説明

圧力逃がし弁

【課題】レバーの操作性が改善された圧力逃がし弁を提供する。
【解決手段】圧力逃がし弁10は、配管に接続される本体20と、本体20内に開閉可能に配置される弁体29と、本体20外に操作可能に配置されるレバー60と、弁体29とレバー60との間に配置され、レバー60の操作に連動する第2軸部38とを備える。レバー60の操作によりその操作力が第2軸部38を介して弁体29に伝わることにより、弁体29が開弁される。レバー60側と本体20側の少なくとも一方には、他方に作用するばね力に基づいてレバー60を回転規制状態に保つストッパ62を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力逃がし弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧力逃がし弁が特許文献1に開示されている。このものは、貯湯式温水器のタンクから延びる配管に接続され、タンク内の圧力が上昇した場合にその圧力を逃がすためのものである。この圧力逃がし弁は、配管に接続される本体と、本体内に配置される弁体と、本体外に配置されるレバーと、弁体とレバーとの間に配置される軸部とを備えている。
【0003】
弁体は、常にはスプリングによって閉弁方向に付勢される一方、タンク内の圧力上昇を検知して開弁される。軸部は、軸方向に進退可能に配置され、本体外へ突出する端部にレバーが係合可能とされる。そして、レバーは、軸部の軸方向と直交する方向に沿った退避位置と、軸部の軸方向に沿った稼動位置との間を回動可能とされ、稼動位置にて軸部を進出方向に押圧して、弁体を強制的に開弁する。本体には、レバーの回動支点となる基端部を挟んだ両側に、一対の規制部が一体に突出して形成されている。レバーの回動軸は両規制部に支持されており、両規制部によってレバーが軸周りに回転するのが規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−138784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の圧力逃がし弁によれば、本体に対するレバーの向きを軸周りに変更できないため、レバーと干渉する位置に障害物があると、レバー側でこれを避けることができないという問題があった。また、レバーが作業者の手の届き難い方向を向いていると、レバーの操作自体に難渋する可能性があった。一方、上記とは逆にレバーが軸周りに回転自在な構成であると、レバーが操作途中で回転して操作性が悪いという事情があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、レバーの操作性が改善された圧力逃がし弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、配管に接続される本体と、前記本体内に開閉可能に配置される弁体と、前記本体外に操作可能に配置されるレバーと、前記弁体と前記レバーとの間に配置され、前記レバーの操作に連動する軸部とを備え、前記レバーの操作によりその操作力が前記軸部を介して前記弁体に伝わることにより、前記弁体が開弁される圧力逃がし弁において、前記レバー側と前記本体側の少なくとも一方には、他方にばね力を作用させる形態であって、前記レバーに対して前記軸部の軸周りに回転力を付与した場合に、前記ばね力が前記回転力を上回る範囲で前記レバーの回転を規制可能なストッパが設けられているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ストッパは、前記軸部の軸周り方向の複数位置にて前記レバーの回転を段階的に規制するところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記ストッパのばね力の作用方向は、前記レバーの操作方向と直交する向きとなる前記軸部の径方向に設定されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記本体には、前記軸部の周りを取り囲み、かつ外周が多角形状をなすストッパ受け部が設けられ、前記ストッパには、前記ストッパ受け部の外周における相対向する対辺を弾性的に挟持する一対の挟持片が設けられているところに特徴を有する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記一対の挟持片は、線状に形成されているところに特徴を有する。