説明

圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械

【課題】アクチュエータの負荷条件等の影響に関係なく安定した圧油エネルギ回収を可能とし、燃費を向上できる圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械を提供する。
【解決手段】圧油エネルギを蓄積する蓄圧器22と、蓄圧器22に圧力変換した圧油を供給する圧力変換機20と、圧力変換機20の出口側と蓄圧器22とを連結する蓄圧器管路Laと、圧力変換機20の入口側と主回路Lpとを連通する分岐回路Lxと、センターバイパス回路Lcの下流に設けた絞り18と、分岐回路Lxに設けられ、絞り18の上流側の圧力により切り替えられる蓄圧切替弁19と、主回路Lpの圧力を検出する第1の圧力検出器17と、蓄圧器22の圧力を検出する第2の圧力検出器23と、第1及び第2の圧力検出器17,23からの検出信号を取込み、圧力変換機20における可変容量型の油圧ポンプ20Bの容量制御部20Cに指令を出力する制御装置30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の油圧システムに設けられる圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルは、フロント作業機であるブーム、アーム、及びバケットのそれぞれを駆動する油圧シリンダと、旋回体や走行体のそれぞれを駆動する油圧モータ等からなる複数の油圧アクチュエータを有していて、これらの油圧アクチュエータを適宜操作することにより、土砂の掘削、移動等の作業を行うものである。
【0003】
このような油圧ショベルにおいて、油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される複数のアクチュエータと、複数のアクチュエータに供給される圧油の流量及び方向をそれぞれ制御する複数の方向切替弁と、この複数の方向切替弁を通ってタンクに連通するセンターバイパス回路と、油圧回路の回路圧が過大にならないように、所定の圧力以上になると油圧ポンプの吐出油をタンクに排出するリリーフ弁とを備えた油圧システムを用いたものがある。
【0004】
このような油圧システムにおいて、リリーフ弁とリリーフ弁からタンクへの回路と並列にエネルギ回収装置を並べることにより、油圧回路の負荷圧がリリーフ弁の設定圧力以上になり、リリーフ弁からタンクへ排出される高圧な圧油のエネルギをエネルギ回収装置へ迂回させて回収しエネルギ回収装置の慣性、圧力損失、摩擦抵抗等により油圧ポンプからアクチュエータに供給される回路の圧力が変動することを防止し、リリーフ弁作動時の回路の圧力を安定させることにより、アクチュエータの操作性能を良好にしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−140143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術において、リリーフ弁動作時におけるタンクへ排出される高圧の圧油は余剰油として排出されてしまうので、この圧油のエネルギを発電した電気エネルギとして回収することは、エネルギの有効活用が図れ、システムの効率が向上する。
【0007】
しかしながら、上述した従来技術は、アクチュエータの負荷が増加してリリーフ弁が動作した時にのみ、圧油エネルギを電気エネルギとして回収することできるが、アクチュエータの負荷が小さい軽負荷作業が続く場合などは殆どエネルギを回収することができない。このように、エネルギ回収によるシステム効率への寄与度が、アクチュエータの負荷条件によって左右されてしまうという問題があった。
【0008】
また、上述した従来技術は、電気エネルギを利用する構成要素として、発電機、インバータ、バッテリなどの高価な電動デバイスを必要とする為、装置全体としてコスト高になってしまうという問題があった。さらに、回収した多大な電気エネルギを有効利用するには、エンジンのトルクをアシストする電動モータや、旋回用油圧モータに代わる旋回用電動モータ等の電動装置が必要となり、このため、これらを有するハイブリッド式建設機械等でなければ適用できないという問題があった。
【0009】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、高価な電動モータやインバータやバッテリ等の電動用デバイスを備えていない建設機械に適用可能であって、アクチュエータの負荷条件等の影響に関係なく圧油エネルギの回収を可能とし、建設機械の燃費を向上できる圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量及び方向を制御する複数の方向切替弁と、前記油圧ポンプからの圧油を前記方向切替弁に供給する主回路と、前記複数の方向切替弁を通ってタンクに連通するセンターバイパス回路とを有し、前記油圧アクチュエータで使用されない余剰油を圧油エネルギとして回収する圧油エネルギ回収装置であって、圧油エネルギを蓄積する蓄圧器と、前記蓄圧器に圧力変換した圧油を供給する圧力変換機と、前記圧力変換機の出口側と前記蓄圧器とを連結する蓄圧器管路と、前記圧力変換機の入口側と前記主回路とを連通する分岐回路と、前記センターバイパス回路の下流に設けた絞りと、前記分岐回路に設けられ、前記絞りの上流側の圧力により切り替えられる蓄圧切替弁と、前記主回路の圧力を検出する第1の圧力検出器と、前記蓄圧器の圧力を検出する第2の圧力検出器と、前記第1及び第2の圧力検出器からの検出信号を取込み、前記圧力変換機における可変容量型の油圧ポンプの容量制御部に指令を出力する制御装置とを備えたものとする。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記制御装置は、前記第1の圧力検出器で検出した前記主回路の圧力と、前記第2の圧力検出器で検出した前記蓄圧器の圧力とを用いて、前記圧力変換機における可変容量型の油圧ポンプの吐出圧が前記蓄圧器の圧力以上となるように前記圧力変換機における可変容量型の油圧ポンプの目標油圧ポンプ容量を算出する演算部と、前記演算部で算出した前記目標油圧ポンプ容量を前記可変容量型の油圧ポンプの容量制御部へ指令として出力する出力部とを備えた、ことを特徴とする。
