説明

土壌改良方法

【課題】 排出される掘削土を充分に低減させることができ、汚染土壌を充分に浄化することができ、原地盤の地耐力の低下を防止することができる土壌改良方法を提供する。
【解決手段】 本発明の土壌改良方法は、中空の軸体61と軸体61の先端に設けられる切削部材と軸体61に周設される螺旋状羽根62と少なくとも1つの注入管とを備える掘削部材60を回転可能かつ昇降可能に支持する支持手段により回転および降下させつつ、軸体61の先端から石膏系固化材を含む圧縮空気または窒素を噴射させ、掘削部材60を回転および上昇させつつ、少なくとも1つの注入管から掘削部材60周囲の土壌に向けて、水に鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを分散させたスラリー、または、圧縮空気または窒素に鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを分散させたガスを噴射させ、螺旋状羽根62の回転により土壌とスラリーまたはガスとを混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害な有機化合物、特に揮発性有機化合物により汚染された土壌を浄化するともに、原地盤の地耐力の低下を防止し、または、建設機械のトラフィカビリティを確保することを可能にする土壌改良方法に関し、より詳細には、掘削時に排出される掘削土を低減させるとともに掘削性能を向上させる土壌改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定強度の地盤を得るための地盤改良および有機塩素化合物といった汚染物質を分解除去する土壌浄化に、AMP(Air Mixing Pillar)工法が採用されている。AMP工法は、掘削時に、水の代わりに高圧空気を潤滑材として用いるため、排泥が出ないという特徴を有している。また、AMP工法に使用する機械設備は、コンパクトであるため、狭い場所、上空制限がある場所などにおいても容易に施工できるという特徴を有している。
【0003】
ここで、図1を参照してAMP工法について説明する。AMP工法に使用される機械設備は、図1に示すように、中空の軸体1と、軸体1の先端に設けられる切削部材2と、軸体1に周設される螺旋状羽根3と、図示しない軸体1の内部に一部が挿設され、軸体1を貫通し、螺旋状羽根3の羽根面に沿って一部が配設される注入管とを備えた掘削部材4と、支持手段5と、図示しない圧縮空気供給手段と、図示しない圧縮空気供給ラインと、注入材を貯留する容器6と、注入材供給手段7と、注入材供給ライン8とから構成される(例えば、特許文献1参照)。支持手段5は、ロッド9と、走行手段10と、挟持手段11と、ロッド9を支持し、ロッド9の角度を変更可能にするアーム12と、ロッド9を昇降可能にする昇降手段13とを備えている。ロッド9は、地面に向いた下端部に配設された掘削部材4の回転および昇降を可能にする。走行手段10は、所定の土壌位置に移動し、また、位置を変更する。挟持手段11は、ロッド9を移動可能に、かつ回転可能に挟持する。また、挟持手段11は、油圧駆動などによりロッド9を正逆両方向に回転させる。
【0004】
原位置において土壌改良する場合、走行手段10によって改良するべき位置に移動し、挟持手段11によってロッド9を回転させ、昇降手段13によってロッド9を降下させることにより掘削部材4を地盤に貫入させ、所定深さまで掘削する。なお、掘削部材4を地盤に貫入させる際、圧縮空気供給手段から掘削部材4に圧縮空気を供給し、掘削部材4の軸体1の先端から噴射させる。この圧縮空気は、主に、掘削土をスムーズに流動させる潤滑材的効果を与えて掘削を容易にさせるために供給されるものであり、この圧縮空気の供給によってさらに、掘削中の地盤への衝撃を低減させ、掘削部材4に揺動撹拌効果を与えて掘削を容易にさせ、切削部材2の発熱を抑制することができる。所定深さまで掘削した後、昇降手段13によってロッド9を上昇させつつ、注入材供給手段7から掘削部材4の注入管に注入材を供給する。注入管に供給された注入材は、矢線に示すように、掘削部材4の周囲の土壌に向けて噴射される。噴射された注入材は、螺旋状羽根3の回転により土壌と撹拌混合され、所定範囲の土壌に均一に分散される。注入材の注入は、掘削部材4が所定深さに上昇されるまで行われる。掘削部材4が所定深さに上昇された後は、注入材の注入を停止し、掘削部材4を引き上げ、走行手段10によって次の位置に移動し、再び土壌の掘削を行う。これを繰り返すことにより、所定範囲の地盤の地盤改良を行うことができる。
【0005】
高圧空気は、掘削時のみならず、注入材の注入時においても供給することができる。地盤改良において注入材は、例えば、セメントミルク、水ガラス系の薬剤、石膏などの固化材とすることができ、スラリーまたはガスに分散させた状態で供給することができる。これら固化材は、土壌に供給されると土壌とともに固化し、所定の強度を発現する。なお、固化速度は、固化材中の急結剤の添加量を変えることで調整することができる。
【0006】
図1に示す機械設備は、有機塩素化合物などの汚染物質で汚染された土壌を浄化する場合にも使用することができる(例えば、特許文献2参照)。この場合には、注入材に、水に鉄粉または酸化鉄粉を分散させたスラリーや圧縮空気に鉄粉または酸化鉄粉を分散させたガスを使用することにより実施することができる。
【0007】