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記本体には、前記レバーを操作可能に支持するブラケットが取り付けられ、前記一対の挟持片は、前記ブラケットに一体に形成されているところに特徴を有する。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記本体には、前記軸部の周りを取り囲み、かつ外周に突部を有する前記ストッパが設けられ、前記レバー側には、前記ストッパに外嵌され、かつ内周に複数の凹部を有するストッパ受け部が設けられ、前記レバーの回転によって前記突部が前記凹部に弾性的に嵌ることにより、前記レバーの回転が規制されるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0014】
<請求項1の発明>
レバーに対してストッパのばね力を上回るような回転力を付与すると、レバーが軸周りに回転するため、本体に対するレバーの向きを状況に応じて適宜に変更できる。また変更後は、ストッパのばね力に基づいてレバーの回転が規制されるため、変更後の位置でレバーの操作を安定して行うことができる。したがって、本発明によれば、レバーの操作性が改善された圧力逃がし弁が提供される。
【0015】
<請求項2の発明>
ストッパが軸部の軸周り方向の複数位置にてレバーの回転を段階的に規制するため、レバーが軸周り方向の所定位置に節度感よく停止される。
【0016】
<請求項3の発明>
ストッパのばね力の作用方向がレバーの操作方向と直交する向きとなる軸部の径方向に設定されているから、ストッパのばね力がレバーの操作に悪影響を及ぼすのを回避できる。
【0017】
<請求項4の発明>
両挟持片がストッパ受け部の対辺を弾性的に挟持するため、ストッパが本体側に安定確実に保持される。
【0018】
<請求項5の発明>
両挟持片が線状に形成されているから、レバーに適宜な回転力を付与することにより、レバーの向きを円滑に変更することができる。
【0019】
<請求項6の発明>
両挟持片がレバーのブラケットに一体に形成されているため、ブラケットとは別に両挟持片を設けるよりも、部品点数及び組付工数が削減される。
【0020】
<請求項7の発明>
レバーの回転によってストッパの突部がストッパ受け部の凹部に弾性的に嵌ることにより、レバーの回転が規制されるため、ストッパ及びストッパ受け部の構成を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1の圧力逃がし弁の要部破断平面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】ストッパがストッパ受け部の周りを回転する状態を示す平面図
【図4】圧力逃がし弁の背面図
【図5】圧力逃がし弁の正面図
【図6】実施形態2の圧力逃がし弁の正面図
【図7】ストッパがストッパ受け部の周りを回転する状態を示す平面図
【図8】実施形態2の圧力逃がし弁において、ストッパ受け部がストッパの周りを回転する状態を示す平面図
【図9】突部が凹部に嵌合した状態を示す拡大断面図
【図10】実施形態3の圧力逃がし弁において、ストッパがストッパ受け部の周りを回転する状態を示す拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図5によって説明する。実施形態1の圧力逃がし弁10は、図示しない貯湯式温水器のタンクの上端から上方へ延びる給湯配管に接続されるものであって、タンク内の圧力上昇を検知してこれを大気に解放する役割をはたす。この圧力逃がし弁10は、本体20側の部材と、レバー60側の部材とによって構成されている。
【0023】
まず、本体20側の部材について説明する。本体20内には、図2に示すように、給湯配管に連通する流路21が形成され、流路21は流入側の第1室22と流出側の第2室23とに区画されている。また、本体20は合成樹脂製であって、第1室22側の第1ボディ24と第2室23側の第2ボディ25とからなり、両者の端縁同士を突き合わせた状態でボルト26の締め付けにより一体に固定されている。
