説明

圧電振動子

【課題】 励振電極を備えた圧電振動板を支持するための支持アームやフレーム板に設けられる配線電極の形成面積を最大限に広くすることによって、励振電極における電気抵抗及び等価直列抵抗値を低減させ、これによって振動効率の向上を図ることのできる圧電振動子を提供することである。
【解決手段】 極性の異なる一対の励振電極を有する圧電振動板12と、該圧電振動板12の外周部の一端から外方向に延び、前記それぞれの励振電極と電気的に導通する配線電極が設けられる一の支持アーム13とを備えた圧電振動子11において、前記支持アーム13には、前記圧電振動板12に向けて延びる絶縁部19が設けられ、この絶縁部19を挟んだ左右方向の上下面及び側面に前記一対の励振電極のそれぞれに導通する第1配線電極21及び第2配線電極22を被覆形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励振電極が形成された圧電振動板と、この圧電振動板から延びる支持アームとを備えた圧電振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動子は、少なくとも一対の励振電極を有する圧電振動板及びこの圧電振動板から延び、その一端がパッケージ内の電極端子に支持される支持アームとを有して構成されている。前記支持アームが圧電振動板から複数延びる場合は、それぞれの支持アーム同志が繋がり、圧電振動板の周囲を囲うようにして設けられる共通のフレーム板を備えて構成される場合がある(特許文献1参照)。
【0003】
通常、圧電振動子は、セラミックや樹脂などのパッケージ内に備える外部端子に前記支持アームの一端を導電性接着剤などで固定させている。また、前記外部端子と圧電振動板に形成されている励振電極とを電気的に接続させるため、支持アームやフレーム板に配線電極をパターン形成する必要がある。
【0004】
前記圧電振動板に複数の振動領域を有して構成される場合は、同極の励振電極同志を効率よく繋ぎ、異極の励振電極とショートしないようにして、圧電振動板、支持アームに配線電極を形成する必要がある。前記配線電極は、通常、導電性金属膜によるフォトリソ加工を経て形成するため、主に圧電振動板や支持アームの上面又は下面に形成され、側面には形成しないか、上面と下面との間を繋ぐ部分に限定して形成することが一般的に行われている。このように、ショート等による危険性が高くなる圧電振動板、支持アームあるいはフレーム板の側面に配線電極をあえて形成することはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−126009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
輪郭振動を利用した圧電振動子の場合、従来は1.0〜3.5MHz程度の比較的低い周波数で実施された例が多い。そこで、共振周波数を4MHzにしようとすると、圧電振動板が非常に小さくなり、例えば、共振周波数10MHzの基本波の場合には、圧電振動板の一辺の長さは500μm以下となる。このようなサイズの圧電振動子にあっては、振動エネルギーそのものが小さくなると共に、圧電振動板の振動を阻害し、等価直列抵抗(R1)が増大する傾向がある。このため、満足な電気的特性を得るためには、支持アームやフレーム板の寸法を小さくする必要がある。
【0007】
このような小型の圧電振動子の電気的特性を満足させる手段としては、支持アームやフレーム板を長く、細く又薄くして構成する場合がある。しかしながら、前記支持アームやフレーム板の寸法を小さくした上で、上面と下面だけで配線電極を構成すると、これらの電極幅が細くなり、結果として、配線電極にかかる電気抵抗が増大し、圧電振動子の振動特性に悪影響を及ぼすといった問題があった。
【0008】
