説明

圧電振動デバイス用パッケージ、および圧電振動デバイス

【課題】パッケージの物理的強度を上げてパッケージと蓋との接合の際にパッケージにクラックが生じ難くする。
【解決手段】パッケージ3では、水晶振動片2を保持する内部空間12が形成され、内部空間12は平面視長方形の矩形状からなり、内部空間12には、水晶振動片2と電気機械的に接合する電極パッド7が形成された2つの段差部321が対向して設けられている。2つの段差部321は、内部空間12の平面視長方形のうち、短手方向の辺38と、この短手方向の辺38と隣接し対向する長手方向の辺37にそれぞれ接し、2つの段差部321が長手方向の辺37と接する長さは、前記長手方向の辺37の長さに対して少なくとも半分以上の長さに設定される。また、電極パッド7は、内部空間12の段差部321の表面322全面に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイス用パッケージ、および圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
気密封止を必要とする電子部品の例として、水晶振動子、水晶フィルタ、水晶発振器等の圧電振動デバイスが挙げられる。これら各製品では、いずれも水晶振動片の主面に励振電極が形成され、この励振電極は、外的環境から保護するために圧電振動デバイスの本体筐体により気密封止されている。
【0003】
上記した圧電振動デバイスは、圧電振動デバイス用パッケージ(以下、パッケージともいう)と蓋とからその本体筐体が構成されてなる。この圧電振動デバイスでは、パッケージと蓋とを接合材により接合することで本体筐体の内部空間を形成するとともに内部空間を気密封止し、内部空間に圧電振動片を保持する(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に開示の水晶振動子(圧電振動デバイス)の本体筐体は、音叉型水晶振動片(以下、水晶振動片とする)を収容する断面が凹形であって平面視長方形のパッケージと、このパッケージの開口部に接合する蓋とからなる。そして、接合材を用いてパッケージに蓋を接合して、水晶振動片を内部空間に気密封止する。なお、水晶振動片はパッケージに設けられた電極パッドに導電性接着剤によって固定(接合)されている。
【特許文献1】特開2007−209039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、現在、電子部品の小型化が進んでおり、これにともなって水晶振動子の小型化が図られている。そのため、音叉型水晶振動片を収容するためのパッケージの空間が狭くなり、水晶振動片をパッケージに搭載する位置が制約される。
【0006】
具体的に、上記した特許文献1に記載の水晶振動子の場合、水晶振動片をパッケージに搭載するための電極パッドにおける接合位置を設ける位置が、内部空間の長手方向の端部に偏った構造となっている。このことは、水晶振動子の小型化にともなって、更に電極パッドの水晶振動片を接合するための接合位置を小さくさせる原因となり、さらに水晶振動片のパッケージとの接合位置も制約させる原因となる。
【0007】
また、電極パッド上における水晶振動片との接合位置を設ける位置が、パッケージの内部空間の長辺方向の端部に偏っているために、パッケージ上の電極パッドが設けられた位置と、その他の位置とにおける物理的強度が異なる。特に、特許文献1に示すような平面視が長方形となるパッケージでは、その長手方向の中央付近の強度が弱く、長手方向の端部の強度が強い。そのため、パッケージの内部空間の長手方向の端部において水晶振動片をパッケージに接合した場合、パッケージと蓋との接合時にその他の部分(特に長手方向の中央付近)でクラックが入り易くなる。
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、パッケージの物理的強度を上げてパッケージと蓋との接合の際にパッケージにクラックが生じ難くする圧電振動デバイス用パッケージ、および圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイス用パッケージは、圧電振動片を保持する内部空間が形成され、前記内部空間は平面視矩形状からなり、前記内部空間には、圧電振動片と電気機械的に接合する電極パッドが形成された2つの段差部が対向して設けられ、前記2つの段差部は、前記内部空間の平面視矩形のうち、同一辺とこの同一辺と隣接し対向する辺にそれぞれ接し、前記2つの段差部が前記対向する辺と接する長さは、前記対向する辺の長さに対して半分以上の長さに設定され、前記電極パッドは、前記内部空間の前記段差部の表面全面に形成されたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前記段差部および前記電極パッドの構成により、当該圧電振動デバイス用パッケージの物理的強度を上げて当該圧電振動デバイス用パッケージと蓋との接合の際にパッケージにクラックが生じ難くすることが可能となる。