第1ボディ24には、第1室22に連通するとともに、給湯配管に接続される円筒状の第1筒部27が突出して形成されている。また、第2ボディ25には、第2室23に連通するとともに、第1筒部27と略直交する向きに開口する円筒状の第2筒部28が突出して形成されている。第2筒部28には図示しない導出管が接続される。
【0024】
第1ボディ24と第2ボディ25との間には、弁体29、座部30、ダイヤフラム31が配置され、これらによって第1室22と第2室23との間が区画されている。弁体29は、円板状であって、第1筒部27の開口中心と同軸上に配置される棒状の第1軸部32の先端部に嵌着されている。第1軸部32は第1筒部27の開口中心に沿った軸方向に進退可能とされている。
【0025】
座部30は、弁体29よりも一回り大きい円環板状をなしている。座部30の第1室22側に臨む内周縁部には、弁体29が脱着可能とされている。弁体29が座部30に着座された状態は、第1室22と第2室23とが互いに連通しない閉弁状態であり、弁体29が座部30から離間した状態は、第1室22と第2室23とが互いに連通する開弁状態である。
【0026】
座部30の内周面には円環状の第1受け部33が嵌着されており、第1受け部33の内周面には第1軸部32が摺接可能に挿嵌されている。第1受け部33の第2室23側に臨む面には、弁体29を閉弁方向に付勢する第1ばね34の先端部が支持されている。
【0027】
座部30の第2室23側に臨む面にはダイヤフラム31の内周縁部が配置され、ダイヤフラム31の内周縁部は座部30とこれに対向する第2受け部35との間に挟着されている。また、ダイヤフラム31の外周縁部は第1ボディ24と第2ボディ25の両端縁間に挟着されている。第2受け部35の第2室23側に臨む面には、ダイヤフラム31を第1室22側に付勢する第2ばね36の先端部が支持されている。第2ばね36は第1ばね34を内包する大型のコイルスプリングとされる。
【0028】
第2ボディ25には、第1筒部27と同軸でかつ第1筒部27と反対側に開口する円筒状の第3筒部37が突出して形成されている。また、第2ボディ25には、第1軸部32と同軸上の位置に、第2軸部38が軸方向に進退可能に配置されている。第2軸部38は、第3筒部37内に嵌合される形態とされ、棒状の軸本体38Aと、軸本体38Aの外周面に螺着される筒状の軸本体受け部38Bとによって構成されている。軸本体38Aの先端部は、第3筒部37の底壁を貫通する案内孔39を通して第2室23内に臨み、第1軸部32又は第2軸部38の進退動作に伴い、第1軸部32の端部に接離可能とされている。軸本体38Aの基端部の外周面にはねじ部38Cが形成されており、ねじ部38Cが軸本体受け部38Bの内周面に螺合されている。よって、軸本体受け部38Bに対するねじ部38Cのねじ締め量を変更することで、軸本体38Aの第2室23内への突出量が調整される。
【0029】
軸本体受け部38Bは、第2ボディ25から外部に突出して配置され、その端部にレバー60が押圧可能とされている。軸本体受け部38Bと第3筒部37の底壁との間には、第2軸部38を第2室23から退避する向きに付勢する第3ばね40が配置されている。
【0030】
また、第3筒部37の基端部には、図1に示すように、後述するストッパ62を受けるストッパ受け部41が形成されている。言い換えればストッパ受け部41は、第2軸部38の周りを取り囲むように配置されている。ストッパ受け部41の外周面は、断面8角形状、詳細には断面正8角形状をなし、軸芯を挟んで相対向する各対辺にストッパ62が係合可能とされている。
【0031】
続いて、レバー60側の部材について説明する。レバー60側の部材は、レバー60と、レバー60を操作可能に支持するブラケット61と、ブラケット61に係着されるストッパ62とによって構成されている。レバー60とブラケット61とは金属製の板材を曲げ加工等して形成され、ストッパ62は金属製の線材を曲げ加工等して形成されている。
【0032】
ブラケット61は、矩形板状の基部63と、基部63の対辺から互いに略平行に立ち上がる一対の対向片64とによって構成されている。両対向片64の基端部には、ストッパ62が貫通する孔65が形成されている。また、両対向片64の先端部には、内側への屈曲によって基端部に比べて幅狭に対向する一対の支持片66が形成されている。
基部63の中央部には、第3筒部37の基端部が遊嵌状態で貫通する挿通孔67が形成されている。第3筒部37の外周面には第2ボディ25の端面との間に基部63を挟持する略C字状の止め輪68が嵌着されており、これによってブラケット61の第3筒部37からの抜け止めがなされる。
