説明

圧電発振器

【課題】圧電振動素子が搭載された圧電発振器の小型化が進んでも、電極端子数を増やすことなく、増幅回路部のみを停止させるインヒビット機能を持たせた圧電発振器を提供する。
【解決手段】集積回路素子には、前記圧電振動素子の共振周波数に基づいて発振信号を出力する第1のインバータを含む発振回路部と、前記発振信号を増幅する第2のインバータを含む増幅回路部と、電源電圧端子から入力される電源電圧と、周波数制御電圧端子から入力される周波数制御電圧を比較し、周波数制御電圧が電源電圧よりも大きい値又は同じ値になる場合に出力信号を出力する比較器を有する切替回路部と、前記増幅回路部の第2のインバータと電源電圧端子の接続間に配置され、前記比較器からの出力信号により動作するスイッチと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電発振器は、凹部空間を有するパッケージと圧電振動素子と集積回路素子と蓋体とから主に構成されている。
前記パッケージは、セラミック材料等から成る概略直方体からなり、一方の主面に開口する凹部空間が形成され、前記凹部空間内には前記凹部空間内底面から段差により高い位置に搭載部が形成されている。
前記圧電振動素子は、前記搭載部に形成された圧電振動素子搭載パッド上に搭載されている。
前記集積回路素子は、前記パッケージの凹部空間内底面に形成された集積回路素子搭載パッド208上に搭載されている。
前記蓋体は、前記パッケージの凹部空間上に載置し、前記パッケージの側壁頂部と固着することにより、凹部空間内を気密封止される。
このような圧電発振器において、前記パッケージの他方の主面の4隅には、外部接続用電極端子である電源電圧端子、グランド端子、出力端子、周波数制御端子が形成されている構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、図5は、従来の圧電発振器を構成する集積回路素子を示すブロック図である。 図5に示すように、集積回路素子203には、温度補償データを保持するメモリ部、周囲の温度検知する感温センサ部、可変容量ダイオードCv、所定の温度補償データに基づいて所定電圧に変換して可変容量ダイオードCvに供給する3次関数発生回路部、これらの動作を制御するプロセッサ部からなる温度補償制御回路部Xと、負荷容量、発振インバータ及び帰還抵抗からなる発振回路部Yと、増幅インバータからなる増幅回路部Zが具備されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、図6は、従来のインヒビット端子を有する圧電発振器を示す回路図である。図6に示すように、圧電発振器には、圧電振動素子Xtalと、発振回路となるインバータINV1と負荷容量となるC1、C2と抵抗R、増幅回路となるインバータINV2によって構成されており、増幅回路となるインバータINV2の動作を一時的に停止させるためのインヒビット端子が形成されている構造が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−198310号公報
【特許文献2】特開2003−163542号公報
【特許文献3】実案登録第2597382号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の圧電発振器を携帯電話等の電子機器で使用されるモジュールに搭載する際に、圧電発振器からの出力が不必要な時に、消費電力を抑えるために圧電発振器の電源電圧端子Vddに印加される電源電圧をON/OFFすることで間欠動作を行なっていたが、圧電発振器に電源電圧をONした時、圧電発振器が無発振状態から安定した発振周波数を出力するまでの所定の立ち上がり時間を要するため、その立ち上がり時間の間、モジュールが起動しないといった課題があった。
また、圧電発振器の立ち上がり時間を考慮し、モジュールに搭載されている他の電子部品よりも前に圧電発振器に電源電圧を印加して立ち上げるため、圧電発振器に消費電力を費やしてしまうといった課題がある。
【0007】