このAMP工法では、上述したように排泥は出ないものの、地盤を掘削する際、掘削土が地盤に応じて排出する。掘削土は、処理が終了した後、埋め戻さなければならず、労力がかかるといった問題があった。また、埋め戻す際、地盤改良であれば固化材を、土壌浄化であれば鉄粉または酸化鉄粉をそれぞれ充分に混合しなければならず、労力がかかり、施工期間が長くなるといった問題があった。含水比の低い、緩い水分飽和されていない地盤では、ほとんど掘削土が出ないものの、水分飽和された固い粘性土では、約30%の掘削土が排出される。なお、含水比とは、土の質量に対する含まれている水の量の質量比を%で表わしたものである。したがって、いかなる地盤であっても掘削土が排出されるのを充分に低減させることができ、汚染土壌を充分に浄化することができ、さらには、原地盤の地耐力の低下を防止し、建設機械のトラフィカビリティを確保することを可能にする方法が望まれている。
【特許文献1】特開2003−090189号公報
【特許文献2】特開2003−251327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑み、排出する掘削土を充分に低減させることができ、汚染土壌を充分に浄化することができ、さらには、原地盤の地耐力の低下を防止し、建設機械のトラフィカビリティを確保することを可能にする土壌改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、本発明の土壌改良方法を提供することにより達成される。
【0010】
すなわち、本発明の請求項1の発明によれば、中空の軸体と、前記軸体の先端に設けられる切削部材と、前記軸体に周設される螺旋状羽根と、少なくとも1つの注入管とを備える掘削部材を回転可能に、かつ昇降可能に支持する支持手段により回転および降下させつつ、前記軸体の先端から石膏系固化材を含む圧縮空気または窒素を噴射させるステップと、
前記掘削部材を回転および上昇させつつ、前記少なくとも1つの注入管から該掘削部材周囲の前記土壌に向けて、水に鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを分散させたスラリー、または、圧縮空気または窒素に前記鉄粉または前記酸化鉄粉と前記石膏系固化材とを分散させたガスを噴射させるステップと、
前記螺旋状羽根の回転により前記土壌と前記スラリーまたは前記ガスとを混合するステップとを含む、土壌改良方法が提供される。
【0011】
本発明の請求項2の発明によれば、前記石膏系固化材を含む圧縮空気または窒素を噴射させるステップは、前記少なくとも1つの注入管から石膏系固化材を含む圧縮空気または窒素を噴射させるステップを含む土壌改良方法が提供される。
【0012】
本発明の請求項3の発明によれば、前記掘削するステップでは、前記撹拌部材を所定方向に回転させて前記土壌の所定深さまで掘削するとともに該土壌を撹拌し、前記噴射させるステップおよび前記混合するステップでは、前記撹拌部材を前記所定方向とは逆方向に回転させて地表面に向けて上昇させるとともに、前記スラリーを噴射させ、かつ前記土壌を撹拌することを特徴とする土壌改良方法が提供される。
【0013】
本発明の請求項4の発明によれば、前記方法では、前記土壌1mに対して前記鉄粉を10〜100kg供給し、前記鉄粉の質量に対して1〜10倍の量の前記石膏系固化材を供給し、石膏系固化材を含む圧縮空気または窒素を噴射させるステップでは、前記石膏系固化材の供給量のうちの20〜50%を供給し、前記スラリーまたは前記ガスを噴射させるステップでは、前記石膏系固化材の供給量のうちの残りの50〜80%を供給することを特徴とする土壌改良方法が提供される。
【0014】
本発明の請求項5の発明によれば、前記方法では、前記土壌1mに対して前記酸化鉄粉を15〜150kg供給し、前記酸化鉄粉の質量に対して1〜20倍の量の前記石膏系固化材を供給し、前記石膏系固化材を含む圧縮空気または窒素を噴射させるステップでは、前記石膏系固化材の供給量のうちの20〜50%を供給し、前記スラリーまたは前記ガスを噴射させるステップでは、前記石膏系固化材の供給量のうちの残りの50〜80%を供給することを特徴とする土壌改良方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の土壌改良方法を提供することにより、排出される掘削土を充分に低減させることができ、土壌を均一に浄化することができ、地耐力の低下を防止することができ、さらには地耐力を向上させることも可能となる。また、上述した酸化鉄粉を使用することで、有機塩素化合物をより低減させることができ、浄化のための期間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の土壌改良方法は、地盤を掘削する際に排出される掘削土を低減させ、土壌に鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを供給し、土壌とこれらとを撹拌混合することにより土壌に均一にこれらを分散させ、効率的に土壌浄化を行い、地盤改良する方法である。
【0017】
