説明

圧力調整弁

【課題】ダイヤフラムに連結されたシール部材により1次側流体と2次側流体との接続部を開閉する圧力調整弁において、シール部材の振動を抑制することができる圧力調整弁を提供すること。
【解決手段】凹部18が形成された弁本体10と、弁座16と、凹部18の開口部18aを覆うように取付けられ、シール部材26と連結され、又は連動するダイヤフラム21と、ダイヤフラム21を凹部18側に付勢する付勢手段30とを備え、シール部材26が接続部15を開閉する圧力調整弁1であって、弾性部材と、前記付勢手段30の移動部側に設けられ、前記付勢手段30の軸線O1に垂直な面に対して傾斜して形成された第1の支持部と、前記弁本体10側に設けられ、前記軸線O1に垂直な面に対して傾斜して形成された第2の支持部とを備え、前記弾性部材が、前記第1の支持部と前記第2の支持部との間に配置される振動抑制手段50を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の圧力をダイヤフラムで検出し、ダイヤフラムに設けられたシール部材で、1次側流体と2次側流体との接続部を開閉することにより流体圧力を調整する圧力調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1次側流体の流入路と2次側流体の流出路との間に形成された凹部の開口部を覆うようにダイヤフラムを設け、凹部内の流体圧力に応じてダイヤフラムが変形し、ダイヤフラムに連結され、又は連動するシール部材が1次側流体と2次側流体との接続部に形成された弁座を開閉して、流体圧力を調整する圧力調整弁として、1次側流体の圧力を調整する背圧弁や2次側流体の圧力を調整する減圧弁が用いられている。(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−042291号公報
【特許文献2】特開平7−12245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように構成された圧力調整弁では、背圧弁において1次側流体の圧力が上昇した場合や、減圧弁において2次側流体の圧力が下降した場合に、ダイヤフラムが変形してシール部材が弁座の接続部を開放して流体が1次側から2次側に流通するようになっている。このように、ダイヤフラムを付勢している付勢手段の移動部が移動してシール部材が弁座から離間して移動する場合に、シール部材が軸線方向に往復する振動が発生する場合がある。
特に、付勢手段であるコイルスプリング等が共振した場合、シール部材が弁座を頻繁に開閉されて、流体の圧力に振動が生じて圧力が不安定になる場合やシール部材の破損が生じる場合がある。
そこで、付勢手段の移動部とともに往復運動する筒状体に、Oリング等の摺動部材を設け、この筒状体を弁本体内部に形成されたシリンダ内に配置するとともに、Oリングとシリンダ内周面との間に摺動摩擦を発生させることにより、付勢手段の移動部の振動を抑制し、その結果、シール部材の振動を抑制する技術が実用化されている。
【0004】
しかしながら、かかる技術を用いた場合、付勢手段の移動部の振動を十分に抑制することはできるが、弊害として、Oリングに生じる摺動摩擦の変化や長期間の休止により生じるOリングとシリンダとの固着により、圧力調整弁の作動が不安定になる場合があった。
そこで、弁本体の凹部の開口部を覆うように設けられたダイヤフラムが凹部内の流体の圧力によって変形し、ダイヤフラムに連結され、又は連動するシール部材が弁座を開閉する上記構成の圧力調整弁を対象として、シール部材が振動するのを抑制するとともに流体圧力の振動を抑制するための技術が求められていた。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、1次側流体の流入路と2次側流体の流出路との間に形成された凹部の開口部をダイヤフラムにより覆うように構成され、凹部内の流体圧力によりダイヤフラムが変形するとともに、ダイヤフラムに連結され、又は連動するシール部材により弁座に形成された1次側流体と2次側流体との接続部を開閉する圧力調整弁において、シール部材の振動を抑制するとともにシール部材をスムースに作動させることで、流体圧力を安定させることができる圧力調整弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1記載の発明は、1次側流体の流入路及び2次側流体の流出路を有するとともに前記流入路と前記流出路との間に凹部が形成された弁本体と、前記1次側流体と前記2次側流体との接続部を構成する弁座と、前記凹部の開口部を覆うように取付けられたダイヤフラムと、前記ダイヤフラムに連結され、又は連動するシール部材と、前記ダイヤフラムを前記凹部側に付勢する付勢手段とを備え、前記シール部材が前記弁座から離間し、又は前記弁座に当接して前記接続部を開閉することにより流体の圧力を調整する圧力調整弁であって、前記シール部材の振動抑制手段を備え、該振動抑制手段は、弾性部材と、前記付勢手段の移動部側に設けられ、前記付勢手段の軸線に垂直な面に対して傾斜して形成された第1の支持部と、前記弁本体側に設けられ、前記軸線に垂直な面に対して傾斜して形成された第2の支持部とを備え、前記弾性部材は、前記第1の支持部と前記第2の支持部との間に配置される構成とされ、前記シール部材が前記弁座から離間する際に、前記第1の支持部が前記弾性部材と接触する第1の接触部と、前記第2の支持部が前記弾性部材と接触する第2の接触部とが形成されることを特徴とする。
