説明

圧電素子、それを用いたインクジェットヘッド及び圧電素子の製造方法

【課題】容易かつ高い精度で製造でき、安価で消費電力の少ない圧電素子を提供すること
【解決手段】基板と、基板上に形成された第1電極と、第1電極上に形成された圧電体膜と、圧電体膜の第1電極が形成された面と反対側の面に形成された第2電極とを有し、第1電極は、基板側の第1層と圧電素子側の第2層とで構成され、第1層を、ウェットエッチングのエッチングレートが前記基板と異なる材料で形成することで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子、それを用いたインクジェットヘッド及び圧電素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、インク液滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動機構、圧力センサ等として用いることができるアクチュエータとして、印加される電圧が変化すると伸縮する圧電体膜を用いた圧電素子がある。圧電素子は、Si等で形成された基板上に、下部電極、圧電体膜、上部電極を積層した構成であり、下部電極及び上部電極から圧電体膜に電圧を印加することで、圧電体膜を伸縮させる。
【0003】
このような圧電素子としては、例えば、引用文献1に、下部電極60をパターニングして全体パターンを形成し、その後、ゾル−ゲル法またはスパッタリング法等により圧電体膜層及び上部電極膜を形成し、圧電体膜層及び上電極膜のみをエッチングして圧電素子のパターニングを行うことで作製した圧電素子が記載されている。
さらに、上電極膜上に密着層及び上部層を形成し、マスクパターンとなるマスク層を形成した後、ドライエッチングで上部層のみを除去し、その後ウェットエッチングで密着層を除去することで、上電極膜上にリード電極を形成することが記載されている。
【0004】
また、引用文献2には、下部電極となる第2電極層にPt等の導電性材料を、膜厚0.1μm〜0.4μmで形成した圧電素子が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3849773号
【特許文献2】特開平2004−186646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、引用文献1に示すように圧電素子の下部電極、圧電体膜、上部電極は、ドライエッチングや、ウェットエッチングによりパターニングして製造される。また、下部電極には、圧電体膜との密着性や導電性等を高めるため、IrやPt等の貴金属が用いられ、これらの下部電極のパターニングには、ドライエッチングが用いられる。
【0007】
しかしながら、ドライエッチングを用いてパターニングを行うと、下部電極を支持する基板までエッチングしてしまう、いわゆるオーバーエッチングが生じてしまう。
インクジェットヘッドとして用いる場合、基板に部分的な欠損が生じると、振動板が正確に振動せず、インク液滴の吐出精度が低くなるという問題がある。
【0008】
また、圧電素子は、下部電極のシート抵抗を低くすることで、圧電素子の高密度配置や、消費電力の削減が可能となる。これに対しては、電極の厚みを厚くすることで、シート抵抗を低くすることができるが、装置として高価になるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術に基づく問題点を解消し、容易かつ高い精度で製造でき、安価で消費電力の少ない圧電素子を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記従来技術に基づく問題点を解消し、高画質な画像を記録することができ、容易かつ高精度で製造することができるインクジェットヘッドを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記従来技術に基づく問題点を解消し、安価で消費電力の少なく、高精度に駆動する圧電素子を容易かつ高い精度で製造できる圧電素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態は、基板と、前記基板上に形成された第1電極と、前記第1電極上に形成された圧電体膜と、前記圧電体膜の前記第1電極が形成された面と反対側の面に形成された第2電極とを有し、前記第1電極は、前記基板側の第1層と前記圧電素子側の第2層とで構成され、前記第1層は、ウェットエッチングのエッチングレートが前記基板と異なる材料で形成されている圧電素子を提供するものである。
【0011】
ここで、前記第1層は、W、TiW、Au、Cu、Al、Ni及びCrの少なくとも1つをを材料として形成されていることが好ましい。
また、前記第2層は、Pt、Ir、Ru、Rh及びPdの少なくとも1つを材料として形成されていることが好ましい。
また、前記第1電極は、シート抵抗が0.5Ω/sq以下であることが好ましい。
また、前記基板は、SiあるいはSiOを材料として形成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の形態は、上記のいずれかに記載の圧電素子と前記圧電体膜に対抗する位置に形成されたインクを貯留するインク室及び前記インク室に形成されインク液滴を吐出させるインク吐出孔を備え、前記圧電素子の前記基板側に配置された液滴貯留吐出部材と、前記圧電素子と前記液滴貯留吐出部材との間に配置され、前記圧電素子の伸縮により振動し、前記液滴貯留吐出部材の前記インク室の容積を変化させる振動板とを有するインクジェットヘッドを提供するものである。
