説明

圧電振動デバイス及びその製造方法

【課題】ベースへの圧電振動片の接着部材を用いた接着強度を上げることで、電極の断線や、圧電振動片のベースからの剥離を防止するとともに電極間の間隔が狭小化に伴う短絡等も防止することができる。
【解決手段】水晶振動子1は、水晶振動片2とベース31とキャップ32とからなり、ベース31とキャップ32とが接合されてパッケージ3が構成される。水晶振動片2の引出電極63,64とベース31の電極パッド51,52とが、接着部材4により接合され、水晶振動片2は、基部24においてベース31に片保持される。接着部材4は、パッケージ3の内部空間33のベース31上に水晶振動片2を片保持させるだけではなく、水晶振動片2の励振電極61,62と、パッケージ3の端子電極とを電気的に接続して導通状態にさせる。この接着部材4は、導通バンプ41と絶縁性接着剤42とが一体形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイス及びその製造方法に関し、特に、ベースへの圧電振動片の接着に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、代表的な圧電振動デバイスとして、1パッケージ内に複数の圧電振動片を備え、複数の異なる機能を有する圧電振動デバイス(水晶振動子)がある(例えば、特許文献1ご参照)。
【0003】
下記する特許文献1に開示の圧電振動デバイスは、そのパッケージがベースとキャップとから構成され、その内部空間に圧電振動片を収めたデバイスである。
【0004】
この特許文献1に開示の圧電振動片には、その基部の裏側の主面にバンプが形成される。このバンプを介して、圧電振動片の励振電極と、パッケージに形成された外部と接続する端子電極とが接続される。
【特許文献1】特開2004−193909号公報
【特許文献1】特開2004−179950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この圧電振動デバイスでは、パッケージの内部空間に圧電振動片を設ける際、バンプを介して圧電振動片がベースに接着されている。このバンプは、圧電振動片の励振電極を、パッケージに形成された端子電極に導通させるためのものであり、圧電振動片をベースに保持することを第1の目的として用いられていない。そのため、圧電振動片のベースへの保持強度は強いものではなく、外的衝撃などによりバンプがベースから剥がれやすく、バンプのベースからの剥離による電極の断線が生じやすい。例えば、圧電振動デバイスにおいて、バンプが剥離した場合、不発振となることがある。また、圧電振動デバイスの小型化に伴って、電極間の間隔が狭小化し、導電性接着剤を用いて、電気的および機械的接合を図った場合、電極間の「短絡」の問題が顕在化する。
【0006】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、ベースへの圧電振動片の接着部材を用いた接着強度を上げることで、電極の断線や、圧電振動片のベースからの剥離を防止するとともに電極間の間隔が狭小化に伴う短絡等も防止することができる、より信頼性の高い圧電振動デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスは、ベースとキャップとから構成されたパッケージの内部空間の前記ベース上に、圧電振動片が接着部材を介して保持された圧電振動デバイスにおいて、前記接着部材は、導通バンプと絶縁性接着剤とが一体形成されてなることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、前記接着部材は、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とが一体形成されてなるので、前記ベースへの前記圧電振動片の前記接着部材を用いた接着強度をあげることが可能となる。前記ベースへの前記圧電振動片の前記接着部材を用いた接着強度を上げることで、電極の断線や、前記圧電振動片の前記ベースからの剥離を防止するとともに電極間の間隔が狭小化に伴う短絡等も防止することが可能となる。その結果、信頼性の高い圧電振動デバイスを提供することが可能となる。
【0009】
また、本発明では、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とが一体形成されているので、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを個別に形成した場合と比較して、接着強度が弱い前記導通バンプによる接着強度を高めることが可能となる。すなわち、本発明では、前記絶縁性接着剤の接着強度を前記導通バンプの接合強度に関連付けることが可能となり、前記接着部材の前記ベースとの接着強度をあげて前記接着部材を前記ベースから剥がれにくくすることが可能となり、前記導通バンプが前記ベースから剥離することによる電極の断線を防止することが可能となる。
【0010】
また、前記接着部材に導電性接着剤を用いずに前記導通バンプを用いているので、配線ピッチの狭小化に対しても確実な電気的接合経路を確保しながらも、前記ベース上の導通部分の領域を小さくすることが可能となる。すなわち、前記導通バンプにより電気的導通をとるため、導電性接着剤を用いた場合と比べて、前記ベース上の接合領域の面積を小さくすることが可能となる。そのため、本発明にかかる圧電振動デバイスによれば、パッケージを小型化した場合であっても有効に用いることが可能となる。なお、従来のような導電フィラー等が含有された導電性接着剤を用いて接合領域を小さくしようとすると、塗布ノズルの径を小さくする必要があるが、塗布ノズルの塗布精度にも限界があり、塗布ノズル径の小型化に伴って内部で目詰まりが顕著になるといった問題がある。しかしながら、本発明によれば、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤を組み合わせることで、このような問題を一切無くすことが可能となる。
【0011】
前記構成において、前記導通バンプの外周に前記絶縁性接着剤が形成されてもよい。
【0012】
この場合、前記導通バンプの外周に前記絶縁性接着剤が形成され、導通バンプが絶縁性接着剤で覆われることになるので、導通バンプの劣化や異物の付着が抑制される。
【0013】
前記構成において、前記圧電振動片は、前記接着部材を介して前記ベースに片保持されてもよい。
【0014】
この場合、前記圧電振動片は、前記接着部材を介して前記ベースに片保持されているが、従来の構成による圧電振動片と異なり、前記接着部材の接着強度を高めることが可能である。特に、当該圧電振動デバイスの小型化が図られた場合であっても、この小型化に対応させた寸法の前記接着部材を用いる必要はなく、その結果、小型の圧電振動デバイスで用いる接着部材(特にバンプのみなど)と比較して、前記接着部材の接着強度を高めることが可能となる。
