説明

地中熱交換器に係るU字管の地面の掘削孔への建て込み方法

【課題】少なくとも一対のU字管を掘削管内に建て込む際に、その先頭となるU字継手部の掘削管内での詰まりを防いで、一対のU字管を円滑に建て込めるようにする。
【解決手段】地面に掘削孔を形成し、該掘削孔に地中熱交換器に係るU字管を建て込む方法である。掘削管の管軸方向を掘削方向に向けながら前記掘削管を管軸周りに回転させて掘削することにより、前記地面に前記掘削孔を形成する掘削工程と、前記掘削管の管軸方向に前記U字管の管軸方向を沿わせつつ前記掘削管内に少なくとも一対の前記U字管を建て込むU字管建て込み工程と、を有する。前記U字管は、熱媒体の流路の折り返し部分をなすU字継手部と、前記U字継手部に連結される二本の単管と、を有する。前記U字管建て込み工程においては、前記一対のU字管は、互いの前記U字継手部同士を前記管軸方向にずらした状態で一緒に前記掘削管内に建て込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱交換器に使用されるU字管を地面の掘削孔へ建て込む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通年の温度変動の小さい地中熱を利用して建物の冷暖房等を行う地中熱利用システムが注目されている。この地中熱利用システムでは、地盤との間で採・放熱を行うべく地中に地中熱交換器が設置される。そして、例えば、夏場には地盤に放熱し、冬場には地盤から採熱する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−13828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この地中熱交換器は、地盤に鉛直に埋設されるU字管を有する。そして、このU字管の一方の管端から同管内に熱媒体を流し込むとともに、他方の管端から、地中熱と熱交換後の熱媒体を取り出して、ヒートポンプ等へ送出して利用する。
【0005】
かかる地中熱交換器は、例えば次のようにして地中に設置される。
先ず、ドリルとなる掘削管を管軸周りに回転させて掘削方向に前進させることにより、掘削孔を形成する。なお、この掘削孔が完成した時点では、未だ掘削孔内の略全長に亘り掘削管は挿入状態にある(例えば、図3B、図4Aを参照)。
次に、掘削管の管軸方向にU字管の管軸方向を沿わせつつ同U字管を掘削管内に建て込む(例えば、図4B、図4Cを参照)。ちなみに、この時、掘削管は、掘削孔の内壁面の崩落を防ぐ孔壁保護部材として機能し、また、U字管の掘削孔への建て込みを案内する案内部材としても機能する。
次に、掘削管を管軸方向に沿って引き上げることにより、U字管を掘削孔に残しつつ、掘削管のみを掘削孔から引き抜く(例えば、図5A、図5Bを参照)。
そして、最後に、掘削孔とU字管との間の隙間を適宜な充填材で埋め戻す(例えば、図5Cを参照)。
【0006】
ここで、上述のU字管を一対有する仕様の地中熱交換器を設置する場合には、当然ながら、上記建て込み工程においては、一対のU字管同士を互いに側方に重ね合わせながら掘削管内に挿入していくことになる。
【0007】
しかしながら、一対のU字管の先頭となるU字継手部のサイズが大きく、その外形寸法が掘削管の内径寸法と近い寸法の場合には、掘削管内への建て込み中に先頭部が、掘削管の内周面に引っ掛かって詰まる等して、建て込み作業が滞る虞があった。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、少なくとも一対のU字管を掘削管内に建て込む際に、その先頭となるU字継手部の掘削管内での詰まりを防いで、一対のU字管を円滑に建て込めるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
地面に掘削孔を形成し、該掘削孔に地中熱交換器に係るU字管を建て込む方法であって、
掘削管の管軸方向を掘削方向に向けながら前記掘削管を管軸周りに回転させて掘削することにより、前記地面に前記掘削孔を形成する掘削工程と、
