説明

地域的、広域、又は大域的キャリア位相差ナビゲーション(WADGPS)からローカル・リアル・タイム力学的(RTK)ナビゲーション・システムに移行するときに、位置情報の信頼性を高める方法

【課題】本発明は、ローカル測位システムと、ローカルRTKシステムと、地域、広域、又は大域差動搬送波位相測位システム(WADGPS)を組み合わせて利用する方法を含んでおり、ローカル測位システム、RTK及びWADGPSナビゲーション技術を別個に使用すると随伴する短所を回避する。本方法は、WADGPSからの情報に基づいて、前記対象の第1位置を判定し、ローカル測位/RTK測位システムからの位置情報に基づいて対象の第2位置を判定するステップを含む。その後、WADGPSによって判定した位置と、ローカル測位/RTK測位システムによって判定した位置とを比較する。WADGPS位置及びローカル測位/位置に既定の閾値を超える差がある場合、対象をナビゲートするためにWADGPS位置を用い、WADGPS位置及びローカル測位/RTK位置に既定の閾値未満の差がある場合、対象をナビゲートするためにローカル測位/RTK位置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、衛星を用いた測位及びナビゲーションに関連する技術に関し、更に特定すれば、地域的、広帯域、又は大域搬送波位相測位(carrier-phase positioning)及び/又はナビゲーション・システムにおける搬送波浮動曖昧さ(carrier floating ambiguity)の解決に関する。
なお、本願は、2004年1月13日に出願した米国特許出願第10/757,340号の一部継続出願である、2006年1月31日に出願した米国特許出願第11/345,124号の一部継続出願であり、双方の出願の内容は、ここで引用したことにより、本願にも含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
全地球測位(グローバル・ポジショニング)システム(GPS)は、宇宙にある衛星を用いて、地球上にある物体の位置を突き止める。GPSでは、衛星からの信号がGPS受信機に到達し、該GPS受信機の位置を判定するために用いられる。現在、民生用GPS受信機には、固定GPS衛星信号を用いた、各相関チャネル(correlator channel)に対応する2種類のGPS測定が利用可能となっている。これら2種類のGPS測定は、それぞれ、周波数が1.5754GHz及び1.2276GHz、又は波長が0.1903m及び0.2442mであり、2つの搬送波信号L1及びL2に対する疑似距離(pseudorange)、及び統合搬送波位相である。疑似距離(又はコード測定)は、基本的なGPSオブザーバブル(observable)であり、全ての種類のGPS受信機が行うことができる。これは、搬送波信号上に変調されたC/A又はPコードを利用する。測定は、関連するコードが衛星から受信機まで移動するのに要する見かけ上の時間、即ち、受信機クロックによる信号が受信機に到達した時刻から、衛星クロックによる信号が衛星から出射した時刻を減算した値を記録する。搬送波位相測定は、受信機に到達した際の信号の再現搬送波を積分することによって得られる。したがって、搬送波位相測定は、衛星クロックによる信号が衛星を出射した時刻と、受信機クロックによる信号が受信機に到達した時刻とによって決定される遷移時間差の尺度でもある。しかしながら、衛星と受信機との間の遷移における最初の整数周期数は、受信機が信号の搬送波位相を追跡し始めるときには通常分かっていないので、遷移時間差は、多数の搬送波周期だけ誤差を生ずる場合がある。即ち、搬送波位相測定には、整数周期曖昧さ(whole-cycle ambiguity)がある。
【0003】
GPS測定が利用可能な場合、GPS受信機と多数の衛星の各々との間の標的間距離(range)即ち距離(distance)を計算する際、信号の移動時間に光速を乗算する。これらの標的間距離は、通常、疑似標的間距離(偽標的間距離)と呼ばれる。何故なら、受信機クロックは一般に大きな時間誤差を有し、測定した標的間距離において共通の偏倚を生ずるからである。受信機クロックの誤差によるこの共通偏倚は、通常のナビゲーション計算の一部として、受信機の位置座標と共に解明する。種々のその他の要因も、計算した標的間距離における誤差又はノイズを招く可能性があり、エフェメリス誤差(ephemeris error)、衛星クロック・タイミング誤差、大気効果、受信機ノイズ、及びマルチパス誤差が含まれる。単体GPSナビゲーションでは、GPS受信機を所有するユーザが、いずれの基準局をも参照せずに、視野内にある複数の衛星に関するコード及び/又は搬送波位相標的間距離を得るが、ユーザが標的間距離における誤差又はノイズを低減する方法は、非常に限定されている。
【0004】
これらの誤差を解消又は低減するには、通常、GPS用途において差動動作が用いられる。差動GPS(DGPS)動作は、通常、基地基準GPS受信機、ユーザ(又はナビゲーション)GPS受信機、及びユーザと基準受信機との間のデータ・リンクを必要とする。基準受信機は既知の場所に置かれ、この既知の位置を用いて、前述した誤差要因の一部又は全部に伴う補正値を発生する。補正値をユーザ受信機に供給し、次いでユーザ受信機はこの補正値を用いてその計算位置をしかるべく補正する。補正は、基準部位において判定した基準受信機の位置に対する補正の形態、又は特定のGPS衛星クロック及び/又は軌道に対する補正の形態で行うことができる。搬送波位相測定値を用いる差動動作のことを、多くの場合、リアル・タイム力学的(RTK)測位/ナビゲーション動作と呼んでいる。
【0005】
差動GPS(DGPS)の基礎的概念は、GPS測定値に内在する誤差の空間及び時間的相関を利用して、これらの誤差要因から生ずる疑似標的間距離及び/又は搬送波位相測定値におけるノイズの要因を相殺することである。しかしながら、GPS衛星クロック・タイミング誤差が、疑似距離又は搬送波位相測定においてバイアスとして現れ、基準受信機とユーザ受信機との間で完全に相関付けられていても、他の誤差要因の殆どは、広域(ワイドエリア)用途では、即ち、基準及びユーザ受信機間の距離が大きくなると、相関が失われるか、あるいは相関が減少する。
【0006】
広域用途におけるDGPSシステムにおける低精度を改善するために、種々の地域的、広域的、又は大域的DGPS(以後広域DGPS又はWADGPSと呼ぶ)技法が開発されている。WADGPSシステムは、計算センタ即ちハブと通信する、多数の基準局のネットワークを含む。誤差補正は、ハブにおいて、基準局の既知の場所、及びそれらが行う測定に基づいて計算する。計算した誤差補正値は、次いで、衛星、電話機、又は無線機のようなデータ・リンクを通じて、ユーザに送信される。多数の基準局を用いることによって、WADGPSは誤差補正の推定値の精度を高めることができる。
