圧電ファン及び冷却装置
【課題】ブレードの送風能力を高めるとともに放熱フィンへの通風性を向上させて冷却能力を向上させた圧電ファン、及び該圧電ファンを用いた冷却装置を提供する。
【解決手段】振動板111は、圧電素子112が中間部に貼付され圧電素子112が伸縮することにより共振周波数で屈曲する。振動板111は中間部において圧電素子112の貼付位置の両側が除去された形状となっている。振動板111には、その屈曲により揺動される7枚のブレード141〜147が圧電素子112の貼付位置より前方に形成される。振動板111は、7枚のブレード141〜147が放熱フィン22間の溝側へ折り曲げられている。振動板111の後端部は、ヒートシンク20の放熱フィン22間の溝に7枚のブレード141〜147のそれぞれが挿入され且つ切欠部118が放熱フィン22の溝の上方にくる状態で、ヒートシンク20の上部に支持板113を介してネジ115で固定される。
【解決手段】振動板111は、圧電素子112が中間部に貼付され圧電素子112が伸縮することにより共振周波数で屈曲する。振動板111は中間部において圧電素子112の貼付位置の両側が除去された形状となっている。振動板111には、その屈曲により揺動される7枚のブレード141〜147が圧電素子112の貼付位置より前方に形成される。振動板111は、7枚のブレード141〜147が放熱フィン22間の溝側へ折り曲げられている。振動板111の後端部は、ヒートシンク20の放熱フィン22間の溝に7枚のブレード141〜147のそれぞれが挿入され且つ切欠部118が放熱フィン22の溝の上方にくる状態で、ヒートシンク20の上部に支持板113を介してネジ115で固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒートシンクに備えられる放熱フィン間の暖気を排出する圧電ファン、及び該圧電ファンを用いた冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器では、機器本体の小型化と部品の高密度実装化が進むにつれて、機器内部における発熱対策が課題となっている。例えばパーソナルコンピュータにおいては、機器本体の小型化とともに、情報処理性能を向上させるためにCPUの高速化が進んでいる。そのため、電子機器内部は、部品の高密度実装により電子機器内部の通風性が低下する一方で、発熱体であるCPUの発熱量が増大する環境となっている。よって、当該環境下において、CPUの上面に配置するヒートシンクに備えられる放熱フィン間で暖められた暖気を、放熱フィンから放出させてCPUの温度上昇を抑えることが重要な課題となっている。
【0003】
そこで、例えば非特許文献1において、ヒートシンクの放熱フィン間の暖気を放熱フィンから排出する圧電ファンが提案されている。以下、非特許文献1に示されている圧電ファンと該圧電ファンを備える冷却装置との構造について、図1〜図3を用いて説明する。
【0004】
図1は、非特許文献1の圧電ファンの構成を示す斜視図である。図2、図3は、非特許文献1の圧電ファンを備える冷却装置の構成を示す斜視図である。圧電ファン10は、振動板11と、圧電素子12と、支持板13とを備えている。ヒートシンク20は、ベース部21から上方へ互いに平行に延びる複数の放熱フィン22を備えている。図2、図3では回路基板にCPU等の発熱体(発熱部品)50を実装していて、この発熱体50の上面にヒートシンク20の底面が熱的に結合するように配置されている。冷却装置1は、圧電ファン10をアルミニウム製のヒートシンク20に固定することによって構成している。
【0005】
圧電素子12は、圧電セラミクスの両面に電極が形成され、さらに分極処理が施されたもので、電圧印加に応じて伸縮する振動子である。
【0006】
振動板11は、圧電素子12が両面の中間部に貼付され、その圧電素子12が伸縮することにより屈曲する。さらに、振動板11には、その屈曲により揺動される複数のブレード14が圧電素子12の貼付位置より前方に形成されている。
【0007】
さらに、圧電素子12の貼付位置より後方にある振動板11の後端部は、ヒートシンク20の放熱フィン22間の溝に複数のブレード14のそれぞれが挿入される状態で、ヒートシンク20の上部に支持板13を介してネジ15で固定される。
【0008】
以上の構成では、発熱体50で発生する熱がヒートシンク20に伝導し、放熱フィン22によって空気が暖められ、放熱フィン22間に暖気が発生する。圧電ファン10は、複数のブレード14の揺動により放熱フィン22間の当該暖気を放熱フィン22から排出する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】金子 寛人、“振動して風を送るヒートシンクを実演展示”、[online]、平成21年9月25日、日経WinPC、[平成21年10月16日検索]、インターネット<URL:http://pc.nikkeibp.co.jp/article/news/20090925/1018872/?f=news>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、非特許文献1の圧電ファン10では、放熱フィン22の上方が振動板11で覆われるため放熱フィン22の通風性が悪化してしまう。また、非特許文献1の圧電ファン10では、印加電圧に対する振動板11の屈曲変位量が小さく、ブレード14に伝わる振動が弱かった。そのため、ブレード14の振幅が小さく、送風能力が低かった。
【0011】
よって、非特許文献1の圧電ファン10をヒートシンク20に装着しても、放熱フィン22からの放熱効果が低かった。従って、近年、発熱量の大きい高速なCPUが多数登場しているが、非特許文献1の圧電ファン10では、そのようなCPUに対して冷却能力が十分でないという問題があった。
【0012】