【0013】
ここで、前記圧電素子は、前記第1電極、前記圧電体膜及び前記第2電極で構成される圧電ユニットを複数有し、前記基板上における、前記圧電ユニットの配置密度が1200npi(ノズルパーインチ)以上であることが好ましい。ここで、npiとは、1インチ当たりに配置されたノズルの数である。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の第3の形態は、基板上に第1電極と圧電体膜と第2電極が積層された圧電素子の製造方法であって、前記第1の金属膜上に、ウェットエッチングのエッチングレートが前記基板とは異なる材料で構成される第2の金属膜を形成する工程と、前記第2の金属膜上に圧電体膜層を形成する工程と、前記圧電体膜層をエッチングによりパターニングして前記圧電体膜を形成する工程と、前記第2の金属膜をドライエッチングによりパターニングする工程と、前記第1の金属膜をウェットエッチングによりパターニングして、前記第1電極を形成する工程とを有する圧電素子の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の形態によれば、第1電極を2層構造とすることで、第1電極に用いる貴金属の量を減らし、かつ、シート抵抗も低くすることができる。
また、2層構造とし、第1層を、ウェットエッチングのエッチングレートが基板と異なる材料で作製することで、第2層にドライエッチング、第1層にウェットエッチングを用いることができ、ドライエッチングにより第2層をオーバーエッチングした場合も、第1層を除去するのみであるので、基板が欠損することを防止でき、さらに第1層は、基板をエッチングしない溶液でエッチングできる。
これにより、高精度、抵抗値が低くかつ安価な圧電素子とすることができる。
また、ドライエッチングとウェットエッチングを組み合わせて製造することができ、また、ドライエッチングの精度が低くても高精度に作製できる簡単に製造することができる。
【0016】
本発明の第2の形態によれば、基板が均一で高精度な圧電素子により、圧電体膜の振動を高い精度で振動板に伝達することができる。これにより、インク液滴を高精度に吐出することができ、吐出応答性も高くすることができ、高精度な画像を形成することができる。
さらに、第1電極を低抵抗とすることができるため、消費電力も少なくでき、また、貴金属の使用量も少なくすることができるため、安価にすることができる。また、上述したように、ドライエッチングとウェットエッチングを組み合わせて製造することができるため、簡単に製造することができる。
【0017】
本発明の第3の形態によれば、第1電極を2層構造とし、第2層をドライエッチングでパターニングし、第1層をウェットエッチングでパターニングすることで、ドライエッチングにより基板をエッチングすることを防止できる。また、第1層を基板とウェットエッチングのエッチングレートが異なる材料で形成することにより、ウェットエッチング時に基板をエッチングすることも防止できる。これにより、簡単かつ高精度に、安価で高精度な圧電素子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係るに圧電素子及びそれを用いるインクジェットヘッドについて、添付の図面に示す実施形態を基に詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の圧電素子を用いるインクジェットヘッドの概略構成を示す正面図である。
【0020】
図1は、本発明の第1の態様の圧電素子を用いる本発明の第2の態様のインクジェットヘッドの概略構成を示す断面図である。
図1に示すインクジェットヘッド10は、圧電素子12と、ヘッド基板14とを有する。ここで、図1に示すように、インクジェットヘッド10は、複数の圧電ユニット15が一定間隔でヘッド基板14上に配置されており、1つの圧電ユニット15とその圧電ユニット15に対応するヘッド基板14部分が1つの吐出部を構成している。この各吐出部は同様の構成であるので、以下では、代表して1つの吐出部を構成する1つの圧電ユニット15とその圧電ユニット15に対応するヘッド基板14の各部について説明する。
【0021】
まず、圧電素子12は、上部電極16、圧電体膜18及び下部電極20で構成される圧電ユニット15と、基板22とを有し、基板22上に下部電極20、圧電体膜18、上部電極16の順に積層されている。
【0022】
基板22は、複数の圧電ユニット15に共通の板状部材であり、複数の圧電ユニット15をそれぞれ支持している。
この基板22には、シリコン、ガラス、ステンレス、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、アルミナ、サファイア、シリコンカーバイト等の種々の材料で作製した板状部材を用いることができる。また、基板22として、シリコン基板上にSiO2膜とSi活性層とを順次積層させたSIO基板等の積層基板を用いてもよい。
ここで、基板としては、SiあるいはSiOを材料として形成した基板と用いることが好ましい。基板の材料としてSiあるいはSiOを用いることで、基板を容易に加工することができ、安価にすることができる。さらに、後述するがウェットエッチングでのエッチングレート(選択比)も第1層と異なる値としやすくなる。
【0023】