前記掘削管の管軸方向に前記U字管の管軸方向を沿わせつつ前記掘削管内に少なくとも一対の前記U字管を建て込むU字管建て込み工程と、を有し、
前記U字管は、熱媒体の流路の折り返し部分をなすU字継手部と、前記U字継手部に連結される二本の単管と、を有し、
前記U字管建て込み工程においては、前記一対のU字管は、互いの前記U字継手部同士を前記管軸方向にずらした状態で前記掘削管内に建て込まれることを特徴とする。
【0010】
上記請求項1に示す発明によれば、一対のU字管が建て込まれる際の建て込み方向の先頭部には、一方のU字継手部しか配置されないので、当該先頭部の大きさは、U字継手部同士を重ね合わせた場合との対比において、略半減化される。これにより、先頭部のサイズが格段に小さくなる。その結果、掘削管内にて先頭部が引っ掛かって詰まること等が防止され、円滑に建て込めるようになる。
【0011】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の地中熱交換器に係るU字管の地面の掘削孔への建て込み方法であって、
前記U字継手部は、前記単管の全周に亘って該単管の外周面よりも前記管軸方向と直交方向の外方に突出しており、
前記ずらした状態においては、前記一対のU字管のうちの一方のU字管のU字継手部が、他方のU字管の二本の単管に重なった状態になっていて、前記一対のU字管のU字継手部同士は一部分も重なっていないことを特徴とする。
【0012】
上記請求項2に示す発明によれば、一対のU字管を建て込む際の管軸方向と直交方向の寸法の最大値を、U字継手部同士を重ね合わせた場合の同直交方向の寸法の最大値よりも小さくすることができる。その結果、一対のU字管を掘削管内へ円滑に建て込み可能となる。
【0013】
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載の地中熱交換器に係るU字管の地面の掘削孔への建て込み方法であって、
前記U字継手部同士を重ね合わせた場合における前記管軸方向と直交方向の寸法の最大値は、前記掘削管の内径の最小値よりも大きく、
前記U字継手部と前記二本の単管とを重ね合わせた場合における前記管軸方向と直交方向の寸法の最大値は、前記掘削管の内径の最小値よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
上記請求項3に示す発明によれば、U字継手部同士を重ね合わせた際に、掘削管内に建て込めないような寸法の場合でも、U字継手部と前記二本の単管とを重ね合わせれば、掘削管内へ建て込むことができるようになる。すなわち、一対のU字管を掘削管内へ確実且つ円滑に建て込み可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、少なくとも一対のU字管を掘削管内に建て込む際に、その先頭となるU字継手部の掘削管内での詰まりを防いで、一対のU字管を円滑に建て込み可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る地中熱交換器21を用いた地中熱利用システム11の説明図である。
【図2】図2Aは、地盤Gの竪孔23を透視して見た地中熱交換器21の概略側面図であり、図2Bは、図2A中のB−B断面図である。
【図3】図3A及び図3Bは、地中熱交換器21の設置工事の施工手順の説明図である。
【図4】図4A乃至図4Cは、同施工手順の説明図である。
【図5】図5A乃至図5Cは、同施工手順の説明図である。
【図6】上下に隣り合う掘削管24,24同士の連結構造の概略拡大縦断面図である。
【図7】図7Aは、U字管30のU字継手部31及びその近傍部分の斜視図であり、図7Bは、同平面図であり、図7Cは、図7B中のC−C矢視図である。
【図8】図8Aは、建て込み時における一対のU字管30,30の建て込み方向の先頭部の状態の参考例の側面図であり、図8Bは、図8A中のB−B断面図である。
【図9】図9Aは、建て込み時における一対のU字管30,30の建て込み方向の先頭部の状態の本実施形態の側面図であり、図9Bは、図9A中のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