【0012】
更に、第3発明は、第1又は第2の発明において、前記蓄圧器と前記複数の方向切替弁の入口側とを連通する回生回路と、前記回生回路に設けた回生弁と、前記複数の方向切替弁を切替操作するパイロット操作部への指令圧力を検出する第3の圧力検出器と、前記第3の圧力検出器で検出した前記パイロット操作部への指令圧力に基づき前記回生弁の開指令を生成する演算部と,前記演算部で生成した開指令を前記回生弁の操作部へ出力する出力部とを有する制御装置を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記絞りは、前記蓄圧器の圧力に応じて前記センターバイパス回路の絞り量を変更する可変絞りであって、前記蓄圧器の圧力が予め設定した設定値以上のときには、前記センターバイパス回路の絞り量を全開とすることを特徴とする。
【0014】
更に、第5の発明は、建設機械であって、第1乃至第4の発明のいずれかを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、センターバイパス回路に導かれたアクチュエータで使用されない余剰油の流量に応じて、主回路の圧油を圧力変換する圧力変換機と、この圧力変換機によって圧力変換した圧油を回収するアキュムレータを設けたので、センターバイパス回路に余剰油が流れると、余剰油による圧油エネルギをアキュムレータに確実に蓄えることができる。この結果、アクチュエータの負荷条件等の影響に関係なく安定した圧油エネルギの回収が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態の構成を示す回路図である。
【図2】図1に示す本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における方向切替弁を拡大して示すシンボル図である。
【図3】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における圧力変換機の制御フローを示すフローチャート図である。
【図4】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における油圧ポンプと回生弁の制御フローを示すフローチャート図である。
【図5】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態におけるポンプ容量指令の特性を示す特性図である。
【図6】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における減トルク制御を説明する特性図である。
【図7】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における減トルク指令の特性を示す特性図である。
【図8】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態の構成を示す回路図である。
【図9】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第3の実施の形態の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態の構成を示す回路図、図2は図1に示す本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における方向切替弁を拡大して示すシンボル図である。本実施の形態において、本発明の圧油エネルギ回収装置は油圧ショベルに適用したものである。図1において、1は動力源であるエンジン、2はエンジン1に駆動される可変容量型の油圧ポンプを示す。この油圧ポンプ2は可変容量機構として例えば斜板を有していて、この斜板の傾転角を容量制御装置2aで調整することにより油圧ポンプ2の容量(押しのけ容積)を変化させ、圧油の吐出流量を制御している。
【0019】
油圧ポンプ2から吐出される圧油を旋回モータ3、アームシリンダ4、ブームシリンダ5の各アクチュエータへ供給する主回路Lpには、圧油の方向と流量を制御する方向切替弁6〜8と、油圧ポンプ2の過負荷を防止するために、主回路Lp内の圧力を制限するリリーフ弁16と、主回路Lpの圧力を検出する圧力センサ17とが設けられている。リリーフ弁16は、油圧配管内の圧力が設定圧力以上に上昇した場合に、主回路Lpの圧油を戻り回路Ltを介してタンク12へ逃がすものである。
【0020】
方向切替弁6〜8は、3位置6ポートの切替弁であって、その各パイロット操作部へ供給されるパイロット圧力により、各スプール位置を切り替えられて、油圧ポンプ2からの圧油を各アクチュエータ3〜5に供給する。ここで、旋回用方向切替弁6は旋回モータ3に、アーム用方向切替弁7はアームシリンダ4に、ブーム用方向切替弁8はブームシリンダ5に、それぞれ対応している。また、各方向切替弁6〜8は、図2に示すように、油圧ポンプ2からの圧油が供給される入口ポート6a,7a,8aと、タンク12に連通する戻り回路Ltに接続される出口ポート6b,7b,8bと、中立位置のときに連通するセンターポート6c,7c,8cと、各アクチュエータ3〜5側に接続する接続ポート6d,6e,7d,7e,8d,8eと、パイロット操作部6f,6g,7f,7g,8f,8gと、中立復帰用のばね6h,6i,7h,7i,8h,8iとを有している。