圧電ユニット15は、上部電極16、圧電体膜18及び下部電極20を有する。
上部電極16は、板状の電極であり、圧電体膜18の一方の面に配置されている。上部電極16は、図示しない電源に接続されている。この上部電極16は、種々の材料で作製することができ、例えば、Au,Pt及びIr等の金属、IrO,RuO,LaNiO及びSrRuO等の金属酸化物、Al,Ta,Cr及びCu等の一般的に半導体プロセスで用いられる電極材料及びこれらの組み合わせで作製することができる。
また、上部電極16は、圧電体膜との密着性を高めるため、密着層と電極層とを積層させた多層構造としてもよい。
【0024】
圧電体膜18は、上部電極16から下部電極20に向かう方向(図1中上下方向)に一定の厚みのある部材であり、印加される電圧が変化することにより伸縮する。圧電体膜18は、Pbを主成分とし、下部電極20上に形成されている。ここで、x、y、zは、任意の実数であり、Bは、Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni及びランタニド元素の少なくとも1つで構成されている。また、圧電体膜は、x=y=1、z=3とした場合が標準であり、xとyは、ペロブスカイト構造をとりうる範囲内で種々の値に変更することができる。Pbを主成分とした場合は、ペロブスカイト構造とすることで、圧電特性を高くすることができる。
【0025】
ここで、圧電体膜18としては、Bサイトの元素としてZr及びTiを有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とすることが好ましい。主成分をPZTとすることで、圧電特性を高くすることができ、比較的安価にすることができる。
【0026】
また、圧電体膜としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に限定されず、チタン酸鉛、ジルコニウム酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛等の鉛含有化合物を用いることができる。
また、本実施形態では、Pbを主成分としたが、いわゆるAサイトに鉛を含有していない、ニッケルニオブ酸ジルコニウム、チタン酸ビスマスカリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム等も用いることもできる。
【0027】
ここで、圧電体膜18は、気相成長法によって作製することが好ましい。具体的には、プラズマを用いた気相成長法、光、熱等を用いた気相成長法を用いる、スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD等、種々の気相成長法で作製することが好ましい。
気相成長法により作製することでアニール処理等をすることなく圧電体膜を作製することができ、鉛抜け等を防止できるため、均一な圧電体膜を形成することができる。
【0028】
下部電極20は、基板22と圧電体膜18との間に配置されている。つまり、下部電極20は、圧電体膜18の上部電極16が配置されている面とは反対側の面に配置されている。この下部電極20は、図示しない電源、もしくは接地端子に接続されている。
下部電極20は、基板22側の第1層32と圧電体膜18側の第2層34の2層が積層された構造である。
【0029】
第1層32は、基板22上に配置されているシート状部材であり、所定のパターンで形成された電極である。ここで、本実施形態では、圧電体膜の配置パターンと略同一のパターンで形成されている。
第1層32は、ウェットエッチングのエッチングレートが基板22(のエッチングレート)とは異なる材料で作製されている。つまり、第1層32は、基板22に対してはエッチング効果が低い若しくは無い溶液によりウェットエッチングが可能な材料で作製されている。ここで、第1層32は、導電性材料であり、W,TiW,Au,Cu,Al,Ni及びCrの少なくとも1つを用いることが好ましい。
ここで、第1層32は、ウェットエッチングのエッチングレート(選択比)が基板22(のエッチングレート)と10倍以上異なる材料で作製することが好ましい。エッチングレートの比を10倍以上とすることで、第1層32のエッチング時に基板32がエッチングされることを防止でき、基板22を欠損させることを防止しつつ、第1層32の不要な部分を除去することができる。
【0030】
第2層34は、第1層32上に配置されているシート状部材であり、第1層32と同様のパターンで形成された電極である。
第2層34は、圧電体膜18と密着し、かつ、第1層32とは異なる材料で作製されている。ここで、第2層も導電性材料であり、例えば、Au,Pt,Ir,Ru,Rh及びPd等の金属、IrO,RuO,LaNiO及びSrRuO等の金属酸化物及びこれらの組み合わせで作製することができる。
特に、圧電体膜18との接着性を高くすることができ、また、導電性を高く(抵抗率を低く)できるため、第2層は、Pt、Ir、Ru、Rh及びPdの少なくとも1つにより作製することが好ましい。
【0031】
ここで、下部電極20は、シート抵抗を0.5Ω/sq以下とすることが好ましい。下部電極20のシート抵抗を0.5Ω/sq以下とすることで、消費電力を少なくすることができる。また、2層構造とすることで、高価な貴金属の使用量を少なくしてもシート抵抗を低くすることができ、製造コストを下げ、圧電素子を安価にすることができる。
【0032】