本発明の土壌改良方法を以下説明する。本発明の土壌改良方法では、図1に示す装置と同様の、以下で詳細に説明する図4に示す装置を用いて施工することができる。土壌の掘削は、挟持手段によるロッドの回転により掘削部材を回転させ、昇降手段によりロッドを降下させることにより行う。掘削は、掘削部材の先端に設けられた切削部材により行われる。また、排泥を生じないことを特徴とするAMP工法では、掘削部材の軸体の先端から圧縮空気を噴射させながら掘削が行われる。この圧縮空気は、圧縮空気供給手段から圧縮空気供給ラインを通してロッドに送られ、ロッドの内部を通り、掘削部材の中空の軸体の内部を通して先端から噴射される。本発明では、土壌改良に使用される所定量の石膏系固化材のうちの一部を、掘削時に使用する。すなわち、圧縮空気を噴射させながら掘削する際、その圧縮空気にその一部を混入させ、土壌に供給する。例えば、ホッパーに粉末状の石膏系固化材を収容し、ホッパーの下部に弁およびT字形の連結部材を設けて圧縮空気供給ラインと接続し、供給される圧縮空気中に所定量の石膏系固化材を、弁を介して落下させることにより、圧縮空気に混入させて供給することができる。
【0018】
石膏系固化材を含む圧縮空気は、掘削部材の軸体の先端から水分を含む土壌に噴射され、掘削部材の螺旋状羽根の回転により、土壌中に供給された石膏系固化材は、土壌と撹拌混合される。これにより、掘削時において、土壌に均一に固化材を分散させることができる。本発明では、軸体の先端のみならず、注入管への石膏系固化材を含む圧縮空気を供給し、周囲の土壌に向けて噴射させることができる。注入管への供給は、圧縮空気中に分散させたもののほか、窒素に分散させたもの、水に分散させたスラリーとして供給することもできる。ただし、ライン途中などで固化する可能性があるため、圧縮空気または窒素に分散させて供給することが好ましい。
【0019】
石膏系固化材を含む圧縮空気は、土壌中に供給された後、この石膏系固化材により土壌中の水分が奪われる。これにより、上述した緩い飽和されていない地盤へと変化し、掘削時における掘削土の排出が低減される。掘削しやすい、緩い飽和されていない地盤の場合、掘削時、螺旋状羽根の上面を含水比の低い団子状の土が転がる状態を有する。この状態が、掘削土が排出されない良好の状態である。すなわち、螺旋状羽根の上面の団子状の土の存在は、地盤が空隙を保つように掘削できていることを示し、螺旋状羽根における掘削土の抜け出しがスムーズであるため、余分な掘削土が排出されず、その結果、掘削土の排出が低減されるのである。ちなみに、含水比の高い飽和した粘性土の場合には、掘削時、螺旋状羽根の上面を軟らかいスラリーが覆い、掘削するにつれて空隙を含んだ団子となり、これが掘削土の抜け出しを妨害するため、余分な掘削土が排出されやすくなるのである。ここで、掘削土の抜け出しとは、切削部材によって掘削されると掘削土を生じるが、その掘削土が螺旋状羽根の上下の羽根によって形成される空間を通して抜けていくことをいう。
【0020】
石膏系固化材を含む圧縮空気の噴射は、掘削が完了するまで行われる。掘削が完了すると、圧縮空気への石膏系固化材の供給を停止し、その後、圧縮空気のみを噴射させ、掘削部材を上昇させる。これは、すでに土壌中への所定量の固化材の注入が終了しており、また、上昇中に中空の軸体の内部へ土が入り込まないようにするためである。なお、上昇時には、掘削部材の注入管から浄化材および残りの固化材を噴射させ、土壌浄化と地盤改良とを行う。
【0021】
上記浄化材および固化材をスラリーで供給する場合について説明する。土壌浄化においては、特に、土壌中の揮発性有機塩素化合物を分解、除去する。ここで、揮発性有機塩素化合物としては、テトラクロロエチレン(TCE)、ペルクロロエチレン(PEC)、1,1−ジクロロエチレン(DCE)、トランス−1,2−DCE、シス−1,2−DCE、1,1,1−トリクロロエタン(TCEt)、1,1,2−TCEt、ジクロロメタン(DCM)などが挙げられる。本発明の方法では、その他、ダイオキシン類、残留農薬なども分解、除去することができる。これらの分解、除去は、水に浄化材として鉄粉または酸化鉄粉を分散させたスラリーを土壌に噴射し、撹拌混合して土壌に均一に分散させることにより行われる。本発明では、鉄粉または該酸化鉄粉を圧縮空気または窒素に分散させたガスを土壌に噴射し、撹拌混合して均一に分散させることにより行うこともできる。
【0022】
本発明に使用される鉄粉は、水とともに供給することができる粒径であればいかなる粒径のものであってもよく、例えば、粒径が0.05μm〜150μmのものを用いることができるが、水に分散しやすい、粒径が小さいもののほうが好ましい。また、鉄粉を供給する状態としては、水に鉄粉を混合させ、鉄粉の粒と粒との間に水を含んだ、水に分散した状態で供給され、土壌に向けて噴射されることが好ましい。鉄粉を噴射される量としては、いかなる量であってもよいが、充分な浄化作用を付与するためには、土壌1mあたり、例えば、10kg〜100kgとすることができる。鉄粉は、粒径が一定ではなく、粒度分布があるほうが、粒と粒との間に水を含みやすく、分散した状態になりやすいので好ましい。本発明においてスラリーは、圧力が高いほど、供給ライン途中において鉄粉の堆積がなくなるので好ましく、例えば、15MPa〜20MPaとすることができる。また、本発明では、汚染土壌に対する鉄粉を混合する割合は、汚染土壌における揮発性有機塩素化合物などの濃度によって異なり、適切な量を混合することができる。地盤強度を低下させないように水が少ないほど好ましいが、上記鉄粉を供給することができる量として決定することができる。本発明では、例えば、水と鉄粉との質量比を、1:1〜20:1とすることができる。
【0023】
上述したように、水に代えて圧縮空気とともに供給することもできるが、鉄粉供給の際に、粉塵爆発を生じるおそれがある場合には、圧縮空気に代えて窒素を供給することができる。また、圧縮空気や窒素とともに供給する場合、その供給圧力は、例えば、0.7MPaとすることができる。さらに、鉄粉の供給量は、圧縮空気とともに供給する場合、粉塵爆発を起こさない爆発下限界濃度未満になる量とすることができ、具体的には、空気1m中の鉄粉濃度を0.1kg以下とすることができる。