また、このように、2つの前記段差部の前記対応する辺と接する長さを設定することで、何等かの原因により外部衝撃を受けた際に、圧電振動片が当該圧電振動デバイス用パッケージや蓋と接触するのを抑えることが可能となり、その結果、圧電振動片の発振周波数が高くなるほうへ周波数がシフトするのを抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明によれば、前記電極パッドを前記内部空間の前記段差部の全面に形成することで、電極パッドの任意の位置で圧電振動片を電気機械的に保持接合することが可能となり、様々な形状の圧電振動片に対して当該圧電振動デバイス用パッケージを用いることが可能となる。すなわち、当該圧電振動デバイス用パッケージへの圧電振動片の接合位置の自由度を増すことが可能となる。
【0012】
前記構成において、前記内部空間は平面視長方形状からなり、前記対向する辺は平面視長手方向の辺であってもよい。
【0013】
この場合、特に前記内部空間の長手方向の中央付近に該当する当該圧電振動デバイス用パッケージの部位で入り易いクラックの発生を抑制することが可能となり、当該圧電振動デバイス用パッケージへの全方向に対してクラックの発生を抑制するのに好適である。
【0014】
前記構成において、前記対向する段差部の間に、少なくとも前記段差部より高さが低い枕部が設けられてもよい。
【0015】
この場合、当該パッケージに搭載した圧電振動片が傾くのを抑制することが可能となる。
【0016】
前記構成において、前記内部空間に、位置認識を行うための認識パターン部が設けられてもよい。
【0017】
この場合、当該圧電振動デバイス用パッケージに圧電振動片を搭載する位置、および当該圧電振動デバイス用パッケージに蓋を配する位置を正確に把握することが可能となり、当該圧電振動デバイス用パッケージへの圧電振動片の搭載位置ずれ、および当該圧電振動デバイス用パッケージに蓋を配する位置のずれを抑えることが可能となる。
【0018】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスは、上記した本発明にかかる圧電振動デバイス用パッケージと、蓋とから本体筐体が形成され、前記電極パッド上に圧電振動片が接合されたことを特徴とする。
【0019】
前記構成において、前記圧電振動片は、複数本の脚部と基部とから構成された音叉型圧電振動片であり、前記圧電振動片には、さらに前記基部から延出する延出部が設けられ、前記延出部において前記圧電振動片が前記電極パッドと接合されてもよい。また、前記構成において、前記電極パッド上に圧電振動片がFCB法により接合されてもよい。
【0020】
本発明によれば、上記した圧電振動デバイス用パッケージによる作用効果に加えて、前記圧電振動デバイス用パッケージの小型化が図られた場合であっても、前記圧電振動片の前記電極パッドへの接合領域を小さくすることができるので、小型の当該圧電振動デバイス用パッケージへの圧電振動片の保持を可能とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる圧電振動デバイス用パッケージ、および圧電振動デバイスによれば、パッケージの物理的強度を上げてパッケージと蓋との接合の際にパッケージにクラックが生じ難くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、圧電振動デバイスとして音叉型水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0023】
本実施例にかかる音叉型水晶振動子1(以下、水晶振動子という)は、図1〜5に示すように、音叉型水晶振動片2(本発明でいう圧電振動片であり、以下、水晶振動片という)と、この水晶振動片2を保持するパッケージ3(本発明でいう圧電振動デバイス用パッケージ)と、パッケージ3に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋4とからなる。
【0024】
この水晶振動子1では、図1〜5に示すように、パッケージ3と蓋4とが接合材5(金属材料など)を用いてビーム溶接によって加熱溶融接合されて本体筐体11が構成され、この本体筐体11内に内部空間12が形成される。この内部空間12のパッケージ3上には水晶振動片2が保持されているとともに、本体筐体11の内部空間12が気密封止されている。なお、内部空間12内において、パッケージ3(具体的に下記する電極パッド7)に水晶振動片2が導電性バンプ6を用いてFCB(Flip Chip Bonding)法により電気機械的に接合されている。すなわち、パッケージ3に水晶振動片2が導電性バンプ6を用いてFCB法により超音波接合されるとともに電気的に接続されている。また、本実施例では、導電性バンプ6の直径は80〜120μmとなる。
【0025】
次に、この水晶振動子1の各構成について図1〜5を用いて説明する。
【0026】
