説明

圧接型半導体装置

【課題】外部圧接電極体と半導体基体との間に形成された空間に異物が混入することを防止しつつ、コーティング体の剥がれを防止することができる圧接型半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体基体1の主面の一面及び外部圧接電極体の互いの対向面を半導体基体1の外側から囲むように外部圧接電極体の外周面とコーティング体5との間にまたがって配置され、変形することによりコーティング体5にかかる荷重がコーティング体5を半導体基体1から剥がすのに要する荷重以下となる状態を維持した密閉体25を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、GTO(Gate Turn Off)サイリスタやGCT(Gate Commutated Turn−off)サイリスタ等の圧接型半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は従来のセンターゲートタイプの圧接型半導体装置の圧接前の状態を示す縦断面図である。図4において、1は半導体基体である。この半導体基体1の主面の一方には、圧接電極として、アノード電極2が形成される。一方、半導体基体1の主面の他方には、圧接電極として、ゲート電極3と複数のカソード電極4とが形成される。また、半導体基体1の外縁部の全体を縁取るように、環状のコーティング体5が設けられる。
【0003】
半導体基体1の主面の一方側には、アノード電極2に接触する外部アノード電極体6が設けられる。一方、半導体基体1の主面の他方側には、ゲート電極3に接触する外部ゲート電極体11が設けられる。さらに、カソード電極4に接触する外部カソード電極体19が設けられる。
【0004】
このように構成されたセンターゲートタイプの圧接型半導体装置においては、外部カソード電極体19と半導体基体1との間に空間24が形成される。このため、異物が半導体基体1の外側から空間24側に移動した状態で、外部カソード電極体19とカソード電極4とが圧接されることがある。
【0005】
ところで、センターゲートタイプ以外の圧接型半導体装置として、ガイドリングを有するものが提案されている。このガイドリングの内周面の一側は、外部カソード電極体の外周面が密着している。一方、ガイドリングの内周面の他側は、コーティング体の外周面に密着している。そして、圧接時に、ガイドリングの内周面の他側がコーティング体の外周面を案内する。この案内により、外部カソード電極体と半導体基体とが位置決めされる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−109327号公報
【特許文献2】特開平4−112578号公報
【0007】
このガイドリングを従来のセンターゲートタイプの圧接型半導体装置に適用すると、圧接前においても、ガイドリングによって外部カソード電極体19と半導体基体1との間の空間24を密閉する。このため、半導体基体1の外側から空間24側に異物が移動することを防止できる。
【0008】
ここで、図5及び図6を用いて、センターゲートタイプの圧接型半導体装置にガイドリングを適用した場合を説明する。図5はガイドリングを有する圧接型半導体装置の圧接後の状態を示す縦断面図である。図6は図5のB部詳細図である。上述したように、ガイドリング28は、外部カソード電極体19と半導体基体1とを位置決めするものである。このため、コーティング体5には、半導体基体1の中心方向へ締め付ける応力がかかる。この状態で、外部カソード電極体19を圧接すると、図5に示すように、ガイドリング28は、外部カソード電極体19の移動に追従する。そして、コーティング体5の外周部は、ガイドリング28の移動に追従しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、コーティング体5の内周部は半導体基体1との密着を維持しようとする。そして、さらに、外部カソード電極体19が圧接方向に押し込まれると、図6に示すように、コーティング体5の内周部が半導体基体1から剥がれてしまうという問題があった。
