説明

地上・車上間情報伝送システム

【課題】ネットワークの構築を容易にするとともに中継局の数を増やさずに、地上装置と車上装置間で安定して情報を伝送する。
【解決手段】地上装置1に有線で接続されて駅毎に設けられた複数のアクセスポイント4a,4b,4cと駅の間の中間に設けられた中継局5とを漏洩同軸ケーブル7で接続し、アクセスポイント4a,4b,4cと中継局5は車上無線局6と無線リンクするマルチホップ接続を構築して、アクセスポイント4a,4b,4cと中継局5は複数ルーティングパスを確保することができるというマルチホップの特性を生かすことができ、障害発生時や電波環境の変化に対して柔軟に地上装置1と車上装置3間のパスを変更することができ、安定性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軌道回路を使用しないで無線を利用した列車制御における地上・車上間情報伝送システム、特にネットワーク構築の簡略化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軌道回路を使用しないで無線を利用した列車制御システムにおいては、地上に設けられた基地局と車上装置との間で無線通信により情報を伝送する無線列車制御システムが特許文献1や特許文献2に開示されている。この地上装置と車上装置間の無線通信には、図3(a)に示すように、地上装置1に接続される複数のアクセスポイント4a〜4eに対して列車2に搭載された車上装置3に接続されている車上無線局6を無線リンクで接続し、アクセスポイント4a〜4e間を例えば光ケーブルによる有線ネットワークで接続しているシングルホップ接続が広く使用されている。また、アクセスポイント4a〜4e間の干渉を抑えるために、図3(b)に示すように、アクセスポイント4a〜4eのアンテナに代えて漏洩同軸ケーブル(LCX)を使用する場合もある。
【0003】
一方、メッシュネットワークの構成では、図4に示すように、アクセスポイント4a,4b間の接続や中継局5a〜5cと車上無線局6間の接続も無線リンクで接続し、複数の無線リンクをパケットが中継するマルチホップ接続が使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
列車制御システムで地上装置と車上装置間で情報伝送を行うためにシングルホップ接続を使用した場合、列車が走行する線路に沿ってアクセスポイントの電波到達距離内に次のアクセスポイントを設置し、各アクセスポイントを有線で接続する必要があり、ネットワークを構築することが容易でなかった。
【0005】
また、マルチホップ接続を使用した場合、アクセスポイントと中継局の接続に有線接続は不要であり、ネットワークの構築は容易であるが、中継局の電波到達距離の関係から、図5に示すように、中継局5a〜5cを列車2が走行する線路に沿って網の目のように設置しなければならなく、中継局の数が多くなるという問題が発生してしまう。
【0006】
この発明は、このような問題を解消し、ネットワークの構築を容易にするとともに中継局の数を増やさずに、地上装置と車上装置間で安定して情報を伝送することができる地上・車上間情報伝送システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の地上・車上間情報伝送システムは、地上装置に有線で接続され、駅毎に設けられた複数のアクセスポイントと、駅の間の中間に設けられた中継局と、列車に搭載された車上装置に接続された車上無線局とで構成され、前記アクセスポイントと前記中継局の間は漏洩同軸ケーブルで接続され、前記アクセスポイントと前記中継局は前記車上無線局と無線リンクするマルチホップ接続を構築していることを特徴とする。
【0008】
前記車上無線局のアンテナは、前記漏洩同軸ケーブルに近接して配置され、前記漏洩同軸ケーブルとの間で近接通信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、地上装置に有線で接続されて駅毎に設けられた複数のアクセスポイントと駅の間の中間に設けられた中継局とを漏洩同軸ケーブルで接続し、アクセスポイントと中継局は車上無線局と無線リンクするマルチホップ接続を構築することにより、アクセスポイントと中継局は複数ルーティングパスを確保することができるというマルチホップの特性を生かすことができ、障害発生時や電波環境の変化に対して柔軟に地上装置と車上装置間のパスを変更することができ、安定性を高めることができる。
【0010】
また、各アクセスポイントと中継局の間を漏洩同軸ケーブルで接続することにより、各アクセスポイント間で確実に通信でき、マルチホップの特徴を生かすことができる。
【0011】
