説明

圧着性異方導電性樹脂組成物及び弾性異方導電部材

【解決手段】 (A)1分子中に平均2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン
100質量部、
(B)接着性向上剤 0.1〜10質量部、
(C)シリカ微粉末 0〜100質量部、
(D)金属被覆導電粒子 0.1〜10質量部、
(E)(A)成分の硬化剤 硬化有効量
を構成成分とし、圧着することにより異方導電性となることを特徴とする圧着性異方導電性樹脂組成物。
【効果】 本発明の圧着性異方導電樹脂組成物によれば、導電性微粒子が電極の高さのばらつきを吸収して、全端子が安定した接続状態にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICベアチップ等の電極と相対峙させた回路基板の電極を接続固定するのに用いられる圧着性異方導電性樹脂組成物、及び弾性異方導電部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近来、電子部品の小型化、薄型化、高性能化等が進んでおり、それと共に経済的な高密度実装技術の開発が活発に行われている。これらの微細回路の接続は、従来のハンダやゴムコネクターでは対応が困難であることから、分解能に優れた異方導電性の材料が多用されるようになって来た。この方法は、例えば液晶表示モジュール(LCD)とTAB(Tape Automated Bonding)又はFPC(Flexible Print Circuit)の基板の微細電極同士を接続するに際し、導電性微粒子を所定量含有した接着剤からなる異方導電性樹脂を相対峙させた電極間に挾み、加熱加圧することにより複数の電極を一括接続するものである。
【0003】
ここで使用されている導電性微粒子は、従来から金属微粉末、めっき等で金属被覆を行った有機系又は無機系の粒子などが用いられている。金属微粉末については、一般に粒度分布が広く、導電性、絶縁性、接続メカニズム等による影響により接続信頼性に問題がある。また、プラスチック微粒子に金属被覆した導電性微粒子では、粒度分布の狭いものが得られるが、凝集しやすい欠点があり、更に電極同士の接続における接触面積が小さく、両電極への保持力も小さいため、凝集を起こさない添加量で高精細化に対応することは、極めて困難な状況である。
【0004】
一方、近年液晶表示モジュール等の高精細化、高信頼性化が進み、従来の電極ピッチ200μm(5本/mm)程度から100μm以下(10本/mm以上)が要求されて来ており、今後更なる高分解能化が求められている。更には、電子部品の軽薄短小化や高性能化が急速に進む中で、ベアチップをガラス基板上に直接接続する実装技術、所謂COG(Chip on Glass)技術、あるいはプリント基板上に直接接続する実装技術、所謂COB(Chip on Boad)技術等を異方導電性材料を用いて行おうとする動きが強まって来ている。これに伴い、異方導電性材料中に添加される導電性微粒子に関しても、電極同士の接続信頼性において、更なる特性の向上が求められている。
【0005】
特開昭51−135938号公報(特許文献1)、特開平5−21094号公報(特許文献2)、特開平8−7658号公報(特許文献3)、特開平10−184962号公報(特許文献4)に、ポリマー微粒子に金属メッキした導電粒子を使用し、接続信頼性の高い異方導電性接着フィルムが報告されている。しかしながら、微細な隣接回路間ピッチ接続では十分な導電性と接着強度が同時に得られない可能性がある。
【0006】
異方導電性樹脂によるベアチップの実装技術を考えた場合、各種の性能が要求される。その一つは、微細接続における接続信頼性である。従来の異方導電性樹脂における高分解能化に対する考え方は、隣接回路との絶縁性を確保するために導電性微粒子の粒径を回路間の絶縁部分よりも小さくし、併せて導電性微粒子同士が接触しない程度に添加量を調整し、回路接続部の導通性を得ることであった。しかしながら、導電性微粒子の粒径を小さくすると、粒子数の著しい増加及び表面積の増加により、粒子は二次凝集を起こして隣接回路との絶縁性が保持できなくなる。また、粒子の添加量を減少すると、接続すべき回路上の導電性微粒子の数が減少することから接触点の数が不足し、回路接続部の導通性が得られ難くなるために、接続信頼性を保ちながら高分解能化することは極めて困難であった。
【0007】
他の一つは、IC等のベアチップ電極の高さのばらつき、ガラス基板側又はプリント基板側の高さのばらつき等による接続時の不安定性を如何に解決するかである。導電性微粒子がこれらの高さのばらつきを吸収して、全端子が安定した接続状態にすることが求められる。
【0008】
【特許文献1】特開昭51−135938号公報
【特許文献2】特開平5−21094号公報
【特許文献3】特開平8−7658号公報