【0007】
この発明に係る圧力調整弁によれば、弾性部材が、前記付勢手段の移動部側に設けられ、前記付勢手段の軸線に垂直な面に対して傾斜して形成された第1の支持部と、前記弁本体側に設けられ、前記軸線に垂直な面に対して傾斜して形成された第2の支持部との間に配置されているので、シール部材が弁座から離間する際に弾性部材が受ける前記軸線方向の力は、前記第1の接触部及び第2の接触部において、各接触部に対して垂直な方向の力と、各接触部の接線方向の力とに分散され、該垂直な方向の力によって弾性部材に生じる圧縮変形は、シール部材の移動量に比較すると小さくなる。
また、弾性部材は、圧縮変形されるとともに前記接線方向の力によって大きく変形されるので、振動エネルギーが効率的に減衰され、シール部材の振動が抑制される。その結果、圧力調整弁に生じる流体圧力の振動が抑制される。
また、弾性部材に摺動がほとんど発生しないので、弾性部材への摩耗がほとんど生じることがない。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の圧力調整弁であって、前記弾性部材は、前記軸線と同心に配置され、前記第1の接触部と前記第2の接触部とは、前記軸線からの距離と前記軸線方向位置とが、ともに異なることを特徴とする。
【0009】
この発明に係る圧力調整弁によれば、付勢手段の移動部と弁本体の間に設けられた弾性部材が、付勢手段の軸線に対して同心に配置されているので、シール部材は、前記軸線方向に安定して移動させられる。
また、第1の接触部と第2の接触部とは、軸線からの距離と軸線方向位置とが、ともに異なるので、シール部材が弁座から離間する際に弾性部材に生じる圧縮変形と前記接線方向の力による変形を大きくすることができ、振動エネルギーを効率的に減衰させてシール部材の振動が抑制される。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の圧力調整弁であって、前記弾性部材は、前記軸線と同心に配置された環状弾性部材とされることを特徴とする
【0011】
この発明に係る圧力調整弁によれば、弾性部材が環状弾性部材とされるので、軸線に対して同心に容易に配置可能とされ、また、シール部材が軸線方向に移動する際に安定した変形が可能とされる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の圧力調整弁であって、前記環状弾性部材は、Oリングであることを特徴とする。
【0013】
この発明に係る圧力調整弁によれば、環状弾性部材がOリングとされていて、付勢手段の軸線を含む断面の形状が円形とされているので、前記シール部材が前記弁座から離間する際に、安定した変形を行なわせて振動エネルギーを効率的に減衰可能とする。
また、環状弾性部材がOリングであるため、入手が容易かつ低コストである。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧力調整弁であって、前記シール部材が前記弁座から離間する際に、前記弾性部材の前記付勢手段の軸線を含む断面に、回転モーメントが生じることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る圧力調整弁によれば、シール部材が弁座から離間する際に、弾性部材の前記軸線を含む断面に回転モーメントが生じ、前記軸線を中心として環状に形成される弾性部材のモーメント中心廻りに弾性部材が回転して、弾性部材が捲られるように大きく変形されるので、振動エネルギーが効率的に減衰されシール部材の振動が抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る圧力調整弁によれば、シール部材が弁座から離間する際に生じる振動エネルギーを、効率的に減衰させることによりシール部材に生じる振動を抑制することができる。また、その結果、流体圧力の振動を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る圧力調整弁を示す図であり、符号1は減圧弁(圧力調整弁)を示している。以下、図1から図4に基づいて、減圧弁1について説明する。図1から図4は、付勢手段30の軸線O1を含む断面の縦断面図である。