この発明の目的は、ブレードの送風能力を高めるとともに放熱フィンへの通風性を向上させて冷却能力を向上させた圧電ファン、及び該圧電ファンを用いた冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の圧電ファンは、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
(1)電圧印加に応じて伸縮する圧電素子と、
前記圧電素子が接合されて前記圧電素子の伸縮により屈曲する振動板であって、その屈曲により揺動される複数のブレードが一端側に形成された振動板と、を備え、
前記振動板は、前記圧電素子の接合位置の両側に、除去された除去領域を有する形状とした。
【0014】
この構成において、振動板は、圧電素子の接合位置の両側に除去領域として開口部または切欠部が形成された形状となっている。
この構成では、発熱体で発生する熱がヒートシンクに伝導し、放熱フィンによって空気が暖められ、放熱フィン間に暖気が発生する。圧電ファンは、ブレードの揺動により放熱フィン間の当該暖気を放熱フィンから排出する。
この際、開口部または切欠部の存在により、振動板の圧電素子の両側部分の体積や質量が減り、印加電圧に対する振動板の屈曲変位量がその分大きくなる。そのため、この構成における圧電ファンでは全ブレード先端の平均振幅が増大する。特に、両端のブレード先端の振幅が大幅に増大する。よって、この構成における圧電ファンによれば、ブレードの送風能力を向上させることができる。
また、圧電ファンを駆動させてブレードが揺動した際、開口部または切欠部の存在により、次のような気流が生じる。即ち、冷気が開口部または切欠部の上方から放熱フィンに流入する気流、又は放熱フィンで暖められた暖気が開口部または切欠部の下方から上方へ抜ける気流が生じる。よって、この構成における圧電ファンによれば、放熱フィンへの通風性を向上させることができる。
従って、この構成における圧電ファンによれば、ブレードの送風能力を高めるとともに放熱フィンへの通風性を向上させて、冷却能力を向上させることができる。
【0015】
(2)ヒートシンクに備えられる複数の放熱フィン間の溝に前記複数のブレードのそれぞれが挿入される状態で、前記振動板の他端側を前記ヒートシンクの上部に固定する固定部を備え、
前記振動板は、
前記除去領域が前記ヒートシンクの前記放熱フィン間の溝の上方にくる位置で前記ヒートシンクに前記固定部により固定され、
前記複数のブレードが前記放熱フィン間の溝側へ折り曲げられた形状とした。
【0016】
この構造では、上記(1)の振動板をそのまま用いるのでなく、振動板をその中央部で折り曲げて用いる。これにより、当該圧電ファンがヒートシンクに装着された場合、冷却装置の外形形状を低背化できる。
また、除去領域がヒートシンクの放熱フィン間の溝の上方にくる位置で振動板が固定されるため、冷気が開口部または切欠部の上方から放熱フィン及び放熱フィン間の溝に流入する気流、又は放熱フィンで暖められた暖気が開口部または切欠部の下方から上方へ抜ける気流が生じる。よって、放熱フィンへの通風性を一層向上させることができる。
従って、この構成における圧電ファンによれば、冷却能力を一層高めつつ冷却装置全体の大型化を抑えることができる。
【0017】
(3)前記振動板は、前記放熱フィン間の溝の数以下の数のブレードが形成された形状とした。
【0018】
この構造では、最も振幅の大きい両端のブレードが放熱フィン間の溝に必ず挿入される。即ち、最も送風能力の高いブレードが放熱フィン間の溝に必ず挿入されるため、冷却能力が高まる。
【0019】
(4)前記振動板は、前記圧電素子が前記振動板を両面から挟むように接合された。
【0020】
この構造では、圧電素子および振動板がバイモルフ型振動子を構成している。この構造により、印加電圧に対する屈曲変位量が大きくなり、ブレードの振幅が大きくなる。そのため、冷却能力が一層向上する。
【0021】
また、本発明の冷却装置は、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の圧電ファンと、
前記複数の放熱フィンを有するヒートシンクと、を備えた。
【0022】
この構成により、上記(1)〜(4)のいずれかの圧電ファンを用いることで、当該圧電ファンを備える冷却装置も同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、ブレードの送風能力を高めるとともに放熱フィンへの通風性を向上させて、冷却能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】非特許文献1の圧電ファンの構成を示す斜視図である。
【図2】非特許文献1の圧電ファンを備える冷却装置の構成を示す斜視図である。
【図3】非特許文献1の圧電ファンを備える冷却装置の構成を示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの構成を示す斜視図である。
【図5】第1の実施形態に係る冷却装置の構成を示す斜視図である。
【図6】第1の実施形態に係る冷却装置の構成を示す斜視図である。
【図7】回路基板に実装されている発熱体の上面に配置された、第1の実施形態に係る冷却装置の構成を示す側面図である。
【図8】圧電ファンの各ブレードとその振幅との関係を示すグラフである。
【図9】第2の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの斜視図である。
【図10】回路基板に実装されている発熱体の上面に配置された第2の実施形態に係る冷却装置の構成を示す側面図である。
【図11】第3の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの斜視図である。
【図12】第4の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
《第1の実施形態》