【0033】
レバー60は、図4及び図5に示すように、帯板状のレバー本体70と、レバー本体70の両側縁に沿って互いに略平行に立ち下がる一対の側片71とによって構成されている。レバー本体70の先端部には幅広の操作部72が形成され、ここを把持しつつレバー60の操作を行うことが可能とされている。両側片71を挟んだ両側には、ブラケット61の両支持片66が対向して配置され、両支持片66と両側片71とにはリベット73が貫通している。
【0034】
かかるレバー60は、リベット73を支軸として、軸方向と略直交しつつ第2筒部28と略平行に配置される第1位置(図1、図2、図4及び図5に示す位置)と、軸方向と同軸上に配置される第2位置との間を、軸方向と直交する面に沿って略90度の範囲で回動可能(傾動可能)とされている。第1位置では、レバー60は第2軸部38の端部に非接触とされ、第2軸部38の先端は第1軸部32の端部との間に隙間を開けている。第1位置から第2位置に向かう過程では、レバー60の傾動に伴ってレバー60の基端部(支軸側)が第2軸部38の端部を押圧し、第2軸部38が第3ばね40の付勢力に抗しつつ第1軸部32側に近づく。第2位置では、レバー60の基端部が第2軸部38の端部を正規深さで押し込み、第2軸部38の先端が第1軸部32の端部と接触して、第1軸部32を第1ばね34の付勢力に抗しつつ第1室22側に押圧する。これにより、弁体29が開弁して第1室22と第2室23とが互いに連通し、第1室22内ひいてはタンク内の圧力が開放される。
【0035】
さて、ストッパ62は、図3に示すように、全体として略門型線状をなし、連結片74と連結片74の両端から互いに略平行に突出する一対の挟持片75とによって構成されている。連結片74は、ブラケット61の一方の対向片64の背面に沿って配置され(図4を参照)、挟持片75は、その基端部及び先端部を孔65に貫通させつつ両対向片64間に架け渡して配置されている(図5を参照)。また、両挟持片75は、止め輪68を挟んでブラケット61の基部63と対向に配置されている。両挟持片75の先端部は外向きに屈曲されており、これによってストッパ62のブラケット61からの抜け止めがなされる。
【0036】
両挟持片75は、弾性変形可能とされ、自然状態では、両挟持片75間の距離はストッパ受け部41の対辺間の距離と同じか、または少し小さくされている。かかる両挟持片75は、第3筒部37のストッパ受け部41を径方向に弾性的に挟持する構成とされ、これによってストッパ62がストッパ受け部41に弾性的に保持され、ひいてはストッパ62にブラケット61を介して連結されるレバー60が第2軸部38の軸周りに回転するのが規制されている。換言すれば、レバー60は、ストッパ受け部41に対するストッパ62の弾性接触に基づく弾性摩擦力によって本体20側に回転規制状態に保持されている。
【0037】
次に、本実施形態の圧力逃がし弁10の作用について説明する。
給湯配管への組み付けが完了し、レバー60が第1位置に留め置かれた状態では、第1室22内の圧力がタンク内の圧力に等しくなる。このとき、弁体29は座部30に着座された閉弁状態に保たれる。また、弁体29は、第1室22内の圧力変化に応じて、第2ばね36の付勢力に抗しつつ、ダイヤフラム31、座部30、及び第1軸部32とともに軸方向に変位される。
【0038】
タンク内の圧力が高まって所定値を超えると、第1軸部32の端部が第2軸部38の先端と当接し、弁体29のそれ以上の変位が規制される。一方、この状態でもダイヤフラム31及び座部30の変位は継続されるため、弁体29と座部30との間に隙間が生じる。このため、第1室22側から第2室23側にタンク内の水蒸気等が流出され、水蒸気等が第2筒部28を通して大気に放出される結果、タンク内の圧力が正常範囲に保たれる。
【0039】
一方、手動によってタンク内の圧力を強制的に開放する必要がある場合には、レバー60を回動させて第1位置から第2位置に変位させる。すると、レバー60の基端部が第2軸部38の端部を押圧し、さらに第2軸部38の先端が第1軸部32の端部を押圧して、弁体29が第1筒部27側へ変位する。これにより、弁体29が開弁されて、上記同様、タンク内の水蒸気等が大気に放出される。
【0040】