パッケージ3は、図1〜4に示すように、セラミック材料(アルミナ)からなる平面視長方形の矩形状の一枚板の底部31と、この底部31上に積層したセラミック材料(アルミナ)からなる段部32と、段部32上に積層したセラミック材料(アルミナ)からなる堤部33とから構成される箱状体に成形され、これら底部31と堤部33とが断面凹状に一体的に焼成されている。
【0027】
また、底部31のうち、内部空間12に露出する表面311の2つの角部には、画像認識により位置認識(製造工程時における各構成部材を配設する際の位置認識)を行うための認識パターン部34が設けられている。この認識パターン部34によるパッケージの位置認識により、パッケージ3に水晶振動片2を搭載する位置、およびパッケージ3に蓋4を配する位置を正確に把握することが可能となり、パッケージ3への水晶振動片2の搭載位置ずれ、およびパッケージ3に蓋4を配する位置のずれを抑えることができる。なお、ここでいう認識パターン部34は、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にパッケージ3と一体的に焼成して形成される。
【0028】
段部32は、底部31の平面視外周上に沿って積層して設けられ、この段部32のうち内部空間12に露出する2つの段差部321が、パッケージ3の平面視一端部35から平面視中央部36近傍にかけて設けられている。段差部321は内部空間において平面視長方形からなり、段差部321の表面322全面には、水晶振動片2の励振電極28(下記参照)と電気的に接続する2つの電極パッド7が形成されている。2つの電極パッド7は、それぞれの電極パッド7に対応して引回された接続電極(図示省略)を介して、パッケージ3の裏面39に形成される端子電極(図示省略)の一部に電気的に接続され、端子電極から外部(外部部品や外部機器)と接続される。なお、これら電極パッド7、接続電極、及び端子電極は、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にパッケージ3と一体的に焼成して形成される。そして、これら電極パッド7、接続電極、及び端子電極のうち、パッケージ3に露出形成されたものおよび露出された部分について、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されている。
【0029】
堤部33は、パッケージ3の平面視外周に沿って成形されている。この堤部33の上面(端面)は、蓋4との接合領域331である。また、このパッケージ3の平面視外周には、四隅にキャスタレーション13が形成されている。
【0030】
上記したように、底部31と段部32と堤部33とから構成されるパッケージ3には、図1,2に示すように、水晶振動片2を保持する内部空間12が形成されている。ここでいう内部空間12は平面視矩形状からなる。具体的に、実施例では内部空間12は平面視長方形状からなるが、これは好適な例であり、内部空間の形状はこれに限定されるものではない。なお、本体筐体11の内部空間12のうち、パッケージ3の断面凹状内をパッケージ3における内部空間12とし、便宜上同一の符号を付する。
【0031】
そして、内部空間12には、水晶振動片2と電気機械的に接合する電極パッド7が形成された2つの段差部321が内部空間12の長手方向の辺37に沿って対向して設けられている。この2つの段差部321は、内部空間12の平面視矩形のうち、同一辺(図1に示す左側の短手方向の辺38)とこの同一辺と隣接し対向する辺(図1に示す対向する長手方向の辺37)とに、それぞれ接する。なお、2つの段差部321が長手方向の辺37と接する長さは、長手方向の辺37の長さに対して約半分もしくは半分以上の長さに設定されている(図1に示す線分Lを長手方向の辺37の半分の長さとする)。このように、2つの段差部321の長手方向の辺37と接する長さを設定することで、何等かの原因(当該水晶振動子1の落下による衝撃など)により外部衝撃を受けた際に、水晶振動片2の先端(例えば下記する脚部22)が蓋4やパッケージ3(例えば底部31)と接触するのを抑えることができ、その結果、当該水晶振動子1(水晶振動片2)の発振周波数が高くなるほうへ周波数がシフトするのを抑制することができる。
【0032】
なお、パッケージ3の外形について、平面視長手方向の寸法が2.0mmに設定され、平面視短手方向の寸法が1.2mmに設定され、パッケージの高さは0.38μmに設定されている。また、パッケージ3における内部空間12(断面凹部)内の短手方向の寸法は0.8mmに設定され、長手方向の寸法は1.65mmに設定されている。また、パッケージ3の平面視長手方向の堤部の幅が0.2mmに設定され、平面視短手方向の堤部の幅が0.175mmに設定され、平面視長手方向の堤部の幅の方が平面視短手方向の堤部の幅より距離を有する。また、パッケージ3における内部空間12の高さは0.26mmに設定されている。また、段差部321の高さは0.08mmに設定され、この段差部321上に厚さ20μmの電極パッド7が形成されている。
【0033】
