説明

圧電振動板の周波数測定方法および圧電振動板の周波数分類方法および圧電振動板の周波数測定装置および圧電振動板の周波数分類装置。

【課題】 生産性に優れ、かつ測定における信頼性の高い圧電振動板の周波数測定方法および周波数測定装置を提供するとともに、圧電振動板の周波数分類方法および周波数分類装置を提供する。
【解決手段】 最初に下電極体31〜38の高さを測定し、動作補正情報を得る。その後パーツフィーダ1から第1の移載装置により水晶振動板Qを吸引し、インデックステーブルの搭載ステーションに位置する下電極体31の上面に順次移載する。当該測定ステーションSでは、周波数測定部が設置され、制御部の指示により、先に下電極体31に対する動作補正情報をメモリ71から読み出し、当該動作補正情報に基づく移動距離分上電極体が下電極体に近接する。非接触状態で水晶振動板Qの周波数の測定を行う。そして水晶振動板Qは排出ステーションOから第2の移載装置により収納箱に移載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はATカット水晶振動板等の圧電振動板の周波数測定方法および周波数測定装置に関するとともに、当該測定結果に応じて圧電振動板を分類・選別する、圧電振動板の周波数分類方法および周波数分類装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ATカット水晶振動板は、その厚さに周波数が依存することが知られており、所定の厚さに平面研磨することにより所望の周波数を得ている。しかしながら製造ばらつきによりその厚さすなわち周波数がばらつくことは実務上不可避であり、励振電極形成工程前に素板状態での周波数を測定し、周波数帯毎にグループ化し、そしてグループ毎に励振電極形成量(厚さ)を決定することが行われていた。
【0003】
素板状態での周波数測定は、例えば特開平11−142456号(特許文献1)に示すように、下部電極上に載せた圧電共振子に対し上部電極を非接触で近接させエアギャップ方式にて測定を行うことが知られている。このような測定はギャップ(近接距離)によってもその精度が異なってくるので、適切なギャップを設定することが重要であり、特許文献1においては上部電極の上部に設けられたマイクロメータにより上部電極を手動にて上下動させギャップを調整していた。
【0004】
図4はこのようなマイクロメータを装備した周波数測定装置9を示す図であり、インデックステーブル上に形成された下電極体36に搭載された圧電振動板Qに対して上電極体93を近接させ、所定のギャップLを有した状態で周波数測定を行う。ギャップの調整は装置上部に設けられたマイクロメータ91により行っていた。
【0005】
ところでこのような調整方法は上部電極と下部電極が一対で構成しているときは最初の設定で上部電極の下降位置を決定することによりギャップの調整が可能である。しかしながら、例えばインデックステーブルに複数の下部電極が設けられた構成のように、1つの上部電極に対し複数の下部電極が可動状態で対応する構成においては、下部電極の高さばらつきが考えられるので上部電極の降下位置を特定することが困難であった。
【0006】
このような不具合を排除する構成として、特開2004−191079(特許文献2)が考えられている。当該発明は各ステージにおける周波数測定誤差を予め測定することにより、ステージ毎の補正値を得ておき、ギャップ寸法にばらつきがあったとしても当該補正値を演算することによりステージのばらつきを排除するものである。このような方法は平面的に回転するインデックステーブルに下電極体を複数設けた構成において、非常に有効であり生産性および信頼性を向上させる方法であった。しかしながら高周波に対応するため圧電振動板の厚さがより小さくなった場合、直列共振抵抗値や振幅のばらつきが大きくなり、正確な測定が行えないことがあった。
【特許文献1】特開平11−142456号
【特許文献2】特開2004−191079号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、生産性に優れ、かつ測定における信頼性の高い圧電振動板の周波数測定方法および周波数測定装置を提供するとともに、圧電振動板の周波数分類方法および周波数分類装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下電極体が基板に複数設けられた構成において、予め各下電極体毎の高さ情報(上面の高さ位置)を得ておき、各下電極体毎に上電極体とのギャップ(近接距離)を動的に調整するものであり、次の各方法および装置により実現できる。