【0015】
前記構成において、前記接着部材は、複数の前記導通バンプが前記絶縁性接着剤を介在して一体形成されてもよい。
【0016】
この場合、前記接着部材が、複数の前記導通バンプが前記絶縁性接着剤を介在して一体形成されるので、例えば、前記圧電振動片に複数の異電位で構成される前記引出電極が形成され、これら引出電極が当該圧電振動片上において隣接している場合であっても、前記絶縁性接着剤により、近隣の複数の前記導通バンプにそれぞれ前記引出電極が独立して電気的に接続させることが可能となる。この構成は、特に、当該圧電振動デバイスが小型化される場合であって、複数の前記導通バンプのクリアランスを確保することが困難な場合に有用である。
【0017】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスの製造方法は、上記した本発明にかかる圧電振動デバイスの製造方法であって、前記導通バンプを前記圧電振動片に形成し、前記圧電振動片を前記導通バンプを介して前記ベースに接合し、前記圧電振動片を前記ベースに接合した前記導通バンプの外周に前記絶縁性接着剤を配し、前記圧電振動片を前記絶縁性接着剤を介して前記ベースに接合して、前記導通バンプと前記導通バンプの外周に配した前記絶縁性接着剤とを一体形成して前記接着部材とし、前記接着部材により前記圧電振動片を前記ベース上に設けることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、前記導通バンプを前記圧電振動片に形成し、前記圧電振動片を前記導通バンプを介して前記ベースに接合し、前記圧電振動片を前記ベースに接合した前記導通バンプの外周に前記絶縁性接着剤を配し、前記圧電振動片を前記絶縁性接着剤を介して前記ベースに接合して、前記導通バンプと前記導通バンプの外周に配した前記絶縁性接着剤とを一体形成して前記接着部材とし、前記接着部材により前記圧電振動片を前記ベース上に設けるので、前記ベースへの前記圧電振動片の前記接着部材を用いた接着強度をあげることが可能となる。前記ベースへの前記圧電振動片の前記接着部材を用いた接着強度を上げることで、電極の断線や、前記圧電振動片の前記ベースからの剥離を防止するとともに電極間の間隔が狭小化に伴う短絡等も防止することが可能となる。その結果、信頼性の高い圧電振動デバイスを提供することが可能となる。
【0019】
また、本発明では、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを一体形成しているので、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを個別に形成した場合と比較して、接着強度が弱い前記導通バンプによる接着強度を高めることが可能となる。すなわち、本発明では、前記絶縁性接着剤の接着強度を前記導通バンプの接合強度に関連付けることが可能となり、前記接着部材の前記ベースとの接着強度をあげて前記接着部材を前記ベースから剥がれにくくすることが可能となり、前記導通バンプが前記ベースから剥離することによる電極の断線を防止することが可能となる。
【0020】
また、前記接着部材に導電性接着剤を用いずに前記導通バンプを用いているので、配線ピッチの狭小化に対しても確実な電気的接合経路を確保しながらも、前記ベース上の導通部分の領域を小さくすることが可能となる。すなわち、前記導通バンプにより電気的導通をとるため、導電性接着剤を用いた場合と比べて、前記ベース上の接合領域の面積を小さくすることが可能となる。そのため、本発明にかかる圧電振動デバイスによれば、パッケージを小型化した場合であっても有効に用いることが可能となる。なお、従来のような導電フィラー等が含有された導電性接着剤を用いて接合領域を小さくしようとすると、塗布ノズルの径を小さくする必要があるが、塗布ノズルの塗布精度にも限界があり、塗布ノズル径の小型化に伴って内部で目詰まりが顕著になるといった問題がある。しかしながら、本発明によれば、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤を組み合わせることで、このような問題を一切無くすことが可能となる。
【0021】
さらに、上記の目的を達成するため、本発明にかかる他の圧電振動デバイスの製造方法は、上記した本発明にかかる圧電振動デバイスの製造方法であって、前記導通バンプを前記圧電振動片に形成するとともに、前記絶縁性接着剤を前記ベースに形成し、前記圧電振動片を前記導通バンプを介して前記ベースに接合し、前記圧電振動片を前記絶縁性接着剤を介して前記ベースに接合して、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを一体形成して前記接着部材とし、前記接着部材により前記圧電振動片を前記ベース上に設けることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、前記導通バンプを前記圧電振動片に形成するとともに、前記絶縁性接着剤を前記ベースに形成し、前記圧電振動片を前記導通バンプを介して前記ベースに接合し、前記圧電振動片を前記絶縁性接着剤を介して前記ベースに接合して、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを一体形成して前記接着部材とし、前記接着部材により前記圧電振動片を前記ベース上に設けるので、前記ベースへの前記圧電振動片の前記接着部材を用いた接着強度をあげることが可能となる。前記ベースへの前記圧電振動片の前記接着部材を用いた接着強度を上げることで、電極の断線や、前記圧電振動片の前記ベースからの剥離を防止するとともに電極間の間隔が狭小化に伴う短絡等も防止することが可能となる。その結果、信頼性の高い圧電振動デバイスを提供することが可能となる。
【0023】
また、本発明では、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを一体形成しているので、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを個別に形成した場合と比較して、接着強度が弱い前記導通バンプによる接着強度を高めることが可能となる。すなわち、本発明では、前記絶縁性接着剤の接着強度を前記導通バンプの接合強度に関連付けることが可能となり、前記接着部材の前記ベースとの接着強度をあげて前記接着部材をベースから剥がれにくくすることが可能となり、前記導通バンプが前記ベースから剥離することによる電極の断線を防止することが可能となる。
【0024】