【0007】
このため、GPS搬送波位相測定値を用いて高精度の差動ナビゲーションを得る多数の異なる技法が開発されている。RTK技法の精度は、通常、約1cmである。しかしながら、この精度を得るためには、差動搬送波位相測定値における整数周期曖昧さを判定しなければならない。ユーザ受信機と基準受信機との間の距離(基準線距離)が短いときには、RTK技法は非常に有利である。何故なら、この場合、整数周期曖昧さは、高精度なだけでなく、迅速に解明することができるからである。一方、基準線距離が数十Kmよりも長い場合、整数周期曖昧さを判定することが不可能になる場合があり、正常なRTK精度を達成することができない。RTK技法の別の欠点は、基準受信機とナビゲーション受信機との間に、ローカル無線リンクを維持しなければならないことである。
【0008】
搬送波位相差動方法を採用するWADGPS技法は、非常に高いナビゲーション精度を達成することもできる。また、WADGPS差動技法は、信頼性の高い長距離低周波数通信リンク、又は信頼性の高い衛星通信リンクであることも特徴とする。つまり、一般に、長い中断がなくても、補正値をナビゲーション受信機に伝達することができる。しかしながら、WADGPS技法は、大抵の場合、整数周期曖昧さを実値(非整数)変数として扱い、「浮動曖昧さ」を解明するが、大抵の場合、相当な衛星外形(geometry)変化の時間間隔をカバーする測定データが得られるまでは、非常にずさんに定義されるに過ぎない。このため、WADGPS用途では、誘導位置において10cm未満の精度を得るためには、1時間又は2時間もの長さの時間間隔がなければ、「浮動曖昧さ」を解明することができない場合が多い。
【0009】
また、ローカル測位システムを用いても、高精度の測位(<1cm)が得られる場合もある。従来のローカル測位システムは、能動又は受動コンポーネントを用い、例えば、信号に対する飛行時間(time of flight)及び/又はドプラ周波数ずれに基づく音響及びレーザ距離測定(ranging)システムを含む。音響システムは、通常、陸標及び/又はトランスポンダ・ビーコンを用いて、デバイス網内部における距離(range)を測定する。その一部を求めてローカル座標系を形成する。空中における音響伝搬のプロパティのために、音響システムは、比較的短距離において、1cm以上の精度でないと到達距離を測定することができない。レーザに基づくローカル測位システムは、デバイスと、プリズムのような、1又は複数の反射物体との間の確度及び距離双方の測定値を利用して、デバイスの位置を三角測量又は三辺測量する。また、レーザに基づくローカル測位システムの有効動作範囲も、比較的短距離(約1000〜10,000m)に制限されるのが通常である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願は、RTK及びWADGPSナビゲーション技術を組み合わせて利用することにより、各々の技術の短所を一方の技術の長所で補完できるようにする方法を含む。WADGPS技術の基本的な短所は、ナビゲーション受信機が浮動曖昧さの値を判定するのに長時間(1時間を超える場合が多い)かかる点であり、これは搬送波位相測定値を高精度の範囲測定値に変換するために必要とされる。RTK技術の基本的な短所は、ユーザGPS受信機と基準GPS受信機との間にリアル・タイム(通常は見通し線)のデータ・リンクを必要とし、また、基準GPS受信機とユーザGPS受信機との間の分離距離が比較的短い場合にしか整数周期曖昧さを判定することができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの問題点は、本発明の一実施形態にしたがってRTKとWADGPSナビゲーション技術を組み合わせて用いる方法を利用して除去することができる。本方法には、WADGPSシステムにおける浮動曖昧値を初期化するためにユーザ受信機の既知の位置を使用することが含まれる。ユーザ受信機が静止している場合、ユーザ受信機の既知の位置は、調査した位置であっても、又は先行動作から得られた位置であってもよい。ユーザ受信機が移動中である場合、RTKシステムを用いて既知の位置を取得することができる。
【0012】
このように、動作の組み合わせにおいて、ローカル測位システム及び/又はRTKナビゲーションの通信リンクが利用可能な場合、ローカル測位システム及び/又はRTKシステムを用いてユーザ受信機の位置、速度、及び時間(PVT)の出力を入手することができ、その間、WADGPSシステムはバックグラウンドで動いており、その出力はRTKシステムからの出力に一致するよう常に初期化されている。ローカル測位システムの通信リンクが失われた場合、ユーザ受信機のPVT出力は、ローカル測位システムが動作していた間に初期化されたRTKシステム及び/又はWADGPSシステムを用いて、入手することができる。RTKナビゲーションの通信リンクが失われた場合、あるいは、ユーザ受信機がRTKシステム内の基準局から遠く離れ過ぎた場合、ユーザ受信機のPVT出力は、RTKが動作していた間に初期化されたWADGPSシステムを用いて入手することができる。このような初期化によって、ユーザGPS受信機の位置が未知である場合に、浮動曖昧値を求めるために通常15分〜2時間を要する「プルイン」時間を回避する。これは、ローカル測位システム及び/又はRTKシステムが利用不可能又は低精度である場合に、WADGPSシステムから極めて高精度なPVT解を提供し、リアル・タイムの高精度測位及びナビゲーション目的において、更にWADGPS技術の実用性を一層高めることになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態によるWADGPSシステム、ローカル測位システム、及びローカルRTKシステムの組み合わせのブロック図である。
【図2】ユーザGPS受信機に結合したコンピュータ・システムのブロック図である。
【図3A】WADGPSシステム、ローカルRTKシステム及び/又はローカル測位システムを組み合わせて用いる方法を示すフロー図である。
【図3B】ローカルRTKシステムを用いて受信機位置を更新する方法を示すフロー図である。
【図4A】WADGPSシステムとローカルRTKシステムの両方を用いた動作の組み合わせの処理フローを示すフロー図である。
【図4B】ローカル測位システム、ローカルRTKシステム、及び/又はWADGPSシステムの使用のための処理フローを示すフロー図である。
【図4C】WADGPSシステムのローカル測位システム及び/又はローカルRTKシステムとの使用のための処理フローを示すフロー図である。