ところで、レバー60が作業者の手の届き難い方向を向いていたり、周囲と干渉し得る方向を向いていたりする場合には、レバー60の位置を軸周りに変更するべく、レバー60に対して軸周り方向への回転力を付与する。この場合、回転力がストッパ62のばね力を下回るような範囲では、両挟持片75がストッパ受け部41の対辺を挟持する状態が保たれ、レバー60が軸周りに回転することはない。しかし、回転力がストッパ62のばね力を上回るようになると、両挟持片75がストッパ受け部41の対辺を挟持する状態が解除され、レバー60が軸周りに回転する。回転途中では、両挟持片75は、図3(B)に示すように、回転方向で隣接する対角に跨った状態でその基端部及び先端部を支点として弾性的に膨出変形される。その後、両挟持片75は、隣接する対辺側へ角変位してそこで弾性復帰し、その隣接する対辺を弾性的に挟持する。両挟持片75の弾性復帰に伴い、作業者にはロックフィーリングが得られ、そこで操作を終了することにより、ストッパ62がストッパ受け部41に対して軸周りに45度回転した位置に停止され、ひいてはレバー60が本体20に対して軸周りに45度回転した位置に停止される。またこのとき、ストッパ62のばね力を上回るような回転力がレバー60に継続して付与されていると、レバー60はさらに本体20に対して軸周りに回転する。したがって、レバー60は、自身に加わる回転力に応じて軸周りに45度間隔で段階的に回転し、これによってストッパ受け部41の対辺数に応じた軸周りに4通りの配設パターンを示すこととなる。なお、レバー60の位置変更後、ストッパ62がストッパ受け部41を弾性的に保持することでレバー60の回転が規制されるため、変更後の位置でレバー60の操作を安定して行うことができる。
【0041】
以上説明したように本実施形態によれば、レバー60に対してストッパ62のばね力を上回るような回転力を付与した場合に、レバー60が軸周りに回転するため、本体20に対するレバー60の向きを状況に応じて適宜に変更できる。また変更後、レバー60に加わる回転力がストッパ62のばね力を下回るようであれば、レバー60の回転が規制されるため、変更後の位置でレバー60の操作を安定して行うことができる。したがって、本発明によれば、レバー60の操作性が改善された圧力逃がし弁10が提供される。
【0042】
また、ストッパ62が第2軸部38の軸周り方向の4位置にてレバー60の回転を段階的に規制するため、レバー60が軸周り方向の所定位置に節度感よく停止される。
また、ストッパ62のばね力の作用方向がレバー60の操作方向と直交する向きとなる第2軸部38の径方向に設定されているから、ストッパ62の変位に伴って第2軸部38が軸方向に変位するのが防止され、ストッパ62のばね力がレバー60の操作に悪影響を及ぼすのが回避される。
【0043】
さらに、両挟持片75がストッパ受け部41の対辺を弾性的に挟持するため、ストッパ62が本体20側に安定確実に保持される。さらにまた、両挟持片75が線状に形成されているから、レバー60に適宜な回転力を付与することにより、レバー60の向きを円滑に変更することができる。
【0044】
<実施形態2>
図6及び図7は、本発明の実施形態2を示す。実施形態2では、ストッパ62Aがブラケット61に一体に形成されている点で、実施形態1とは異なる。
【0045】
ブラケット61の基部63Aは、円環板状をなしている。また、基部63Aは、両対向片64A間の中央と対応する位置に、切り溝状のスリット77を有しており、スリット77の幅を拡縮する向きに弾性変形可能とされている。基部63Aの内周縁は、第3筒部37の基端部に設けられたストッパ受け部41の外周の断面8角形状と対応する断面8角形状をなし、その各辺がストッパ受け部41の各辺に当接可能とされている。したがって、基部63Aのうちスリット77を挟んで対向する一対の円弧部分が両挟持片75Aを構成するものとなる。なお、止め輪68は、基部63Aを挟んで第2ボディ25の端面とは反対側に配置され、第2ボディ25との間に基部63Aを挟持する構成とされる。その他の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0046】
