説明

圧電特性傾斜構造を有する圧電体、その製造方法、制振構造体及び振動制御方法

【課題】 制振性を向上させた制振材料を提供するとともに、アクティブ(能動的)制御で制振できるような制振機構を提供する。
【解決手段】 平板状の圧電体であって、圧電歪定数の平板状の面内分布が不均一で傾斜している圧電特性傾斜構造を有する圧電体、及び該圧電特性傾斜構造を有する圧電体を制振機構として備えた制振構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制振機構として好適な圧電体に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、電気、機械、化学、建築土木、運輸等の広範囲な分野において有用な、制振性が高くアクティブ(能動的)制御で制振できる制振構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、振動を効果的に減衰させる方法として、材料に粘弾性層をサンドイッチした制振鋼板や、吸振合金等が知られている。しかしながら、この従来の材料の場合には、ある程度の振動減衰効果が得られるものの、吸振鋼板の場合には、鋼板からの剥離や加工性などの点で問題があり、吸振合金の場合には、熱処理費用が高く、加工による減衰能の劣化などの問題点があった。
【0003】
このような欠点を解消するものとして、圧電セラミックスを利用した制振材料が提案されており、たとえば、導電性物質または半導電性物質から選ばれた少なくともひとつの物質と、圧電セラミックスおよびポリマーとからなるエネルギー変換組成物であって、該組成物に印加された力学的振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、さらに熱エネルギーに変換して放散することを特徴とする制振材料がすでに知られている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、導電性物質及び半導電性物質の群から選ばれた少なくとも1種の物質と、圧電セラミックス及びポリマーとからなる圧電セラミック複合系の制振材料が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−240298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された圧電セラミック複合系の制振材料は圧電セラミック粒子をポリマー中に分散させた構造であり、圧電歪定数(d)が低いため、更に制振性を向上させた制振材料の開発が望まれるとともに、パッシブ(受動的)制御ではなくアクティブ(能動的)制御で制振できるような制振機構が望まれていた。
【0007】
具体的には下記のような課題があった。
・圧電歪定数分布を平板状圧電体の面内方向に形成させる簡便な手法がない。
・対象とする振動モード(Target)における減衰効率を向上させる必要がある。
・広い周波数領域(Broadband)における減衰効率を向上させる必要がある。
・制御システムの回路構成を簡略化する必要がある。
・制御システムにおけるパラメータ設定許容範囲を拡大し、制御ソフトウェアを簡略化する必要がある。
【0008】
上記課題が発生する理由としては下記のような点が考えられる。
・圧電歪定数を面内方向に分布形成させた圧電体による利点(振動減衰効率の向上)が見出されていなかった。
・振動構造体における変位歪分布とそれを抑制する圧電体の駆動歪分布の間に不整合が生じ、減衰効率を低下させる要因となっていた。
・圧電体を複数設置することにより減衰効率の向上を図っていた。
・高度な制御アルゴリズム(ソフトウェア)を駆使して減衰効率の向上を図っていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、圧電体の圧電特性を傾斜構造とすることによって上記課題が解決されることを見出し本発明に到達した。
【0010】
第1に、本発明は、平板状の圧電体の発明であり、圧電歪定数の平板状の面内分布が不均一で傾斜していることを特徴とする。即ち、平板状の圧電体の高い圧電歪定数の部分から低い圧電歪定数の部分へと圧電特性が傾斜構造を有する。
【0011】
圧電特性傾斜構造を有する圧電体の具体例としては、
(1)厚さを傾斜させた圧電体に分極処理を施すことにより、圧電特性の傾斜構造を形成させた圧電体の厚さを切削により均一な厚さにした圧電特性傾斜構造を有する圧電体。
(2)均一な厚さの圧電体と、厚さを傾斜させた圧電体又は誘電体(テンプレート)を積層させた後に、これら積層物に分極処理を施すことにより、圧電特性の傾斜構造を形成させた圧電体積層物の、該厚さを傾斜させた圧電体または誘電体(テンプレート)を、分極処理後取り除くことにより均一な厚さにした圧電特性傾斜構造を有する圧電体。