また、前記接着部材に導電性接着剤を用いずに前記導通バンプを用いているので、配線ピッチの狭小化に対しても確実な電気的接合経路を確保しながらも、前記ベース上の導通部分の領域を小さくすることが可能となる。すなわち、前記導通バンプにより電気的導通をとるため、導電性接着剤を用いた場合と比べて、前記ベース上の接合領域の面積を小さくすることが可能となる。そのため、本発明にかかる圧電振動デバイスによれば、パッケージを小型化した場合であっても有効に用いることが可能となる。なお、従来のような導電フィラー等が含有された導電性接着剤を用いて接合領域を小さくしようとすると、塗布ノズルの径を小さくする必要があるが、塗布ノズルの塗布精度にも限界があり、塗布ノズル径の小型化に伴って内部で目詰まりが顕著になるといった問題がある。しかしながら、本発明によれば、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤を組み合わせることで、このような問題を一切無くすことが可能となる。
【0025】
さらに、上記の目的を達成するため、本発明にかかる他の圧電振動デバイスの製造方法は、上記した本発明にかかる圧電振動デバイスの製造方法であって、前記導通バンプを前記ベースに形成し、前記圧電振動片を前記導通バンプを介して前記ベースに接合し、前記圧電振動片を前記ベースに接合した前記導通バンプの外周に前記絶縁性接着剤を配し、前記圧電振動片を前記絶縁性接着剤を介して前記ベースに接合して、前記導通バンプと前記導通バンプの外周に配した前記絶縁性接着剤とを一体形成して前記接着部材とし、前記接着部材により前記圧電振動片を前記ベース上に設けることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、前記導通バンプを前記ベースに形成し、前記圧電振動片を前記導通バンプを介して前記ベースに接合し、前記圧電振動片を前記ベースに接合した前記導通バンプの外周に前記絶縁性接着剤を配し、前記圧電振動片を前記絶縁性接着剤を介して前記ベースに接合して、前記導通バンプと前記導通バンプの外周に配した前記絶縁性接着剤とを一体形成して前記接着部材とし、前記接着部材により前記圧電振動片を前記ベース上に設けるので、前記ベースへの前記圧電振動片の前記接着部材を用いた接着強度をあげることが可能となる。前記ベースへの前記圧電振動片の前記接着部材を用いた接着強度を上げることで、電極の断線や、前記圧電振動片の前記ベースからの剥離を防止するとともに電極間の間隔が狭小化に伴う短絡等も防止することが可能となる。その結果、信頼性の高い圧電振動デバイスを提供することが可能となる。
【0027】
また、本発明では、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを一体形成しているので、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを個別に形成した場合と比較して、接着強度が弱い前記導通バンプによる接着強度を高めることが可能となる。すなわち、本発明では、前記絶縁性接着剤の接着強度を前記導通バンプの接合強度に関連付けることが可能となり、前記接着部材の前記ベースとの接着強度をあげて前記接着部材をベースから剥がれにくくすることが可能となり、前記導通バンプが前記ベースから剥離することによる電極の断線を防止することが可能となる。
【0028】
また、前記接着部材に導電性接着剤を用いずに前記導通バンプを用いているので、配線ピッチの狭小化に対しても確実な電気的接合経路を確保しながらも、前記ベース上の導通部分の領域を小さくすることが可能となる。すなわち、前記導通バンプにより電気的導通をとるため、導電性接着剤を用いた場合と比べて、前記ベース上の接合領域の面積を小さくすることが可能となる。そのため、本発明にかかる圧電振動デバイスによれば、パッケージを小型化した場合であっても有効に用いることが可能となる。なお、従来のような導電フィラー等が含有された導電性接着剤を用いて接合領域を小さくしようとすると、塗布ノズルの径を小さくする必要があるが、塗布ノズルの塗布精度にも限界があり、塗布ノズル径の小型化に伴って内部で目詰まりが顕著になるといった問題がある。しかしながら、本発明によれば、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤を組み合わせることで、このような問題を一切無くすことが可能となる。
【0029】
さらに、上記の目的を達成するため、本発明にかかる他の圧電振動デバイスの製造方法は、上記した本発明にかかる圧電振動デバイスの製造方法であって、前記導通バンプ及び前記絶縁性接着剤を、前記導通バンプの外周に前記絶縁性接着剤を配するようにして前記ベースに形成し、前記圧電振動片を前記導通バンプを介して前記ベースに接合するとともに、前記圧電振動片を前記絶縁性接着剤を介して前記ベースに接合して、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを一体形成して前記接着部材とし、前記接着部材により前記圧電振動片を前記ベース上に設けることを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、前記導通バンプ及び前記絶縁性接着剤を、前記導通バンプの外周に前記絶縁性接着剤を配するようにして前記ベースに形成し、前記圧電振動片を前記導通バンプを介して前記ベースに接合するとともに、前記圧電振動片を前記絶縁性接着剤を介して前記ベースに接合して、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを一体形成して前記接着部材とし、前記接着部材により前記圧電振動片を前記ベース上に設けるので、前記ベースへの前記圧電振動片の前記接着部材を用いた接着強度をあげることが可能となる。前記ベースへの前記圧電振動片の前記接着部材を用いた接着強度を上げることで、電極の断線や、前記圧電振動片の前記ベースからの剥離を防止するとともに電極間の間隔が狭小化に伴う短絡等も防止することが可能となる。その結果、信頼性の高い圧電振動デバイスを提供することが可能となる。
【0031】
また、本発明では、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを一体形成しているので、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを個別に形成した場合と比較して、接着強度が弱い前記導通バンプによる接着強度を高めることが可能となる。すなわち、本発明では、前記絶縁性接着剤の接着強度を前記導通バンプの接合強度に関連付けることが可能となり、前記接着部材の前記ベースとの接着強度をあげて前記接着部材をベースから剥がれにくくすることが可能となり、前記導通バンプが前記ベースから剥離することによる電極の断線を防止することが可能となる。
【0032】
