説明

圧縮機装置及び圧縮機装置の制御方法

【課題】圧縮ガス運用機器の末端圧力等に応じて吐出圧力の設定目標値を自動調整することにより、応答遅れのない安定した動作で不要な電力消費を防止した、圧縮機装置とその制御方法を提供することにある。
【解決手段】圧縮ガス運用機器9に接続されるガスヘッダ8に設けられた圧力検出装置32により末端圧力を検出し、前記検出した末端圧力と圧縮ガス吐出圧力の検出値を基に前記圧縮機における圧縮ガス吐出口と圧縮ガス運用機器9との間の圧力損失を算出し、前記算出した圧力損失と予め設定の末端圧力設定目標値とから目標吐出圧力を算出し、前記算出した目標吐出圧力を新たな吐出圧力設定目標値として容量制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,回転数制御式圧縮機と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するベースロード圧縮機とを制御する圧縮機装置及び圧縮機装置の制御方法に係わり、特に、圧縮ガス運用機器の末端圧力を考慮したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインバータ駆動回転数制御式圧縮機の容量制御方法として、例えば、特許文献1に記載のように、電動機の回転数データまたはスクリュー圧縮機の負荷データによって、インバータの出力を制御する方法が提案されている。
【0003】
また、特許文献2に記載のように、スクリュー圧縮機より吐出される圧縮ガスの圧力を検出し、設定圧力値との圧力差が最小になるように、インバータへの出力回転数を求めるPID制御により、吐出ガス流量の自動調整を行なう方法が提案されている。
【0004】
近年、省エネの観点より、無駄な高い圧力で運転することを避ける圧縮機の運転制御方式への要求が高まっている。例えば、特許文献3に記載のように、末端圧力を検出し、末端圧力が一定となるようにインバータによる駆動機の回転数制御を行なうことにより、圧縮機吐出風量を自動調整する容量制御方法が提案されている。
【0005】
一方、特許文献4に記載のように、オンオフ式制御スクリュー圧縮機の圧力制御方法において、負荷運転と無負荷運転の時間から消費流量を計算し、圧縮ガス運用機器の末端圧力が一定となるように吐出圧力の上限圧力設定値と下限圧力設定値を自動調整し、消費流量が少ないときでも末端圧力を無駄に高いまま運転することなく、省エネ効果を高める方法が提案されている。
【0006】
複数台の圧縮機を同時に制御する台数制御装置に関しては、特許文献5に記載のように、各圧縮機の負荷運転と無負荷運転の時間から消費流量を計算し、圧縮ガス運用機器の末端圧力が一定となるように圧縮機吐出圧力の上限圧力設定値と下限圧力設定値を自動調整し、消費流量が少ないときでも末端圧力を無駄に高いまま運転することなく、省エネ効果を高める方法が提案されている。
【0007】
一方、少なくとも1台の回転数制御式圧縮機と回転数一定の複数台の圧縮機とを同時に制御する台数制御装置に関しては、特許文献6に記載のように、回転数制御式圧縮機を優先的に運転させて容量制御運転することにより、他の回転数一定の圧縮機を低い目標設定吐出圧力で運転することができ、その結果省エネ効果を高める方法が提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開昭55−164792号公報
【特許文献2】特開平06−081782号公報
【特許文献3】特開平06−173878号公報
【特許文献4】特開平11−324963号公報
【特許文献5】特開2002−098084号公報
【特許文献6】特開2000−161237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2には、圧縮機の吐出圧力を目標吐出圧力と一致するように容量調整を行なう方法が提案されているが、目標吐出圧力を圧縮ガスの運用状態によって変化させることは提案されていない。即ち、特許文献1及び特許文献2記載の方法では、ユーザ設備における圧縮ガス運用機器の消費流量が大きいほど、スクリュー圧縮機吐出口から圧縮ガス運用機器末端までの圧力損失が大きくなって末端圧力が低下するため、目標吐出圧力は予想される最大消費流量時に運用機器末端で必要最低圧力となるように十分大きく決められている。
