説明

圧電発振器の表示方法

【課題】 小型化されTCXOの品名等を表示する手段を得る。
【解決手段】 基板と電子部品と圧電振動子とを備えた圧電発振器の表示方法であって、前記圧電振動子の金属蓋上に品名とロット番号とを表示すると共に、前記基板の部品を搭載しない裏面側に発振器情報と振動子情報との少なくとも1つを表示したこと、および前記金属蓋上のほぼ中央に品名を表示すると共に金属蓋の周縁の所要の位置にマークを付してロット番号、発振器情報、振動子情報等を表示したことを特徴とする圧電発振器の表示方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器の表示方法に関し、特に小型化された圧電発振器の表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電発振器は周波数安定度、小型軽量、低価格等の優れた点を有することから通信機器や電子機器等の多くの分野で広く用いられている。水晶振動子の周波数温度特性を補償した温度補償型圧電発振器(TCXO)は、上記の特徴を備えており、特に良好な周波数安定度を必要とする携帯電話等に多く用いられている。
図4は、個別電子部品を用いて構成した温度補償型圧電発振器(ディスクリート型TCXO)の構造を示す概略図であって、同図(a)は断面図、同図(b)は平面図、同図(c)は裏面図である。図4(a)の断面図に示すように、プリント基板20に形成された配線上にIC、サーミスタ、抵抗、コンデンサ等の電子部品21と共に、配線と表面実装型水晶振動子22の外部端子との導通用の銅ボール23を搭載し、該銅ボール23上に表面実装型水晶振動子22を載置し、リフロー槽に通して半田付けを行い、ディスクリート型TCXOを構成する。この際、銅ボール23は表面実装型水晶振動子22の端子電極と電子部品21とが接触しない大きさとする。
そして、プリント基板20の裏面側には、図4(c)に示すように電源(Vcc)、発振周波数出力(OUT)、制御電圧(Vcont)、接地(GND)等の端子が形成され、ディスクリート型TCXOと搭載側のマザーボードとの接続を図るようにしている。
【0003】
水晶振動子の温度特性情報を表示するマーキングに関しては、特開2003−8386号公報等に表示手段が開示されている。ディスクリート型TCXOの表示(マーキング)は、図4(b)の平面図に示すように、表面実装型水晶振動子23の金属蓋上にTCXOの品名24(例えばTCO−9141)、ロット番号25(例えば、0410)、水晶発振器の情報26(例えば、発振周波数、温度特性ランク等)、表面実装型水晶振動子の情報27(例えば、温度60℃における温度特性ランク等)をレーザ彫刻により文字や記号で表示するのが一般的である。
尚、ロット番号とは同一条件で製造された製品の生産単位のことであり、品質管理上の管理番号として機能する。
【0004】
欧州で開発されたGSM携帯電話方式は良好な通話品質を確保するために、用いる水晶発振器の位相雑音、即ちCN特性を厳しく規定している方式である。そのため、GSM携帯電話方式にはCN特性に優れたディスクリート型TCXOが適しており、多く用いられている。
しかし、他の携帯電話方式では携帯電話の小型化、薄型化等の他の点に重きを置くため、図5に示すような1チップIC型TCXOが開発され、用いられるようになった。1チップIC型TCXOは、共通のベース部30の上下それぞれに開口部を有するセラミックパッケージ本体31と、水晶振動素子32と、発振回路及び補償回路を集積したIC部品33とで構成されている。図5(a)は1チップIC型TCXOの構造を示す断面図であって、セラミックパッケージ本体31のベース部30の下側電極34上に金属バンプ35を介してIC部品33を載置し、接続固定すると共に連結部30の上側電極36上に導電性接着剤37を介して水晶振動素子32を接着し、乾燥して接続、固定する。そして、セラミックパッケージ本体31の上部周縁に形成したメタライズ(図示せず)に金属蓋38を抵抗溶接等の手段を用いて溶接し、水晶振動素子32を気密封止して1チップIC型TCXOを構成する。なお、セラミックパッケージ本体31の外底面の端子電極39と、内部の下側電極34、上側電極36とはセラミックパッケージ本体31内に形成した導体(図示せず)により導通している。
【0005】
1チップIC型TCXOの表示(マーキング)は、図5(b)の平面図に示すように、セラミックパッケージ本体31の一方の開口部を覆う金属蓋38上にTCXOの品名40(例えばTCO−9141)、ロット番号41(例えば、0410)、水晶発振器の情報42(例えば、発振周波数、温特ランク等)、水晶振動子の情報43(温度60℃における温特ランク等)がレーザ彫刻にて表示されている。