===本実施形態===
<<<地中熱交換器21について>>>
図1は、本実施形態に係る地中熱交換器21を用いた地中熱利用システム11の説明図である。図2Aは、地盤Gの竪孔23を透視して見た地中熱交換器21の概略側面図である。また、図2Bは、図2A中のB−B断面図であり、図2Cは、図2A中のC−C矢視図である。
【0018】
この地中熱利用システム11は、地盤Gとの間で熱交換を行う地中熱交換器21と、地中熱交換器21の熱媒体26からの熱を利用して建物1の暖房のための温水や冷房のための冷水を生成するヒートポンプ15と、循環ポンプ17とを有する。なお、ヒートポンプ15の構成は周知なので、その説明は省略する。
【0019】
図2A及び図2Bに示すように、この地中熱交換器21は、所謂「ボアホール方式」である。すなわち、地盤Gに形成された掘削孔としての竪孔23と、竪孔23に挿入されるU字管30と、竪孔23とU字管30との間の空間SP23に充填される充填材27と、を有している。そして、U字管30の一方の管端開口35aには、ヒートポンプ15から熱媒体26として水又は不凍液等が送り込まれ、当該熱媒体26は、U字管30を流れる間に地盤Gの地中熱により加熱又は冷却され、しかる後に、U字管30の他方の管端開口35bから、循環ポンプ17によりヒートポンプ15へ向けて送られて、ヒートポンプ15にて温水生成や冷水生成に供される。
【0020】
竪孔23は、ボーリングマシン60により地面Gにほぼ垂直に掘削された孔であり、その直径は100〜200mm、深さは30〜150mである。
【0021】
U字管30は、例えば高密度ポリエチレン等の樹脂製のU字形状の管である。詳しくは、当該U字管30は、熱媒体26の流路の折り返し部分をなすU字継手部31と、U字継手部31に連結される二本の丸パイプ状の単管35,35とを有し、当該U字継手部31を竪孔23の最深部に位置させつつ、2本の単管35,35の各管端開口35a,35bを、それぞれ竪孔23の外に突出させている。そして、これら管端開口35a,35bのうちの一方35aは、ヒートポンプ15から送られる熱媒体26の取入口となり、他方35bは、地盤Gとの間で熱交換した熱媒体26をヒートポンプ15へ送り出す送出口となる。
【0022】
なお、本実施形態では、図2A乃至図2Cに示すように、一つの竪孔23につき、かかるU字管30,30が一対設けられている。つまり、図2Cに示すように、一対のU字管30,30を重ね合わせた状態で、これら一対のU字管30,30が竪孔23内に建て込まれており、これにより、図2Bに示すように計4本の単管35,35,35,35が配されている。ここで、一対のU字管30,30の建て込み性を考えると、図2Cに示すように、U字継手部31,31同士を互いに上下にずらして配置すると良く、このようにすれば、建て込み時に先頭になるU字管30,30の部分のサイズが略半分に小さくなって建て込み性が良好になる。これについては後述する。
【0023】
充填材27は、例えば、モルタル、川砂や山砂、珪砂等を基材とし、U字管30と竪孔23との間の空間SP23に密実に充填される。これにより、充填材27を介して、U字管30内の熱媒体26と地盤Gとの間で熱交換が行われる。なお、この熱交換効率を高めるべく、充填材27に対して、1〜20%の容積含有率(=長粒物の総容積/充填材27の総容積)で、炭化ケイ素、アルミナ、及び高炉スラグのうちの少なくとも何れか1種からなる長粒物を混入しても良い。
【0024】
<<<地中熱交換器21の設置工事について>>>
図3A乃至図5Cは、地中熱交換器21の設置工事の施工手順の説明図である。なお、図3A乃至図5Cでは、一部の構成を側面視で示し、それ以外の構成は縦断面視で示している。また、図の錯綜を防ぐ目的で、一部の断面部位についてはハッチングを省略している。
【0025】
先ず、図3Aに示すように、対象地盤Gに、土留め用の塩化ビニル製等の樹脂管22を、管軸方向を鉛直方向に向けつつ打ち込む。この樹脂管22は、地盤表層部の崩落を防ぐものであり、その長さは、例えば1〜5mの短尺なものである。但し、その内周側に上述の竪孔23が形成されることから、樹脂管22の内径は、竪孔23の孔径よりも若干大径に設定される。