特に、蒸着、スパッタリングなどの導電性薄膜形成工程を経て形成される配線電極の電気抵抗率は、同一材質におけるバルク状態の電気抵抗率よりも著しく大きな値を持つが、一般的にその膜厚が0.8μm以下となると、電気抵抗率に影響を及ぼすことが知られている。このため、圧電振動子の励振電極や配線電極を0.8μm以下とし、従来から行われている上面や下面だけの電極構成であると、圧電振動子デバイスとして形成した際、十分満足するような電気的特性(等価直列抵抗)が得られないといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、励振電極を備えた圧電振動板を支持するための支持アームやフレーム板に設けられる配線電極の形成面積を最大限に広くすることによって、励振電極における電気抵抗及び等価直列抵抗値を低減させ、これによって振動効率の向上を図ることのできる圧電振動子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の圧電振動子は、励振電極が形成された圧電振動板と、該圧電振動板から外方向に延び、前記励振電極と電気的に導通する配線電極が形成された支持アームとを備えた圧電振動子において、前記配線電極が前記支持アームの全外周面に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧電振動子によれば、圧電振動板を支持する一又は二以上の支持アームの全外周面に配線電極を形成しているので、電気抵抗を低減した状態で圧電振動板に形成されている励振電極と電気的に接続させることができる。これによって、励振電極における等価直列抵抗値を低減させ、振動効率の向上を図ることができる。
【0012】
また、前記配線電極が支持アームの全外周面に沿って形成されているため、断線が生じにくくなり、圧電振動子の電気的な耐久性を向上する効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の圧電振動子の斜視図である。
【図2】上記圧電振動子の各部の断面図である。
【図3】第2実施形態の圧電振動子(表面)の平面図である。
【図4】第2実施形態の圧電振動子(裏面)の平面図である。
【図5】第3実施形態の圧電振動子(表面及び裏面)の平面図である。
【図6】第4実施形態の圧電振動子(表面)の平面図である。
【図7】第4実施形態の圧電振動子(裏面)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び図2に本発明における第1実施形態の圧電振動子11の全体形状及び各部の断面形状を示す。圧電振動子11は、幅縦・長さ縦結合モードの輪郭振動を伴う四角形状の圧電振動板12と、この圧電振動板12の一端を支持する支持アーム13とを備えて構成されている。前記圧電振動子11は、パッケージ27内に設けられている端子電極28,29上に前記支持アーム13の端部を導通接続することによって、圧電振動板12を浮かせた状態で収容される。
【0015】
前記圧電振動板12及び支持アーム13は、機械軸(Y軸)に垂直となるY板水晶を電気軸(X軸)を回転軸として角度θx=+40°〜+60°回転し、更に、前記X軸の回転後の新軸(Y´軸)を回転軸として、角度θy=40°〜50°回転した上下面及び四方向の側面を有する薄板状の水晶基板14を所定の形状に加工して形成されている。また、前記Y軸の回転後の新軸であるY´軸に垂直な面となる圧電振動板12の上面及び下面には極性の異なる少なくとも一対の励振電極が対向して配置されている。
【0016】
前記圧電振動板12は、水晶基板14の上面14aに第1励振電極17、下面14bに第2励振電極18が形成され、それぞれの励振電極に対して逆位相の電圧をパッケージ27に設けられている一対の端子電極28,29から支持アーム13を介して印加することで、圧電振動板12の外周辺が撓み変形して幅縦・長さ縦結合モードの振動が生じる。
【0017】
幅縦・長さ縦結合モードは、通常、長さ縦モードの方を調整して、幅縦モードを結合させることにより、温度特性などの良好な振動子特性を得る。前記支持アーム13は、長さ縦モードの錘として機能すると共に、バネ性を有しているため、振動を抑制することで周波数を調整する役割を備えている。
【0018】
前記支持アーム13は、圧電振動板12で発生した振動を外部に漏らさないように緩衝すると共に、等価直列抵抗値の増加を抑えるために、強度や安定性に影響を及ぼさない範囲で面積を小さくして形成するのが好ましい。このため、本実施形態では、前記支持アーム13が圧電振動板12の一側面のみを支持する構成となっている。
【0019】