【図5】前述の動作の組み合わせが使用可能な状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、本発明の一実施形態による広域又は大域(グローバル)差動GPS(WADGPS)システム100を示す。図1に示すように、WADGPSシステム100は、各々がGPS受信機122及び1又は複数の処理ハブ105を有する基準局120のネットワークを含む。基準局120は、処理用にハブ105へ未処理GPS可観測値(observables)を連続的に提供する。これらの可観測値はGPSコード、搬送波位相測定値、天体暦及び基準局120で複数の衛星110から受信した信号にしたがって得られた他の情報を含む。基準局120は、広域DGPSシステムの場合、大陸等の広い領域101にわたり、又は大域DGPSネットワークの場合は地球全体にわたり、既知の場所に設置されている。ハブ105は、GPS可観測値を処理しかつDGPS補正値を計算する施設である。複数の独立ハブが設けられる場合、地理的に分離されて並列に動作することが好ましい。
【0015】
WADGPSシステム100は、各々が測位及び/又はナビゲーション目的でユーザGPS受信機142を有する1人以上のユーザ(又はユーザ装置あるいは対象物)140が利用することができる。本発明の一実施形態では、ユーザ140には、RTK無線リンクを介して近傍の基準局120が関連付けられていて、ユーザ受信機142及び当該近傍基準局120がローカルRTKシステム150を形成するようになっている。実施形態の中には、1又は複数の基準局176を有するローカル測位システム174とユーザ140を関連付けることができる場合もある。1又は複数の陸標176は能動的でも受動的でもよい。1又は複数のランドマーク(陸標)176は、各々、GPS受信機122を有することができる。
【0016】
システム100はさらに、GPS可観測値を基準局120からハブ105へ送る信頼性の高い輸送メカニズムを提供するために、また、計算された補正値をハブ105から基準局120及びユーザ140へブロードキャストするために、従来型のデータ・リンク(図示せず)を含む。ハブ105へデータを供給するために、大陸WADGPSシステムは通常、約3〜10個の基準受信機を有し、大域WADGPSシステムは通常、約20〜100個の基準受信機を有する。本発明の一実施形態において、インターネットを介してGPS可観測値は基準局120からハブ105へ送られ、計算された補正値もインターネットを介して、更に別の1個の衛星群(図示せず)にアップリンクされるように、ハブから1又は複数の地上局(図示せず)へ送られる。次いで、これら衛星は、計算された補正値を基準局120及びユーザ受信機142が受信するためにブロードキャストする。
【0017】
本発明の一実施形態において、ユーザあるいは対象物140はまた、ユーザGPS受信機142に接続されたコンピュータ・システム144を備えている。図2に示すように、コンピュータ・システム144は中央処理装置(CPU)146、メモリ148、1又は複数の入力ポート154、1又は複数の補助受信機155、1又は複数の出力ポート156、及び(任意に)ユーザ・インターフェース158を含み、これらは1又は複数の通信バス152によって互いに接続されている。メモリ148は、高速ランダム・アクセス・メモリを含んでいてもよく、1又は複数の磁気ディスク記憶装置又はフラッシュメモリ装置等の不揮発性大容量記憶装置を含んでいてもよい。
【0018】
メモリ148は、好適にはオペレーティング・システム162、GPSアプリケーション手順164、及びデータベース170を格納する。以下に詳述するように、GPSアプリケーション手順164は、ローカル測位システム174、ローカルRTKシステム150及び/又はWADGPSシステム160を組み合わせて用いる方法300を実行する手順166を含んでいてよい。メモリ148に格納されたオペレーティング・システム162及びアプリケーション・プログラム、並びに手順164は、コンピュータ・システム144のCPU146によって実行するために存在する。好適にはメモリ148はまた、GPSアプリケーション手順164の実行中に用いる、GPS擬似距離及び搬送波位相測定値168、ハブから受信したGPS補正値172を含むデータ構造、並びに本文書において論ずる他のデータ構造を格納している。
【0019】
入力ポート154は、GPS受信機142からデータを受信するため、無線リンク124を介してローカル測位システム174又はローカルRTKシステム150内の基準局120から情報を受信するため、及び衛星リンク107を介してハブ105からGPS補正値及びその他の情報を受信するために存在する。出力ポート156を用いて、無線リンク124あるいは音響又はレーザ・デバイス(図示せず)を介して、データを基準局120へ出力する。本発明の一実施形態において、図2で示すように、コンピュータ・システム144のCPU146及びメモリ148は、単一のハウジング内で、単一の装置のように、GPS受信機142と一体化されている。しかし、このような一体化は、本発明の方法を実施するためには必須という訳ではない。
【0020】
したがって、ユーザ又は対象物140は、同時又は異なる時点で、3つの異なる動作モードに係わることができる。ユーザ又は対象物140は、ユーザ又は対象物140が自身を測位するか又はWADGPSシステム100を用いてナビゲートするWADGPSモードで、ユーザ又は対象物140が自身を測位するか又はローカルRTKシステム150を用いてナビゲートするRTKモードで、及び/又は、ユーザ又は対象物140がそれ自体を測位するか又はローカル測位システム174を用いてナビゲートするローカル測位モードで、動作することができる。ユーザ又は対象物140が、自身に関連付けられた1又は複数のランドマークすなわち陸標176の近傍にあって、ユーザ又は対象物140と1又は複数の陸標176との間の無線リンクが維持できる場合、ユーザは1又は複数の陸標176を用いて自身を1又は複数の陸標176に関して測位することができる。ユーザ又は対象140が、それに関連付けられている基準局120に近接しており、ユーザ又は対象140と基準局120との間に無線リンクを維持することができる場合、ユーザはローカルRTKシステム150を用いて、基準局120に対してそれ自体を測位することができる。以下で説明するように、ローカル測位システム174及びローカルRTKシステム150は、WADGPSシステム100よりも高精度であって、整数周期整数曖昧さが迅速に解決できることが、WADGPSシステム100よりも有利である。
【0021】
ローカルRTKシステム150を用いれば、測定値が基準GPS受信機122及び関連付けられたユーザGPS受信機142から見てn個の衛星110に関して取得された場合、測定値を用いて、以下の式にしたがった配列形式で、ユーザ又は対象物140の位置を求めることができる。
(∇Φ+N)λ=Hx+nφ (1)