また、下部電極20は、第1層32の応力の方向と、第2層34との応力の方向とを互いに異なる方向とすることが好ましい。より具体的には、第1層32と第2層34とは、互いに応力バランスを取るように形成することが好ましい。
このように、第1層32の応力の方向と、第2層34との応力の方向とを互いに異なる方向とすることで、基板の反りを減らすことができ、エッチング等の際のアライメントが正確にできるため高精細なインクジェットヘッドを作製することができる。
【0033】
圧電素子12は、以上のような構成である。
この圧電素子12は、圧電体膜18を挟んでいる上部電極16と下部電極20とで、圧電体膜18に電圧を印加する。圧電体膜18は、上部電極16及び下部電極20から電圧が印加されることで伸縮する。
【0034】
このように圧電素子12の下部電極20を2層構造とすることで、下部電極20に用いる貴金属の量を減らすことができ、かつ、シート抵抗も低くすることができる。また、第2層に上記金属を用いることで、圧電体膜との接着性を高くすることができ、下部電極上にスパッタリング法等の気相成長法を用いて圧電体膜を作製する場合も、好適に作製することができる。具体的には、Pb抜けの少ないペロブスカイト結晶の圧電体膜を安定して成長させることができる。
また、2層構造とすることで、第2層にドライエッチング、第1層にウェットエッチングを用いることができ、ドライエッチングにより下部電極をオーバーエッチングした場合も、第1層を除去するのみであるので、基板が欠損することを防止できる。さらに、第1層をウェットエッチングのエッチングレートが基板14のエッチングレートと異なる材料で作製することで、下部電極20のパターニング時に基板が欠損すること(つまり、基板を傷つけること)を防止できる。
以上より、高精度、抵抗値が低くかつ安価な圧電素子とすることができる。
【0035】
次に、ヘッド基板14について説明する。
ヘッド基板14は、圧電素子12(の圧電ユニット15)の振動を伝達する振動板24と、インクを貯留し、振動板24の振動により、インク液滴を吐出するインク貯留吐出部材26とを有し、基板22の圧電ユニット15が配置されている面とは反対側の面に配置されている。ヘッド基板14は、圧電素子12の基板22側から、振動板24、インク貯留吐出部材26の順で積層されている。
【0036】
振動板24は、基板22の圧電素子12が配置されている面とは反対側に配置されている。振動板24は、対向する位置に配置されている圧電素子12の圧電ユニット15が伸縮することにより振動する。
【0037】
インク貯留吐出部材26は、振動板24の基板22とは反対側の面に配置されており、インクを貯留するインク室28と、インク液滴が吐出されるインク吐出口30とが形成されている。
インク室28は、所定量のインクが貯留された空間であり、圧電素子12の圧電ユニット15に対向する位置に配置されている。このインク室28の圧電ユニット15とは反対側の面には、1つのインク吐出口30が形成されている。
インク室28は、圧電素子12側の面が振動板24で形成されており、振動板24が振動すると容積が変化する。
具体的には、上部電極16及び下部電極20から圧電体膜18に電圧が印加されることで対応する位置の振動板24が振動し、インク室28の容積が小さくなる。このようにインク室28の容積が小さくなると、インク室28内に貯留されたインクがインク吐出口からインク液滴として吐出される。
なお、インク室28には、図示しないインク供給手段と接続されており、インク吐出口30からインク液滴が吐出されると、インク室28にインクが補充される。このようにして、インク室28は、一定量のインクが貯留されている。
インクジェットヘッド10は、基本的に以上の構成である。
【0038】
次に、インクジェットヘッド10のインク吐出動作について説明する。
まず、インクジェットヘッド10の下部電極20は、複数の圧電ユニットで同時に駆動され、一定の電圧が印加、若しくは接地されている。
この状態で、画像信号に応じて、上部電極16に電圧が印加されると、圧電体膜18に印加される電圧が変化するため、圧電体膜18が変形する。
【0039】
圧電体膜18が変形すると、その圧電体膜18に対応するインク室28の一面の振動板24が振動し、インク室28の容積が小さくなる。
インク室28の容積が小さくなると、インク室28内部に貯留されているインクの圧が高くなり、インク吐出口30からインク液滴が吐出される。
【0040】
このように、画像信号に応じてインク液滴を吐出することで、画像を形成、若しくは、目標物にインク液滴を吐出することができる。
【0041】
インクジェットヘッド10は、上述したように圧電素子の基板をオーバーエッチングすることなく下部電極を作製できるため、基板の厚みを均一にすることができる。これにより、圧電素子の圧電ユニットの振動を高い精度で振動板に伝達することができる。このように、振動板を正確に振動できることで、インク室の容積を正確に変化させることが可能となる。これにより、インク液滴をより正確に吐出することが可能となり、インクジェットヘッドのインク吐出応答性を高くすることが可能となる。
また、圧電素子の下部電極のシート抵抗を低くすることができるため、圧電素子での発熱を低減することができ、また、消費電力を小さくすることもできる。
【0042】
