説明

圧力開放弁

【課題】、組み付けが容易で、製造コストを低く抑える事が出来ると共に、小さい取付けスペースに収まり、しかも、安定した開弁圧を長期間に渡って維持することが可能な圧力開放弁を提供することを目的とする。
【解決手段】流体を仕切るハウジングに設けた取付孔に取り付けられ、一端側に環状の係止部を設けた軸部と、前記軸部の他端側に連結され、前記ハウジングに設けた流路内の流体の移動を一方向に制御する傘部とを備えた傘型バルブを有する圧力開放弁において、
前記係止部の外周面に軸方向に伸びる切欠き部を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力開放弁に関する。
また、本発明は、キャパシタやコンデンサに用いて有用な圧力開放弁に関する。
更に、本発明は、キャパシタやコンデンサの内部の圧力が上昇した際に、速やかに内部圧力を開放するようになした圧力開放弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キヤパシタ等の内部ガスが発生する2次電池等の圧力開放弁については、各社から多くの提案がなされている。
これらの圧力開放弁うち、密封が得られ、比較的低い開弁圧で作動する弁として、図9に示す傘型バルブ200を使用している例がある。(特許文献1)
この種傘バルブ200は、一般にチェックバルブ(逆止弁)等に利用され、その取り付け方法は、図7に示す様に、軸部210の先端引張り部2120(図上下端側)を取付孔110に挿入する。
【0003】
ついで、図8に示す様に、取付孔110から下方に飛び出した先端引張り部2120を引っ張り、軸部210に設けた係止部2110を、取付孔110内を通過させ、ハウジング100の下面側に移動させることにより、傘型バルブ200をハウジング100の取付孔110に取り付けるものである。
【0004】
このことにより、傘型バルブ200の傘部220が、ハウジング100に設けた流路120を覆う事により、図上下方から上方への流体の流れは許容するが、図上上方から下方への流体の流れは遮断する、逆止弁としての機能を発揮するものである。
しかし、この傘型バルブ200を使用する場合、軸部210の先端引張り部2120は、装着後は不要のものとなるため、取付スペースの観点から、装着後、図9に示す様に、係止部2110下端側から切り取って除去していた。
このため、新たに先端引張り部2120の切断という製造工程が発生するため、製造コストのアップにつながっていた。
【0005】
また、キヤパシタの組立て工程の最後に傘型バルブ200を取り付ける必要も有った。
具体的には、取付孔110から電解液を注入した後、傘型バルブを取り付ける場合、引張り部2120を設けたとしても、この引張り部2120を引っ張ることが出来ない為、この種傘型バルブ200を使用する事が出来ない問題を惹起した。
【0006】
さらに、引張り部2120を設けず、係止部2110下端側にテーパ部を設ける事により装着可能とした形状も提案されたが、傘型バルブがゴム状弾性材製である為、挿入抵抗が大きく、精度良く装着する事は困難であった。
また、ハウジング100には、取付孔110とは別に、流路120を確保する為の貫通孔120を設けなければならず、製造コストが嵩む問題も招来した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3889029号公報
【特許文献2】特開平2005−116955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、組み付けが容易で、製造コストを低く抑える事が出来ると共に、小さい取付けスペースに収まり、しかも、安定した開弁圧を長期間に渡って維持することが可能な圧力開放弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧力開放弁は、流体を仕切るハウジングに設けた取付孔に取り付けられ、一端側に環状の係止部を設けた軸部と、前記軸部の他端側に連結され、前記ハウジングに設けた流路内の流体の移動を一方向に制御する傘部とを備えた傘型バルブを有する圧力開放弁において、
前記係止部の外周面に軸方向に伸びる切欠き部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明の圧力開放弁によれば、組み付けが容易で、製造コストを低く抑える事が出来ると共に、小さい取付けスペースに収まり、しかも、安定した開弁圧を長期間に渡って維持することが出来る。
請求項2記載の発明の圧力開放弁によれば、係止部の取付孔内への挿入が容易で、流体の流れを均等に出来る為、安定した弁機能を発揮出来る。
【0011】
更に、請求項3記載の発明の圧力開放弁によれば、流路を確保する為に、取付孔とは別の流通孔を新たに設ける必要が無い為、製造コストを低く抑える事が出来る。
また、請求項4記載の発明の圧力開放弁によれば、取付孔に安定した流路を確保することが出来る。
【0012】
また、請求項5記載の発明の圧力開放弁によれば、取付孔とは別の流通孔を新たに設ける必要が無い為、製造コストを低く抑える事が出来る。
また、請求項6記載の発明の圧力開放弁によれば、傘部の過大な変形を防止できる為、安定した弁機能を発揮出来る。
【0013】
また、請求項7記載の発明の圧力開放弁によれば、台座部が存在した状態においても、流路を確実に確保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る傘型バルブの平面図。
【図2】本発明に係る傘型バルブの底面図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】図3の傘型バルブがハウジングに装着された断面図。
【図5】図4のハウジングに設けた取付孔の形状を示す図。
【図6】図3の傘型バルブが図4と異なるハウジングに装着された断面図。
【図7】従来技術に係る傘型バルブがハウジングに取り付けられる前の状態を示す断面図。
【図8】図7の傘型バルブがハウジングに装着された直後の断面図。
【図9】図8の傘型バルブがハウジングに装着された後、取付用軸部を取除いた状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図に基づき説明する。
【0016】
<第1実施例>