本発明の第1の実施形態に係る冷却装置について以下説明する。
【0026】
図4は、第1の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの構成を示す斜視図である。図5、図6は、同冷却装置の構成を示す斜視図である。図7は、回路基板に実装されている発熱体の上面に配置された同冷却装置の構成を示す側面図である。
【0027】
圧電ファン101は、振動板111と、圧電素子112と、支持板113とを備えている。一方、ヒートシンク20は、ベース部21から上方へ互いに平行に延びる複数の放熱フィン22を備えている。図5〜図7では回路基板PにCPU等の発熱体(発熱部品)50を実装していて、この発熱体50の上面にヒートシンク20の底面が熱的に結合するように配置されている。冷却装置2は、この圧電ファン101とアルミニウム製のヒートシンク20とを備える装置である。
【0028】
振動板111は、圧電素子112が振動板111の両面に貼付され、圧電素子112が伸縮することにより屈曲する。さらに、振動板111には、その屈曲により揺動される7枚のブレード141〜147が振動板111の一端側に形成されている。さらに、振動板111は、7枚のブレード141〜147が放熱フィン22間の溝側へ約90°に折り曲げられている。
また、振動板111は、幅45mm×長さ50mm×厚み0.1mmのステンレススチールの板に対して切欠部118をプレス金型で打ち抜いたものである。これにより、振動板111は、圧電素子112が貼付られた両側、具体的には、ブレードの長手方向に対して垂直な方向に位置する両側が除去された形状となる。
【0029】
ここで、振動板111の寸法は、以下のとおりである。
・全幅(即ち7枚のブレード141〜147部分の幅)45mm
・各ブレードの幅2.0mm
・圧電素子112の貼付部分の幅35mm
・全長50mm
・振動板111の他端から振動板111のエッジ部分(即ち折曲げ部分)までの長さ25mm
・7枚のブレード141〜147の先端から振動板111のエッジ部分(即ち折曲げ部分)までの長さ25mm
・厚み0.1mm。
【0030】
圧電素子112は、幅30mm×長さ15mm×厚み50μmの寸法となっている。圧電素子112は、中間電極となる振動板111を両面から挟むように2枚の圧電素子112を貼付してなるバイモルフ型振動子である。2枚の圧電素子112は、それぞれの圧電セラミクッス表面に電極膜を形成している。そして、各電極と中間電極となる振動板111との間に、圧電素子112の分極方向に応じた駆動電圧を印加することによって振動板111が長手方向に撓んで屈曲振動するよう分極処理している。このようにバイモルフ型にすることによって、圧電素子112による振動板111の印加電圧に対する振動板111の屈曲変位量を大きくすることができ、ブレード141〜147の振幅をより効果的に増大できる。
【0031】
振動板111の他端部は、ヒートシンク20の放熱フィン22間の溝に7枚のブレード141〜147のそれぞれが挿入され、且つ切欠部118が放熱フィン22の溝の上方にくる状態で、ヒートシンク20の上部に支持板113を介してネジ115で固定される。これにより、圧電ファン101の駆動時、圧電ファン10の7枚のブレード141〜147のそれぞれが、隣接する放熱フィン22の間で放熱フィン22に当接することなく揺動する。支持板113は、ガラスエポキシ製であり、その寸法は、幅50mm×長さ5mm×厚み2mmである。
【0032】
以上の構成では、発熱体50で発生する熱がヒートシンク20に伝導し、放熱フィン22によって空気が暖められ、放熱フィン22間に暖気が発生する。圧電ファン101は、ブレード141〜147の揺動により放熱フィン22間の当該暖気を放熱フィン22から排出する。
【0033】
ここで、まず、非特許文献1の圧電ファン10の送風能力と本実施形態の圧電ファン101の送風能力とを比較する。
なお、圧電ファン10と圧電ファン101は、図5〜図7で示されるそれぞれのブレード141〜147がヒートシンク20の放熱フィンの溝に挿入した状態で比較する。このとき、送風能力を比較するため、ヒートシンク20の上面と支持板113との間であって、圧電ファン101の切欠部118の下方に位置する部分に、ダミーのPCB板(図示せず)を配置する。
【0034】
図8は、圧電ファンの各ブレードとその振幅との関係を示すグラフである。この図では、圧電ファン10と圧電ファン101に対して各圧電素子の電極と振動板との間に24Vppの90Hzの正弦波交流電圧を印加した条件で、各ブレード先端の振幅を測定した実験結果について示している。
なお、図8の横軸に示される振動羽板No.1〜7は、それぞれブレード141〜147に対応している。
【0035】
図8に示すように、非特許文献1の圧電ファン10では全ブレード先端の平均振幅が7.8mmであるのに対し、本実施形態の圧電ファン101では全ブレード先端の平均振幅が8.7mmにまで増大することが実験により明らかとなっている。そして、ヒートシンク20の熱抵抗も3.2K/Wから2.8K/Wに改善することが明らかとなっている。
また、非特許文献1の圧電ファン10では両端のブレード先端の振幅が8.7mmと8.0mmであるのに対し、本実施形態の圧電ファン101では両端のブレード141、147先端の振幅が11.5mmと9.7mmにまで大幅に増大することも実験により明らかとなっている。ここで、図5、図6に示すようにヒートシンク20の両端の放熱フィン22の外側にはブレードが存在しないため両端の放熱フィン22の温度が下がり難い。しかし、本実施形態の圧電ファン101によれば両端のブレード141、147先端の振幅が大幅に増大するため、ヒートシンク20の熱抵抗も2.8K/Wから2.6K/Wに改善することが明らかとなっている。
即ち、本実施形態の圧電ファン101によれば、ブレード141〜147の送風能力が大幅に向上することが実験により明らかとなっている。