図7(A)に示すように、基部63Aがストッパ受け部41に外嵌された状態では、基部63Aの内周縁がストッパ受け部41の外周縁と適合し、これによってブラケット61が軸周りに回転するのが規制され、ひいてはレバー60が軸周りに回転するのが規制される。一方、レバー60に対して基部63Aのばね力を上回るような回転力が付与されると、図7(B)に示すように、両挟持片75Aがスリット77を拡幅させながら弾性的に開き変形し、これによってブラケット61及びレバー60が軸周りに回転する。こうしてブラケット61及びレバー60が45度回転すると、図7(C)に示すように、両挟持片75Aが弾性復帰して、基部63Aの内周縁がストッパ受け部41の外周縁と再び適合して嵌る。位置変更後、基部63Aのばね力がストッパ受け部41に作用することでレバー60の回転が規制されるため、変更後の位置でレバー60の操作を安定して行うことができる。
実施形態2によれば、両挟持片75Aがレバー60のブラケット61に一体に形成されているため、ブラケット61とは別に両挟持片75Aを設けるよりも、部品点数及び組付工数が削減される。
【0047】
<実施形態3>
図8及び図9は、本発明の実施形態3を示す。実施形態3では、上記とは逆に、ストッパ20Cが本体20側に設けられ、ストッパ受け部60Cがレバー60側に設けられている。
【0048】
ストッパ20Cは、第3筒部37の基端部に設けられている。第3筒部37の基端部の外周面には、断面円形の主面の径方向両端から互いに反対方向に突出する一対の突部20Dが形成されている。突部20Dは断面3角形状をなし、図9に示すように、第2ボディ25の端面に一体に接合され、かつ同端面からの突出量が小さく抑えられている。
【0049】
一方、ストッパ受け部60Cは、ブラケット61の基部63Cに設けられている。ブラケット61の基部63Cは円環板状をなし、その内周縁に、突部20Dを嵌合可能な複数の凹部60Dが周方向に並列に形成されている。凹部60Dは、突部20Dと対応する断面3角形状をなし、ここでは周方向に8つ形成されている。軸方向と平行な高さ方向に関して、凹部60Dの高さ寸法は突部20Dの高さ寸法よりも大きくされている。隣接する凹部60D間には、レバー60の回転時に突部20Dと干渉する3角形状の張出部60Eが形成されている。なお、止め輪68は、実施形態2と同様に、基部63Cを挟んで第2ボディ25の端面とは反対側に配置され、第2ボディ25との間に基部63Cを挟持する構成とされている。その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0050】
基部63Cが第3筒部37の基端部に外嵌された状態では、図8(A)に示すように、両突部20Dが各凹部60Dのうち径方向両端に位置する2つの凹部60Dに嵌り、これによってブラケット61が軸周りに回転するのが規制され、ひいてはレバー60が軸周りに回転するのが規制される。この状態から、基部63Cと止め輪68との間に生じるがたの範囲でブラケット61を持ち上げながらレバー60に回転力を付与すると、図8(B)に示すように、張出部60Eが突部20Dの端面に乗り上げられて、ブラケット61及びレバー60が軸周りに回転する。さらに、張出部60Eが突部20Dの端面を弾圧状態で摺接したあとこれを乗り越えると、図8(C)に示すように、両突部20Dが対応する凹部60Dに嵌り、ブラケット61及びレバー60が45度回転した位置で停止される。その後は、両突部20Dと凹部60Dとの嵌合状態が保たれるため、変更後の位置でレバー60の操作を安定して行うことができる。
実施形態3によれば、ストッパ20C及びストッパ受け部60Cの構成を簡素にすることができる。
【0051】
<実施形態4>
図10は、本発明の実施形態4を示す。実施形態4では、ストッパ90及びストッパ受け部80の形状が実施形態1とは異なる。
【0052】
ストッパ90は、ブラケット61の基部63の内周縁に形成された凹所91に収容されるボール92と、ボール92を径方向中心側に付勢する付勢部材93とからなる。付勢部材93はコイルスプリングによって構成されている。
一方、ストッパ受け部80は、第3筒部37の基端部の外周面にて周方向に間隔をかけて形成された複数のディンプル81からなる。ディンプル81はボール92を部分的に嵌合可能な凹球面状をなしている。その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0053】
ボール92が付勢部材93に付勢されつつディンプル81に嵌合された状態では、ボール92とディンプル81との間に作用する弾性摩擦力に基づいて、レバー60が回転規制状態に保持される。一方、レバー60に対して軸周り方向の回転力が付与され、その回転力が弾性摩擦力を上回るようになると、その回転力に準じてボール92がディンプル81から抜け出て、レバー60が軸周りに回転する。