図1に示したように、前記支持アーム13は、圧電振動板12の一側面の略中央部から延びる支持本体部15と、この支持本体部15の先端に設けられ、パッケージ27内の端子電極28,29にハンダ接合される幅広の支持電極部16とによって形成されている。前記支持本体部15及び支持電極部16には、前記第1励振電極17に導通接続される第1配線電極21と、前記第2励振電極18に導通接続される第2配線電極22が形成される。この第1配線電極21と第2配線電極22は、図2に示すように、支持本体部15及び支持電極部16を構成する水晶基板14の上面14a及び下面14bの中央部を圧電振動板12に向けて延びる方向と、支持電極部16の側面14eに回り込む方向とでコ字状に露出する絶縁部19を隔てて形成される。絶縁部19は、水晶基板14を露出したもので、前記第1配線電極21と第2配線電極22をエッチングする際に形成される。
【0020】
前記第1励振電極17及び第2励振電極18は、図2の(C−C),(D−D),(E−E)断面図に示すように、圧電振動板12の支持本体部15が繋がる側面を介してそれぞれ圧電振動板12における水晶基板14の上面14aと下面14bに平面形成される。なお、前記第1励振電極17と第2励振電極18とがショートしないように、前記支持本体部15が繋がる側面を除いた圧電振動板12の上面14a及び下面14bの3方向の外周縁部に水晶基板14が露出した絶縁領域が設けられる。
【0021】
前記第1配線電極21及び第2配線電極22は、図2の(A−A),(B−B)断面図に示すように、支持本体部15が繋がる圧電振動板12の側面から絶縁部19を除く支持本体部15及び支持電極部16を二分するようにして、水晶基板14の上面14a、下面14b及び左右の側面14c,14dを導電性金属膜で被覆される。
【0022】
本実施形態による圧電振動子11にあっては、前記第1励振電極17及び第2励振電極18に対応する第1配線電極21及び第2配線電極22がショートしないように、共通の1本の支持アーム13に絶縁部19を隔てて形成されているので、最小の支持構造でありながら、効率よく圧電振動板12を励振させることができる。
【0023】
また、前記絶縁部19を介して電気的に二分された支持本体部15及び支持電極部16の上面14a、下面14b及び左右の側面14c,14dと、支持電極部16の基端側の側面14eが導電性金属膜による第1配線電極21及び第2配線電極22で全面が被覆形成されている。これによって、前記第1励振電極17及び第2励振電極18に接続するための電気抵抗が低減して電流の流れがスムーズになると共に、等価直列抵抗値も低減するので、圧電振動板12における励振効率の向上効果が得られる。
【0024】
図3及び図4は、本発明の第2実施形態の圧電振動子31を示したものである。図3は上面(表面)側の平面形状で、図4は図3をミラー対称とした下面(裏面)側の平面形状を示す。この圧電振動子31は、表面及び裏面にそれぞれ3つの振動領域が設定される長方形状の圧電振動板32と、この圧電振動板32を支持するために、この圧電振動板32の一側面から外方向に延びる支持アーム33とを備えて構成されている。前記振動領域には、極性の異なる第1励振電極37と第2励振電極38が交互に配置される。前記支持アーム33は、圧電振動板32の一側面から延びる支持本体部35と、この支持本体部35の先端に設けられる支持電極部36とを有して構成される。また、前記支持本体部35と支持電極部36となる水晶基板34の上面34a、下面34b及び側面34c,34dには、中央部に延びる絶縁部39を隔てて、極性の異なる第1配線電極41及び第2配線電極42が全面に形成される。
【0025】
前記第1配線電極41は、圧電振動板32における水晶基板34の上面34aの中央部に位置する振動領域をカバーする励振電極部37aに電気的に接続され(図3)、支持本体部35と繋がる圧電振動板32の側面を介して圧電振動板32の下面34bの上部振動領域をカバーする励振電極部37bに電気的に接続される(図4)。なお、前記圧電振動板32の下面34bの下部振動領域をカバーする励振電極部37cは、前記励振電極部37aから支持アーム33と反対側の圧電振動板32の側面を経て下面34bに繋がる第1側面配線電極43によって電気的接続が図られる。
【0026】