【0036】
以上の両実験結果は、切欠部118を振動板111に形成することにより、振動板111の圧電素子112の両側部分の体積や質量が減り、印加電圧に対する振動板111の屈曲変位量がその分大きくなるためであると考えられる。
【0037】
次に、圧電ファン101の通風性について説明する。ヒートシンク20の上面と支持板113との間に配置されたダミーのPCB板を取り除いた状態で、圧電ファン101を駆動させてブレード141〜147が揺動した際、切欠部118の存在により、次のような気流が生じる。即ち、冷気が切欠部118の上方から放熱フィン22及び放熱フィン22間の溝に流入する気流、又は放熱フィン22間で暖められた暖気が切欠部118の下方から上方へ抜ける気流が生じる。このため、本実施形態の圧電ファン101によれば、放熱フィン22への通風性を向上させることができる。これにより、ヒートシンク20の熱抵抗が2.6K/Wから2.3K/Wに改善した。従って、放熱フィン22の放熱効果が高まる。
【0038】
以上より、本実施形態の圧電ファン101によれば、ブレード141〜147の送風能力を高めるとともに放熱フィン22への通風性を向上させて、冷却能力を向上させることができる。
また、圧電ファン101によれば両端のブレード141、147先端の振幅が大幅に増大するため、上述した温度の下がり難い両端の放熱フィン22を重点的に冷却することができる。
また、振動板111はその全長が長いにもかかわらず折り曲げることで冷却装置2の外形形状を低背化できるため、冷却装置2全体の大型化を抑えつつ冷却能力を高めることができる。
また、ヒートシンク20の上方に送風ファン(不図示)を配置したとき、送風ファンにより送出される冷気が切欠部118を通って放熱フィン22の内部に流入する気流が生じる。このため、本実施形態の圧電ファン101によれば送風ファンを併用することで、放熱フィン22への通風性を一層向上させることができ、冷却能力を一層高めることができる。
【0039】
《第2の実施形態》
図9は、第2の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの斜視図であり、図10は、回路基板に実装されている発熱体の上面に配置された同冷却装置の構成を示す側面図である。図5、図6では振動板111を放熱フィン22間の溝側へ折り曲げていたが、図9、図10に示すように、後端上部に取付板23を設けたヒートシンク30を用意して振動板111を折り曲げずにそのまま固定しても構わない。この冷却装置3では、圧電ファン102の振動板111の後端部が、ヒートシンク20の放熱フィン22間の溝に複数のブレード141〜147のそれぞれが挿入され、且つ切欠部118が放熱フィン22の溝の上方にくる状態で、ヒートシンク20の取付板23に支持板113を介してネジ115で固定される。
【0040】
《第3の実施形態》
図11は、第3の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの斜視図である。図5、図6では振動板111に切欠部118を形成した圧電ファン101をヒートシンク20に固定したが、図11に示すように、振動板111に開口部119を形成した圧電ファン103をヒートシンク20に固定しても構わない。この圧電ファン103では、冷気が開口部119の上方から放熱フィン22及び放熱フィン22間の溝に流入する気流、又は放熱フィン22間で暖められた暖気が開口部119の下方から上方へ抜ける気流が生じる。
なお、圧電ファン103の送風能力に関しては、圧電ファン101と同様の送風能力が確認された。
【0041】
《第4の実施形態》
図12は、第4の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの斜視図である。図11では振動板111を放熱フィン22間の溝側へ折り曲げていたが、図12に示すように、開口部119を形成した振動板111を折り曲げずにそのままヒートシンク30に固定しても構わない。
【0042】
《その他の実施形態》
以上に示した実施形態では、振動板111を両面から挟むように圧電素子112をそれぞれ接合して、圧電素子112および振動板111でバイモルフ型振動子を構成するタイプを示したが、実施の際は、振動板111の一方の面に圧電素子112を接合したユニモルフ型振動子を構成するタイプであっても構わない。
また、以上に示した各実施形態において、ブレード141〜147はステンレススチール以外にリン青銅などバネ性の高い金属板や樹脂板を用いてもよい。
【0043】
なお、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1〜3…冷却装置
10…圧電ファン
11…振動板
12…圧電素子
13…支持板
14…ブレード
15…ネジ
20…ヒートシンク
21…ベース部
22…放熱フィン
23…取付板
30…ヒートシンク
50…発熱体
101〜104…圧電ファン
111…振動板
112…圧電素子
113…支持板
115…ネジ
118…切欠部
119…開口部
141…ブレード
P…回路基板
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒートシンクに備えられる放熱フィン間の暖気を排出する圧電ファン、及び該圧電ファンを用いた冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器では、機器本体の小型化と部品の高密度実装化が進むにつれて、機器内部における発熱対策が課題となっている。例えばパーソナルコンピュータにおいては、機器本体の小型化とともに、情報処理性能を向上させるためにCPUの高速化が進んでいる。そのため、電子機器内部は、部品の高密度実装により電子機器内部の通風性が低下する一方で、発熱体であるCPUの発熱量が増大する環境となっている。よって、当該環境下において、CPUの上面に配置するヒートシンクに備えられる放熱フィン間で暖められた暖気を、放熱フィンから放出させてCPUの温度上昇を抑えることが重要な課題となっている。