【0021】
方向切替弁6〜8のパイロット操作部6f,6g,7f,7g,8f,8gへのパイロット圧力がゼロのときには、これら方向切替弁6〜8のスプールは中立位置に配置される。このことにより、各方向切替弁6〜8においてセンターポート6c,7c,8cが連通するので、油圧ポンプ2から供給される圧油は、主回路Lpと各方向切替弁6〜8とを直列に介してセンターバイパス回路Lcへ供給される。主回路Lpは、油圧ポンプ2から吐出される圧油を各方向切替弁6〜8に供給する回路で、油圧ポンプ2と各方向切替弁6〜8のセンターポート6c,7c,8cとを直列に接続するものであり、最下流側で戻り回路Ltと接続されている。
【0022】
方向切替弁6〜8の下流側にはセンターバイパス回路Lcが設けられている。センターバイパス回路Lcは、主回路Lpの圧油を戻り回路Ltに導く回路で、主回路Lpと接続されている。センターバイパス回路Lcの下流側には圧油を昇圧させる固定絞り18が設けられている。センターバイパス回路Lcの上流側である一端側は、方向切替弁6〜8ののうちの最下流側に位置する方向切替弁8に接続されていて、センターバイパス回路Lcの下流側である他端側は、固定絞り18を介してタンク12へ連通する戻り回路Ltと接続されている。戻り回路Ltには、旋回用方向切替弁6,アーム用方向切替弁7,及びブーム用方向切替弁8の出口ポート6b,7b,8bがそれぞれ管路を介して接続されている。
【0023】
回生主回路Lpyは、方向切替弁6の入口ポート6aにアクチュエータである旋回モータ側からの圧油の流出を防止するロードチェック弁9を介して接続されている。また、回生主回路Lpyは、アーム用方向切替弁7の入口ポート7aとブーム用方向切替弁8の入口ポート8aとにアクチュエータであるアームシリンダ4側とブームシリンダ5側からの圧油の流出を防止するロードチェック弁10,11とを介してそれぞれ接続されている。回生主回路Lpyは、後述する回生回路Lyの圧油を各方向切替弁6〜8に供給する回路で、回生回路Lyと各方向切替弁6〜8の入口ポート6a,7a,8aとをそれぞれパラレルに接続している。
【0024】
回生主回路Lpyの下流側は、回生回路Lyを介してアキュムレータ(蓄圧器)22が接続されている。回生回路Lyはアキュムレータ22に蓄圧された圧油を回生主回路Lpyに供給する回路で、アキュムレータ22と回生主回路Lpyを接続する回路である。
【0025】
回生回路Lyと戻り回路Ltとの間には、回生回路Lyの圧力を制限するリリーフ弁24が設けられている。リリーフ弁24は、油圧配管内の圧力が設定圧力以上に上昇した場合に、回生回路Lyの圧油を戻り回路Ltを介してタンク12へ逃がすものである。回生回路Lyとアキュムレータ22には蓄圧管路Laが接続されている。蓄圧管路Laには、チェック弁21を介して後述する圧力変換機20を構成する第2油圧ポンプ20Bが連結されている。
【0026】
回生回路Lyには、2位置2ポートの電磁切替弁である回生弁25と、この回生弁25から回生主回路Lpyを介して各方向切替弁6〜8の入口側へ圧油の流入を許可する回生チェック弁26とが接続されている。
【0027】
回生弁25は、一端側にばね25bを有し、コントローラ30からの電気指令が電磁操作部25aに出力されるように構成されている。コントローラ30から閉指令が出力される場合には、ポートは遮断され、回生回路Lyを遮断し、開指令が出力されると、ポートを連通し、回生回路Lyを連通状態にして、アキュムレータ22から圧油を回生主回路Lpyに流入させる。
【0028】
主回路Lpにおいて、最上流に配置される方向切替弁6の上流側には、主回路Lpから分岐された分岐管路Lxの一端側が接続されている。分岐管路Lxには蓄圧切換弁19が設けられていて、他端には、圧力変換機20の油圧モータ20Aが接続されている。
【0029】
圧力変換機(圧力変換手段)20は、油圧モータ20Aと第2油圧ポンプ20Bとから構成され、互いに駆動軸で連結され、油圧モータ20A側に圧油が供給されるとその圧油による駆動トルクが発生し、第2油圧ポンプ20Bが同時に駆動される。この時、第2油圧ポンプ20Bの容量を変えることで、油圧モータ20Aの入口の圧力を第2油圧ポンプ20Bの出口の圧力に変換することが出来る。第2油圧ポンプ20Bから吐出される圧油は、圧力変換機20の第2油圧ポンプ20Bとアキュムレータ22とを接続する管路で、第2油圧ポンプ20Bからアキュムレータ22への圧油の供給のみを許容するチェック弁21が設けられている蓄圧管路Laを経て、アキュムレータ22へ蓄圧されるようになっている。圧力変換機20における油圧モータ20Aの入口側は、分岐管路Lxを介して主回路Lpに連結している。
【0030】
蓄圧切替弁19は、一端側にばね19bを、他端側に操作部19aを備えている。操作部19aには、センターバイパス回路Lcに発生する圧力を指令圧とするために、管路Lcaの一端が接続されている。管路Lcaの他端は、センターバイパス回路Lcに設けた固定絞り18の上流側に接続されている。蓄圧切替弁19は、指令圧である固定絞り18の上流側の圧力がばね19bの所定のばね圧(予め設定された圧力)より低い場合には、ポートを遮断し、分岐管路Lxと圧力変換機20における油圧モータ20Aの入口側との連通を遮断する。一方、指令圧が予め設定された圧力を超えると、ポートが連通し、分岐管路Lxから圧力変換機20における油圧モータ20Aの入口側への圧油の流入が許容される。例えば、センターバイパス回路Lcの流量が増加すると、これに伴い固定絞り18の通過圧力損失によりその上流側に圧力が発生し、この圧力が蓄圧切替弁19の操作部19aに供給され、蓄圧切替弁19を開く。このことにより、主回路Lpの圧油が分岐管路Lxを介して圧力変換機20における油圧モータ20Aに導かれる。