また、前記第2配線電極42は、圧電振動板32における水晶基板34の下面34bの中央部に位置する振動領域をカバーする励振電極38aに電気的に接続され(図4)、支持アーム体部35と繋がる圧電振動板32の側面を介して圧電振動板32の上面34aの下部振動領域をカバーする励振電極部38bに電気的に接続される(図3)。なお、前記圧電振動板32の上面34aの上部振動領域をカバーする励振電極部38cは、前記励振電極部38aから支持アーム33と反対側の圧電振動板32の側面を経て上面34aに繋がる第2側面配線電極44によって電気的接続が図られる。
【0027】
前記圧電振動板32における水晶基板34の上面34aと下面34bに形成される第1励振電極37及び第2励振電極38は、各振動領域の略全面に形成されるが、極性の異なる励振電極同志がショートしないような最小幅を有して水晶基板34が露出する絶縁領域が設けられる。また、前記圧電振動板32の上辺及び下辺の内側にも水晶基板34が露出する絶縁領域を設けることによって、第1励振電極37と第2励振電極38とのショートを防止している。
【0028】
図5は、本発明の第3実施形態の圧電振動子51を示したものである。ここで、(a)は上面(表面)側の平面形状で、(b)は(a)をミラー対称とした下面(裏面)側の平面形状を示す。この圧電振動子51は、四角形状の圧電振動板52と、この圧電振動板52の外周部の2カ所を支持する一対の支持アーム53とを備えて構成されている。前記圧電振動板52には、水晶基板54の上面54aと下面54bの略全面に振動領域を有し、それぞれの振動領域に極性の異なる第1励振電極57及び第2励振電極58が形成される。前記一対の支持アーム53は、前記圧電振動板52の対向する側面からそれぞれコ字状に延びる一対の支持本体部55a,55bと、この一対の支持本体部55a,55bの先端同志を繋ぐフレーム板56とを有して構成されている。前記フレーム板56は、前記一対の支持本体部55a,55bの端部が安定するように保持するために設けられる。なお、この実施形態の圧電振動子51は、図5(b)に示したように、前記フレーム板56の両端部に繋がる一対の支持本体部55a,55bの一部が図1に示したようなパッケージ内に設けられる端子電極に導通接続するための電極パッド部63,64となっている。
【0029】
前記一対の支持本体部55a,55bは、断面図で示すように、水晶基板54の上面54a、下面54b及び左右側面54c,54dの全ての外周面を導電性金属膜によって被覆され、一方の支持本体部55aには第1配線電極61が形成され、他方の支持本体部55bには第2配線電極62が形成される。前記第1配線電極61と第2配線電極62は、それぞれ一対の支持本体部55a,55bと繋がる圧電振動板52における水晶基板54の側面54c,54dを介して上面54a及び下面54bに形成されている第1励振電極57及び第2励振電極58に電気的に接続される。
【0030】
この実施形態では、圧電振動板52が、この圧電振動板52の対向する両側面から延びる支持アーム53によって支持されているので、パッケージ内の端子電極に安定して実装することができると共に、落下等による外部からの衝撃に対する耐久性も向上させることができる。また、第1及び第2励振電極57,58に導通接続される第1及び第2配線電極61,62がそれぞれの支持本体部55a,55bの全ての外周面を被覆して形成されているので、電気抵抗の低減による導電性の向上効果と、等価直列抵抗の大幅な低減効果を得ることができる。
【0031】
図6及び図7は、本発明の第4実施形態の圧電振動子71を示したものである。図6は上面(表面)側の平面形状で、図7は図6をミラー対称とした下面(裏面)側の平面形状を示す。この圧電振動子71は、表面及び裏面にそれぞれ3つの振動領域が設定される長方形状の圧電振動板72と、この圧電振動板72を支持するために、圧電振動板72の長手方向に対向する両側面からそれぞれ外方向に延びる一対の支持アーム73とを備えて構成されている。前記圧電振動板72の振動領域には、極性の異なる第1励振電極77と第2励振電極78が交互に配置される。前記一対の支持アーム73は、前記圧電振動板72の長手方向に対向する両側面から屈曲しながらコ字状に延びる一対の支持本体部75a,75bと、この一対の支持本体部75a,75bの先端同志を繋ぐフレーム板76とを有して構成されている。前記フレーム板76は、前記一対の支持本体部75a,75bの端部が安定するように保持するために設けられる。なお、この実施形態の圧電振動子71は、図7に示したように、前記フレーム板76の両端部に繋がる一対の支持本体部75a,75bの一部が図1に示したようなパッケージ内に設けられる端子電極に導通接続するための電極パッド部85,86となっている。