減圧弁1は、図1に示すように、弁本体10と、1次側流体と2次側流体との接続部15を構成する弁座16と、弁本体10に形成された凹部18の開口部18aを覆うように取付けられたダイヤフラム21と、ダイヤフラム21にロッド24を介して連結され、又は連動する弁体25と、ダイヤフラム21を凹部18側に付勢する付勢手段30とを備えており、凹部18内の2次側流体の圧力によって、ダイヤフラム21が付勢手段の軸線方向に変位することによって、弁体25に設けられたシール部材26が弁座16のシール部16aを開閉して2次側流体の圧力が調整されるようになっている。
また、減圧弁1は、シール部材26がシール部16aに密着して接続部15を開閉する際に、シール部材26が付勢手段30の振動にともなって振動するのを抑制する振動抑制手段50を備えている。
【0018】
弁本体10は、流路部材11とキャップ40とから構成されており、流路部材11は、1次側流体が流入する流入路12と、2次側流体が流出する流出路14とを備え、流路部材11の一方端側には、凹部18が形成されている。
【0019】
流入路12は、一方端が流路部材11の外部に連通される第1の流入路12aと、凹部18の底面側に形成され、第1の流入路12aの他方端に連通される第2の流入路12bとから構成されている。
流出路14は、一方端が流路部材11の外部に連通されるとともに、他方端は凹部18に連通されている。
また、流入路12及び流出路14の先端側は、流路部材11の外部に延在する配管を有しており、これら配管には接続金具が設けられ、外部の配管等に接続可能とされている。
【0020】
弁座16は、シール部16aと、凹部18側から第2の流入路12b側に延在する接続流路16bとを備えており、外周面に形成されたネジによって第2の流入路12bの内周面に密封状態にて螺着されることで、第2の流入路12bと凹部18とは、接続流路16bのみによって連通され、シール部16aには、1次側流体と2次側流体との接続部15が形成されている。第1の実施の形態において、シール部16aは、弁座16の第2の流入路12b側に形成されている。
【0021】
ダイヤフラム21は、弾力性のある円形平板状の金属板で、平板状の面に垂直な方向に移動自在とされ、中央部に弁体25と連結され、又は連動するためのロッド24が設けられるとともに、外周縁部が流路部材11及びキャップ40によって挟持されて、流路部材11の凹部18の開口部18aを覆うようになっている。なお、ロッド24については、ダイヤフラム21とシール部材26とを連結させる構成と、連結させずに連動する構成のいずれも選択可能である。
【0022】
弁体25は、第2の流入路12b内に配置されるとともにシール部材26を備えており、弁体25の底面には、弁座16の第2の流入路12bの底面側に配置されたシール用バネ17の一端が当接し、弁体25の作動が緩衝可能とされている。
【0023】
付勢手段30は、固定端側受皿32と、移動端側受皿34と、コイルスプリング35とを備えている。
固定端側受皿32は、小径凸部32aと、円錐形状の凹部32bとを備えており、小径凸部32aにはコイルスプリング35の固定端の内周が配置され、凹部32bは圧力調整ネジ61の凸部61aにより支持されている。
円錐形状の凹部32bと圧力調整ネジ61の凸部61aとは、点接触することで付勢手段30は揺動自在とされている。
【0024】
移動端側受皿34は、小径凸部34bを備えており、小径凸部34bの外周にはコイルスプリング35の移動端側の内周が配置され、移動端側受皿34の弁座16側の面には、ダイヤフラム21が配置されている。
【0025】
コイルスプリング35は、キャップ40のキャップ凹部41内に収納され、固定側端面35aが固定端側受皿32によって支持されるとともに、移動側端面35bが移動側受皿34に支持されている。
【0026】
キャップ40は、コイルスプリング35を収納する第1のキャップ凹部41を備えており、第1のキャップ凹部41の開口側には、第1のキャップ凹部41よりも大径とされる第2の凹部43が形成されている。
キャップ40の天面中央部には、付勢手段30の軸線O1と同心に雌ネジが形成され、その雌ネジに圧力調整ネジ61が螺合され、圧力調整ネジ61に接続されたハンドル62を回動することでコイルスプリング35の付勢力を変化させて、流出路14側の2次側流体が減圧弁1を作動させる圧力を調整可能としている。
【0027】
振動抑制手段50は、図2に示すように、付勢手段30の移動部側に配置された移動側受皿34に形成された第1の支持部34sと、弁本体11側のキャップ40のキャップ凹部43の内周面に設けられた軸線O1に垂直な面に対して角度θ2で傾斜して形成された第2の支持部40sと、Oリング(環状弾性部材)51とを備えている。
【0028】
第1の支持部34sは、移動側受皿34の外周に形成され、付勢手段30の固定端側から移動端側に向かうにつれて縮径されるとともに、付勢手段30の軸線O1に垂直な面と軸線O1側でなす角が角度θ1で傾斜する傾斜面として構成されている。
