圧縮成形用金型および燃料電池用セパレータの製造方法
【課題】成形時における成形材料の漏れ出しを抑制でき、かつ成形品を精度よく成形できる、厚みの薄い圧縮成形用金型および燃料電池用セパレータの製造方法を提供する。
【解決手段】圧縮成形用金型10では、金型部材1は、賦形部1aを取り囲むように形成された凹部1bを有している。金型部材2は、賦形部2aを取り囲むように形成された凸部2bを有している。凹部1bは、凸部2bが嵌まり込むように構成されており、かつ凸部2bが嵌まり込んだ状態で凸部2bの両側の側面の各々に対向するような側面を有している。
【解決手段】圧縮成形用金型10では、金型部材1は、賦形部1aを取り囲むように形成された凹部1bを有している。金型部材2は、賦形部2aを取り囲むように形成された凸部2bを有している。凹部1bは、凸部2bが嵌まり込むように構成されており、かつ凸部2bが嵌まり込んだ状態で凸部2bの両側の側面の各々に対向するような側面を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮成形用金型および燃料電池用セパレータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応から電力を得る燃料電池においては、近年ポ−タブル機器、自動車等の種々の用途への適用が検討されている。燃料電池は、電解質膜、電極およびセパレータからなる基本構成単位、すなわち単位セルが通常直列に数十〜数百セル積層された構造を有する。一般的な燃料電池の製造方法では電解質膜および電極は予め電解質膜/電極接合体(MEA)として形成され、これにセパレータが配置される。セパレータとしては、水素等の燃料と、空気または酸素からなる酸化剤と、セルを冷却するための冷媒とをそれぞれ供給するための流路を少なくとも片面に形成したものが用いられる。
【0003】
セパレータでは、隣接するMEAとの電気的な接続を確保して燃料電池の発電効率を高めるために十分な導電性を備えることが必要であるが、これに加えて、単位セルの積層構造を支えるために十分な機械的強度が必要とされる。また、燃料電池の小型化の要求に伴い近年ではセパレータの薄肉化も求められている。さらに、単位セルの積層構造における単位セル間の接触抵抗を低減するために厚み精度の向上も求められている。
【0004】
従来の燃料電池用セパレータは、樹脂と炭素材料とを含む成形材料を圧縮成形用金型内に投入し加圧することによって成形される。このような燃料電池用セパレータを形成するための成形用金型の構造は従来から各種提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0005】
この圧縮成形用金型には、(1)金型形状を成形材料に転写するために、成形材料に所望の成形圧力および熱を付加できること(成形材料が漏れないこと)、(2)金型内および成形材料中の空気を効率よく金型外に排出できること、が求められる。(1)、(2)を同時に達成するために、金型内に材料を閉じ込め、かつ空気を排出する必要がある。
【0006】
一般的に、従来の圧縮成形用金型は、図13に示すように、凹部(キャビティ)101aを有する凹型101と、凸部(コア)102aを有する凸型102とから構成されている。そして、上記(1)、(2)を満たすために、凹部101aの側壁と凸部102aの側壁とを対向させたシェアエッジ(図中領域P)が設けられている。
【0007】
このような金型を用いて成形材料を成形すると、凹部101aからフローアウトした余剰分の成形材料は、シェアエッジの隙間(クリアランス)を通過する際に金型壁面との間の強い摩擦力により大きな流動抵抗を受け、これにより成形材料の漏れ出しが防止されている。このため、シェアエッジの長さ(トラベル)hと隙間(クリアランス)bとを適切に設定することにより、成形時の成形材料の漏れを防止することができ、かつ金型内および成形材料中の空気を効率よく金型外へ排出することができる。
【0008】
また金型として、図14に示すように、凹部201aを有する金型201と、凹部202aを有する金型202とから構成される合わせ型の圧縮成形用金型もある。この合わせ型の金型では、構造が簡単で、金型全体の厚みを薄くすることもできる。
【特許文献1】特開2001−198921号公報
【特許文献2】特開2003−170459号公報
【特許文献3】特開2004−216756号公報
【特許文献4】特開2004−230788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図13に示すシェアエッジ構造の圧縮成形用金型では、成形時の成形材料の漏れを防止するために、シェアエッジの長さ(トラベル)hを大きくとる必要があり、金型101、102の厚みが厚くなる。金型101、102の厚みが厚くなると、金型101、102の加熱・冷却に時間がかかる。このため、金型101、102を介して成形材料を加熱するにも長時間が必要となる。よって、加熱・冷却のエネルギーが大量に消費されるとともに、圧縮成形のサイクル時間が長くなるという問題がある。また金型101、102の厚みが厚くなるため、成形後に凹型101の凹部101a内から成形品を取り出すことが難しくなり、成形品の脱型性が悪くなるという問題もある。
【0010】
また、図14に示す合わせ型の圧縮成形用金型では、流動性が低い成形材料の場合には、図15に示すように金型201と金型202との合わせ面に、漏れ出した成形材料が多く残り、結果として成形品20の厚みが厚くなるという問題がある。また、流動性が高い成形材料の場合、図16に示すように漏れ出した成形材料が合わせ面に留まらず金型外に排出される。これにより、成形品が薄くなり、成形材料に圧力が加わりにくいという問題がある。
【0011】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、成形時における成形材料の漏れ出しを抑制でき、かつ成形品を精度よく成形できる、厚みの薄い圧縮成形用金型および燃料電池用セパレータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の圧縮成形用金型は、成形材料を圧縮成形するための圧縮成形用金型であって、第1の金型部材と、第2の金型部材とを備えている。第1の金型部材は、成形材料を賦形するための第1の賦形部を有し、かつ第1の賦形部を取り囲むように形成された凹部を有している。第2の金型部材は、成形材料を賦形するための第2の賦形部を有し、かつ第2の賦形部を取り囲むように形成された凸部を有している。凹部は、凸部が嵌まり込むように構成されており、かつ凸部が嵌まり込んだ状態で凸部の両側の側面の各々に対向するような側面を有している。
【0013】
本発明の圧縮成形用金型によれば、凹部の側面が凸部の両側の側面の各々に対向している。このため、凸部の両側の側面においてシェアエッジの長さを確保することができる。つまり、金型部材の厚みとして1つの凸部の高さを増加させるだけで、流れ経路におけるシェアエッジの総長さ(凸部の高さ方向の長さ)を凸部の一方の側部におけるシェアエッジの長さの2倍分(シェアエッジの長さ×2)も確保することができる。また、このような凸部を複数個設ければ、金型部材の厚みとして1つの凸部の高さを増加させるだけで、流れ経路におけるシェアエッジの総長さを、(凸部の一方の側部におけるシェアエッジの長さ)×2×(凸部の個数)分も確保することができる。このように金型部材の厚みの増加を抑制しながら、流れ経路におけるシェアエッジの総長さを大きくすることができる。金型部材の厚みの増加を抑制できるため成形時における金型部材の加熱や冷却が容易となり、加熱や冷却におけるエネルギー消費量を従来例よりも低減できると共に、成形のサイクル時間を従来例よりも短縮することができる。またシェアエッジの総長さを大きく確保できるため、成形材料の流れ出しを抑制することができ、成形品の厚さ精度を良好とすることができる。
【0014】
また従来例のようにシェアエッジの長さを大きく確保するためにキャビティの深さを深くする必要がないため、本発明の圧縮成形用金型では成形後に成形品を金型部材から取り出すことが容易となり、成形品の脱型性が良好となる。
【0015】