ここで、∇Φ=[∇φ ∇φ・・・∇φであって、n個の衛星110の各々に関する差動搬送波位相測定値によって形成された搬送波位相測定値ベクトルであり、N=[N・・・Nであって、搬送波位相測定値ベクトルにおける各々の差動搬送波位相測定値に関連付けられた差動整数曖昧さによって形成された整数曖昧ベクトルであり、H=[h・・・hであって、ユーザ又は対象物140からn個の衛星110への単位ベクトルによって形成される測定値感度行列、xはローカルRTKシステム150における基準局120からユーザ又は対象物140への位置ベクトルを含む実数未知状態ベクトル(又は実数ベクトル)、及びnφ=[nφ1φ2・・・nφnであって、n個の衛星110の各々に関して差動搬送波位相ノイズによって形成される測定値ノイズ・ベクトル(又は位相距離残差ベクトル)である。
【0022】
式(1)を用いて実数ベクトルxを求めるには、整数曖昧ベクトルNを解決する必要がある。整数曖昧ベクトルNに含まれる整数曖昧値を解決するために多くの異なる方法は開発されており、これらの方法は通常、測定値残差ベクトルΔΦの最小ノルム等、特定の基準を満たす整数曖昧値の組み合わせを見つける探索処理を用いる。
ΔΦ=(∇Φ+N)λ−Hx^ (2)
ここでΔΦは、整数曖昧値の組み合わせを含む整数曖昧ベクトル候補Nに対応する位相距離残差ベクトル、x^は式(1)の最小二乗解である。
x^=[HγH]−1γ(∇Φ+N)λ (3)又は
x^=[HγRH]−1γ−1(∇Φ+N)λ (4)
なお、Rは、
【数1】

であり、従来の方法を用いて計算した差動搬送波位相ノイズnφiの標準偏差であるσによって形成された測定値共分散行列である。σを計算する方法の例が、"Precision, Cross Correlation, and Time Correlation of GPS phase and Code Observations"(GPS位相及びコード観測の精度、相互相関、及び時間相関)(Peter Bona, GPS Solutions, Vol. 4, No. 2, Fall 2000, p3-13)、又は"Tightly Integrated Attitude Determination Methods for Low-Cost Inertial Navigation: Two-Antenna GPS and GPS/Magnetometer"(低コスト慣性ナビゲーション用の緊密に一体化された姿勢判定方法:2アンテナGPS及びGPS/磁気探知器)(Yang, Y, Ph.D. Dissertation, Dept. of Electrical Engineering, University of California, Riverside, CA, June 2001)(カリフォルニア大学電気工学科博士課程学位論文)に掲載されており、双方共、ここで引用したことにより、その内容が本願にも含まれるものとする。
【0023】
探索方式の他の例が、本明細書に引用した"Instantaneous Ambiguity Resolution"(即時曖昧さ解決)(Hatch, R, Proceedings of the KIS Symposium 1990, Banff, Canada)、及び本願と所有者が同一の特許出願"Fast ambiguity Resolution for Real Time Kinematic Survey and Navigation"(リアル・タイム力学的探索及びナビゲーション用高速曖昧さ解決(米国特許第6,753,810号として発行された米国特許出願第10/338,264号明細書)に掲載されている。これらも、ここで引用したことにより、その内容が本願にも含まれるものとする。
整数曖昧さが解決されたならば、ローカルRTKシステム150の解としてユーザ受信機142の位置、速度、及び時間(PVT)を精度高く計算することができる。
【0024】
ローカル測位システム174を用いると、ユーザ受信機142の位置、速度、及び時間(PVT)を、ローカル測位システム174の解として、精度高く計算することができる。例えば、1又は複数の陸標に対する到達距離及び角度情報は、信号の飛行時間及び/又はドプラ周波数ずれを用いて判定することができる。ローカル測位システムにおいて到達距離及び角度情報を判定することに関するこれ以上の論述は、2005年4月11日に出願され"Improved Radar System for Local Positioning"(ローカル測位レーダ・システムの改良)と題する米国特許出願公開第2005−0270228号において得られる。加えて、1又は複数の陸標176及び関連するユーザGPS受信機142におけるGPS受信機120に鑑みて行ったn機の衛星110に関する測定は、前述の式にしたがってユーザ又は対象物140の位置を解くために用いることができる。
【0025】
ローカル測位システム174及び/又はローカルRTKシステム150には多くの利点があるもかかわらず、ユーザ又は対象物140はローカル測位システム174及び/又はローカルRTKシステム150を常時利用することはできない。何故なら、ユーザが1又は複数の陸標176及び/又は基準局120から遠過ぎる場所へ移動したり、1又は複数の陸標176及び/又は基準局120の所在地外にいて、ユーザ又は対象物140と陸標及び/又は基準局との間の無線リンク124が維持できないためである。これらの状況において、電離層に起因する誤差は、ユーザ又は対象物140と陸標176及び/又は基準局120との間における測定値の差異を考慮することで十分に除去することはできない。この誤差は、測定値残差ベクトルΔΦに含まれる測定値残差を増大させるため、整数曖昧ベクトルに対する上述の探索方法に影響を及ぼす。
【0026】
したがって、ユーザGPS受信機と基準局との間の距離が大きいためにローカル測位システム174及びローカルRTKシステム150が利用できないか、又は精度を喪失した状況において、ユーザは整数曖昧さを解決するために別の方法が用いられるWADGPSモードで動作することが必要になる場合がある。WADGPSシステム100を用いれば、各々の整数周期曖昧さは実数値(非整数)変数として推定する。この作業は、しばしば「浮動曖昧さ」値の判定と呼ばれる。「浮動曖昧さ」値を判定する一方法は、ユーザ又は対象物140で取得された未処理GPS測定値に基づく屈折補正値コード及び搬送波位相測定値の形成、コード測定値と同一単位への搬送波位相測定値のスケーリング、及び対応するコード測定値から各々のスケーリングされた搬送波位相測定値を減算してオフセット値を求めることを含む。本発明の一実施形態において、PRCで表わす屈折補正されたコード測定値は、次式のように形成される。
RC
=f・P/(f−f)−f・P/(f−f
≒P−1.5457(P−P) (6)
ここで、P及びPは、各々L及びL信号の周波数f、f上の、特定の測定時点における未処理擬似距離コード測定値である。LRCで表わす屈折補正された搬送波位相測定値は、同様に次式のように形成される。
RC
=f・L/(f−f)−f・L/(f−f