第2の支持部40sは、キャップ40の第2のキャップ凹部43の開口部43a近傍の内周面に形成され、キャップ凹部43の開口部43aに近づくにつれて内周面が縮径されるとともに、軸線O1に垂直な面と軸線O1の径方向外方でなす角が角度θ2で傾斜する傾斜面として構成されている。
【0029】
角度θ1、θ2は、それぞれ20°以上70°以下が好適とされ、第1の実施形態において、角度θ1と角度θ2とは、それぞれ45°で同一とされている。
図3に示したのは、角度θ1、θ2が45°とし、Oリング51としてP−32(内径32mm、直径d=φ3.5mm)を使用した場合に、シール部材26が弁座16から0.8mm離間した際の、Oリング51の付勢手段30の軸線O1を含む断面(以下、断面Gという)における変形を示したものであり、この場合、圧縮変形量eは0.6mmとなる。
【0030】
角度θ1、θ2が20°以上とされると、Oリング51の圧縮変形量eが抑制され、圧縮変形量eがOリング51のつぶし代の許容範囲内とされることでOリング51の寿命が延長され、また、Oリング51の軸線O1を中心とした径方向の変形が抑制されることで、移動側受皿34の外周とキャップ40の内周面との間に必要とされる径方向のクリアランスを小さく抑えることが可能となるため、シール部材26が弁座16から離間する際の遊びを小さくしてシール部材26の軸線O1方向の移動が安定する。
【0031】
ここで、角度θ1、θ2が70°以下とされると、シール部材26が弁座16から離間する際に、Oリング51が、第1の支持部34sと第2の支持部40sを構成するいずれの傾斜面とも摺動することが抑制され、その結果、Oリング51に摺動による摩耗の発生が抑制され、その結果、Oリング51の寿命が延長される。
【0032】
Oリング51は、キャップ40の第2のキャップ凹部43内に周方向、軸線O1方向に、付勢手段30の軸線O1と同心、かつ軸線O1に対して垂直な面にわずかなクリアランスを持って移動自在に収納され、弁体25のシール部材26が弁座16から離間する際に、第1の支持部34s及び第2の支持部40sの双方に接触するように構成され、Oリング51と第1の支持部34sとの接触部である第1の接触部52と、Oリング51と第2の支持部40sとの接触部である第2の接触部53とは、軸線O1からの距離と、軸線O1方向の位置が異なるように構成されている。
また、Oリング51は、この実施の形態において、デュロメータ硬さ70°(JIS K6253)とされ、デュロメータ硬さ50°から90°の範囲が好適である。
第1の実施形態の減圧弁1は、弁本体10、弁座16、弁体25、シール部材26及び振動抑制部材50の軸線は、付勢手段30の軸線O1と同心に構成されている。
【0033】
次に、上記構成の減圧弁1の作用について説明する。
まず、流出路14側の2次側流体の圧力が所定の値以下の場合には、凹部18内の2次側流体がダイヤフラム21に与える力がコイルスプリング35の付勢力以下とされ、コイルスプリング35の付勢力によってダイヤフラム21が弁座16側に変形し、その結果、シール部材26が弁座16のシール部16aから離間されるとともに接続部15が開放されて1次側流体が流出路14側に流入する。
【0034】
1次側流体が流入路12から流出路14に流通して凹部18内の2次側流体の圧力が所定の圧力まで上昇すると、ダイヤフラム21がコイルスプリング35の付勢力に抗してコイルスプリング35が圧縮され、その結果、シール部材26が弁座16のシール部16aに密着されるとともに接続部15が閉塞されて1次側流体の流入が停止される。
【0035】
図4は、振動抑制手段50の作用を示す図であり、(a)には、シール部材26が弁座16から離間していないときの状態を、(b)には、シール部材26が弁座16から離間したときの状態を示すものである。
【0036】
シール部材26が弁座16から離間していないときは、図4(a)に示すように、Oリング51はキャップ凹部40の第2の支持部40sに支持されて、第1の支持部34sとの間に、わずかなクリアランスが形成されている。
シール部材26が弁座16から離間した場合は、Oリング51は、図4(b)に示すように、第1の接触部52及び第2の接触部53において、第1の支持部34s及び第2の支持部40sからの押圧力P1、押圧力P2により押圧、圧縮変形されて、Oリング51は図3に示すように、断面Gが楕円形状に変形される。
【0037】
また、図5(a)は、Oリング51を軸線O1方向から見た図であり、符号O2は、Oリング51を構成する環の中心線を、符号51aは、Oリング51の周方向の一部である微小区間を示したものであり、図5においては、説明を簡単にするために相当な周方向の長さとしているが、概念的には微小な区間を意味している。