【0010】
このため、消費流量が少なくなると、スクリュー圧縮機吐出口から圧縮ガス運用機器の末端までの圧力損失が小さくなるため、末端圧力が必要以上に上昇する。従ってスクリュー圧縮機は本来必要な圧力よりも高い吐出圧力で運転されて不要な電力を消費し、また末端圧力が高いため、消費流量も必要以上に増加するという、省エネに反する不具合があった。
【0011】
上記の問題点を解決する一つの方法として提案されている特許文献3に記載の方法では、検出した末端圧力で圧縮機の容量制御を行なうため、末端圧力検出位置と圧縮機吐出口との間の圧力損失が比較的大きい場合やガス貯槽が設置されている場合には、末端圧力検出位置の圧力変動に対する圧縮機吐出口の圧力変動の応答遅れが生じて、特に消費流量の変動が大きい場合には、圧縮機吐出圧力の変動が大きくなって末端圧力がオーバーシュート傾向となり不安定な運転状態となり省エネに反する不具合があった。
【0012】
さらには、応答遅れにより不必要に圧縮機吐出圧力が上昇して圧縮動力が大きくなり、圧縮機の駆動機がオーバーロードして運転出来ない状態となる不具合があった。
【0013】
一方、特許文献4には、所定時間内での全負荷運転時間の合計時間、又は全負荷運転と無負荷運転のサイクル時間から消費流量を算出して、圧縮ガス運用機器の末端圧力を一定に維持する方法が提案されている。しかし、全負荷運転と無負荷運転の過去の経緯から消費流量を算出して次の制御に備えているため、応答遅れがあり不安定な運転状態となり、省エネ運転に反する不具合があった。
【0014】
また、特許文献5には、負荷運転の周期、又は負荷運転と無負荷運転のサイクル時間から負荷率を求めて、圧縮ガス運用機器の末端圧力を一定に維持する方法が提案されている。しかし、上記文献4と同様に負荷運転と無負荷運転の過去の経緯から消費流量を算出して次の制御に備えているため、応答遅れがあり不安定な運転状態となり省エネに反する不具合があった。
【0015】
さらに、特許文献6には、少なくとも1台の回転数制御式圧縮機と回転数一定の圧縮機を複数台同時に制御する台数制御装置が提案されているが、目標吐出圧力を圧縮ガスの運用状態によって変化させることは提案されていない。
【0016】
本発明の目的は、圧縮ガス運用機器の末端圧力等に応じて吐出圧力の設定目標値を自動調整することにより、応答遅れのない安定した動作で不要な電力消費を防止した、圧縮機装置とその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は主として次のような構成を有する。圧縮機の圧縮ガス吐出圧力の検出値に基づいて前記圧縮機の電動機回転数を制御して前記検出値が予め設定の吐出圧力設定目標値と一致するように容量制御される回転数制御式圧縮機と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御されるベースロード圧縮機と、上記各圧縮機とを制御する制御装置を備えた圧縮機装置であって、
前記制御装置は前記圧縮機の吐出口と圧縮ガス運用機器との間の圧力損失の大小に関係なく、圧縮ガス運用機器での末端圧力が一定となるように、前記圧縮機の吐出圧力設定目標値を自動調整する演算部を有する構成とする。
【0018】
また、圧縮機の圧縮ガス吐出圧力を検出する吐出圧力検出装置と、この検出装置の吐出圧力の検出値に基づいて前記圧縮機の電動機回転数を制御して前記吐出圧力の検出値が予め設定の吐出圧力設定目標値と一致するように容量制御する回転数制御式圧縮機と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するベースロード圧縮機と、圧縮ガス運用機器側に設けられた末端圧力検出装置と、上記各圧縮機を制御する制御装置を備えた圧縮機装置であって、