また、例えば図6における増幅回路部Zの増幅インバータと電源電圧端子Vddとの間にスイッチを設け、スイッチをOFFさせることによって、電源電圧端子Vddからの電源電圧を増幅インバータに印加しないことで、増幅回路部Zのみを停止させ、圧電発振器の発振させる際には、増幅インバータに電源電圧を印加することですぐに発振周波数を出力することで、立ち上がり時間を短縮させているが、この構成をとるには、圧電発振器に図7に示したようなインヒビット端子という新たな電極端子を外部接続用電極端子として圧電発振器の表面に設けなければならないといけない。しかし、圧電発振器の小型化が進むと、圧電発振器の表面積も縮小してしまい、これ以上新たな電極端子を圧電発振器表面に設けることができないという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は前記課題に鑑みてなされたもので、圧電振動素子が搭載された圧電発振器の小型化が進んでも、電極端子数を増やすことなく、増幅回路部のみを停止させるインヒビット機能を持たせた圧電発振器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧電発振器は、圧電振動素子と、集積回路素子と、外部接続用電極端子である電源電圧端子と出力端子とグランド端子と周波数制御端子とを有し、圧電振動素子と前記集積回路素子を収容するパッケージと、パッケージを気密封止するための蓋体とを備えた圧電発振器であって、集積回路素子には、圧電振動素子の共振周波数に基づいて発振信号を出力する第1のインバータを含む発振回路部と、発振信号が入力され、増幅された発振信号を前記出力端子に出力する第2のインバータを含む増幅回路部と、電源電圧端子から入力される電源電圧と、周波数制御電圧端子から入力される周波数制御電圧を比較し、周波数制御電圧が電源電圧よりも大きい値か同じ値となる場合に、出力信号を出力する比較器を有する切替回路部と、増幅回路部の第2のインバータと電源電圧端子の接続間に配置され、比較器からの出力信号により動作するスイッチと、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧電発振器によれば、増幅回路部の第2のインバータと電源電圧端子の接続間に配置されたスイッチと切替回路部の比較器の出力側が接続され、切替回路部の比較器のマイナス入力側は電源電圧端子と接続されており、プラス入力側は周波数制御端子と接続されることによって、比較器のプラス入力側に接続されている周波数制御端子から印加される電圧が、比較器に入力マイナス側に接続されている電源電圧端子から印加される電圧よりも大きくなることで、比較器から信号が出力され、スイッチがON状態である増幅回路部の第2のインバータと電源電圧端子が接続された状態からOFFの状態である増幅回路部の第2のインバータと電源電圧端子が切り離された状態になることによって、増幅回路部の第2のインバータに電源電圧端子からの電源電圧が印加されなくなり、増幅回路部の第2のインバータのみを停止させることができる。それにより、発振回路部は動作したまま、発振振周波数の出力を停止することができるので、増幅回路部の第2のインバータに電源電圧を印加すると、発振回路部には、電源電圧が印加されたままである動作した状態なので、すぐに発振周波数を出力することができ、立ち上がり時間を短縮させることが可能となる。
また、圧電発振器の立ち上がり時間を考慮する必要がなく、モジュールに搭載されている他の電子部品よりも前に圧電発振器に電源電圧を印加する必要がないため、圧電発振器にかかる消費電力を低減することができる。
このような構成にすることによって、従来の圧電発振器のようなスイッチを動作させるためのインヒビット端子を別途、新たな端子として設けることなく、周波数制御端子をスイッチを動作させるための端子として使用できるので、圧電発振器の小型化が進んだ場合にも対応ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
尚、説明を明りょうにするため説明に不必要な構造体の一部を図示していない。さらに図示した寸法も一部誇張して示している。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る圧電発振器を示す分解斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る圧電発振器を示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る圧電発振器100は、圧電振動素子20と、集積回路素子30と、外部接続用電極端子である電源電圧端子Vddと出力端子Outとグランド端子GNDと周波数制御端子Vcontを備え、前記圧電振動素子20と前記集積回路素子30を収容するパッケージ10と、前記パッケージ10を気密封止するための蓋体50とによって構成されている。
【0013】
圧電振動素子20は、例えば水晶素板が用いられ、前記水晶素板の表裏両主面に励振用電極21が被着形成したものであり、外部からの交番電圧が励振用電極21を介して水晶素板に印加されると、所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