図5(b)は、微小区間51aのうち、Oリング51が捲られた場合に軸線O1方向に変位する部位(凹部18の反対側に位置する略半分)の中心線O2方向の変形を示したものであり、図5(c)は、Oリング51が捲られた場合に軸線O1から離間する方向に変位する部位(凹部18側に位置する略半分)の中心線O2方向の変形を示したものである。
【0038】
押圧力P1、P2は、シール部材26が弁座16から離間する際に生じる、Oリング51と第1の接触部52、第2の接触部53における接線方向の分力に垂直な方向の力を示している。
また、Oリング51は、図3、図4に示すように、押圧力P1、P2の分力によって生じる回転モーメントM1によって中心線O2廻りに回動され、捲られるような変形が生じると推測され、この場合、Oリング51が捲られることによって、中心線O2は、矢印A方向に移動するとともに中心線O2の直径D1が縮径されると考えられる。
第1の実施形態において、中心線O2は、断面Gにおける、回転モーメントM1のモーメント中心を構成する。
【0039】
Oリング51が捲られることで軸線O1方向に変位する部位では、微小区間51aは、中心線O2方向に図5(b)の矢印Xで示すような圧縮変形が発生し、さらに、Oリング51の中心線O2が、第2の支持部40sを構成する傾斜面に沿って、図4(b)に示す矢印Aの方向に移動することで、Oリング51の中心線O2の直径D1が縮径されて矢印Y方向の圧縮変形が発生し、矢印Xと矢印Yによる大きな圧縮変形が発生すると考えられる。
【0040】
また、Oリング51が捲られて軸線O1から離間する方向に変位する部位では、微小区間51aは、中心線O2方向に図5(c)の矢印Xで示すような引張変形が発生し、Oリング51の中心線O2が、第2の支持部40sを構成する傾斜面に沿って、図4(b)に示す矢印Aの方向に移動することで、Oリング51の中心線O2の直径D1が縮径され、矢印Y方向の圧縮変形が発生し、矢印Xと矢印Yによる小さな圧縮変形又は引張変形が発生すると考えられる。
【0041】
その結果、Oリング51が、図3に示すような断面Gにおける形状変形と、図5(b)、(c)における圧縮、引張変形により3次元的に変形されることで、振動エネルギーを効率よく減衰させることが可能と推測される。
【0042】
第1の実施形態に係る減圧弁1によれば、2次側流体の圧力振動が抑制され、2次側流体の圧力を安定させることができる。
図9(a)は、第1の実施形態の減圧弁1の振動レベルと、流量Qの改善効果を示したものであり、実線で示した振動レベルV1、経過時間に対する流量Q1は、改善後の状態を示し、破線で示した振動レベルV2、経過時間に対する流量Q2は、改善前の状態を示している。これによると、減圧弁1に生じる振動はほとんどなくなり、流量Qに関する応答性が向上されている。
また、Oリング51に生じる圧縮変形量eが、シール部材26の移動量よりも小さくされるので、Oリング51のつぶし代の許容範囲内に設定し易く、また、Oリング51に摺動摩耗が生じにくいので、Oリング51の寿命が延長される。
【0043】
次に、この発明の第2の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る圧力調整弁を示す図であり、符号2は背圧弁(圧力調整弁)を示している。以下、図6から図8に基づいて、背圧弁2について説明する。図6から図8は、付勢手段30の軸線O1を含む断面の縦断面図であり、第2の実施の形態において、第1の実施形態と同一の構成に関しては、第1の実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0044】
背圧弁2は、図6に示すように、弁本体10と、1次側流体と2次側流体との接続部15を構成する弁座16と、弁本体10に形成された凹部18の開口部18aを覆うように取付けられたダイヤフラム21と、ダイヤフラム21に連結された弁体25と、ダイヤフラム21を凹部18側に付勢する付勢手段30とを備えており、ダイヤフラム21が、凹部18内の1次側流体の圧力によって、ダイヤフラム21が付勢手段の軸線方向に変位することによって、弁体25に設けられたシール部材26が弁座16のシール部16aを開閉して1次側流体の圧力が調整されるようになっており、また、振動抑制手段50を備えている。
【0045】
流入路12は、一方端が流路部材11の外部に連通されるとともに、他方端は凹部18に連通されている。
流出路14は、凹部18の底面側に形成された第1の流出路14aと、一方端が第1の流出路14aに連通され、他方端が流路部材11の外部に連通される第2の流出路14bとから構成されている。
【0046】
弁座16は、シール部16aと、凹部18側から第1の流出路14a側に延在する接続流路16bとを備えており、外周面に形成されたネジによって第1の流出路14aの内周面に密封状態にて螺着されることで、第1の流出路14aと凹部18とは、接続流路16bのみによって連通され、シール部16aには、1次側流体と2次側流体と接続部15が形成されるようになっている。