【0012】
本発明の圧電特性傾斜構造を有する圧電体は、圧電歪定数(d)が高いため、制振性が向上するとともに、従来のパッシブ(受動的)制御ではなくアクティブ(能動的)制御で制振が可能である。
【0013】
圧電体材料としては、圧電セラミックス材料又は圧電高分子材料が好ましく特に制限されない。具体的には、圧電セラミックス材料として、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、メタニオブ酸鉛(PbNb)から選択される一種以上が好ましく例示される。又、圧電高分子材料として、ポリフッ化ビニリデンの単独重合体、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体から選択される一種以上のフッ素系高分子材料が好ましく例示される。
【0014】
第2に、本発明は、上記圧電特性傾斜構造を有する圧電体の製造方法の発明であり、
(1)厚さを傾斜させた圧電体に分極処理を施すことにより、圧電特性の傾斜構造を形成する。(単層型分極法)
(2)均一な厚さの圧電体と、厚さを傾斜させた圧電体又は誘電体(テンプレート)を積層させた後に、これら積層物に分極処理を施すことにより、圧電特性の傾斜構造を形成する。(積層型分極法)
【0015】
第3に、本発明は、上記圧電特性傾斜構造を有する圧電体の製造方法から派生する発明であり、均一な厚さの圧電体と、厚さを傾斜させた圧電体又は誘電体(テンプレート)を積層させた後に、これら積層物に分極処理を施すことにより、圧電特性の傾斜構造を形成させた圧電体積層物の、該厚さを傾斜させた圧電体または誘電体(テンプレート)を、分極処理後取り除くことにより均一な厚さにし、該取り除かれた圧電体または誘電体に、キュリー点以上の温度を与えて脱分極処理を施し、圧電特性傾斜構造の形成に繰り返し使用するリサイクル方法である。
【0016】
第4に、本発明は、上記圧電特性傾斜構造を有する圧電体と、該圧電体を上下に挟む駆動用電極からなる制振機構を備えた制振構造体である。制振機構はアクティブ(能動的)に用いることが可能である。制振構造体の目的・用途に制限はなく、電気、機械、化学、建築土木、運輸等の広範囲な分野に適用される。例えば、自動車のハンドル、シート、エンジンマウント、ドライブシャフトや航空機の室内内装部品の振動防止、騒音防止等に役立つ。
【0017】
ここで、圧電特性傾斜構造を有する圧電体は単層で制振機構として用いられるだけでなく、これを積層して制振機構とすることも効果的である。又、圧電特性傾斜構造を有する圧電体と、該圧電体を上下に挟む駆動用電極からなる制振機構は制振対象物に1個貼付するだけでなく、複数個貼付することも複数の振動モードを有する複雑な振動系に有効である。
【0018】
第5に、本発明は、振動制御方法の発明であり、上記圧電特性傾斜構造を有する圧電体と、該圧電体を上下に挟む電極からなる制振機構を備えた制振構造体において、該圧電体に作用させる駆動電圧及び/又は駆動位相を制御する。これにより、複雑なアルゴリズムを必要とせずにアクティブ(能動的)制御で減衰効率の向上した制振が可能となる。具体的には、
(1)制振対象となる振動モードの歪(変位)分布と合致した圧電特性分布を有する前記圧電体を構造体に設置する。
(2)制振対象となる任意の振動モードの歪(変位)分布と合致した圧電特性分布を有する圧電体を、他の振動モードの制振に最適な位置に設置する。
ことが好ましい。ここで、振動モードとしては1次又は3次モードがある。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、平板状の圧電セラミックスにおいて圧電歪定数等の面内分布を任意に形成させることが可能となった。この手法では、分極方向の厚さを傾斜させた(分布をもたせた)圧電体に対して分極処理を施し、各部位での厚さに応じて分極電界が分布することによって圧電特性の分布構造が形成できる。
【0020】
又、本発明により、構造体に設置した圧電体に駆動電圧を与えるアクティブ振動制御が可能となり、抑えたい振動の歪分布に合わせて圧電歪定数に傾斜分布をもたせた圧電体は、従来の均一分布な圧電体よりも高い振動減衰効率をもたらすことが見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1に、本発明の圧電特性傾斜構造を有する機能圧電体の模式図を示す。ここで、圧電歪定数d31は電圧を与えた時に得られる歪の大きさであり、図1に示されるように、圧電歪定数d31は高い部位から低い部位へ傾斜構造(分布)を有している。なお、図1で、圧電体の上面と下面は駆動用電極である。
【0022】
図2は、本発明の圧電特性傾斜構造を有する機能圧電体の製造法の1つである単層型分極法を示す。厚さを傾斜させた圧電体に分極処理を施すことにより、圧電特性の傾斜構造を形成する。即ち、厚さが薄い部位は高電圧Eが印加され高い圧電歪定数d31となり、厚さが厚い部位は低電圧Eが印加され低い圧電歪定数d31となる。