前記制御装置は前記末端圧力検出装置の末端圧力の検出値と前記吐出圧力検出装置の吐出圧力の検出値とから前記圧縮ガス吐出口と圧縮ガス運用機器との間の圧力損失を算出すると共に、前記圧力損失と予め設定された末端圧力設定目標値とから吐出圧力目標値を算出する演算式を記憶して演算を行う演算部を有し、前記演算部で算出した吐出圧力目標値を新たな吐出圧力設定目標値として前記圧縮機を容量制御する構成とする。
【0019】
また、圧縮機の圧縮ガス吐出圧力を検出する吐出圧力検出装置と、圧縮機の圧縮ガスガス流量を検出するガス流量検出装置と、前記吐出圧力検出装置の吐出圧力の検出値に基づいて前記圧縮機の電動機回転数を制御して前記吐出圧力の検出値が予め設定の吐出圧力設定目標値と一致するように容量制御する回転数制御式圧縮機と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するベースロード圧縮機と、圧縮ガス運用機器側に設けられた末端圧力検出装置と、上記各圧縮機を制御する制御装置を備えた圧縮機装置であって、
前記制御装置は前記吐出流量検出装置からの吐出流量の検出値と前記吐出圧力検出装置からの吐出圧力の検出値を基に、前記圧縮ガス吐出口と前記圧縮ガス運用機器との間の圧力損失を算出すると共に、前記圧力損失と予め設定の末端圧力設定目標値とから吐出圧力目標値を算出する演算式を記憶して演算を行う演算部を有し、前記演算部で算出した吐出圧力目標値を新たな吐出圧力設定目標値として前記圧縮機を容量制御する構成とする。
【0020】
また、圧縮機の圧縮ガス吐出圧力を検出する吐出圧力検出装置と、この検出装置の吐出圧力の検出値に基づいて前記圧縮機の電動機回転数を制御して前記吐出圧力の検出値が予め設定の吐出圧力設定目標値と一致するように容量制御する回転数制御式圧縮機と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するベースロード圧縮機と、圧縮ガス運用機器側に設けられた末端圧力検出装置と、上記各圧縮機を制御する制御装置を備えた圧縮機装置であって、
前記制御装置は前記回転数制御式圧縮機の回転数制御信号と前記ベースロード圧縮機の負荷運転状態信号とによりガス流量を算出すると共に、前記ガス流量と前記吐出圧力の検出値を基に前記圧縮ガス吐出口と前記圧縮ガス運用機器との間の圧力損失を算出し、更に前記圧力損失と予め設定の末端圧力設定目標値とから吐出圧力目標値を算出する演算式を記憶して演算を行う演算部を有し、前記演算部で算出した吐出圧力目標値を新たな吐出圧力設定目標値として前記圧縮機を容量制御する構成とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、末端圧力が一定となる容量制御によって、圧縮機の消費電力を低減して省エネ運転を行う際に、吐出圧力設定目標値を自動更新するので動作の応答遅れがなく安定した動作制御を行うことができ、省エネ効果を一層高めることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図1〜図3を参照して以下に説明する。図1は、本発明の実施例を示す回転数制御式(容積形)圧縮機と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するベースロード圧縮機と、前記の複数台の圧縮機を同時に制御する主制御装置を含む圧縮機設備(装置)の全体構成例を示す図である。
【0023】
図2は、本発明の実施例を示す回転数制御式圧縮機と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するベースロード圧縮機と、前記の複数台の圧縮機を同時に制御する主制御装置を含む圧縮機設備(装置)の他の全体構成例を示す図である。
【0024】
図3は、本発明の実施例を示す回転数制御式圧縮機と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するベースロード圧縮機と、前記の複数台の圧縮機を同時に制御する主制御装置を含む圧縮機設備(装置)のさらに他の全体構成例を示す図である。
【0025】