上記の圧縮成形用金型において好ましくは、凸部を凹部に嵌め込んで第1の金型部材と第2の金型部材とを重ね合わせたときに、凸部の側面と凹部の側面との間隔が0.03mm以上0.15mm以下である。
【0016】
上記の間隔が0.15mmを超える場合には、成形材料の漏れ出し量が多くなり、金型内に材料を留めることが困難となり、成形品の厚さ精度不良が生じる。特に成形圧力が10MPa以上である場合や、成形材料中の充填材あるいは繊維材の含有量が50体積%未満の材料を形成する場合には、この傾向が顕著となる。一方、上記の間隔が0.03mm未満の場合、成形材料中の空気の排出が困難となり、成形品のボイドなどが発生する場合がある。
【0017】
上記の圧縮成形用金型において好ましくは、凸部を凹部に嵌め込んで第1の金型部材と第2の金型部材とを重ね合わせたときに、凸部の頂面と凹部の底面との間隔が0.05mm以上0.30mm以下である。
【0018】
上記の間隔が0.30mmを超える場合には、成形材料の漏れ出し量が多くなり、金型内に材料を留めることが困難となり、成形品の厚さ精度不良が生じる。特に成形圧力が10MPa以上である場合や、成形材料中の充填材あるいは繊維材の含有量が50体積%未満の材料を形成する場合には、この傾向が顕著となる。一方、上記の間隔が0.05mm未満の場合、成形材料中の空気の排出が困難となり、成形品のボイドなどが発生する場合がある。
【0019】
上記の圧縮成形用金型において好ましくは、凸部を凹部に嵌め込んで第1の金型部材と第2の金型部材とを重ね合わせたときの、凸部の付け根と凹部の底面との距離をt(成形品の厚み)とすると、凸部の幅は、(t×0.5)以上(t×1.0)以下である。
【0020】
凸部の幅が(t×0.5)未満の場合、凸部が細くなるために凸部の耐久性が低くなり、成形する過程で金型が変形し、やがて金型を潰す危険がある。また凸部の幅が(t×1.0)を超える場合、成形材料の漏れ出しを防止するためには多くの凹部と凸部とを設ける必要があり、金型サイズが大型となる。
【0021】
本発明の燃料電池用セパレータの製造方法は、上記のいずれかに記載の圧縮成形用金型を用いて成形材料を圧縮成形する工程を経て燃料電池用セパレータを製造することを特徴とするものである。
【0022】
本発明の燃料電池用セパレータの製造方法によれば、燃料電池用セパレータを、加熱・冷却のエネルギーを少量に抑えつつ、短いサイクル時間で成形精度良く製造することができる。
【0023】
上記の燃料電池用セパレータの製造方法において好ましくは、成形材料は熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを含んでいる。
【0024】
これにより熱可塑性樹脂の場合には成形時の加熱により溶融し、冷却により固化して成形品形状とすることができ、また熱硬化性樹脂の場合には成形時の加熱により固化して成形品形状とすることができる。
【0025】
上記の燃料電池用セパレータの製造方法において好ましくは、熱可塑性樹脂を少なくとも含む成形材料を、圧縮成形用金型を用いて、加熱しながら圧縮した後に、冷却しながら圧縮する。
【0026】
上記の燃料電池用セパレータの製造方法において好ましくは、熱硬化性樹脂を含む成形材料を、圧縮成形用金型を用いて、加熱しながら圧縮する。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明の圧縮成形用金型によれば、金型の厚みを薄く維持したままで、成形時における成形材料の漏れ出しを抑制できるとともに、成形品の厚さを精度良く製造することができる。またこの圧縮成形用金型を用いて燃料電池用セパレータを製造することにより、燃料電池用セパレータを、加熱・冷却のエネルギーを少量に抑えつつ、短いサイクル時間で成形精度良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。図2は図1の領域Sを拡大して示す概略断面図であり、図3は凸部が凹部に嵌まり込んだ様子を示す図1の領域Sを拡大して示す概略断面図である。また図4は図1に示す金型部材1の構成を、図5は図1に示す金型部材2の構成をそれぞれ概略的に示す平面図である。
【0029】
主に図1および図2を参照して、本実施の形態の圧縮成形用金型10は、金型部材1と、金型部材2とを有している。金型部材1は、金型部材2と対向する表面1aに、成形材料を賦形するための賦形部R1を有している。また金型部材2は、金型部材1と対向する表面2aに、成形材料を賦形するための賦形部R2を有している。この賦形部R1、R2は、賦形部R1、R2間の空間3内で、圧縮成形時に成形材料を挟み込んで加圧することで成形品に形状を転写する部分である。
【0030】
金型部材1は、金型部材2と対向する表面1aに凹部1bを有している。また金型部材2は、金型部材1と対向する表面2aに凸部2bを有している。この凸部2bは、金型部材1と金型部材2とを重ね合わせたときに、図3に示すように凹部1bに嵌まり込むように構成されている。
【0031】
主に図4および図5を参照して、金型部材1に形成される凹部1bは、賦形部R1の外周を取り囲むように形成されている。また金型部材2に形成される凸部2bは、賦形部R2の外周を取り囲むように形成されている。この凹部1bおよび凸部2bの各々は単列で賦形部R1、R2を取り囲んでいてもよく、また複列で賦形部R1、R2を取り囲んでいてもよい。図4および図5においては、凹部1bおよび凸部2bの各々が2列で賦形部R1、R2を取り囲む構成が例示されている。なお、凹部1bおよび凸部2bの各々は、賦形部R1、R2の各々を途切れることなく連続的に取り囲んでいてもよく、また本発明の効果を逸脱しない範囲で一部において途切れていてもよい。例えば、凹部1bおよび凸部2bの各々は、そのコーナー部において途切れ部分を有していてもよい。
【0032】
主に図3を参照して、凸部2bが凹部1bに嵌まり込んだ状態で、凹部1bの側面1b1、1b2の各々は、凸部2bの両側の側面2b1、2b2の各々に対向している。また凸部2bが凹部1bに嵌まり込んだ状態で、凹部1bの底面1b3は、凸部2bの頂面2b3に対向している。
【0033】
次に、本実施の形態における圧縮成形用金型の各部の寸法について説明する。
図6は、凸部を凹部に嵌め込んで2つの金型部材を重ね合わせた状態での各部の寸法を説明するための概略断面図である。図6を参照して、この状態における凸部の頂面と凹部の底面との間隔A1、A2、・・・、Anが0.05mm以上0.30mm以下であることが好ましい。また間隔A1、A2、・・・、Anについては、本発明の効果を逸脱しない範囲で、A1>A2>・・・>Anとなるように、金型中心から外側に向かって徐々に間隔が変えられてもよい。
【0034】
また凸部2bの側面と凹部1bの側面との間隔(シェアエッジのクリアランス)B1、B2、・・・、Bnは0.03mm以上0.15mm以下であることが好ましい。この数値範囲は、一般的な成形材料を用いた場合に適用するに好適な範囲である。よって、例えば充填材の量や粒子径、繊維材の量や径が特殊な材料を用いる場合には、以下に説明するように、その材料に基づいて間隔B1、B2、・・・、Bnが決められてもよい。
【0035】
樹脂成形材料には、樹脂のほかに充填材(例えば粒子状のフィラー)や成形品の強化材としてガラス繊維やカーボン繊維が使用される。成形材料に平均粒子径5μmの充填材を用いる場合には、間隔B1、B2、・・・、Bnは10μm以上500μm以下であることが好ましい。また繊維径が15μm程度のガラス繊維を用いる場合には、間隔B1、B2、・・・、Bnは15μm以上1500μm以下であることが好ましい。つまり、間隔B1、B2、・・・、Bnは、充填材や繊維材の大きさの1倍以上100倍以下の大きさであることが好ましい。
【0036】
また金型1の頂面と金型2の頂面との距離(つまりシェアエッジの長さ(トラベル))をhとし、シェアエッジの個数をYとすると、hは(0.1×t)以上t以下であり、かつシェアエッジの総長さH(=h×Y)は0.5mm以上20mm以下であることが好ましい。hおよびHが上記より小さい場合には、成形材料が金型から流出する危険がある。hおよびHが上記より大きい場合には、金型が大きくなるため、金型の加熱・冷却に多大な時間とエネルギーが必要となり、また金型の加工が複雑となり金型加工費用が高くなる。このシェアエッジの長さhは、上記の間隔A1、A2、・・・、Anと同様、本発明の効果を逸脱しない範囲で、金型中心から外側に向かって徐々に短くなるように変えられてもよい。