【0003】
そこで、例えば非特許文献1において、ヒートシンクの放熱フィン間の暖気を放熱フィンから排出する圧電ファンが提案されている。以下、非特許文献1に示されている圧電ファンと該圧電ファンを備える冷却装置との構造について、図1〜図3を用いて説明する。
【0004】
図1は、非特許文献1の圧電ファンの構成を示す斜視図である。図2、図3は、非特許文献1の圧電ファンを備える冷却装置の構成を示す斜視図である。圧電ファン10は、振動板11と、圧電素子12と、支持板13とを備えている。ヒートシンク20は、ベース部21から上方へ互いに平行に延びる複数の放熱フィン22を備えている。図2、図3では回路基板にCPU等の発熱体(発熱部品)50を実装していて、この発熱体50の上面にヒートシンク20の底面が熱的に結合するように配置されている。冷却装置1は、圧電ファン10をアルミニウム製のヒートシンク20に固定することによって構成している。
【0005】
圧電素子12は、圧電セラミクスの両面に電極が形成され、さらに分極処理が施されたもので、電圧印加に応じて伸縮する振動子である。
【0006】
振動板11は、圧電素子12が両面の中間部に貼付され、その圧電素子12が伸縮することにより屈曲する。さらに、振動板11には、その屈曲により揺動される複数のブレード14が圧電素子12の貼付位置より前方に形成されている。
【0007】
さらに、圧電素子12の貼付位置より後方にある振動板11の後端部は、ヒートシンク20の放熱フィン22間の溝に複数のブレード14のそれぞれが挿入される状態で、ヒートシンク20の上部に支持板13を介してネジ15で固定される。
【0008】
以上の構成では、発熱体50で発生する熱がヒートシンク20に伝導し、放熱フィン22によって空気が暖められ、放熱フィン22間に暖気が発生する。圧電ファン10は、複数のブレード14の揺動により放熱フィン22間の当該暖気を放熱フィン22から排出する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】金子 寛人、“振動して風を送るヒートシンクを実演展示”、[online]、平成21年9月25日、日経WinPC、[平成21年10月16日検索]、インターネット<URL:http://pc.nikkeibp.co.jp/article/news/20090925/1018872/?f=news>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、非特許文献1の圧電ファン10では、放熱フィン22の上方が振動板11で覆われるため放熱フィン22の通風性が悪化してしまう。また、非特許文献1の圧電ファン10では、印加電圧に対する振動板11の屈曲変位量が小さく、ブレード14に伝わる振動が弱かった。そのため、ブレード14の振幅が小さく、送風能力が低かった。
【0011】
よって、非特許文献1の圧電ファン10をヒートシンク20に装着しても、放熱フィン22からの放熱効果が低かった。従って、近年、発熱量の大きい高速なCPUが多数登場しているが、非特許文献1の圧電ファン10では、そのようなCPUに対して冷却能力が十分でないという問題があった。
【0012】
この発明の目的は、ブレードの送風能力を高めるとともに放熱フィンへの通風性を向上させて冷却能力を向上させた圧電ファン、及び該圧電ファンを用いた冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の圧電ファンは、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
(1)電圧印加に応じて伸縮する圧電素子と、
前記圧電素子が接合されて前記圧電素子の伸縮により屈曲する振動板であって、その屈曲により揺動される複数のブレードが一端側に形成された振動板と、を備え、
前記振動板は、前記圧電素子の接合位置の両側に、除去された除去領域を有する形状とした。
【0014】
この構成において、振動板は、圧電素子の接合位置の両側に除去領域として開口部または切欠部が形成された形状となっている。
この構成では、発熱体で発生する熱がヒートシンクに伝導し、放熱フィンによって空気が暖められ、放熱フィン間に暖気が発生する。圧電ファンは、ブレードの揺動により放熱フィン間の当該暖気を放熱フィンから排出する。
この際、開口部または切欠部の存在により、振動板の圧電素子の両側部分の体積や質量が減り、印加電圧に対する振動板の屈曲変位量がその分大きくなる。そのため、この構成における圧電ファンでは全ブレード先端の平均振幅が増大する。特に、両端のブレード先端の振幅が大幅に増大する。よって、この構成における圧電ファンによれば、ブレードの送風能力を向上させることができる。
また、圧電ファンを駆動させてブレードが揺動した際、開口部または切欠部の存在により、次のような気流が生じる。即ち、冷気が開口部または切欠部の上方から放熱フィンに流入する気流、又は放熱フィンで暖められた暖気が開口部または切欠部の下方から上方へ抜ける気流が生じる。よって、この構成における圧電ファンによれば、放熱フィンへの通風性を向上させることができる。
従って、この構成における圧電ファンによれば、ブレードの送風能力を高めるとともに放熱フィンへの通風性を向上させて、冷却能力を向上させることができる。
【0015】
(2)ヒートシンクに備えられる複数の放熱フィン間の溝に前記複数のブレードのそれぞれが挿入される状態で、前記振動板の他端側を前記ヒートシンクの上部に固定する固定部を備え、
前記振動板は、
前記除去領域が前記ヒートシンクの前記放熱フィン間の溝の上方にくる位置で前記ヒートシンクに前記固定部により固定され、
前記複数のブレードが前記放熱フィン間の溝側へ折り曲げられた形状とした。