まず、図1を参照して、実施例の圧縮機設備(装置)の全体構成を説明する。1は回転数制御式容積形圧縮機の1つであるインバータ駆動オイルフリースクリュー圧縮機、2a,2bは負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するベースロード圧縮機の1つであるオイルフリースクリュー圧縮機である。
【0026】
本実施例では説明を簡単にするために、インバータ駆動オイルフリースクリュー圧縮機が1台、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するオイルフリースクリュー圧縮機が2台という組合せであるが、それぞれ何台であっても制御可能である。20は圧縮機1の制御装置、21は圧縮機2a、2bの制御装置である。22は各圧縮機の吐出口のガス配管に取り付けられている圧力検出装置であり、圧縮機1、2a、2bがそれぞれ単独運転する際にはこの圧力検出装置22で検出した圧力値を基に容量制御運転を行う。
【0027】
4は圧縮機1、2a、2bの吐出ガス配管を繋ぐ集合配管である。5はガス貯槽、6はガス分離装置または除湿装置、7はフィルタ、8はガスヘッダ、9は需要側の圧縮ガス運用機器であり、ここで、集合配管4、ガス貯槽5、ガス分離装置または除湿装置6、フィルタ7、ガスヘッダ8、需要側の圧縮ガス運用機器9は、需要側のユーザ設備を構成するものである。
【0028】
3は複数台の圧縮機の容量制御を行う主制御装置であり、通常圧縮機吐出ガス配管の集合配管4またはガス貯槽5に設置した圧力検出装置31にて検出した圧力を検出圧力信号43として受け取り、その検出圧力信号43を基に圧縮機1、2a、2bの容量制御を行う。この制御は主制御装置3からの回転数指令信号41、負荷運転・無負荷運転指令信号42a、42bがそれぞれ制御装置20、21、21に入力されて実行される。
【0029】
本実施例に関する圧縮機設備は、大きく圧縮機1、2a、2b、主制御装置3とユーザ設備4〜9から構成されるものである。
【0030】
図2に示す圧縮機設備の全体構成は、図1に示す圧縮機設備の全体構成に対して、末端の圧縮ガス運用機器9に接続されるガスヘッダ8に圧力検出装置32を設置し、ここで検出した末端圧力を検出圧力信号44として主制御装置3へと送るためのシステムが追加されている。
【0031】
図3に示す圧縮機設備の全体構成は、図1に示す圧縮機設備の全体構成に対して、圧力検出装置31の設置されている集合配管4またはガス貯槽5の直後の2次側配管にガス流量検出装置33を設置し、検出したユーザ設備4〜9内を流れるガス流量を検出ガス流量信号45として制御装置3へと送るためのシステムが追加されている。
【0032】
図1〜図3において、3aは前記主制御装置3内に設けられた演算部であり、予め設定する圧力などの設定目標値と各種の算出式を記憶するメモリと、この算出式を用いて前記圧力検出装置31、32からの検出圧力信号43、44と、ガス流量検出装置33からの検出ガス流量信号45等に基き、圧力損失や圧力目標値を算出する演算器を内蔵する。
【0033】
次に、本発明の実施形態に係る回転数制御式圧縮機1と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するベースロード圧縮機2a、2bとを主制御装置3により同時に制御する動作について説明する。ここでは圧縮ガス運用機器の末端圧力が一定となるように容量制御を行おうとするものである。
【0034】
本発明の第一の実施例について、図2と図5の動作ステップ(S)で説明する。圧縮ガス運用機器9の末端圧力Ppを圧力検出装置32により検出し(S100)、末端圧力信号44として主制御装置3へ出力する。また、主制御装置3には末端圧力設定目標値Pptを、末端圧力を一定に保つ目標値として予め主制御装置3に入力記憶しておく(S113)。末端圧力設定目標値Pptは、予め決められた圧縮機設備の末端機器9の最低動作(使用)圧力に対して、余裕を考慮した設計値によって設定される。
【0035】
主制御装置3によって複数台の圧縮機の容量制御を行う際、インバータ駆動圧縮機1を容量調整機とし、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御する圧縮機2a、2bはベースロード機として容量制御を行うこととする。