この実施の形態において、シール部16aは、弁座16のダイヤフラム21側に形成されている。
【0047】
ダイヤフラム21は、凹部18内において、ダイヤフラム21と弁座16との間に弁体25を保持するようになっており、弁体25は、ダイヤフラム21の中央に形成された孔に固定されるとともに、弁体25の先端には、放物体形状、又は球体形状の一部からなる支持凸部25aが形成され、支持凸部25aが移動端側受皿34の支持凹部34aに揺動自在に点接触するように支持されている。ここで、点接触とは、幾何学上定義される面積を有しない点に限られず、凸部と凹部の相対的な大きさ、配置等に基づいて、凸部と凹部とが揺動可能に接触する概念をさしている。
【0048】
第2の実施形態の付勢手段30は、第1の実施形態の付勢手段に加えて、付勢手段30の軸線O2が弁座16軸線と一致しない場合でもシール部材26が弁座16のシール部16aを安定して密封できるようにするための軸心調整手段45を備えており、軸心調整手段45は、弁体25の支持凸部25aと、弁体取付板33と、移動端側受皿34とから構成されている。
【0049】
弁体取付板33は、弁体25をダイヤフラム21の板面に対して垂直に固定するための部材であって、ダイヤフラム21のコイルスプリング35側の面に接する第1の壁部33aと、第1の壁部33aの中央部に形成され、弁体25をダイヤフラム21に対して垂直に保持する孔33bを備えており、孔33bに弁体25が嵌挿されることで、弁体25が変形をしていない時のダイヤフラム21の板面に垂直な方向に変位自在とされている。
【0050】
移動端側受皿34は、弁体25側の面に、弁体25の支持凸部25aと点接触可能な凹部34aが形成されるとともに、小径凸部34bの外周にコイルスプリング35の移動端側の内周が配置されコイルスプリング35の移動端側を支持している。
その結果、コイルスプリング35の固定側端面35aと移動側端面35bの平行度に関係なく、コイルスプリング35の伸縮方向が弁体25の移動方向と一致するようになっている。
【0051】
この第2の実施形態の振動抑制手段50では、第1の支持部33sが、移動側受皿34ではなく、付勢手段の移動部側の弁体取付板33の外周面に付勢手段30の移動端側から固定端側に向かって縮径して形成される傾斜面として構成されるとともに、第2の支持部40sが、第2のキャップ凹部43と第1のキャップ凹部41とが接続される、第2のキャップ凹部43の底部43b近傍に形成され、第2のキャップ凹部43の底部43bに近づくにつれて縮径される傾斜面として構成されている点で第1の実施形態と異なり、これら第1の支持部33s及び第2の支持部40sとOリング51との配置は、図7に示すとおりである。
【0052】
次に、上記構成の背圧弁2の作用について説明する。
まず、流入路12側の1次側流体の圧力が所定の値以上の場合には、凹部18内の1次側流体によりコイルスプリング35の付勢力に抗してダイヤフラム21がコイルスプリング35を圧縮することで、シール部材26が弁座16のシール部16aから離間して接続部15が開放されて1次側流体が流出路14側に流入する。
【0053】
1次側流体が流入路12から流出路14に流通することで、凹部18内の1次側流体の圧力が所定の圧力まで下降すると、1次側流体がダイヤフラム21に与える力がコイルスプリングの付勢力以下とされ、コイルスプリング35の付勢力によってダイヤフラム21が弁座16側に変形し、その結果、シール部材26が弁座16のシール部16aを押圧、密封するとともに接続部15が閉塞されて流体の流れが停止される。
【0054】
Oリング51は押圧力P3と押圧力P4により圧縮されて、第1の実施形態で示した図3の場合と同様に、断面Gが楕円形状に変形される。
また、図8に示すように、シール部材26が弁座16から離間する場合に、Oリング51が第1の接触部52及び第2の接触部53において、第1の支持部33s及び第2の支持部40sから押圧力P3、押圧力P4により押圧され、Oリング51は、断面Gにおいて、軸線O1方向及び軸線O1に垂直な方向に圧縮されるとともに、回転モーメントM2により、Oリング51が捲られる作用は、第1の実施形態の図4、図5に示した場合と同様に得られると推測される。
【0055】
Oリング51が捲られると、Oリング51は傾斜面53に沿って図8(b)で示した矢印Bで示される方向に移動し、Oリング51の環の直径D2が縮径されると考えられる。
第2の実施形態におけるOリング51の作用については、Oリング51の第1の接触部52及び第2の接触部53との位置関係にともない変形の方向が異なる以外は、第1の実施形態と同様であり、その結果、背圧弁2の1次側流体の圧力の振動が抑制され、1次側流体の圧力を安定させることができる。
【0056】
第2の実施形態に係る背圧弁2によれば、1次側流体の圧力振動が抑制され、1次側流体の圧力を安定させることができる。