図1、図2、図3、図4及び図5において、本発明に係る圧力開放弁は、流体を仕切るハウジング1に設けた取付孔11に取り付けられ、一端側(図上下方)に環状の係止部211を設けた軸部21と、この軸部21の他端側(図上上方)に連結され、ハウジング1に設けた流路12内の流体の移動を一方向に制御する傘部22とを備えた傘型バルブ2を有している。
そして、この係止部211の外周面には、軸方向に伸びる切欠き部212が設けられている。
【0017】
図2に示す様に、この切欠き部212は、円周上4等配に設けられている。そして、切欠き部212の周方向幅と係止部211の周方向幅は略同じ幅に設計されている。
切欠き部212の大きさ及び数はこれに限定されるものではなく、係止部211が取付孔11に挿入される際、係止部211の変形を容易にするに十分な空隙を確保出来る大きさ及び数であれば良い。
【0018】
この意味から、切欠き部212は、円周上等配に設けられていることが好ましい。
また、図4に示す様に、流路12は、従来技術の様に取付孔とは別に、流路を確保する為の貫通孔を設けることなく、軸部21外周面と取付孔11内周面との間隙Xにより確保される構成としている。
【0019】
より具体的には、流路12の為の間隙Xは、図5に示す、取付孔11に設けた窪み部111により確保される設計としている。
【0020】
また、図3及び図4に示す様に、軸部21の傘部22近傍には、軸部21の軸方向移動を制御する台座部213が形成されている。
この台座部213は、傘型バルブ2をハウジング1に装着する際、ハウジング1の弁座面13に当接して、傘部22の過大な変形を防止する役割を果たしている。
この為、安定した弁機能を発揮することが出来る。
【0021】
また、図5に示す窪み部111の大きさは、図4に示す様に、台座部213により塞がれない大きさとする必要があるが、窪み部111の数は1個以上であれば良い。
また、軸部21の下端部は、取付孔11に挿入し易くする為に、円錐状のテーパ面とする事が好ましい。
【0022】
<第2実施例>
ついで、本発明の他の実施態様を図6に基づき説明する。
本実施態様においては、流体の流路12を確保する為の間隙Xは、軸部21の外径を取付孔11の内径よりも小さくすることにより形成されている。
すなわち、軸部21の外周面上に存在する間隙により、流体の流路12が確保される構成としている。
【0023】
第1実施例の様に、窪み部111を形成する必要が無い為、より構造を簡素化出来る。
しかし、軸部21の外周面上に十分な間隙を設けることは、傘型バルブ2をハウジング1側に安定した状態で保持する為に出来ない。
この為、軸部21の軸方向移動を制御する台座部213を設けた場合、この台座部213により、間隙Xが塞がれる可能性がある。
そこで、台座部213とハウジング1の弁座面13との間に間隙Yが存在する様に設計する。
【0024】
この事により、台座部213により、間隙Xが塞がれる問題を回避出来る。
また、係止部211の外周面には、軸方向に伸びる切欠き部212が設けられている為、係止部211により間隙Xが塞がれる事も無い。
【0025】
傘型バルブ2の材質としては、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ビニル変性ブチルゴム、エチレンプロピレン系ゴム、フッ素ゴム、アクリル系ゴムまたは水素添加二トリルゴム等の飽和系ゴムが挙げられ、架橋剤、充填剤、可塑剤または老化防止剤等を適宜配合する。
これらの材質のうち、ガス透過が少なく、キャパシタの電解液に腐食されない、フッ素ゴム、エチレンプロピレン系ゴムが好んで用いられるが、フッ素ゴムは価格が高い欠点を有し、一方、エチレンプロピレン系ゴムは、価格は安いが、ガス透過性がフッ素ゴムに比べ劣る。
【0026】
また、傘型バルブ2の材質の硬度(Hs)は、40〜90、好ましくは50〜80のものが用いられる。
一般に硬度が高いゴムはガス透過が少ないが、硬度が高すぎると、シール性や装着性が悪くなる。
一方硬度が低いゴムはシール性や装着性は良好だが、ガス透過は悪くなる。
また、傘型バルブ2の大きさは、通常10mm以下である。
【0027】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0028】
1 ハウジング
2 傘型バルブ
11 取付孔
12 流路
13 弁座面
21 軸部
22 傘部
211係止部
212切欠き部
213台座部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を仕切るハウジング(1)に設けた取付孔(11)に取り付けられ、一端側に環状の係止部(211)を設けた軸部(21)と、前記軸部(21)の他端側に連結され、前記ハウジング(1)に設けた流路(12)内の流体の移動を一方向に制御する傘部(22)とを備えた傘型バルブ(2)を有する圧力開放弁において、
前記係止部(211)の外周面に軸方向に伸びる切欠き部(212)を設けたことを特徴とする圧力開放弁。
【請求項2】
前記切欠き部(212)が円周上等配に設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧力開放弁。
【請求項3】
前記流路(12)が、前記軸部(21)外周面と前記取付孔(11)内周面との間隙(X)により形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の圧力開放弁。
【請求項4】
前記間隙(X)が、前記取付孔(11)に設けた窪み部(111)により形成されていることを特徴とする請求項3記載の圧力開放弁。
【請求項5】
前記間隙(X)が、前記軸部(21)の外径を前記取付孔(11)の内径よりも小さくすることにより形成されていることを特徴とする請求項3記載の圧力開放弁。
【請求項6】
前記軸部(21)の前記傘部(22)近傍に、前記軸部(21)の軸方向移動を制御する台座部(213)を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧力開放弁。
【請求項7】
前記台座部(213)と前記ハウジング(1)の弁座面(13)との間に間隙(Y)が存在する様に設計されていることを特徴とする請求項6に記載の圧力開放弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−59804(P2012−59804A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199656(P2010−199656)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】