【0036】
つまり、インバータ駆動圧縮機1は、吐出圧力Pdが吐出圧力設定目標値Pdtと一致するように電動機回転数を変化させて吐出風量を調整するが(S106、S110)、インバータ駆動圧縮機1が全負荷運転状態で運転していても消費風量に対して圧縮機吐出風量が足りない場合には、圧縮機吐出圧力Pdが吐出圧力設定目標値Pdtに対して低くなっていき、吐出圧力設定下限Pdl以下となったとき(S111でyes)、停止中または無負荷運転中のベースロード圧縮機を全負荷運転させ(S112)、逆にインバータ駆動圧縮機1が無負荷運転状態で運転していても消費風量に対して吐出風量が多い場合には、圧縮機吐出圧力Pdが吐出圧力設定目標値Pdtに対して高くなっていき、吐出圧力設定上限Pdu以上となったとき(S107でyes)、全負荷運転中のベースロード圧縮機を1台無負荷運転または停止させるという制御を行う(S108)。
【0037】
検出された末端圧力Ppと末端圧力設定目標値Pptの偏差ΔPpが最小となるように、吐出圧力設定目標値Pdtを自動調整する。以下に、吐出圧力設定目標値Pdtを自動調整するための吐出圧力目標値の算出方法を説明する。まず、検出した末端圧力Ppと吐出圧力Pdの差ΔPlを算出し(S102)、この差は圧縮機吐出口から圧縮ガス運用機器9の末端までの圧力損失ΔPlであるため、吐出圧力設定目標値Pdtは次式のように、末端圧力設定目標値Pptに圧力損失ΔPlを加算した値とする。
Pdt=Ppt+ΔPl=Ppt+(Pd−Pp)
このように、圧力損失ΔPlに基づき吐出圧力設定目標値Pdtを自動更新することで調整し、この吐出圧力設定目標値Pdtを新たな目標値として容量制御することによって、末端圧力Ppは設定標末端圧力Pptで一定になるように容量制御されることとなる。
【0038】
次に本発明の第二の実施例について、図3と図6の動作フローチャートのステップ(S)で説明する。図3に示すように、圧力検出装置31の設置されている集合配管4またはガス貯槽5の直後の2次側配管にガス流量検出装置33を設置し、ユーザ設備4〜9内を流れるガス流量Qdを検出し(S200)、検出ガス流量信号45として制御装置3へと送る。
【0039】
なお予め、ガス流量Qdに対するユーザ設備4〜9内の圧力損失ΔPlとの関係は調べておくものとする。つまり、吐出流量Qd時の圧縮機吐出圧力Pd及び運用機器末端圧力Ppを全負荷から低負荷まで測定し、各吐出流量Qd時の圧縮機吐出圧力Pdと運用機器末端圧力Ppとの差である圧力損失ΔPlを算出する計算式を決めて演算部2aに記憶しておく。簡易的な計算式としては、一般的に、圧力損失ΔPlは吐出流量Qdの2乗に比例するため、圧力損失ΔPlと吐出流量Qdとの関係は次式となる。
ΔPl∝(Qd)
よって、全負荷時の圧力損失ΔPlfと吐出流量Qdfを測定し、ある検出した吐出流量Qd時の圧力損失ΔPlは次式により算出できる。
ΔPl=(ΔPlf/(Qdf))×(Qd)
このように、圧縮機と圧縮機設備末端にある需要側の圧縮ガス運用機器9との間の予想圧力損失ΔPlが算出されると、運用機器末端圧力の予想値を算出することができ、運用機器末端圧力予想値が末端圧力目標値Pptと等しくなるように、吐出圧力設定目標値Pdtを自動調整(自動更新)するものである。以上の様に、本発明の第二の実施例は、上述した第一の実施例で用いた末端圧力検出装置32を用いることなく、ガス流量検出装置33を利用してΔPlを算出し(S201)、この算出値に基づいて吐出圧力設定目標値Pdtを自動調整(自動更新)するものである。
【0040】
次に本発明の第三の実施例について、図1と図7の動作フローチャートのステップ(S)で説明する。図1に示すように、前述の第二の実施例に対し、吐出流量Qdを流量検出装置33にて検出するのではなく、容量調整機となるインバータ駆動圧縮機1のインバータ指令周波数信号fとベースロード縮機2a、2bの負荷運転信号を検出することによって吐出流量Qdlを算出する。
【0041】