ここで、インクジェットヘッドは、圧電素子の圧電ユニットの配置密度を1200npi(ノズルパーインチ)以上とすることが好ましい。圧電ユニットの配置密度、つまり吐出部の配置密度を1200npi以上とすることで、より小さなインクジェットヘッドで、より高画質な画像を記録することが可能となる。また、圧電ユニットの振動を振動板に正確に伝達することができるため、配置密度を高くした場合でも、正確にインク液滴を吐出することができる。
【0043】
ここで、本実施形態では、基板22と振動板24とインク貯留吐出部材26とをそれぞれ別部材としたが、一枚の板状部材にインク室及び液滴貯留吐出部材を形成し、さらに振動板を設けた一体構造としてもよい。つまり、基板22に振動板及びインク貯留吐出部材を形成してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、インク液滴を吐出させるインクジェットヘッドとして説明したが、本発明はこれに限定されず、液滴を吐出する種々の液滴吐出ヘッドとして用いることができる。一例としては、化学反応を起こさせるための反応開始剤を、対象に液滴として吐出させる液滴吐出ヘッドや、液体を一定量混合させるために、溶媒中に他の液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド等にも用いることができる。
【0045】
次に、圧電素子の製造方法の一例について説明する。
まず、圧電素子の製造に用いる装置の一例について説明する。
図2は、本発明の圧電素子の製造方法に用いるスパッタリング装置の一実施形態の概略構成を示す断面図である。
【0046】
スパッタリング装置50は、気相成長法の1つであるプラズマを用いたスパッタリング法で、下部電極20上に圧電体膜18を成膜する装置であり、真空容器52と、支持部54と、プラズマ電極56と、ガス導入管58と、ガス排出管60と、高周波電源62とを有する。
真空容器52は、鉄、ステンレス、アルミニウム等で形成される気密性の高い容器である。真空容器52としては、スパッタリンク装置で利用される種々の真空容器(真空チャンバ、ベルジャー、真空槽)を用いることができる。
【0047】
支持部54は、真空容器52の内部の上面側に配置されている。ヒータ54は、その下面に下部電極が形成された蒸着基板Bを支持する支持機構、および、支持している蒸着基板Bを所定温度に加熱機構で構成されている。
ここで、蒸着基板Bは、下部電極20が形成されていれば、特に限定はなく、例えば、下部電極20を形成した基板22でもよく、基板22と振動板24及びインク貯留吐出部材26が形成されたヘッド基板14とを接合した基板でもよい。
【0048】
プラズマ電極56は、真空容器52の内部の下面側に配置されている。つまり、プラズマ電極56は、支持部54に対向して配置されている。プラズマ電極56は、支持部54側の面にターゲットTを装着する装着部を有し、また、電圧を印加する高周波電源62が接続されている。ここで、ターゲットTとは、蒸着基板Bの下部電極20上に成膜する膜の組成に応じた材料である。
【0049】
ガス導入管58は、真空容器52内にガスを導入するためのパイプであり、図示しないガスタンク等と接続されている。また、ガス排出管60は、真空容器52内の気体を排気するためのパイプであり、図示しない真空ポンプ等と接続されている。ここで、ガス導入管58から真空容器52内に導入するガスとしては、アルゴン(Ar)、または、アルゴン(Ar)と酸素(O)の混合ガス等を用いることができる。
【0050】
次に、スパッタリンク装置50による成膜方法について説明する。
まず、支持部54に蒸着基板Bを装着し、プラズマ電極56の装着部にターゲットTを装着する。その後、ガス排出管60から真空容器52内の空気を排出しつつ、ガス導入管58から真空容器52内にガスを導入し、真空容器52内にガスを充満させた状態にする。
その後、高周波電源62からプラズマ電極56に電圧を印加し、プラズマ電極56から放電を発生させる。プラズマ電極56で放電を発生させると、真空容器内のガスがプラズマ化され、ガスのプラスイオンが生成される。生成されたプラスイオンは、ターゲットTをスパッタする。スパッタされたターゲットTの構成元素は、ターゲットから放出され、中性あるいはイオン化された状態で蒸着基板Bに蒸着される。
スパッタリング装置50は、このようにして蒸着基板Bに膜を形成する。
【0051】
以下、図3とともに本発明の圧電素子の製造方法についてより詳細に説明する。
まず、基板に下部電極20の第1層を形成する(S10)。第1層の作製方法は、スパッタリング、蒸着、また、機械的に貼り付ける等種々の方法を用いることができる。
【0052】
次に、基板上に形成した第1層上に、第2層を形成する(S12)。第1層の作製方法も、スパッタリング、蒸着、また、機械的に貼り付ける等種々の方法を用いることができる。
【0053】
次に、第2層上に圧電膜を形成する(S14)。具体的には、スパッタリンク装置50を用いて、蒸着基板Bとして、下部電極20が形成された基板22を配置し、ターゲットとしてPZT等の圧電膜の材料の焼成体を配置する。そして、上述したように、真空容器52内に所定のガスを充満させ、プラズマ放電を発生させることにより、蒸着基板Bの下部電極20上に圧電膜を形成する。
【0054】
次に、圧電膜及び第2層をドライエッチングする(S16)。
具体的には、圧電膜上にレジスト層等でマスクパターンを形成し、圧電膜及び第2層をドライエッチングする。
ここで、ドライエッチングとしては、ハロゲン系ガスとArを使用する方法等、種々の反応性エッチングまたはイオンエッチングを用いることができる。