【0009】
請求項1は、下電極体が基板上に複数設けられ、当該下電極体に搭載された圧電振動板に対し、上電極体を近接させた状態で当該圧電振動板の周波数を測定する圧電振動板の周波数測定方法であって、
前記基板に設けられたそれぞれの下電極体の高さを測定し、当該高さ情報を前記上電極体が下電極体へ近接する際の動作補正情報として取得する工程と、前記下電極体に搭載された圧電振動板に対し、上電極体を前記動作補正情報に基づき圧電振動板に近接させることにより、両電極体のギャップを一定に保った状態で圧電振動板の周波数を測定する工程と、を有する圧電振動板の周波数測定方法を特徴としている。
【0010】
このような製造方法は、平面的に回転するインデックステーブルを用いた基板に適しており、請求項2に示すように、平面的に回転するインデックステーブルに複数の下電極体が形成され、当該下電極体に搭載された圧電振動板に対し、上電極体を近接させた状態で当該圧電振動板の周波数を測定する圧電振動板の周波数測定方法であって、
前記インデックステーブルに設けられた下電極体のそれぞれの高さを測定し、当該それぞれの高さ情報に基づき上電極体が各下電極体とのギャップを一定に保つべく上電極体の移動距離を決定した動作補正情報として取得する工程と、前記下電極体に搭載された圧電振動板に対し、前記動作補正情報に基づき上電極体を動作させることにより、上電極体と下電極体のギャップを一定に保った状態で圧電振動板の周波数を測定する工程と、を有する圧電振動板の周波数測定方法であってもよい。
【0011】
下電極体と上電極体のギャップは大きすぎても小さすぎても圧電振動板の測定に悪影響を及ぼし、例えば0.1mm程度が好ましいが、この寸法は圧電振動板の周波数によっても異なり、微調整を行うことが好ましい。また下電極体の高さ情報は上電極体が下電極体に近接する際の動作補正情報として用いられ、前記最適なギャップになるように上電極体の移動量が決定される。
【0012】
また請求項3に示すように、下電極体が基板上に複数設けられ、当該下電極体に搭載された圧電振動板に対し、上電極体を近接させた状態で当該圧電振動板の周波数を測定する圧電振動板の周波数測定方法であって、
前記基板に設けられたそれぞれの下電極体に圧電振動板を搭載した状態で上電極体を漸次近接または離間させながら励振電圧を印加し、圧電振動板の主振動の発振波形が最大となる位置にギャップを調整する工程と、各々の下電極体に対して調整された上電極体との前記ギャップにより、圧電振動板の周波数を測定する工程と、を有する圧電振動板の周波数測定方法であってもよい。
【0013】
主振動の発振波形が最大(ピーク)となる位置を得ることにより、周波数測定時において他のスプリアス振動との誤認識を回避することができる。
【0014】
ところで上電極体は上昇下降自在にリアルタイムに行うことが好ましく、例えば請求項4に示すように上電極体の動作が電動アクチュエータにより行われる。
【0015】
また請求項5に示すように、前記インデックステーブルに設けられた下電極体のそれぞれの高さを測定する方法は、電動アクチュエータに取着された上電極体が下電極体に接触した時点における上電極体の位置データにより測定するか、または近接センサで両電極体の接触を検出した時点の上電極体の位置データにより測定した方法をあげることができる。
【0016】
さらに請求項6は下電極体と上電極体のギャップをより適切に調整する方法について開示しており、前記両電極体のギャップを調整するにあたり、下電極体に圧電振動板を搭載した状態で励振電圧を印加し、上電極体を漸次近接または離間させながら圧電振動板の主振動の発振波形が最大となる位置にギャップ調整する工程を付加したことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項4または請求項5のいずれかに記載の圧電振動板の周波数測定方法について示している。主振動の発振波形がピークとなる位置を得ることにより、周波数測定時において他のスプリアス振動との誤認識を回避することができる。
【0017】