≒L−1.5457(L−L) (7)
ここで、L及びLは、各々L及びL信号の波長によってスケーリングされた搬送波位相測定値であり、その各々が、スケーリングされた搬送波位相測定値が、対応するコード測定値と同じ値に近くなるように加算された、近似的整数周期曖昧値を含む。つまり、
=(ψ+N)λ (8)
=(ψ+N)λ (9)
ここで、ψ及びψは、各々同一測定時点におけるL及びL周波数上の未処理搬送波位相測定値であり、N1及びN2の整数周期値は、ユーザ又は対象物140による搬送波位相の追跡の開始時点で初期化されて、対応するコード測定値の1搬送波波長の範囲内にある値を与えることにより、スケーリングされた搬送波位相測定値と対応するコード測定値の差異を小さい状態に維持する。式(7)の形式から、λが約0.1070メートル(すなわち、c/(f+f)であるように、屈折補正された搬送波位相測定値が、fとf(約2.803GHz)の合計として定義される波長λを有する整数周期曖昧さを含んでいる。
【0027】
式(6)〜(9)にしたがってコード及び搬送波位相測定値の両方から電離層効果が除去され、擬似距離及び搬送波位相測定値に対する衛星時計及び軌道誤差の影響が同一であるため、ステップ310で得られたPRC及びLRCの値は、搬送波位相測定値LRC及びコード測定値PRCにおける更に高次のマルチパス・ノイズに伴う可能性がある整数周期曖昧さを除いて、ほぼ一致するはずである。これにより、オフセットが「浮動曖昧さ」の一層高精度な推定値になるように、屈折が補正されたコード測定値と屈折が補正された搬送波位相測定値との間のオフセット(O=PRC−LRC)を一連の測定時点にわたって平滑化することにより、LRCにおける整数周期曖昧さの解決が可能になる。平滑化されたオフセット値は、後置測定値残差を用いて、調整された測定値残差がゼロに近くなるように追加的な搬送波位相測定値に調整を施すことによって更に調整することができる。
【0028】
本発明の一実施形態において、次式のようにオフセットの拡張平均を求めることによって、オフセットを平滑化する。
=Oi−1(PRC−LRC−Oi−1)/η (10)
ここで、i=1,2、3、...であって測定時点示し、ηの値は信頼度であり、浮動曖昧値の推定値であるOの精度が高くなるにつれて増加する。本発明の一実施形態において、平均化の最大値が得られるまでηはiに等しい。例えば、搬送波位相測定値がコード測定値のノイズの1/100に過ぎないと仮定するならば、「η」の値を100の2乗すなわち10,000未満に制限する。式(9)はこのように、浮動曖昧値が所定の精度に達するまで、再帰的に計算することができる。
【0029】
平滑化したオフセットOにより、平滑化した屈折補正コード測定値Sは、次式のように平滑化したオフセットに現在の現測定時点における屈折補正した搬送波位相測定値を加えることによって得られる。
=O+L (11)
これは搬送波位相測定値の精度を有するが、付随する曖昧さは存在しない。
【0030】
式(6)〜(11)と関連付けて述べたように、上述のプロセスは、ユーザGPS受信機142の視界にある複数の衛星の各々について実行する。ユーザGPS受信機142から見える複数の衛星の各々について利用可能な平滑化した屈折補正済みコード測定値を用いて、これらの衛星群までの擬似距離を取得することができる。これらの擬似距離は、ハブ105から受信したWADGPS補正値を用いて調整され、加重最小二乗法補正で用いられて状態ベクトルxを計算する。このようにして、ユーザGPS受信機142の位置、速度、及び時間(PVT)を、ユーザGPS受信機142のPVTに対するWADGPS解として計算することができる。
【0031】
平滑化した屈折補正済みオフセットを求める本方法の他の例が、"The Synergism of Code and Carrier Measurements"(コードと搬送波測定値の相乗効果)(Hatch, R, Proceedings of the Third International Geodetic Symposium on Satellite Doppler Positioning, DMA, NOS, Las Cruces, N.M., New Mexico State University, Vol. II, pp. 1213-1232)(衛星ドップラ測位に関する第3回国際測位学シンポジウム会報)、及び本願と所有者が同一の特許出願"Method for Generating Clock Corrections for a Wide-Area or Global Differential GPS System"(広域又は大域差動GPSシステム用のクロック補正値の生成法)米国公開番号第US−2005−0024263号に掲載されている。これらの文献の内容は、ここで引用したことにより、本願にも含まれるものとする。
【0032】
また、最小二乗法あるいはカルマン・フィルタ解の別個の状態として、「浮動曖昧さ」値を求めることも可能である。曖昧さが状態として含まれる場合、システムの外形が衛星運動のために変化するにつれて一層高精度となるように、各々の浮動曖昧値に対する推定値を分散にしたがって調整する。このように、この技術もまた、時間の経過に伴ない精度を高めて推定値を与える。"Navigation"(Vol. 38, No.1, Spring 1991におけるPatrick H. C. Hwangのの論文"Kinematic GPS for Differential Positioning: Resolving Integer Ambiguities on the Fly"(差動測位用の力学的GPS:整数曖昧さの伝送中における解決)を参照のこと。その内容は、ここで引用したことにより、本願にも含まれるものとする。
【0033】
「浮動曖昧さ」値を推定するために用いることができる上記技術の多くの組み合わせ及びバリエーションがある。しかし、これらは全てかなり長時間にわたる処理データを含む。その時間は、「浮動曖昧さ」がユーザ140のナビゲート位置の10センチメートル未満の精度を与えるのに十分な精度があると確信できるまで1〜2時間も要する場合が多い。「浮動曖昧さ」値を得るまでの時間を短縮するために、ユーザGPS受信機142の既知の位置を用いて、後述のようにWADGPSシステムを初期化することができる。
【0034】
図3Aは、WADGPSシステム100を初期化する方法300を示す。図3に示すように、方法300は、ユーザが既知の場所で静止しているか否かを判定するステップ310を含む。これは、ユーザ入力により、又はユーザ受信機142が静止しているか否かをコンピュータ144が判定できるようにする従来の何らかのメカニズムを介して行うことができる。ユーザ受信機142の位置が正確にわかっている場合、その位置を用いると、ローカル測位システム174及び/又はローカルRTKシステム150の支援なしに浮動曖昧値を計算することができる。調べられたユーザGPS受信機142の位置を既知の位置として用いることができ、又は環境によっては、単にユーザ又は対象140が静止しておりユーザ位置が先行動作の間に既に特定されているために、位置がわかっているという場合もある。
