説明

圧縮成形加工における粉粒体材料の充填装置

【課題】圧縮成形加工における粉粒体材料を空気吸引力を利用して吸着移送する吸着盤において粉粒体材料が残留することなく、全て雌金型内に落下充填されるようにする。
【解決手段】摺り切り装置により摺り切られた粉粒体材料を空気吸引力を利用して吸着移送する吸着盤21の一部にバイブレータ40を設けた構成を備え、前記吸着盤21を金型の直上位置に移動して下向きに回動させ空気吸引を停止して粉粒体材料を金型内に落下させるときに前記バイブレータ40を作動させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレス等圧縮成形加工における粉粒体材料の充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮成形加工においては粉粒体材料を溶融・反応させるため金型を高温に加熱している。このような高温加熱状態における圧縮成形加工の対象として薄板状の製品、例えば燃料電池用セパレータの製造が考えられている。
【0003】
ところで燃料電池用セパレータはガス不浸透性、導電性とともに面精度の高いことが極めて重要である。このため、初期のセパレータはグラファイト板の切削加工等により得るものであったが、加工時間やコスト面の要求により、近年はプレス加工による試みが増大しつつある。
【0004】
すなわち、原料の粉粒体を所定量金型内に投入した後、プレス機で加熱・加圧して薄板状のセパレータを得る方法であり、この方法によれば他の機械加工によるものに比し短時間で安価に製造することが可能である。
【0005】
しかしながら、実際に製造されたセパレータは依然として面精度が悪く要求される水準に到達していないのが実情である。その原因は原料の粉粒体を投入する際に雌金型の底面全体に薄く均等に分布させることが困難であることが挙げられる。
【0006】
このような問題の解決策としては特開2001−62858号公報(特許文献1)に開示されている技術が一般的であった。
【0007】
すなわち、図14において50は多数の投入口51を有する投入部であり、52は前記投入部50の下方にあって前記投入口51の全てを閉塞する位置から全てを開口する位置までの間で摺動可能に設けられたスライドプレートである。また、53は前記投入部50及びスライドプレート52を支持するベースであり、54は下金型(雌金型)、55は上金型(雄金型)である。
【0008】
上述構成のものにおいては投入部50に粉粒体を投入した後、擦り切り棒56により擦り切り余分なものを除いて一定量としてから下金型54にセットする。次いでスライドプレート52をスライドさせ投入口51を端から順次開口すると粉粒体が下金型54内に落下するものである。最後に投入部50・ベース53を移動してから上金型55でプレスする。
【0009】
上記従来技術によれば、投入部50に投入された粉粒体は擦り切り棒56によって一定量にすることはできる。しかしなから、投入部50から下金型54内に落下させる時、スライドプレートの移動速度によっては粉粒体の落下状態が不均一になる可能性があり、このため最終製品における面精度を向上させることが困難であった。
【0010】
上述のように粉粒体が下金型内に落下した時点で落下状態によっては不均一な分布になることを防ぐことができるものとして特開2003−223901号公報(特許文献2)に開示された技術が知られている。
【0011】
すなわち図15において60は雌型であり61は雌型60の上面に密着している上下が開放された枠形体をした給粉ボックスである。給粉ボックス61には粉末状原料62が装填されている。
【0012】
そして給粉ボックス61は粉末状原料62を雌型60に投入しつつ、かつ雌型60の上面を擦り切りながらスライドされる。
【0013】
特許文献2に示されたものによれば、粉末状原料62を雌型60内に均一に投入することが出来るように改良されていることが解る。
【0014】
しかしながら、上記従来技術のものは雌型60の上面を擦り切るものであるため、粉末状原料62が雌型60の内底面に薄く投入されている場合は擦り切ることが不可能である。
【0015】