【0037】
またこの状態における凸部2bの幅C1、C2、・・・、Cnは、(t×0.5)以上(t×1.0)以下であることが好ましい。この幅C1、C2、・・・、Cnは、上記の間隔A1、A2、・・・、Anと同様、本発明の効果を逸脱しない範囲で、C1>C2>・・・>Cnとなるように、金型中心から外側に向かって徐々に間隔が変えられてもよい。
【0038】
もちろんシェアエッジの総長さHとクリアランスB1、B2、・・・、Bnとは、成形圧力や成形材料に用いる樹脂の粘度を考慮して決める必要がある。すなわち、成形圧力が大きく、樹脂の粘度が低く、成形材料が漏れやすい条件では、上記の目安の設計値よりもクリアランスB1、B2、・・・、Bnは小さく、総長さHは長くすることは言うまでもない。
【0039】
また、金型は工作機械を用いて製作されること、金型を加熱する場合は金属の熱膨張により金型寸法が大きくなることを考慮して、加工精度および温度分布を考慮して、クリアランスB1、B2、・・・、Bnおよび総長さHを設計する必要がある。特に金型が大型の場合、数十μmから数百μm程度の寸法誤差が生じることを考慮しておく必要がある。
【0040】
なお、金型部材1、2を重ね合わせたときに、凹部1bの底面と凸部2bの頂面とが接触しないように、また所定厚みの成形品を成形できるように金型部材1、2にはストッパーが設けられている。
【0041】
次に、本実施の形態における圧縮成形用金型を用いた燃料電池用セパレータの製造方法について説明する。
【0042】
図7および図8は、本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型を用いた燃料電池用セパレータの製造方法を工程順に示す概略断面図である。図7を参照して、成形材料20が、例えば導電性炭素材料と樹脂バインダーとを少なくとも含むように準備される。樹脂バインダーは、例えば熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との少なくともいずれかを含んでいる。この成形材料は、粉末状、粒子状、ペレット状などであってもよく、またシート形状であってもよい。
【0043】
上記の炭素材料としては、例えば人造黒鉛、天然黒鉛、ガラス状カーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。これらの炭素材料は単独で、もしくは2種以上を組合せて用いることができる。これらの炭素材料の粉粒体の形状に特に制限はなく、箔状、鱗片状、板状、針状、球状、無定形等の何れであってもよい。また、黒鉛を化学処理して得られる膨張黒鉛も使用することができる。導電性を考慮すれば、より少量で高度の導電性を有するセパレータが得られるという点で、人造黒鉛、天然黒鉛、膨張黒鉛が好ましい。
【0044】
熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができる。熱硬化性樹脂は1種類の樹脂からなるもののみではなく、2種類以上の樹脂を混合したものも使用することができる。
【0045】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素樹脂、全芳香族ポリエステル、半芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエステル・ポリエステルエラストマー、ポリエステル・ポリエーテルエラストマーなどの熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂と同様に、熱可塑性樹脂も1種類の樹脂からなるもののみではなく、2種類以上の樹脂を混合したものも使用することができる。さらに熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを複合したものも使用することができる。
【0046】
この成形材料20が圧縮成形用金型10に投入され、金型部材1の賦形部1aと金型部材2の賦形部2aとの間で加圧される。この際、金型部材1、2は熱盤11により加熱されており、この金型部材1、2を介して成形材料20が加熱される。この加熱加圧により、樹脂バインダーに熱硬化性樹脂が用いられている場合には、その熱硬化性樹脂が固化する。この後、金型10から燃料電池用セパレータ成形体が取り出される。また樹脂バインダーに熱可塑性樹脂が用いられている場合には、上記の加熱加圧により、その熱可塑性樹脂は溶融する。
【0047】
次に図8を参照して、樹脂バインダーに熱可塑性樹脂が用いられている場合には、引き続いて、金型部材1、2が冷却盤12により冷却される。この冷却の際にも、成形材料20は金型部材1の賦形部1aと金型部材2の賦形部2aとの間で加圧されている。この冷却加圧により溶融状態にあった熱可塑性樹脂が固化する。この後、金型10から燃料電池用セパレータ成形体が取り出される。
【0048】
上記のように樹脂バインダーが熱硬化性樹脂よりなる場合は、成形材料20が圧縮成形用金型10で加熱加圧されて燃料電池用セパレータ成形体が得られるが、樹脂バインダーが熱可塑性樹脂よりなる場合または熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂よりなる場合は、成形材料20が圧縮成形用金型10で加熱加圧および冷却加圧されて燃料電池用セパレータ成形体が得られる。
【0049】
上記の圧縮成形を経て得られた本実施の形態の燃料電池用セパレータは、例えば図9に示す形状を有している。図9を参照して、この燃料電池用セパレータ31は、ガスまたは液体の供給路となるリブ形状を両面に設けたものや、該リブ形状を片面に設けたものが挙げられ、本実施の形態の燃料電池用セパレータにはいずれの形状も採用され得る。燃料電池用セパレータの形状は、上記の圧縮成形用金型10の賦形部1a、2aの形状を適宜選択することにより任意に設計され得る。
【0050】
上記のようにして得られた本実施の形態の燃料電池用セパレータ31を用いて燃料電池を製造することができる。図10は、本発明の一実施の形態における燃料電池用セパレータを用いた燃料電池のセル構造の例を示す斜視図である。図10を参照して、燃料電池セル30は、燃料電池用セパレータ31と電解質膜/膜接合体35とを有している。電解質膜/膜接合体35は、例えば燃料極32、酸化剤極33および固体高分子電解質膜34からなっている。1対の燃料電池用セパレータ31、31が電解質膜/膜接合体35を挟むように配置されることで、固体高分子型の燃料電池セル30が構成されている。本実施の形態の燃料電池は、単一の燃料電池セル30より構成されていても利用可能であるが、発電性能を高める目的で通常は該燃料電池セル30が複数個直列に配置された燃料電池スタックとされている。
【0051】
本実施の形態で得られる燃料電池用セパレータ31は、上記の固体高分子型の燃料電池のほかに、ヒドラジン型、直接メタノール型、アルカリ型、リン酸型等の種々の燃料電池に対して好適に適用され得る。
【0052】
以下、本実施の形態の作用効果について説明する。
図11は、本発明の一実施の形態の圧縮成形用金型における成形材料の流れ経路を概略的に示す部分断面図である。図11を参照して、本実施の形態によれば、賦形部1a、2a間に充填された成形材料20は成形時に図中の矢印に沿って賦形部1a、2a間から流れていく。しかし本実施の形態では、金型部材1に形成された凹部1bは、金型部材2に形成された凸部2bの両側面の各々に対向している。このため、図中の矢印で示す成形材料20の流れ経路において、凸部2bの両側面でシェアエッジの長さ(トラベル)hを確保することができる。つまり、流れ経路におけるシェアエッジの総長さHを、シェアエッジの長さhの2倍(h×2)で確保することができる。
【0053】