【0035】
ユーザが既知の場所で静止しているとの判定に応答して、方法300はステップ320へ進み、ユーザ受信機の位置を既知の場所に設定する。さもなければ、方法300はステップ330へ進み、ローカル測位システム174及び/又はローカルRTKシステム150を起動して、上述の方法を用いて自動的にユーザ位置を更新する。
【0036】
方法300は、ステップ320又はステップ330のいずれによって特定したにしても、ユーザ受信機の場所を用いて、衛星群110への理論距離を計算するステップ340を更に含む。これは、WADGPSシステム100からブロードキャストした天体暦に基づいて衛星群110の位置を計算して、WADGPSシステム100がブロードキャストした軌道補正値によってこれらの位置を調整するステップを含んでいてよい。ユーザ受信機位置及び衛星位置を直交座標で与えられて、ユーザ140から各々の衛星110までの理論距離を次式のように計算することができる。
γ=√{(x−x+(y−y+(z−z} (11)
ここで、下付添字sは衛星の座標を示し、下付添字uはユーザ又は対象物受信機の座標を示す。
【0037】
更に、方法300は、計算した理論距離から同一衛星に関する屈折補正した搬送波位相測定値を減算することによって、各々の衛星に対応する初期浮動曖昧値aを次式のように計算するステップ350を含む。
a=γ−LRC (12)
ただし、LRCは、測定開始時点で式(7)にしたがって計算した屈折補正値搬送波位相測定値を表わす。
【0038】
更に、方法300は、次式のように初期の浮動曖昧値を後続の測定時点において対応する屈折補正した搬送波位相測定値に加算することによって、即ち、
RC=LRC+a
そして、確信度を高く(又は分散を小さく)設定するように浮動曖昧値を既知として扱うことによって浮動曖昧値を求めるステップ360を含む。実際には、ステップ360は、浮動曖昧値を判定する処理において浮動曖昧値を調整するために利得に小さい値を用いて実行する。例えば、式(9)にしたがって屈折補正したコード測定値と屈折補正した搬送波位相測定値との間のオフセットを平滑化することによって浮動曖昧値を判定する場合、小さい利得とは、η=i+(大きい数)となるように、浮動曖昧値を計算する際にあたかも多数のオフセット値を用いたかのように、浮動曖昧値を扱うことを意味する。曖昧値をカルマン・フィルタ処理で判定する場合、曖昧状態の分散を小さい値に設定することによって小さい利得を得る。
【0039】
このように、静止ユーザ受信機142の既知の位置を用いることによって、あるいはローカル測位システム174及び/又はローカルRTKシステム150を用いて浮動曖昧値を初期化することによって、ユーザ受信機位置が未知の場合に浮動曖昧値を求めるために通常は15分から2時間程度要する「プルイン」時間を回避する。これによってWADGPSシステム100における搬送波位相曖昧さを解決する処理の速度が大幅に向上し、WADGPSシステム100がリアル・タイム測位及び/又はナビゲーションの目的には更に適したものになる。
【0040】
方法300において、ローカル測位システム174及び/又はローカルRTKシステム150を用いてユーザ受信機位置を更新するために、ローカル測位システム174内の1又は複数の陸標176の位置、及び/又はローカルRTKシステム150内の基準局120の位置をWADGPSシステム100内で精度高く判定しなければならない。従来型のローカル測位システム及びRTKシステムを相対的な意味で用いることができる。これは、ユーザ受信機142の位置を1又は複数の陸標及び/又は基準受信機に相対的に判定できることを意味する。このようにして、1又は複数の陸標及び/又は基準局の絶対座標が特に高精度であっても又はそうでなくても、通常のGPSデータ以外の座標データを用いて陸標及び/又は基準局を測位する場合であっても、ユーザGPS受信機142の精度高い相対位置を入手することができる。しかしながら、ローカル測位システム174、ローカルRTKシステム150及び/又はWADGPSシステム100を組み合わせて用いるには、ローカル測位システム174における1又は複数の陸標176及びRTKシステム150内での基準受信機120の絶対位置を判定することが必要である。ローカル測位システム174における1又は複数の陸標176又はローカルRTKシステム150内の基準局120に対して誤った位置を用いた場合、上述のように計算した浮動曖昧値は不正確となる。このため、後続のWADGPS処理の間に浮動曖昧値が徐々に正しい値に調整されていくにつれて、ユーザ受信機142の計算位置が徐々にドリフトすることになる。
【0041】
本発明の一実施形態において、ローカル測位システム174における1又は複数の陸標176の平均位置及び/又はRTKシステム150内の基準局120の平均位置は、信頼性を上げるためにWADGPSシステム100から数時間分の測位データに基づいて判定する。別の実施形態において、1又は複数の陸標176及び/又は基準局120におけるコンピュータ・システムは、自身の位置のオペレータ入力値を受理して、その位置をユーザ140に提供する。これによって、基準局の当該位置を用いて、相対ローカル測位及び/又はRTK測位を直ちに開始することができる。同時に、1又は複数の陸標176及び/又は基準局120の位置がWADGPSシステム100によって更に精度高く測定され、1又は複数の陸標176及び/又は基準局120へ送信される。次いで、この精度を高めた位置、又はオペレータ入力位置と、WADGPSシステム100が判定した1又は複数の陸標176及び/又は基準局120の高精度化した位置との間のオフセットは、ユーザ140へ比較的低速度で送信される。
【0042】
図3Bは、ローカル測位システム174及び/又はローカルRTKシステム150を用いてユーザ位置を更新する方法300のステップ330を詳細に示している。図3Bに示すように、ステップ330は、ユーザ又は対象物140が、ローカル測位システム174及び/又はRTKシステム150内の基準局120のオペレータ入力位置を受信するサブステップ331と、ユーザ又は対象物140がローカル測位及び/又はローカルRTK動作を実行して1又は複数の陸標176及び/又は基準局120の位置に対する相対的なそれ自体の位置を判定するサブステップ333とを含む。更に、ステップ330は、ユーザ又は対象物140が、WADGPSシステム100によって精度を高めて判定した基準局120の位置、又は基準局120のオペレータ入力位置とWADGPSシステム100によって精度を高めて判定した基準局120の位置との間のオフセットを受信するサブステップ335を含む。更に、ステップ330は、ユーザ又は対象物140が、陸標及び/又は基準局のユーザ入力位置、あるいはWADGPSシステム100(利用できる場合)によって判定した1又は複数の陸標176及び/又は基準局120の位置を用いてユーザGPS受信機142の絶対位置を直交座標で計算するサブステップ337を含む。