このようにドライエッチングを行うことで、所定パターンの圧電体膜及び第2層が形成される。ここで、ドライエッチングは、第2層は完全にエッチングし、基板はエッチングしない深さで行う。つまり、第1層は部分的にエッチングされてもよい。
【0055】
次に、第1層をウェットエッチングする(S18)。
具体的には、第1層をエッチングし、かつ基板をエッチングしない溶液により、第1層をエッチングする。また、必要に応じて、圧電体膜にはマスクを形成する。
第1層をウェットエッチングすることで、第2層と同様のパターンにエッチングされ、下部電極が形成される。
【0056】
次に、圧電体膜上に形成したマスクを除去し、圧電体膜上に上部電極を形成する(S20)。ここで、上部電極16の作製方法は、特に限定されず、マスク等を用い、スパッタリング、蒸着により形成する方法、また、機械的に貼り付ける等種々の方法を用いることができる。
以上のようにして圧電素子を製造する。
【0057】
このように、下部電極を2層構造とし、基板側の層をウェットエッチング可能な材料で作製し、圧電体膜側の層を圧電体膜との密着性が高く、シート抵抗値が低くさらに圧電体膜を気相成長法で形成する際に成膜可能な材料で作製することで、基板を傷つけることなく、高精度かつ容易に圧電素子を作製することができる。
また、第2層を設けることで、ドライエッチング時にオーバーエッチングした場合でもその後ウェットエッチングで除去する第1層をエッチングするのみで、基板をエッチングすることを防止できる。また、上述したように第1層を、ウェットエッチングのエッチングレートが基板のウェットエッチングのエッチングレートと異なる材料で形成することで、基板をエッチングすることなく第1層をエッチングできる点は上述したとおりである。
【0058】
ここで、プラズマを用いる気相成長法でPZT膜を成膜する場合は、成膜温度Ts[℃]と、成膜時のプラズマ中のプラズマ電位Vs[V]とが、下記式(1)及び式(2)の両方を満たすことが好ましい。
400≦Ts≦475 式(1)
20≦Vs≦50 式(2)
また、下記式(3)及び式(4)の両方を満たすことも好ましい。
475≦Ts≦600 式(3)
Vs≦40 式(4)
上記の式(1)及び式(2)、もしくは、式(3)及び式(4)のいずれかを満たす条件で成膜することで、パイロクロア層の少なくペロブスカイト結晶が安定的に成長し、圧電特性の高い圧電体膜とすることができる。
【0059】
また、本実施形態では、プラズマを用いた気相成長法により圧電体膜を作製する場合について説明したが、これに限定されず、光、熱等を用いた気相成長法にも用いることができ、スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD等、種々の気相成長法で圧電体膜を作製してもよい。
また、気相成長法に限定されず、第2層上に接着剤等で圧電体膜を接着させてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、圧電体膜として、圧電特性が高く、比較的安価であり、作製がよういであるため、Bサイトの元素としてZr及びTiを有するPZTの圧電体膜を形成する場合として説明したが、これに限定されず、上述したPbを主成分とする圧電体膜、また、鉛を使用していない圧電体膜を作製する場合も同様である。
【0061】
また、本実施形態では、圧電体膜及び下部電極のエッチング後に上部電極を形成したが、本発明はこれに限定されず、圧電体膜のエッチングを行う前に、上部電極を作製してもよい。具体的には、図3中のS14とS16との間で上部電極を作製してもよい。
【0062】
以下、具体的実施例を用いて本発明の圧電素子についてより詳細に説明する。
具体例に用いた圧電素子は、以下の方法で作製した。図4(A)〜(I)は、圧電素子の製造方法の各工程を模式的に示す工程図である。
【0063】
まず、図4(A)に示すように、基板としてSi基板101上にSiO膜102が形成されたSOI基板100を用いた。
次に、このSOI基板100のSiO膜102上にスパッタ法で厚さ1600nmのTiW膜104を成膜する(図4(B)参照)。ここで、成膜時の成膜温度は、350℃とした。
さらに、TiW膜104上にスパッタ法で厚さ150nmのIr膜106を成膜した(図4(C)参照)。成膜時の成膜温度は、305℃とした。
このようにして、SOI基板100上に下部電極の第1層となるTiW膜104と第2層となるIr膜106を成膜する。
【0064】
次に、Ir膜106上にスパッタ法でPZT膜108を成膜した(図4(D)参照)。具体的には、上述のスパッタリング装置50を用い蒸着基板Bとして、SOI基板100上にTiW膜104及びIr膜106が形成された基板を用い、ターゲットTとして、PZT焼成体を用いた。成膜時の成膜温度は、475℃とした。
上記条件で、Ir膜106上に圧電体膜となるPZT膜108を成膜した。
【0065】
次に、リフトオフ法によりパターニングして、Tiを密着層としてIr膜をPZT膜108上に成膜することで、PZT膜108上に上部電極110を形成した(図4(E)参照)。
【0066】
その後、PZT膜108上の上部電極110を含む所定領域にレジスト層112を形成した(図4(F)参照)。
次に、このレジスト層112をマスクとして、PZT膜108及びIr膜106をドライエッチングした。ここで、ドライエッチングには、ハロゲン系ガス及びArを用いた。また、ドライエッチングは、TiW膜104が露出するまで行った。ここで、TiW膜104は一部エッチングされたが、SOI基板100は露出していなかった。つまり、SOI基板100は、エッチングされていなかった。