【0010】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、外部圧接電極体と半導体基体との間に形成された空間に異物が混入することを防止しつつ、コーティング体の剥がれを防止することができる圧接型半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る圧接型半導体装置は、主面の一面に圧接電極が形成された半導体基体と、前記半導体基体の外縁部を縁取ったコーティング体と、前記圧接電極に接触した外部圧接電極体と、前記主面の一面及び前記外部圧接電極体の互いの対向面を前記半導体基体の外側から囲むように前記外部圧接電極体の外周面と前記コーティング体との間にまたがって配置され、変形することにより前記コーティング体にかかる荷重が前記コーティング体を前記半導体基体から剥がすのに要する荷重よりも小さくなる状態を維持した密閉体と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、外部圧接電極体と半導体基体との間に形成された空間に異物が混入することを防止しつつ、コーティング体の剥がれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1における圧接型半導体装置の圧接前の状態を示す縦断面図である。
【図2】図1のA部詳細図である。
【図3】この発明の実施の形態1における圧接型半導体装置の圧接後の状態を示す縦断面図である。
【図4】従来のセンターゲートタイプの圧接型半導体装置の圧接前の状態を示す縦断面図である。
【図5】ガイドリングを有する圧接型半導体装置の圧接後の状態を示す縦断面図である。
【図6】図5のB部詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0015】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における圧接型半導体装置の圧接前の状態を示す縦断面図である。
図1には、仮組みされたセンターゲートタイプの圧接型半導体装置の一例として、GTO(Gate Turn Off)サイリスタが示される。この圧接型半導体装置は、電力用として、BTB(電力系統連携装置)、SVG(無効電力発生装置)等に適用される。また、圧接型半導体装置は、工業用として、製鉄圧延機駆動用インバータ等に適用される。さらに、圧接型半導体装置は、その他高電圧・大容量スイッチ等に適用される。以下、本実施の形態の圧接型半導体装置について説明する。
【0016】
図1において、1は半導体基体である。この半導体基体1は、PN接合によって形成される。この半導体基体1の主面の一方には、圧接電極として、アノード電極2が形成される。図1においては、半導体基体1の下面にアノード電極2が形成される。このアノード電極2の表面には、金属膜が施される。
【0017】
一方、半導体基体1の主面の他方には、圧接電極として、ゲート電極3と複数のカソード電極4とが形成される。図1においては、半導体基体1の上面の中央に、ゲート電極3が形成される。このゲート電極3の表面には、金属膜が施される。また、図1においては、半導体基体1の上面で、ゲート電極3を囲むように、複数のカソード電極4が形成される。これらのカソード電極4は、ゲート電極3よりも0.5mm程度上方に突出している。これらのカソード電極4の表面には、金属膜が施される。
【0018】
また、半導体基体1の外縁部の全体を縁取るように、環状のコーティング体5が設けられる。このコーティング体5は、絶縁性を有した樹脂やゴムでモールド成形される。このコーティング体5は、圧接工程後の熱処理工程の設定温度で加熱された場合であってもガスの発生を抑制する材料で形成される。具体的には、コーティング体5は、シリコーンゴムで形成される。
【0019】
また、半導体基体1の主面の一方側には、アノード電極2に対向して、外部アノード電極体6が設けられる。この外部アノード電極体6は、アノード電極2に接触させるための外部圧接電極体である。この外部アノード電極体6は、外部アノード電極7、フランジ8、ピン9、アノード歪緩衝板10からなる。
【0020】
外部アノード電極7は、銅で形成される。この外部アノード電極7の外周面下部には、フランジ部が形成される。このフランジ部は、外部アノード電極7外周面よりも外側に突出する。このフランジ部の上面には、フランジ8が固着される。また、外部アノード電極7上面中央には、溝が形成される。この溝には、ピン9の下部が嵌め込まれる。
【0021】
外部アノード電極7の上方には、アノード歪緩衝板10が配置される。このアノード歪緩衝板10は、モリブデンで形成される。このアノード歪緩衝板10の下面中央には、溝が形成される。この溝には、ピン9の上部が嵌め込まれる。これにより、外部アノード電極7とアノード歪緩衝板10とが位置決めされる。また、アノード歪緩衝板10の外周面上部は、コーティング体5の内周面の内側に配置される。これにより、アノード歪緩衝板10と半導体基体1とが位置決めされる。
【0022】
一方、半導体基体1の主面の他方側には、ゲート電極3に対向して、外部ゲート電極体11が設けられる。この外部ゲート電極体11は、ゲート電極3に接触させるための外部圧接電極体である。この外部ゲート電極体11は、外部ゲート電極12、ゲートリード線13、ゲートスリーブ14、ゲートパイプ15からなる。
