説明

圧力容器及び圧力容器の製造方法

【課題】生産性に優れ、エアポケットが生じない圧力容器を提供することにある。
【解決手段】本発明の圧力容器1は、インナータンク2と、口金4と、FRP層3とを具備する。インナータンク2は、ブロー成型によって形成された、合成樹脂からなる。口金4は、ブロー成型によってインナータンク2に接合される。FRP層3は、インナータンク2の外周に形成されたFRP層3であって、インナータンクの外周に巻回された繊維と繊維に含浸された光硬化性樹脂からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス等の貯留に用いる圧力容器及び当該圧力容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LPG(Liquefied petroleum gas)等の液化ガスの貯留に用いられる圧力容器は、その高い内圧に耐える必要があるため、従来金属製であった。しかしながら、金属製圧力容器は重量が大きく、軽量化が望まれていた。
【0003】
ここで、近年、FRP(Fiber Reinforced Plastics)製の圧力容器の開発が進んでいる。FRP製の圧力容器は軽量であることに加え、美観に優れ、耐腐食性が高く、また半透明であるため内容物の液面の視認が可能であり、さらに火災時において破裂しない等の利点がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、合成樹脂製のライナー上にFRP層が形成された圧力容器が開示されている。この圧力容器は、ライナーに金属製の口金が嵌め込まれ、その上からフィラメントが巻回され、さらに当該フィラメントに合成樹脂が含浸されることによって作成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−161590号公報(段落[0017]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のような圧力容器は、ライナーを作成した後に口金を嵌めこむ工程が必要であり、必然的に口金の支持構造がライナー内部に突出する構造となる。このため、圧力容器の水密検査の際にこの突出部分により生じるエアポケットによって検査されない部分が生じるという問題があった。また、ライナーの作製工程と口金の接続工程が別であるため、生産性が低いという問題もあった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、生産性に優れ、エアポケットが生じない圧力容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る圧力容器は、インナータンクと、口金と、FRP層とを具備する。
上記インナータンクは、ブロー成型によって形成された、合成樹脂からなる。
上記口金は、上記ブロー成型によって上記インナータンクに接合される。
上記FRP層は、上記インナータンクの外周に形成されたFRP層であって、上記インナータンクの外周に巻回された繊維と上記繊維に含浸された光硬化性樹脂からなる。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る圧力容器の製造方法は、ブロー成型によって口金が接合されたインナータンクを成型する。
繊維は、上記インナータンクの外周に巻回される。
光硬化性樹脂は、上記繊維に含浸される
上記光硬化性樹脂は硬化される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る圧力容器の平面図である。
【図2】同圧力容器の断面図である。
【図3】同圧力容器のインナータンクの平面図である。
【図4】同圧力容器のインナータンクの断面図である。
【図5】同圧力容器のインナータンクのポート部近傍の断面図である。
【図6】同圧力容器のインナータンクのポート部近傍の斜視図である。
【図7】同圧力容器のFRP層の層構造を示す断面図である。
【図8】同圧力容器の口金の斜視図である。
【図9】同圧力容器の口金の断面図である。
【図10】同圧力容器の、インナータンクに装着された口金を示す断面図である
【図11】同圧力容器のバルブの平面図である。
【図12】同圧力容器の、口金に装着されたバルブの平面図である。
【図13】同圧力容器の口金インサート成型の模式図である。
【図14】同圧力容器の口金インサート成型の模式図である。
【図15】同圧力容器のインナータンクへの繊維の巻回の様子を示す模式図である。
【図16】本実施形態に係るアウターケースの斜視図である。
【図17】同アウターケースの分解斜視図である。
【図18】同アウターケースの胴体部材の斜視図である。
【図19】同アウターケースの胴体部材の分解斜視図である。
【図20】同アウターケースの上部部材の斜視図である。