【0024】
本発明では、鉄粉のほか、水に分散しやすく、より高い浄化作用を付与することができる酸化鉄粉を使用することができる。酸化鉄粉としては、FeOやFeなどを使用することができるが、より高い浄化作用を付与することができる点で、マグネタイト(Fe)を約70質量%〜約90質量%含有することが好ましい。なお、その他の成分については、例えば、純鉄(Fe)や2価鉄(Fe2+)などとすることができる。2価鉄としては、FeOなどとすることができる。
【0025】
鉄粉を用いる土壌浄化では、鉄粉を汚染土壌に混合した場合、例えば、TCEは中間副生成物であるシス−1,2−DCEなどを生じ、最終的に多くがエチレンおよびアセチレンに分解されるが、酸化鉄粉を用いた場合には、エチレンガスやアセチレンガスへの分解に止まらず、分解反応が炭酸ガスまで進行する。本発明では、特に、マグネタイトを含む酸化鉄粉を用いることにより、浄化処理工程においてエチレンやアセチレンといった副生成物を生じないため、それらの副生成物を処理するための他の工程や装置を必要とせず、また、処理期間を大幅に短縮することができるため、マグネタイトを含む酸化鉄粉を使用することが好ましい。
【0026】
本発明では、平均粒子径が0.05μm〜0.2μmの酸化鉄粉を用いることができる。酸化鉄粉は、比重7.8の鉄粉に比べて比重が4〜5程度と小さく、また、上記微細な粒子径のものを用いることにより、水に容易に分散し、安定なスラリーを形成することができる。供給圧力は、水に分散した状態で供給することができるのであればいかなる圧力であってもよい。また、酸化鉄粉は、鉄粉とは異なり、二次的に発生する赤錆による赤水を生じることがないといった利点も有する。本発明では、酸化鉄粉を用いることにより、より少ない水量で、かつ低圧で、所定量供給することができる。なお、圧縮空気や窒素とともに供給する場合、上記鉄粉と同様0.7MPaの供給圧力とすることができる。
【0027】
本発明では、汚染土壌に対する酸化鉄粉を混合する割合は、汚染土壌における揮発性有機塩素化合物の濃度によっても異なるが、土壌1mに対し、15kg〜150kgとすることができる。また、水とともに供給する場合には、水:酸化鉄粉が、質量比で2:1〜15:1とすることができる。なお、酸化鉄粉は多いほど分解、除去作用を付与することができるが、安価で実施し、かつ酸化鉄粉を供給するために水量が増加することによる地耐力の低下を抑制するため、上記値とすることが好ましい。
【0028】
本発明の土壌改良方法では、鉄粉または酸化鉄粉と水とからなるスラリーに、さらに焼き石膏といった石膏系固化材を添加して供給される。この石膏系固化材が添加されたスラリーの使用によって、水分を多く含む地盤、水に鉄粉または酸化鉄粉を分散させたスラリーを供給することにより軟化する地盤、スラリーを供給した後、撹拌混合することにより軟化する地盤において、所定の強度を得ることができる。
【0029】
セメントや石膏といった固化材を供給して所定強度の地盤を得ることは従来から知られている。セメントは、水和反応により強度を発現し、安価で、充分な強度を得ることができるという特徴を有するが、土壌に混合すると、排水が悪く、植物が育たないアルカリ土となり、また、鉄粉または酸化鉄粉と有機塩素化合物との反応を阻害するため、セメントを混合した土壌では充分な浄化を行うことができないという問題がある。アルカリ土の問題を解決するべく、低アルカル性セメントを用いることができるが、セメントに比べて高価であり、低いながらもアルカリ性であり、有機塩素化合物との反応を阻害するため、多量には使用することができず、また、充分な強度を得ることができないといった問題がある。
【0030】
石膏は、中性の固化材であり、水和反応により強度を発現するものではないため、土壌に混合してすぐに強度を発現し、含水比の高い地盤に対しても適用することができる。例えば、混合して3日経過後では、約0.5MN/mの地盤強度を得ることができる。しかしながら、石膏を水に添加して供給しようとする場合、容器内で固まったり、ライン途中で固まったり、供給することができたとしても、供給した部分のみの土壌が急速に固まり、所定範囲全体の土壌を撹拌できず、その範囲に均一に石膏を分散させ、均一に固めることができないという問題がある。また、別途、石膏のみを供給するにしても、土壌に添加して急速に固まり、上述したように撹拌できない以上、土壌全体にわたって所定強度の地盤を得ることができない。
【0031】
本発明では、多量の水に、鉄粉または酸化鉄粉とともに石膏系固化材を添加することで、石膏系固化材による固化速度を遅延させることができることを見出した。これにより、スラリーとして供給し、土壌と鉄粉または酸化鉄粉とを充分に撹拌混合することができ、所定の均一強度の地盤を得ることができる。
【0032】