【0023】
外部ゲート電極12は、ゲート電極3に対向して設けられる。この外部ゲート電極12は、銅で形成される。この外部ゲート電極12の外周面上部の一側には、ゲートリード線13が接続される。このゲートリード線13は、ゲートスリーブ14内、ゲートパイプ15内に収納される。
【0024】
ここで、外部ゲート電極12は、支持管16に支持される。そして、外部ゲート電極12の上面には、マイカワッシャ17が配置される。このマイカワッシャ17の上面には、弾性体18が配置される。
【0025】
さらに、半導体基体1の主面の他方側には、カソード電極4に対向して、外部カソード電極体19が設けられる。この外部カソード電極体19は、カソード電極4に接触させるための外部圧接電極体である。この外部カソード電極体19は、外部カソード電極20、フランジ21、カソード歪緩衝板22からなる。
【0026】
外部カソード電極20は、銅で形成される。この外部カソード電極20の上部には、フランジ部が形成される。このフランジ部は、外部カソード電極20外周面より外側に突出する。このフランジ部の上面には、フランジ21が固着される。このフランジ21の外周部は、下方に傾斜するように折り曲げられる。そして、外部カソード電極20の下方には、カソード歪緩衝板22が配置される。このカソード歪緩衝板22は、モリブデンで形成される。
【0027】
ここで、外部カソード電極20の下面には、切り欠き部が形成される。この切り欠き部は、外部カソード電極20の外周面の一側から中心に向かって形成される。また、カソード歪緩衝板22の中心には、貫通穴が形成される。そして、外部カソード電極20の切り欠き部とカソード歪緩衝板22の貫通穴によって、支持管16が支持される。また、マイカワッシャ17上面と外部カソード電極20の切り欠き部の底面との間で、弾性体18が保持される。
【0028】
そして、半導体基体1、コーティング体5、外部アノード電極体6、外部ゲート電極体11、支持管16、マイカワッシャ17、弾性体18、外部カソード電極体19は、絶縁筒23に収納される。この絶縁筒23の内径は、コーティング体5の外径よりも僅かに大きい。この絶縁筒23の下部は、フランジ8上面に配置される。これにより、絶縁筒23の下部は、外部アノード電極体6に塞がれる。一方、絶縁筒23の上部には、フランジ21が配置される。これにより、絶縁筒23の上部は、外部カソード電極体19に塞がれる。すなわち、絶縁筒23は密閉される。
【0029】
なお、絶縁筒23の側面の一側には、貫通穴が形成される。この貫通穴に、ゲートパイプ15が保持される。これにより、ゲートパイプ15内に収納されたゲートリード線13は、絶縁筒23外部へ引き出される。
【0030】
このとき、ゲート電極3と外部ゲート電極12との間には、僅かな空間が形成される。そして、カソード電極4とカソード歪緩衝板22との間には、ゲート電極3と外部ゲート電極12との間の空間よりも高さのある空間が形成される。具体的には、カソード電極4とカソード歪緩衝板22との間は、鉛直方向に1.5mm程度の空間が形成される。ここで、カソード電極の高さは、0.5mm程度である。従って、外部カソード電極20と半導体基体1の主面の他方との間は、鉛直方向に2.0mm程度の空間24が形成される。
【0031】
本実施の形態においては、環状の密閉体25が設けられる。この密閉体25は、縦断面略L字となるゴムリングからなる。この密閉体25は、コーティング体5と同一材料で形成される。すなわち、密閉体25は、シリコーンゴムで形成される。この密閉体25は、絶縁筒23の内側で空間24を囲むように、外部カソード電極20の外周面とコーティング体5の双方に密着する。
【0032】
具体的には、密閉体25の外部カソード電極20側端部の全周が、外部カソード電極20の外周面に密着する。一方、密閉体25のコーティング体5側端部の全周が、コーティング体5の外周面よりも半導体基体1の中心側でコーティング体5の外部カソード電極20側の水平面に密着する。すなわち、密閉体25のコーティング体5側端部の全周は、コーティング体5の半導体基体1の主面の他方と平行な面に密着する。これらの密着により、密閉体25は、カソード電極4とカソード歪緩衝板22の間に形成された空間24を絶縁筒23の内側において密閉する。
【0033】
なお、密閉体25の一側には、貫通穴26が形成される。この貫通穴26の内径は、ゲートスリーブ14の外径と略同等に形成される。この貫通穴26の下方には、切り込み部(図示せず)が形成される。この切り込み部は、密閉体25の下縁部まで繋がっている。密閉体25に荷重がかかっていない場合、この切り込み部の両側は互いに密着する。