このように金型部材1(または金型部材2)の厚みTとして1つの凹部1b(または凸部2b)の高さ分を増やすだけで、成形材料20の流れ経路におけるシェアエッジの総長さHとしてシェアエッジの長さhの2倍の長さ(h×2)を確保することができる。このため、金型部材1、2の厚みの増加を抑制しつつ、シェアエッジの総長さHを大きく確保することができる。金型部材1、2の厚みの増加を抑制できるため成形時における金型部材1、2の加熱や冷却が容易となり、加熱や冷却におけるエネルギー消費量を従来例よりも低減できると共に、成形のサイクル時間を従来例よりも短縮することができる。またシェアエッジの総長さHを大きく確保できるため、成形材料の漏れ出しを抑制することができ、成形品の厚さ精度を良好とすることができる。
【0054】
また本実施の形態では、流れ経路は、凸部2bの一方の側面に沿う部分Eでは図中下側に向かって伸びるが、他方の側面に沿う部分Fでは図中上側に向かって伸びる。このため、例えば図1に示すように凹部1bおよび凸部2bを複列(例えば2列)で配置しても、金型部材1(または金型部材2)の厚みTとして1つの凹部1b(または凸部2b)の高さ分が増えるだけである。一方、この場合の流れ経路におけるシェアエッジの総長さHは、シェアエッジの長さhの2倍の長さ(h×2)にその列数を乗じた長さ(h×2×列数)となる。よって、凹部1bおよび凸部2bの列数を増やすことにより、金型部材1、2の厚みは薄く維持したまま、シェアエッジの総長さHを列数分だけ増加させていくことができる。これにより、さらに成形材料20の漏れ出しを抑制することができる。
【0055】
また本実施の形態では凹部1bおよび凸部2bの列数を増やすことでシェアエッジの長さhを大きく確保することができる。このため、図13に示す従来例のようにシェアエッジの長さhを大きく確保するために凹部101aの深さを深くする必要はない。よって、成形後に成形品を金型部材1または2から取り出すことが容易となり、成形品の脱型性が良好となる。
【0056】
上記の圧縮成形用金型を用いた燃料電池用セパレータの製造方法によれば、燃料電池用セパレータを、加熱・冷却のエネルギーを少量に抑えつつ、短いサイクル時間で成形精度良く製造することができる。
【0057】
上記のような方法で製造される本実施の形態の燃料電池は、セパレータの薄肉化および厚み精度の向上により小型化が可能であるため、例えば電気自動車用電源、ポータブル電源、非常用電源や、人工衛星、飛行機、宇宙船等の移動体用電源、等として好適に使用され得る。
【0058】
なお本発明の圧縮成形用金型における凹部および凸部の成形品の厚み方向に対する位置は、上記の実施の形態で説明した構成に限定されるものではなく、例えば図12(a)、(b)、(c)に示すような位置であってもよい。つまり、圧縮成形用金型10における凹部1bおよび凸部2bの成形品20の厚み方向(図中X方向)に対する位置は、図12(a)に示すように厚み方向に対して図中上側に偏っていてもよく、図12(b)に示すように厚み方向の中心位置にあってもよく、図12(c)に示すように厚み方向に対して図中下側に偏っていてもよい。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、電気自動車用電源、ポータブル電源、非常用電源等に対して適用されるリン酸型燃料電池、ダイレクトメタノ−ル型燃料電池、固体高分子型燃料電池等の燃料電池に対して使用可能な燃料電池用セパレータの製造方法およびそれに用いられる圧縮成形用金型に特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の領域Sを拡大して示す概略断面図である。
【図3】凸部が凹部に嵌まり込んだ様子を示す図1の領域Sを拡大して示す概略断面図である。
【図4】図1に示す金型部材1の構成を概略的に示す平面図である。
【図5】図1に示す金型部材2の構成を概略的に示す平面図である。
【図6】凸部を凹部に嵌め込んで2つの金型部材を重ね合わせた状態での各部の寸法を説明するための概略断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型を用いた燃料電池用セパレータの製造方法の第1工程を示す概略断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型を用いた燃料電池用セパレータの製造方法の第2工程を示す概略断面図である。
【図9】本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型を用いた圧縮成形を経て得られた燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施の形態における燃料電池用セパレータを用いた燃料電池のセル構造の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の一実施の形態の圧縮成形用金型における成形材料の流れ経路を概略的に示す部分断面図である。
【図12】本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型のバリエーションを示す断面図である。
【図13】従来のシェアエッジ構造の圧縮成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図14】従来の合わせ型の圧縮成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図15】従来の合わせ型の圧縮成形用金型において流れ出した成形材料が少ない場合の様子を概略的に示す断面図である。
【図16】従来の合わせ型の圧縮成形用金型において流れ出した成形材料が多い場合の様子を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 金型部材、1a 賦形部、1b 凹部、2 金型部材、2a 賦形部、2b 凸部、10 圧縮成形用金型、11 熱盤、12 冷却盤、20 成形材料、30 燃料電池セル、31 燃料電池用セパレータ、32 燃料極、33 酸化剤極、34 固体高分子電解質膜、35 膜接合体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮成形用金型および燃料電池用セパレータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応から電力を得る燃料電池においては、近年ポ−タブル機器、自動車等の種々の用途への適用が検討されている。燃料電池は、電解質膜、電極およびセパレータからなる基本構成単位、すなわち単位セルが通常直列に数十〜数百セル積層された構造を有する。一般的な燃料電池の製造方法では電解質膜および電極は予め電解質膜/電極接合体(MEA)として形成され、これにセパレータが配置される。セパレータとしては、水素等の燃料と、空気または酸素からなる酸化剤と、セルを冷却するための冷媒とをそれぞれ供給するための流路を少なくとも片面に形成したものが用いられる。
【0003】
セパレータでは、隣接するMEAとの電気的な接続を確保して燃料電池の発電効率を高めるために十分な導電性を備えることが必要であるが、これに加えて、単位セルの積層構造を支えるために十分な機械的強度が必要とされる。また、燃料電池の小型化の要求に伴い近年ではセパレータの薄肉化も求められている。さらに、単位セルの積層構造における単位セル間の接触抵抗を低減するために厚み精度の向上も求められている。
【0004】
従来の燃料電池用セパレータは、樹脂と炭素材料とを含む成形材料を圧縮成形用金型内に投入し加圧することによって成形される。このような燃料電池用セパレータを形成するための成形用金型の構造は従来から各種提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0005】
この圧縮成形用金型には、(1)金型形状を成形材料に転写するために、成形材料に所望の成形圧力および熱を付加できること(成形材料が漏れないこと)、(2)金型内および成形材料中の空気を効率よく金型外に排出できること、が求められる。(1)、(2)を同時に達成するために、金型内に材料を閉じ込め、かつ空気を排出する必要がある。
【0006】
一般的に、従来の圧縮成形用金型は、図13に示すように、凹部(キャビティ)101aを有する凹型101と、凸部(コア)102aを有する凸型102とから構成されている。そして、上記(1)、(2)を満たすために、凹部101aの側壁と凸部102aの側壁とを対向させたシェアエッジ(図中領域P)が設けられている。