【0023】
図3は、本発明の圧電特性傾斜構造を有する機能圧電体の他の製造法である積層型分極法を示す。均一な厚さの圧電体と、厚さを傾斜させた圧電体又は誘電体を積層させて厚さを傾斜させた圧電体を形成する。この厚さを傾斜させた圧電体に分極処理を施すことにより、圧電特性の傾斜構造を形成する。即ち、厚さが薄い部位は高電圧Eが印加され高い圧電歪定数d31となり、厚さが厚い部位は低電圧Eが印加され低い圧電歪定数d31となる。厚さを傾斜させた圧電体又は誘電体を取り除くことによって、圧電特性の傾斜構造を有する圧電体を得る。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例を記載する。
[圧電特性の傾斜構造形成方法]
(単層型分極法)
対象とする圧電体の分極電圧と圧電特性の関係を予め把握しておく。本実施例では圧電体としてチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。任意の圧電特性分布を形成させるための分極電圧と圧電体厚さを決定する。本実施例では、後述する振動制御試験に用いる振動対象に合わせて圧電歪定数d31を200pm/Vから80pm/Vへ傾斜させる分布構造を形成させるべく、分極電圧を240V、圧電体厚さを0.3mmから0.9mmへと直線的に傾斜させる構造とした。
【0025】
圧電体合成時もしくは合成後の研削加工等により平板状圧電体の厚さを任意に分布(傾斜)させる。本実施例では、20×130×1mmtというサイズの圧電体をもとに、研削加工によって上記の圧電体厚さに傾斜させた圧電体の両面に電極を形成し、通常の分極処理において一定電圧を作用させる。本実施例では、分極電圧を上記の240Vとし、分極処理温度を130℃、処理時間を1時間として分極処理を施した。
【0026】
分極処理後、必要に応じて圧電体厚さを均一化するなどの加工を施す。本実施例では、分極処理後に圧電体厚さを0.3mmに均一化し、最終的に20×130×0.3mmtというサイズの圧電体とした。
【0027】
(積層型分極法)
圧電体を積層させた状態における分極電圧と圧電特性の関係を予め把握しておく。本実施例では圧電体としてチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。任意の圧電特性分布を形成させるための分極電圧と圧電体厚さを決定する。本実施例では、d31を200pm/Vから80pm/Vへ傾斜させる圧電特性分布を形成させるべく、分極電圧を490V、圧電体厚さを0.6mmから1.4mmへと直線的に傾斜させる構造とした。
【0028】
圧電体合成時もしくは合成後の研削加工等により平板状圧電体の厚さを任意に分布(傾斜)させたテンプレートとする。このテンプレートとは、図2に示した圧電体における厚さ傾斜部分のみを予め分離させたものであり、分極処理後の研削加工の手間を省くとともにこの傾斜部分を繰返し使用するためのものである。本実施例では、20×130×1.5mmtというサイズの圧電体をもとに研削加工によって圧電体厚さを0.3mmから1.1mmへと直線的に傾斜させたテンプレートを作製した。
【0029】
圧電特性を傾斜させる圧電体(厚さ均一・不均一どちらでも可)および上記テンプレートのそれぞれ片面のみに電極を形成して両者の圧電体面同士を接触させて積層し、通常の分極処理により一定電圧を作用させる。本実施例では、20×130×0.3mmtの圧電体(こちらが傾斜機能圧電体となる)と上記テンプレートを積層させた。分極処理条件として、分極電圧を上記の490V、分極処理温度を130℃、処理時間を1時間とした。
【0030】
分極処理後、積層体のうち圧電特性を傾斜させた圧電体(均一厚さ:0.3mmt一定)を取出し、その積層界面側に電極を形成する。
【0031】
テンプレートは、温度をキュリー点以上に上げて脱分極処理を施すことにより繰返し使用できる。
【0032】
上記単層型分極法及び積層型分極法以上のいずれかの方法により、圧電特性に傾斜分布をもたせた圧電体を作成できる。単層型分極法によって圧電特性に傾斜分布をもたせることは可能であるが、通常、圧電体の使用状況としては厚さを均一とした状態が想定されるため、各圧電体それぞれの研削加工が必要となり、コストの高騰が懸念される。これを解決するために厚みを傾斜させた層を予め分離させるという発想を盛り込んだのが積層型分極法である。
【0033】
[高効率振動制御方法]
(1つの振動モードを制振する場合)