【0034】
密閉体25の切り込み部の下方からゲートスリーブ14の一部を挿入すれば、ゲートスリーブ14の一部を密閉体25の貫通穴26まで移動させることができる。このとき、ゲートスリーブ14の一部の外周面と密閉体25の貫通穴26の内周面とは密着する。また、ゲートスリーブ14の一部が密閉体25の貫通穴26に到達すれば、切り込み部の両側も密着状態を回復する。このため、密閉体25に貫通穴26や切り込み部があっても、空間24は、絶縁筒23内側において密閉される。
【0035】
ここで、密閉体25は、下方から押し込まれたときに変形するように形成される。具体的には、密閉体25のコーティング体5側と外部カソード電極20側との間の中央部が外側へ撓むように形成される。この撓みは、密閉体25を押し込んだ対象に対し下方への荷重を与えることになる。本実施の形態においては、この撓みの復元力が所定値よりも小さくなるように設定される。
【0036】
具体的には、所定値は、コーティング体5を半導体基体1から剥がすのに要する荷重よりも小さくなるように設定される。このためには、密閉体25の外周部を極力薄くすることが好ましい。具体的には、密閉体25の厚みを0.5mm〜2.0mmとすることが好ましい。
【0037】
なお、図1においては、密閉体25はほとんど変形していない。このため、密閉体25からコーティング体5が受ける荷重もほとんどない。従って、コーティング体5には、コーティング体5を半導体基体1から剥がすのに要する荷重はかかっていない。
【0038】
次に、図2を用いて、密閉体25の取り付け方法を説明する。
図2は図1のA部詳細図である。
図2に示すように、外部カソード電極20の外周面には、水平方向に延びる溝27が形成される。この溝27は、外部カソード電極20の外周面よりも引っ込んだ段差となる。この段差への密閉体25の嵌め込みは、次のように行われる。
【0039】
すなわち、外部カソード電極20を単体で密閉体25の上方から下方へ押し込む。この押し込みによって、密閉体25の外部カソード電極20側端部は外側に広がるように弾性変形する。この弾性変形により、密閉体25の外部カソード電極20側端部は外部カソード電極20の外周面に密着する。そして、さらに、外部カソード電極20を密閉体25の下方へ押し込むと、密閉体25の外部カソード電極20側端部は溝27に嵌め込まれる。
【0040】
この嵌め込みにより、密閉体25の外部カソード電極20側端部は、鉛直方向及び垂直方向の移動を抑制される。この抑制により、密閉体25は、絶縁筒23の内周面側から空間24を遮蔽する位置に確実に配置される。
【0041】
上記のように仮組みされた圧接型半導体装置は、圧接装置に運搬される。このとき、絶縁筒23内の大気に異物が含まれていることもある。そして、運搬中の振動等により、絶縁筒23内周面近傍の異物が、半導体基体1の外縁部外側から空間24側に移動しようとすることがある。
【0042】
しかしながら、本実施の形態においては、密閉体25が、絶縁筒23内側において空間24を密閉している。このため、空間24側に移動しようとする異物は、空間24への移動を阻止される。すなわち、本実施の形態においては、絶縁筒23の内周面近傍の異物が、空間24に混入することがないようになっている。
【0043】
次に、図3を用いて、本実施の形態の圧接型半導体装置の圧接工程を説明する。
図3はこの発明の実施の形態1における圧接型半導体装置の圧接後の状態を示す縦断面図である。
【0044】
まず、フランジ8と絶縁筒23の下部とが固着される。その後、外部アノード電極7と外部カソード電極20とが外部から圧接される。具体的には、外部アノード電極7が支持される。この状態で、外部カソード電極20がカソード電極4とは反対方向の荷重を弾性体18から受けながら下方に押し込まれる。この押し込みにより、弾性体18が圧縮する。この弾性体18の復元力により、外部ゲート電極12がゲート電極3に押し付けられる。
【0045】
この押し付けにより、半導体基体1が下方へ押し込まれる。この押し込みにより、アノード電極2がアノード歪緩衝板10に押し付けられる。この押し付けにより、アノード歪緩衝板10が外部アノード電極7に押し付けられる。
【0046】
このとき、外部カソード電極20によってカソード歪緩衝板22も下方に押し込まれる。しかしながら、圧接前においては、カソード電極4とカソード歪緩衝板22との間には、ゲート電極3と外部ゲート電極12との間の空間よりも高さのある空間が形成されていた。従って、外部ゲート電極12とゲート電極3とが接触した瞬間では、カソード電極4とカソード歪緩衝板22との間には、空間24が維持される。
【0047】