蓋4は、金属材料(具体的に、複数の金属層の積層体であるコバール基体)からなり、図2に示すように、平面視矩形状の一枚板に成形される。また、この蓋4の平面視の外形寸法は、同一方向視のパッケージ3の外形寸法と略同一か、若干小さく(ひとまわり小さく)なるように設計されている。本実施例に示すように蓋4に金属材料を用いることで、パッケージ3と同一材料であるセラミックを蓋4に用いた場合と比較して、その厚みを薄くすることができ、水晶振動子1の低背化を図ることができる。
【0034】
また、図2に示すように、蓋4とパッケージ3との接合には、金属材料からなる接合材5が用いられている。なお、ここでいう接合材5は厚さ15μmからなり、蓋4の表面に接合材5を圧延等の手段により全面に形成する。この接合材5を介して、シーム溶接やビーム溶接、加熱溶融接合等の手法により、蓋4をパッケージ3に接合して、蓋4とパッケージ3とによる水晶振動子1の本体筐体11が構成される。なお、接合材5は、例えば、タングステンメタライズ層、あるいはモリブデンメタライズ層上にニッケル,金の順でメッキした構成とからなる。
【0035】
次に、内部空間12に配された水晶振動片2の各構成について説明する。
【0036】
水晶振動片2は、図1,2,5に示すように、異方性材料の水晶片である水晶素板(図示省略)から、ウェットエッチング形成された水晶Z板である。そのため、この水晶振動片2は量産に好適である。
【0037】
この水晶振動片2の基板21は、振動部である2本の脚部22と基部23とから構成された外形からなり、2本の脚部22が基部23の一端から突出して形成されている。
【0038】
また、この基部23には、基部23の他端であって、その側面24から脚部22の突出方向に対して垂直方向に延出する延出部25が設けられている。これら延出部25(具体的に基部23に対する延出部25の付け根)は折曲したような形状からなり、その延出端面が脚部22の突出方向と同一方向に延出する。延出部をこのような形状とすることで、延出部の端面と脚部との水晶振動片2上の距離を長く設定することができ、延出部25の端面における脚部の振動特性の影響を受け難い設定とすることができる。そのため、延出部25の端面近傍において電極パッド7との接合を行うことが好ましい。
【0039】
また、2つの脚部22の両主面26には、水晶振動片2の小型化により劣化する直列共振抵抗値(本実施例ではCI値、以下同様)を改善させるために、凹部27が形成されている。
【0040】
この水晶振動片2の表面(両主面26および側面24)には、図5に示すように、異電位で構成された2つの励振電極28と、これらの励振電極28を電極パッド7に電気的に接続させるために励振電極28から引き出された引出電極29とが設けられている。なお、本実施例でいう引出電極29は、2つの励振電極28から引き出された電極パターンのことをいい、延出部25の端面まで引回されている。
【0041】
また、2つの励振電極28の一部は、脚部22の凹部27の内部に形成されている。このため、水晶振動片2を小型化しても脚部22の振動損失が抑制され、CI値を低く抑えることができる。
【0042】
上記した水晶振動片2の励振電極28と引出電極29とは、例えば、クロムの下地電極層と、金の上部電極層とから構成された積層薄膜である。これらの薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状に形成される。なお、上記した引出電極29のみを、例えば、クロムの下地電極層と、金の中間電極層と、クロムの上部電極層と、から構成された積層薄膜としてもよい。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状に形成され、クロムの上部電極層のみが部分的にマスクして真空蒸着法等の手法により形成される。また、励振電極28、及び引出電極29がクロム,金の順に形成されているが、例えば、クロム,銀の順や,クロム,金,クロムの順や,クロム,銀,クロムの順等であってもよい。
【0043】
上記した水晶振動片2はパッケージ3に、図1,2に示すように、導電性バンプ6を介して電気機械的な接合が行われる。具体的に、水晶振動片2の引出電極29と、パッケージ3の電極パッド7とが、導電性バンプ6を介してFCB法により接合されて、これら引出電極29と電極パッド7とが電気機械的に接続される。なお、本実施例で用いる導電性バンプ6は、金などの金属材料からなる接続バンプである。パッケージ3への水晶振動片2の接合に関して、具体的に、水晶振動片2の延出部25の端面近傍を水晶振動片2の接合位置として、パッケージ3に形成された電極パッド7のうちパッケージ3の平面視長手方向の中央付近(パッケージ3の平面視中央部36)をパッケージ3の接合位置として、導電性バンプ6を介してFCB法により水晶振動片2をパッケージ3に接合する。なお、この導電性バンプ6は、水晶振動片2と電極パッド7との導通を図るとともに水晶振動片2をパッケージ3に保持するものである。
【0044】
上記したように本実施例にかかる水晶振動子1では、パッケージ3に水晶振動片2を導電性バンプ6を介してFCB法により電気機械的に接合保持し、この水晶振動片2を接合保持したパッケージ3に、接合材5を形成した蓋4を接合して水晶振動子1を製造する。