本発明に使用することができる石膏系固化材としては、無水石膏を用いることもできるが、半水石膏である焼き石膏が好ましい。この焼き石膏は、硫酸カルシウムの二水和物(CaSO・2HO)を低温加熱処理することにより得ることができる。例えば、硫酸法により酸化チタンを製造する際に発生する廃硫酸を、炭酸カルシウムを用いてpHを5とし、pHを5とすることにより生成する生成物を非酸化性雰囲気下、150℃で1時間加熱焼成することにより得ることができる。また、本発明において石膏系固化材と鉄粉との質量比は、スラリー中の水量や土壌中の水分量によって決定することができるが、例えば、0.03:1〜100:1とすることができる。本発明では、充分な揮発性有機塩素化合物の分解除去効果を得るのに必要とされる土壌1mあたり10kg〜100kgの鉄粉量と、水と鉄粉との質量比1:1〜20:1から得られる水量とから、石膏系固化材と鉄粉との質量比は1:1〜10:1とすることが好ましい。スラリー中の石膏系固化材の量が多い場合、土壌強度を高めることができるが、スラリー粘度が上昇し、このスラリーを供給するためには、スラリー供給手段の能力を増強しなければならず、多くの電力も消費することとなる。一方、石膏系固化材の量が少ない場合、土壌強度が不充分なものとなる。したがって、これら地盤強度や設備コストなどの点から、上述した範囲の添加量が好ましい。
【0033】
本発明では、酸化鉄粉を使用する場合の石膏系固化材の添加量は、酸化鉄粉の質量と同じか、それ以上であることが好ましく、2〜20倍であることがより好ましい。また、石膏系固化材の添加量は、酸化鉄粉および石膏系固化材とともに供給される水量と、土壌に含まれる水量とを考慮して決定することができる。なお、本発明では、石膏系固化材は、粉末状のものが好ましく、スラリーに限らず、圧縮空気や窒素とともに供給することもできる。
【0034】
充分かつ短期間で土壌浄化するためには、所定量の土壌に対して所定量の鉄粉または酸化鉄粉が確実に供給され、かつ広範囲にわたって行き渡らせる必要があり、加えて均一に分散した状態とされることが好ましい。また、所定強度で、かつ均一な強度の地盤を得るためには、石膏系固化材も、所定量が確実に、かつ広範囲にわたって行き渡らせ、加えて均一に分散した状態とされることが好ましい。これらを実現するために使用される装置に用いることができる掘削部材の詳細について以下に説明する。
【0035】
図2は、本発明の土壌改良方法に用いることができる掘削部材を例示した図である。図2(a)に掘削部材20の斜視図を、図2(b)に断面図を示す。図2に示す掘削部材20は、先端部に切削部材21を備えた先導管22aと長さ方向に沿った中央部の径が大きくされ、かつ両端部の径が小さくされた中空部材22bとから構成される中空の軸体22と、中空部材22bの外側面に周設された螺旋状羽根23と、螺旋状羽根23の上面および下面に設けられた複数の突出部材24と、中空部材22bの長さ方向の径が大きくされた中央部において中空部材22bを貫通し、螺旋状羽根23の縁部に向けて配設される2本の注入管25a、25bとから構成されている。なお、注入管25は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0036】
図2に示す先導管22aは、中空部材22bにフランジ26といった連結部材を使用して連結されていて、先端部に切削部材21aが設けられている。また、フランジ26にも、切削部材21aの向きと同じ方向に向いた切削部材21bが設けられている。図2に示す切削部材21は、鋭く尖った先端部を備え、硬い土壌や石なども切削することができるようになっていて、先導管22aの先端部およびフランジ26に溶接などにより接合されている。図2に示す先導管22aは、いかなる径、長さの管であっても良いが、中空部材22bの両端部の径と同じ径にすることができる。また、切削部材21の形状および構造および材質は、適切に土壌を掘削することができるものであればいかなるものであっても良い。また、切削部材21は、先導管22aの先端部およびフランジ26に、いかなる数設けられていても良い。
【0037】
図2に示す中空部材22bは、中央部の径が大きくされ、その中央部の所定の長さにおいて一定の径とされていて、両端部に向けて一定の割合で径が小さくなるような形状とされている。また、中空とされていて、内部にスラリーを供給し、噴射させるための注入管25の一部が挿設されている。中空部材22bの内部の注入管25を除いた空間には、掘削時の石膏系固化材を含む圧縮空気および上昇時の圧縮空気が流されるようになっており、掘削中の地盤への衝撃を低減させ、掘削部材20に揺動撹拌効果を与えて掘削を容易にするとともに、切削部材21の発熱を抑制し、掘削土を排出するのを低減させることを可能にしている。本発明において中空部材22bは、例えば、全体の長さを0.8m、中央部の長さ0.16mにおいて0.4mの一定の径とし、長さ方向の両端部0.32mの範囲において0.14mから0.4mの径に一定の割合で拡大した構造とすることができる。この場合、一定の割合で拡大するテーパ角が22°となっている。
【0038】
図2に示す中空部材22bには、外側面に螺旋状に形成された螺旋状羽根23が周設されている。螺旋状羽根23は、中空部材22bの中央部に向けて螺旋状羽根23の径が大きくなるように形成され、螺旋状羽根23の上面および下面には、複数の突出部材24が設けられている。螺旋状羽根23は、中空部材22bと同様に、中空部材22bの長さ方向に向いた両端部から中央部に向けて羽根の径が拡大するように形成されていて、土壌中を上下にスムーズに撹拌することができる構造とされている。
【0039】
