、さらに好ましくは7〜70重量部(例えば、8〜50重量部)程度であってもよい。カルボキシル基含有糖成分の使用量は、活性成分がビタミン類の場合、例えば、ビタミンB類1重量部に対して、通常0.1〜2000重量部(例えば、0.5〜1000重量部)、好ましくは1〜500重量部(例えば、1〜200重量部)、さらに好ましくは2〜20重量部(例えば、5〜15重量部)、ビタミンB類1重量部に対して、通常1〜500重量部(例えば、1〜300重量部)、好ましくは2〜200重量部(例えば、4〜150重量部)、さらに好ましくは10〜100重量部(例えば、30〜70重量部)、ビタミンB12類1重量部に対して、通常50〜1500000重量部(例えば、100〜1000000重量部)、好ましくは1000〜100000重量部(例えば、5000〜50000重量部)、さらに好ましくは10000〜20000重量部(例えば、12000〜18000重量部)程度であってもよい。なお、ビタミン類の総量に対するカルボキシル基含有糖成分の使用量は、前記活性成分に対する割合から選択できる。
【0025】
このようなカルボキシル基含有糖成分を用いると、固形製剤の崩壊性を大きく向上できる。さらに崩壊性を向上させるためには、カルボキシル基含有糖成分とグリコサミノグリカン類とを組み合わせるのが好ましい。このような成分を組み合わせると、崩壊剤を実質的に含まなくても、高い崩壊性が得られる。グリコサミノグリカン類としては、例えば、ヒアルロン酸又はその塩(ヒアルロン酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩など)、コンドロイチン又はコンドロイチン硫酸若しくはその塩(ナトリウム、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩など)、ヘパリン、ヘパラン硫酸又はその塩(ナトリウム、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩など)などが含まれる。これらのグリコサミノグリカン類は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0026】
好ましいグリコサミノグリカン類は、ヒアルロン酸又はその塩(ヒアルロン酸ナトリウムなど)、コンドロイチン硫酸又はその塩(コンドロイチン硫酸ナトリウムなど)、特にコンドロイチン硫酸又はその塩である。
【0027】
グリコサミノグリカン類の使用量は、活性成分の種類に応じて活性成分1重量部に対して、0.1〜1000重量部(例えば、1〜500重量部)、好ましくは2〜300重量部(例えば、3〜200重量部)、さらに好ましくは5〜100重量部(例えば、6〜50重量部)程度であってもよい。グリコサミノグリカン類の使用量は、活性成分がビタミン類の場合、例えばビタミンB類1重量部に対して、0.1〜1500重量部(例えば、0.5〜1000重量部)、好ましくは1〜500重量部(例えば、2〜200重量部)、さらに好ましくは5〜50重量部(例えば、6〜15重量部)、ビタミンB類1重量部に対して0.1〜1000重量部(例えば、0.5〜500重量部)、好ましくは1〜300重量部(例えば、5〜200重量部)、さらに好ましくは10〜100重量部(例えば、20〜60重量部)、ビタミンB12類1重量部に対して50〜1200000重量部(例えば、100〜1000000重量部)、好ましくは500〜100000重量部(例えば、1000〜50000重量部)、さらに好ましくは5000〜20000重量部(例えば、10000〜16000重量部)程度であってもよい。なお、ビタミン類の総量に対するグリコサミノグリカン類の使用量は、前記活性成分に対する割合から選択できる。
【0028】
カルボキシル基含有糖成分とグリコサミノグリカン類との重量割合は、前者/後者=5/95〜95/5(例えば、10/90〜90/10)程度の範囲から選択でき、通常、15/85〜85/15程度である場合が多い。また、カルボキシル基含有糖成分とグリコサミノグリカン類との重量割合は、前者/後者=35/65〜75/25(例えば、40/60〜70/30)、好ましくは45/55〜65/35(例えば、50/50〜60/40)程度であってもよい。
【0029】