【特許文献4】特開平10−184962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ICベアチップ等の電極と相対峙させた回路基板の電極を接続固定した際に、高い接続信頼性を与える圧着性異方導電性樹脂組成物、及び弾性異方導電部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、1分子中に平均2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンをベース樹脂として使用し、これに金属被覆導電粒子を接着性向上剤と共に配合することが有効であることを知見した。即ち、本発明は、上述した従来の異方導電材料の接続安定性をより高めるために、バインダーとしてシリコーンポリマーを用いたことに特徴があり、シリコーンポリマーの優れた特性により得られた弾性異方導電部材は、低温から高温に亘る広い温度範囲、あるいはヒートショック環境においても安定した接続抵抗を得ることができるものである。また、この場合、金属被覆導電粒子の基材粒子としてガラスバルーン等の中空粒子を用いる場合には、電極同士の接続の際、加圧により導電粒子が破壊するため、保持力が優れ、高分解能であり、接続信頼性の優れた異方導電部材を提供できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、
(A)1分子中に平均2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン
100質量部、
(B)接着性向上剤 0.1〜10質量部、
(C)シリカ微粉末 0〜100質量部、
(D)好ましくは平均粒径が1〜50μmであり、特に基材粒子が中空粒子であり、真比重が5以下である金属被覆導電粒子 0.1〜10質量部、
(E)(A)成分の硬化剤 硬化有効量
を構成成分とし、圧着することにより異方導電性となることを特徴とする圧着性異方導電性樹脂組成物、及びこの組成物を圧着加熱硬化することによって得られ、電極と電極との間を接続固定する弾性異方導電部材を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の圧着性異方導電樹脂組成物によれば、導電性微粒子が電極の高さのばらつきを吸収して、全端子が安定した接続状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の圧着性異方導電樹脂組成物は、下記(A)〜(E)成分を含有してなるものである。なお、本明細書中において、室温とは25℃を意味する。
【0014】
<(A)オルガノポリシロキサン>
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、この組成物の主剤であり、1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する。(A)成分のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等の通常炭素数2〜8、好ましくは2〜4程度のものが挙げられ、特に、ビニル基であることが好ましい。
【0015】
(A)成分中におけるケイ素原子に結合したアルケニル基の結合位置としては、例えば、分子鎖末端及び/又は分子鎖側鎖が挙げられる。(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などの、通常、炭素数1〜12、好ましくは1〜10程度の、非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基が挙げられ、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0016】
なお、(A)成分中のアルケニル基の含有量は、ケイ素原子に結合した1価の有機基(又は、非置換又は置換一価炭化水素基)全体に対して0.001〜10モル%、特に0.01〜5モル%程度であることが好ましい。
【0017】
このような(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状が挙げられるが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい(なお、ここでのオルガノ基にはアルケニル基も包含し得る。)。その重合度は100〜10万、特に150〜2万である。
【0018】
<(B)接着性向上剤>
(B)成分の接着性向上剤は、液晶表示モジュール(LCD)とTAB又はFPCの基板の微細電極に対する接着性を向上させる作用を有する成分である。この接着性向上剤は、組成物の自己接着性を向上させることができるものであれば特に限定されない。例えば、有機ケイ素化合物系接着性向上剤及び非ケイ素系有機化合物系接着性向上剤が挙げられる。具体的には、有機ケイ素化合物系接着性向上剤としては、例えば、有機ケイ素化合物からなる接着性向上剤が挙げられ、非ケイ素系化合物系接着性向上剤としては、例えば、有機酸アリルエステル、エポキシ開環触媒又は有機チタン化合物からなる接着性向上剤が挙げられる。これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