【0007】
このような金型を用いて成形材料を成形すると、凹部101aからフローアウトした余剰分の成形材料は、シェアエッジの隙間(クリアランス)を通過する際に金型壁面との間の強い摩擦力により大きな流動抵抗を受け、これにより成形材料の漏れ出しが防止されている。このため、シェアエッジの長さ(トラベル)hと隙間(クリアランス)bとを適切に設定することにより、成形時の成形材料の漏れを防止することができ、かつ金型内および成形材料中の空気を効率よく金型外へ排出することができる。
【0008】
また金型として、図14に示すように、凹部201aを有する金型201と、凹部202aを有する金型202とから構成される合わせ型の圧縮成形用金型もある。この合わせ型の金型では、構造が簡単で、金型全体の厚みを薄くすることもできる。
【特許文献1】特開2001−198921号公報
【特許文献2】特開2003−170459号公報
【特許文献3】特開2004−216756号公報
【特許文献4】特開2004−230788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図13に示すシェアエッジ構造の圧縮成形用金型では、成形時の成形材料の漏れを防止するために、シェアエッジの長さ(トラベル)hを大きくとる必要があり、金型101、102の厚みが厚くなる。金型101、102の厚みが厚くなると、金型101、102の加熱・冷却に時間がかかる。このため、金型101、102を介して成形材料を加熱するにも長時間が必要となる。よって、加熱・冷却のエネルギーが大量に消費されるとともに、圧縮成形のサイクル時間が長くなるという問題がある。また金型101、102の厚みが厚くなるため、成形後に凹型101の凹部101a内から成形品を取り出すことが難しくなり、成形品の脱型性が悪くなるという問題もある。
【0010】
また、図14に示す合わせ型の圧縮成形用金型では、流動性が低い成形材料の場合には、図15に示すように金型201と金型202との合わせ面に、漏れ出した成形材料が多く残り、結果として成形品20の厚みが厚くなるという問題がある。また、流動性が高い成形材料の場合、図16に示すように漏れ出した成形材料が合わせ面に留まらず金型外に排出される。これにより、成形品が薄くなり、成形材料に圧力が加わりにくいという問題がある。
【0011】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、成形時における成形材料の漏れ出しを抑制でき、かつ成形品を精度よく成形できる、厚みの薄い圧縮成形用金型および燃料電池用セパレータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の圧縮成形用金型は、成形材料を圧縮成形するための圧縮成形用金型であって、第1の金型部材と、第2の金型部材とを備えている。第1の金型部材は、成形材料を賦形するための第1の賦形部を有し、かつ第1の賦形部を取り囲むように形成された凹部を有している。第2の金型部材は、成形材料を賦形するための第2の賦形部を有し、かつ第2の賦形部を取り囲むように形成された凸部を有している。凹部は、凸部が嵌まり込むように構成されており、かつ凸部が嵌まり込んだ状態で凸部の両側の側面の各々に対向するような側面を有している。
【0013】
本発明の圧縮成形用金型によれば、凹部の側面が凸部の両側の側面の各々に対向している。このため、凸部の両側の側面においてシェアエッジの長さを確保することができる。つまり、金型部材の厚みとして1つの凸部の高さを増加させるだけで、流れ経路におけるシェアエッジの総長さ(凸部の高さ方向の長さ)を凸部の一方の側部におけるシェアエッジの長さの2倍分(シェアエッジの長さ×2)も確保することができる。また、このような凸部を複数個設ければ、金型部材の厚みとして1つの凸部の高さを増加させるだけで、流れ経路におけるシェアエッジの総長さを、(凸部の一方の側部におけるシェアエッジの長さ)×2×(凸部の個数)分も確保することができる。このように金型部材の厚みの増加を抑制しながら、流れ経路におけるシェアエッジの総長さを大きくすることができる。金型部材の厚みの増加を抑制できるため成形時における金型部材の加熱や冷却が容易となり、加熱や冷却におけるエネルギー消費量を従来例よりも低減できると共に、成形のサイクル時間を従来例よりも短縮することができる。またシェアエッジの総長さを大きく確保できるため、成形材料の流れ出しを抑制することができ、成形品の厚さ精度を良好とすることができる。
【0014】
また従来例のようにシェアエッジの長さを大きく確保するためにキャビティの深さを深くする必要がないため、本発明の圧縮成形用金型では成形後に成形品を金型部材から取り出すことが容易となり、成形品の脱型性が良好となる。
【0015】
上記の圧縮成形用金型において好ましくは、凸部を凹部に嵌め込んで第1の金型部材と第2の金型部材とを重ね合わせたときに、凸部の側面と凹部の側面との間隔が0.03mm以上0.15mm以下である。
【0016】
上記の間隔が0.15mmを超える場合には、成形材料の漏れ出し量が多くなり、金型内に材料を留めることが困難となり、成形品の厚さ精度不良が生じる。特に成形圧力が10MPa以上である場合や、成形材料中の充填材あるいは繊維材の含有量が50体積%未満の材料を形成する場合には、この傾向が顕著となる。一方、上記の間隔が0.03mm未満の場合、成形材料中の空気の排出が困難となり、成形品のボイドなどが発生する場合がある。
【0017】
上記の圧縮成形用金型において好ましくは、凸部を凹部に嵌め込んで第1の金型部材と第2の金型部材とを重ね合わせたときに、凸部の頂面と凹部の底面との間隔が0.05mm以上0.30mm以下である。
【0018】
上記の間隔が0.30mmを超える場合には、成形材料の漏れ出し量が多くなり、金型内に材料を留めることが困難となり、成形品の厚さ精度不良が生じる。特に成形圧力が10MPa以上である場合や、成形材料中の充填材あるいは繊維材の含有量が50体積%未満の材料を形成する場合には、この傾向が顕著となる。一方、上記の間隔が0.05mm未満の場合、成形材料中の空気の排出が困難となり、成形品のボイドなどが発生する場合がある。
【0019】
上記の圧縮成形用金型において好ましくは、凸部を凹部に嵌め込んで第1の金型部材と第2の金型部材とを重ね合わせたときの、凸部の付け根と凹部の底面との距離をt(成形品の厚み)とすると、凸部の幅は、(t×0.5)以上(t×1.0)以下である。
【0020】
凸部の幅が(t×0.5)未満の場合、凸部が細くなるために凸部の耐久性が低くなり、成形する過程で金型が変形し、やがて金型を潰す危険がある。また凸部の幅が(t×1.0)を超える場合、成形材料の漏れ出しを防止するためには多くの凹部と凸部とを設ける必要があり、金型サイズが大型となる。
【0021】
本発明の燃料電池用セパレータの製造方法は、上記のいずれかに記載の圧縮成形用金型を用いて成形材料を圧縮成形する工程を経て燃料電池用セパレータを製造することを特徴とするものである。
【0022】
本発明の燃料電池用セパレータの製造方法によれば、燃料電池用セパレータを、加熱・冷却のエネルギーを少量に抑えつつ、短いサイクル時間で成形精度良く製造することができる。
【0023】
上記の燃料電池用セパレータの製造方法において好ましくは、成形材料は熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを含んでいる。
【0024】
これにより熱可塑性樹脂の場合には成形時の加熱により溶融し、冷却により固化して成形品形状とすることができ、また熱硬化性樹脂の場合には成形時の加熱により固化して成形品形状とすることができる。
【0025】
上記の燃料電池用セパレータの製造方法において好ましくは、熱可塑性樹脂を少なくとも含む成形材料を、圧縮成形用金型を用いて、加熱しながら圧縮した後に、冷却しながら圧縮する。
【0026】