【0031】
本実施の形態においては、油圧モータ20Aは固定容量型、第2の油圧ポンプ20Bは可変容量型であって、第2油圧ポンプ20Bの第2容量制御装置20Cには、コントローラ30から電気指令が出力されて容量制御が行われている。
【0032】
各アクチュエータ3〜5への指令入力手段である操作レバーは、旋回レバー13、アームレバー14、及びブームレバー15で構成されている。各操作レバーは図示しないパイロット弁を有していて、各々が操作量にほぼ比例したパイロット圧力を発生する。旋回レバー13のパイロット圧力は、操作方向に応じて旋回用方向切替弁6の両操作部6f,6gに接続された各パイロット回路のいずれかに供給され、同様にアームレバー14のパイロット圧力は、アーム用方向切替弁7の操作部7f,7gに接続された各パイロット回路に供給され、ブームレバー15のパイロット圧力は、ブーム用方向切替弁8の操作部8f,8gに接続された各パイロット回路に供給される。
【0033】
旋回レバー13の各パイロット回路には、これらのパイロット圧力を検出する指令圧力センサ13aと13bとを設け、アームレバー14の各パイロット回路には、これらのパイロット圧力を検出する指令圧力センサ14aと14bとを設けている。同様に、ブームレバー15の各パイロット回路には、これらのパイロット圧力を検出する指令圧力センサ15aと15bとを設けている。これらの指令圧力センサ13a〜15bからの検出信号は、コントローラ30に入力されている。
【0034】
圧力センサ17は主回路Lpの圧力を検出する。また、圧力センサ23はアキュムレータ22の圧力を検出するために、回生回路Lyに設けられている。圧力センサ17からの主回路Lpの圧力検出信号と、圧力センサ23からのアキュムレータ22の圧力検出信号とはコントローラ30に入力されている。
【0035】
コントローラ(制御装置)30は、各圧力センサ13a〜15b,17,23からの検出信号を取込む入力部と、これらも検出信号を基に後述する演算処理を実行する演算部と、油圧ポンプ2の容量制御装置2aと圧力変換機20を構成する第2油圧ポンプ20Bの第2容量制御装置20Cとに演算部で算出した各容量制御指令を出力すると共に、回生弁25の電磁操作部25aに演算部で算出した開閉指令を出力する出力部とを備えている。コントローラ30は、圧力変換機20を構成する第2油圧ポンプ20Bと油圧ポンプ2の容量制御を行う容量制御手段と、回生弁25の開閉制御を行う回生制御手段とを備えている。
【0036】
次に、本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における動作について説明する。
図1において、全ての操作レバー13〜15の操作量がゼロ(非操作)の場合、油圧ポンプ2から主回路Lpへ吐出される圧油は、方向切替弁6〜8のセンターポート6c〜8cを介して、全流量がセンターバイパス回路Lcへ供給される。この時、コントローラ30からの指令信号を受けて油圧ポンプ2の容量制御装置2aは、油圧ポンプ2の容量を最小としている。また、この状態においてエンジン1がローアイドル回転数で運転される時にセンターバイパス回路Lcの固定絞り18上流側に生起する圧力では、蓄圧切替弁19は開動作しないように、ばね19bのばね圧(設定圧)が設定されている。
【0037】
次に、操作レバーの1つであるアームレバー14が操作されると、アーム用方向切替弁7が切り替わり、主回路Lpの圧油はアームシリンダ4へ導かれ、ピストンロッドに連結したアームが駆動する。この状態において、アームシリンダ4で使用されなかった余剰油がセンターバイパス回路Lcに流入し、固定絞り18の上流側に生起する圧力を上昇させる。
【0038】
センターバイパス回路Lcの固定絞り18上流側に生起する圧力が上昇し、蓄圧切替弁19の操作部に供給される圧油の圧力が設定圧を超えると、蓄圧切換弁19が開き、主回路Lpの圧油が分岐管路Lxを介して圧力変換機20における油圧モータ20Aに導かれる。
【0039】
コントローラ30は、圧力センサ17が検出した主回路Lpの圧力と圧力センサ23が検出したアキュムレータ22の圧力とに応じて、圧力変換機20の第2容量制御装置20Cに第2油圧ポンプ20Bの吐出圧を蓄圧管路Laの圧力以上とする指令信号を出力する。このことにより、圧力変換機20に供給される主回路Lpの圧油の圧力に関わらず、圧力変換機20から吐出する圧油の圧力を蓄圧管路Laの圧力以上に変換することができる。この圧力変換機20から吐出する圧油の圧力は、蓄圧管路Laの圧力より高いので、チェック弁21が開動作し、蓄圧管路Laへ導かれ、アキュムレータ22で圧油を蓄圧することができる。この結果、センターバイパス回路Lcの余剰油の増加時に圧油エネルギを確実に回収することができる。
【0040】
このように、蓄圧切替弁19と圧力変換機20の動作によって、蓄えられた圧油エネルギは、以下のように回生使用する。
例えば、旋回レバー13が操作されると、旋回用方向切替弁6が切り替わり、主回路Lpの圧油は旋回モータ3へ導かれ、駆動される。コントローラ30は、旋回レバー13の操作により発生するパイロット圧力値を入力し、これらの値と予め定めた設定値とを比較し、入力値が設定値を超えると、回生弁25に開指令を出力する。回生弁25が開動作すると、アキュムレータ22に蓄えられた圧油は、回生回路Lyから回生チェック弁26を通り、回生主回路Lpyに供給される。