【0045】
上記したように本実施例によれば、段差部321および電極パッド7の構成により、パッケージ3の物理的強度を上げてパッケージ3と蓋4との接合の際にパッケージ3にクラックが生じ難くすることができる。
【0046】
また、本実施例によれば、電極パッド7を内部空間12の段差部321全面に形成することで、電極パッド7の任意の位置で水晶振動片2を電気機械的に保持接合することができ、様々な形状の水晶振動片2に対して当該パッケージ3を用いることが可能となる。すなわち、当該パッケージ3への水晶振動片2の接合位置の自由度を増すことができる。
【0047】
また、本実施例では、パッケージ3が底部31と段部32と堤部33とを積層して構成しており、これら底部31と段部32と堤部33とを積層する際に積層ずれが生じる可能性がある。しかしながら、本実施例によれば、積層ずれによるパッケージ3の側面強度の低下を回避することが可能となる。具体的に、積層ずれが生じた場合であっても電極パッド7を内部空間12内に露出させることが可能であり、露出した電極パッド7に水晶振動片2を接合すればよく、その結果、水晶振動子1の生産ロス(歩留まり)を低減させることが可能となる。
【0048】
また、本実施例によれば、段差部321の高さは80μmに設定され、この段差部321上に厚さ20μmの電極パッド7が形成されている。これに対して、例えば、段差部321を設けずにパッケージを底部と堤部とから構成し、この底部上に電極パッドを形成した場合と比較すると、この比較の形態では、電極パッドの厚みを40μm以上に設定しなければ、水晶振動片と底部とが接触する可能性がある。そこで、電極パッドの厚みを40μm以上に設定した場合、電極パッドをスクリーン印刷などで形成することになるが、その表面が凹凸状になる(具体的に、電極パッドの表面が凸状の丸みをおびた状態となる)。そのため、本実施例に示すような、平坦面への接合を条件とするFCB法によって水晶振動片を電極パッドに接合することができない。このことから、本実施例に示すような段差部321に電極パッド7を形成して電極パッド7の表面を平坦とし、FCB法により導電性バンプ6を介して水晶振動片2を電極パッドに電気機械的に接合することが好ましい。
【0049】
また、本実施例にかかるパッケージ3および水晶振動子1によれば、上記したパッケージ3による作用効果に加えて、パッケージ3の小型化が図られた場合であっても、水晶振動片2の電極パッド7への接合領域を小さくすることができるので、小型のパッケージ3への水晶振動片2の保持を可能とする。
【0050】
また、本実施例では、パッケージ3にセラミック材料を用いているが、これに限定されるものではなく、パッケージ3と蓋4との熱膨張係数を近似もしくは同一の値であれば例えば、他の構成からなる材料からなってもよい。
【0051】
また、本実施例では、蓋4に、コバール基体を用い、パッケージ3との接合面側から、銅(または銅合金)−コバール−ニッケルの順で積層して構成されている。しかしながら、これに限定されるものではなく、パッケージ3と蓋4との熱膨張係数を近似もしくは同一の値であれば任意の材料から蓋4を構成してもよい。例えば、蓋4を、ニッケル−コバールの順で積層されたものや、ニッケル−コバール−ニッケルの順で積層されたものや、42アロイ等から構成してもよい。
【0052】
また、図1〜4に示す本実施例の電極パッド7は、内部空間12内における段差部321全面に形成された構成としているが、これに限定されるものではなく、電極パッド7が段差部321全面に形成されてもよい。また、ここでいう内部空間12内における段差部321の表面322全面とは、段差部321の全ての上面のことをいうが、これに限定解釈されるものではなく、様々な要因による電極パッド7の欠けなどによって段差部321の一部の上面が露出した場合のことも含むことは言うまでもない。
【0053】
また、本実施例では、真空雰囲気中において接合材5を金属材料からなる蓋4に形成しているが、不活性ガス(窒素等)による雰囲気下において接合材5を金属材料からなる蓋4に形成してもよい。
【0054】
また、本実施例では、圧延等の手段により蓋4に接合材5を形成しているが、これに限定されるものではなく、パッケージ3の接合領域331と蓋4の接合領域との両方に接合材5を形成してもよく、またはパッケージ3のみに接合材5を形成してもよい。
【0055】
また、本実施例にかかるパッケージ3に、図6に示すように、更に、対向する段差部321の間に枕部8が設けられてもよい。この枕部8の高さは、少なくとも前記段部の高さより低い。この枕部8により、パッケージ3に搭載した水晶振動片2が傾くのを抑制することができる。具体的に、当該水晶振動片2の製造中および製造後に何等かの原因(当該水晶振動子1の落下による衝撃など)により外部衝撃によって水晶振動片2が傾くのを抑制するのに好適である。また、パッケージ3に搭載した水晶振動片2と枕部8とは、通常(定常状態)時では非接触状態となるので、水晶振動片2と枕部8との接触による水晶振動片2の特性の不必要な変化(劣化)を抑えることができる。なお、ここでいう枕部8は、アルミナ等の絶縁材料を用いることが好ましい。また、枕部8に、導電性材料を用いる場合、何等かの原因(当該水晶振動子1の落下による衝撃など)により外部衝撃を受けて水晶振動片2と枕部8とが接触した場合に、水晶振動片2の電極(励振電極28や引出電極29)と枕部8とが導通状態とならないように、水晶振動片2の電極パターンを設計する必要がある、もしくは枕部8の表面を絶縁材料で覆う必要がある。