まず、振動制御の対象となる構造体および振動モードについて歪(変位)分布を把握する。本実施例では、20×300×1mmtというサイズのアルミニウムを用いた片持ち梁構造を振動体とし、その1次振動モードについての歪分布を求めた。図4下部に上記アルミニウムを用いた片持ち梁構造振動体の写真を示し、上部に歪分布の結果を示す。図4に示されるように、振動体の根元付近で上下の表面の歪分布は最大であり、先端部で歪分布は最小となる。
【0034】
上記の歪分布と合致した圧電特性分布(図5上部)を有する圧電体を、上記の手法により作製する。本実施例では、前記の単層型分極法により傾斜機能圧電体(20×130×0.3mmt)を作製した(図5下部)。図5に示されるように、圧電歪係数d31の実測値は振動歪分布に合わせた設計値にほぼ合致している。また、従来の均一な圧電特性分布を有する圧電体も作製し、比較対象とした。
【0035】
該圧電体を構造体に設置し、圧電体に作用させる駆動電圧・位相差を任意に制御することにより振動制御を行う。本実施例では、圧電体をアルミニウム片持ち梁の支持点付近に貼付し、1次振動モードの共振周波数(約12Hz)にて強制振動させた。その振動源からの振動信号を基準として圧電体に作用させる駆動信号としてフィードバックし、その振動信号と圧電駆動信号の位相差を調整し、最も振動を減衰できる位相差における減衰率を測定した。
【0036】
該圧電体による振動減衰を示す一例として、図6に圧電体を駆動していない場合と駆動させた場合の振動変位波形(実線)を駆動信号波形(破線)とともに示す。図6上部は、圧電体に電圧を印加せず単に加振器で振動を加えた場合の振動(実線)と電圧(破線)を示す。図6下部は、圧電体に電圧を印加した場合の振動(実線)と電圧(破線)を示す。圧電体に電圧を印加することにより、完全に制振できることが分かる。
【0037】
この圧電体の駆動前後における振動変位振幅の比より減衰率=20logAon/A0ffを求め、圧電駆動信号の電圧振幅Vp−pとの関係(図7)において本発明による圧電体と従来型の均一構造の圧電体との比較を行った。
【0038】
図7の実験結果より、本発明の傾斜機能圧電体は従来の均一分布な圧電体に比べてより高い振動減衰効率(7.7dBの減衰率の向上)をもたらすことを見出した。さらに、目標とする減衰率(例えば図7では−25dBを表示)を得るために必要な駆動電圧の許容範囲を大幅に拡大させることができるため、簡便な制御システムによる高効率制御が可能となる。
【0039】
(複数の振動モードを制振する場合)
振動制御の対象となる構造体および各振動モードについて歪(変位)分布を把握する。本実施例においては、アルミニウム製の2次元平板(300×300×0.8mmt)を対象に各振動モードにおける変位分布を計算した。図8には、1次ならびに3次の振動モードにおける変位分布を示す(図8(a)、(b))。
【0040】
その圧電体を構造体に設置する際に任意の振動モードの極大変位(歪)点に合致する位置に設置する。図9(a)では、2つの振動モードのうち、3次振動モードの変位分布における極大値の位置に設置している。
【0041】
上記とは別の振動モードにおける変位(歪)分布と合致した圧電特性分布を有する圧電体を、前記の実施例に示した手法により作製し、各圧電体に作用させる駆動電圧を任意に制御することにより振動制御を行う。図9(b)では、2つの振動モードのうち、1次振動モードの変位分布に合致した傾斜構造、即ちアルミニウム製の2次元平板の中心部に向かって各圧電体の歪係数d31が高い、としている。
【0042】
このように、各振動モードにおける変位(歪)分布を把握し、圧電傾斜構造および設置位置の最適化を図ることで、平板に生じる各振動モード、即ち1次及び3次モードの両者に対して減衰効率を向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の、圧電歪定数の平板状の面内分布が不均一で傾斜している圧電特性傾斜構造を有する平板状の圧電体を制振機構として備えた制振構造体は、優れた制振性を有し、アクティブ振動制御が可能となった。これにより、本発明は、電気、機械、化学、建築土木、運輸等の広範囲な分野において有用な、極めて高性能の制振構造体を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の圧電特性傾斜構造を有する機能圧電体の模式図を示す。
【図2】本発明の圧電特性傾斜構造を有する機能圧電体の製造法の1つである単層型分極法を示す。
【図3】本発明の圧電特性傾斜構造を有する機能圧電体の他の製造法である積層型分極法を示す。
【図4】歪分布の把握を示す図。
【図5】圧電傾斜構造の設計を示す図。
【図6】傾斜機能圧電体への駆動電圧印加による振動減衰を示す図。
【図7】傾斜機能化による効果の実証(本発明と従来の均一構造との対比)を示す図。
【図8】各振動モードにおける変位(歪)分布の把握示す図。