インバータ駆動圧縮機1の吐出風量Qdlは、インバータ指令周波数fより電動機回転数Nmを算出し、算出した電動機回転数Nmよりロータ回転数Nrl(複数段圧縮機の場合には1段目圧縮機のロータ回転数)を算出する。そして、算出したロータ回転数Nrlより吐出流量Qdlを算出する。電動機回転数Nmと周波数fの関係式は以下となる。
Nm=2×60×f×(1−s)/P(S301)
ここで、Pは電動機の極数、sはすべり(スリップ)を示す。よって、例えば極数P=2、すべりs=0.015の電動機18を60Hzで運転した場合には、電動機回転数Nm=3546min−1となる。ロータ回転数Nrlは、電動機18と直結されている場合には電動機回転数と一致し、増速機によって増速している場合には増速ギヤ比に比例して速くなる。そして、図4に示すように、予めロータ回転数Nrlと体積効率ηvの関係を求めておくと、圧縮機の吐出流量Qdは以下の式で算出することができる。
Qdl=ηv×Vth×Nrl×f/fmax(S302)
ここで、Vthは設計ロータ形状によって決まる理論押し除け量、fmaxは全負荷時のインバータ指令周波数を示す。
【0042】
ベースロード圧縮機2a、2bの吐出風量Qd2については、各圧縮機2a、2bの負荷運転信号を検出することにより運転状態が負荷運転か無負荷運転(または停止)を確認し、予め制御装置3に各圧縮機2の全負荷運転時の吐出風量Qd2を設定しておくことにより、以下の式で算出することができる。
Qd2=Qd2a×ma+Qd2b×mb+…Qd2i×mi
ここで、mは、各ベースロード機となる圧縮機の負荷運転状態を示し、負荷運転時はm=1、無負荷運転時または停止時はm=0とする。
【0043】
そして、圧縮機の合計吐出流量Qdは以下の式で算出することができる。
Qd=Qd1+Qd2
このように、第三の実施例では、容量調整機となるインバータ駆動圧縮機1のインバータ指令周波数信号fとベースロード圧縮機2a、2bの負荷運転信号を検出することによって吐出流量Qdを算出し、この算出値に基づいて吐出圧力設定目標値Pdtを自動調整(自動更新)するものである。
【0044】
本発明の第四の実施例では、上述した第二の実施例または第三の実施例の技術を利用するものであり、図2に示すように運用機器末端圧力Ppを圧力検出装置32により定期的に検出し、末端圧力信号として制御装置3へ送るシステムを追加する。この運用機器末端圧力Ppの定期的検出は、圧力損失ΔPlが経時的に変化すると予想される時期毎に実施すればよく、定期的な保守点検時でも良い。この定期的検出によって、吐出圧力Pdとの差であるΔPlが算出できるため、上述した第一の実施例に示したように、吐出圧力設定目標値Pdtが新たに求められる。
【0045】
一方、上述した第二の実施例または第三の実施例において、吐出流量Qdを計測または算出してΔPlが算出され、吐出圧力設定目標値Pdtが新たに求められる。したがって、第四の実施例で求められたΔPlやPdtと、上述した第二の実施例または第三の実施例で求められたΔPlやPdtとを比較することによって補正係数を求め、上述した第二の実施例または第三の実施例で求められたΔPlやPdtをこの補正係数で自動補正することができ、より精度良く運用機器末端圧力が一定となる容量制御を行えるようになる。
【0046】
なおここで、圧縮機吐出流量やインバータ指令周波数と負荷運転状態の検出を基にΔPlが算出されるため、実測値の吐出圧力Pと合わせて運用機器末端圧力予想値が算出されることとなる。そこで、第二の実施例または第三の実施例における末端圧力予想値と、第四の実施例で定期的に検出した末端圧力値とを比較して補正係数を求め、この補正係数でPdtを自動補正(自動更新)しても良い。
【0047】
このように、第四の実施例では、通常時には、第二の実施例や第三の実施例に示すように、圧縮機吐出流量やインバータ指令周波数と負荷運転状態の検出を基に末端圧力設定目標値Pptを算出して容量制御するものであるが、これに加えて、定期的に末端圧量Ppを検出することで、この検出した末端圧力に基づいて算出された吐出圧力設定目標値Pdtによって、前記通常時の吐出圧力設定目標値Pdtを更新(自動更新)して自動補正するものである。これによって、通常稼動している圧縮機吐出流量やインバータ指令周波数の実測値のずれを自動補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例を示す圧縮機設備の全体構成図。