本発明は上述の周波数測定の結果、これを所定の周波数毎に分類(選別)する方法についても提案しており、請求項7に示すように、請求項1乃至請求項6のいずれかにより圧電振動板の周波数測定を行った後、圧電振動板を所定の周波数帯毎に分類し、分類箱に格納したことを特徴とする圧電振動板の周波数分類方法、についても開示している。
【0018】
高精度な測定に基づいて分類を行うことにより、分類時のばらつきを極力抑制することができ、後工程の励振電極形成時のばらつきを抑制し、またパーシャル蒸着等の後工程での周波数調整作業をスムースに行うことができる。
【0019】
請求項8は周波数測定装置に関するものであり、表面に複数の下電極体が形成され、平面的に回転する機構を有するインデックステーブルと、搭載ステーションにおいて、当該インデックステーブルの各下電極体に順次圧電振動板を搭載する第1の移載装置と、測定ステーションにおいて、前記インデックステーブルの下電極体に搭載された圧電振動板に上電極体を近接させた状態で励振電圧を印加し、圧電振動板の周波数を測定する周波数測定部と、排出ステーションにおいて、前記インデックステーブルの周波数測定後の圧電振動板をインデックステーブルから排出する第2の移載装置とを具備してなる圧電振動板の周波数測定装置であって、
前記周波数測定部は、前記インデックステーブルに設けられた下電極体のそれぞれの高さを測定し、当該それぞれの高さ情報に基づいて前記下電極体が上電極体へ近接させる際の動作補正情報を得る制御部と、当該動作補正情報に基づき下電極体それぞれと上電極体のギャップを一定に保つべく上電極体を移動させる電動アクチュエータを有することを特徴とする圧電振動板の周波数測定装置、について開示している。
【0020】
平面的に回転するインデックステーブルに形成された下電極体の高さ情報に基づく動作補正情報によって、電動アクチュエータで対応する下電極体毎に上電極体の動作位置を決定するので、両電極体間の適切なギャップを得ることができる。
【0021】
また請求項9に示すように、前記周波数測定部において下電極体に圧電振動板を搭載した状態で励振電圧を印加し、上電極体を漸次近接または離間させることによりギャップを変動させ、圧電振動板の発振波形が最大となる位置にギャップを調整する調整機構を付加したことを特徴とする請求項8記載の圧電振動板の周波数測定装置により、圧電振動板の周波数毎のより適切なギャップを精度よく求めることができる。なお、電動アクチュエータは例えばステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターを用いたものをあげることができるが、0.005mm単位での上下動の調整精度を得ることができる。
【0022】
さらに請求項10に示すように、表面に複数の下電極体が形成され、平面的に回転する機構を有するインデックステーブルと、搭載ステーションにおいて、当該インデックステーブルの各下電極体に順次圧電振動板を搭載する第1の移載装置と、測定ステーションにおいて、前記インデックステーブルの下電極体に搭載された圧電振動板に上電極体を近接させた状態で励振電圧を印加し、圧電振動板の周波数を測定する周波数測定部と、排出ステーションにおいて、前記インデックステーブルの周波数測定後の圧電振動板をインデックステーブルから排出する第2の移載装置とを具備してなる圧電振動板の周波数測定装置であって、
前記周波数測定部は、前記インデックステーブルに設けられた下電極体に圧電振動板を搭載した状態で上電極体を漸次近接または離間させながら励振電圧を印加し、圧電振動板の主振動の発振波形が最大となる位置に対応する動作補正情報を得る制御部と、当該動作補正情報に基づき下電極体それぞれと上電極体のギャップを一定に保つべく上電極体を移動させる電動アクチュエータを有することを特徴とする圧電振動板の周波数測定装置であってもよい。当該構成により、主振動の発振波形がピークとなる位置を得ることができ、周波数測定時において他のスプリアス振動との誤認識を回避することができる。
【0023】
請求項11は請求項8乃至10に開示した周波数測定装置に周波数分類機能を付加した構成であり、前述の圧電振動板の周波数測定装置による測定結果に基づいて、圧電振動板を所定の周波数帯分類毎に分類する分類部と、分類された圧電振動板を格納する格納箱を有したことを特徴とする圧電振動板の周波数分類装置である。
【0024】