また、前記接着部材に導電性接着剤を用いずに前記導通バンプを用いているので、配線ピッチの狭小化に対しても確実な電気的接合経路を確保しながらも、前記ベース上の導通部分の領域を小さくすることが可能となる。すなわち、前記導通バンプにより電気的導通をとるため、導電性接着剤を用いた場合と比べて、前記ベース上の接合領域の面積を小さくすることが可能となる。そのため、本発明にかかる圧電振動デバイスによれば、パッケージを小型化した場合であっても有効に用いることが可能となる。なお、従来のような導電フィラー等が含有された導電性接着剤を用いて接合領域を小さくしようとすると、塗布ノズルの径を小さくする必要があるが、塗布ノズルの塗布精度にも限界があり、塗布ノズル径の小型化に伴って内部で目詰まりが顕著になるといった問題がある。しかしながら、本発明によれば、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤を組み合わせることで、このような問題を一切無くすことが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明にかかる圧電振動デバイス及びその製造方法によれば、ベースへの圧電振動片の接着部材を用いた接着強度を上げることで、電極の断線や、圧電振動片の前記ベースからの剥離を防止するとともに電極間の間隔が狭小化に伴う短絡等も防止することができる。その結果、信頼性の高い圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、圧電振動デバイスとして水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【実施例1】
【0035】
本実施例1にかかる水晶振動子1は、図1に示すように、フォトリソグラフィ法で成形された水晶振動片2(本発明でいう圧電振動片)と、これら水晶振動片2を保持するベース31と、ベース31に保持した水晶振動片2を気密封止するためのキャップ32とからなる。
【0036】
この水晶振動子1では、図1に示すように、ベース31とキャップ32とが接合されて筐体であるパッケージ3が構成され、このパッケージ3に内部空間33が形成される。この内部空間33のベース31上に、水晶振動片2が保持されるとともに、パッケージ3の内部空間33が気密封止されている。この際、ベース31と水晶振動片2とは、接着部材4(下記参照)を用いて接合されている。なお、本実施例でいう内部空間33とは、キャップ32とベース31により気密封止された領域のことをいう。
【0037】
次に、この水晶振動子1の各構成について説明する。
【0038】
ベース31は、図1に示すように、底部34と、この底部34から上方に延出した壁部35とから構成される箱状体に形成されている。このベース31は、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成されている。また、壁部35は、底部34の表面外周に沿って成形されている。この壁部35の上面は、キャップ32との接合領域であり、この接合領域には、キャップ32と接合するためのメタライズ層(図示省略)が設けられている。
【0039】
さらに、セラミック材料が積層して凹状に一体的に焼成されたベース31の内部空間33には、2つの段部36,37が形成され、これら段部36,37上に下記する電極パッド51,52が形成され、これら電極パッド51,52上に水晶振動片2が片保持して設けられる。
【0040】
また、内部空間33内のベース31の段部36,37の表面には、水晶振動片2の励振電極61,62と電気的に接続する電極パッド51,52が形成されている。これら電極パッド51,52は、それぞれに対応した接続電極(図示省略)を介して、ベース31の裏面38に形成される端子電極(図示省略)に電気的に接続され、これら端子電極が外部部品や外部機器の外部電極に接続される。なお、これらの電極パッド51,52、接続電極、端子電極は、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース31と一体的に焼成して形成される。そして、これらの電極パッド51,52、接続電極、端子電極のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0041】
キャップ32は、金属材料からなり、図1に示すように、平面視矩形状の一枚板に成形されている。このキャップ32は、下面にろう材(図示省略)が形成されており、シーム溶接やビーム溶接等の手法によりベース31に接合されて、キャップ32とベース31とによる水晶振動子1のパッケージ3が構成される。なお、本実施例1でいう内部空間33とは、キャップ32とベース31により気密封止された部分のことをいう。また、キャップ32をセラミック材料とし、ガラス材料を介して気密封止してもよい。
【0042】
水晶振動片2は、図1に示すように、音叉型水晶振動片であり、異方性材料の水晶片である基板21からエッチング形成される。基板21は、2本の脚部22,23(第1脚部,第2脚部)と、基部24とから構成され、2本の脚部22,23が基部24から延出されている。また、2本の脚部22,23の両主面には、溝25,26が形成されている。
【0043】
この水晶振動片2の表側主面には、異電位で構成された2つの励振電極61,62(第1励振電極,第2励振電極)と、これらの励振電極61,62を電極パッド51,52に電気的に接続させるために励振電極61,62から引き出された引出電極63,64とが形成されている。そして、引出電極63,64と電極パッド51,52が接着部材4(下記参照)を介して接合されて、これら引出電極63,64と電極パッド51,52とが電気的に接続される。
【0044】
第1励振電極61は、第1脚部22の両主面に形成された第1主面電極65と、第2脚部23の両側面に形成された第2側面電極66とにより構成される。そして、これら第1主面電極65と第2側面電極66とが引き回し電極(図示省略)によって接続されている。
【0045】
同様に、第2励振電極62は、第2脚部23の両主面に形成された第2主面電極67と、第1脚部22の両側面に形成された第1側面電極68とにより構成される。そして、これら第2主面電極67と第1側面電極68とが引き回し電極(図示省略)によって接続されている。
【0046】
上記した励振電極61,62は、例えば、クロムの下地電極層と、金の上部電極層とから構成された積層薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状に形成される。また、上記した引出電極63,64は、例えば、クロムの下地電極層と、金の中間電極層と、クロムの上部電極層と、から構成された積層薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状に形成され、クロムの上部電極層のみが部分的にマスクして真空蒸着法等の手法により形成される。