【0043】
方法300を用いて利点が得られる例に、列車の測位がある。列車がトンネルを通過する際に、ローカル測位システム・リンク、RTKリンク及び大域WADGPSリンクが共に失われる。この状況において、ローカル測位システム・データ・リンク及び/又はRTKデータ・リンクは、電車がトンネルから出る際にWADGPS浮動曖昧値を初期化するために設定することができる。これにより、正確な浮動曖昧値を判定するのに要する長いデータ間隔を回避する。
方法300を用いて利点が得られる別の例に、離陸直後の飛行機の測位がある。この場合、飛行機が離陸の準備をしている空港におけるローカル測位システム及び/又はローカルRTKシステムを用いて、離陸前又は離陸中にWADGPS曖昧さを初期化することができる。
【0044】
このように、ユーザGPS受信機142と、当該ユーザGPS受信機142に接続したコンピュータ・システム144とを含むユーザ又は対象物140は、ローカル測位システム、RTKモード及び/又はWADGPSモードの両方において動作することができる。ローカル測位システム174及びローカルRTKシステム150がWADGPSシステムより好ましいのは、ローカル測位システム174及びローカルRTKシステム150の探索方法が前述のように、WADGPSシステム100において整数曖昧値を解決する平滑化方法よりも、はるかに短い時間で済むためである。探索処理において、コード測定値の平滑化は必要でないか、あるいは、持続期間がはるかに短いコード測定値の平滑化を実行すれば、整数周期曖昧さを直接判定するのではなく、整数曖昧値の初期集合における不確実性を低減して、後続の探索処理の制約を更に厳しくすることができる。この理由により、曖昧値の初期集合を得るには数秒分のデータだけで十分である。
【0045】
しかしながら、ローカル測位システム174及び/又はローカルRTKシステム150が利用できるのは、ユーザGPS受信機142とローカル測位システム174における1又は複数の陸標176との間の通信リンクが維持することができ、しかもユーザ又は対象物140がローカル測位システム174における1又は複数の陸標176及び/又はローカルRTKシステム150内の基準局120から離れ過ぎない状況に限られる。これらの条件が満たされない場合、すなわちローカル測位システム174及び/又はローカルRTKシステム150が利用できないか又は低精度である場合、ローカル測位システム174及び/又はRTKシステム150によって最後に判定したユーザ受信機位置を用いてWADGPSシステムを初期化することによって「浮動曖昧さ」値を求めるのに要する長い「プルイン」時間を回避することができるため、ユーザはWADGPSシステム100に頼ってナビゲーションすることができる。
【0046】
図4Aに、ユーザコンピュータ・システム144が実行する、ローカル測位、RTK及びWADGPSを組み合わせた動作の処理フロー400を示す。処理フローはステップ440、450、及び460を含む。図4Aに示すように、ローカル測位補正値が利用可能な間は、ユーザ140はローカル測位モードにおいて動作し、RTK補正値が利用可能な間、ユーザ140はRTKモードで動作する。ユーザ140はローカル測位システム174及び/又はローカルRTKシステム150内の陸標基準局120の位置401を受信して、ステップ440を実行し、そこでローカル測位システム174内の陸標176及び/又はローカルRTKシステム150内の基準受信機120から受信したローカル測位/RTK補正値410を用いてユーザ受信機のPVTを決定する。ステップ440を実行する間、バックグラウンドでWADGPS解決が生成できるように、ユーザ140は連続的にハブ105からWADGPS補正値420を受信することができる。また、ユーザ140は、比較的低速でハブ105からローカル測位システム176内の陸標176及び/又はローカルRTKシステム150内の基準局120の更新位置430を受信することができる。陸標176及び/又は基準局120の更新位置及びユーザ受信機位置のローカル測位/RTK解を用いて、先に論じた方法300にしたがって、ローカル測位/RTK解に一致するように、WADGPS解を連続的にバックグラウンドで初期化することができる。
【0047】
ローカル測位及びRTK補正値が失われた場合、ユーザ140はWADGPS動作モードへ切り替えてステップ450を実行し、そこでユーザ140は、ローカル測位/RTK補正値が利用できなくなる直前に、ローカル測位及び/又はRTK動作モードにおいて判定したユーザ受信機位置を用いて、先に論じた方法300にしたがって、WADGPS動作モードの浮動曖昧値を初期化する。このように、長い「プルイン」時間を要せずに、「浮動曖昧さ」値を判定することができる。ステップ450の実行中に、ユーザ140は連続的にハブ105からWADGPS補正値420を受信する。また、ユーザ140は、比較的低速でハブ105からローカル測位システム174内の1又は複数の陸標176及び/又はローカルRTKシステム150内の基準局120の更新位置430を受信することができる。基準局座標を用いて、WADGPSモードで生成したユーザ受信機位置を、1又は複数の陸標176及び/又はローカル基準受信機120に相対的な位置に変換する。このように、ユーザコンピュータ・システム144が生成したPVT結果は、異なる動作モードの間で継ぎ目なく遷移する。
【0048】
ローカル測位及び/又はRTK補正値が再び利用可能になると、ユーザはステップ460においてローカル測位及び/又はRTK動作を再開するが、これはステップ440におけるローカル測位及び/又はRTK動作と同様である。
【0049】
図4Bは、ローカル測位システム、ローカルRTKシステム、及び/又はWADGPSシステムを用いるためのプロセス・フロー470を示すフロー・チャートである。利用可能であれば、ユーザの位置は、ローカル測位システムから受信した情報にしたがって判定することができる(ステップ480)。利用可能であれば、ユーザの位置は、RTKシステムから受信した情報にしたがって判定することができる(ステップ482)。利用可能であれば、ユーザの位置はWADGPSシステムから受信した情報にしたがって判定することができる(ステップ484)。搬送波位相測定における浮動曖昧値を初期化することができる(ステップ486)。プロセス470は、これらよりも少ない動作又は多い動作を含んでもよい。2つ以上の動作を組み合わせることもでき、更に少なくとも11つの動作の位置を変えることもできる。
【0050】