また、雌型60の上面を擦り切るとき、擦り切られた粉末状原料62が雌型60の上面周辺に放散されることになる。雌型60はプレス加工中は勿論、加工前から予熱により既に高温になっているため放散した粉粒体は固まって付着してしまい、メンテナンスに手間がかかる問題がある。
【0016】
尚、擦り切りによらず均一に充填する方法が特開平11−49101号公報(特許文献3)に開示されている。すなわち図16においてCは容器(金型)、sはキャビティである。
【0017】
Gは容器Cの上面に載置された供給ホッパーで底面にグリッドg2を有するとともに上面に蓋h2が設けられている。h1は前記蓋h2に設けられた空気吸引吹き込み口である。前記供給ホッパーGには粉末pが貯留されている。
【0018】
前記装置において空気吸引吹き込み口h1により空気タッピングする(供給ホッパーG及び容器C内を高気圧状態、低気圧状態に繰り返す)ことにより粉末pを攪拌してグリッドg2からキャビティs内に均一に落下せしめる。そしてその状態で前記供給ホッパーGを引き上げると粉末pはグリッドg2の面で分離されるものである。
【0019】
この方法によれば摺り切り等の手段を用いずに金型内に粉末pを均一に充填することができる。しかしながら、どのような材質の粉末にも適用出来るわけではなく、例えば、燃料電池用セパレータの原料のようなカーボンを含む樹脂粉粒体の場合は供給ホッパーGを引き上げたときグリッドg2から漏洩落下してしまい、うまく金型から分離することができない。
【0020】
本出願人はこのような問題にかんがみ、擦り切りにより直接金型に粉粒体を充填したり空気タッピングを行う等の技術手段を用いることなく雌金型内に粉粒体を薄く均一にかつ迅速に投入できるようにした圧縮成形加工における粉粒体材料の充填方法及び充填装置を提供するため先に特願2004−365191号を出願した。
【0021】
特願2004−365191号の充填装置は空気吸引による吸着盤を用い、粉粒体材料を吸着盤に吸着保持した状態で雌金型まで移送し落下させるようにしたもので、雌金型内に粉粒体を薄く均一にかつ迅速に投入できる効果を奏したものである。しかしながら特願2004−365191号の充填装置における吸着盤の構成は組み立てや部品の交換にやや手間のかかるものであったため、出願人はさらにこの点に鑑み、特願2005−149067号を出願した。
【0022】
しかしながら、前記特願2004−365191号、および特願2005−149067号の発明における装置において、空気吸引を停止して吸着盤から粉粒体材料を金型内に落下させたとき、場合によって粉粒体材料が落ち切らず吸着面に残留することが判明した。
【0023】
粉粒体材料が吸着面に残留した場合は成形品の品質にバラツキが生じるのは勿論、後で金型のパーティング面に落下し溶融・固化して汚れとなって付着することになる。
【特許文献1】特開2001−62858号公報
【特許文献2】特開2003−223901号公報
【特許文献3】特開平11−49101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明はこのような問題にかんがみ成されたものであり、空気吸引による吸着盤を用い雌金型内に粉粒体を薄く均一にかつ迅速に投入できるようにした圧縮成形加工における充填装置における吸着盤に粉粒体が残留することなく自動的に全て金型内に充填されるようにした装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記課題を解決するため、請求項1に係る粉粒体材料の充填装置は、圧縮成形加工用の粉粒体材料を貯留し下部の供給口から排出する材料供給ホッパーと、前記材料供給ホッパーの下方で排出される粉粒体材料を受ける吸着盤と、前記吸着盤上に載置された粉粒体材料を雌金型に対応して所定量、均一に摺り切る摺り切り手段と、前記吸着盤上に摺り切り載置された粉粒体材料をそのまま吸着保持せしめる空気吸引手段と、前記粉粒体材料を吸着保持した状態で前記吸着盤を材料供給ホッパーと雌金型間の空間内で移送可能かつ上下反転自在な移送手段とから成り、前記空気吸引手段は空気吸引を停止することにより前記吸着盤から粉粒体材料を雌金型内に落下せしめるよう構成するとともに前記吸着盤は内部に空洞部を有しこの空洞部を空気吸引手段に連通せしめるとともに、吸着面に焼結金属または適宜のフィルター或いはそれらを組み合わせて成る板状通気部材を備えたものにおいて、前記吸着盤の一部に前記空気吸引手段の空気吸引停止時に作動するバイブレータを設けたことを特徴とするものである。