高精度な測定に基づいて分類を行うことにより、分類時のばらつきを極力抑制することができ、後工程の励振電極形成時のばらつきを抑制し、またパーシャル蒸着等の後工程での周波数調整作業をスムースに行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、下電極体が基板に複数設けられた構成において、予め各下電極体毎の高さ情報(上面の高さ位置)を得ておき、各下電極体毎に上電極体とのギャップ(近接距離)を動的に調整することにより、生産性に優れ、かつ測定における信頼性の高い圧電振動板の周波数測定方法および周波数測定装置を提供するとともに、圧電振動板の周波数分類方法および周波数分類装置を得ることができる。
【0026】
特に高周波に対応した薄型圧電振動板の周波数測定において、直列共振抵抗値や振幅のばらつきが抑制され、正確な測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態について、圧電振動板としてATカット水晶振動板の測定方法を例にとり図面とともに説明する。図1は本実施の形態に係る製造装置の概略構成図であり、図2は周波数測定部の断面図、図3は図1における製造装置のシステム構成を示す図である。
【0028】
図1において1はパーツフィーダ、2は第1の移載装置、3はインデックステーブル、4は周波数測定部、5は第2の移載装置、6は収納箱、Qは水晶振動板(圧電振動板)である。
【0029】
水晶振動板Qは平行平面研磨により薄板に加工された矩形状のATカット水晶振動板であり、パーツフィーダ1により個別に供給される。
【0030】
パーツフィーダ1は投入された多数個の水晶振動板Qを整列して排出口12へ供給する装置であり、すり鉢状の容器11にらせん状の流路を形成し(図示せず)、容器11に微小振動を与えることにより、ランダムに投入された水晶振動板Qが排出口12に順次押し出される構成である。なお、パーツフィーダに代えて例えばマトリクス状の水晶振動板収納室を有するパレットからインデックステーブルに供給する方式であってもよい。
【0031】
パーツフィーダの排出口12に送られた水晶振動板Qは第1の移載装置2により取り出される。第1の移載装置2は基体20に対して平面視直角の方向に伸長する位置にアーム21が取着され、当該アーム2は基体20に対して直角方向(X方向)と基体に沿う方向(Y方向)に動作するとともに、上下方向(Z方向)にも動作し、3次元的な動作が可能となっている。アーム21は図示しない電動アクチュエータにより動作し、当該電動アクチュエータは後述する第1移載制御部の指令により動作する。アーム21の先端部分には水晶振動板Qを吸引する吸引口21aが形成されている。当該吸引機構は例えば負圧のエアを供給または停止することにより、吸引または吸引解除を行う。なお、第1の移載装置において、水晶振動板Qをピックアップする方法は前述の吸引による方法のみならず、例えば水晶振動板の外周を把持するチャッキングであってもよい。これは第2の移載装置においても同様である。
【0032】
水晶振動板Qが第1の移載装置によって移載されるインデックステーブル3は平面で見て円板形状であり、その表面の外周領域には下電極体31,32,33,34,35,36,37,38が所定の等間隔を保って全周に渡って設けられている。当該下電極体は円柱形状の導電セラミックスからなり、その上面はインデックステーブル上面とほぼ平行な平面を有している。また各下電極体は絶縁体を介してインデックステーブルに固定されており、各々電気的に独立した状態で通電可能となっている。なお下電極体で用いる導電セラミックスは金属に較べて耐摩耗性に優れ、硬質な水晶による摩耗を防ぐことができ、また金属と同様、上部面をポリッシュ加工することにより、平行で平滑な平面を得ることができる。
【0033】
また当該インデックステーブル3において、パーツフィーダから移載される場所は供給ステーションIとなり、また供給ステーションIの対面には排出ステーションOが形成されている。また周波数測定部4の配置位置は測定ステーションSとなる。
【0034】
ところでインデックステーブル3は平面的に回転駆動可能となっており、当該回転は例えばサーボモータで駆動される。サーボモータはインデックステーブル駆動制御部からのパルス信号で駆動し、回転速度、回転量等を制御するが、これによりインデックステーブル3を任意の設定で動作させることができる。本実施の形態においては、下電極体を均等な間隔を持って8つ設けているので、周波数測定実行時には45度づつ間欠的に回転を行う。この回転量は周波数測定以外の必要な製造工数がある場合等によって任意に設定することができ、サーボモータへの制御信号により調整することができる。もちろん下電極体を90度毎にインデックステーブルに配置した4つの構成であってもよく、この場合は90度毎の回転量となる。