【図21】同アウターケースの下部部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の位置実施形態に係る圧力容器は、インナータンクと、口金と、FRP層とを具備する。
上記インナータンクは、ブロー成型によって形成された、合成樹脂からなる。
上記口金は、上記ブロー成型によって上記インナータンクに接合される。
上記FRP層は、上記インナータンクの外周に形成されたFRP層であって、上記インナータンクの外周に巻回された繊維と上記繊維に含浸された光硬化性樹脂からなる。
【0012】
この構成によれば、インナータンクの成型と口金のインナータンクへの接合を同時に行うことが可能であり、インナータンクの成型後に口金をインナータンクへ接合する場合に比べて少ない工程で圧力容器を製造することが可能である。また、口金の支持構造がインナータンクの内部に突出せず、エアポケットの発生を防止することが可能である。さらに、FRP層を構成する樹脂を光硬化性樹脂とすることにより、当該樹脂を硬化させるための熱硬化炉等が不要となり、生産性に優れる。
【0013】
上記FRP層は、上記繊維と共に巻回されたICタグを有してもよい。同様に上記アウターケースにもICタグを有してもよい。
【0014】
この構成によれば、FRP層の形成と同時にICタグを圧力容器に埋め込むことが可能である。圧力容器とアウターケースのそれぞれに設けられたICタグにより、圧力容器及びアウターケースのそれぞれの諸元(使用期限、材質、重量データ等)を個別にICにより管理・確認することができる。また、圧力容器とアウターケースのそれぞれに設けられたICタグを利用して、圧力容器とアウターケースの同期(容器検査等でアウターケースの取り外しを行った際に、元々の圧力容器とアウターケースの組合わせが容器番号により確認できること)が可能となる。
【0015】
上記FRP層は、上記インナータンク上に上記繊維がフープ状に巻回された内フープ層と、上記内フープ層上に上記繊維がヘリカル状に形成されたヘリカル層と、上記ヘリカル層上に上記繊維がフープ状に巻回された外フープ層とを有してもよい。
【0016】
この構成によれば、FRP層における繊維破断を防止し、耐圧性、耐久性、耐衝撃性に優れた圧力容器とすることが可能である。
【0017】
上記FRP層には、紫外線劣化防止材が添加されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、FRP層の紫外線劣化による長期的な耐久性の低下を防止することが可能となる。
【0019】
上記FRP層には、ガス透過防止材が添加されていてもよい。
【0020】
この構成によれば、FRP層によって圧力容器の内容物の圧力容器外への透過を防止することが可能となる。
【0021】
本発明の実施形態に係る圧力容器の製造方法は、ブロー成型によって口金が接合されたインナータンクを成型する。
繊維は、上記インナータンクの外周に巻回される。
光硬化性樹脂は、上記繊維に含浸される
上記光硬化性樹脂は硬化される。
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
<圧力容器の構成>
本発明の一実施形態に係る圧力容器の構成について説明する。
図1は圧力容器1の平面図であり、図2は圧力容器2の断面図である。
【0024】
圧力容器1は、LPG(Liquefied petroleum gas)等の液化ガス、あるいはCNG(Compressed Natural Gas)、水素ガス等の高圧ガスを圧力を維持したまま貯留することが可能な容器である。以下、圧力容器1に貯留される物質を「内容物」とする。圧力容器1の大きさや形状は、内容物、用途等に応じて適宜変更される。
【0025】
図1及び図2に示すように、圧力容器1はインナータンク2、FRP層3、口金4及びバルブ5を有する。インナータンク2の外周にFRP層3が形成され、口金4はインナータンク2に装着され、バルブ5が取り付けられている。また、FRP層3には、IC(Integrated Circuit)タグ30が埋め込まれている。
【0026】
インナータンク2は、圧力容器1の内壁面を構成する。図3はインナータンク2の平面図であり、図4はインナータンク2の断面図である。なお、実際には、インナータンク2は口金4を装着した状態で成型されており、インナータンク2を破壊せずに口金4を分離することはできないが、ここでは便宜上インナータンク2のみを示す。
【0027】
図3及び図4に示すように、インナータンク2は、タンク本体部2a、ポート部2b、及び臍部2cを有する。ポート部2bはタンク本体部2aの一端に形成され、臍部2cはタンク本体部2aの、ポート部2bと反対側の端部に形成されている。
【0028】
図3及び図4に示すように、タンク本体部2aは、円筒形状を有する円筒部2dと、円筒部2dと同一の半径を有する半球部2eを有し、円筒部2dの両端に半球部2eがそれぞれ連続する形状に形成することができる。タンク本体部2aの形状は特に限定されないが、後述するFRP層3の形成に適する形状が好適である。