【0026】
請求項2に係る粉粒体材料の充填装置は、圧縮成形加工用の粉粒体材料を貯留し下部の供給口から排出する材料供給ホッパーと、前記材料供給ホッパーの下方で排出される粉粒体材料を受ける載置盤と、前記載置盤上に載置された粉粒体材料を雌金型に対応して所定量、均一に摺り切る摺り切り手段と、下面に吸着面を有する吸着盤と、前記載置盤上に摺り切り載置された粉粒体材料を前記吸着盤の吸着面にそのまま吸着保持せしめる空気吸引手段と、前記粉粒体材料を吸着保持した状態で前記吸着盤を材料供給ホッパーと雌金型間の空間内で移送可能な移送手段とから成り、前記空気吸引手段は空気吸引を停止することにより前記吸着盤から粉粒体材料を雌金型内に落下せしめるよう構成するとともに前記吸着盤は内部に空洞部を有しこの空洞部を空気吸引手段に連通せしめるとともに、吸着面に焼結金属または適宜のフィルター或いはそれらを組み合わせて成る板状通気部材を備えたものにおいて、前記吸着盤の一部に前記空気吸引手段の空気吸引停止時に作動するバイブレータを設けたことを特徴とするものである。
【0027】
請求項3に係る粉粒体材料の充填装置は、請求項1または請求項2に記載の圧縮成形加工における粉粒体材料の充填装置において、吸着盤が全体として矩形状を成し、少なくとも一対の縦辺と横辺にバイブレータが設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば次のような効果が得られる。
【0029】
請求項1に係る粉粒体材料の充填装置によれば、空気吸引手段の空気吸引停止時に吸着盤に設けたバイブレータを作動させることにより、粉粒体材料を吸着面に残留させることなく全て自動的に雌金型内に落下させることができる。
【0030】
請求項2に係る粉粒体材料の充填装置によれば、吸着盤の下面に粉粒体材料を吸着して移送するようにしたものおいても、前記発明と同様に吸着盤に設けたバイブレータを作動させることにより粉粒体材料を吸着面に残留させることなく全て自動的に雌金型内に落下させることができる。
【0031】
請求項3に係る粉粒体材料の充填装置によれば、矩形状を成している吸着盤の縦辺と横辺つまりX、Y方向に設けたバイブレータの作動により確実に粉粒体材料を落下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、本発明は本実施の形態により限定されるものではない。また、本実施の形態の説明において、同一構成ならびに作用効果を奏する部分には同一符号を付して重複した説明は行わないものとする。
【0033】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施の形態における粉粒体材料充填装置の縦断面図を示し、図2は図1A部の拡大詳細断面図を示す。
【0034】
図において1は粉粒体材料充填装置の全体を示す。2は粉粒体材料3を貯留した材料ホッパーである。材料ホッパー2は下端部に材料を排出する供給口4を有しており上方から適宜材料の補充が行われる。
【0035】
前記粉粒体材料3は樹脂、カーボン、金属等の粉粒またはそれらを混合したものである。
【0036】
5は適宜の枠板6より成る摺り切り手段で、前記材料ホッパー2の下方に往復動自在に設けられており、前記供給口4と枠板6との相対運動により粉粒体材料3が摺り切られるものである。
【0037】
7は前記粉粒体材料充填装置1の本体を成す可動シリンダーで中空の回動軸8に取付けられている。そして前記回動軸8は図3に示すように、可動シリンダー7を挟んで左右に配置された支持板9に回動自在に枢支されている。また前記支持板9は上下にローラー10を有し、ガイド11に案内されて紙面前後方向に移動自在に支持されている。
【0038】
前記回動軸8の一端部にはギア機構13を介してモータ12が設けられており、また他端部にはブロワーまたは真空ポンプ14のホース15が接続され内部の中空部と連通している。
【0039】
14Aは前記真空ポンプ14とホース15及び中空の回動軸8と後記する吸気ホース25等によって構成される空気吸引手段である。
【0040】
16は前記可動シリンダー7の作動ロッドで先端(上端)部に後述する吸着盤21が保持されている。