【0041】
これにより、旋回モータ3が必要とする圧油の流量が回生回路Lyと回生主回路Lpyとから供給されるので、油圧ポンプ2の吐出流量を減らすことが出来る。この結果、エンジン1の出力を減らすことが出来るので、燃費を向上させることができる。
【0042】
次に、圧力変換機20の制御について図3を用いて説明する。図3は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における圧力変換機の制御フローを示すフローチャート図である。図3において、図1及び図2に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0043】
まず、スタートの状態としては、例えば、オペレータが油圧ショベルのキースイッチ(図示せず)をONにした状態とする。
【0044】
これにより、コントローラ30は、圧力センサ17からの主回路Lpの圧力Pmと圧力センサ23からのアキュムレータ22の圧力Pacのデータを取り込む(ステップS101)。
【0045】
次に、コントローラ30の演算部は、圧力変換機20の第2油圧ポンプ20Bの目標油圧ポンプ容量qpを演算する(ステップS102)。具体的には、詳細を後述するが、検出されたアキュムレータ22の圧力Pacと、検出された主回路Lpの圧力Pmと、固定容量である油圧モータ20Aの容量qmとを用いて、第2油圧ポンプ20Bの目標油圧ポンプ容量qpを演算する。
【0046】
次に、コントローラ30の出力部は、第2油圧ポンプ20Bの第2容量制御装置20Cへ目標ポンプ容量となるように指令信号を出力する(ステップS103)。このようにして、圧力変換機20の第2油圧ポンプ20Bの容量制御が実行される。
【0047】
次に、コントローラ30の演算部が算出する第2油圧ポンプ20Bの目標油圧ポンプ容量qpの算出手順について説明する。予め計測等により設定された圧力変換機20の変換損失をηとすると、油圧モータ20Aの入力油圧動力(=Pm・qm)と、油圧モータ20Aと駆動軸で接続された第2油圧ポンプ20Bの出力動力(=Pac・qp・η)とが釣り合うので、Pm・qm=Pac・qp・ηという等式が成り立つ。この結果、第2油圧ポンプ20Bの目標油圧ポンプ容量qpは、次の式(1)に従って算出される。
qp=(Pm・qm)/(Pac・η)・・・・(1)
ここで、Pmはモータ入口圧力である主回路Lpの圧力、qmは油圧モータ20Aの容量、Pacはアキュムレータ22の圧力、qpは第2油圧ポンプ20Bの目標油圧ポンプ容量、ηは圧力変換機20の変換損失とする。
【0048】
第2油圧ポンプ20Bの吐出油はチェック弁21を経て蓄圧管路Laへ導かれるが、チェック弁21の通過抵抗は微小なので無視することができる。したがって、第2油圧ポンプ20Bが目標油圧ポンプ容量qpで動作した場合の吐出圧力はアキュムレータ22の圧力Pacと等しくなる。コントローラ30の演算部は、この目標油圧ポンプ容量qpを若干上回る値を目標指令として第2油圧ポンプ20Bの第2容量制御装置20Cへ出力している。
【0049】
コントローラ30は、このように第2油圧ポンプ20Bの容量qpを制御しているので、油圧モータ20Aの入口の圧力の大小に関わらず、圧力変換機20から吐出した圧油をアキュムレータ22に蓄圧することができる。
【0050】
次に、油圧ポンプ2と回生弁25の制御について図4を用いて説明する。図4は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における油圧ポンプと回生弁の制御フローを示すフローチャート図である。
まず、スタートの状態としては、例えば、オペレータが油圧ショベルのキースイッチ(図示せず)をONにした状態とする。
【0051】
これにより、コントローラ30は、各操作レバー13〜15の指令圧を検出するために、各圧力センサ13a〜15bからの各パイロット圧力のデータを取り込む(ステップS201)。
【0052】
次に、検出した各操作レバーの指令圧の最大値を算出する(ステップS202)。具体的には、(ステップS201)で取り込んだ各パイロット圧力データの中から最大値Pi_maxを算出する。
【0053】
次に、最大値Pi_maxが予め定めた設定圧力Pi_setより高いか否かの判断を行う(ステップS203)。ここで、最大値Pi_maxが予め定めた設定圧力Pi_setより高い場合とは、オペレータによりいずれかの操作レバーが所定量以上操作された場合であり、アクチュエータ3〜5のいずれかにおいて、駆動するための圧油の増流量が要求される場合である。このような場合に、アキュムレータ22から圧油を回生主回路Lpyへ回生することで、その回生流量に応じて、油圧ポンプ2の出力トルクを低減することができる。最大値Pi_maxが設定圧力Pi_setより高い場合は、(ステップS204)に進み、それ以外の場合は、(ステップS206)へ進む。
【0054】
コントローラ30は、圧力センサ23からのアキュムレータ22の圧力Pacのデータを取り込む(ステップS204)。
【0055】
次に、アキュムレータ22の圧力Pacが予め定めた回生するのに必要な設定圧力Pac_setより高いか否かの判断を行う(ステップS205)。アキュムレータ22の圧力Pacが設定圧力Pac_setより高い場合は、(ステップS208)に進み、それ以外の場合は、(ステップS206)へ進む。
【0056】
(ステップS205)において、アキュムレータ22の圧力Pacが設定圧力Pac_set以下と判断された場合、コントローラ30は、回生弁25へ閉指令を出力する(ステップS206)。具体的には、回生弁25の電磁操作部25aへの励磁信号を遮断する。このことにより、回生弁25は、閉状態となり、回生主回路Lpyと回生回路Lyとは遮断される。