【0035】
このようなインデックステーブル3には供給ステーションIから時計回りに90度回転したところに、周波数測定部4が配置され、また排出ステーションOから時計回りに90度回転したところに、排出確認部45が配置されてた確認ステーションCが設けられている。
【0036】
周波数測定部4は電動アクチュエータ41と電動アクチュエータ41によって上下動する絶縁体42と上電極体43とを有する。上部電極体43は例えば銅、真鍮、SK材等からなる導電性の良好な材料が用いられ、下電極体との対向面は平行を保つことができるよう平行平面が形成されている。上電極体43は下電極体とともに適切なギャップが構成され、下電極体の上面に圧電振動板を配置することにより、エアギャップ方式にて圧電振動板の周波数を測定する。
【0037】
電動アクチュエータ41は外部からの制御信号により所定量の動作を行う構成であり、例えばステッピングモータによる回転運動をボールねじとカップリングにより直線運動させる構成や、あるいはサーボモーターとエンコーダとボールねじとカップリングによる構成や、あるいは圧電素子を用いた超音波モータにより所定量の動作を行わせる構成をあげることができる。本実施の形態ではステッピングモータとボールねじとカップリングによるアクチュエータを用いており、上電極体43は電動アクチュエータ41により高速かつ高精度に上下動作する。なお、ステッピングモータを用いた場合は、オープンループ型で一方通行的な制御になるが、近年はモータの基本ステップ角の小さいものを採用したり、脱調レス機能を付加すること等により、精度を向上させることができる。またサーボモータを用いた場合は、クローズドループ型での回転位置を検出するエンコーダを高分解能なものにすることにより、より高精度の位置決めを行うことができる。
【0038】
第2の移載装置5はインデックステーブル3の排出ステーションOに送られた水晶振動子Qを収納箱に移載する機能を有している。当該第2の移載装置も第1の移載装置と同じく、基本的にはアーム51の先端部分には水晶振動板Qを吸引する吸引口51aが形成されており、当該吸引機構は例えば負圧のエアを供給または停止することにより、吸引または吸引解除を行う。当該アーム51は基体50に対して直角方向(X方向)と基体に沿う方向(Y方向)に動作するとともに、上下方向(Z方向)にも動作し、3次元的な動作が可能となっている。これにより排出ステーションOにある水晶振動板Qをアーム51の吸引口51aにより吸引し、上部方向へ移動後、XY方向に移動し、さらに下方向に移動して吸引を解除し収納箱6の所定の場所に移載する。
【0039】
収納箱6は樹脂または金属からなり、周波数測定後の水晶振動板Qを収納するポケットをマトリクス状に有する構成である。本実施の形態においては各ポケットが所定の周波数帯毎に分けられており、前述の周波数測定結果に応じて所定のポケットに水晶振動板Qを収納する。従って、測定の結果同じ周波数帯の水晶振動板は同じポケットに収納されることになる。
【0040】
なお、水晶振動板をマトリクス状のポケットに測定順に順次1枚ずつ収納してもよい。この場合、収納箱のポケットの位置で水晶振動板の周波数を特定できるので、ポケットの位置データと周波数データを次工程が引き継ぐことにより、水晶振動板に対し個別に電極形成等の加工を行う際に有効である。
【0041】
排出確認部45は、確認ステーションCの工程部分に設けられ、排出ステーションOにより下電極体上面から排出されなかった水晶振動板Qを吸引チューブバルブにより強制的に排出する。
【0042】
図3は本実施の形態による制御システムを示している。図3における制御システムは、例えばCPUからなる中央制御部70に各機構の制御部が接続される構成であり、第1の移載装置2は第1の移載制御部72を介して、第2の移載装置5は第2の移載制御部73を介してそれぞれ中央制御部70に接続されている。それぞれの移載制御部は各移載装置移動動作、移動量、吸引動作等を制御する。またインデックステーブル3はインデックステーブル駆動制御部74を介して、周波数測定部4と電動アクチュエータ41は制御部75を介して、それぞれ中央制御部に接続されている。また中央制御部70には周波数測定データ等を記憶するメモリ71が接続されている。