【0041】
前記作動ロッド16は前記可動シリンダー7に給排されるエアーにより可動シリンダー7から縦方向に進退可能である。
【0042】
17は前記可動シリンダー7に圧縮空気を給排するエアホースである。
【0043】
また、25は前記中空の回動軸8と前記吸着盤21の吸気口24(後述)とを連通するように設けられた吸気ホースである。
【0044】
而して図1において18は前記可動シリンダー7の側部近傍に配設された固定シリンダーで、その作動により水平方向に進退自在な作動桿19を有する。
【0045】
そして前記作動桿19の進退動作により前記可動シリンダー7と回動軸8を一体的に前記ガイド11に沿って水平方向に移動させることができる。この他、前記モータ12とギア機構により前記回動軸8と可動シリンダー7を一体的に180゜回転させることができる。
【0046】
前記した可動シリンダー7と固定シリンダー18及びモータ12は吸着盤21を前記材料ホッパー2と後述雌金型34との間の立体空間内で移送し、反転する移送手段20を構成する。
【0047】
21は前記した吸着盤で前記作動ロッド16の先端部(上端部)に保持されており作動ロッド16の動作により縦方向に移動可能であり、且つ固定シリンダー18の作動により可動シリンダー7と共に水平方向に移動可能である。そして前記モータ12の回転により可動シリンダー7と共に180゜回転し、また反転して復元することができる。
【0048】
而して前記吸着盤21は図2及び図8に詳細に示される如く、平面が略矩形状を成し内部に空洞部22を有している。前記空洞部22は仕切り壁23によって上下に仕切られているが、連通孔28により互いに連通している。さらに、上方の空洞部22は上面を開口しており、下方の空洞部22は吸気口24により吸気ホース25を介して回動軸8からホース15、真空ポンプ14へと連通されている。
【0049】
また、上方の空洞部22には仕切り壁23にねじこまれた六角ボルト26が複数個所定間隔で立設されている。なお、六角ボルト26は特に六角に限定されるものではない。
【0050】
前記六角ボルト26は図4〜図6に示されるように六角形のボルト本体260と下端部に設けたネジ部261及びネジ穴263が設けられた上端部262を有する。ネジ部261は前記仕切り壁23に装脱自在にねじ込まれる。
【0051】
264は略円筒状をしたボルト頭部で底面からボルト挿入穴265が穿設されており、このボルト挿入穴265に前記ボルト26の上端部262を挿入することによりボルト上端部262に装着されるものである。
【0052】
266はボルト頭部264の上端面から穿設したネジ挿通孔である。ネジ挿通孔266は前記ボルト挿入穴265より少し小径となっており、ネジ穴263と同心状で連なっている。
【0053】
267は前記ボルト頭部264の側胴部に設けた貫通孔であり前記ボルト挿入穴265と直交している。
【0054】
268は皿状の頭部269を有するネジで、前記ボルト頭部264のネジ挿通孔266から挿入されボルト上端部262のネジ穴263にねじ込まれる。このネジ268は後述の通気部材30を吸着盤21に固定するために使用されるものである。
【0055】
次に270、271は円柱状の永久磁石であり、前記ボルト頭部264の貫通孔267に挿入され前記上端部262を挟むように対峙している。而して各磁石270と271は同極を対向させるように挿入されている。
【0056】
29は上方の空洞部22の上面開口すなわち吸着面を示し、30は前記六角ボルト26に載置され吸着面29に覆着された通気部材である。前記通気部材30は前記六角ボルト26が位置決めともなり、水平に維持されている。そして前記通気部材30は一例として平板状の焼結金属31と樹脂フィルター或いは濾紙32を重ねて用いるが、これに限定する必要はない。
【0057】
前記通気部材30のうち焼結金属31は図7に示す如く多数の取付孔を有しており、この取付孔にネジ268を通し前記ボルト上端部262のネジ穴263にネジ止めされることにより固定されている。従って焼結金属31の多数の取付孔は仕切り壁23にねじこまれた六角ボルト26の位置と対応している。
【0058】
また、濾紙32は焼結金属31の上に単に置かれており、後記する区画シート37によって押さえつけられている。
【0059】