図2に示す突出部材24は、矩形の板状のものとされ、矩形とされた面が中空部材22bに向くように配設されている。また、突出部材24は、螺旋状羽根23の縁部および中空部材22bに近隣した内縁部に設けられ、矩形の角部が面取りされた構造とされている。矩形とされた板状の突出部材24の回転方向に向いた側の角部が面取りされた構造とすることにより、螺旋状羽根23の回転をスムーズにし、効果的に撹拌することができる。図2に示す掘削部材20において、土壌を掘削する場合、螺旋状羽根23の下面に設けられた突出部材24が鋭く土壌にくい込みながら土壌を効果的に撹拌し、上面に設けられた突出部材24は、切削および撹拌された土砂をスムーズに後方に送ることができ、土壌中に石などを含んでいても、噛みにくくなっている。また、掘削部材20を地中から地表面に向けて上昇させる場合には、螺旋状羽根23の上面に設けられた突出部材24が効果的に切削および撹拌し、下面に設けられた突出部材24がスムーズに土砂を後方に送ることができる。図2に示す掘削部材20を使用して土壌を掘削する場合には、掘削土を地上に排出されなくなる。本発明において突出部材24は、いかなる数設けられていても良く、形状も上述した矩形の板状のものでなくても螺旋状羽根23の螺旋形状に沿って矩形の板が曲げられた形状とされていても良い。
【0040】
図2に示す中空部材22bの内部には、注入管25の一部が挿設されていて、注入管25以外の空間には、石膏系固化材を含む圧縮空気または圧縮空気を通すことができるようになっている。図2に示す注入管25は、中空部材22bの長さ方向の中央部において注入管25は垂直に曲げられ、中空部材22bを貫通し、螺旋状羽根23の縁部に向けて延びた構造となっている。また、注入管25は、注入管25が中空部材22bの一方の面を貫通するように、注入管25がその一方の面の裏面、すなわち注入管25が突出する位置から周方向へ180°の角度となるように設けられている。本発明においては、スラリーが土壌中において接触し、適切に汚染物質の分解反応を生じさせることができるように、それぞれの注入管25が、中空部材22bの長さ方向の同じ位置となるように配設されていることが好ましく、中空部材22bの外表面から螺旋状羽根23に沿って突出する長さが同じであることが好ましい。なお、注入管25の径は、いかなる径であってもよく、例えば、1インチ〜1.5インチのものを使用することができる。
【0041】
本発明において注入管25は、螺旋状羽根23の縁部にまで延びていなくてもよく、螺旋状羽根23の中央部または内縁部までであってもよい。本発明では、鉄粉または酸化鉄粉を土壌と混合するため、単にスラリーを供給するだけでもよいが、高い圧力で供給し、注入管25から噴射させることが好ましい。この場合、注入管25は、広範囲に噴射させるために、螺旋状羽根23の縁部にまで延びているほうが好ましい。
【0042】
図3は、スラリー供給装置および圧縮空気供給装置を例示した図である。図3に示す装置30、40は、図1に示す掘削部材にスラリーおよび石膏系固化材を含む圧縮空気を供給する装置である。図3に示す圧縮空気供給装置30は、石膏系固化材を収容する容器31と、圧縮空気供給手段32とから構成されている。容器31としては、ホッパーを用いることができ、容器31の下部に弁33を備えている。また、弁33は、圧縮空気供給ライン34に接続されるT字形の連結部材35に接続される。まず、圧縮空気供給手段32を起動し、圧縮空気供給ライン34に圧縮空気を供給しておき、弁33を開くことにより、所定量の石膏系固化材が落下し、圧縮空気中に混入される。圧縮空気供給ライン34内において、石膏系固化材は分散される。圧縮空気供給手段32としては、空気圧縮機を用いることができる。
【0043】
図3に示すスラリー供給装置40は、所定量の水41と、所定量の鉄粉または酸化鉄粉42と、所定量の石膏系固化材43とを収容し、スラリーを製造する第1容器44と、第1容器44に配設され、鉄粉または酸化鉄粉42および石膏系固化材43を均一に分散させるためにスラリーを撹拌する第1撹拌手段45と、第1容器44の下部に設けられる弁46と、第1容器44の下部に配置され、製造されたスラリーを貯留する第2容器47と、第2容器47に配設され、スラリーを撹拌する第2撹拌手段48と、スラリーを図2に示す掘削部材の注入管に供給するスラリー供給手段49とを備えている。
【0044】
スラリーを製造する場合、第1容器44に所定量の水41を入れ、所定量の鉄粉または酸化鉄粉42と所定量の石膏系固化材43とを予め混合したものを入れ、第1撹拌手段45により撹拌することにより製造することができる。なお、上記所定量の石膏系固化材43は、掘削時に使用する量を除いた量とされる。例えば、土壌1mに対し、150kgの石膏系固化材を供給する必要があり、掘削時に50kg使用する場合、残りの100kgをスラリー製造のために使用することができる。本発明では、地盤の含水比により、掘削時に供給しなくてもよいが、含水比が100%以上といった高い粘性土についても充分に掘削土の排出を低減させることができる、土壌への石膏系固化材の供給量のうち、掘削時に20〜50%の量を、スラリーとして残りの50〜80%の量を供給することが好ましい。
【0045】
第1容器44および第2容器47は、ホッパーとすることができ、下部に弁を設けたものとすることができる。各容器44、47の容量は、スラリーの供給量に応じて適切な容量とすることができる。材質は、ステンレス鋼、繊維強化プラスチック(FRP)などとすることができる。第1撹拌手段45および第2撹拌手段48は、アジテータとすることができる。また、スラリー供給手段49は、鉄粉または酸化鉄粉42および石膏系固化材43を水41に分散させた状態で供給することができるポンプを用いることができる。
【0046】
本発明では、スラリーではなく、ガスとして鉄粉または酸化鉄粉および石膏系固化材を供給することができ、この場合には、図3に示す圧縮空気供給装置30を2つ配置し、一方の容器に鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを混合した混合物を収容し、弁を開いて圧縮空気中にその混合物を落下させることにより、圧縮空気中に混合物を分散させることができる。