なお、カルボキシル基含有糖成分(例えば、グルクロノラクトンなど)とグリコサミノグリカン類とを併用すると、固形製剤が経時的に変色し製剤品質及び経時安定性を低下させる場合がある。また、これらの成分の使用量は、通常、比較的多い。このような場合、固形製剤は、カルボキシル基含有糖成分とグリコサミノグリカン類との接触を抑制するため、これらの複数の成分を群分け、すなわち、カルボキシル基含有糖成分を含む群と、グリコサミノグリカン類を含む群とに群分けされた形態で含有するのが好ましい。群分けの形態は、介在又は分離成分により前記複数の成分を分離して直接的接触が抑制される限り特に制限されず、例えば、粉状、粒状(例えば、顆粒状)の形態、層状の形態などであってもよい。群分けは、通常、複数の成分のうち少なくとも1つの成分を担体成分で製剤化(例えば、造粒などにより顆粒化)及び/又はコーティングすることにより行うことができ、他の成分は粉末状などの形態であってもよい。通常、カルボキシル基含有糖成分を担体成分で製剤化した製剤群と、グリコサミノグリカン類を担体成分で製剤化した製剤群とを形成して群分けする場合が多い。なお、グリコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸ナトリウムなど)を比較的多く含む固形製剤は吸湿などにより膨張し、固形製剤(錠剤など)に割れや変形を生じ、保存安定性を低下させる場合がある。このような場合でも、グリコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸ナトリウムなど)を造粒などにより顆粒などの形態で群分けすると、固形製剤の割れや変形を有効に防止できる。
【0030】
このような群分けの形態において、活性成分は少なくとも一方の群に含有されていればよく、双方の群に同一又は異なる活性成分が含有されていてもよい。例えば、固形製剤は、1又は複数の第1の活性成分とカルボキシル基含有糖成分とを含む群と、1又は複数の第2の活性成分とグリコサミノグリカン類とを含む群とに分離して群分けされた形態で含有されていてもよい。このような形態の群分けは、直接的接触により変色又は着色したり、失活する複数の活性成分(例えば、配合忌避成分)を含有する製剤に好適であり、変色や着色及び活性成分の含量低下がなく、保存安定性の高い製剤を得ることができる。
【0031】
カルボキシル基含有糖成分(例えば、グルクロノラクトンなど)及びグリコサミノグリカン類は固形製剤の担体成分、特に崩壊剤として機能させることができるとともに、賦形剤として機能させることもできる。
【0032】
本発明の製剤は、安定性などを損なわない限り、慣用の担体成分を含んでいてもよい。固形製剤において、担体成分又は添加剤としては、通常、賦形剤、結合剤及び崩壊剤のうち少なくとも一種を使用する場合が多い。賦形剤としては、例えば、D−マンニトール、D−ソルビトール、エリスリトール、キシリトールなどの糖アルコール、乳糖、ブドウ糖、果糖、白糖、粉末還元麦芽糖水アメなどの糖類、結晶セルロース、粉末セルロース、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、デキストリン、βーシクロデキストリン、カルメロースナトリウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降性炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、乳酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、タルク、カオリンなどが例示できる。結合剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドン共重合体(コポリビドン)、アクリル酸系高分子、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、アルファー化デンプン、カンテン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、白糖などが例示できる。崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム)、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、クロスポビドン、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプン、アルギン酸、ベントナイトなどが例示できる。
【0033】