尚、前記吸着盤21の外周部には適宜のピン33が設けられており、前記した摺り切り手段5との間で位置決めを行うようにしている。
【0060】
次に前記区画シート37につき説明する。図8に示す如く区画シート37は薄い磁性金属枠38にて網の目状に形成されており、磁性金属枠38に囲まれた多数の小区画39を有する。
【0061】
前記小区画39は図8に示すものは全て形状も面積も等しくなっているが、必要に応じて変化させても良い。この区画シート37は前記六角ボルト26に装着された磁石270、271に吸着されることにより前記濾紙32を押さえつけている。
【0062】
すなわち、磁石270、271からボルト上端部262、ネジ268そしてネジ頭部269を通る磁力線の作用により、前記磁性金属枠38は強力にネジ頭部269に吸着される。
【0063】
前記焼結金属31に比べて濾紙32は比較的交換頻度が高いものであるが、前述のように磁力により区画シート37で押さえつけているだけであるから交換作業は極めて簡単である。
【0064】
また、前記焼結金属31自身は耐食性のある非磁性材料のもので良いので材料選択の自由度が高いものである。
【0065】
次に前記吸着盤21は図2、図8に最もよく示されているようにバイブレータ40が保持部材41に保持されて取り付けられている。前述の如く吸着盤21は全体として矩形状を成しており吸着面29と反対側の外周部における隣り合う2辺、つまり一対の縦辺と横辺に1個づつバイブレータ40が設けられている。
【0066】
前記バイブレータ40は後述する吸着盤21の空気吸引作用を停止して粉粒体材料3を金型内に落下させるときのみ作動するものである。
【0067】
尚、前記バイブレータ40の取付位置、個数等は本実施の形態に限定されるものではない。
【0068】
以下図9〜図11に従って前記圧縮成形加工における粉粒体材料の充填装置による製造工程につき簡単に説明する。
【0069】
図9は吸着盤21の上面に粉粒体材料3が均一に摺り切り載置され、摺り切り装置5から離脱して下方へ移送された状態を示している。このとき真空ポンプが作動して吸着面29に置かれた焼結金属31、濾紙32を通して空気吸引され、粉粒体材料3が濾紙32面に吸着されて均一な状態が維持されている。濾紙32の上に区画シート37が置かれており網の目状の枠38により粉粒体材料3の移動が抑制されるため、粉粒体材料3の均一な状態はより効果的に維持される。
【0070】
尚34は雌金型であり所定位置にあり予熱されている。
【0071】
図10は移送工程を示している。すなわち真空ポンプ14が作動したままの状態で固定シリンダー18が作動し可動シリンダー7とともに吸着盤21を水平方向に移動し、雌金型34の直上に移送すると共に、モータ12の作動により180゜回動して下向きにさせる。この状態でも真空ポンプ14による吸着力により粉粒体材料3が落下することはない。
【0072】
図11は粉粒体材料の充填工程を示している。すなわち真空ポンプ14が作動したままの状態で固定シリンダー7の作動ロッド16が進出し吸着盤21は雌金型34の近接位置まで降下する。そして真空ポンプ14を停止することにより、吸着力が消失するので、粉粒体材料3は通気部材30の全面から一挙に落下し、雌金型34内に均一に粉粒体層35が形成される。
【0073】
また、このとき、前記バイブレータ40が作動するので吸着盤21に振動が伝達されるので、粉粒体材料3が通気部材30に残留することはない。特に吸着盤21の縦辺と横辺に前記バイブレータ40が設けられているため粉粒体材料3の落下作用が効果的に行われる。
【0074】
前記バイブレータ40の作動はごく短時間で良く、適宜設定すればよい。
【0075】
バイブレータ40の作動停止後は吸着盤21は前述と逆の工程を経て待機工程に復元する。
【0076】
(実施の形態2)
次に図12〜図13に従って実施の形態2における粉粒体材料の充填装置による製造工程につき説明する。
【0077】
図12は実施の形態2における粉粒体材料の充填装置の待機の工程を示している。
【0078】
図12において可動シリンダー7は最初から下向きに設けられており、吸着盤21も同様に下向きに設けられており、吸着面29には実施の形態1で述べた通気部材30がネジ止めされ、その表面を区画シート37が磁力により押さえつけている。
【0079】