【0032】
前記一対の支持本体部75a,75bは、断面図で示すように、水晶基板74の上面74a、下面74b及び左右側面74c,74dの全ての外周面を導電性金属膜によって被覆され、一方の支持本体部75aには第1配線電極81が形成され、他方の支持本体部75bには第2配線電極82が形成される。前記第1配線電極81と第2配線電極82は、それぞれ一対の支持本体部75a,75bと繋がる圧電振動板72の側面を介して上面74a及び下面74bに形成されている第1励振電極77及び第2励振電極78に電気的に接続される。
【0033】
前記第1配線電極81は、圧電振動板72における水晶基板74の上面74aの中央部に位置する振動領域をカバーする励振電極部77aに電気的に接続され(図6)、支持本体部75aと繋がる圧電振動板72の側面に回り込む第1側面配線電極83を介して圧電振動板72の下面74bの上部及び下部の振動領域をカバーする励振電極部77b,77cに電気的に接続される(図7)。
【0034】
また、前記第2配線電極82は、圧電振動板72における水晶基板74の下面74bの中央部に位置する振動領域をカバーする励振電極78aに電気的に接続され(図7)、支持アーム体部75bと繋がる圧電振動板72の側面に回り込む第2側面配線電極84を介して圧電振動板72の上面74aの上部及び下部の振動領域をカバーする励振電極部78b,78cに電気的に接続される(図6)。
【0035】
この実施形態では、圧電振動板72が、この圧電振動板72両側面から延びる支持アーム73によって支持されているので、パッケージ内の端子電極に安定して実装することができると共に、落下等による外部からの衝撃に対する耐久性も向上させることができる。また、第1及び第2励振電極77,78に導通接続される第1及び第2配線電極81,82がそれぞれの支持本体部75a,75bの上下面及び左右側面の全ての外周面を被覆して形成されているので、電気抵抗の低減による導電性の向上効果と、等価直列抵抗の大幅な低減効果が得られる。さらに、支持本体部75a,75bの圧電振動板72に繋がる部分が蛇腹状の屈曲部87,88を有して形成されているので、圧電振動板72による撓み変形を吸収することができると共に、導電性金属膜の形成面積を広くして電気抵抗を低減させる効果がある。
【0036】
上記第3及び第4実施形態では、二極の励振電極に対応させるために2本の支持アームを有して構成したが、3本以上の支持アームを有して構成する場合であっても同様に、各支持アームの外周面を導電性金属膜で被覆して形成することができる。例えば、圧電振動板の四隅の節点を支持するために4本の支持アームを有して形成した場合は、1つの励振電極に対して、2カ所以上から延びる配線電極によって導通接続されることになる。このように、励振電極に向けた導電性金属膜の形成領域が広くなるほど、電気抵抗をさらに低減させることができるので、振動効率のアップが図られる。
【0037】
上記実施形態では、圧電振動板及び支持アームを一枚の水晶基板から一体に形成されるため、断面が四角形状となっているが、前記支持アームについては、断面が四角形状のものに限らず、円形状、三角形状あるいは五角形状以上の多角形状であってもよい。いずれの形状にあっても、その外周面全面に導電性薄膜からなる配線電極を形成することで、上述したような効果が得られる。
【0038】
以上説明したように、本発明の圧電振動子は、圧電振動板に設けられる励振電極に電圧を供給するための配線電極が前記圧電振動板を支持する支持アームの全外周面を被覆したことで、電流が流れる有効面積を広くした。これによって、配線における電気抵抗値を低減させることができたので、励振電極が形成されている圧電振動板の振動効率がアップし、結果として圧電振動子に特有の等価直列抵抗値の減少が図られることになる。
【0039】