図9(b)は、第2の実施形態の背圧弁2の振動レベルと、流量Qの改善効果を示したものであり、実線で示した振動レベルV3、経過時間に対する流量Q3は、改善後の状態を示し、破線で示した振動レベルV4、経過時間に対する流量Q4は、改善前の状態を示している。これによると、背圧弁2に生じる振動はほとんどなくなり、流量Qに関する応答性が向上されている。
【0057】
また、第2の実施形態の背圧弁2によれば、付勢手段30が、シール部材26が弁座16のシール部16aを安定して密封するための軸心調整手段45を備えているため、コイルスプリング35の固定側端面35aと移動側端面35bの相互の平行度に関わらず、シール部材26が弁座16を安定して押圧し、流体の吹き抜けを抑制するとともに流体圧力を安定して維持することができる。
【0058】
その結果、Oリング51の断面Gの形状がOリング51の周方向位置で偏って変形した場合であっても、シール部材26と、弁座16のシール部16aとの均一な接触が維持され、流体の安定した流通を維持することができる。
また、シール部26が弁座16に偏って密封するのが抑制されるので、1次側流体が流出路14側に吹き抜けるのが抑制され、1次側流体の圧力を安定させることができる。
また、弁体25のシール部材26が、弁座16に均一に接触するので、シール部材26の食込み変形深さが均一となり、変形や摩耗の偏りが抑制されることにより、シール部材26の寿命を延長することができる。
【0059】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
上記実施の形態においては、環状弾性部材としてOリング51を用いた場合について説明したが、環状弾性部材として、Oリング51に替えて、付勢手段30の軸線O1を含む断面の形状が、楕円形や、だるま型や、多角形等のものを用いてもよく、また、環状弾性部材の軸線O1を含む断面の形状や大きさが、環状弾性部材の周方向位置にともなって変化するように構成された環状弾性部材を用いてもよい。
【0060】
また、弾性部材は、環状弾性部材に限られるものではなく、例えば、軸線O1を含む断面が同形状とされる弾性部材を、軸線O1方向の同じ位置に、軸線O1を中心とした仮想円の周方向に複数、等間隔に配置させた構成としてもよく、また、例えば、弾性部材の軸線O1を含む断面における形状が、前記仮想円の周方向で変化する構成とすることも可能である。
【0061】
また、Oリング51を支持する第1の支持部33s、34s及び第2の支持部43sが軸線O1に垂直な面に対して同じ角度で傾斜し、対向する用に形成された傾斜面として形成される場合について説明したが、これら第1の支持部33s、34s及び第2の支持部43sは、付勢手段30の軸線O1を含む断面において、弾性部材と第1の接触部52との接線、及び弾性部材と第2の接触部53との接線が、軸線O1に垂直な面に対して傾斜していればよく、第1の支持部33s、34s及び第2の支持部43sのいずれかの軸線O1を含む断面の形状が、直線又は曲面から構成される凹部や凸部とされてもよく、また、第1の支持部33s、34sと第2の支持部43sの、軸線O1に垂直な面に対する角度が異なって形成されてもよい。
【0062】
また、上記背圧弁2又は減圧弁2で使用可能な流体としては、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、メタン、エチレン等の可燃性ガス、酸素等の支燃性ガス、塩素、二酸化硫黄等の腐食性ガスをはじめとする気体のほか、水、酸又はアルカリを含有する液体等、種々の流体を対象とすることができる。
【0063】
上記第2の実施の形態においては、付勢手段30が軸心調整手段45を備えた場合について説明したが、背圧弁2に関して、軸心調整手段45は必須の構成ではなく、また、かかる軸心調整手段45を減圧弁1に適用することも可能である。
【0064】
上記実施の形態においては、付勢手段30がコイルスプリング35により構成される場合について説明したが、付勢手段30については、円すい形等の他のコイルバネ、たけのこバネ、皿バネ、樹脂で形成された弾性部材等、伸縮方向の両側に端面を有するものであれば、種々の構成のものに適用可能である。
【0065】
ダイヤフラム21については、金属製の円板で構成された場合について説明したが、材質に関して、ステンレス鋼をはじめとする金属の他、ゴム膜や、合成樹脂膜等の弾力性を有する他の材質を用いることが可能であり、さらに、形状に関して、円板形状の平板に限定されず、例えば弁体25を中心としてダイヤフラム21に環状リブが形成されている場合や、あるいは球面等、立体的形状の一部を用いてダイヤフラム21が構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す全体の縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の振動抑制手段を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の作用を示す図であり、シール部材が弁座から離間した場合の弾性部材の変形状態を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の作用を示す図であり、(a)には、シール部材が弁座から離間していないときの状態を、(b)には、シール部材が弁座から離間したときの状態を示す。