【0029】
ポート部2bは、インナータンク2の内部と外部を連通する開口を形成する。図5はインナータンク2のポート部2bの近傍の断面図であり、図6はポート部2bの近傍の斜視図である。図5及び図6に示すように、ポート部2bはタンク本体部2aと連続する筒状のネック部分2fを有する。ネック部分2fの筒内は、インナータンク2の外部に連通しており、ネック部分2fの端部にインナータンク2の内部と外部が連通する開口2gが形成されている。
【0030】
開口2gの周縁には、後述するガスケットを支持するためのガスケット支持部2hが設けられており、さらにその周縁には、ネック部分2fに連続するフランジ形状のフランジ部分2iが形成されている。
【0031】
ネック部分2fは、タンク本体部2a側の径が小さいテーパー形状とすることができる。これは、後述するFRP層3を形成する際の便宜のためである。フランジ部分2iは、ポート部2bにバルブ5が取り付けられる際にバルブ5に当接する部分である。フランジ部分2iは、図6に示すように六角形板状とすることができ、また、これ以外の形状であってもよい。
【0032】
臍部2cは、タンク本体部2aから突出した部分であり、インナータンク2の内部とは連通していない。臍部2cは、後述するインナータンクの製造方法に起因して形成される構造である。
【0033】
以上のような構成を有するインナータンク2は、ブロー成型によって製造することが可能である。インナータンク2の製造方法については後述する。インナータンク2は、例えば高密度ポリエチレン(HDPE;High Density Polyethylene)からなるものとすることができる。また、この他にも各種合成樹脂からなるものとすることができる。以下、インナータンク2の原料である合成樹脂を、「原料樹脂」とする。原料樹脂としては、ブロー成型に適し(熱可塑性が有り)、内容物に対して耐腐食が有り、光透過性(半透明性)がある材料が好適である。
【0034】
FRP層3は、インナータンク2の外周を被覆する繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)からなる層である。FRP層3は、インナータンク2の外周においてポート部2bの先端部分及び臍部2の先端部分を除いて形成されている。
【0035】
FRP層3は、インナータンク2の外周を被覆することにより、インナータンク2を補強し、耐圧性を維持する。FRP層3は、インナータンク2の外周に巻回された繊維(ガラス繊維、カーボン繊維等)に合成樹脂を含浸させることによって形成することができる。以下、含浸される合成樹脂を「含浸樹脂」とする。FRP層3を構成する繊維の巻回は、後述するFW(Filament Winding)法によってすることができる。
【0036】
FRP層3は、部分的に複数の層が積層されて構成されている。図7は、FRP層3の層構造を示す断面図である。同図に示すように、FRP層3は、ヘリカル層3a、内フープ層3b及び外フープ層3cを有する。
【0037】
ヘリカル層3aは、繊維がヘリカル状(螺旋状)に巻回された層であり、内フープ層3b及び外フープ層3cは、繊維がフープ状(円周状)に巻回された層である。ヘリカル層3aは、インナータンク2の円筒部2d及び半球部2e上に形成され、内フープ層3b及び外フープ層3cは、円筒部2d上に形成されている。円筒部2d上において、内フープ層3b、ヘリカル層3a及び外フープ層3cはこの順に積層されている。FRP層3をこのような構成とすることにより、FRP層3における繊維破断を防止し、耐圧性、耐久性、耐衝撃性に優れた圧力容器とすることが可能である。
【0038】
FRP層3を構成する繊維の種類は特に限定されないが、強度が高いものが好適である。FRP層3を構成する含浸樹脂は、インナータンク2に巻回された繊維を固定し、繊維と共にFRP層3の強度を維持する。含浸樹脂の種類は特に限定されないが、強度が高いものが好適である。
【0039】
ここで、含浸樹脂を、光硬化性樹脂(例えば、光硬化ビニールエステル樹脂)とすることにより光の照射により含浸樹脂を硬化させることが可能となり、熱硬化性樹脂の場合よりも硬化工程が短縮され、熱硬化炉も不要となる。さらに、含浸樹脂に紫外線劣化防止材を添加することにより、FRP層3の紫外線劣化による長期的な耐久性の低下を防止することが可能であり、含浸樹脂にガス透過防止材を添加することにより内容物の透過を防止することが可能となる。
【0040】
口金4は、バルブ5をインナータンク2に装着するための部材である。図8は口金4の斜視図であり、図9は口金4の断面図である。これらの図に示すように、口金4は、筒状の筒状部4aと、筒状部4aの端部から円板状に広がる板状部4bとを有する。
【0041】