【0047】
そして、上記した水晶振動片2の引出電極63,64とベース31の電極パッド51,52とが、接着部材4により接合され、図1に示すように、水晶振動片2は、基部24においてベース31に片保持される。この接着部材4は、パッケージ3の内部空間33のベース31上に水晶振動片2を片保持させるだけではなく、水晶振動片2の励振電極61,62と、パッケージ3の端子電極とを電気的に接続して導通状態にさせる。
【0048】
接着部材4は、図1に示すように、導通バンプ41と絶縁性接着剤42とが一体形成されてなる。また、導通バンプ41の外周に、絶縁性接着剤42が形成されている。導通バンプ41の材料には、金が用いられ、また、絶縁性接着剤42には、シリコーン樹脂(例えば、チクソ性の低い液状に調製された生樹脂の状態のもの)が用いられている。
【0049】
次に、上記した水晶振動片2のパッケージ3への保持工程を、図1,2を用いて説明する。
【0050】
まず、水晶振動片2の基部24の裏側主面に形成された引出電極63,64上それぞれに導通バンプ41を形成する。
【0051】
導通バンプ41を形成した水晶振動片2を、図2(a)に示すように、水晶振動片2の裏面側主面を下方にして、ベース31の内部空間33に移動させる。
【0052】
内部空間33に移動させた水晶振動片2を、図2(b)に示すように、導通バンプ41が段部36,37上の電極パッド51,52に接するようにベース31上に配し、FCB(Flip Chip Bonding)接合する。
【0053】
ベース31上に導通バンプ41を介して水晶振動片2を接合した後に、図2(c)に示すように、水晶振動片2の基部24の一部を覆うように導通バンプ41の外周に絶縁性接着剤42を配する。なお、このとき、チクソ性の低い絶縁性接着剤42を水晶振動片2の基部24の一部を覆うように上方から流しこむことで、絶縁性接着剤42により隙間を無くした状態で水晶振動片2の基部24の一部を覆うことができ、非常に容易にかつ確実に強度補強用の絶縁性接着剤42を必要なベース31(段部36,37)上に塗布することができる。
【0054】
そして、図1(b)および図2(c)に示すように、ベース31の段部36,37上において、絶縁性接着剤42を加熱し絶縁性接着剤42を硬化させることで、結果としてベース31の段部36,37上に絶縁性接着剤42を接合する。この絶縁接着剤42の加熱により、導通バンプ41及び絶縁性接着剤42を一体形成して、電気的及び機械的に接着力を強化した接着部材4を構成し、ベース31の段部36,37上において水晶振動片2を片保持する。すなわち、水晶振動片2がベース31上に設けられる。なお、必要に応じて、接着部材4に更に絶縁性接着剤42を上塗りしてもよい。
【0055】
そして、水晶振動片2をベース31上に設けた後に、図1(b)に示すように、キャップ32をベース31の壁部35の上面に配し、シーム溶接やビーム溶接等の手法によりキャップ32をベース31に接合して、水晶振動子1を製造する。
【0056】
上記したように、本実施例1にかかる水晶振動子1の製造方法(上記した保持工程参照)によれば、導通バンプ41を水晶振動片2に形成し、水晶振動片2を導通バンプ41を介してベース31に接合し、水晶振動片2をベース31に接合した導通バンプ41の外周に絶縁性接着剤42を配し、水晶振動片2を絶縁性接着剤42を介してベース31に接合して、導通バンプ41と導通バンプ41の外周に配した絶縁性接着剤42とを一体形成して接着部材4とし、接着部材4により水晶振動片2をベース31上に設けるので、ベース31への水晶振動片2の接着部材4を用いた接着強度をあげることができる。ベース31への水晶振動片2の接着部材4を用いた接着強度を上げることで、電極の断線や、水晶振動片2のベース31からの剥離を防止するとともに電極間の間隔が狭小化に伴う短絡等も防止することができる。その結果、信頼性の高い水晶振動子1を提供することができる。
【0057】
また、上記したように、本実施例1にかかる水晶振動子1によれば、接着部材4が導通バンプ41と絶縁性接着剤42とが一体形成されてなるので、ベース31への水晶振動片2の接着部材4を用いた接着強度をあげることができる。ベース31への水晶振動片2の接着部材4を用いた接着強度を上げることで、電極の断線や、水晶振動片2のベース31からの剥離を防止するとともに電極間の間隔が狭小化に伴う短絡等も防止することができる。その結果、信頼性の高い水晶振動子1を提供することができる。
【0058】
また、導通バンプ41と絶縁性接着剤42とが一体形成されているので、導通バンプ41と絶縁性接着剤42とを個別に形成した場合と比較して、接着強度が弱い導通バンプ41による接着強度を高めることができる。すなわち、本発明では、絶縁性接着剤42の接着強度を導通バンプ41の接合強度に関連付けることができ、接着部材4のベース31との接着強度をあげて接着部材4をベース31から剥がれにくくすることができ、導通バンプ41がベース31から剥離することによる電極の断線を防止することができる。
【0059】
また、接着部材4に導電性接着剤を用いずに導通バンプ41を用いているので、配線ピッチの狭小化に対しても確実な電気的接合経路を確保しながらも、ベース31上の導通部分の領域を小さくすることができる。すなわち、導通バンプ41により電気的導通をとるため、導電性接着剤を用いた場合と比べて、ベース31上の接合領域の面積を小さくすることができる。そのため、本実施例1にかかる水晶振動子1によれば、パッケージ3を小型化した場合であっても有効に用いることができる。なお、従来のような導電フィラー等が含有された導電性接着剤を用いて接合領域を小さくしようとすると、塗布ノズルの径を小さくする必要があるが、塗布ノズルの塗布精度にも限界があり、塗布ノズル径の小型化に伴って内部で目詰まりが顕著になるといった問題がある。しかしながら、本実施例1にかかる水晶振動子1によれば、導通バンプ41と絶縁性接着剤42を組み合わせることで、このような問題を一切無くすことが可能となる。
【0060】
また、導通バンプ41の外周に絶縁性接着剤42が形成されているので、電極の断線を防止するのにより好ましい。
【0061】
また、水晶振動片2は、接着部材4を介してベース31に片保持されているが、従来の構成による水晶振動片2と異なり、接着部材4の接着強度を高めることが可能である。特に、当該水晶振動子1の小型化が図られた場合であっても、この小型化に対応させた寸法の接着部材4を用いる必要はなく、その結果、小型の水晶振動子で用いる接着部材(特にバンプのみなど)と比較して、接着部材4の接着強度を高めることができる。
【0062】