有機ケイ素化合物としては、例えば、ケイ素原子に直接結合した、ビニル基、アリル基等のアルケニル基;γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等の、アルキレン基等の炭素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基;γ−アクリロキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基等の、アルキレン基等の炭素原子を介してケイ素原子に結合したアクリロキシ基、メタクリロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;エステル構造、ウレタン構造、エーテル構造を1〜2個含有していてもよい、アルキレン基を介してケイ素原子に結合したトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等のアルコキシシリル基;イソシアネート基;及びSiH基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基をそれぞれ有するオルガノシラン、ケイ素原子数3〜100、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜20の、直鎖状又は環状のシロキサンオリゴマー、トリアリルイソシアヌレートの(アルコキシ)シリル変性物、そのシロキサン誘導体等が挙げられ、これらの官能基を一分子中に2種以上有するものが好ましい。
【0020】
このような有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
有機チタン化合物は、分子中にケイ素原子を有しないものであって、その具体例としては、テトラブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン、チタニウムステアレート、テトラオクチルオキシチタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコレート、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムエチルアセトネート、チタニウムラクトネート、これらの縮合反応生成物であるオリゴマー及びポリマー等が挙げられる。
【0024】
また、(B)成分として、エポキシ当量が100〜5,000g/molの有機酸アリルエステル、エポキシ当量が100〜5,000g/molのエポキシ開環触媒、エポキシ当量が100〜5,000g/molの有機ケイ素化合物、分子中にアルケニル基及び/又はヒドロシリル基とアルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物、窒素原子を含有する有機ケイ素化合物、並びに炭素原子数12以上の有機チタン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0025】
この場合、有機酸アリルエステルの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸等不飽和カルボン酸等のアリルエステル;安息香酸アリルエステル、フタル酸ジアリルエステル、ピロメリット酸テトラアリルエステル等の芳香族カルボン酸アリルエステル;酢酸アリルエステル、プロピオン酸アリルエステル、酪酸アリルエステル、吉草酸アリルエステル、ラウリン酸アリルエステル等の飽和脂肪酸アリルエステル等が挙げられる。エポキシ開環触媒の例としては、分子中にケイ素原子を有しないものであって、例えば、有機金属キレート、アミン系、アミド系、イミダゾール系、酸無水物系等のエポキシ開環触媒が挙げられる。
なお、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物の例は、上述した通りである。
【0026】
更に、(B)成分として、R3SiO1/2単位(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基)とSiO2単位を主成分とし、R3SiO1/2単位とSiO2単位とのモル比[R3SiO1/2/SiO2]が0.5〜1.5であり、Rがアルケニル基を含まないか、含んでいてもその総量が0.0001mol/g未満である樹脂質共重合体等が挙げられる。ここでRは、非置換又は置換の一価炭化水素基であり、炭素数1〜10、特に1〜8のものが好ましく、Rで示される一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0027】
(B)成分の接着性向上剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(B)成分の配合量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが必要であり、好ましくは0.5〜5質量部である。この配合量が0.1質量部未満である場合には、硬化物が十分な接着力を有さず、10質量部を超える場合には、硬化物のゴム強度や接着力が低下するだけでなく、コスト的にも高いものとなるため不経済である。
【0028】
<(C)微粉末シリカ>
(C)成分の微粉末シリカは、本発明の組成物を硬化して得られる硬化物に高引裂き強度を付与する補強剤として作用する成分である。この微粉末シリカは、より良好な引裂き強度を有するゴムコーティング層を形成することが可能となることから、BET法による比表面積が、通常50m2/g以上のものであり、好ましくは50〜400m2/gのものであり、より好ましくは100〜300m2/gのものである。