水晶素板は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し外形加工を施された概略平板状で平面形状が例えば四角形となっている。
このような圧電振動素子20は、その両主面に被着されている励振用電極21と凹部空間11内の搭載部16の開口側表面に形成されている圧電振動素子搭載パッド15とを、導電性接着剤40を介して電気的且つ機械的に接続することによって凹部空間11の搭載部16に搭載される。また、前記搭載部16は、前記凹部空間11の底面よりも高くなるように形成されている。また、前記圧電振動素子搭載パッド15は、前記パッケージ10の内部の配線導体やビアホール導体等及び凹部空間内底面に形成された集積回路素子接続用電極パッド14を介して、集積回路素子30に電気的に接続される。
【0014】
導電性接着剤40は、シリコーン樹脂の中に導電性フィラーが含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせを含むものが用いられている。
【0015】
集積回路素子30は、その回路形成面に圧電振動素子20からの発振出力を生成する発振回路等から成る電子回路が設けられており、この発振回路で生成された出力信号は外部接続用電極端子13のうちの出力端子OUTを介して圧電発振器外へ出力され、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。また集積回路素子30は、パッケージ10の凹部空間11内に形成された集積回路素子搭載パッド14に搭載されている。
【0016】
パッケージ10は、例えば、アルミナセラミックス、ガラス−セラミック等のセラミック材料から成る絶縁層を複数積層することよって形成されており、前記パッケージ10の一方の主面には、中央域に開口する矩形状の凹部空間11が形成されている。また、凹部空間11を囲繞するパッケージ10の側壁部の開口側頂面の全周には、環状の封止用導体パターン12が形成されている。凹部空間11内には、前記凹部空間11の底面から段差により高い位置に設けられる搭載部16と、前記搭載部16に形成される圧電振動素子搭載パッド15と、前記凹部空間11の底面に設けられる集積回路素子搭載パッド12を備えている。更に、前記パッケージ10の他方の主面には外部接続用電極端子13である電源電圧端子Vdd、グランド端子GND、出力端子OUT、周波数制御端子Vcontが形成されている。
【0017】
図1に示すように、集積回路素子搭載パッド14は、前記パッケージ10の前記凹部空間11内底面に形成されている。
また、集積回路素子搭載パッド14は、集積回路素子30に形成されている接続パッドが電気的且つ機械的に接続され、前記パッケージ10内部に形成されている配線導体やビアホール導体等を介して外部接続用電極端子13のうちの出力端子OUT、周波数制御端子Vcont、電源電圧端子Vdd、グランド端子GNDに電気的に接続される。
【0018】
図2に示すように、外部接続用電極端子13は、電源電圧端子Vdd、グランド端子GND、出力端子OUT、周波数制御端子Vcontにより構成されており、これらの外部接続用電極端子13は、圧電発振器100をマザーボード等の外部電気回路に搭載する際、半田付け等によって外部電気回路の回路配線と電気的に接続されることとなる。
【0019】
また、パッケージ10の側壁部の頂面に形成された封止用導体パターン12は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等から成る基層の表面にニッケル(Ni)層及び金(Au)層を順次、前記パッケージ10の環状に囲繞する形態で被着させることによって10μm〜25μmの厚みに形成されており、その封止用導体パターン12は、後述する蓋体50を、蓋体50に形成された封止部材51を介して、前記パッケージ10の側壁部の頂面に接合させるためのものであり、かかる封止用導体パターン12に、W若しくはMoから成る基層の表面にNi層及びAu層を順次被着させた構成となしておくことにより、封止用導体パターン12に対する封止部材51の濡れ性を良好とし、圧電発振器100の気密信頼性及び生産性を向上させる。
【0020】