他の担体成分又は添加剤としては、滑沢剤(ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、ポリエチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、ミツロウ、サラシミツロウなど);抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、クエン酸など);保存剤(パラオキシ安息香酸エステル類など);着色剤(ウコン抽出液、リボフラビン、カロチン液、タール色素、カラメル、酸化チタン、ベンガラなど);矯味剤(アスパルテームなどの甘味料、アスコルビン酸、ステビア、メントール、カンゾウ粗エキス、単シロップなど);界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタンなど)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール類、ショ糖脂肪酸エステルなど);流動化剤(軽質無水ケイ酸、タルク、含水二酸化ケイ素など);可塑剤(クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、トリアセチン、セタノールなど);甘味剤(ショ糖、マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、アスパルテームなどの天然又は合成甘味剤);着香剤(メントールなど);吸着剤、防腐剤、湿潤剤、帯電防止剤などが挙げられる。なお、賦形剤として還元麦芽糖(粉末還元麦芽糖水アメ)を用いると、吸湿性が低いため、グリコサミノグリカン類を含んでいても固形製剤の変形や割れを防止できるとともに、成形性も向上できる。
【0034】
前記成分を含む固形製剤は崩壊性が高いため、崩壊剤は必ずしも必要ではなく実質的に含まなくてもよいが、必要であれば崩壊剤(クロスポピドン、クロスカルメロースナトリウムなど)を含んでいてもよい。崩壊剤の使用量は、コーティング剤を除く製剤成分全体(活性成分及び担体成分の総量)に対して0〜20重量%程度の範囲から選択でき、通常、0〜15重量%、好ましくは0.5〜12重量%、さらに好ましくは1〜10重量%(例えば、3〜6重量%)程度であってもよい。
【0035】
さらに、本発明の固形製剤は、崩壊性などの製剤特性を損なわない範囲であればグルコサミン類(グルコサミン又はその塩、例えば、塩酸グルコサミンなど)を含んでいてもよいが、通常、実質的に含まない場合が多い。グルコサミン類の含有量は、カルボキシル基含有糖成分100重量部に対して0〜100重量部(好ましくは0〜50重量部、特に0〜20重量部)程度の範囲であってもよい。
【0036】
活性成分の種類は特に制限されず種々の生理活性成分及び/又は薬理活性成分が使用できる。活性成分は、例えば、ビタミン類、睡眠鎮静薬、鎮暈薬、解熱剤、鎮痛剤、抗炎症薬、健胃薬、消化薬、制酸薬、制吐薬、鎮咳薬、去たん薬、抗喘息薬、便秘治療薬、下痢治療薬、高脂血症薬、抗狭心症薬、抗高血圧薬、低血圧治療薬、抗動脈硬化薬、抗肥満薬、心不全治療薬、心筋梗塞薬、抗不整脈薬、糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療薬、肝疾患治療薬、甲状腺疾患治療薬、高尿酸血症治療薬、リウマチ治療薬、抗生物質、抗うつ薬、抗アレルギー薬、抗結核薬、前立腺肥大症治療薬、骨粗鬆症治療薬、アルツハイマー病治療薬、カフェイン類、ミネラル類、生薬類などであってもよい。
【0037】
なお、前記カルボキシル基含有糖成分は種類によって活性成分として作用する場合がある。このような場合、カルボキシル基含有糖成分(例えば、グルクロン酸又はそのアミド、その塩若しくはグルクロノラクトンなどのグルクロン酸類)やグリコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸ナトリウムなど)の活性に関連する活性成分を用いるのが有利である。このような活性成分にはビタミン類が含まれる。ビタミン類は、水溶性ビタミン類又は脂溶性ビタミン類のいずれであってもよい。ビタミン類は、ビタミンB類、ビタミンB類及びビタミンB12類から選択された少なくとも1種である場合が多い。
【0038】
ビタミンB類としては、例えば、ビタミンB類(チアミン又はその塩、例えば、塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硫酸エステル塩など)、ビタミンB誘導体(フルスルチアミン、ジセチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、ベンフォチアミン、プロスルチアミンなどのチアミン誘導体又はその無機酸塩(塩酸、硝酸、リン酸などとの塩、例えば、塩酸フルスルチアミン、塩酸ジセチアミンなど)などが例示できる。これらのビタミンB類は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0039】
ビタミンB類としては、ピリドキシン、ピリドキサールなどのピリドキシン類又はその塩(塩酸ピリドキシンなどの塩酸塩、対応する酢酸塩、リン酸ピリドキサールなどのリン酸塩など)などが例示できる。これらのビタミンB類は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0040】