上記の燃料電池用セパレータの製造方法において好ましくは、熱硬化性樹脂を含む成形材料を、圧縮成形用金型を用いて、加熱しながら圧縮する。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明の圧縮成形用金型によれば、金型の厚みを薄く維持したままで、成形時における成形材料の漏れ出しを抑制できるとともに、成形品の厚さを精度良く製造することができる。またこの圧縮成形用金型を用いて燃料電池用セパレータを製造することにより、燃料電池用セパレータを、加熱・冷却のエネルギーを少量に抑えつつ、短いサイクル時間で成形精度良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。図2は図1の領域Sを拡大して示す概略断面図であり、図3は凸部が凹部に嵌まり込んだ様子を示す図1の領域Sを拡大して示す概略断面図である。また図4は図1に示す金型部材1の構成を、図5は図1に示す金型部材2の構成をそれぞれ概略的に示す平面図である。
【0029】
主に図1および図2を参照して、本実施の形態の圧縮成形用金型10は、金型部材1と、金型部材2とを有している。金型部材1は、金型部材2と対向する表面1aに、成形材料を賦形するための賦形部R1を有している。また金型部材2は、金型部材1と対向する表面2aに、成形材料を賦形するための賦形部R2を有している。この賦形部R1、R2は、賦形部R1、R2間の空間3内で、圧縮成形時に成形材料を挟み込んで加圧することで成形品に形状を転写する部分である。
【0030】
金型部材1は、金型部材2と対向する表面1aに凹部1bを有している。また金型部材2は、金型部材1と対向する表面2aに凸部2bを有している。この凸部2bは、金型部材1と金型部材2とを重ね合わせたときに、図3に示すように凹部1bに嵌まり込むように構成されている。
【0031】
主に図4および図5を参照して、金型部材1に形成される凹部1bは、賦形部R1の外周を取り囲むように形成されている。また金型部材2に形成される凸部2bは、賦形部R2の外周を取り囲むように形成されている。この凹部1bおよび凸部2bの各々は単列で賦形部R1、R2を取り囲んでいてもよく、また複列で賦形部R1、R2を取り囲んでいてもよい。図4および図5においては、凹部1bおよび凸部2bの各々が2列で賦形部R1、R2を取り囲む構成が例示されている。なお、凹部1bおよび凸部2bの各々は、賦形部R1、R2の各々を途切れることなく連続的に取り囲んでいてもよく、また本発明の効果を逸脱しない範囲で一部において途切れていてもよい。例えば、凹部1bおよび凸部2bの各々は、そのコーナー部において途切れ部分を有していてもよい。
【0032】
主に図3を参照して、凸部2bが凹部1bに嵌まり込んだ状態で、凹部1bの側面1b1、1b2の各々は、凸部2bの両側の側面2b1、2b2の各々に対向している。また凸部2bが凹部1bに嵌まり込んだ状態で、凹部1bの底面1b3は、凸部2bの頂面2b3に対向している。
【0033】
次に、本実施の形態における圧縮成形用金型の各部の寸法について説明する。
図6は、凸部を凹部に嵌め込んで2つの金型部材を重ね合わせた状態での各部の寸法を説明するための概略断面図である。図6を参照して、この状態における凸部の頂面と凹部の底面との間隔A1、A2、・・・、Anが0.05mm以上0.30mm以下であることが好ましい。また間隔A1、A2、・・・、Anについては、本発明の効果を逸脱しない範囲で、A1>A2>・・・>Anとなるように、金型中心から外側に向かって徐々に間隔が変えられてもよい。
【0034】
また凸部2bの側面と凹部1bの側面との間隔(シェアエッジのクリアランス)B1、B2、・・・、Bnは0.03mm以上0.15mm以下であることが好ましい。この数値範囲は、一般的な成形材料を用いた場合に適用するに好適な範囲である。よって、例えば充填材の量や粒子径、繊維材の量や径が特殊な材料を用いる場合には、以下に説明するように、その材料に基づいて間隔B1、B2、・・・、Bnが決められてもよい。
【0035】
樹脂成形材料には、樹脂のほかに充填材(例えば粒子状のフィラー)や成形品の強化材としてガラス繊維やカーボン繊維が使用される。成形材料に平均粒子径5μmの充填材を用いる場合には、間隔B1、B2、・・・、Bnは10μm以上500μm以下であることが好ましい。また繊維径が15μm程度のガラス繊維を用いる場合には、間隔B1、B2、・・・、Bnは15μm以上1500μm以下であることが好ましい。つまり、間隔B1、B2、・・・、Bnは、充填材や繊維材の大きさの1倍以上100倍以下の大きさであることが好ましい。
【0036】
また金型1の頂面と金型2の頂面との距離(つまりシェアエッジの長さ(トラベル))をhとし、シェアエッジの個数をYとすると、hは(0.1×t)以上t以下であり、かつシェアエッジの総長さH(=h×Y)は0.5mm以上20mm以下であることが好ましい。hおよびHが上記より小さい場合には、成形材料が金型から流出する危険がある。hおよびHが上記より大きい場合には、金型が大きくなるため、金型の加熱・冷却に多大な時間とエネルギーが必要となり、また金型の加工が複雑となり金型加工費用が高くなる。このシェアエッジの長さhは、上記の間隔A1、A2、・・・、Anと同様、本発明の効果を逸脱しない範囲で、金型中心から外側に向かって徐々に短くなるように変えられてもよい。
【0037】
またこの状態における凸部2bの幅C1、C2、・・・、Cnは、(t×0.5)以上(t×1.0)以下であることが好ましい。この幅C1、C2、・・・、Cnは、上記の間隔A1、A2、・・・、Anと同様、本発明の効果を逸脱しない範囲で、C1>C2>・・・>Cnとなるように、金型中心から外側に向かって徐々に間隔が変えられてもよい。
【0038】
もちろんシェアエッジの総長さHとクリアランスB1、B2、・・・、Bnとは、成形圧力や成形材料に用いる樹脂の粘度を考慮して決める必要がある。すなわち、成形圧力が大きく、樹脂の粘度が低く、成形材料が漏れやすい条件では、上記の目安の設計値よりもクリアランスB1、B2、・・・、Bnは小さく、総長さHは長くすることは言うまでもない。
【0039】
また、金型は工作機械を用いて製作されること、金型を加熱する場合は金属の熱膨張により金型寸法が大きくなることを考慮して、加工精度および温度分布を考慮して、クリアランスB1、B2、・・・、Bnおよび総長さHを設計する必要がある。特に金型が大型の場合、数十μmから数百μm程度の寸法誤差が生じることを考慮しておく必要がある。
【0040】
なお、金型部材1、2を重ね合わせたときに、凹部1bの底面と凸部2bの頂面とが接触しないように、また所定厚みの成形品を成形できるように金型部材1、2にはストッパーが設けられている。
【0041】
次に、本実施の形態における圧縮成形用金型を用いた燃料電池用セパレータの製造方法について説明する。
【0042】
図7および図8は、本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型を用いた燃料電池用セパレータの製造方法を工程順に示す概略断面図である。図7を参照して、成形材料20が、例えば導電性炭素材料と樹脂バインダーとを少なくとも含むように準備される。樹脂バインダーは、例えば熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との少なくともいずれかを含んでいる。この成形材料は、粉末状、粒子状、ペレット状などであってもよく、またシート形状であってもよい。
【0043】
上記の炭素材料としては、例えば人造黒鉛、天然黒鉛、ガラス状カーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。これらの炭素材料は単独で、もしくは2種以上を組合せて用いることができる。これらの炭素材料の粉粒体の形状に特に制限はなく、箔状、鱗片状、板状、針状、球状、無定形等の何れであってもよい。また、黒鉛を化学処理して得られる膨張黒鉛も使用することができる。導電性を考慮すれば、より少量で高度の導電性を有するセパレータが得られるという点で、人造黒鉛、天然黒鉛、膨張黒鉛が好ましい。
【0044】
熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができる。熱硬化性樹脂は1種類の樹脂からなるもののみではなく、2種類以上の樹脂を混合したものも使用することができる。