【0026】
次に、図3Bに示すように、樹脂管22の内側の地盤Gの部分を掘削することにより、最終的に図4Aのような孔径100〜200mm、深さ30〜150mの竪孔23を形成する(「掘削工程」に相当)。掘削は、図3Bのボーリングマシン60によってなされる。ボーリングマシン60は、ドリルとしての鋼製掘削管24を管軸周りに回転可能に把持するアーム62を有する。そして、掘削管24の管軸方向を掘削方向たる略鉛直方向に向けながら管端面を地盤Gの掘削面に押し付けて管軸周りに回転させることにより地盤Gに竪孔23を形成する。そして、所定の掘削深さまで達したら、地中の掘削管24の上方に更に掘削管24を継ぎ足して同芯に連結し、当該連結を繰り返して目標の掘削深さまで竪孔23を掘り進めていく。そのため、図4Aに示すように竪孔23が完成した際には、竪孔23内にはその略全長に亘って掘削管24,24…の連結体24Gが挿入された状態になっている。
【0027】
なお、上下の掘削管24,24同士を同芯に突き合わせて連結する連結構造としては、ここでは、ねじ構造が使用されている。図6は、この連結構造の説明用の掘削管24の概略拡大縦断面図である。同図6のように、掘削管24の上端部たる上側管端部24euの内周面には、雌ねじ25fが形成されており、他方、その上方に継ぎ足される掘削管24の下端部たる下側管端部24edの外周面には、雄ねじ25mが形成されている。そして、これら雌ねじ25fと雄ねじ25mとが螺合することにより、これら掘削管24,24同士は上下に連結一体化される。ここで、各掘削管24の外径については、掘削性への配慮から、管軸方向の全長に亘って同径に揃えられているが、内径については、同径ではない。すなわち、上述の雌ねじ25fや雄ねじ25mを設ける際の管壁厚さ確保の関係上、図6に示すように、これらねじ25m,25fが螺設される上下の管端部24eu,24edについては、その内径は、それ以外の部分よりも小径になっており、更に換言すると、同管端部24eu,24edは、その内周面に、内径の最小値φ24minとなる小内径部24pを内方に突出させて有している。よって、内径に関しては全長に亘っては同径ではない。
【0028】
また、先頭たる最下端の掘削管24の管端面からは、高圧の削孔水23wが掘削面へ向けて噴射されるようになっており、これにより掘削性が向上されている。なお、この削孔水23wの用途は、掘削に限らない。すなわち、掘削土を泥状にしつつ上方へ浮上させて排土することにも用いられる。よって、掘削終了時には、一般に竪孔23内には、当該使用済みの削孔水23wが充満している。
【0029】
そうしたら、この削孔水23wが充満する竪孔23の掘削管24内に、図4B及び図4Cに示すように、U字管30,30を、その管軸方向(単管35の管軸方向のこと)たる長手方向を、掘削管24の管軸方向たる鉛直方向に沿わせつつ建て込む(「U字管建て込み工程」に相当)。
【0030】
詳しくは、先ず、U字管30をコイル状に巻き取った状態で現場搬入する。この例では、前述のように竪孔23には一対のU字管30,30が建て込まれるので、コイル状に巻き取り状態のU字管30r,30rも一対で現場搬入され、そして、地面Gに直置きされた一対のリール装置70,70に取り付けられる。そして、各リール装置70は、同巻き取り状態のU字管30rを水平回転して繰り出す。すると、繰り出されたU字管30は、竪孔23の上方に配置された引き上げ機構80により所定高さまで引き上げられた後に、竪孔23の略直上で垂下された状態で竪孔23の掘削管24内へ入っていくという建て込みルートを辿って順次建て込まれる。
【0031】
ちなみに、U字管30の下端部30dを建て込む際には、一対のU字管30,30同士を重ね合わせて番線等の適宜な結束具により分離不能に結束固定し、しかる後に、掘削管24,24…の連結体24Gの最上端の口部24Geuへ一緒に挿入する。よって、それ以降は、これら一対のリール装置70,70同士は互いに連動して従動回転することにより、互いの繰り出し量を揃えながら各々担当するU字管30,30を繰り出していく。