その後、さらに、外部カソード電極20がカソード電極4とは反対方向の荷重を弾性体18から受けながら下方へ押し込まれる。この押し込みにより、カソード歪緩衝板22が下方へ押し込まれる。この押し込みにより、カソード歪緩衝板22がコーティング体5の内周面に案内されながら下方へ移動する。その後、カソード歪緩衝板22がカソード電極4に押し付けられる。すなわち、カソード歪緩衝板22とカソード電極4とは、位置決めされた状態で接触する。
【0048】
そして、カソード歪緩衝板22とカソード電極4とが接触するまで、外部カソード電極20が下方へ押し込まれると、フランジ21の外周部の折り曲げ部が水平になる。この状態で、フランジ21が絶縁筒23の上部に固着される。
【0049】
上記圧接工程後は、半導体基体1の主面の一方側で、アノード電極2とアノード歪緩衝板10との接触が維持される。また、アノード歪緩衝板10と外部アノード電極7との接触も維持される。一方、半導体基体1の主面の他方側で、ゲート電極3と外部ゲート電極12との接触が維持される。また、カソード電極4とカソード歪緩衝板22との接触が維持される。さらに、カソード歪緩衝板22と外部カソード電極20の接触も維持される。
【0050】
本実施の形態の圧接型半導体装置においては、外部カソード電極20が下方に押し込まれる際に、密閉体25の外部カソード電極20側端部が外部カソード電極20とともに下方に移動する。この移動に追従して、密閉体25のコーティング体5側端部も下方に移動しようとする。
【0051】
しかしながら、密閉体25のコーティング体5側端部の下方には、コーティング体5が配置されている。このコーティング体5により、密閉体25のコーティング体5側端部は、下方への移動を阻止される。その結果、密閉体25の中央部が絶縁筒23の内周面側に撓む。
【0052】
このとき、密閉体25の撓みの復元力により、コーティング体5に下向きの荷重がかかる。この荷重により、コーティング体5には、半導体基体1から剥がれる方向の応力がかかる。ここで、密閉体25の中心軸が半導体基体1の中心軸よりも一側にずれる場合がある。この場合、密閉体25の一側は、コーティング体5水平面の外周部側を下方に押し込む。一方、密閉体25の他側は、コーティング体5水平面の内周部側を下方に押し込む。
【0053】
このため、コーティング体5の一側を下方へ押し込む位置と近傍の半導体基体1の外縁部との距離は、コーティング体5の他側を下方へ押し込む位置と近傍の半導体基体1の外縁部との距離よりも長くなる。従って、密閉体25の撓みの復元力がコーティング体5の両側で同等の場合には、コーティング体5の他側にかかるモーメントよりも一側にかかるモーメントの方が大きくなる。
【0054】
しかしながら、密閉体25の撓みの復元力は、コーティング体5にかかる荷重がコーティング体5を半導体基体1から剥がすのに要する荷重よりも小さくなるように設定されている。このため、密閉体25がコーティング体5のどこを下方へ押し込んだとしても、コーティング体5が半導体基体1から剥がれることはない。
【0055】
以上で説明した実施の形態1によれば、圧接前の密閉体25は、コーティング体5にかかる荷重がコーティング体5を半導体基体1から剥がすのに要する荷重よりも小さくなる状態で、空間24を半導体基体1の外側から囲んでいる。このため、絶縁筒23内周面近傍の異物が空間24に混入することがない。また、コーティング体5が半導体基体1から剥がれることを防止できる。
【0056】
また、圧接後の密閉体25は、変形することによって、コーティング体5にかかる荷重がコーティング体5を半導体基体1から剥がすのに要する荷重よりも小さくなる状態を維持する。すなわち、従来のガイドリング28を利用する場合よりも、コーティング体5にかかる応力を緩和することができる。このため、圧接後においても、コーティング体5が半導体基体1から剥がれることを防止できる。すなわち、高信頼性の圧接型半導体装置を得ることができる。つまり、不良となる圧接型半導体装置の数を低減することができる。その結果、圧接型半導体装置のコストを低減することができる。
【0057】
しかも、密閉体25以外は、従来の圧接型半導体装置と同様である。従って、安価な構成で、外部カソード電極体19と半導体基体1との間に形成された空間24に、絶縁筒23内周面側の異物が混入することを防止しつつ、コーティング体5の剥がれを防止することができる。
【0058】
なお、密閉体25がコーティング体5のどこを下方へ押し込んだとしても、コーティング体5が半導体基体1から剥がれることはない。このため、密閉体25の中心軸と半導体基体1の中心軸とがずれていても、コーティング体5が半導体基体1から剥がれることを防止できる。
【0059】