【0043】
次に本装置を用いて水晶振動板Qの周波数を測定し、その測定結果に基づいて所定の周波数に分類する動作例について図1乃至図3を参照して説明する。
【0044】
まず水晶振動板をインデックステーブルの下電極体に搭載する前に下電極体31〜38の高さを測定する。高さの測定は電動アクチュエータ41に取着された上電極体43が下電極体に接触した時点における、上電極体43の位置データ(高さデータ)により測定する。なお接触の判定例として両電極体の短絡によって判定する方法や、上電極体に取着された圧力センサにより判定する方法等を例示することができる。
【0045】
測定された位置データは各下電極体毎にメモリに取り込まれ、予め設定した上電極体と下電極体のギャップに対して、上電極体が下電極体に近接する際の補正された移動距離情報を中央制御部70あるいは制御部75にて算出する。例えばギャップは0.1mm程度が好ましいが、このギャップを維持するために上記位置データを加味して上電極体の移動距離を決定し、動作補正情報となる。このように各下電極体毎の上電極体の動作補正情報がメモリ71に格納される。
【0046】
なお、両電極体のギャップを調整するにあたり、各下電極体に水晶振動板を搭載した状態で周波数を掃引しながら励振電極を印加し、上電極体43を電動アクチュエータ41により漸次近接または離間させ、水晶振動板の主振動の周波数応答が最大(発振波形が最大)となる位置にギャップ調整してもよい。
【0047】
このような調整は上述の下電極体の高さを測定し、動作補正情報により両電極体間のギャップを一定に保つ周波数測定方法に付加して行ってもよいし、このような主振動の発振波形が最大となる位置にギャップを調整する方法のみにより最適ギャップを求めてもよい。なおこのような後者による方法により最適ギャップを求める場合、周波数の特定されている基準水晶振動板を用いることにより、その後の周波数測定作業においてより精度の高い測定結果を得ることができる。
【0048】
以上、周波数測定前の初期設定により、両電極体間のギャップが測定対象の周波数等に最適な状態に保つことができる。
【0049】
次に、水晶振動板の周波数測定作業を行う。まずパーツフィーダ1には多数個の水晶振動板Qを投入し、これによりパーツフィーダ1の搬送動作により排出口12に順次水晶振動板Qが送られる。第1の移載装置2は第1の移載制御部72の指令により、アーム21により排出口にある水晶振動板Qを吸引し、搭載ステーションに位置する下電極体31の上面に順次移載する。
【0050】
インデックステーブル3はインデックステーブル駆動制御部74の指示により、サーボモータが駆動し、時計回りである矢印B方向に間欠的な回転動作が行われる。インデックステーブル3が間欠的に回転することにより、次の下電極体32が搭載ステーションに位置すると順次下電極体に水晶振動板Qが移載される。
【0051】
下電極体31に搭載された水晶振動板Qが搭載ステーションから2段階間欠回転すると測定ステーションSに移動する。当該測定ステーションSでは、周波数測定部が設置され、制御部の指示により、先に下電極体31に対する動作補正情報をメモリ71から読み出し、当該動作補正情報に基づく移動距離分上電極体が下電極体に近接する。この近接あるいは離間動作は制御部75からの命令により電動アクチュエータが動作することにより行われる。この非接触状態で両電極体間に所定周波数の電圧を印加することにより、エアギャップ方式により水晶振動板Qの周波数の測定を行う。測定された周波数データは中央制御部を介してメモリに転送され、周波数毎に定められた収納箱6のポケット位置が決定される。
【0052】
水晶振動板Qが測定ステーションSからさらに2段階間欠回転すると排出ステーションOに移動する。排出ステーションOにおいては第2の移載装置により下電極体上面の水晶振動板Qが収納箱に移載される。この第2の移載装置は中央制御部からの周波数測定データに基づいて第2移載制御部の指令により動作し、下電極体上面にある水晶振動板をアーム51により吸引し、3次元動作により、収納箱の周波数帯毎に定められたポケットに移載される。なお、収納箱が平面的に移動することにより、移載するポケットを特定する構成であってもよい。
【0053】