ビタミンB12類としては、例えば、メコバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミンなどのコバラミン類又はその塩(塩酸ヒドロキソコバラミンなどの塩酸塩、酢酸ヒドロキソコバラミンなどの酢酸塩など)などが例示できる。これらのビタミンB12類も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0041】
ビタミン類には、さらに、ビタミンB類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビンなどのリボフラビン類)、ビタミンC類(アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウムなど)、ビタミンA類(酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ビタミンA油など)、ビタミンD類(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなど)、ビタミンE類(肝油、強肝油、d−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、コハク酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、酢酸d−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロールなど)、ニコチン酸類(ニコチン酸、ニコチン酸アミドなど)、ビタミンK、パントテン酸類(パンテノール、パントテン酸又はその塩(パントテン酸カルシウムなど))、ビオチン、葉酸、γ−オリザノール、オロチン酸、ヨクイニンなどが挙げられる。
【0042】
これらのビタミン類も単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、複合ビタミン剤であってもよい。複合ビタミン剤は、例えば、ビタミンB12配合剤、ビタミンB12配合剤、ビタミンB配合剤、ビタミンB・ニコチン酸・パントテン酸配合剤、ビタミンBC・ニコチン酸・パントテン酸配合剤などであってもよい。
【0043】
なお、複数の活性成分が直接的接触により変色又は着色したり失活(含量低下)する場合、複数の活性成分は直接的な接触を抑制するため群分けするのが好ましい。例えば、ビタミンB類とビタミンB12類とを共存させても含量低下は生じないものの、ビタミンB類とビタミンB12類とを共存させると、含量低下をもたらす。そのため、ビタミンB類とビタミンB12類とは群分けするのが好ましい。また、ビタミンB類、ビタミンB類及びビタミンB12類を用いる場合、各ビタミン群(ビタミンB類の群、ビタミンB類の群及びビタミンB12類の群)に群分けしてもよく、ビタミンB類群及び/又はビタミンB12類群にはビタミンB類を含有させてもよい。なお、ビタミンB類はビタミンB12類と組み合わせても変色(着色)や含量低下がない。そのため、ビタミンB類はビタミンB12類群に含有させる場合が多い。
【0044】
ビタミンB類は製剤化により不安定化する。また、特許文献5に記載のように、塩酸ピリドキシンと塩酸グルコサミンとを組み合わせることにより、塩酸ピリドキシンは比較的安定化するものの、前記のように固形製剤の崩壊性が低下する。本発明は、ビタミンB類とカルボキシル基含有糖成分とを組み合わせて製剤化することにより、高い崩壊性を維持しつつ、ビタミンB類を安定化できる。さらに、前記のように、カルボキシル基含有糖成分(例えば、グルクロノラクトンなど)とグリコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸ナトリウムなど)とは群分けするのが好ましい。従って、担体成分としてカルボキシル基含有糖成分とグリコサミノグリカン類とを用い、ビタミン類としてビタミンB類と他のビタミン類(ビタミンB類及び/又はビタミンB12類)とを用いる場合、ビタミンB類とカルボキシル基含有糖成分(例えば、グルクロン酸類(グルクロン酸又はそのアミド、その塩若しくはグルクロノラクトン)など)とを含む群(例えば、造粒又は整粒末群)と、ビタミンB類及び/又はビタミンB12類とグリコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸又はその塩、例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど)とを含む群(例えば、造粒又は整粒末群)とに分離するのが好ましい。
【0045】