また図1に示すように、蓋体50は従来周知の金属加工法を採用し、42アロイ等の金属を所定形状に成形することによって製作され、前記蓋体50の上面には、ニッケル(Ni)層が形成され、更にニッケル(Ni)層の上面の封止用導体パターン12に対応する箇所に封止部材51である金錫(Au−Sn)層が形成される。金錫(Au−Sn)層の厚みは、10μm〜40μmである。例えば、成分比率が、金が80%、錫が20%のものが使用されている。また、このような封止部材51は、封止用導体パターン12の凹凸を緩和し、気密性の低下を防ぐことが可能となる。また、封止部材51が薄すぎると当該機能を充分に発揮しない。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に係る圧電発振器のブロック図である。図4は、本発明の他の実施形態に係る圧電発振器のブロック図である。
図3及び図4に示すように、圧電振動素子20と、前記集積回路素子30には、発振回路部Xと、増幅回路部Yと、温度補償用制御データを記憶するためのメモリ部Mと、温度補償用制御データに基づき温度補償を行なう温度補償信号制御回路部Tと、スイッチSW1と、前記スイッチSW1と接続されている比較器COMP1を含む切替回路部Zとを備えたものである。
尚、集積回路素子30は、発振回路部Xと、増幅回路部Yと、第1のスイッチSW1と、第2のスイッチSW2と、メモリ部Mと、温度補償信号制御回路部Tと、切替信号制御回路部C等を集積した電子回路を内部に有する。
【0022】
図3及び図4に示すように、電源電圧端子Vddに印加された電源電圧によって発振回路部Xと増幅回路部Yに定電圧が印加される。
尚、図3及び図4に示した発振回路部X及び増幅回路部Yでは、電源電圧端子Vddと第1のインバータINV1、第2のインバータINV2が接続される構成として表している。
【0023】
図3及び図4に示すように、発振回路部Xは、第1のインバータINV1、抵抗R3、可変容量ダイオードCv1、Cv2によって構成されている。
前記発振回路部Xの第1のインバータINV1と電源電圧端子Vddは接続されている。 抵抗R3は、前記第1のインバータINV1の入出力間に並列に接続されている。
圧電振動素子20の一端であるXT1は、第1のインバータINV1の入力側及び抵抗R3の一端と負荷容量となる可変容量ダイオードCv1のカソードが接続されている。可変容量ダイオードCv1のアノードはグランド端子GNDと接続されている。
圧電振動素子20の他端であるXT2は、第1のインバータINV1の出力側及び抵抗R3の他端と負荷容量となる可変容量ダイオードCv2のカソードが接続されている。可変容量ダイオードCv2のアノードはグランド端子GNDと接続されている。
周波数制御端子Vcontと可変容量ダイオードCv1、Cv2のカソードが接続されている。周波数制御端子Vcontに定電圧が印加されることにより、負荷容量が調整される。このように、負荷容量を調整することによって、圧電振動素子20の発振特性を基準周波数に補償する。
即ち、広い温度範囲領域においては、可変容量ダイオードCv1、Cv2に供給される電圧が制御され、圧電振動素子20が有する固有の温度周波数特性を広い温度範囲で平坦化することができる。
【0024】
図3及び図4に示すように、増幅回路部Yは、第2のインバータINV2によって構成されている。
前記増幅回路部Yの第2のインバータINV2の入力側は、前記発振回路部Xの第1のインバータ11の出力側と接続されている。
前記増幅回路部Yの第2のインバータINV2の出力側は、出力端子OUTと接続されている。
前記増幅回路部Yの第2のインバータINV2と電源電圧端子Vddは、スイッチSW1を介して接続されている。
後述する切替回路部Zの比較器COMP1の出力側とのスイッチSW1が接続されており、周波数制御端子Vcontに定電圧が印加されることにより、スイッチSW1がOFFの状態になり、電源電圧端子Vddからの定電圧が、前記増幅回路部Yの第2のインバータINV2に印加されなくなるので、発振が停止することになる。
【0025】
図3及び図4に示すように、温度補償用制御データを記憶するためのメモリ部Mは、PROM及びEEPROMにより構成されている。
温度補償関数である下記の式1に示す3次関数のもととなるパラメータ、例えば3次成分調整値α、1次成分調整値β、0次成分調整値γの各値の温度補償用制御データが書込読込端子INPUT/OUTPUTから入力され、メモリ部Mに保存される。
f=α(T−T+β(T−T)+γ・・・(式1)
尚、fは周波数を示し、αは3次成分の定数を示し、βは1次成分の定数を示し、γは0次成分の定数を示し、T、Tは、温度を示す。
【0026】
温度補償信号制御回路部Tは、3次関数発生回路や5次関数発生回路等によって構成されている。例えば、3次関数発生回路の場合は、そのメモリ部Mに入力された温度補償用制御データを読出して、温度補償用制御データから各温度に対して3次関数で導き出された電圧を発生させる。尚、この時の外部の周囲温度は、集積回路素子内の温度センサより得られる。