【0045】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素樹脂、全芳香族ポリエステル、半芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエステル・ポリエステルエラストマー、ポリエステル・ポリエーテルエラストマーなどの熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂と同様に、熱可塑性樹脂も1種類の樹脂からなるもののみではなく、2種類以上の樹脂を混合したものも使用することができる。さらに熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを複合したものも使用することができる。
【0046】
この成形材料20が圧縮成形用金型10に投入され、金型部材1の賦形部1aと金型部材2の賦形部2aとの間で加圧される。この際、金型部材1、2は熱盤11により加熱されており、この金型部材1、2を介して成形材料20が加熱される。この加熱加圧により、樹脂バインダーに熱硬化性樹脂が用いられている場合には、その熱硬化性樹脂が固化する。この後、金型10から燃料電池用セパレータ成形体が取り出される。また樹脂バインダーに熱可塑性樹脂が用いられている場合には、上記の加熱加圧により、その熱可塑性樹脂は溶融する。
【0047】
次に図8を参照して、樹脂バインダーに熱可塑性樹脂が用いられている場合には、引き続いて、金型部材1、2が冷却盤12により冷却される。この冷却の際にも、成形材料20は金型部材1の賦形部1aと金型部材2の賦形部2aとの間で加圧されている。この冷却加圧により溶融状態にあった熱可塑性樹脂が固化する。この後、金型10から燃料電池用セパレータ成形体が取り出される。
【0048】
上記のように樹脂バインダーが熱硬化性樹脂よりなる場合は、成形材料20が圧縮成形用金型10で加熱加圧されて燃料電池用セパレータ成形体が得られるが、樹脂バインダーが熱可塑性樹脂よりなる場合または熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂よりなる場合は、成形材料20が圧縮成形用金型10で加熱加圧および冷却加圧されて燃料電池用セパレータ成形体が得られる。
【0049】
上記の圧縮成形を経て得られた本実施の形態の燃料電池用セパレータは、例えば図9に示す形状を有している。図9を参照して、この燃料電池用セパレータ31は、ガスまたは液体の供給路となるリブ形状を両面に設けたものや、該リブ形状を片面に設けたものが挙げられ、本実施の形態の燃料電池用セパレータにはいずれの形状も採用され得る。燃料電池用セパレータの形状は、上記の圧縮成形用金型10の賦形部1a、2aの形状を適宜選択することにより任意に設計され得る。
【0050】
上記のようにして得られた本実施の形態の燃料電池用セパレータ31を用いて燃料電池を製造することができる。図10は、本発明の一実施の形態における燃料電池用セパレータを用いた燃料電池のセル構造の例を示す斜視図である。図10を参照して、燃料電池セル30は、燃料電池用セパレータ31と電解質膜/膜接合体35とを有している。電解質膜/膜接合体35は、例えば燃料極32、酸化剤極33および固体高分子電解質膜34からなっている。1対の燃料電池用セパレータ31、31が電解質膜/膜接合体35を挟むように配置されることで、固体高分子型の燃料電池セル30が構成されている。本実施の形態の燃料電池は、単一の燃料電池セル30より構成されていても利用可能であるが、発電性能を高める目的で通常は該燃料電池セル30が複数個直列に配置された燃料電池スタックとされている。
【0051】
本実施の形態で得られる燃料電池用セパレータ31は、上記の固体高分子型の燃料電池のほかに、ヒドラジン型、直接メタノール型、アルカリ型、リン酸型等の種々の燃料電池に対して好適に適用され得る。
【0052】
以下、本実施の形態の作用効果について説明する。
図11は、本発明の一実施の形態の圧縮成形用金型における成形材料の流れ経路を概略的に示す部分断面図である。図11を参照して、本実施の形態によれば、賦形部1a、2a間に充填された成形材料20は成形時に図中の矢印に沿って賦形部1a、2a間から流れていく。しかし本実施の形態では、金型部材1に形成された凹部1bは、金型部材2に形成された凸部2bの両側面の各々に対向している。このため、図中の矢印で示す成形材料20の流れ経路において、凸部2bの両側面でシェアエッジの長さ(トラベル)hを確保することができる。つまり、流れ経路におけるシェアエッジの総長さHを、シェアエッジの長さhの2倍(h×2)で確保することができる。
【0053】
このように金型部材1(または金型部材2)の厚みTとして1つの凹部1b(または凸部2b)の高さ分を増やすだけで、成形材料20の流れ経路におけるシェアエッジの総長さHとしてシェアエッジの長さhの2倍の長さ(h×2)を確保することができる。このため、金型部材1、2の厚みの増加を抑制しつつ、シェアエッジの総長さHを大きく確保することができる。金型部材1、2の厚みの増加を抑制できるため成形時における金型部材1、2の加熱や冷却が容易となり、加熱や冷却におけるエネルギー消費量を従来例よりも低減できると共に、成形のサイクル時間を従来例よりも短縮することができる。またシェアエッジの総長さHを大きく確保できるため、成形材料の漏れ出しを抑制することができ、成形品の厚さ精度を良好とすることができる。
【0054】
また本実施の形態では、流れ経路は、凸部2bの一方の側面に沿う部分Eでは図中下側に向かって伸びるが、他方の側面に沿う部分Fでは図中上側に向かって伸びる。このため、例えば図1に示すように凹部1bおよび凸部2bを複列(例えば2列)で配置しても、金型部材1(または金型部材2)の厚みTとして1つの凹部1b(または凸部2b)の高さ分が増えるだけである。一方、この場合の流れ経路におけるシェアエッジの総長さHは、シェアエッジの長さhの2倍の長さ(h×2)にその列数を乗じた長さ(h×2×列数)となる。よって、凹部1bおよび凸部2bの列数を増やすことにより、金型部材1、2の厚みは薄く維持したまま、シェアエッジの総長さHを列数分だけ増加させていくことができる。これにより、さらに成形材料20の漏れ出しを抑制することができる。
【0055】
また本実施の形態では凹部1bおよび凸部2bの列数を増やすことでシェアエッジの長さhを大きく確保することができる。このため、図13に示す従来例のようにシェアエッジの長さhを大きく確保するために凹部101aの深さを深くする必要はない。よって、成形後に成形品を金型部材1または2から取り出すことが容易となり、成形品の脱型性が良好となる。
【0056】
上記の圧縮成形用金型を用いた燃料電池用セパレータの製造方法によれば、燃料電池用セパレータを、加熱・冷却のエネルギーを少量に抑えつつ、短いサイクル時間で成形精度良く製造することができる。
【0057】
上記のような方法で製造される本実施の形態の燃料電池は、セパレータの薄肉化および厚み精度の向上により小型化が可能であるため、例えば電気自動車用電源、ポータブル電源、非常用電源や、人工衛星、飛行機、宇宙船等の移動体用電源、等として好適に使用され得る。
【0058】
なお本発明の圧縮成形用金型における凹部および凸部の成形品の厚み方向に対する位置は、上記の実施の形態で説明した構成に限定されるものではなく、例えば図12(a)、(b)、(c)に示すような位置であってもよい。つまり、圧縮成形用金型10における凹部1bおよび凸部2bの成形品20の厚み方向(図中X方向)に対する位置は、図12(a)に示すように厚み方向に対して図中上側に偏っていてもよく、図12(b)に示すように厚み方向の中心位置にあってもよく、図12(c)に示すように厚み方向に対して図中下側に偏っていてもよい。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、電気自動車用電源、ポータブル電源、非常用電源等に対して適用されるリン酸型燃料電池、ダイレクトメタノ−ル型燃料電池、固体高分子型燃料電池等の燃料電池に対して使用可能な燃料電池用セパレータの製造方法およびそれに用いられる圧縮成形用金型に特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の領域Sを拡大して示す概略断面図である。