【図9】圧電傾斜構造および設置位置の最適化を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の圧電体であって、圧電歪定数の平板状の面内分布が不均一で傾斜していることを特徴とする圧電特性傾斜構造を有する圧電体。
【請求項2】
厚さを傾斜させた圧電体に分極処理を施すことにより、圧電特性の傾斜構造を形成させた圧電体の厚さを切削により均一な厚さにしたことを特徴とする請求項1に記載の圧電特性傾斜構造を有する圧電体。
【請求項3】
均一な厚さの圧電体と、厚さを傾斜させた圧電体又は誘電体(テンプレート)を積層させた後に、これら積層物に分極処理を施すことにより、圧電特性の傾斜構造を形成させた圧電体積層物の、該厚さを傾斜させた圧電体または誘電体を、分極処理後取り除くことにより均一な厚さにしたことを特徴とする請求項1に記載の圧電特性傾斜構造を有する圧電体。
【請求項4】
前記圧電体が圧電セラミックス材料又は圧電高分子材料からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電特性傾斜構造を有する圧電体。
【請求項5】
前記圧電セラミックス材料が、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、メタニオブ酸鉛(PbNb)から選択される一種以上であることを特徴とする請求項4に記載の圧電特性傾斜構造を有する圧電体。
【請求項6】
前記圧電高分子材料が、ポリフッ化ビニリデンの単独重合体、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体から選択される一種以上のフッ素系高分子材料であることを特徴とする請求項4に記載の圧電特性傾斜構造を有する圧電体。
【請求項7】
厚さを傾斜させた圧電体に分極処理を施すことにより、圧電特性の傾斜構造を形成することを特徴とする圧電特性傾斜構造を有する圧電体の製造方法。
【請求項8】
均一な厚さの圧電体と、厚さを傾斜させた圧電体又は誘電体(テンプレート)を積層させた後に、これら積層物に分極処理を施すことにより、圧電特性の傾斜構造を形成することを特徴とする圧電特性傾斜構造を有する圧電体の製造方法。
【請求項9】
均一な厚さの圧電体と、厚さを傾斜させた圧電体又は誘電体(テンプレート)を積層させた後に、これら積層物に分極処理を施すことにより、圧電特性の傾斜構造を形成させた圧電体積層物の、該厚さを傾斜させた圧電体または誘電体(テンプレート)を、分極処理後取り除くことにより均一な厚さにし、該取り除かれた圧電体または誘電体に、キュリー点以上の温度を与えて脱分極処理を施し、圧電特性傾斜構造の形成に繰り返し使用することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載の圧電特性傾斜構造を有する圧電体と、該圧電体を上下に挟む駆動用電極からなる制振機構を備えたことを特徴とする制振構造体。
【請求項11】
前記制振機構がアクティブ(能動的)制御であることを特徴とする請求項10に記載の制振構造体。
【請求項12】
前記圧電特性傾斜構造を有する圧電体と、該圧電体を上下に挟む駆動用電極からなる制振機構を積層したことを特徴とする請求項10又は11に記載の制振構造体。
【請求項13】
前記圧電特性傾斜構造を有する圧電体と、該圧電体を上下に挟む駆動用電極からなる制振機構を制振対象物に複数個貼付したことを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の制振構造体。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれかに記載の圧電特性傾斜構造を有する圧電体と、該圧電体を上下に挟む駆動用電極からなる制振機構を備えた制振構造体において、該圧電体に作用させる駆動電圧及び/又は駆動位相を制御することを特徴とするアクティブ(能動的)振動制御方法。
【請求項15】
制振対象となる振動モードの歪(変位)分布と合致した圧電特性分布を有する前記圧電体を構造体に設置することを特徴とする請求項14に記載の振動制御方法。
【請求項16】
制振対象となる任意の振動モードの歪(変位)分布と合致した圧電特性分布を有する圧電体を、他の振動モードの制振に最適な位置に設置することを特徴とする請求項14に記載の振動制御方法。
【請求項17】
前記振動モードが1次又は3次モードであることを特徴とする請求項15又は16に記載の振動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−114819(P2006−114819A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302753(P2004−302753)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】