【0016】
この構造では、上記(1)の振動板をそのまま用いるのでなく、振動板をその中央部で折り曲げて用いる。これにより、当該圧電ファンがヒートシンクに装着された場合、冷却装置の外形形状を低背化できる。
また、除去領域がヒートシンクの放熱フィン間の溝の上方にくる位置で振動板が固定されるため、冷気が開口部または切欠部の上方から放熱フィン及び放熱フィン間の溝に流入する気流、又は放熱フィンで暖められた暖気が開口部または切欠部の下方から上方へ抜ける気流が生じる。よって、放熱フィンへの通風性を一層向上させることができる。
従って、この構成における圧電ファンによれば、冷却能力を一層高めつつ冷却装置全体の大型化を抑えることができる。
【0017】
(3)前記振動板は、前記放熱フィン間の溝の数以下の数のブレードが形成された形状とした。
【0018】
この構造では、最も振幅の大きい両端のブレードが放熱フィン間の溝に必ず挿入される。即ち、最も送風能力の高いブレードが放熱フィン間の溝に必ず挿入されるため、冷却能力が高まる。
【0019】
(4)前記振動板は、前記圧電素子が前記振動板を両面から挟むように接合された。
【0020】
この構造では、圧電素子および振動板がバイモルフ型振動子を構成している。この構造により、印加電圧に対する屈曲変位量が大きくなり、ブレードの振幅が大きくなる。そのため、冷却能力が一層向上する。
【0021】
また、本発明の冷却装置は、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の圧電ファンと、
前記複数の放熱フィンを有するヒートシンクと、を備えた。
【0022】
この構成により、上記(1)〜(4)のいずれかの圧電ファンを用いることで、当該圧電ファンを備える冷却装置も同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、ブレードの送風能力を高めるとともに放熱フィンへの通風性を向上させて、冷却能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】非特許文献1の圧電ファンの構成を示す斜視図である。
【図2】非特許文献1の圧電ファンを備える冷却装置の構成を示す斜視図である。
【図3】非特許文献1の圧電ファンを備える冷却装置の構成を示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの構成を示す斜視図である。
【図5】第1の実施形態に係る冷却装置の構成を示す斜視図である。
【図6】第1の実施形態に係る冷却装置の構成を示す斜視図である。
【図7】回路基板に実装されている発熱体の上面に配置された、第1の実施形態に係る冷却装置の構成を示す側面図である。
【図8】圧電ファンの各ブレードとその振幅との関係を示すグラフである。
【図9】第2の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの斜視図である。
【図10】回路基板に実装されている発熱体の上面に配置された第2の実施形態に係る冷却装置の構成を示す側面図である。
【図11】第3の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの斜視図である。
【図12】第4の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
《第1の実施形態》
本発明の第1の実施形態に係る冷却装置について以下説明する。
【0026】
図4は、第1の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの構成を示す斜視図である。図5、図6は、同冷却装置の構成を示す斜視図である。図7は、回路基板に実装されている発熱体の上面に配置された同冷却装置の構成を示す側面図である。
【0027】
圧電ファン101は、振動板111と、圧電素子112と、支持板113とを備えている。一方、ヒートシンク20は、ベース部21から上方へ互いに平行に延びる複数の放熱フィン22を備えている。図5〜図7では回路基板PにCPU等の発熱体(発熱部品)50を実装していて、この発熱体50の上面にヒートシンク20の底面が熱的に結合するように配置されている。冷却装置2は、この圧電ファン101とアルミニウム製のヒートシンク20とを備える装置である。
【0028】
振動板111は、圧電素子112が振動板111の両面に貼付され、圧電素子112が伸縮することにより屈曲する。さらに、振動板111には、その屈曲により揺動される7枚のブレード141〜147が振動板111の一端側に形成されている。さらに、振動板111は、7枚のブレード141〜147が放熱フィン22間の溝側へ約90°に折り曲げられている。
また、振動板111は、幅45mm×長さ50mm×厚み0.1mmのステンレススチールの板に対して切欠部118をプレス金型で打ち抜いたものである。これにより、振動板111は、圧電素子112が貼付られた両側、具体的には、ブレードの長手方向に対して垂直な方向に位置する両側が除去された形状となる。
【0029】
ここで、振動板111の寸法は、以下のとおりである。
・全幅(即ち7枚のブレード141〜147部分の幅)45mm
・各ブレードの幅2.0mm
・圧電素子112の貼付部分の幅35mm
・全長50mm
・振動板111の他端から振動板111のエッジ部分(即ち折曲げ部分)までの長さ25mm
・7枚のブレード141〜147の先端から振動板111のエッジ部分(即ち折曲げ部分)までの長さ25mm
・厚み0.1mm。
【0030】