【図2】本発明の他の実施例を示す圧縮機設備の全体構成図。
【図3】本発明の更に他の実施例を示す圧縮機設備の全体構成図。
【図4】本発明の実施例に係るロータ回転数と体積効率の関係を示す図。
【図5】本発明の実施例の動作フローチャートを示す図。
【図6】本発明の他の実施例の動作フローチャートを示す図。
【図7】本発明の更に他の実施例の動作フローチャートを示す図。
【符号の説明】
【0049】
1…回転数制御式圧縮機、2a、2b…ベースロード圧縮機、3…主制御装置、3a…演算部、4…集合配管、5…ガス貯槽、6…ガス分離装置または除湿装置、7…フィルタ、8…ガスヘッダ、9…圧縮ガス運用機器、20…回転数制御式圧縮機の制御装置、21…ベースロード圧縮機の制御装置、22…圧力検出装置(圧縮機個別設置)、31…吐出圧力検出装置、32…末端圧力検出装置、33…ガス流量検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機の圧縮ガス吐出圧力の検出値に基づいて前記圧縮機の電動機回転数を制御して前記検出値が予め設定の吐出圧力設定目標値と一致するように容量制御される回転数制御式圧縮機と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御されるベースロード圧縮機と、上記各圧縮機とを制御する制御装置を備えた圧縮機装置であって、
前記制御装置は前記圧縮機の吐出口と圧縮ガス運用機器との間の圧力損失の大小に関係なく、前記圧縮ガス運用機器での末端圧力が一定となるように、前記圧縮機の吐出圧力設定目標値を自動調整する演算部を有することを特徴とする圧縮機装置。
【請求項2】
圧縮機の圧縮ガス吐出圧力を検出する吐出圧力検出装置と、この検出装置の吐出圧力の検出値に基づいて前記圧縮機の電動機回転数を制御して前記吐出圧力の検出値が予め設定の吐出圧力設定目標値と一致するように容量制御する回転数制御式圧縮機と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するベースロード圧縮機と、圧縮ガス運用機器側に設けられた末端圧力検出装置と、上記各圧縮機を制御する制御装置を備えた圧縮機装置であって、
前記制御装置は前記末端圧力検出装置の末端圧力の検出値と前記吐出圧力検出装置の吐出圧力の検出値とから前記圧縮ガス吐出口と圧縮ガス運用機器との間の圧力損失を算出すると共に、前記圧力損失と予め設定された末端圧力設定目標値とから吐出圧力目標値を算出する演算式を記憶して演算を行う演算部を有し、前記演算部で算出した吐出圧力目標値を新たな吐出圧力設定目標値として前記圧縮機を容量制御することを特徴とする圧縮機装置。
【請求項3】
圧縮機の圧縮ガス吐出圧力を検出する吐出圧力検出装置と、圧縮機の圧縮ガス流量を検出するガス流量検出装置と、前記吐出圧力検出装置の吐出圧力の検出値に基づいて前記圧縮機の電動機回転数を制御して前記吐出圧力の検出値が予め設定の吐出圧力設定目標値と一致するように容量制御する回転数制御式圧縮機と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するベースロード圧縮機と、圧縮ガス運用機器側に設けられた末端圧力検出装置と、上記各圧縮機を制御する制御装置を備えた圧縮機装置であって、
前記制御装置は前記ガス流量検出装置からのガス流量の検出値と前記吐出圧力検出装置からの吐出圧力の検出値を基に、前記圧縮ガス吐出口と前記圧縮ガス運用機器との間の圧力損失を算出すると共に、前記圧力損失と予め設定の末端圧力設定目標値とから吐出圧力目標値を算出する演算式を記憶して演算を行う演算部を有し、前記演算部で算出した吐出圧力目標値を新たな吐出圧力設定目標値として前記圧縮機を容量制御することを特徴とする圧縮機装置。
【請求項4】