また、水晶振動片2の脚部22,23の両主面には、それぞれ溝25,26が形成され、図1に示すように第1,2励振電極61,62がそれぞれ溝25,26内に形成されているので、水晶振動片3を小型化した場合であっても各脚部22,23の振動損失が抑制され、CI値(クリスタルインピーダンス)を低く抑えることができる。また、これら溝25,26を形成することによる効果は、溝25,26と本実施例1で述べた接着部材4とを併用することで顕著にあらわれる。
【0063】
なお、上記した本実施例1では、水晶振動片の個数を1つとしているが、これに限定されるものではなく、用途にあわせて複数の水晶振動片を用いてもよい。この時、用いる水晶振動片の個数にあわせてパッケージの形状を変更することで、他の異なる機能を有する任意の水晶振動デバイスとして用いることができる。
【0064】
また、上記した本実施例1では、図1に示す水晶振動片2に音叉型水晶振動片を適用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ATカットの水晶振動片を用いてもよい。すなわち、任意の圧電振動片が適用可能である。
【0065】
また、上記した本実施例1では、図1に示すように水晶振動片2がベース31に片保持された水晶振動子1を好適な例としてあげているが、これに限定されるものではなく、上記したようにATカットの水晶振動片を用いて水晶振動片を両保持した水晶振動子であってもよい。
【0066】
また、上記した本実施例1では、導通バンプ41の材料に金を用いているが、これに限定されるものではなく、導通材料であれば、例えば、アルミニウム,共晶半田や錫を含む合金等であってもよく、超音波接合が可能な材料であることが望ましい。また、絶縁性接着剤42にシリコーン樹脂を用いているが、これに限定されるものではなく、絶縁性材料、特に樹脂であれば任意の材料を用いてもよく、例えば、エポキシ、イミド、ウレタン等であってもよい。
【0067】
また、上記した本実施例1では、導通バンプ41の外周に絶縁性接着剤42が形成されているが、図1に示すように、導通バンプ41を完全に覆うように導通バンプ41の外周に絶縁性接着剤42が形成されているものではない。しかしながら、導通バンプ41を完全に覆うように導通バンプ41の外周に絶縁性接着剤42が形成されてもよく(例えば、下記する実施例2を参照)、少なくとも導通バンプ41の外周に絶縁性接着剤42が形成されていればよく、導通バンプ41と絶縁性接着剤42と分量や配置などは任意に設計変更可能である。
【実施例2】
【0068】
次に、本実施例2にかかる水晶振動子1を図面を用いて説明する。なお、本実施例2にかかる水晶振動子1は、上記した実施例1に対して、ベースの段部と接着部材と保持工程が異なる。そこで、本実施例2では、上記した実施例1と異なるベースの段部と接着部材と保持工程について説明し、水晶振動子1の同一構成についての説明を省略する。そのため、水晶振動子1の同一構成による作用効果及び変形例は、上記した実施例1と同様の作用効果及び変形例を有する。
【0069】
本実施例2にかかる水晶振動子1は、図3に示すように、水晶振動片2とベース31とキャップ32とからなる。この水晶振動子1では、ベース31とキャップ32とからパッケージ3が構成され、このパッケージ3に内部空間33が形成される。この内部空間33のベース31上に、水晶振動片2が保持されるとともに、パッケージ3の内部空間33が気密封止されている。この際、ベース31と水晶振動片2とは、接着部材7を用いて接合されている。
【0070】
ベース31は、図3に示すように、底部34と壁部35とから構成される箱状体に形成されている。さらに、ベース31の内部空間33には、1つの段部39が形成され、この段部39上に下記する電極パッド51,52が形成され、これら電極パッド51,52上に水晶振動片2が片保持して設けられる。また、内部空間33内のベース31の段部39には、水晶振動片2の励振電極61,62と電気的に接続する電極パッド51,52が形成されている。
【0071】
上記した水晶振動片2の引出電極63,64とベース31の電極パッド51,52とが、接着部材7により接合され、図3に示すように、水晶振動片2は、基部24においてベース31に片保持される。この接着部材7は、パッケージ3の内部空間33のベース31上に水晶振動片2を片保持させるだけではなく、水晶振動片2の励振電極61,62と、パッケージ3の端子電極とを電気的に接続して導通状態にさせる。
【0072】
接着部材7は、図3に示すように、2つの導通バンプ71,72が絶縁性接着剤73を介在して一体形成されている。また、導通バンプ71,72の外周を覆うように、絶縁性接着剤73が形成されている。導通バンプ71,72の材料には、金が用いられ、また、絶縁性接着剤73には、シリコーン樹脂(本実施例2では、上記した実施例1とは異なり、チクソ性の低い液状に調製された生樹脂の状態のものに限定されるものではない)が用いられている。
【0073】
次に、上記した水晶振動片2のパッケージ3への保持工程を、図3,4を用いて説明する。
【0074】
まず、水晶振動片2の基部24の裏側主面に形成された引出電極63,64上それぞれに導通バンプ71,72を形成する。また、ベース31の段部39に絶縁性接着剤73を形成する(塗布する)。なお、このとき、予めベース31の段部39に絶縁性接着剤73を塗布しておくので、絶縁性接着剤用の塗布ノズル(図示省略)を使用して絶縁性接着剤73をベース31に塗布する際に、水晶振動片2の各構成要件に隔てられることなく、非常に容易にかつ確実に強度補強用の絶縁性接着剤73を必要なベース31(段部39)上に塗布することができる。
【0075】
導通バンプ71,72を形成した水晶振動片2を、図4(a)に示すように、水晶振動片2の裏面側主面を下方にして、導通バンプ71,72が段部39上の絶縁性接着剤73を貫通して電極パッド51,52に接するように、ベース31の段部39上に配する。そして、水晶振動片2を導通バンプ71,72を介してベースの段部39上に、FCB接合する。
【0076】
そして、図4(b)に示すように、ベース31の段部39上において、絶縁性接着剤73を加熱し絶縁性接着剤73を硬化させることで、結果としてベース31の段部39上に絶縁性接着剤73を接合する。この絶縁接着剤73の加熱により、導通バンプ73及び絶縁性接着剤71,72を一体形成して、電気的及び機械的に接着力を強化した接着部材7を構成し、ベース31の段部39上において水晶振動片2を片保持する。すなわち、水晶振動片2がベース31上に設けられる。なお、必要に応じて、接着部材7に更に絶縁性接着剤71,72を上塗りしてもよい。
【0077】
そして、水晶振動片2をベース31上に設けた後に、図3(b)に示すように、キャップ32をベース31の壁部35の上面に配し、シーム溶接やビーム溶接等の手法によりキャップ32をベース31に接合して、水晶振動子1を製造する。
【0078】