【0029】
本成分の微粉末シリカは、上記条件を満たすものであれば特に限定されず、シリコーンゴムの補強性充填剤として従来使用されている公知のものを用いてもよく、例えば、沈殿シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ等が挙げられる。これらの微粉末シリカは、そのまま使用してもよいが、組成物により良好な流動性を付与できることから、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物等で表面疎水化処理することにより、疎水性微粉末シリカとして使用することが好ましい。
【0030】
本成分の微粉末シリカは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
本成分の微粉末シリカの配合量は、(A)成分100質量部に対して、通常0〜100質量部であり、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは1〜30質量部である。この配合量が多すぎると、接着力が低下する場合がある。
【0032】
<(D)金属被覆導電粒子>
(D)成分の金属被覆導電粒子は、球状シリカ、アクリル樹脂、ガラスバルーン、シリカバルーン、フェノールバルーン、アクリロニトリルバルーンなどの基材粒子にNi,Ag,Auなどの金属をメッキすることにより得られる。また、NiやAgなどの微粒子に金メッキしてもよい。この場合、基材粒子は中空粒子であることが好ましい。
【0033】
(D)成分の金属被覆導電粒子の金属は、銀、ニッケル、金、銅、スズ、亜鉛、白金、パラジウム、鉄、タングステン、モリブデン、又はこれらの合金から選択でき、これらの金属の2層以上の複数層構成としてもよい。被膜の厚さは0.02〜0.5μmとするのが好ましい。
【0034】
例えば、樹脂にNi,AuメッキしたミクロパールAU(積水化学工業(株)製)、特開2004−152660号公報で示される導電性粉体(信越化学工業(株)製)などが例示される。
【0035】
本発明の金属被覆導電粒子は、平均粒径が1〜50μm、特に1〜20μmであることが好ましく、より好ましくは基材粒子が中空粒子で真比重が5以下、特に1〜3であって、平均粒子が1〜50μm、特に1〜20μmであるものがファインピッチ回路において、隣接回路との絶縁性を確保する点より好ましい。
【0036】
この場合、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(即ち、累積質量が50%となるときの粒子径又はメジアン径)として測定した値とすることができる。
【0037】
添加量は、本発明組成物を100μm以下に圧縮したときに、異方導電になればよく、通常の添加量としては、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部、特に0.1〜5質量部がよい。この場合、組成物中に0.1〜30容量%、特に0.1〜10容量%含有されるようにすることが粒子不足により導通性が悪くなることなく、また短絡が発生することもない点から好ましい。
【0038】
次に、本発明に用いられる(E)成分の硬化剤について述べる。
本発明において第5必須成分(E)の硬化剤としては、既知のオルガノハイドロジェンポリシロキサン/白金系触媒(付加反応用硬化剤)又は有機過酸化物触媒を使用し得る。
【0039】
白金系触媒としては公知のものが使用でき、具体的には白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、エーテル化合物、各種オレフィン類とのコンプレックスなどが例示される。白金系触媒の添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサンに対し、白金原子として1〜2,000ppmの範囲とすることが望ましい。
【0040】
一方、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよいが、重合度が300以下のものが好ましく、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサン、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CH32SiO0.5単位)とSiO2単位とからなる低粘度流体、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示される。
【0041】
この硬化剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサンの脂肪族不飽和基(アルケニル基)に対して、珪素原子に直結した水素原子が50〜500モル%となる割合で用いられることが望ましい。
【0042】
また、有機過酸化物触媒としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,6−ヘキサンジオールビス−t−ブチルパーオキシカーボネートなどが挙げられる。有機過酸化物触媒の添加量は(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜5質量部とすればよい。