【特許文献1】特開2003−8386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ディスクリート型TCXOの外形寸法が7mm×5mm、あるいは5mm×3.2mm程度であれば、プリント基板上に搭載する水晶振動子の金属蓋上に品名、ロット番号、発振器情報、水晶振動子情報等をレーザ彫刻にて表示することもできるが、ディスクリート型TCXOの外形寸法が3.2mm×2.5mm程度と小さくなると、搭載する水晶振動子の外形寸法もさらに小さくなり、上記の品名、ロット番号、発振器情報、水晶振動子情報等のすべてを表示することが極めて難しいという問題があった。
一方、現用の1チップIC型TCXOの外形寸法は3.2mm×2.5mm程度であるので、水晶振動素子を気密封止する金属蓋上に品名、ロット番号、発振器情報、水晶振動子情報等をレーザ彫刻にて表示することもできるが、1チップIC型TCXOの外形寸法が2.5mm×2.0mm程度と小型化されると、金属蓋上に品名、ロット番号、発振器情報、水晶振動子情報等のすべてを表示することが極めて難しいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は圧電発振器の表示方法に関し、請求項1の発明は、プリント基板の一方の主面に電子部品と圧電振動子とを搭載した圧電発振器の表示方法であって、前記圧電振動子の金属蓋上に品名とロット番号とを表示すると共に、前記プリント基板の他方の主面側に発振器情報と振動子情報との少なくとも1つを表示して圧電発振器を構成する。
請求項2の発明は、前記金属蓋上のほぼ中央に品名を表示すると共に金属蓋の周縁の所要の位置にマークを付してロット番号、発振器情報、振動子情報等を表示して請求項1に記載の圧電発振器を構成する。
請求項3の発明は、圧電振動素子とIC部品とを収容するパッケージ本体と、少なくとも前記圧電振動素子を封入するための金属蓋とを備えた圧電発振器の表示方法であって、前記金属蓋上のほぼ中央に品名を表示すると共に金属蓋の周縁の所要の位置にマークを付してロット番号、発振器情報、振動子情報等を表示して請求項1に記載の圧電発振器を構成する。
請求項4の発明は、前記表示の手段としてレーザを用いて請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電発振器を構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の圧電発振器の表示方法は、ディスクリート型TCXOに場合には、平面実装型水晶振動子の金属蓋と基板の裏面側とに分けて表示するため、ディスクリート型TCXOが小型化された場合にも対応できるという利点がある。また、ディスクリート型TCXO、あるいは1チップIC型TCXOの場合にも金属蓋の中央に品名を、金属蓋の周縁にマークによりロット番号等を表示できるので、更なる小型化にも対応できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明に係る温度補償型圧電発振器(ディスクリート型TCXO)の表示の実施の形態を示す概略図であって、同図(a)はディスクリート型TCXOの構造を示す断面図、同図(b)は平面図、同図(c)は裏面図である。ディスクリート型TCXOは、図1(a)の概略断面図に示すように、プリント基板1に形成された配線上にIC、サーミスタ、抵抗、コンデンサ等の電子部品2と共に、配線と平面実装型水晶振動子3の外部端子との導通用銅ボール4を搭載し、該銅ボール4上に平面実装型水晶振動子3を載置し、リフロー槽に通し、半田付けして構成する。このとき銅ボール4は水晶振動子3と電子部品2とが接触しない大きさとする。
【0010】
ディスクリート型TCXOの外形寸法は3.2mm×2.5mm程度と小型化されるので搭載する平面実装型水晶振動子の外形寸法も2.5mm×2.0mm程度と極めて小さくなる。この表面実装型水晶振動子3の金属蓋上に品名、ロット番号、発振器情報、水晶振動子情報等を肉眼で判読できる程度にレーザ彫刻で表示することは極めて困難である。そこで本願出願者は製造者、ユーザ双方にとって最重要な表示である品名5とロット番号6のみを表面実装型水晶振動子3の金属蓋上にレーザ彫刻し、他の発振器情報7、水晶振動子情報8等は電子部品の搭載されていないプリント基板1の裏面側に表示することを想い到った。
【0011】
発振器情報7、あるいは水晶振動子情報8等はディスクリート型TCXOの製造段階、あるいは製造後の品質管理を行う際に必要な情報ではあるが、ユーザ側が携帯電話等の製品管理、品質管理を行う際は、品名5とロット番号6が重要な情報となり、発振器情報7あるいは水晶振動子情報8等は必ずしも必要な情報ではない。
しかし、ディスクリート型TCXOに不具合が生じた際には、製造者には品名5、ロット番号6のみならず、発振器情報7、振動子情報8が不具合解析に重要な情報となるので、ディスクリート型TCXOの何処かに記載されていることが望ましい。
【0012】