【0032】
ところで、望ましくは、この建て込み中に、U字管30,30内への通水を行うと良い。すなわち、U字管30において少なくとも竪孔23内に建て込まれている部分については、管内に水を充満させていると良い。そして、このようにすれば、当該部分の管内空気起因の浮力の発生を無くすことができて、削孔水23w内へのU字管30,30の沈降たる建て込みを円滑に行うことが可能となる。
【0033】
また、建て込み中に、適宜タイミングで削孔水23wの水位を低下すると良い。これは、U字管30,30の密度(0.93〜0.96kg/m)が、削孔水23wの密度(約1kg/m)よりも小さいことに起因して、削孔水23wに建て込まれたU字管30,30には浮力が働いており、建て込み深さが深くなると、U字管30,30の沈降が進まなくなって、つまり建て込みが進まなくなるためである、よって、この浮力を小さくすべく、排水ポンプやエアブロー装置等により、削孔水23の液位を適宜タイミングで低下させるのが望ましい。
【0034】
以上のようにして、U字管30,30を目標の建て込み深さまで建て込んだら(図4C)、次に、各U字管30を各リール装置70から分離すべくU字管30を切断する。これにより、図5Aに示すように、U字管30の上端部30u(35a),30u(35b)が形成され、また、これら上端部30u,30uたるU字管30における両方の管端開口35a,35bは、掘削管24,24…の連結体24Gの最上端の口部24Geuよりも上方に突出した状態になる。
【0035】
次に、図5Aの掘削管24,24…の連結体24Gを図5Bに示すように上方へ引き抜いて同連結体24Gを竪孔23から取り出すが、ここで、この連結体24Gを引き抜く際には、各掘削管24の内周面がU字管30,30の上端部30u,30u…と接触して、これら上端部30u,30u…が損傷する虞がある。そのため、図5Aに示すように、この引き抜きの前に、U字管30,30の上端部30u,30u…に保護キャップ90を被せている。
【0036】
この保護キャップ90は、円筒部90aを本体とする。そして、この円筒部90aの外径は、掘削管24の内径の最小値φ24minよりも小さく、且つ、同円筒部90aの内径は、一対のU字管30,30の計4本の上端部30u,30u…をひとまとめに収容可能な寸法に設定されている。また、同円筒部90aは、蓋部90bを有する有蓋円筒体であり、U字管30,30の上端部30u,30u…の上に蓋部90bが乗ることにより、保護キャップ90はU字管30,30に吊り下げ支持され、更に、保護キャップ90は或る程度の重みを有するステンレス鋼等の金属製である。
【0037】
よって、図5Bに示すように、上方へ引き抜かれる掘削管24,24…の連結体24Gと大きく干渉することも無く、また、その重みに基づいて保護キャップ90は確実にU字管30,30の上端部30u,30u…にしっかりと留まることができて、結果、効果的にU字管30,30の上端部30u,30u…の損傷を防ぐ。
【0038】
ちなみに、引き抜いて地上に出てきた掘削管24については、前述の上下の管端部24eu,24edの連結構造にて、地中の掘削管24,24…から適宜切り離しても良い。
【0039】
そして、かかる掘削管24,24…の連結体24Gの引き抜き作業が終わったら、最後に、図5Cに示すように竪孔23内に充填材27を入れてU字管30,30を埋め、これにより、地中熱交換器21の設置工事が完了する。
【0040】
この充填材27を入れる方法としては、例えば漏斗95を用いることが挙げられ、また、その場合には、U字管30,30の上端部30u,30u…には上述の保護キャップ90を被せたままにしておく。すなわち、竪孔23の内周面と保護キャップ90の外周面との間に、漏斗95の下端部の略円筒部95pが入るように漏斗95を配置する。また、この時、漏斗95の下端部たる略円筒部95pの内周面と保護キャップ90の外周面との間にはクリアランスが形成されるように配置する。