【0057】
次に、コントローラ30は、油圧ポンプ2の容量制御装置2aに対して後述する減トルク指令としてΔT=0を出力して、補正信号を付加しない制御を実行する(ステップS207)。本ステップを実行後スタートにリターンする。
【0058】
(ステップS205)において、アキュムレータ22の圧力Pacが設定圧力Pac_setより高いと判断された場合、コントローラ30は、回生弁25へ開指令を出力する(ステップS208)。具体的には、回生弁25の電磁操作部25aへの励磁信号を出力する。このことにより、回生弁25は、開動作し連通状態となり、アキュムレータ22に蓄えられた圧油は、回生回路Lyから回生チェック弁26を通り、回生主回路Lpyに供給される。
【0059】
次に、油圧ポンプ2のトルク補正制御を実行する(ステップS209)。具体的には、後述する油圧ポンプ減トルク指令値ΔTを演算し、この減トルク指令値に相当する指令値を油圧ポンプ2の容量制御装置2bに対して出力する。本ステップを実行後(ステップS201)へ戻る。
【0060】
次に、油圧ポンプ2の容量制御装置2aの容量制御等について図5乃至図7を用いて説明する。図5は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態におけるポンプ容量指令の特性を示す特性図、図6は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における減トルク制御を説明する特性図、図7は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における減トルク指令の特性を示す特性図である。図5乃至図7において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0061】
油圧ポンプ2の容量制御装置2aへ出力される指令値は、コントローラ30において、以下のステップで算出されている。
(1)全ての操作レバー13〜15の指令圧である各圧力センサ13a,13b,14a,14b,15a,15bからの各パイロット圧力のデータをコントローラ30に取り込む。
(2)これらデータから最高圧力Pi_maxを演算する。
(3)算出した最高圧力Pi_maxと図5に示す予め設定されているポンプ容量指令特性とに基づき、油圧ポンプ2の指令容量qを算出し、この指令容量qが実現する指令値を容量制御装置2aへ出力している。
【0062】
このように、油圧ポンプ2の吐出容量は、全ての操作レバー13〜15の指令圧の最高圧力から決定されている。
【0063】
次に、減トルク制御について図6及び図7を用いて説明する。通常、油圧ポンプ2はエンジン1のストールを防止する為に、ポンプ吸収トルクを制限している。図6は縦軸をポンプ容量q、横軸をポンプ吐出圧力P(主回路Lpの圧力と等しい)として、ポンプ吐出圧力Pに対応したポンプ容量qの特性を示している。ここで、ポンプ吐出圧力Pが低い値の領域においては、ポンプ容量qは最大容量qmax出力可能であるが、ポンプ吐出圧力Pの増加に伴って制限トルクTを超えないように、ポンプ容量qを減少させている。この制限曲線以下にポンプ容量qを制御することで、ポンプの吸収トルクは制限トルクTを超えることはない。
【0064】
図7は縦軸を減トルク値ΔT、横軸をアキュムレータ22の圧力Pacとして、アキュムレータ22の圧力Pacに対応した減トルク値ΔTの特性を示している。減トルク値△Tは、予め設定された設定圧力Pac_setよりもアキュムレータ22の圧力Pacが高い圧力の時に、上述した制限トルクTを△Tだけ減少させ、ポンプの吸収トルクを少なくする制御である。
【0065】
このように、アキュムレータ22の圧力Pacが高ければ高い程、回生可能な動力が大きくなり、その分だけ油圧ポンプ2の出力トルクを少なくすることができる。油圧ショベルの場合、エンジン1の回転数を一定で運転するので、負荷トルクが下がれば、その結果エンジン1の出力を下げることになり、燃費削減効果を得ることが出来る。
【0066】
また、センターバイパス回路Lcにおける圧力変動は、固定絞り18による圧力上昇程度のみで、変動幅を低く抑えることができる。このことにより、各アクチュエータ3〜5の操作性への影響を減らすことができる。
【0067】
上述した本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態によれば、センターバイパス回路Lcに導かれたアクチュエータで使用されない余剰油の流量に応じて、主回路Lpの圧油を圧力変換する圧力変換機20と、この圧力変換機20によって圧力変換した圧油を回収するアキュムレータ22とを設けたので、センターバイパス回路Lcに余剰油が流れると、余剰油による圧油エネルギをアキュムレータ22に確実に蓄えることができる。この結果、アクチュエータの負荷条件等の影響に関係なく安定した圧油エネルギの回収が実現できる。
【0068】
また、上述した本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態によれば、アキュムレータ22に蓄えた圧油のエネルギを回生主回路Lpyに回生することができるので、エネルギ消費効率が向上し、建設機械の大幅な燃費の向上を図ることができる。
【0069】
更に、上述した本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態によれば、センターバイパス回路Lcの圧力変動幅を低く抑えることができるので、各アクチュエータ3〜5の操作性への影響を減らすことができる。この結果、オペレータに対する負担が軽減され生産性が向上する。