圧電素子112は、幅30mm×長さ15mm×厚み50μmの寸法となっている。圧電素子112は、中間電極となる振動板111を両面から挟むように2枚の圧電素子112を貼付してなるバイモルフ型振動子である。2枚の圧電素子112は、それぞれの圧電セラミクッス表面に電極膜を形成している。そして、各電極と中間電極となる振動板111との間に、圧電素子112の分極方向に応じた駆動電圧を印加することによって振動板111が長手方向に撓んで屈曲振動するよう分極処理している。このようにバイモルフ型にすることによって、圧電素子112による振動板111の印加電圧に対する振動板111の屈曲変位量を大きくすることができ、ブレード141〜147の振幅をより効果的に増大できる。
【0031】
振動板111の他端部は、ヒートシンク20の放熱フィン22間の溝に7枚のブレード141〜147のそれぞれが挿入され、且つ切欠部118が放熱フィン22の溝の上方にくる状態で、ヒートシンク20の上部に支持板113を介してネジ115で固定される。これにより、圧電ファン101の駆動時、圧電ファン10の7枚のブレード141〜147のそれぞれが、隣接する放熱フィン22の間で放熱フィン22に当接することなく揺動する。支持板113は、ガラスエポキシ製であり、その寸法は、幅50mm×長さ5mm×厚み2mmである。
【0032】
以上の構成では、発熱体50で発生する熱がヒートシンク20に伝導し、放熱フィン22によって空気が暖められ、放熱フィン22間に暖気が発生する。圧電ファン101は、ブレード141〜147の揺動により放熱フィン22間の当該暖気を放熱フィン22から排出する。
【0033】
ここで、まず、非特許文献1の圧電ファン10の送風能力と本実施形態の圧電ファン101の送風能力とを比較する。
なお、圧電ファン10と圧電ファン101は、図5〜図7で示されるそれぞれのブレード141〜147がヒートシンク20の放熱フィンの溝に挿入した状態で比較する。このとき、送風能力を比較するため、ヒートシンク20の上面と支持板113との間であって、圧電ファン101の切欠部118の下方に位置する部分に、ダミーのPCB板(図示せず)を配置する。
【0034】
図8は、圧電ファンの各ブレードとその振幅との関係を示すグラフである。この図では、圧電ファン10と圧電ファン101に対して各圧電素子の電極と振動板との間に24Vppの90Hzの正弦波交流電圧を印加した条件で、各ブレード先端の振幅を測定した実験結果について示している。
なお、図8の横軸に示される振動羽板No.1〜7は、それぞれブレード141〜147に対応している。
【0035】
図8に示すように、非特許文献1の圧電ファン10では全ブレード先端の平均振幅が7.8mmであるのに対し、本実施形態の圧電ファン101では全ブレード先端の平均振幅が8.7mmにまで増大することが実験により明らかとなっている。そして、ヒートシンク20の熱抵抗も3.2K/Wから2.8K/Wに改善することが明らかとなっている。
また、非特許文献1の圧電ファン10では両端のブレード先端の振幅が8.7mmと8.0mmであるのに対し、本実施形態の圧電ファン101では両端のブレード141、147先端の振幅が11.5mmと9.7mmにまで大幅に増大することも実験により明らかとなっている。ここで、図5、図6に示すようにヒートシンク20の両端の放熱フィン22の外側にはブレードが存在しないため両端の放熱フィン22の温度が下がり難い。しかし、本実施形態の圧電ファン101によれば両端のブレード141、147先端の振幅が大幅に増大するため、ヒートシンク20の熱抵抗も2.8K/Wから2.6K/Wに改善することが明らかとなっている。
即ち、本実施形態の圧電ファン101によれば、ブレード141〜147の送風能力が大幅に向上することが実験により明らかとなっている。
【0036】
以上の両実験結果は、切欠部118を振動板111に形成することにより、振動板111の圧電素子112の両側部分の体積や質量が減り、印加電圧に対する振動板111の屈曲変位量がその分大きくなるためであると考えられる。
【0037】
次に、圧電ファン101の通風性について説明する。ヒートシンク20の上面と支持板113との間に配置されたダミーのPCB板を取り除いた状態で、圧電ファン101を駆動させてブレード141〜147が揺動した際、切欠部118の存在により、次のような気流が生じる。即ち、冷気が切欠部118の上方から放熱フィン22及び放熱フィン22間の溝に流入する気流、又は放熱フィン22間で暖められた暖気が切欠部118の下方から上方へ抜ける気流が生じる。このため、本実施形態の圧電ファン101によれば、放熱フィン22への通風性を向上させることができる。これにより、ヒートシンク20の熱抵抗が2.6K/Wから2.3K/Wに改善した。従って、放熱フィン22の放熱効果が高まる。
【0038】
以上より、本実施形態の圧電ファン101によれば、ブレード141〜147の送風能力を高めるとともに放熱フィン22への通風性を向上させて、冷却能力を向上させることができる。
また、圧電ファン101によれば両端のブレード141、147先端の振幅が大幅に増大するため、上述した温度の下がり難い両端の放熱フィン22を重点的に冷却することができる。
また、振動板111はその全長が長いにもかかわらず折り曲げることで冷却装置2の外形形状を低背化できるため、冷却装置2全体の大型化を抑えつつ冷却能力を高めることができる。
また、ヒートシンク20の上方に送風ファン(不図示)を配置したとき、送風ファンにより送出される冷気が切欠部118を通って放熱フィン22の内部に流入する気流が生じる。このため、本実施形態の圧電ファン101によれば送風ファンを併用することで、放熱フィン22への通風性を一層向上させることができ、冷却能力を一層高めることができる。
【0039】
《第2の実施形態》