圧縮機の圧縮ガス吐出圧力を検出する吐出圧力検出装置と、この検出装置の吐出圧力の検出値に基づいて前記圧縮機の電動機回転数を制御して前記吐出圧力の検出値が予め設定の吐出圧力設定目標値と一致するように容量制御する回転数制御式圧縮機と、負荷運転と無負荷運転を繰返して容量制御するベースロード圧縮機と、圧縮ガス運用機器側に設けられた末端圧力検出装置と、上記各圧縮機を制御する制御装置を備えた圧縮機装置であって、
前記制御装置は前記回転数制御式圧縮機の回転数制御信号と前記ベースロード圧縮機の負荷運転状態信号とによりガス流量を算出すると共に、前記ガス流量と前記吐出圧力の検出値を基に前記圧縮ガス吐出口と前記圧縮ガス運用機器との間の圧力損失を算出し、更に前記圧力損失と予め設定の末端圧力設定目標値とから吐出圧力目標値を算出する演算式を記憶して演算を行う演算部を有し、前記演算部で算出した吐出圧力目標値を新たな吐出圧力設定目標値として前記圧縮機を容量制御することを特徴とする圧縮機装置。
【請求項5】
前記制御装置は前記末端圧力検出装置からの末端圧力の検出値と予め設定の末端圧力設定目標値を比較し、比較結果に基づいて前記演算部に記憶された演算式を補正することを特徴とする請求項3または4に記載の圧縮機装置。
【請求項6】
圧縮機の吐出圧力の検出値に基づいて前記圧縮機の電動機回転数を制御して前記吐出圧力の検出値が予め設定の吐出圧力設定目標値と一致するように回転数制御式圧縮機を容量制御すると共に、ベースロード圧縮機を負荷運転と無負荷運転とを繰返して容量制御する制御方法であって、
前記圧縮機の吐出口から圧縮ガスが供給される圧縮ガス運用機器側の末端圧力を検出するステップと、
前記検出した末端圧力の検出値と前記圧縮ガス吐出圧力の検出値を基に、前記圧縮機吐出口と圧縮ガス運用機器との間の圧力損失を算出するステップと、
前記算出した圧力損失と予め設定された設定目標末端圧力とから目標吐出圧力を求めるステップと、
前記求めた目標吐出圧力を新たな吐出圧力設定目標値として前記圧縮機を容量制御することを特徴とする圧縮機装置の制御方法。
【請求項7】
圧縮機の吐出圧力の検出値に基づいて前記圧縮機の電動機回転数を制御して前記吐出圧力の検出値が予め設定の吐出圧力設定目標値と一致するように回転数制御式圧縮機を容量制御すると共に、ベースロード圧縮機を負荷運転と無負荷運転とを繰返して容量制御する制御方法であって、
前記圧縮機の吐出口に設けられた流量検出装置によりガス流量を検出するステップと、
前記検出した吐出流量と前記圧縮ガス吐出圧力の検出値を基に、圧縮機吐出口と圧縮ガスが供給される圧縮ガス運用機器の間の圧力損失を算出するステップと、
前記算出した圧力損失と、前記圧縮ガス運用機器側の予め設定の末端圧力設定目標値とから吐出圧力目標値を算出するステップと、
前記算出した吐出圧力目標値を新たな吐出圧力設定目標値として前記圧縮機を容量制御することを特徴とする圧縮機装置の制御方法。
【請求項8】
圧縮機の吐出圧力の検出値に基づいて前記圧縮機の電動機回転数を制御して前記吐出圧力の検出値が予め設定の吐出圧力設定目標値と一致するように回転数制御式圧縮機を容量制御すると共に、ベースロード圧縮機を負荷運転と無負荷運転とを繰返して容量制御する制御方法であって、
前記回転数制御式圧縮機の回転数制御信号と前記ベースロード圧縮機の負荷運転状態信号に基づいて前記圧縮機のガス流量を算出するステップと、
前記算出した吐出流量と前記圧縮ガス吐出圧力の検出値とを基に、圧縮機吐出口と圧縮ガスが供給される圧縮ガス運用機器との間の圧力損失を算出するステップと、
前記算出した圧力損失と前記圧縮ガス運用機器側の予め設定の末端圧力設定目標値とから吐出圧力目標値を算出するステップと、
前記算出した吐出圧力目標値を新たな吐出圧力設定目標値として前記圧縮機を容量制御することを特徴とする圧縮機装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−13961(P2009−13961A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180094(P2007−180094)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】