なお、カルボキシル基含有糖成分(例えば、グルクロン酸類(グルクロン酸又はそのアミド、その塩若しくはグルクロノラクトン)など)、グリコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸又はその塩、例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど)、ビタミンB類、ビタミンB類及び/又はビタミンB12類を含む固形製剤は、関節障害(関節痛など)の予防及び/又は治療に有用である。
【0046】
本発明の固形製剤の剤形は特に制限されず、例えば、散剤、細粒又は顆粒剤、丸剤、錠剤(裸錠、フィルムコーティング錠)、カプセル剤、フィルムコーティング剤であってもよく、通常、顆粒剤、錠剤及びカプセル剤であり、フィルムコーティング剤(フィルムコーティングされた細粒又は顆粒剤、特にフィルムコーティング錠)であるのが好ましい。
【0047】
本発明の固形製剤は慣用の方法で製造できる。活性成分と担体成分(カルボキシル基含有糖成分などを含む担体成分)とを混合して粉剤を調製してもよく、通常、活性成分と担体成分とを造粒し、必要により造粒物を整粒して粒剤(細粒剤又は顆粒剤)を調製するか、又は造粒物を含む混合物(特に、造粒物と担体成分との混合物)を打錠することにより裸錠を調製できる。カプセル剤は前記粒剤をカプセルに充填することにより調製できる。
【0048】
造粒は、慣用の方法、例えば、撹拌造粒法、流動層造粒法、押出造粒法、乾式造粒法などで行うことができる。好ましい造粒法は流動層造粒法である。造粒においては、活性成分と担体成分とを、結合剤を含む溶液を用いて造粒する場合が多く、例えば、活性成分と担体成分との流動層に結合剤を含む溶液を噴霧することにより造粒できる。
【0049】
固形製剤での群分けは、変色や含量低下をもたらす複数の成分(例えば、配合忌避成分)のうち少なくとも一方の成分を担体成分で製剤化(例えば、造粒などにより顆粒化)及び/又はコーティングすることにより行うことができ、他の成分は粉末状などの形態であってもよい。好ましい態様では、一方の成分を担体成分で製剤化した製剤群と、他の成分を担体成分で製剤化した製剤群とを調製し、双方の製剤群を1つの投与形態に製剤化することにより群分け製剤が調製される。
【0050】
より具体的には、本発明の固形製剤は、カルボキシル基含有糖成分を含む造粒末群(例えば、顆粒又は整粒末群)と、グリコサミノグリカン類とを含む造粒末群(例えば、顆粒又は整粒末群)とを含み、活性成分(ビタミン類など)が少なくとも一方の造粒末群に含有されている製剤であってもよい。前記双方の造粒末群を含む固形製剤は、散剤又は顆粒剤であってもよく、前記双方の造粒末群と、必要により担体成分と混合した混合物を打錠した錠剤であってもよい。特に好ましい態様では、ビタミンB類とカルボキシル基含有糖成分とを含む造粒末群と、ビタミンB類とビタミンB12類とグリコサミノグリカン類とを含む造粒末群とを含む固形製剤、例えば、前記双方の造粒末群を含み、必要により担体成分と混合した混合物を打錠し、錠剤を得ることができる。なお、グリコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸ナトリウムなど)を含む製剤(錠剤など)は、高湿度下で保存すると、製剤が吸湿し膨張して製剤に割れが生じる場合がある。このような場合、グリコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸ナトリウムなど)を造粒して造粒物(顆粒又は整粒末など)などの形態で、カルボキシル基含有糖成分を含む成分と混合して製剤化すると、高湿度下(例えば、低温高湿度下)で保存しても固形製剤(錠剤など)の割れや変形を有効に防止できる。
【0051】
前記のように、本発明の固形製剤は、コーティング基剤で被覆されたコーティング製剤、例えば、コーティング錠であってもよい。コーティング基剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポビドン、コポリビドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体、マクロゴールなどの水溶性基剤、エチルセルロースなどの水不溶性基剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマーなどの腸溶性基剤、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ポリビニルアセタートジエチルアミノアセテートなどの胃溶性基剤、アラビアゴム、プルラン、カルナウバロウ、セラック、マクロゴール類、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウムなどが例示できる。これらのコーティング基剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、コーティング層は一層又は複数層に形成してもよい。好ましいコーティング基剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン系重合体(ポビドン、コポリビドンなど)である。