【0043】
本発明に係るシリコーンゴム組成物には、上記必須成分に加え、任意成分として本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じ、増量剤を添加してもよい。
【0044】
また、金属被覆導電粒子と併用して、従来から知られている導電性カーボンブラック、導電性亜鉛華、導電性酸化チタン等の他の導電性無機酸化物などの導電材や増量剤としてシリコーンゴムパウダー、ベンガラ、粉砕石英、炭酸カルシウムなどの充填剤を添加してもよい。
【0045】
更には、スポンジを成形するための無機、有機の発泡剤を添加してもよい。この発泡剤としてはアゾビスイソブチロニトリル、ジニトロペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルフォンヒドラジドアゾジカルボンアミドなどが例示され、その添加量はシリコーンゴム組成物100質量部に対して1〜10質量部の範囲が好適である。このように、本発明組成物に発泡剤を添加すると、スポンジ状のシリコーンゴムを得ることができる。
【0046】
また、本発明の組成物には、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを添加することは任意とされるが、この充填剤用分散剤として使用されるジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどは本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0047】
更に、本発明のシリコーンゴム組成物を難燃性、耐火性にするために、白金含有材料、白金化合物と二酸化チタン、白金と炭酸マンガン、白金とγ−Fe23、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。
【0048】
本発明に係るシリコーンゴム組成物は、上記した成分を2本ロール、バンバリーミサー、ドウミキサー(ニーダー)などのゴム混練り機を用いて均一に混合して、必要に応じて加熱処理を施すことにより得ることができる。
【0049】
この場合、組成物は、(A)成分のオルガノポリシロキサンの粒度、性状に応じてペースト状又はシート状として用いることが好ましい。
【0050】
本発明の圧着性異方導電性樹脂組成物は、例えば液晶表示モジュール(LCD)とTAB(Tape Automated Bonding)又はFPC(Flexible Print Circuit)の基板の微細電極同士を接続するに際し、本発明組成物を相対峙させた電極間に挾み、加熱加圧することにより複数の電極を一括接続する場合に使用することができ、特にベアチップをガラス基板上に直接接続する実装技術、所謂COG(Chip on Glass)技術、あるいはプリント基板上に直接接続する実装技術、所謂COB(Chip on Boad)技術等に有効に用いられる。この場合、電極ピッチが100μm以下(10本/mm以上)に対しても好適に使用される。
【0051】
なお、本発明組成物を圧着、加熱硬化する条件は適宜選定されるが、80〜250℃、特に120〜230℃において、0.1〜10MPa、特に1〜5MPaで5〜60秒、特に5〜30秒の条件とすることが好ましい。この場合、圧着間隔は、200μm以下、特に1〜10μmとすることができ、通常、初期の組成物の厚さを1〜100μm、特に10〜50μmとし、これを5〜95%の割合、好ましくは20〜80%の割合で圧縮することが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を用いて本発明についてより詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、部とは質量部を表す。
【0053】
[実施例1]
分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が5,000mPa・sのジメチルポリシロキサン100部、トリメチルシリル基で処理された比表面積130m2/gの疎水性シリカ15部、粘度が25mPa・sの分子鎖両末端及び分子鎖側鎖にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.54質量%)5部、1−エチニルシクロヘキサノール0.05部、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を白金金属として(A)成分と(B)成分との合計量に対して30ppm、接着性向上剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1部、(CH33SiO1/2単位39.5モル%、(CH32(CH2=CH)SiO1/2単位6.5モル%、SiO2単位54モル%からなるオルガノポリシロキサン樹脂2部、Agメッキガラスバルーン(Ag1085CLD、平均粒径30μm、比重1g/cm3:信越化学工業(株)製)を1部(組成物中1vol%)混合して、組成物Aを調製した。
【0054】
[実施例2]
Agメッキガラスバルーンを3部(組成物中3vol%)にした以外は実施例1と同様にして、組成物Bを調製した。