【0047】
図4は、図2に示す掘削部材および図3に示す圧縮空気供給装置およびスラリー供給装置を採用した本発明の土壌改良方法に使用することができる装置を例示した図である。図4に示す装置を参照して、本発明の土壌改良方法を詳細に説明する。まず、図4に示す走行手段50により土壌改良したい位置にロッド51を配置し、アーム52を使用して地面53に対してロッド51が垂直になるように調整する。図4に示す圧縮空気供給装置の容器70に所定量の石膏系固化材を収容し、圧縮空気供給手段71を起動して圧縮空気の供給を開始する。
【0048】
次に、挟持手段54によりロッド51を回転させ、昇降手段55によりロッド51を降下させて土壌の掘削を開始する。図4に示す容器70の下部の弁72を開き、所定量の石膏系固化材を圧縮空気中に供給し、掘削部材60の軸体61の先端から石膏系固化材を含む圧縮空気を噴射させる。螺旋状羽根62の回転により、土壌に供給された石膏系固化材と土壌とが撹拌混合され、土壌に含まれる水分が石膏系固化材に奪われ、土壌の含水比が低下する。この含水比の低下により、上述したように掘削土の排出が低減される。掘削時、ロッド51の長さが足りなくなった場合には、挟持手段54によるロッド51の回転を止め、ロッド51とライン73とを連結する連結部を取り外し、この連結部とロッド51との間に延長する延長ロッドを連結することができる。連結した後、ロッドを再び回転させ、引き続き土壌の掘削を行うことができる。ロッド51の回転を停止した場合、弁72を閉止して圧縮空気中への石膏系固化材の供給を停止する。
【0049】
この掘削時あるいは掘削前に、図4に示すスラリー供給装置において、スラリーを製造する。上述したように、第1容器80に、所定量の水を入れ、所定量の鉄粉または酸化鉄粉と所定量の石膏系固化材とを予め混合したものを入れて第1撹拌手段81により撹拌してスラリーを製造する。製造したスラリーを、弁82を開いて下部の第2容器83へ移す。第2容器83では、分散した鉄粉または酸化鉄粉および石膏系固化材が沈澱しないように第2撹拌手段84により撹拌する。
【0050】
次に、所定深さまで土壌を掘削した後、挟持手段54によるロッド51の回転方向を変える。なお、回転方向は変えなくてもよいが、スムーズに掘削部材を上昇させるために、ロッド51の回転方向を変えることが好ましい。スラリーの供給があるまでは上昇させずに、回転させたまま停止しておく。ロッド51の回転を停止しておいてもよい。また、弁72を閉止して圧縮空気中への石膏系固化材の供給を停止する。
【0051】
スラリー供給手段85を起動し、第2容器83からスラリーの供給を開始する。スラリーが掘削部材60に供給されると、注入管から周囲の土壌に向けて噴射される。スラリーは、螺旋状羽根62の周囲方向に連続的に噴射され、回転する螺旋状羽根62により土壌が撹拌され、スラリーと土壌とが混合される。次に、スラリーの供給および螺旋状羽根62による撹拌を行いつつ、昇降手段55によりロッドを所定速度で上昇する。こうすることにより、原位置において、所定深さまでの土壌に鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを均一に分散させることができる。本発明においては、土壌中に鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを均一に分散させるため、上昇速度が小さいほうが好ましいが、小さすぎる場合、作業効率が低下するため、例えば、毎分0.05m〜毎分0.3mとすることができる。本発明では、ロッド51の上昇時のみにスラリーを供給することを説明してきたが、掘削時にスラリーを供給し、周囲の土壌に向けて噴射させることもできるし、掘削時と上昇時の両方において、スラリーを供給し、噴射させることもできる。
【0052】
掘削部材60が地表面の近くまで上昇したところで、スラリー供給手段85を停止し、圧縮空気供給手段71による圧縮空気の供給を停止する。掘削部材60をさらに上昇させ、地面53から離間した状態となった後、走行手段50により次の改良位置に移動し、再び上述したようにして掘削、スラリーの供給および噴射、撹拌を行うことができる。
【0053】
本発明では、多量の水に鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを混合すると、固化作用がさらに遅延することを見出した。したがって、鉄粉または酸化鉄粉の混合量に対して10倍〜20倍といった多量の水を用いてスラリーを製造する場合には、必要量を適宜製造する必要はなく、使用する所定量を予め製造し、図4に示す容器83に貯留しておくことができる。また、上記多量の水を用いてスラリーを製造する場合には、鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを予め混合したものを水に添加する必要はなく、鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを別々に、いずれを先に添加してもよい。なお、多量の水ではなく、所定量の水に添加する場合には、混合したもの、すなわち同時に添加するか、鉄粉または酸化鉄粉を先に添加する必要がある。
【0054】