そうしたら、充填材27を貯留するホッパー98を、漏斗95の上方にミニクレーン99等で持ち上げ、その状態でホッパー98の下端開口98aを開く。すると、漏斗95上に充填材27が落下するが、これら落下した充填材27は、漏斗95上を滑落しながらその平面中心側へと誘導されて、同漏斗95の下端部の略円筒部95pと保護キャップ90との間のクリアランスを通って竪孔23内へと順次落ちていく。これにより、充填材27が竪孔23内に充填されてU字管30,30が埋設される。なお、この時、ホッパー98から落下する充填材27は保護キャップ90に当たるが、このことにより、U字管30,30の上端部30u,30u…は充填材27の衝突から保護されるので、同上端部30u,30u…の損傷は確実に防止される。
【0041】
そうしたら、最後に、保護キャップ90をU字管30,30…の上端部から取り外し、これにより、地中熱交換器21の設置工事が完了する。
【0042】
<<<「U字管建て込み工程」での一対のU字管30,30の掘削管24への建て込みについて>>>
図7Aは、U字管30のU字継手部31及びその近傍部分の斜視図である。図7Bは、同平面図であり、図7Cは、図7B中のC−C矢視図である。
【0043】
前述したように、このU字管30は、掘削方向と同方向の建て込み方向の先頭部に、U字継手部31を有する。このU字継手部31は、図7Aに示すように、熱媒体26の流路における折り返し部分を形成する管継手であり、その内部のU字状流路の両端に、互いに隣り合う2つの管端開口31a,31aを有している。そして、各管端開口31a,31aには、それぞれ一本ずつ単管35,35が互いの管軸方向を略平行に揃えた状態で熱融着され、これにより、U字管30が構成されている。
【0044】
図7B及び図7Cに示すように、U字継手部31は、これに連結される上記各単管35の周方向の全周に亘り、各単管35の外周面よりも管軸方向の直交方向(管径方向)の外方に突出した形状になっている。つまり、各単管35の全周に亘って各単管35よりも管軸方向の直交方向に大きい形状をなしている。そして、その外形形状を具体的に言えば、図7Cに示すように、管軸を挟む両側部分のうちの片側部分31s1は、先頭側がすぼんだ紡錘形状をなし、もう片側部分31s2は略平坦形状をなしており、そして、後者の略平坦形状の部分31s2は、二本の単管35,35の並ぶ方向及び管軸方向の両者と平行になっている。
【0045】
図8A乃至図9Bは、建て込み時における一対のU字管30,30の建て込み方向の先頭部の状態の説明図である。図8Aには参考例の側面図を示し、図8Bには、図8A中のB−B断面図を示している。また、図9Aには、本実施形態の側面図を示し、図9Bには、図9A中のB−B断面図を示している。
【0046】
かかるU字管30,30は、竪孔23毎に一対で建て込まれる。すなわち、互いに同形の一対のU字管30,30同士が、互いの単管35,35…の管軸方向を略平行に揃え、且つ対応する単管35,35同士を隣り合わせながら建て込まれる。
そして、この建て込み時には、図8Aの参考例のように、U字継手部31,31同士を互いに対向させつつ、その略平坦形状の部分31s2,31s2同士にて完全一致で重ね合わせて建て込むことが考えられる。
【0047】
しかし、上述したように当該U字継手部31にあっては、単管35と比べて管軸方向の直交方向の寸法が大きく、これら寸法の大きいもの同士を重ね合わせると、一対のU字管30,30の先頭部が更に大きくなってしまう(図8A、図8B)。
【0048】
また、竪孔23には掘削管24,24…が挿入されているので、実際のU字管30の建て込みは、当該掘削管24,24…に対してなされることになるが、ここで、前述したように、各掘削管24の上下の管端部24eu,24ed(図6)は、それ以外の部分と比べて内径が小さくなっている。つまり、図6に示すように、当該管端部24eu,24edの内周面は、周囲の部分と比較して、管径方向の内方に突出した小内径部24pとなっている。よって、一対のU字管30,30の先頭部が大きいと、掘削管24の管端部24eu,24edの位置を通過する際に、当該小内径部24pに引っ掛かる等して詰まり易くなる。
【0049】