温度補償信号制御回路部Tは、可変容量ダイオードCv1、Cv2のカソードと接続されており、温度補償信号制御回路部Tからの電圧が印加される。
このように、可変容量ダイオードCv1、Cv2に温度補償信号制御回路部Tからの電圧を印加することよって、圧電振動素子20の周波数の温度特性を補正することにより、周波数の温度特性が平坦化される。
【0027】
図3に示すように、切替回路部Zは、抵抗R1、R2と比較器COMP1によって構成されている。
前記抵抗R1の一端は、電源電圧端子Vddと接続されており、前記抵抗R1の他端は、前記抵抗R2の一端と接続されている。前記抵抗R2の他端は、グランド端子GNDと接続されている。
比較器COMP1のマイナス入力側は、前記抵抗R1の他端及び前記抵抗R2の一端と接続されている。また、比較器COMP1のプラス入力側は、周波数制御端子Vcontと接続されている。
比較器COMP1の出力側は、スイッチSW1と接続されている。
比較器COMP1の入力プラス側に接続されている周波数制御端子Vcontから印加される電圧を、比較器COMP1にマイナス入力側に接続されている電源電圧端子Vddから印加される基準電圧Vrefよりも大きい値なるか同じ値になることで、比較器COMP1から信号S1が出力される。
信号S1がスイッチSW1に入力されることによって、スイッチSW1をON状態である増幅回路部Xの第2のインバータINV2と電源電圧端子Vddが接続された状態からOFFの状態である増幅回路部Yの第2のインバータINV2と電源電圧端子Vddが切り離された状態にさせる。
これによって、増幅回路部Yの第2のインバータINV2に電源電圧端子Vddからの電源電圧が印加されなくなり、増幅回路部Yの第2のインバータINV2のみが停止する。そのことによって、発振回路部Xを動作させたまま圧電発振器の出力を停止することができる。
【0028】
図3に示すように、スイッチSW1は、増幅回路部Yの第2のインバータINV2と電源電圧端子Vddの接続間に配置され、切替回路部Zの比較器COMP1から出力される信号S1によって、増幅回路部Yの第2のインバータINV2と電源電圧端子Vddが接続された状態から、切り離された状態となる。
【0029】
また、図4に示すように、スイッチSW1をMOS−FETを用いて構成した場合、MOS−FETのゲート側は、切替回路部Zの比較器COMP1の出力側と接続されている。MOS−FETのドレーン側と電源電圧端子Vddが接続されており、MOS−FETのソース側と増幅回路部Yの第2のインバータINV2が接続されている。
MOS−FETのゲート側に、抵抗R4の一端と接続されている。抵抗R4の他端はグランド端子GNDと接続されている。
このように抵抗R4を用いることにより、誤信号がMOS−FETに出力された場合でも、プルアップ抵抗としての役割により、MOS−FETが誤動作することはない。
【0030】
尚、信号S1は、スイッチSW1に入力される。これにより、スイッチSW1が電源電圧端子Vddと増幅回路部Yの第2のインバータINV2が接続された状態から電源電圧端子Vddと増幅回路部Yの第2のインバータINV2が切り離された状態になる。
【0031】
例えば、抵抗R1と抵抗R2の抵抗値の比率が1:9となるように設定し、電源電圧端子Vddに印加される電圧が3.0(V)の時には、比較器COMP1のマイナス入力側に印加される基準電圧Vrefが2.7(V)に設定された場合、周波数制御端子Vcontに印加される電圧が2.0(V)の場合には、比較器COMP1のプラス入力側には、2.0(V)が入力されるため、比較器COMP1からの信号S1は出力されない。しかし、周波数制御端子Vcontに印加される電圧が2.7(V)の場合には、比較器COMP1のプラス入力側には、2.7(V)が入力されるため、比較器COMP1から信号S1が出力される。
このように比較器COMP1のマイナス入力側に、印加される基準電圧Vrefを電源電圧端子の90%以上となるように抵抗R1と抵抗R2を設定することによって、周波数制御端子Vcontに印加する電圧は、電源電圧の70%以上に設計されることは少ないため、間違って周波数制御端子Vcontに少し高めの電圧を印加した場合でも、比較器COMP1からスイッチSW1に誤信号が出力されることを防止することができる。
【0032】
このように本発明の実施形態に係る圧電発振器により、従来の圧電発振器のように増幅回路部Yの第2のインバータINV2の動作をON/OFFさせるスイッチSW1を制御するための信号を入力するインヒビット端子INHのような新たな電極端子を設けることなく、周波数制御端子Vcontに印加する電圧値を可変することで、スイッチSW1のON/OFFを切り替えることができる。