図2は1チップIC型TCXOに関する表示の実施の形態を示す図であって、同図(a)は1チップIC型TCXOの構造を示す概略断面図、同図(b)は平面図である。1チップIC型TCXOは中央部が連結部10で連結され、上下に開口部を有するセラミックパッケージ本体11と、水晶振動素子12と、発振回路及び補償回路を集積したIC部品13とで構成されている。セラミックパッケージ本体11の上部周縁に形成したメタライズ(図示せず)に金属蓋14を抵抗溶接等で溶接し、水晶振動素子12を気密封止して1チップIC型TCXOを構成する。1チップIC型TCXOの外形寸法が2.5mm×2.0mm程度と小型化されると、レーザ彫刻を用いても品名、ロット番号、発振器情報、水晶振動子情報等を表示することが極めて難くなるので、図2(b)に示すように製造者、ユーザ双方にとって必要最小限の情報である品名5、ロット番号6のみの表示となる。
【0013】
図3は本発明に係る第二の実施の形態を示す平面図であって、ディスクリート型TCXOの場合には平面実装型水晶振動子3の金属蓋を、1チップIC型TCXOの場合にはセラミックパッケージ本体11の上部周縁に形成したメタライズ(図示せず)に溶接した金属蓋を想定する。これらの金属蓋の外形寸法が2.5mm×2.0mm程度よりさらに小さくなると、品名及びロット番号を共に表示することが困難となる。このように小型化された場合には、図3の平面図に示すように、金属蓋17に品名15のみをレーザ彫刻にて表示し、ロット番号は、金属蓋17の周縁を等分に分割し、分割した部分の中央にレーザ彫刻にてマーク18を刻む。図3の例では横方向を6等分に、縦方向を4等分した例で、周縁全体で20等分できる。1等分当たりマーク18の有り、無しで1ビットの情報を書き込めるので、20ビットの情報を書き込むことができる。
例えばロット番号として年、月、日を用いることにすると、年の表示に4ビット(16通り)、月の表示に4ビット(16通り)、日の表示に5ビット(32通り)を用いるとして13ビットあればよい。マーク18の有り無しだけならば金属蓋17の外周はさらに細かく等分できるので、ロット番号以外の情報、例えば発振器情報等も表示することが可能となり、水晶発振器に不具合等が生じた際の原因究明を容易にする。
なお、ディスクリート型TCXOの場合に平面実装型水晶振動子の金属蓋上に品名を、プリント基板の裏面側にロット番号、発振器情報等の情報を表示することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るディスクリート型TCXOの表示(マーキング)を示す図であって、(a)は断面図、(b)は平面図、(c)は裏面図である。
【図2】1チップ型TCXOの表示を示す図であって、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図3】本発明に係るTCXOの第二の表示(マーキング)例を示す図である。
【図4】従来のディスクリート型TCXOの表示(マーキング)を示す図であって、(a)は断面図、(b)は平面図、(c)は裏面図である。
【図5】従来の1チップ型TCXOの表示を示す図であって、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 プリント基板
2 電子部品
3 表面実装型水晶振動子
4 銅ボール
5、15 品名
6、16 ロット番号
7 発振器情報
8 振動子情報
10 連結部
11 セラミックパッケージ本体
12 水晶振動素子
13 IC
14、17 金属蓋
18 マーク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板の一方の主面に電子部品と圧電振動子とを搭載した圧電発振器の表示方法であって、前記圧電振動子の金属蓋上に品名とロット番号とを表示すると共に、前記プリント基板の他方の主面側に発振器情報と振動子情報との少なくとも1つを表示したことを特徴とする圧電発振器の表示方法。
【請求項2】
前記金属蓋上のほぼ中央に品名を表示すると共に金属蓋の周縁の所要の位置にマークを付してロット番号、発振器情報、振動子情報等を表示したことを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器の表示方法。
【請求項3】
圧電振動素子とIC部品とを収容するパッケージ本体と、少なくとも前記圧電振動素子を封入するための金属蓋とを備えた圧電発振器の表示方法であって、
前記金属蓋上のほぼ中央に品名を表示すると共に金属蓋の周縁の所要の位置にマークを付してロット番号、発振器情報、振動子情報等を表示したことを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器の表示方法。
【請求項4】
前記表示の手段としてレーザを用いたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電発振器の表示方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−140744(P2006−140744A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328275(P2004−328275)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】