このように、レジスト層112をマスクとして、PZT膜108及びIr膜106をドライエッチングし、所定パターン形状とすることで、圧電体膜108’及び第2層106’を作製した(図4(G)参照)。
【0067】
その後、さらにレジスト層112をマスクとして、TiW膜104をウェットエッチングした。ここで、ウェットエッチングには、過酸化水素(H)を用いた。このように、レジスト層112をマスクとして、TiW膜104をウェットエッチングし、所定パターンとすることで、第1層104’作製した(図4(H)参照)。
なお、過酸化水素は、SiOに対してエッチング効果がほとんどないため、SOI基板100のSiO膜102は、エッチングされなかった。
その後、レジスト層112を除去することで、基板上に下部電極、圧電体膜、上部電極が積層された圧電素子とした(図4(I)参照)。
【0068】
このようにして、作製した圧電素子の下部電極のシート抵抗を測定したところ、シート抵抗は、0.2Ω/sqであった。
また、下部電極と、圧電体膜及び基板との密着性は良好であった。
また、上述したように、ドライエッチング及びウェットエッチングを組み合わせて下部電極をエッチングしたため、基板を傷つけることなく、かつ、確実に所定パターンの下部電極を形成することができた。また、Ir電極の使用量を150nmと少なくすることができた。
さらに、Ir膜の上に形成したPZT膜の配向をXRD(X線回析)測定により測定した。測定した結果、PZT膜は、(100)配向であった。また、ヒステリシス特性も測定した結果、従来のIrのみの下部電極上に形成したPZT膜のヒステリシス特性と同等であった。つまり、下部電極を2層とした場合も、従来と同様の性能の圧電体膜を作製できることがわかる。
【0069】
次に、実施例2として、図4に示した方法と同様の工程で、第1層のTiW膜の厚みを820nm、第2層のIr膜の厚みを150nmとした圧電素子を作製した。
実施例2の圧電素子の下部電極のシート抵抗は、0.35Ω/sqであった。
また、実施例2の圧電素子も、基板をエッチングすることなく(つまり、基板を傷つけることなく)、圧電体膜及び下部電極を作製することができた。
【0070】
次に、実施例3として、図4に示した方法と同様の工程で、第1層のTiW膜の厚みを1000nm、第2層のIr膜の厚みを1200nmとした圧電素子を作製した。
実施例3の圧電素子の下部電極のシート抵抗は、0.08Ω/sqであった。
また、実施例3の圧電素子も、基板をエッチングすることなく、圧電体膜及び下部電極を作製することができた。
【0071】
次に、比較例1として、下部電極を単層構造とした圧電素子も作製し、作製した圧電素子の品質及びシート抵抗を測定した。
比較例1の圧電素子は、以下のようにして作製した。ここで、TiW膜を形成していない点、及びウェットエッチングによるTiW膜のパターニングを行っていない点を除いて、他の点は上述と同様にして作製しているので、各工程の詳細な説明については省略する。
まず、スパッタ法により、SIO基板上に厚さ150nmのIr膜を成膜した。その後、SIO基板上に形成したIr膜上にスパッタ法によりPZT膜を形成した。その後、PZT膜状に上部電極を形成し、さらに上部電極を含む領域にレジスト層を形成する。その後、レジスト層をマスクとしてPZT膜及びIr膜をドライエッチングする。その後レジスト層を除去した。
このようにして圧電素子を作製した。図5(A)及び(B)に、比較例として作製した圧電素子の概略構成の断面図を示す。
【0072】
上記方法で作製した圧電素子の下部電極のシート抵抗を測定した。測定した結果、シート抵抗は、1.1Ω/sqであった。また、SOI基板100上に直接形成されたIr膜120をドライエッチングにより除去したため、図5(A)に示すように、SOI基板120の一部(具体的には、SiO層102の一部)がエッチングされてしまった。
このように、SOI基板100の一部がエッチングされてしまったため、図5(B)に示すようにSi基板101にインク室124を形成した場合にインク室124周りの基板の厚みが不均一となり、圧電ユニットからインク室及び振動板に伝達する振動の精度が低かった。なお、本比較例では、SOI基板100にインク室を形成したが、SOI基板に振動板及び液滴貯留吐出部材を形成した場合もSOI基板の厚みが変化するため、同様の結果が出ると考えられる。
【0073】
また、比較例2として、Ir膜の厚みを1500nmとしたことを除いて比較例1と同様の工程で、圧電素子を作製した。
このようにして作製した圧電素子の下部電極のシート抵抗を測定した。測定した結果、シート抵抗は、0.11Ω/sqであった。また、SOI基板上に直接形成されたIr膜をドライエッチングにより除去したため、SOI基板の一部がエッチングされてしまった。
【0074】
以上の実施例及び比較例の測定結果を表1にまとめて示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示すように、下部電極を2層で形成し、かつ、基板側をウェットエッチング可能な材料とすることで、基板をオーバーエッチングすることなく、下部電極を形成することができることがわかる。
また、2層とすることで、高価なIrの使用量を少なくしつつ、かつシート抵抗も低くでき、低抵抗で発熱量の少なく、かつ安価な圧電素子とすることができることがわかる。