【図3】凸部が凹部に嵌まり込んだ様子を示す図1の領域Sを拡大して示す概略断面図である。
【図4】図1に示す金型部材1の構成を概略的に示す平面図である。
【図5】図1に示す金型部材2の構成を概略的に示す平面図である。
【図6】凸部を凹部に嵌め込んで2つの金型部材を重ね合わせた状態での各部の寸法を説明するための概略断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型を用いた燃料電池用セパレータの製造方法の第1工程を示す概略断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型を用いた燃料電池用セパレータの製造方法の第2工程を示す概略断面図である。
【図9】本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型を用いた圧縮成形を経て得られた燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施の形態における燃料電池用セパレータを用いた燃料電池のセル構造の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の一実施の形態の圧縮成形用金型における成形材料の流れ経路を概略的に示す部分断面図である。
【図12】本発明の一実施の形態における圧縮成形用金型のバリエーションを示す断面図である。
【図13】従来のシェアエッジ構造の圧縮成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図14】従来の合わせ型の圧縮成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図15】従来の合わせ型の圧縮成形用金型において流れ出した成形材料が少ない場合の様子を概略的に示す断面図である。
【図16】従来の合わせ型の圧縮成形用金型において流れ出した成形材料が多い場合の様子を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 金型部材、1a 賦形部、1b 凹部、2 金型部材、2a 賦形部、2b 凸部、10 圧縮成形用金型、11 熱盤、12 冷却盤、20 成形材料、30 燃料電池セル、31 燃料電池用セパレータ、32 燃料極、33 酸化剤極、34 固体高分子電解質膜、35 膜接合体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を圧縮成形するための圧縮成形用金型であって、
前記成形材料を賦形するための第1の賦形部を有し、かつ前記第1の賦形部を取り囲むように形成された凹部を有する第1の金型部材と、
前記成形材料を賦形するための第2の賦形部を有し、かつ前記第2の賦形部を取り囲むように形成された凸部を有する第2の金型部材とを備え、
前記凹部は、前記凸部が嵌まり込むように構成されており、かつ凸部が嵌まり込んだ状態で前記凸部の両側の側面の各々に対向するような側面を有している、圧縮成形用金型。
【請求項2】
前記凸部を前記凹部に嵌め込んで前記第1の金型部材と前記第2の金型部材とを重ね合わせたときに、前記凸部の前記側面と前記凹部の前記側面との間隔が0.03mm以上0.15mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の圧縮成形用金型。
【請求項3】
前記凸部を前記凹部に嵌め込んで前記第1の金型部材と前記第2の金型部材とを重ね合わせたときに、前記凸部の頂面と前記凹部の底面との間隔が0.05mm以上0.30mm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の圧縮成形用金型。
【請求項4】
前記凸部を前記凹部に嵌め込んで前記第1の金型部材と前記第2の金型部材とを重ね合わせたときの、前記凸部の付け根と前記凹部の底面との距離をtとすると、前記凸部の幅は、(t×0.5)以上(t×1.0)以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の圧縮成形用金型。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の圧縮成形用金型を用いて成形材料を圧縮成形する工程を経て燃料電池用セパレータを製造することを特徴とする、燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項6】
前記成形材料は熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、請求項5に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂を少なくとも含む前記成形材料を前記圧縮成形用金型を用いて、加熱しながら圧縮した後に、冷却しながら圧縮することを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
熱硬化性樹脂を含む前記成形材料を前記圧縮成形用金型を用いて、加熱しながら圧縮することを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項1】
成形材料を圧縮成形するための圧縮成形用金型であって、
前記成形材料を賦形するための第1の賦形部を有し、かつ前記第1の賦形部を取り囲むように形成された凹部を有する第1の金型部材と、
前記成形材料を賦形するための第2の賦形部を有し、かつ前記第2の賦形部を取り囲むように形成された凸部を有する第2の金型部材とを備え、
前記凹部は、前記凸部が嵌まり込むように構成されており、かつ凸部が嵌まり込んだ状態で前記凸部の両側の側面の各々に対向するような側面を有している、圧縮成形用金型。
【請求項2】
前記凸部を前記凹部に嵌め込んで前記第1の金型部材と前記第2の金型部材とを重ね合わせたときに、前記凸部の前記側面と前記凹部の前記側面との間隔が0.03mm以上0.15mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の圧縮成形用金型。
【請求項3】
前記凸部を前記凹部に嵌め込んで前記第1の金型部材と前記第2の金型部材とを重ね合わせたときに、前記凸部の頂面と前記凹部の底面との間隔が0.05mm以上0.30mm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の圧縮成形用金型。
【請求項4】
前記凸部を前記凹部に嵌め込んで前記第1の金型部材と前記第2の金型部材とを重ね合わせたときの、前記凸部の付け根と前記凹部の底面との距離をtとすると、前記凸部の幅は、(t×0.5)以上(t×1.0)以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の圧縮成形用金型。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の圧縮成形用金型を用いて成形材料を圧縮成形する工程を経て燃料電池用セパレータを製造することを特徴とする、燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項6】
前記成形材料は熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、請求項5に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂を少なくとも含む前記成形材料を前記圧縮成形用金型を用いて、加熱しながら圧縮した後に、冷却しながら圧縮することを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
熱硬化性樹脂を含む前記成形材料を前記圧縮成形用金型を用いて、加熱しながら圧縮することを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−283506(P2007−283506A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109963(P2006−109963)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]