更に、竪孔23の埋め戻し作業負荷軽減の観点からは、掘削管24の外径は可能な限り小径の方が望ましいが、そうすると、これに伴って掘削管24の内径の方も全体として小さく設計され、必然、管端部24eu,24edの内径たる掘削管24の内径の最小値φ24min(小内径部24pの内径)も小さく設計されてしまう。
【0050】
すると、当該内径の最小値φ24minが、U字継手部31,31同士を重ね合わせた場合の管軸方向の直交方向の外形寸法との関係において、挿入可能なぎりぎりの寸法になっていることもあれば、或いは、場合によっては、掘削管24の内径の最小値φ24minの方が小さくなってしまっているケースも起こり得る。
【0051】
この点につき、図8Aの参考例にあっては、後者に該当している。つまり、図8Bに示すように、U字継手部31,31同士を重ね合わせてなるU字管30,30の先頭部の外形寸法のうちで、管軸方向の直交方向の寸法の最大値D1maxが、掘削管24の内径の最小値φ24min(二点鎖線)よりも大きく設計されており、これにより、U字継手部31,31が、掘削管24の小内径部24pと干渉してしまい、掘削管24内へ建て込めなくなっている。
【0052】
そこで、本実施形態では、図9Aに示すように、一対のU字管30,30が具備するU字継手部31,31同士を、管軸方向の上下にずらして配置している。すなわち、一対のU字管30,30に係る建て込み方向の先頭部には、一方のU字継手部31しか配置されておらず、もう一方のU字継手部31はその上方に位置している。よって、この構成によれば、一対のU字管30,30の先頭部の大きさは、図8Aの参考例の場合の略半分に小さくなるので、当該先頭部が上述の掘削管24の管端部24eu,24edの位置を通過時の引っ掛かりは大幅に軽減される。
【0053】
また、上述のずらし配置にあっては、下側のU字継手部31は、何にも重ならない状態になっており、他方、上側のU字継手部31は、下側のU字継手部31に連結された二本の単管35,35の外周面にのみ重ね合わせられて番線等の適宜な結束具により固定されている。つまり、上側のU字継手部31の先端縁たる下端縁31edは、下側のU字継手部31の上端縁31euよりも上方に位置しており、これにより、U字継手部31,31同士は、互いの一部分も重ならないように完全にずらして配置されている。
【0054】
そして、この構成によれば、一対のU字管30,30において、管軸方向の直交方向の外形寸法の最大値となり得る部位30maxたる、上側のU字継手部31と二本の単管35,35との重ね合わせ部位30maxの最大寸法D2max(図9B)を、図8Aの参考例のU字継手部31,31同士を重ね合わせた場合の最大寸法D1max(図8B)よりも小さくすることができて、その結果、当該一対のU字管30,30を掘削管24内へ建て込めるようになる。
【0055】
すなわち、この例では、上側のU字継手部31と二本の単管35,35との重ね合わせ部位に係る管軸方向の直交方向の寸法の最大値D2maxは、掘削管24の内径の最小値φ24minよりも小さくなるように設計されており、これにより、図9Bに示すように、掘削管24の小内径部24pに干渉することなく、同掘削管24内へ速やかに建て込み可能となっている。
【0056】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0057】
上述の実施形態では、一対のU字管30,30が具備するU字継手部31,31同士は、一部分も重ならない状態で配置されていたが、何等これに限るものではなく、一部分であれば、重なっていても良い。すなわち、U字継手部31,31同士が管軸方向の上下にずれて配置されていれば、一対のU字管30,30の建て込み方向の先頭部の大きさは小さくなるので、例えば、下側のU字継手部31の上端部に上側のU字継手部31の下端部が重なっていても良い。
【0058】
上述の実施形態では、掘削管24内に一対のU字管30,30を建て込んだが、一対よりも多い数、例えば3つ以上のU字管30,30…を建て込んでも良い。
【0059】
上述の実施形態では、U字管30が具備する一対の単管35,35として丸パイプ状(断面正円形状)の管を例示したが、その管形状は何等これに限るものではない。例えば、断面形状が楕円等の断面非正円形状の管でも良いし、角パイプ等の断面多角形状の管でも良い。