さらに、車上無線局のアンテナを漏洩同軸ケーブルに近接して設けて、車上無線局のアンテナと漏洩同軸ケーブルの間で近接通信することにより、空間波通信の弱点である外来ノイズの影響を抑えて地上装置と車上装置の間で安定して情報を授受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の地上・車上間情報伝送システムの構成図である。
【図2】車上無線局のアンテナの漏洩同軸ケーブルに対する配置図である。
【図3】シングルホップ接続を示す構成図である。
【図4】マルチホップ接続を示す構成図である。
【図5】地上装置と車上装置間の情報伝送に従来のマルチホップ接続を使用した場合の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1はこの発明の地上装置1と列車2に搭載された車上装置3との間で軌道回路を使用しないで無線を利用して情報を伝送する地上・車上間情報伝送システムの構成図である。図に示すように、情報伝送システムは、地上装置1に有線で接続され、駅毎に設けられたアクセスポイント(AP)4a,4b,4cと、駅の間の中間に設けられた中継局(MWR)5a,5bと、列車2に搭載された車上装置3に接続された車上無線局6とで構成されている。各アクセスポイント4a,4b,4cと中継局5a,5bの間は漏洩同軸ケーブル(LCX)7で接続され、各アクセスポイント4a,4b,4cと中継局5a,5bは漏洩同軸ケーブル7を介して車上無線局6と無線リンクするマルチホップ接続を構築している。
【0014】
車上無線局6のアンテナ8は、図2の車両構造図に示すように、車両9を案内するガイド10の上部に配置された漏洩同軸ケーブル7に近接して車両9の下部に設けられている。
【0015】
この情報伝送システムで車上装置3は列車位置情報を車上無線局6により地上に送信する。この送信されている列車位置情報は漏洩同軸ケーブル7をアンテナとしてアクセスポイント5で受信して地上装置1で取得する。地上装置1は取得した列車位置情報を基に列車2の間隔を認識して各列車2の進行可能範囲を算出して車上装置3に送信して列車制御を行う。
【0016】
この車上装置3と地上装置1で情報を授受するとき、各アクセスポイント4と中継局5は漏洩同軸ケーブル7を介して車上無線局6と無線リンクするマルチホップ接続を構築して、アクセスポイント4と中継局5の間はそれぞれリンクを取る形で設置されているから、アクセスポイント4と中継局5は複数ルーティングパスを確保することができるというマルチホップの特性を生かすことができ、漏洩同軸ケーブル7の断線を含む障害発生時や電波環境の変化に対して柔軟に地上装置1と車上装置3間のパスを変更することができ、安定性を高めることができる。
【0017】
また、各アクセスポイント4と中継局5の間を漏洩同軸ケーブル7で接続しているから、各アクセスポイント4間で確実に通信でき、マルチホップの特徴を生かすことができる。
【0018】
また、車上無線局6のアンテナ8は漏洩同軸ケーブル7に近接して設けているから、車上無線局6のアンテナ8と漏洩同軸ケーブル7の間で近接通信でき、空間波通信の弱点である外来ノイズの影響を抑えて地上装置1と車上装置3の間で安定して情報を授受することができる。
【符号の説明】
【0019】
1;地上装置、2;列車、3;車上装置、4;アクセスポイント、
5;中継局、6;車上無線局、7;漏洩同軸ケーブル、8;車上無線局のアンテナ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2000−165312号公報
【特許文献2】特開2009−12489号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上装置に有線で接続され、駅毎に設けられた複数のアクセスポイントと、駅の間の中間に設けられた中継局と、列車に搭載された車上装置に接続された車上無線局とで構成され、
前記アクセスポイントと前記中継局の間は漏洩同軸ケーブルで接続され、前記アクセスポイントと前記中継局は前記車上無線局と無線リンクするマルチホップ接続を構築していることを特徴とする地上・車上間情報伝送システム。
【請求項2】
前記車上無線局のアンテナは、前記漏洩同軸ケーブルに近接して配置され、前記漏洩同軸ケーブルとの間で近接通信する請求項1記載の地上・車上間情報伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−193262(P2010−193262A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36470(P2009−36470)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】