筒状部4aの外周面には、筒の軸方向に沿った複数の係合溝4cと、筒の周方向に沿った係合溝4dが形成されている。係合溝4c及び係合溝4dの本数は図に示すものに限られず、適宜変更することができる。筒上部4a内周面には、バルブ5に螺合するネジ溝が形成されている。
【0042】
板状部4bは、筒状部4aの外周面に連続する上面と、その反対側の下面を有する。上面は、筒上部4aの外周面に滑らかなアールによって連続するように形成されている。下面は、フラットな平面状に形成されている。
【0043】
口金4は、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属からなるものとすることができる。口金4の、筒状部4aの外周面及び板上部4bの上面には、合成樹脂コーティングが施されている。この合成樹脂は口金4をインナータンク2に接着するためのものであり、以下「接着樹脂」とする。接着樹脂は、例えば変性ポリエチレンとすることができる。変性ポリエチレンは、ポリエチレンに官能基を導入して接着性を付与したものである。
【0044】
なお、インナータンク2の原料である原料樹脂を、上記変性ポリエチレンとすることも可能である。この場合、インナータンク2と口金4の間で接着性があるため、口金4への接着樹脂の塗布が不要となる。
【0045】
図10は、インナータンク2に装着された口金4を示す断面図である。同図に示すように、筒状部4aの外周面及び板状部4bの上面(以下、これらの面を接合面とする)がインナータンク2に当接し、接着樹脂を介してインナータンク2に接合されている。同図に示すように、口金4に設けられている係合溝4c及び係合溝4dに、接着樹脂及びインナータンク2を構成する原料樹脂が流入して硬化し、口金4がインナータンク2に固定される。本実施形態に係るインナータンク2では、口金4によってポート部2b近傍の内壁が補強されているため、当該部分の厚みを他の部分より薄くし、軽量化を図ることができる。
【0046】
図10に示すように、口金4はインナータンク2の内壁から突出しておらず、エアポケットの発生は防止されている。
【0047】
バルブ5は、内容物のインナータンク2への充填及びインナータンク2からの取り出しに用いられる。図11は、バルブ5を示す平面図である。バルブ5は、外部接続口5a、内部接続口5b、ハンドル5c、螺合部5d、ガスケット係合部5e及び2本のOリング用溝5fを有する。
【0048】
外部接続口5aは、バルブ5が口金4に装着された際に圧力容器1の外部に位置する接続口であり、内部接続口5aは、バルブ5が口金4に装着された際に圧力容器1の内部に位置する接続口である。外部接続口5aと内部接続口5bは連通しており、ハンドル5cの操作によって開閉可能に構成されている。
【0049】
螺合部5dは、口金4に螺合する部分であり、その外周には、口金4に螺合可能なネジ溝が形成されている。ガスケット係合部5eは、螺合部5dから所定の幅で突出するように形成されている。Oリング用溝5fは、Oリングが嵌め込まれる溝であり、バルブ5には2本が設けられている。即ち、バルブ5は、2本のOリングを装着することが可能に構成されている。
【0050】
バルブ5の構成はここに示すものに限られず、例えば複数の外部接続口を有するバルブとすることも可能である。
【0051】
図12は、口金4に装着されたバルブ5を示す平面図である。同図に示すように、バルブ5の螺合部5dが口金4の筒状部4aに螺合する。バルブ5の2本のOリング用溝5f(図11参照)には、それぞれOリング6が嵌め込まれ、筒状部4とバルブ5の間をシールする。2本のOリング6により確実なシールが可能である。
【0052】
また、インナータンク2のガスケット支持部2hと、バルブ5のガスケット係合部5eの間には、ガスケット7が挟み込まれている。ガスケット7により、仮にインナータンク2と口金4の接合面にインナータンク2の内容物が浸入した場合であっても、インナータンク2の外部への漏洩を防止することが可能となる。
【0053】
圧力容器1は、以上のような構成を有する。圧力容器1は、インナータンク2やFRP層3が合成樹脂からなるものであるため、金属容器に比べて軽量であり、美観に優れ、耐腐食性が高い。また、半透明であるため、内容物が液化ガスである場合には液面の視認が可能である。さらに火災に曝露された場合であっても破裂することが防止されている。
【0054】
<圧力容器の製造方法>
圧力容器1の製造方法について説明する。まず、インナータンク2の成型及びそれと同時に実施される口金4のインナータンク2への装着について説明する。以下、この口金4の装着を伴なうインナータンク2の成型を「口金インサート成型」と称する。図13及び図14は、口金インサート成型を示す模式図である。
【0055】
図13(a)に示すように、口金インサート成型では、金型10、押出機11、及びブローピン12を用いる。金型10は、インナータンク2の外形に一致する型であり、水平方向に分割可能に構成されている。押出機11は、環状の押出口を有し、インナータンク2の原料を押出可能に構成されている。押出機11は金型10の鉛直上方に配置されている。ブローピン11は、中空の筒状を有し、筒内から空気の噴出が可能に構成されている。ブローピン11は金型10の鉛直下方に配置されている。