【0060】
上述の実施形態では、掘削管24,24同士の連結構造としてねじ構造を例示したが、何等これに限るものではなく、これ以外の周知の管継ぎ手構造を用いても良い。また、前述のねじ構造の説明の中では、掘削管24の上側管端部24euに雌ねじ25fを設け、下側管端部24edに雄ねじ25mを設けていたが、この設置位置関係を上下逆さまにしても良い。すなわち、上側管端部24euに雄ねじ25mを設け、下側管端部24edに雌ねじ25fを設けても構わない。
【符号の説明】
【0061】
1 建物、11 地中熱利用システム、15 ヒートポンプ、
17 循環ポンプ、21 地中熱交換器、22 樹脂管、
23 竪孔(掘削孔)、23w 削孔水、24 掘削管、
24ed 下側管端部、24eu 上側管端部、24p 小内径部、
24Geu 掘削管の連結体の最上端の口部、24G 掘削管の連結体、
25m 雄ねじ、25f 雌ねじ、26 熱媒体、27 充填材、
30 U字管、30u 上端部、30d 下端部、
30r 巻き取り状態のU字管、30max 重ね合わせた部位、
31 U字継手部、31a 管端開口、
31s1 片側部分、31s2 略平坦形状の部分、
31ed 下端縁、31eu 上端縁、
35 単管、35a 管端開口、35b 管端開口、
60 ボーリングマシン、62 アーム、
70 リール装置、80 引き上げ機構、
90 保護キャップ、90a 円筒部、90b 蓋部、
95 漏斗、95p 略円筒部、
98 ホッパー、98a 下端開口、99 ミニクレーン
SP23 空間、G 地盤(地面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に掘削孔を形成し、該掘削孔に地中熱交換器に係るU字管を建て込む方法であって、
掘削管の管軸方向を掘削方向に向けながら前記掘削管を管軸周りに回転させて掘削することにより、前記地面に前記掘削孔を形成する掘削工程と、
前記掘削管の管軸方向に前記U字管の管軸方向を沿わせつつ前記掘削管内に少なくとも一対の前記U字管を建て込むU字管建て込み工程と、を有し、
前記U字管は、熱媒体の流路の折り返し部分をなすU字継手部と、前記U字継手部に連結される二本の単管と、を有し、
前記U字管建て込み工程においては、前記一対のU字管は、互いの前記U字継手部同士を前記管軸方向にずらした状態で前記掘削管内に建て込まれることを特徴とする地中熱交換器に係るU字管の地面の掘削孔への建て込み方法。
【請求項2】
請求項1に記載の地中熱交換器に係るU字管の地面の掘削孔への建て込み方法であって、
前記U字継手部は、前記単管の全周に亘って該単管の外周面よりも前記管軸方向と直交方向の外方に突出しており、
前記ずらした状態においては、前記一対のU字管のうちの一方のU字管のU字継手部が、他方のU字管の二本の単管に重なった状態になっていて、前記一対のU字管のU字継手部同士は一部分も重なっていないことを特徴とする地中熱交換器に係るU字管の地面の掘削孔への建て込み方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の地中熱交換器に係るU字管の地面の掘削孔への建て込み方法であって、
前記U字継手部同士を重ね合わせた場合における前記管軸方向と直交方向の寸法の最大値は、前記掘削管の内径の最小値よりも大きく、
前記U字継手部と前記二本の単管とを重ね合わせた場合における前記管軸方向と直交方向の寸法の最大値は、前記掘削管の内径の最小値よりも小さいことを特徴とする地中熱交換器に係るU字管の地面の掘削孔への建て込み方法。

【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−127116(P2012−127116A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279748(P2010−279748)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】