図9は、第2の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの斜視図であり、図10は、回路基板に実装されている発熱体の上面に配置された同冷却装置の構成を示す側面図である。図5、図6では振動板111を放熱フィン22間の溝側へ折り曲げていたが、図9、図10に示すように、後端上部に取付板23を設けたヒートシンク30を用意して振動板111を折り曲げずにそのまま固定しても構わない。この冷却装置3では、圧電ファン102の振動板111の後端部が、ヒートシンク20の放熱フィン22間の溝に複数のブレード141〜147のそれぞれが挿入され、且つ切欠部118が放熱フィン22の溝の上方にくる状態で、ヒートシンク20の取付板23に支持板113を介してネジ115で固定される。
【0040】
《第3の実施形態》
図11は、第3の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの斜視図である。図5、図6では振動板111に切欠部118を形成した圧電ファン101をヒートシンク20に固定したが、図11に示すように、振動板111に開口部119を形成した圧電ファン103をヒートシンク20に固定しても構わない。この圧電ファン103では、冷気が開口部119の上方から放熱フィン22及び放熱フィン22間の溝に流入する気流、又は放熱フィン22間で暖められた暖気が開口部119の下方から上方へ抜ける気流が生じる。
なお、圧電ファン103の送風能力に関しては、圧電ファン101と同様の送風能力が確認された。
【0041】
《第4の実施形態》
図12は、第4の実施形態に係る冷却装置に用いる圧電ファンの斜視図である。図11では振動板111を放熱フィン22間の溝側へ折り曲げていたが、図12に示すように、開口部119を形成した振動板111を折り曲げずにそのままヒートシンク30に固定しても構わない。
【0042】
《その他の実施形態》
以上に示した実施形態では、振動板111を両面から挟むように圧電素子112をそれぞれ接合して、圧電素子112および振動板111でバイモルフ型振動子を構成するタイプを示したが、実施の際は、振動板111の一方の面に圧電素子112を接合したユニモルフ型振動子を構成するタイプであっても構わない。
また、以上に示した各実施形態において、ブレード141〜147はステンレススチール以外にリン青銅などバネ性の高い金属板や樹脂板を用いてもよい。
【0043】
なお、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1〜3…冷却装置
10…圧電ファン
11…振動板
12…圧電素子
13…支持板
14…ブレード
15…ネジ
20…ヒートシンク
21…ベース部
22…放熱フィン
23…取付板
30…ヒートシンク
50…発熱体
101〜104…圧電ファン
111…振動板
112…圧電素子
113…支持板
115…ネジ
118…切欠部
119…開口部
141…ブレード
P…回路基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧印加に応じて伸縮する圧電素子と、
前記圧電素子が接合されて前記圧電素子の伸縮により屈曲する振動板であって、その屈曲により揺動される複数のブレードが一端側に形成された振動板と、
を備え、
前記振動板は、前記圧電素子の接合位置の両側に、除去された除去領域を有する形状とした圧電ファン。
【請求項2】
ヒートシンクに備えられる複数の放熱フィン間の溝に前記複数のブレードのそれぞれが挿入される状態で、前記振動板の他端側を前記ヒートシンクの上部に固定する固定部を備え、
前記振動板は、
前記除去領域が前記ヒートシンクの前記放熱フィン間の溝の上方にくる位置で前記ヒートシンクに前記固定部により固定され、
前記複数のブレードが前記放熱フィン間の溝側へ折り曲げられた形状とした、請求項1に記載の圧電ファン。
【請求項3】
前記振動板は、前記放熱フィン間の溝の数以下の数のブレードが形成された形状とした、請求項1または2に記載の圧電ファン。
【請求項4】
前記振動板は、前記圧電素子が前記中間部を両面から挟むように接合された、請求項1〜3のいずれかに記載の圧電ファン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の圧電ファンと、
前記複数の放熱フィンを有するヒートシンクと、を備えた冷却装置。
【請求項1】
電圧印加に応じて伸縮する圧電素子と、
前記圧電素子が接合されて前記圧電素子の伸縮により屈曲する振動板であって、その屈曲により揺動される複数のブレードが一端側に形成された振動板と、
を備え、
前記振動板は、前記圧電素子の接合位置の両側に、除去された除去領域を有する形状とした圧電ファン。
【請求項2】
ヒートシンクに備えられる複数の放熱フィン間の溝に前記複数のブレードのそれぞれが挿入される状態で、前記振動板の他端側を前記ヒートシンクの上部に固定する固定部を備え、
前記振動板は、
前記除去領域が前記ヒートシンクの前記放熱フィン間の溝の上方にくる位置で前記ヒートシンクに前記固定部により固定され、
前記複数のブレードが前記放熱フィン間の溝側へ折り曲げられた形状とした、請求項1に記載の圧電ファン。
【請求項3】
前記振動板は、前記放熱フィン間の溝の数以下の数のブレードが形成された形状とした、請求項1または2に記載の圧電ファン。
【請求項4】
前記振動板は、前記圧電素子が前記中間部を両面から挟むように接合された、請求項1〜3のいずれかに記載の圧電ファン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の圧電ファンと、
前記複数の放熱フィンを有するヒートシンクと、を備えた冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−127588(P2011−127588A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249366(P2010−249366)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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