【0070】
また、上述した本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態によれば、アキュムレータ22に蓄圧された圧油エネルギを、操作レバー入力時に回生主回路Lpyへ回生し、その回生流量に応じて、油圧ポンプ2の出力トルクを低減することができる。このことにより、少ない油圧ポンプ2負荷でアクチュエータ動力を得ることができ、トルク低減分の燃費を向上させることができる。
【0071】
更に、上述した本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態によれば、圧油エネルギを圧油の状態で蓄えることができるので、回生使用時の変換装置が不要となり変換ロスも発生しない。この結果、エネルギ消費効率が向上し、建設機械の大幅な燃費の向上が図れる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、アキュムレータ22の圧力Pacに基づく減トルク制御を行っているので、顕著な燃費削減効果を得ることが出来る。
【0073】
なお、本実施の形態においては、蓄圧切替弁19の開閉操作を、センターバイパス回路Lcの固定絞り18の上流側の圧力信号を指令圧とするように操作部19aに管路を接続して構成したが、これに限るものではない。例えば電磁切替弁で構成してコントローラ30からの指令で開閉しても良い。この場合、圧力センサ23が検出するアキュムレータ22の圧力Pacが設定値以上の場合には、前記油圧ポンプから吐出される圧油の前記圧力変換機へ遮断制御してもよい。この結果、アキュムレータ22に過大な圧油を供給することが防止できる。
【実施例2】
【0074】
以下、本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。図8は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態の構成を示す回路図である。図8において、図1乃至図7に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0075】
図8に示す本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の油圧源と作業機等とで構成されるが、以下の構成が異なる。
【0076】
第1の実施の形態における固定絞り18を省略し、可変絞りとして切替弁27をセンターバイパス回路Lcに設けている。センターバイパス回路Lcの上流側である一端側は、方向切替弁6〜8の下流側に接続されていて、センターバイパス回路Lcの下流側である他端側は、切替弁27のポートを介してタンク12へ連通する戻り回路Ltと接続されている。
【0077】
切替弁27は、一端側にばね27bを有し、アキュムレータ22の圧力Pacを指令圧とするように回生回路Lyのリリーフ弁24の上流側から操作部27aに管路を接続して構成されている。切替弁27は、指令圧であるアキュムレータ22の圧力Pacがばね27bの所定のばね圧(予め設定された圧力)より低い場合には、ポートを遮断し、センターバイパス回路Lcと戻り回路Ltとの連通を遮断する。一方、指令圧が上昇し予め設定された圧力を超えると、ポートが連通し、センターバイパス回路Lcから戻り回路Ltへ圧油が流入する。このように、切替弁27は、アキュムレータ22の圧力に応じてセンターバイパス回路Lcの絞り量を変更する可変絞りの機能を備える。例えば、切替弁27が全開となる設定圧力をリリーフ弁24のクラッキング圧力を超えた値とすれば、アキュムレータ22の圧力Pacがこのクラッキング圧力を超えた場合に、センターバイパスされた圧油を全開してタンク12へ逃がす。
【0078】
このように、アキュムレータ22の圧力Pacに応じてセンターバイパス回路Lcの絞り量を可変制御するので、アキュムレータ22の圧力Pacが十分に蓄圧された場合には、絞り量を全開として、蓄圧切替弁19の操作部19aに接続された管路Lcaに指令圧力を生成させない。このことにより、蓄圧切替弁19は開動作しない。この結果、蓄圧切替弁19を開き続けて、圧力変換機20を無負荷駆動させて、圧力の固定損失分を発生させることを防止できる。
【0079】
上述した本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、アキュムレータ22の圧力が設定圧よりも高いとき、可変絞りである切替弁27が全開するので、作業機が待機状態であっても、エネルギの無駄を減少させることができる。
【実施例3】
【0080】
以下、本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第3の実施の形態を図面を用いて説明する。図9は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第3の実施の形態の構成を示す回路図である。図9において、図1乃至図8に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0081】
図9に示す本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第3の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の油圧源と作業機等とで構成されるが、以下の構成が異なる。
【0082】