【0052】
コーティング剤は、さらに必要に応じて、充填剤、滑沢剤、隠蔽剤、可塑剤、着色剤などの添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、タルク、沈降炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、酸化チタン、マクロゴール6000、コポリビドン、トリアセチン、クエン酸トリエチル、グリセリン、プロピレングリコール、リボフラビン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黄色5号アルミニウムレーキなどが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
コーティング剤に添加する滑沢剤としては、外観の経時的安定性の観点から、タルクが好ましい。添加剤(タルクなど)の含有量は、固形分換算で、コーティング剤中、通常、1〜30重量%(例えば、3〜25重量%)、好ましくは5〜20重量%(例えば、10〜15重量%)程度である。
【0054】
コーティング量は、未コーティング製剤(素顆粒、素錠など)に対して1重量%以上(例えば、1〜50重量%)、好ましくは2〜20重量%(例えば、3〜18重量%)、さらに好ましくは5〜15重量%(例えば、6〜12重量%)程度である。
【0055】
コーティング製剤は、フィルムコーティング機を用いて、コーティング基剤を含有するコーティング剤を未コーティング製剤(素顆粒、素錠など)に噴霧することにより得ることができる。
【0056】
本発明は固形製剤の崩壊性を改善する方法も提案する。すなわち、本発明の製剤は担体としてカルボキシル基含有糖成分を含んでいるため、固形製剤の崩壊性を改善できる。さらに、カルボキシル基含有糖成分とグリコサミノグリカン類とを組み合わせて含有させると、固形製剤の崩壊性をさらに改善できる。そのため、本発明の固形製剤は崩壊剤を含んでいてもよいが、必ずしも崩壊剤を含んでいる必要はない。
【0057】
なお、活性成分の含有量は、活性成分の種類に応じて、固形製剤全体に対して0.01〜80重量%程度の範囲から選択でき、通常、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%程度であってもよい。活性成分の投与量は、症状の程度、年齢、性別、投与経路などに応じて選択でき、1日あたり、0.01〜500mg、好ましくは0.1〜300mg(例えば、0.5〜250mg)、さらに好ましくは1〜200mg(例えば、5〜150mg)程度であってもよい。ビタミン製剤において、ビタミンB類の単位投与量は、例えば、1〜300mg(例えば、50〜200mg、好ましくは75〜150mg)、ビタミンB類の単位投与量は、1〜100mg(例えば、5〜50mg、好ましくは10〜30mg)、ビタミンB12類の単位投与量は、0.001〜2mg(例えば、0.01〜0.5mg、好ましくは0.03〜0.1mg)程度であってもよい。本発明の固形製剤は、1日当たり1回又は複数回(例えば、2〜6回)に分けて投与できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、固形製剤の崩壊性を改善するのに有効であり、変色(着色)及び含量低下を防止し、保存安定性を高めるのにも有効である。従って、本発明の固形製剤は経口投与に適しており、経口投与製剤として有用である。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0060】
実施例1
流動層造粒機(FD−3S型、パウレック(株))にフルスルチアミン塩酸塩218.32g、コンドロイチン硫酸ナトリウム1600g、粉末還元麦芽糖水アメ419.56gを加え、0.04重量%シアノコバラミン溶液を300g噴霧した後、8重量%ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液600gを噴霧して造粒後、粉砕(パワーミル、昭和化学機械(株))してT群整粒末を得た。次に流動層造粒機(FD−3S型、パウレック(株))にピリドキシン塩酸塩40gとグルクロノラクトン(市販品を平均粒子径約20〜80μmに粉砕した粉砕物、以下同じ)2000gと粉末還元麦芽糖水アメ142gとを加え、8重量%ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液850gを噴霧して造粒後、粉砕(パワーミル、昭和化学機械(株))してB群整粒末を得た。T群整粒末2057.4g及びB群整粒末2025gにクロスポビドン162g、ステアリン酸マグネシウム21.6gを加えて混合し、得られた混合末をロータリー式打錠機で直径9.5mmの臼、局率半径8mmのR面杵にて製錠し、素錠(1錠当たりの重量395mg、厚み5.5mm)を得た。