なお、上記実施形態では、幅縦・長さ縦結合モードに代表される輪郭振動型の圧電振動子を例にして励振電極に通じる支持アームの形態及びこの支持アームに形成される配線電極について説明したが、このような輪郭振動型の圧電振動子に限定されることなく、励振電極が形成された圧電振動板及びこの圧電振動板を支える支持アームのような配線電極が形成された接続を有する構造であれば、どのような振動モードの圧電振動子にも応用が可能である。
【符号の説明】
【0040】
11 圧電振動子
12 圧電振動板
13 支持アーム
14 水晶基板
14a 上面
14b 下面
14c 側面
14d 側面
14e 側面
15 支持本体部
16 支持電極部
17 第1励振電極
18 第2励振電極
19 絶縁部
21 第1配線電極
22 第2配線電極
27 パッケージ
28,29 端子電極
31 圧電振動子
32 圧電振動板
33 支持アーム
34 水晶基板
35 支持本体部
36 支持電極部
37 第1励振電極
38 第2励振電極
39 絶縁部
41 第1配線電極
42 第2配線電極
43 第1側面配線電極
44 第2側面配線電極
51 圧電振動子
52 圧電振動板
53 支持アーム
54 水晶基板
55 支持本体部
56 フレーム板
57 第1励振電極
58 第2励振電極
59 絶縁部
61 第1配線電極
62 第2配線電極
63,64 電極パッド部
71 圧電振動子
72 圧電振動板
73 支持アーム
74 水晶基板
75 支持本体部
76 フレーム板
77 第1励振電極
78 第2励振電極
79 絶縁部
81 第1配線電極
82 第2配線電極
83 第1側面配線電極
84 第2側面配線電極
85,86 電極パッド部
87,88 屈曲部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
励振電極が形成された圧電振動板と、該圧電振動板から外方向に延び、前記励振電極と電気的に導通する配線電極が形成された支持アームとを備えた圧電振動子において、
前記配線電極が前記支持アームの全外周面に形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
極性の異なる一対の励振電極を有する圧電振動板と、該圧電振動板の外周部の一端から外方向に延び、前記それぞれの励振電極と電気的に導通する配線電極が設けられる一の支持アームとを備えた圧電振動子において、
前記支持アームには、前記圧電振動板に向けて延びる絶縁領域が設けられ、この絶縁領域を挟んだ左右方向に前記一対の励振電極のそれぞれに導通する第1配線電極及び第2配線電極が形成され、前記第1配線電極及び第2配線電極が前記絶縁領域を除く支持アームの上下面及び側面の全外周面に形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項3】
極性の異なる一対の励振電極を有する圧電振動板と、該圧電振動板の外周部の二カ所以上から外方向に延び、前記励振電極と電気的に導通する配線電極がそれぞれ形成された二以上の支持アームとを備えた圧電振動子において、
前記各支持アームには、対応する極性の励振電極に導通する配線電極が上下面及び側面の全外周面に形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項4】
前記配線電極は、前記支持アームの外周面に沿って、導電性金属薄膜を被膜して形成される請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電振動子。
【請求項5】
前記支持アームが上下面と四方向の側面とを有する断面四角形状からなり、この支持アームの上下面及び四方向の側面の全ての面に前記配線電極が形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−80166(P2012−80166A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220621(P2010−220621)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000237444)リバーエレテック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】