【0056】
さらに、本発明は水晶振動片やIC等の他の電子部品を一体的に収納した水晶発振器、もしくは水晶振動片やIC等の他の電子部品を個別に収納した水晶発振器にも適用することができる。
【0057】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、圧電振動デバイスに適用でき、特に水晶振動子などに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、本実施例にかかる水晶振動片を搭載したパッケージの概略平面図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる水晶振動子の内部を公開した概略側面図である。
【図3】図3は、本実施例にかかるパッケージの図1に示すA−A線端面図である。
【図4】図4は、本実施例にかかるパッケージの図1に示すB−B線端面図である。
【図5】図5は、本実施例にかかる水晶振動片の概略平面図である。
【図6】図6は、本実施の他の例にかかる水晶振動片を搭載したパッケージの概略平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 音叉型水晶振動子
11 本体筐体
12 内部空間
2 音叉型水晶振動片
3 パッケージ
321 段差部
322 段差部の表面
34 認識パターン部
37 内部空間の長手方向の辺
38 内部空間の短手方向の辺
4 蓋
6 導電性バンプ
7 電極パッド
8 枕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片を保持する圧電振動デバイス用パッケージにおいて、
圧電振動片を保持する内部空間が形成され、
前記内部空間は平面視矩形状からなり、
前記内部空間には、圧電振動片と電気機械的に接合する電極パッドが形成された2つの段差部が対向して設けられ、
前記2つの段差部は、前記内部空間の平面視矩形のうち、同一辺とこの同一辺と隣接し対向する辺にそれぞれ接し、
前記2つの段差部が前記対向する辺と接する長さは、当該対向する辺の長さに対して半分以上の長さに設定され、
前記電極パッドは、前記内部空間の前記段差部の表面全面に形成されたことを特徴とする圧電振動デバイス用パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動デバイス用パッケージにおいて、
前記内部空間は、平面視長方形からなり、
前記対向する辺は、平面視長手方向の辺であることを特徴とする圧電振動デバイス用パッケージ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電振動デバイス用パッケージにおいて、
前記対向する段差部の間に、少なくとも前記段差部より高さが低い枕部が設けられたことを特徴とする圧電振動デバイス用パッケージ。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイス用パッケージにおいて、
前記内部空間に、位置認識を行うための認識パターン部が設けられたことを特徴とする圧電振動デバイス用パッケージ。
【請求項5】
圧電振動デバイスにおいて、
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイス用パッケージと、蓋とから本体筐体が形成され、
前記電極パッド上に圧電振動片が接合されたことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記圧電振動片は、複数本の脚部と基部とから構成された音叉型圧電振動片であり、前記圧電振動片には、さらに前記基部から延出する延出部が設けられ、
前記延出部において前記圧電振動片が前記電極パッドと接合されたことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項7】
請求項5または6に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記電極パッド上に圧電振動片がFCB法により接合されたことを特徴とする圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−55354(P2009−55354A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220199(P2007−220199)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】