【0061】
上記素錠3500gに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5MW)360g、タルク45g、酸化チタン45g、黄色三二酸化鉄0.938gを精製水4050gに溶解・懸濁したコーティング液を用い、コーティング機(DRC−500型、パウレック)にて素錠重量に対して10重量%コーティングし、フィルムコーティング錠を得た。
【0062】
実施例2
実施例1と同様にしてT群整粒末を得た。次に流動層造粒機(FD−3S型、パウレック(株))にピリドキシン塩酸塩40gとグルクロノラクトン2000gに粉末還元麦芽糖水アメ316gを加え、8重量%ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液925gを噴霧して造粒後、粉砕(パワーミル、昭和化学機械(株))してB群整粒末を得た。T群整粒末2057.4g、B群整粒末2187gにステアリン酸マグネシウム21.6gを加えて混合して混合し、実施例1と同様にして素錠及びフィルムコーティング錠を得た。
【0063】
実施例3
流動層造粒機(FD−5S型、パウレック(株))にフルスルチアミン塩酸塩218.32g、ピリドキシン塩酸塩40g、コンドロイチン硫酸ナトリウム1600g、グルクロノラクトン2000gに粉末還元麦芽糖水アメ561.56gを加え、0.04重量%シアノコバラミン水溶液300gを噴霧した後。8重量%ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液1450gを噴霧して造粒後、粉砕(パワーミル、昭和化学機械(株))して整粒末を得た。整粒末4082.4gにクロスポビドン162g、ステアリン酸マグネシウム21.6gを加えて混合し、以下、実施例1と同様の方法で素錠及びフィルムコーティング錠を得た。
【0064】
実施例4
流動層造粒機(FD−3S型、パウレック(株))にフルスルチアミン塩酸塩1091.6g、粉末還元麦芽糖水アメ1277.8gを加え、0.16重量%シアノコバラミン水溶液375gを噴霧した後、8重量%ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液1000gを噴霧して造粒後、粉砕(パワーミル、昭和化学機械(株))してT群整粒末を得た。次に流動層造粒機(FD−3S型、パウレック(株))にピリドキシン塩酸塩40gとグルクロノラクトン2000gと粉末還元麦芽糖水アメ142gを加え、8重量%ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液850gを噴霧して造粒後、粉砕(パワーミル、昭和化学機械(株))してB群整粒末を得た。T群整粒末441g、B群整粒末2025gにコンドロイチン硫酸ナトリウム1440g、クロスポビドン162gステアリン酸マグネシウム21.6g及び粉末還元麦芽糖水アメ176.4gを加えて混合し、実施例1と同様の方法で素錠およびフィルムコーティング錠を得た。
【0065】
実施例5
実施例1と同様にして得られたT群整粒末2057.4g及びB群整粒末2025gにクロスカルメロースナトリウム162g、ステアリン酸マグネシウム21.6gを加えて混合し、得られた混合末をロータリー式打錠機で打錠する以外、実施例1と同様にして、素錠およびフィルムコーティング錠を得た。
【0066】
比較例1
実施例1のB群整粒末の調製において、グルクロノラクトン2000gに代えて塩酸グルコサミン2000gを用いるとともに、実施例1と同様にして得られたT群整粒末2057.4g及びB群整粒末2025gにクロスカルメロースナトリウム162g、ステアリン酸マグネシウム21.6gを加えて混合し、得られた混合末をロータリー式打錠機で打錠する以外、実施例1と同様にして、素錠およびフィルムコーティング錠を得た。
【0067】
試験例1
素錠を50℃で2カ月間ガラス瓶に密栓して保存した後、外観変化を調べた。なお、試験に供した素錠の色味は淡いピンク色である。また、フィルムコーティング錠を60℃で2週間および60℃で4週間ガラス瓶に密栓して保存した後、ピリドキシン塩酸塩含量を測定し、残存率として算出した。
【0068】
試験例2
フィルムコーティング錠(各20錠)について、温度5℃、相対湿度88%で2週間ガラス瓶に開栓して保存し、割れた錠剤の割合を百分率で表した。
【0069】
試験例3(崩壊性)