上記したように、本実施例2にかかる水晶振動子1は、上記した実施例1に対して、ベース31の段部39と接着部材7と保持工程が異なるだけであり、他の構成や製造方法は同一である。そのため、実施例2における、実施例1と同一構成や同一の製造方法による特徴的な作用効果は、上記の実施例1と同一の特徴的な作用効果を有している。
【0079】
また、本実施例2にかかる水晶振動子1は、上記の実施例1における特徴的な作用効果を有しているだけではなく、さらに、2つの導通バンプ71,72が絶縁性接着剤73を介在して一体形成されるので、例えば、水晶振動片2に複数の異電位で構成される引出電極63,64が形成され、これら引出電極63,64が水晶振動片2上において隣接している場合であっても、絶縁性接着剤73により、近隣の2つの導通バンプ71,72にそれぞれ引出電極63,64が独立して電気的に接続させることができる。また、この構成は、特に、水晶振動子1が小型化される場合であって、本実施例2のように複数の導通バンプのクリアランスを確保することが困難な場合に有用である。
【0080】
また、上記した本実施例2では、接着部材7は2つの導通バンプ71,72と1つの絶縁性接着剤73とを一体形成してなるが、これに限定されるものではなく、複数の導通バンプが絶縁性接着剤を介在して一体的に形成されていればよく、導通バンプの数を任意に設定することができる。
【0081】
また、上記した本実施例1,2では、水晶振動片2に導通バンプ41,71,72を形成したもののみを開示しているが、これに限定されるものでなく、下記する実施例3に示すようにベース31の電極パッド51,52に導通バンプ41を形成してもよい(図5参照)。また、図5に示す実施例3に限定されるものでもなく、水晶振動片2の引出電極63,64及びベース31の電極パッド51,52の両方に導通バンプ41を形成してもよい。
【実施例3】
【0082】
次に、本実施例3にかかる水晶振動子1を図面を用いて説明する。なお、本実施例3にかかる水晶振動子1は、上記した実施例1に対して、水晶振動片2のパッケージ3への保持工程が異なる。そこで、本実施例3では、上記した実施例1と異なる保持工程について説明し、水晶振動子1の同一構成についての説明を省略する。そのため、水晶振動子1の同一構成による作用効果及び変形例は、上記した実施例1と同様の作用効果及び変形例を有する。
【0083】
この実施例3にかかる水晶振動片2のパッケージ3への保持工程を、図1,5を用いて説明する。
【0084】
まず、ベース31の段部36,37に形成された電極パッド51,52上それぞれに導通バンプ41を形成する。
【0085】
段部36,37上に導通バンプ41を形成した後に水晶振動片2を、図5(a)に示すように、水晶振動片2の裏面側主面を下方にして、ベース31の内部空間33に移動させる。
【0086】
内部空間33に移動させた水晶振動片2を、図5(b)に示すように、水晶振動片2の引出電極63,74が段部36,37上の導通バンプ41に接するようにベース31上に配し、FCB接合する。
【0087】
ベース31上に導通バンプ41を介して水晶振動片2を接合した後に、図5(c)に示すように、水晶振動片2の基部24の一部を覆うように導通バンプ41の外周に絶縁性接着剤42を配する。なお、このとき、チクソ性の低い絶縁性接着剤42を水晶振動片2の基部24の一部を覆うように上方から流しこむことで、絶縁性接着剤42により隙間を無くした状態で水晶振動片2の基部24の一部を覆うことができ、非常に容易にかつ確実に強度補強用の絶縁性接着剤42を必要なベース31(段部36,37)上に塗布することができる。
【0088】
そして、図1(b)および図5(c)に示すように、ベース31の段部36,37上において、絶縁性接着剤42を加熱し絶縁性接着剤42を硬化させることで、結果としてベース31の段部36,37上に絶縁性接着剤42を接合する。この絶縁接着剤42の加熱により、導通バンプ41及び絶縁性接着剤42を一体形成して、電気的及び機械的に接着力を強化した接着部材4を構成し、ベース31の段部36,37上において水晶振動片2を片保持する。すなわち、水晶振動片2がベース31上に設けられる。なお、必要に応じて、接着部材4に更に絶縁性接着剤42を上塗りしてもよい。
【0089】
そして、水晶振動片2をベース31上に設けた後に、図1(b)に示すように、キャップ32をベース31の壁部35の上面に配し、シーム溶接やビーム溶接等の手法によりキャップ32をベース31に接合して、水晶振動子1を製造する。
【0090】
上記したように、本実施例3にかかる水晶振動子1は、上記した実施例1に対して、水晶振動片2のパッケージ3への保持工程が異なるだけであり、同一構成からなるので、上記の実施例1における特徴的な作用効果を有している。
【0091】
また、本実施例3にかかる水晶振動子1は、上記した実施例2に対して、ベース31の段部39と接着部材7と保持工程が異なるだけであり、他の構成や製造方法は同一である。そのため、実施例3における、実施例2と同一構成や同一の製造方法による特徴的な作用効果は、上記の実施例2と同一の特徴的な作用効果を有している。
【実施例4】
【0092】
次に、本実施例4にかかる水晶振動子1を図面を用いて説明する。なお、本実施例4にかかる水晶振動子1は、上記した実施例1に対して、水晶振動片2のパッケージ3への保持工程が異なる。そこで、本実施例4では、上記した実施例1と異なる保持工程について説明し、水晶振動子1の同一構成についての説明を省略する。そのため、水晶振動子1の同一構成による作用効果及び変形例は、上記した実施例1と同様の作用効果及び変形例を有する。
【0093】
この実施例4にかかる水晶振動片2のパッケージ3への保持工程を、図1,6を用いて説明する。
【0094】
まず、ベース31の段部36,37に形成された電極パッド51,52上それぞれに導通バンプ41及び絶縁性接着剤42を形成する。なお、このとき、導通バンプ41の外周に絶縁性接着剤42を配するようにして、これら導通バンプ41及び絶縁性接着剤42をベース31の段部36,37上に形成する。また、このとき、予めベース31の段部36,37に絶縁性接着剤42を塗布しておくので、絶縁性接着剤用の塗布ノズル(図示省略)を使用して絶縁性接着剤42をベース31に塗布する際に、水晶振動片2の各構成要件に隔てられることなく、非常に容易にかつ確実に強度補強用の絶縁性接着剤42を必要なベース31(段部36,37)上に塗布することができる。
【0095】
段部36,37上に導通バンプ41及び絶縁性接着剤42を形成した後に水晶振動片2を、図6(a)に示すように、水晶振動片2の裏面側主面を下方にして、ベース31の内部空間33に移動させる。
【0096】
内部空間33に移動させた水晶振動片2を、図6(b)に示すように、水晶振動片2の引出電極63,74が段部36,37上の導通バンプ41に接するようにベース31上に配し、FCB接合する。