本発明を上述した実施の形態をもって詳細に説明してきたが、本発明の土壌改良方法は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、同様の効果を得ることができるものであれば、掘削部材は上述した形状に限らず、いかなる大きさ、螺旋状羽根の巻数、注入管の配設位置であっても良く、各容器もいかなる形状および構造であってもよい。また、鉄粉または酸化鉄粉、水、石膏系固化材の配合比は、土壌の含水比、浄化する土壌の質量、さらにはコストによって適切な値に設定することができる。圧縮空気供給装置およびスラリー供給装置の構成も、鉄粉または酸化鉄粉および石膏系固化材を水に分散させてスラリーとして、または、圧縮空気または窒素に分散させてガスとして適切に供給することができ、石膏系固化材を圧縮空気または窒素に分散させて適切に供給することができるのであれば、上記実施の形態に限定されるものではなく、その他いかなる構成でも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】AMP工法で使用される装置を例示した図。
【図2】本発明の土壌改良方法を実施する装置に用いられる掘削部材の例示した図。
【図3】本発明の土壌改良方法を実施する装置に用いられる圧縮空気供給装置およびスラリー供給装置を例示した図。
【図4】本発明の土壌改良方法を実施する装置を例示した図。
【符号の説明】
【0056】
1…軸体
2…切削部材
3…螺旋状羽根
4…掘削部材
5…支持手段
6…容器
7…注入材供給手段
8…注入材供給ライン
9…ロッド
10…走行手段
11…挟持手段
12…アーム
13…昇降手段
20…掘削部材
21、21a、21b…切削部材
22…軸体
22a…先導管
22b…中空部材
23…螺旋状羽根
24…突出部材
25、25a、25b…注入管
26…フランジ
30…圧縮空気供給装置
31…容器
32…圧縮空気供給手段
33…弁
34…圧縮空気供給ライン
35…連結部材
40…スラリー供給装置
41…水
42…鉄粉または酸化鉄粉
43…石膏系固化材
44…第1容器
45…第1撹拌手段
46…弁
47…第2容器
48…第2撹拌手段
49…スラリー供給手段
50…走行手段
51…ロッド
52…アーム
53…地面
54…挟持手段
55…昇降手段
60…掘削部材
61…軸体
62…螺旋状羽根
70…容器
71…圧縮空気供給手段
72…弁
73…ライン
80…第1容器
81…第1撹拌手段
82…弁
83…第2容器
84…第2撹拌手段
85…スラリー供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の軸体と、前記軸体の先端に設けられる切削部材と、前記軸体に周設される螺旋状羽根と、少なくとも1つの注入管とを備える掘削部材を回転可能に、かつ昇降可能に支持する支持手段により回転および降下させつつ、前記軸体の先端から石膏系固化材を含む圧縮空気または窒素を噴射させるステップと、
前記掘削部材を回転および上昇させつつ、前記少なくとも1つの注入管から該掘削部材周囲の前記土壌に向けて、水に鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを分散させたスラリー、または、圧縮空気または窒素に前記鉄粉または前記酸化鉄粉と前記石膏系固化材とを分散させたガスを噴射させるステップと、
前記螺旋状羽根の回転により前記土壌と前記スラリーまたは前記ガスとを混合するステップとを含む、土壌改良方法。
【請求項2】
前記石膏系固化材を含む圧縮空気または窒素を噴射させるステップは、前記少なくとも1つの注入管から石膏系固化材を含む圧縮空気または窒素を噴射させるステップを含む、請求項1に記載の土壌改良方法。
【請求項3】
前記掘削するステップでは、前記撹拌部材を所定方向に回転させて前記土壌の所定深さまで掘削するとともに該土壌を撹拌し、前記噴射させるステップおよび前記混合するステップでは、前記撹拌部材を前記所定方向とは逆方向に回転させて地表面に向けて上昇させるとともに、前記スラリーを噴射させ、かつ前記土壌を撹拌することを特徴とする、請求項1または2に記載の土壌改良方法。
【請求項4】
前記方法では、前記土壌1mに対して前記鉄粉を10〜100kg供給し、前記鉄粉の質量に対して1〜10倍の量の前記石膏系固化材を供給し、石膏系固化材を含む圧縮空気または窒素を噴射させるステップでは、前記石膏系固化材の供給量のうちの20〜50%を供給し、前記スラリーまたは前記ガスを噴射させるステップでは、前記石膏系固化材の供給量のうちの残りの50〜80%を供給することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の土壌改良方法。
【請求項5】
前記方法では、前記土壌1mに対して前記酸化鉄粉を15〜150kg供給し、前記酸化鉄粉の質量に対して1〜20倍の量の前記石膏系固化材を供給し、前記石膏系固化材を含む圧縮空気または窒素を噴射させるステップでは、前記石膏系固化材の供給量のうちの20〜50%を供給し、前記スラリーまたは前記ガスを噴射させるステップでは、前記石膏系固化材の供給量のうちの残りの50〜80%を供給することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の土壌改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−45999(P2006−45999A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231351(P2004−231351)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】