崩壊試験法(一般試験法 日本薬局方第15改正)の即効性錠剤に準じて、フィルムコーティング錠の崩壊性を試験した。
【0070】
製剤処方とともに結果を表に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
表より、塩酸グルコサミン(比較例1)に比べてグルクロノラクトン(実施例1及び実施例2)を用いることにより、崩壊性を大きく向上できる。また、崩壊剤としてクロスポビドン及びクロスカルメロースナトリウムを用いた製剤(実施例1及び実施例5)も、崩壊剤を含まない製剤(実施例2)も高い崩壊性を示した。
【0074】
さらに、ピリドキシン塩酸塩とグルクロノラクトンとの造粒物と、他の成分の造粒物とに群分けした製剤では、製剤の外観変化を防止できるとともに、ピリドキシン塩酸塩を安定化できる。また、コンドロイチン硫酸ナトリウムを造粒物の形態で配合することにより、低温高湿度下での保存において錠剤の割れを防止できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とを含む固形製剤。
【請求項2】
活性成分がビタミン類である請求項1記載の固形製剤。
【請求項3】
ビタミンB類とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とを含む請求項1又は2記載の固形製剤。
【請求項4】
カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体が、ウロン酸又はそのアミド、その塩若しくはラクトンである請求項1〜3のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項5】
カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体が、グルクロン酸又はそのアミド、その塩およびグルクロノラクトンから選択された少なくとも一種である請求項1〜4のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項6】
さらに、グリコサミノグリカン類を含む請求項1〜5のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項7】
カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体を含む群と、グリコサミノグリカン類を含む群とに群分けされている請求項6記載の固形製剤。
【請求項8】
活性成分が、ビタミンB類、ビタミンB類及びビタミンB12類から選択された少なくとも一種である請求項1〜7のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項9】
ビタミンB類とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とを含む群と、ビタミンB類とビタミンB12類とグリコサミノグリカン類とを含む群とに群分けされている請求項1〜8のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項10】
ビタミンB類と、グルクロン酸又はそのアミド、その塩若しくはグルクロノラクトンとを含む造粒末群と、ビタミンB類とビタミンB12類とコンドロイチン硫酸又はその塩とを含む造粒末群とを含む請求項1〜9のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項11】
活性成分とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とを造粒するか又は造粒物を打錠し、固形製剤を製造する方法。
【請求項12】
ビタミンB類とカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とを含む造粒末群と、ビタミンB類とビタミンB12類とグリコサミノグリカン類とを含む造粒末群とを含む混合物を打錠し、固形製剤を製造する請求項11記載の方法。
【請求項13】
活性成分と担体とを含む固形製剤の崩壊性を改善する方法であって、担体としてカルボキシル基含有単糖類又はその誘導体を用い、固形製剤の崩壊性を改善する方法。
【請求項14】
カルボキシル基含有単糖類又はその誘導体とグリコサミノグリカン類とを組み合わせ、固形製剤の崩壊性を改善する請求項13記載の方法。

【公開番号】特開2010−24181(P2010−24181A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187313(P2008−187313)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】