【図5】本発明の第1の実施の形態の環状弾性部材示す図であり、(a)には、Oリングを、(b)には、Oリングが捲られて軸線O1方向に変位する部位の変形を、(c)には、Oリングが捲られて軸線O1から離間する方向に変位する部位の変形を示す。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す全体の縦断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の振動抑制手段を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の作用を示す図であり、(a)には、シール部材が弁座から離間していないときの状態を、(b)には、シール部材が弁座から離間したときの状態を示す。
【図9】本発明の効果を示す図であり、(a)には、第1の実施形態の効果を、(b)には、第2の実施形態の効果を示す。
【符号の説明】
【0067】
O1 (付勢手段の)軸線
G 軸線を含む断面
1 減圧弁(圧力調整弁)
2 背圧弁(圧力調整弁)
10 弁本体
11 流路部材(弁本体)
12 流入路
14 流出路
16 弁座
18 凹部
18a (凹部の)開口部
21 ダイヤフラム
26 シール部材
30 付勢手段
33 弁体取付板
34 移動側受皿
35 コイルスプリング
40 キャップ(弁本体)
50 振動抑制手段
51 Oリング(弾性部材、環状弾性部材)
52 第1の接触部
53 第2の接触部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側流体の流入路及び2次側流体の流出路を有するとともに前記流入路と前記流出路との間に凹部が形成された弁本体と、
前記1次側流体と前記2次側流体との接続部を構成する弁座と、
前記凹部の開口部を覆うように取付けられたダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムに連結され、又は連動するシール部材と、
前記ダイヤフラムを前記凹部側に付勢する付勢手段とを備え、
前記シール部材が前記弁座から離間し、又は前記弁座に当接して前記接続部を開閉することにより流体の圧力を調整する圧力調整弁であって、
前記シール部材の振動抑制手段を備え、
該振動抑制手段は、
弾性部材と、
前記付勢手段の移動部側に設けられ、前記付勢手段の軸線に垂直な面に対して傾斜して形成された第1の支持部と、
前記弁本体側に設けられ、前記軸線に垂直な面に対して傾斜して形成された第2の支持部とを備え、
前記弾性部材は、前記第1の支持部と前記第2の支持部との間に配置される構成とされ、
前記シール部材が前記弁座から離間する際に、
前記第1の支持部が前記弾性部材と接触する第1の接触部と、前記第2の支持部が前記弾性部材と接触する第2の接触部とが形成されることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項2】
請求項1記載の圧力調整弁であって、
前記弾性部材は、前記軸線と同心に配置され、
前記第1の接触部と前記第2の接触部とは、
前記軸線からの距離と前記軸線方向位置とが、ともに異なることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の圧力調整弁であって、
前記弾性部材は、前記軸線と同心に配置された環状弾性部材とされることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項4】
請求項3記載の圧力調整弁であって、
前記環状弾性部材は、Oリングであることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧力調整弁であって、
前記シール部材が前記弁座から離間する際に、
前記弾性部材の前記付勢手段の軸線を含む断面に、回転モーメントが生じることを特徴とする圧力調整弁。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−225085(P2007−225085A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49990(P2006−49990)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000150981)日酸TANAKA株式会社 (33)
【Fターム(参考)】