実施形態4によれば、付勢部材93の付勢力を変更することで、ストッパ90としてのばね力を適宜に調整することができる。
【0054】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本体側とレバー側の両方にばね力を有するストッパが設けられ、両ストッパが当たり合うことで、レバーの回転が規制される構成であってもよい。
(2)レバーがストッパのばね力によって軸周りに無段階で回転規制される構成であってもよい。
(3)ストッパのばね力の作用方向が軸方向と平行な向きに設定されるものであってよい。
(4)実施形態1及び実施形態2では、ストッパ受け部又はストッパの外周は8角形以外の任意の多角形状をとり得る。
(5)実施形態2では、ブラケットの少なくとも基部の部分を合成樹脂製とすることにより、ストッパのばね力を適宜に調整する構成であってもよい。
(6)実施形態3では、突部の形状及び個数、並びに凹部の形状及び個数は任意である。
【符号の説明】
【0055】
10…圧力逃がし弁
20…本体
20D…突部
29…弁体
38…第2軸部(軸部)
41、60C、80…ストッパ受け部
60…レバー
60D…凹部
61…ブラケット
62、62A、20C、90…ストッパ
75、75A…挟持片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に接続される本体と、
前記本体内に開閉可能に配置される弁体と、
前記本体外に操作可能に配置されるレバーと、
前記弁体と前記レバーとの間に配置され、前記レバーの操作に連動する軸部とを備え、
前記レバーの操作によりその操作力が前記軸部を介して前記弁体に伝わることにより、前記弁体が開弁される圧力逃がし弁において、
前記レバー側と前記本体側の少なくとも一方には、他方にばね力を作用させる形態であって、前記レバーに対して前記軸部の軸周りに回転力を付与した場合に、前記ばね力が前記回転力を上回る範囲で前記レバーの回転を規制可能なストッパが設けられていることを特徴とする圧力逃がし弁。
【請求項2】
前記ストッパは、前記軸部の軸周り方向の複数位置にて前記レバーの回転を段階的に規制することを特徴とする請求項1記載の圧力逃がし弁。
【請求項3】
前記ストッパのばね力の作用方向は、前記レバーの操作方向と直交する向きとなる前記軸部の径方向に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の圧力逃がし弁。
【請求項4】
前記本体には、前記軸部の周りを取り囲み、かつ外周が多角形状をなすストッパ受け部が設けられ、
前記ストッパには、前記ストッパ受け部の外周における相対向する対辺を弾性的に挟持する一対の挟持片が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の圧力逃がし弁。
【請求項5】
前記一対の挟持片は、線状に形成されていることを特徴とする請求項4記載の圧力逃がし弁。
【請求項6】
前記本体には、前記レバーを操作可能に支持するブラケットが取り付けられ、前記両挟持片は、前記ブラケットに一体に形成されていることを特徴とする請求項4記載の圧力逃がし弁。
【請求項7】
前記本体には、前記軸部の周りを取り囲み、かつ外周に突部を有する前記ストッパが設けられ、
前記レバー側には、前記ストッパに外嵌され、かつ内周に複数の凹部を有するストッパ受け部が設けられ、
前記レバーの回転によって前記突部が前記凹部に弾性的に嵌ることにより、前記レバーの回転が規制されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の圧力逃がし弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−47506(P2011−47506A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198769(P2009−198769)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000108557)タイム技研株式会社 (15)
【Fターム(参考)】