この後インデックステーブル3は順次回転し、下電極体31が確認ステーションCに移動した際に排出確認部45により、当該下電極体に残っている水晶振動板Qがあれば吸引チューブバルブにより強制的に排出される。
【0054】
このような一連の動作をパーツフィーダ1から供給された水晶振動板Qについて順次行うことにより、水晶振動板の周波数測定と周波数分類を進める。
【0055】
上記実施の形態において、1つの下電極体に複数の水晶振動板(圧電振動板)を搭載してもよい。例えば1つの下電極体に2つの水晶振動板を所定の間隔をもって並列に並べて搭載し、周波数測定時には各々の水晶振動板に上電極体を順次近接させ、周波数測定を行う。従って、下電極体を次のステージに移動させるときはインデックステーブルの回転量を大きくし、下電極体に並列された隣接する水晶振動板を移動させる場合は、インデックステーブルの回転量を微少にする。
【0056】
また下電極体の高さ測定は、測定対象の圧電振動板の周波数帯が変わった時点で行ってもよいが、最初の高さの測定により、個々の下電極体の高さ位置が判明しているので、その高さ位置と新たな周波数帯のデータを参照することにより、上電極体の移動距離を求めてもよい。
【0057】
また本実施の形態においては、ATカット水晶振動板の製造例について説明したが、他の厚み振動系圧電振動板の測定に適用してもよく、例えばセラミック振動子等の製造に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
水晶振動子、水晶発振器等の圧電振動デバイスあるいは他の電子部品の量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明による実施の形態を示す平面図
【図2】本発明による実施の形態を示す図1のA−A断面図
【図3】本発明によるシステム構成を示す図
【図4】従来例を示す図
【符号の説明】
【0060】
1 パーツフィーダ
2 第1の移載装置
3 インデックステーブル
31,32,33,34,35,36,37 下電極体
4 周波数測定部
41 電動アクチュエータ
43 上電極体
5 第2の移載装置
6 収納箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下電極体が基板上に複数設けられ、当該下電極体に搭載された圧電振動板に対し、上電極体を近接させた状態で当該圧電振動板の周波数を測定する圧電振動板の周波数測定方法であって、
前記基板に設けられたそれぞれの下電極体の高さを測定し、当該高さ情報を前記上電極体が下電極体へ近接する際の動作補正情報として取得する工程と、
前記下電極体に搭載された圧電振動板に対し、上電極体を前記動作補正情報に基づき圧電振動板に近接させることにより、両電極体のギャップを一定に保った状態で圧電振動板の周波数を測定する工程と、
を有する圧電振動板の周波数測定方法。
【請求項2】
平面的に回転するインデックステーブルに複数の下電極体が形成され、当該下電極体に搭載された圧電振動板に対し、上電極体を近接させさせた状態で当該圧電振動板の周波数を測定する圧電振動板の周波数測定方法であって、
前記インデックステーブルに設けられた下電極体のそれぞれの高さを測定し、当該それぞれの高さ情報に基づき上電極体が各下電 極体とのギャップを一定に保つべく上電極体の移動距離を決定した動作補正情報として取得する工程と、
前記下電極体に搭載された圧電振動板に対し、前記動作補正情報に基づき上電極体を動作させることにより、上電極体と下電極体のギャップを一定に保った状態で圧電振動板の周波数を測定する工程と、
を有する圧電振動板の周波数測定方法。
【請求項3】
下電極体が基板上に複数設けられ、当該下電極体に搭載された圧電振動板に対し、上電極体を近接させた状態で当該圧電振動板の周波数を測定する圧電振動板の周波数測定方法であって、
前記基板に設けられたそれぞれの下電極体に圧電振動板を搭載した状態で上電極体を漸次近接または離間させながら励振電圧を印加し、圧電振動板の主振動の発振波形が最大となる位置にギャップを調整する工程と、
各々の下電極体に対して調整された上電極体との前記ギャップにより、圧電振動板の周波数を測定する工程と、
を有する圧電振動板の周波数測定方法。
【請求項4】
上電極体の動作が電動アクチュエータにより行われることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の圧電振動板の周波数測定方法。
【請求項5】