第1の実施の形態におけるセンターバイパス回路Lcにおいて、固定絞り18の流れ方向に並列の管路を設け、この管路にセンターバイパス回路Lcの圧力を制限するリリーフ弁28が設けられている。固定絞り18の上流側のセンターバイパス回路Lcに一の分岐管路の一端を接続し、一の分岐管路の他端をリリーフ弁28の入口側に接続している。固定絞り18の下流側のセンターバイパス回路Lcに他の分岐管路の他端を接続し、他の分岐管路の一端をリリーフ弁28の出口側に接続している。
【0083】
リリーフ弁28の設定圧力は、蓄圧切替弁19を全開とするセンターバイパス回路Lcの圧力より高い圧力に設定されている。このことにより、センターバイパス回路Lcを流れる圧油の流量が急激に増大した場合であっても、センターバイパス回路Lcの圧力過大を回避することができる。
【0084】
上述した本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第3の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、センターバイパス回路Lcにおいて、固定絞り18に対して並列にリリーフ弁28が設けられているので、例えば、油圧ポンプが最大流量を吐出している状態から急激に操作レバーを中立位置に戻されて、センターバイパス回路Lcに大流量の圧油が流入しても、リリーフ弁28が作動してこれらの圧油を戻り回路Ltへ排出できる。このことにより、主回路Lpの圧力が急上昇してエンジン負荷を無駄に増大させることを回避できる。
【符号の説明】
【0085】
1 エンジン
2 油圧ポンプ
2a 容量制御装置
3 旋回用方向切替弁
4 アーム用方向切替弁
5 ブーム用方向切替弁
6 旋回モータ
7 アームシリンダ
8 ブームシリンダ
9 ロードチェック弁
12 タンク
13 旋回レバー
14 アームレバー
15 ブームレバー
16 リリーフ弁
17 圧力センサ
18 固定絞り
19 蓄圧切替弁
20 圧力変換機
20A 油圧モータ
20B 第2油圧ポンプ
20C 第2容量制御装置
21 チェック弁
22 アキュムレータ
23 圧力センサ
24 リリーフ弁
25 回生弁
26 回生チェック弁
27 切替弁(可変絞り)
30 コントローラ
Lp 主回路
Lc センターバイパス回路
La 蓄圧管路
Lt 戻り回路
Lx 分岐管路
Ly 回生回路
Lpy 回生主回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量及び方向を制御する複数の方向切替弁と、前記油圧ポンプからの圧油を前記方向切替弁に供給する主回路と、前記複数の方向切替弁を通ってタンクに連通するセンターバイパス回路とを有し、前記油圧アクチュエータで使用されない余剰油を圧油エネルギとして回収する圧油エネルギ回収装置であって、
圧油エネルギを蓄積する蓄圧器と、
前記蓄圧器に圧力変換した圧油を供給する圧力変換機と、
前記圧力変換機の出口側と前記蓄圧器とを連結する蓄圧器管路と、
前記圧力変換機の入口側と前記主回路とを連通する分岐回路と、
前記センターバイパス回路の下流に設けた絞りと、
前記分岐回路に設けられ、前記絞りの上流側の圧力により切り替えられる蓄圧切替弁と、
前記主回路の圧力を検出する第1の圧力検出器と、
前記蓄圧器の圧力を検出する第2の圧力検出器と、
前記第1及び第2の圧力検出器からの検出信号を取込み、前記圧力変換機における可変容量型の油圧ポンプの容量制御部に指令を出力する制御装置とを備えた
ことを特徴とする圧油エネルギ回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧油エネルギ回収装置において、
前記制御装置は、
前記第1の圧力検出器で検出した前記主回路の圧力と、前記第2の圧力検出器で検出した前記蓄圧器の圧力とを用いて、前記圧力変換機における可変容量型の油圧ポンプの吐出圧が前記蓄圧器の圧力以上となるように前記圧力変換機における可変容量型の油圧ポンプの目標油圧ポンプ容量を算出する演算部と、
前記演算部で算出した前記目標油圧ポンプ容量を前記可変容量型の油圧ポンプの容量制御部へ指令として出力する出力部とを備えた、
ことを特徴とする圧油エネルギ回収装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧油エネルギ回収装置において、
前記蓄圧器と前記複数の方向切替弁の入口側とを連通する回生回路と、
前記回生回路に設けた回生弁と、
前記複数の方向切替弁を切替操作するパイロット操作部への指令圧力を検出する第3の圧力検出器と、
前記第3の圧力検出器で検出した前記パイロット操作部への指令圧力に基づき前記回生弁の開指令を生成する演算部と,前記演算部で生成した開指令を前記回生弁の操作部へ出力する出力部とを有する制御装置を備えた
ことを特徴とする圧油エネルギ回収装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧油エネルギ回収装置において、
前記絞りは、前記蓄圧器の圧力に応じて前記センターバイパス回路の絞り量を変更する可変絞りであって、前記蓄圧器の圧力が予め設定した設定値以上のときには、前記センターバイパス回路の絞り量を全開とする
ことを特徴とする圧油エネルギ回収装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧油エネルギ回収装置を備えた
ことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−87869(P2013−87869A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229266(P2011−229266)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】