また、中空軸8aを回動させるためのモータは設けられていない。そして摺り切り手段5は可動シリンダー7を移動させる固定シリンダー18とは別の固定シリンダー18aにより水平方向に往復動可能に設けられている。そして摺り切り手段5には摺り切られた粉粒体材料を受ける載置盤36が設けられている。前記載置盤36は吸着盤21と同じような通気部材30aを備えているが、特に区画シートを設ける必要はない。
【0080】
而して吸着盤21には実施の形態1におけると同様にバイブレータ40が設けられている。前記バイブレータ40は真空ポンプ14の作動を停止して粉粒体材料3を通気部材30から落下させるときにのみ短時間作動するものである。
【0081】
以下、実施の形態2の装置についてその動作を説明する。
【0082】
図12において、前記固定シリンダー18aを作動させることにより前記摺り切り手段5と載置盤36を材料供給ホッパー2の下面を矢印二点鎖線の如く一往復させることにより摺り切りが行われ、載置盤36上に粉粒体材料3が均一に摺り切り載置される。
【0083】
この状態から前記可動シリンダー7の作動ロッド16を進出(下方へ)させ吸着盤21を載置盤36の上面まで降下させるとともに、真空ポンプ14を作動させることにより吸着盤21の吸着面29に粉粒体材料3を吸着する。次いで、真空ポンプ14を作動させたまま、前記可動シリンダー7の作動ロッド16を退行させて吸着盤21を持ち上げ載置盤36から引き離す。
【0084】
そして図13に示すように前記固定シリンダー18を作動させて前記可動シリンダー7とともに吸着盤21を雌金型34の上方位置まで移動させている。
【0085】
この状態から前記可動シリンダー7の作動ロッド16を再び進出させて吸着盤21を金型面まで降下させるとともに真空ポンプ14を停止することにより、吸着力を消失させ、粉粒体材料3を通気部材30の全面から一挙に落下させ、雌金型34内に均一に粉粒体層を形成する。
【0086】
このとき、バイブレータ40が作動するので、その振動伝達により粉粒体材料3が通気部材30の表面に残留することなく雌金型34内に落下することになる。
【0087】
以上、実施の形態1及び実施の形態2について述べたが、いずれの場合も粉粒体材料3の摺り切りが金型面で行うものではないため、放散した粉粒体材料3が金型面に溶融付着する問題がなくなる。また、所定量、均一に摺り切られた粉粒体材料3を吸着力を利用して移送し落下させるものであるため所望に応じて薄く均一に充填することができる。
【0088】
また、場合によって吸着盤21に粉粒体材料3が残留したとしてもバイブレータ40の作動により全て落下させられるので待機位置への復帰途中で金型面に落下して付着するような憂いはなくなるものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は圧縮成形加工において空気吸引を利用して粉粒体材料を金型内に薄く、均一にかつ、迅速に充填するための吸着盤の組み立て構造を簡単にし、特に磁力を用いた構成により濾紙の着脱、交換をすばやく行うことができるようにしたものにおいて、吸着盤に粉粒体材料の残留が生じた場合でもバイブレータにより全て雌金型内に落下させることができるようにしたので、金型のパーティング面やその他装置の周辺に付着して清掃のための労力を必要とする問題をなくし、自動化をより促進することができるものであり、産業上きわめて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態1による圧縮成形加工おける粉粒体材料の充填装置の要部縦断面図である。
【図2】図1のA部の拡大詳細断面図である。
【図3】図1に示す粉粒体材料の充填装置の簡略化した側面図である。
【図4】図1に示す粉粒体材料の充填装置に備える六角ボルトの平面図である。
【図5】図4におけるV−V´線断面図である。
【図6】同上六角ボルトを分解した状態で示す縦断面図である。
【図7】前記充填装置の吸着盤に設ける焼結金属の斜視図である。
【図8】同上充填装置における吸着盤の斜視図である。
【図9】同上充填装置の圧縮成形加工工程における一作動状態を示す縦断面図である。
【図10】同じく同上充填装置の圧縮成形加工工程における別の作動状態を示す縦断面図である。