以上より、本発明の効果は明らかである。
【0077】
また、上記実施形態では、基板にSiOを、第1層にTiWを、エッチング液として過酸化水素水を用いた場合を説明したが、これに限定されずエッチングレートが異なる種々の組み合わせとすることができ、例えば、基板として表面酸化膜つきのSiを、第1層としてAuを、エッチング液としてIとKIを混合した液体を用いた組み合わせとしても、上記効果を得ることができる。
【0078】
以上、本発明に係る圧電素子及びそれを用いるインクジェットヘッドについて詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【0079】
一例としては、上記の実施形態では、本発明の圧電素子を本発明のインクジェットヘッドに用いた場合として説明したが、本発明はこれに限定されず、メモリ、圧力センサ等種々の用途に用いる圧電素子として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の圧電素子を用いる本発明のインクジェットヘッドの一例の概略構成を示す断面図である。
【図2】圧電素子の作製に用いるスパッタリング装置の一実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図3】圧電素子の製造方法の一実施形態の工程を示すフロー図である。
【図4】(A)〜(I)は、圧電素子の製造方法の各工程を模式的に示す工程図である。
【図5】(A)及び(B)は、それぞれ比較例として作製した圧電素子の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0081】
10 インクジェットヘッド
12 圧電素子
14 ヘッド基板
15 圧電ユニット
16 上部電極
18 圧電体膜
20 下部電極、
22 基板
24 振動板
26 インク貯留吐出部材
28 インク室
30 インク吐出口
32 第1層
34 第2層
50 スパッタリング装置
52 真空容器
54 支持部
56 プラズマ電極
58 ガス導入管
60 ガス排出管
62 高周波電源
100 Si基板
102 SiO
104 第1層
106 第2層
108 圧電体膜層
110 マスク
T ターゲット
B 蒸着基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1電極と、
前記第1電極上に形成された圧電体膜と、
前記圧電体膜の前記第1電極が形成された面と反対側の面に形成された第2電極とを有し、
前記第1電極は、前記基板側の第1層と前記圧電素子側の第2層とで構成され、
前記第1層は、ウェットエッチングのエッチングレートが前記基板と異なる材料で形成されている圧電素子。
【請求項2】
前記第1層は、W、TiW、Au、Cu、Al、Ni及びCrの少なくとも1つを材料として形成されている請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
前記第2層は、Pt、Ir、Ru、Rh及びPdの少なくとも1つを材料として形成されている請求項1または2に記載の圧電素子。
【請求項4】
前記第1電極は、シート抵抗が0.5Ω/sq以下である請求項1〜3のいずれかに記載の圧電素子。
【請求項5】
前記基板は、SiあるいはSiOを材料として形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の圧電素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の圧電素子と
前記圧電体膜に対抗する位置に形成されたインクを貯留するインク室及び前記インク室に形成されインク液滴を吐出させるインク吐出孔を備え、前記圧電素子の前記基板側に配置された液滴貯留吐出部材と、
前記圧電素子と前記液滴貯留吐出部材との間に配置され、前記圧電素子の伸縮により振動し、前記液滴貯留吐出部材の前記インク室の容積を変化させる振動板とを有するインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記圧電素子は、前記第1電極、前記圧電体膜及び前記第2電極で構成される圧電ユニットを複数有し、
前記基板上における、前記圧電ユニットの配置密度が1200npi以上である請求項6に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
基板上に第1電極と圧電体膜と第2電極が積層された圧電素子の製造方法であって、
前記基板上に第1の金属膜を形成する工程と、
前記第1の金属膜上に、ウェットエッチングのエッチングレートが前記基板とは異なる材料で構成される第2の金属膜を形成する工程と、
前記第2の金属膜上に圧電体膜層を形成する工程と、
前記圧電体膜層をエッチングによりパターニングして前記圧電体膜を形成する工程と、
前記第2の金属膜をドライエッチングによりパターニングする工程と、
前記第1の金属膜をウェットエッチングによりパターニングして、前記第1電極を形成する工程とを有する圧電素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−70955(P2009−70955A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236308(P2007−236308)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】