【0055】
[実施例3]
Agメッキガラスバルーンではなく、金メッキ樹脂(商品名AUEL003A、平均粒径4μm、比重3g/cm3、積水化学工業(株)製)を3部(組成物中1vol%)添加した以外は実施例1と同様にして、組成物Cを調製した。
【0056】
[実施例4]
ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約6000であるオルガノポリシロキサン100部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(商品名R−972、日本アエロジル(株)製)30部、粘度が25mPa・sの分子鎖両末端及び分子鎖側鎖にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.54質量%)5部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1部、(CH33SiO1/2単位39.5モル%、(CH32(CH2=CH)SiO1/2単位6.5モル%、SiO2単位54モル%からなるオルガノポリシロキサン樹脂1部を添加し、金メッキ樹脂(商品名AUEL003A、積水化学工業(株)製)を3部(組成物中1vol%)、硬化剤として1,6−ヘキサンジオール−ビス−tert−ブチルパーオキシカーボネートを1.5部混合し、組成物Dを調製した。
【0057】
[実施例5]
Agメッキガラスバルーンではなく、金メッキシリカ(Au1092、平均粒径10μm、比重3g/cm3:信越化学工業(株)製)を3部(組成物中1vol%)にした以外は実施例1と同様にして、組成物Eを調製した。
【0058】
[比較例1]
エピコート828XA(油化シェルエポキシ(株)製)100部、硬化剤としてエピキュア113(油化シェルエポキシ(株)製)30部に、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(商品名R−972、日本アエロジル(株)製)30部、金メッキ樹脂(商品名AUEL003A、積水化学工業(株)製)を3部(組成物中1vol%)混合して、組成物Fを調製した。
【0059】
次に、上記組成物を用いてテストピースを作製し、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
テストピース
回路1;ポリイミドフィルム上に、200μmピッチで金メッキした銅電極が10本あるFCP。
回路2:ガラスエポキシ樹脂上に幅500μmで金メッキした銅電極の回路。
テストピース1:回路1と回路2の間に、幅3mm,厚さ50μmとなるように、組成物A,B,C,E,Fを塗工し、異方導電性樹脂部分を180℃で、20秒,3MPaとなるような条件で加熱圧着し、回路を接続した。
【0060】
組成物Dは、幅3mm、厚さ50μmとなるように部出し、異方導電性樹脂部分が180℃で、20秒,3MPaとなるような条件で加熱圧着し、回路を接続した。
この場合、組成物の圧着後の厚さはいずれも10μm以下であった。
回路1と回路2の間の抵抗値を測定した。この場合、10本の回路の平均値と標準偏差を示した。接続後の信頼性試験は、−40℃/30min⇔130℃/30minの環境サイクル下で行った。300サイクル後に接続している回路の本数を示した。
【0061】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に平均2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン
100質量部、
(B)接着性向上剤 0.1〜10質量部、
(C)シリカ微粉末 0〜100質量部、
(D)金属被覆導電粒子 0.1〜10質量部、
(E)(A)成分の硬化剤 硬化有効量
を構成成分とし、圧着することにより異方導電性となることを特徴とする圧着性異方導電性樹脂組成物。
【請求項2】
(D)成分の金属被覆導電粒子の平均粒径が1〜50μmである請求項1記載の圧着性異方導電性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分の金属被覆導電粒子が、基材粒子が中空粒子であり、平均粒径が1〜50μmで、真比重が5以下である請求項1記載の圧着性異方導電性樹脂組成物。
【請求項4】
ペースト状である請求項1〜3のいずれか1項記載の圧着性異方導電性樹脂組成物。
【請求項5】
シート状である請求項1〜3のいずれか1項記載の圧着性異方導電性樹脂組成物。
【請求項6】
圧着間隔が200μm以下である電極間接続固定用である請求項1〜5のいずれか1項記載の圧着性異方導電性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の圧着性異方導電性樹脂組成物を圧着、加熱硬化することによって得られ、電極と電極との間を接続固定する弾性異方導電部材。

【公開番号】特開2006−335926(P2006−335926A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163705(P2005−163705)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】