前記インデックステーブルに設けられた下電極体のそれぞれの高さを測定する方法が、電動アクチュエータに取着された上電極体が下電極体に接触した時点における上電極体の位置データにより測定するか、または近接センサで両電極体の接触を検出した時点の上電極体の位置データにより測定したことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項4に記載の圧電振動板の周波数測定方法。
【請求項6】
前記両電極体のギャップを調整するにあたり、下電極体に圧電振動板を搭載した状態で励振電圧を印加し、上電極体を漸次近接または離間させながら圧電振動板の主振動の発振波形が最大となる位置にギャップ調整する工程を付加したことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項4または請求項5のいずれかに記載の圧電振動板の周波数測定方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかにより圧電振動板の周波数測定を行った後、圧電振動板を所定の周波数帯毎に分類し、分類箱に格納したことを特徴とする圧電振動板の周波数分類方法。
【請求項8】
表面に複数の下電極体が形成され、平面的に回転する機構を有するインデックステーブルと、
搭載ステーションにおいて、当該インデックステーブルの各下電極体に順次圧電振動板を搭載する第1の移載装置と、
測定ステーションにおいて、前記インデックステーブルの下電極体に搭載された圧電振動板に上電極体を近接させた状態で励振電圧を印加し、圧電振動板の周波数を測定する周波数測定部と、
排出ステーションにおいて、前記インデックステーブルの周波数測定後の圧電振動板をインデックステーブルから排出する第2の移載装置とを具備してなる圧電振動板の周波数測定装置であって、
前記周波数測定部は、前記インデックステーブルに設けられた下電極体のそれぞれの高さを測定し、当該それぞれの高さ情報に基づいて前記下電極体が上電極体へ近接させる際の動作補正情報を得る制御部と、当該動作補正情報に基づき下電極体それぞれと上電極体のギャップを一定に保つべく上電極体を移動させる電動アクチュエータを有することを特徴とする圧電振動板の周波数測定装置。
【請求項9】
前記周波数測定部において下電極体に圧電振動板を搭載した状態で励振電圧を印加し、上電極体を漸次近接または離間させることによりギャップを変動させ、
圧電振動板の発振波形が最大となる位置にギャップを調整する調整機構を付加したことを特徴とする請求項8記載の圧電振動板の周波数測定装置。
【請求項10】
表面に複数の下電極体が形成され、平面的に回転する機構を有するインデックステーブルと、
搭載ステーションにおいて、当該インデックステーブルの各下電極体に順次圧電振動板を搭載する第1の移載装置と、
測定ステーションにおいて、前記インデックステーブルの下電極体に搭載された圧電振動板に上電極体を近接させた状態で励振電圧を印加し、圧電振動板の周波数を測定する周波数測定部と、
排出ステーションにおいて、前記インデックステーブルの周波数測定後の圧電振動板をインデックステーブルから排出する第2の移載装置とを具備してなる圧電振動板の周波数測定装置であって、
前記周波数測定部は、前記インデックステーブルに設けられた下電極体に圧電振動板を搭載した状態で上電極体を漸次近接または離間させながら励振電圧を印加し、圧電振動板の主振動の発振波形が最大となる位置に対応する動作補正情報を得る制御部と、当該動作補正情報に基づき下電極体それぞれと上電極体のギャップを一定に保つべく上電極体を移動させる電動アクチュエータを有することを特徴とする圧電振動板の周波数測定装置。
【請求項11】
請求項8または請求項9または請求項10の圧電振動板の周波数測定装置による測定結果に基づいて、圧電振動板を所定の周波数帯分類毎に分類する制御部と、分類された圧電振動板を格納する格納箱を有したことを特徴とする圧電振動板の周波数分類装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−292630(P2006−292630A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116088(P2005−116088)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】