また、圧接前においては、密閉体25のコーティング体5側端部は、コーティング体5の外周面よりも半導体基体1の中心側でコーティング体5の外部カソード電極20側に接触している。そして、圧接後においては、密閉体25は、コーティング体5側端部をコーティング体5の外部カソード電極20側に接触させた状態で、中央部を撓ませている。このため、従来のガイドリング28を利用する場合よりも、圧接型半導体装置の外径を小さくすることができる。
【0060】
さらに、密閉体25の厚みは、0.5mm〜2.0mmとなっている。すなわち、密閉体25の外周部の厚みを適切に設定するだけで、コーティング体5にかかる応力を緩和し、コーティング体5が半導体基体1から剥がれることを防止できる。
【0061】
なお、コーティング体5の外周面と絶縁筒23の内周面との間に形成された空間の幅寸法よりも密閉体25の厚み寸法を大きくするとよい。この場合、コーティング体5の外周面と絶縁筒23の内周面との間に形成された空間に密閉体25が食い込むことを防止できる。これにより、コーティング体5にかかる荷重がコーティング体5を半導体基体1から剥がすのに要する荷重以上となることを確実に防止することができる。例えば、コーティング体5の外周面と絶縁筒23の内周面との間に形成された空間の幅寸法が0.5mmの場合は、密閉体25の厚み寸法を1.0mm〜2.0mmとすればよい。
【0062】
加えて、密閉体25は、コーティング体5とともに、シリコーンゴムで形成される。このため、熱処理工程の温度上昇や外部環境による圧接型半導体装置の発熱で最終的に密閉された絶縁筒23内の温度が上昇しても、ガスの発生による半導体基体1の劣化を防止することができる。これにより、高信頼性の圧接型半導体装置を得ることができる。しかも、シリコーンゴムは安価である。このため、密閉体25を安価に製作することができる。
【0063】
また、密閉体25の外部カソード電極体19側は、外部カソード電極20の溝27に嵌め込まれている。このため、密閉体25が外部カソード電極体19から鉛直方向及び水平方向にずれることを防止できる。このため、圧接前において、カソード歪緩衝板22と半導体基体1との間に形成された空間24を絶縁筒23内側において確実に密閉することができる。また、密閉体25特有の弾性変形を利用して、簡単に外部カソード電極20の溝27に嵌め込むことができる。
【0064】
なお、通常の圧接型半導体装置においては、外部カソード電極体19は、外部カソード電極20とカソード歪緩衝板22とを備える。そして、カソード歪緩衝板22が外部ゲート電極12を支持する。この外部ゲート電極12は、弾性体18によってゲート電極3に押し付けられる。そして、外部カソード電極20は、カソード電極4とは反対方向の荷重を弾性体18から受けている。さらに、圧接前においては、カソード歪緩衝板22と半導体基体1との間に空間24が形成される。すなわち、通常の圧接型半導体装置においては、密閉体25は、カソード歪緩衝板22と半導体基体1との間に形成された空間24に異物が混入することを防止できる。
【0065】
また、実施の形態1においては、圧接型半導体装置の一例としてGTOサイリスタを示した。しかしながら、密閉体25を利用する圧接型半導体装置は、GTOサイリスタに限定されない。例えば、GCT(Gate Commutated Turn−off)サイリスタに密閉体25を利用しても、外部カソード電極体19と半導体基体1との間に形成された空間24に、絶縁筒23内周面側の異物が混入することを防止しつつ、コーティング体5の剥がれを防止することができる。
【0066】
また、実施の形態1においては、密閉体25のコーティング体5側端部は、コーティング体5の外周面よりも半導体基体1の中心側でコーティング体5の外部カソード電極20側面に接触していた。しかしながら、コーティング体5の外周面を包みこむように密閉体25のコーティング体5側端部を配置してもよい。この場合、密閉体25のコーティング体5側端部は、弾性変形の復元力により、コーティング体5の外周面に密着していればよい。そして、圧接後の密閉体25の弾性変形の復元力によってコーティング体5にかかる荷重を、コーティング体5を半導体基体1から剥がすのに要する荷重以下となるように設定すればよい。このような構成にすれば、コーティング体5が半導体基体1から剥がれることを防止できる。
【0067】
また、実施の形態1においては、密閉体25は、外部カソード電極体19と半導体基体1との間に形成された空間24を密閉していた。しかしながら、密閉体25で密閉する空間は、外部カソード電極体19と半導体基体1との間に形成された空間24に限定されない。すなわち、半導体基体1の圧接電極とこれに接触させるための外部圧接電極体との間に形成された空間を密閉体25によって密閉してもよい。これにより、外部圧接電極体と半導体基体1との間に形成された空間に異物が混入することを防止しつつ、コーティング体5の剥がれを防止することができる。