また、圧電発振器の電極端子数が増えないことから、携帯電話等のモジュールを構成しているマザーボード上に搭載する場合、マザーボード上の配線や圧電発振器を搭載する為の搭載パッドの位置を変更する必要がなく、前記搭載パッドに電圧を印加するタイミング等を調整するように、モジュールを起動させているソフトウエアを変更することで対応することが可能となる。
【0033】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、前記した本実施形態では、圧電振動素子20を構成する圧電素材として水晶を用いた場合を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
【0034】
本発明の圧電発振器100は、パッケージ10の凹部空間内に圧電振動素子20と、集積回路素30が収容されて蓋体で気密封止されているが、前記パッケージ10の一方の主面に形成されている第1の凹部空間内に、圧電振動素子20が搭載され、前記パッケージの他方の主面に形成される第2の凹部空間12内に集積回路素子50が搭載された構造としても構わない。
【0035】
また、本発明の圧電発振器100では、温度補償型圧電発振器のブロック図にて説明したが、メモリ部と温度補償信号発生回路部がない電圧制御型圧電発振器の場合でも、本発明における手段は適用可能である。
【0036】
また、本発明の圧電発振器100は、パッケージ10の他方の主面に書込読込端子INPUT/OUTPUTが設けられているが、パッケージの側面に書込読込端子INPUT/OUTPUTを設けても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る圧電発振器を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る圧電発振器を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る圧電発振器のブロック図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る圧電発振器のブロック図である。
【図5】従来の圧電発振器を示すブロック図である。
【図6】従来の圧電発振器を示す回路図である。
【符号の説明】
【0038】
10・・・パッケージ
11・・・凹部空間
12・・・封止用導体パターン
13・・・外部接続用電極端子
14・・・圧電振動素子搭載パッド
15・・・集積回路素子搭載パッド
16・・・搭載部
20・・・圧電振動素子
21・・・励振用電極
30・・・集積回路素子
40・・・導電性接着剤
50・・・蓋体
51・・・封止部材
100・・・圧電発振器
X・・・発振回路部
Y・・・増幅回路部
Z・・・切替回路部
Cv1、Cv2・・・可変容量ダイオード
R1、R2、R3・・・抵抗
INV1・・・第1のインバータ
INV2・・・第2のインバータ
SW1・・・スイッチ
COMP1・・・比較器
Vdd・・・電源電圧端子
Vcont・・・周波数制御端子
OUT・・・出力端子
GND・・・グランド端子
INPUT/OUTPUT・・・書込読込端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子と、集積回路素子と、外部接続用電極端子である電源電圧端子と出力端子とグランド端子と周波数制御端子とを有し、前記圧電振動素子と前記集積回路素子を収容するパッケージと、前記パッケージを気密封止するための蓋体とを備えた圧電発振器であって、
前記集積回路素子には、前記圧電振動素子の共振周波数に基づいて発振信号を出力する第1のインバータを含む発振回路部と、
前記発振信号が入力され、増幅された発振信号を前記出力端子に出力する第2のインバータを含む増幅回路部と、
電源電圧端子から入力される電源電圧と、周波数制御電圧端子から入力される周波数制御電圧を比較し、周波数制御電圧が電源電圧よりも大きい値か同じ値となる場合に出力信号を出力する比較器を有する切替回路部と、
前記増幅回路部の第2のインバータと電源電圧端子の接続間に配置され、前記比較器からの出力信号により動作するスイッチと、を備えることを特徴とする圧電発振器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−44607(P2009−44607A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209215(P2007−209215)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】