【0097】
そして、ベース31上に導通バンプ41を介して水晶振動片2を接合した後に、図1(b)および図6(b)に示すように、ベース31の段部36,37上において、絶縁性接着剤42を加熱し絶縁性接着剤42を硬化させることで、結果としてベース31の段部36,37上に絶縁性接着剤42を接合する。この絶縁接着剤42の加熱により、導通バンプ41及び絶縁性接着剤42を一体形成して、電気的及び機械的に接着力を強化した接着部材4を構成し、ベース31の段部36,37上において水晶振動片2を片保持する。すなわち、水晶振動片2がベース31上に設けられる。なお、必要に応じて、接着部材4に更に絶縁性接着剤42を上塗りしてもよい(図6(c)参照)。
【0098】
そして、水晶振動片2をベース31上に設けた後に、図1(b)に示すように、キャップ32をベース31の壁部35の上面に配し、シーム溶接やビーム溶接等の手法によりキャップ32をベース31に接合して、水晶振動子1を製造する。
【0099】
上記したように、本実施例4にかかる水晶振動子1は、上記した実施例1に対して、水晶振動片2のパッケージ3への保持工程が異なるだけであり、同一構成からなるので、上記の実施例1における特徴的な作用効果を有している。
【0100】
また、本実施例4にかかる水晶振動子1は、上記した実施例2に対して、ベース31の段部39と接着部材7と保持工程が異なるだけであり、他の構成や製造方法は同一である。そのため、実施例4における、実施例2と同一構成や同一の製造方法による特徴的な作用効果は、上記の実施例2と同一の特徴的な作用効果を有している。
【0101】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、水晶振動子などの圧電振動デバイス及びその製造方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1(a)は、本実施例1にかかる水晶振動子は、概略平面図である。図1(b)は、図1(a)のX−X線断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本実施例1にかかる水晶振動子の製造工程を示す図である。
【図3】図3(a)は、本実施例2にかかる水晶振動子は、概略平面図である。図3(b)は、図3(a)のX’−X’線断面図である。
【図4】図4(a)〜(b)は、本実施例2にかかる水晶振動子の製造工程を示す図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、本実施例3にかかる水晶振動子の製造工程を示す図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、本実施例4にかかる水晶振動子の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
1 水晶振動子(圧電振動デバイス)
2 水晶振動片(圧電振動片)
3 パッケージ
31 ベース
32 キャップ
4,7 接着部材
41,71,72 導通バンプ
42,73 絶縁性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースとキャップとから構成されたパッケージの内部空間の前記ベース上に、圧電振動片が接着部材を介して保持された圧電振動デバイスにおいて、
前記接着部材は、導通バンプと絶縁性接着剤とが一体形成されてなることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記導通バンプの外周に前記絶縁性接着剤が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記圧電振動片は、前記接着部材を介して前記ベースに片保持されたことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記接着部材は、複数の前記導通バンプが前記絶縁性接着剤を介在して一体形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造方法であって、
前記導通バンプを前記圧電振動片に形成し、前記圧電振動片を前記導通バンプを介して前記ベースに接合し、
前記圧電振動片を前記ベースに接合した前記導通バンプの外周に前記絶縁性接着剤を配し、前記圧電振動片を前記絶縁性接着剤を介して前記ベースに接合して、前記導通バンプと前記導通バンプの外周に配した前記絶縁性接着剤とを一体形成して前記接着部材とし、
前記接着部材により前記圧電振動片を前記ベース上に設けることを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造方法であって、
前記導通バンプを前記圧電振動片に形成するとともに、前記絶縁性接着剤を前記ベースに形成し、
前記圧電振動片を前記導通バンプを介して前記ベースに接合し、前記圧電振動片を前記絶縁性接着剤を介して前記ベースに接合して、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを一体形成して前記接着部材とし、
前記接着部材により前記圧電振動片を前記ベース上に設けることを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造方法であって、
前記導通バンプを前記ベースに形成し、前記圧電振動片を前記導通バンプを介して前記ベースに接合し、
前記圧電振動片を前記ベースに接合した前記導通バンプの外周に前記絶縁性接着剤を配し、前記圧電振動片を前記絶縁性接着剤を介して前記ベースに接合して、前記導通バンプと前記導通バンプの外周に配した前記絶縁性接着剤とを一体形成して前記接着部材とし、
前記接着部材により前記圧電振動片を前記ベース上に設けることを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造方法であって、
前記導通バンプ及び前記絶縁性接着剤を、前記導通バンプの外周に前記絶縁性接着剤を配するようにして前記ベースに形成し、
前記圧電振動片を前記導通バンプを介して前記ベースに接合するとともに、前記圧電振動片を前記絶縁性接着剤を介して前記ベースに接合して、前記導通バンプと前記絶縁性接着剤とを一体形成して前記接着部材とし、
前記接着部材により前記圧電振動片を前記ベース上に設けることを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−13444(P2007−13444A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190144(P2005−190144)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】