【0068】
また、実施の形態1においては、密閉体25は、コーティング体5とともに、シリコーンゴムで形成されていた。しかしながら、密閉体25やコーティング体5の材質は、シリコーンゴムに限定されない。すなわち、熱処理工程の温度上昇や外部環境による圧接型半導体装置の発熱等を考慮して、密閉体25やコーティング体5の材質を選定すればよい。
【0069】
また、実施の形態1においては、密閉体25の外部カソード電極体19側は、外部カソード電極20の溝27に嵌め込まれていた。しかしながら、必ずしも、密閉体25の外部カソード電極体19側を外部カソード電極20の溝27に嵌め込む必要はない。例えば、密閉体25の外部カソード電極20側端部を弾性変形させて、密閉体25と外部カソード電極20の外周面との密着力を高めてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 半導体基体
2 アノード電極
3 ゲート電極
4 カソード電極
5 コーティング体
6 外部アノード電極体
7 外部アノード電極
8 フランジ
9 ピン
10 アノード歪緩衝板
11 外部ゲート電極体
12 外部ゲート電極
13 ゲートリード線
14 ゲートスリーブ
15 ゲートパイプ
16 支持管
17 マイカワッシャ
18 弾性体
19 外部カソード電極体
20 外部カソード電極
21 フランジ
22 カソード歪緩衝板
23 絶縁筒
24 空間
25 密閉体
26 貫通穴
27 溝
28 ガイドリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面の一面に圧接電極が形成された半導体基体と、
前記半導体基体の外縁部を縁取ったコーティング体と、
前記圧接電極に接触した外部圧接電極体と、
前記主面の一面及び前記外部圧接電極体の互いの対向面を前記半導体基体の外側から囲むように前記外部圧接電極体の外周面と前記コーティング体との間にまたがって配置され、変形することにより前記コーティング体にかかる荷重が前記コーティング体を前記半導体基体から剥がすのに要する荷重よりも小さくなる状態を維持した密閉体と、
を備えたことを特徴とする圧接型半導体装置。
【請求項2】
前記密閉体は、前記コーティング体側端部を前記コーティング体の外周面よりも前記半導体基体の中心側で前記コーティング体の前記外部圧接電極体側に接触させた状態で、前記コーティング体側と前記外部圧接電極体側との間の中央部を撓ませていることを特徴とする請求項1記載の圧接型半導体装置。
【請求項3】
前記密閉体の厚みを0.5mm〜2.0mmとしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧接型半導体装置。
【請求項4】
前記コーティング体と前記密閉体とは、シリコーンゴムで形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の圧接型半導体装置。
【請求項5】
前記外部圧接電極体は、外周面に溝が形成され、
前記密閉体は、前記外部圧接電極体側が前記溝に嵌め込まれた状態で変形していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の圧接型半導体装置。
【請求項6】
前記圧接電極とは異なる位置で前記主面の一面に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極に接触した外部ゲート電極と、
前記外部ゲート電極を前記ゲート電極に押し付けている弾性体と、
を備え、
前記外部圧接電極体は、前記圧接電極とは反対方向の荷重を前記弾性体から受けていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の圧接型半導体装置。
【請求項7】
前記圧接電極は、カソード電極からなり、
前記外部圧接電極体は、
外部カソード電極と、
前記外部カソード電極と前記カソード電極との間に設けられ、前記外部カソード電極と前記カソード電極とに接触した状態で、前記外部ゲート電極を支持したカソード歪緩衝板と、
を備えたことを特徴とする請求項6記載の圧接型半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−233704(P2011−233704A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102462(P2010−102462)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】