【図11】同じく同上充填装置の圧縮成形加工工程におけるさらに別の作動状態を示す縦断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2による圧縮成形加工おける粉粒体材料の充填装置の一作動状態を示す縦断面図である。
【図13】同じく同上充填装置の別の作動状態を示す縦断面図である。
【図14】従来の粉粒体材料充填装置としてのセパレータ製造装置における材料供給方法を示す測面図である。
【図15】別な従来例のセパレータ製造装置における材料供給方法を示す側面図である。
【図16】さらに別な従来例の粉粒体材料充填装置における材料供給方法を示す側面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 粉粒体材料充填装置
2 材料供給ホッパー
3 粉粒体材料
5 摺り切り手段
14A 空気吸引手段
20 移送手段
21 吸着盤
22 空洞部
26 (六角)ボルト
263 ネジ穴
264 ボルト頭部
267 貫通孔
268 ネジ
270 永久磁石
271 永久磁石
29 吸着面
30 板状通気部材
31 焼結金属
32 濾紙
34 雌金型
36 載置盤
37 区画シート
39 小区画
40 バイブレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮成形加工用の粉粒体材料を貯留し下部の供給口から排出する材料供給ホッパーと、前記材料供給ホッパーの下方で排出される粉粒体材料を受ける吸着盤と、前記吸着盤上に載置された粉粒体材料を雌金型に対応して所定量、均一に摺り切る摺り切り手段と、前記吸着盤上に摺り切り載置された粉粒体材料をそのまま吸着保持せしめる空気吸引手段と、前記粉粒体材料を吸着保持した状態で前記吸着盤を材料供給ホッパーと雌金型間の空間内で移送可能かつ上下反転自在な移送手段とから成り、前記空気吸引手段は空気吸引を停止することにより前記吸着盤から粉粒体材料を雌金型内に落下せしめるよう構成するとともに前記吸着盤は内部に空洞部を有しこの空洞部を空気吸引手段に連通せしめるとともに、吸着面に焼結金属または適宜のフィルター或いはそれらを組み合わせて成る板状通気部材を備えたものにおいて、前記吸着盤の一部に前記空気吸引手段の空気吸引停止時に作動するバイブレータを設けたことを特徴とする圧縮成形加工における粉粒体材料の充填装置。
【請求項2】
圧縮成形加工用の粉粒体材料を貯留し下部の供給口から排出する材料供給ホッパーと、前記材料供給ホッパーの下方で排出される粉粒体材料を受ける載置盤と、前記載置盤上に載置された粉粒体材料を雌金型に対応して所定量、均一に摺り切る摺り切り手段と、下面に吸着面を有する吸着盤と、前記載置盤上に摺り切り載置された粉粒体材料を前記吸着盤の吸着面にそのまま吸着保持せしめる空気吸引手段と、前記粉粒体材料を吸着保持した状態で前記吸着盤を材料供給ホッパーと雌金型間の空間内で移送可能な移送手段とから成り、前記空気吸引手段は空気吸引を停止することにより前記吸着盤から粉粒体材料を雌金型内に落下せしめるよう構成するとともに前記吸着盤は内部に空洞部を有しこの空洞部を空気吸引手段に連通せしめるとともに、吸着面に焼結金属または適宜のフィルター或いはそれらを組み合わせて成る板状通気部材を備えたものにおいて、前記吸着盤の一部に前記空気吸引手段の空気吸引停止時に作動するバイブレータを設けたことを特徴とする圧縮成形加工における粉粒体材料の充填装置。
【請求項3】
吸着盤が全体として矩形状を成し、少なくとも一対の縦辺と横辺にバイブレータが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧縮成形加工における粉粒体材料の充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−12741(P2008−12741A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185108(P2006−185108)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000146054)株式会社松井製作所 (70)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】