【0056】
ブローピン12の先端には、口金4がセットされている。口金4は、筒上部4aの筒内にブローピン12が挿入され、板状部4bが鉛直上方となるようにセットされている。なお、口金4の接合面には予め接着樹脂が塗布されている。押出機11には、加熱により流動状態とされたインナータンク2の原料樹脂が供給されている。
【0057】
図13(b)に示すように、押出機11によって原料樹脂が金型10の間に筒状に押出される。原料樹脂が口金4の周囲に到達した時点で、図13(c)に示すように、分割されていた金型10が閉じられる。同時に、ブローピン12から空気が噴出される。この空気の圧力により、図14(a)に示すように、流動状態の原料樹脂が金型10に押圧され、成型される。なお、図3等に示す臍部2cは、金型10が閉じられた際に形成される。
【0058】
インナータンク2の成型と同時に、口金4がインナータンク2に押圧される。この際、口金4に塗布されている接着樹脂によって口金4とインナータンク2が接着される。さらに、原料樹脂が口金4に形成されている係合溝4c及び係合溝4dに流入する。図14(b)に示すように、原料樹脂が硬化した時点で金型10を開くことにより、口金4が装着されたインナータンク2が作製される。
【0059】
次に、上述のようにして作製された、インナータンク2(口金4を含む)の外周にFRP層3を形成する方法について説明する。まず、インナータンク2の外周に繊維が巻回される。図15は繊維の巻回の様子を示す模式図である。同図に示すようにインナータンク2はシャフト13に固定される。シャフト13は、回転動力源に接続されており、接続されたインナータンク2を回転させることが可能なものである。シャフト13は例えば、インナータンク2のポート部2b及び臍部2cの周囲にそれぞれ接続される。シャフト13の接続態様は特に限定されない。
【0060】
図15(b)に示すように、インナータンク2がシャフト13によって回転され、繊維供給部14から供給される繊維Fがインナータンク2の外周に巻回される。繊維Fは、シャフト13による回転軸の角度や繊維供給部14の角度によって、巻回角度や巻回数が制御される。例えば、上述のように、フープ状(円周状)に巻回された後、ヘリカル状(螺旋状)に巻回され、再びフープ状に巻回するものとすることができる。繊維の巻回態様は、インナータンク2の大きさや形状、要求耐圧性能等に応じて適宜調整される。
【0061】
本実施形態に係るインナータンク2のネック部分2fは、タンク本体部2a側の径が小さいテーパー形状に形成されているため、ネック部分2fの根元部分における繊維Fの確実な巻回が可能である。また、繊維Fを巻回する際、インナータンク2上、又は巻回途中の繊維F上にICタグ30を載置して繊維Fを巻回させることにより、ICタグ30をFRP層3に埋め込むことが可能である。
【0062】
インナータンク2への繊維Fの巻回が完了した後、繊維Fに含浸樹脂を含浸させる。含浸樹脂の含浸方法は特に限定されず、塗布等によって含浸させることができる。含浸樹脂が硬化すると、FRP層3が形成される。上述のように含浸樹脂が光硬化性樹脂であるので、光の照射によって含浸樹脂を硬化させることが可能である。
【0063】
FRP層2の形成後にバルブ5を口金4に螺合させることにより、圧力容器1が製造される。
【0064】
<アウターケースについて>
圧力容器1は、耐衝撃性を向上させるためのアウターケースに収容することが可能である。図16は圧力容器1が収容されたアウターケース20を示す斜視図であり、図17は同アウターケース20の分解斜視図である。
【0065】
これらの図に示すように、アウターケース20は、胴体部材21、上部部材22及び下部部材23の3つの部材によって構成されている。上部部材22及び下部部材23はそれぞれ胴体部材21に接続されている。胴体部材21、上部部材22及び下部部材23は、合成樹脂からなるものとすることができる。
【0066】
胴体部材21は、円筒形状を有し、圧力容器1の側面を覆う部材である。図18は胴体部材21を示す斜視図である。同図に示すように、胴体部材21には、上部部材22との接合に用いられるネジ孔21aと、下部部材23との接合に用いられるネジ孔21bが形成されている。
【0067】
ネジ孔21aは胴体部材21の一方の周縁に円周方向に複数が形成されており、ネジ孔21bは、胴体部材21の他方の周縁に、円周方向に複数が形成されている。ネジ孔21a及びネジ孔21bは、胴体部材21の内側となる位置に形成されており、胴体部材21が上部部材22及び下部部材23と接合されると、アウターケース20の外観に露出しない。
【0068】
また、胴体部材21には複数の開口21cが形成されている。本実施形態に係る圧力容器1(インナータンク2及びFERP層3)は合成樹脂からなるので光透過性を有し、開口21cから圧力容器1内容物の液量を確認することが可能である。開口21cはその位置や形状は任意であり、液量の確認が可能な範囲を確保できる形状とすることができる。
【0069】
胴体部材21は、二つの半円筒形状の部材が接合されて形成されるものとすることができる。図19は胴体部材21の分解斜視図である。同図に示すように、胴体部材21は第1部材21d及び第2部材22eが接合されて形成されている。
【0070】
第1部材21d及び第2部材21eには、互いを接合するためのネジ孔21fが形成されている。ネジ孔21fは、第1部材21d及び第2部材21eから互いに向かって形成されている。ネジ孔21fは、第1部材21d及び第2部材21eの内側となる位置に形成されており、第1部材21d及び第2部材eが互いに接合されると、アウターケース20の外観に露出しない。
【0071】
上部部材22は、圧力容器1の上部を覆う部材である。図20は上部部材22を示す斜視図である。同図に示すように、上部部材22には、圧力容器1の運搬に用いられる取っ手22a、バルブ5のための切り欠き22及び胴体部材21のネジ孔21aに対応するネジ孔22cが設けられている。また、上部部材22にはICタグ31が埋め込まれている。
【0072】
さらに上部部材22は、その上面に表示部材24を取り付け可能に構成されている。表示部材24は合成樹脂からなり、圧力容器1に充填されている内容物の種類、充填量、充填年月日、充填圧力等の情報が例えば、凹凸に成型されて表示されている。
【0073】
下部部材23は、圧力容器1の下部を覆う部材である。図21は下部部材23を示す斜視図である。同図に示すように、下部部材23には、圧力容器1を支持するための圧力容器支持部23aと胴体部材21のネジ孔21bに対応するネジ孔23aが設けられている。
【0074】
<ICタグについて>
上述のように、圧力容器1にはICタグ30が埋め込まれ、アウターケース20にはICタグ31が埋め込まれている。これらのICタグは、RFID(Radio Frequency Identification)によりICタグ読取装置を通信をすることが可能なものである。本実施形態では、圧力容器1とアウターケース20は分解可能であるが、圧力容器1の内容部物の情報(内容物の種類、充填年月日等)はアウターケース20に表示されている。したがって、圧力容器1とアウターケース20は対応している必要があるが、ICタグによりこの対応を確保することができる。
【0075】
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更され得る。
【符号の説明】
【0076】
1…圧力容器
2…インナータンク
3…FRP層
4…口金
5…バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成型によって形成された、合成樹脂からなるインナータンクと、
前記ブロー成型によって前記インナータンクに接合された口金と、
前記インナータンクの外周に形成されたFRP層であって、前記インナータンクの外周に巻回された繊維と前記繊維に含浸された光硬化性樹脂からなるFRP層と
を具備する圧力容器。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力容器であって、
前記FRP層は、前記繊維と共に巻回されたICタグを有する
圧力容器。
【請求項3】
請求項2に記載の圧力容器であって、
前記FRP層は、前記インナータンク上に前記繊維がフープ状に巻回された内フープ層と、前記内フープ層上に前記繊維がヘリカル状に形成されたヘリカル層と、前記ヘリカル層上に前記繊維がフープ状に巻回された外フープ層とを有する
圧力容器。
【請求項4】
請求項3に記載の圧力容器であって、
前記FRP層には、紫外線劣化防止材が添加されている
圧力容器。
【請求項5】
請求項3に記載の圧力容器であって、
前記FRP層には、ガス透過防止材が添加されている
圧力容器。
【請求項6】
ブロー成型によって口金が接合されたインナータンクを成型し、
前記インナータンクの外周に繊維を巻回させ、
前記繊維に光硬化性樹脂を含浸させ、
前記光硬化製樹脂を硬化させる
圧力容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−202479(P2012−202479A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67500(P2011−67500)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(511078174)中国工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】