ローカル測位又はローカルRTKシステムから(例えば、ローカル基準局から)受信する補正信号に基づくナビゲーションは、通常、WADGPSシステムから受信する情報に基づくナビゲーションよりも精度が高いが、ローカル測位又はローカルRTKシステムでは、基準局によって生成し送信する補正情報の精度に、マルチパス信号が悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、ローカル測位又はローカルRTK基準局が生成する補正信号が閾値量を超えて(マルチパス信号によって又はそれ以外で)劣化した場合、その状態を検出し、WADGPSシステムからの情報に基づいて対象又はユーザをナビゲートすることが望ましい。図4Cを参照して以下に説明するプロセスは、ローカル測位又はローカルRTK基準局から受信した補正信号の精度が低いときを検出することによって、マルチ・モード・ナビゲーション・システムの信頼性を高める。その状態を検出した場合、対象又はユーザのナビゲーションは、WADGPSシステムから受信する情報に基づくようにする。ローカル測位又はローカルRTK基準局から受信する補正信号の精度がその後改善したならば、プロセスは、ローカル測位又はローカルRTKシステムから受信する補正情報を用いるナビゲーションに移行することができる。
【0051】
図4Cは、WADGPSシステムからローカル測位/ローカルRTKシステムに移行するときに、位置情報の信頼性を高めるためのプロセス・フロー490を示すフロー・チャートである。利用可能であれば、WADGPSシステムから受信する情報に応じて、対象又はユーザの位置(場合によっては、WADGPS位置とも呼ぶ)を判定することもできる(ステップ492)。WADGPSシステムを用いての対象又はユーザのナビゲーションは、ローカル測位又はローカルRTKシステムの基準局との通信が確立されるまで(又は再確立されるまで)継続することができる。利用可能であれば、ユーザの位置補正情報は、ローカル測位/ローカルRTKシステムから受信することもでき(ステップ494)、そして対象又はユーザの位置(場合によってはローカルRTK位置とも呼ぶ)は、ローカル測位/ローカルRTKシステムから受信する情報に応じて判定することもできる(ステップ496)。(同じ対象又はユーザの)双方の位置の現在値が利用可能である場合、WADGPSシステムからの情報を用いて判定した対象又はユーザの位置、及びローカル測位/ローカルRTKシステムからの情報を用いて判定した対象又はユーザの位置を比較する(ステップ497)。WADGPSシステムからの情報に基づいて判定した対象又はユーザの位置と、ローカル測位/ローカルRTKシステムからの情報に基づいて判定した位置との差が、既定の閾値を超える場合、WADGPSシステムによって判定したユーザの位置を、ナビゲーションのために用いる(ステップ498)。WADGPSシステムからの情報に基づいて判定した対象又はユーザの位置が、ローカル測位/ローカルRTKシステムからの情報を用いて判定した対象又はユーザの位置との相違が既定の閾値未満である場合、ローカル測位/ローカルRTKシステムからの情報に基づく対象又はユーザの位置を、ナビゲーションのために用いる(ステップ499)。
【0052】
実施形態の中には、既定の閾値が1又は複数の固定値である場合もある。例えば、一実施形態では、既定の閾値は、垂直位置の差に対しては第1の値(例えば、20cm)、そして水平位置の差に対しては第2の位置(例えば、15cm)である。WADGPS及びローカルRTKの位置の差が、垂直寸法で第1の値を超える場合、又は水平寸法で第2の値を超える場合、ローカル測位/RTKシステムからの位置補正情報を拒絶して、WADGPSの位置をナビゲーションのために用いる。別の実施形態の中には、既定の閾値を対象の第1及び第2位置(WADGPS位置及びローカルRTK位置)の共分散行列のカイ二乗比率検査を用いて決定する場合もある。共分散のカイ二乗比率検査の使用については、Satirapod C, Wang J、及びRizos C., "A Simplified MINQUE Procedure for the Estimation of Variance-Covariance Components of GPS Observables" (GPSオブザーバブルの分散−共分散成分の推定のための簡略化MINQUE手順)Survey Review, Vol. 36, no. 286, pp.582-590, 2002、H.K.Lee, C.Rizo、及びG.I.Jee, "Design and Analysis of DGPS Filter with Consistent Error Covariance Information"(一貫した誤差共分散情報によるDGPSフィルタの設計及び分析) SatNav 2003, 6th International Symposium on Satellite Navigation Technology Including Mobile Positioning & Location Services, Melbourne, Australia, 22 July 2003、並びにH.K. Lee, C.Rizos、及びG.I.Jee, "Design of Kinematic DGPS Filters with Consistent Error Covariance Information" (一貫した誤差共分散情報による力学的DGPSフィルタの設計)Radar, Sonar and Navigation, IEEE Proceedings, Vol. 151, Issue 6, pp.382-388, 10 Dec. 2004において論じられている。その各々の内容は、ここで引用したことにより、背景情報として本願にも含まれるものとする。
【0053】
実施形態の一例では、ユーザGPS受信機142は、ローカル測位システム176との通信が利用可能なときには、ユーザ140の第1位置を判定する際に、ローカル測位システム176を用いる第1動作モードで動作することができる。ユーザ140の第2位置は、第2動作モードにおいてWADGPSシステム100を用いて実行する、搬送波位相測定にしたがって判定することができる。第1位置のようなユーザ140の既知の位置は、搬送波位相測定における浮動曖昧値を初期化するために用いることができる。実施形態の中には、ユーザ140の既知の位置をユーザが提供及び/又は入力することができる場合もある。
【0054】
実施形態の中には、利用可能であれば、第1動作モードを用いてユーザ140の位置を判定する場合もある。しかしながら、ローカル測位システム174との通信が失われた場合、第2動作モードを用いればよい。ローカル測位システム174までの距離が、100m、500m、1000m、10,000m又はそれ以上のような値を超過すると、ローカル測位システム174との通信が失われる場合がある。
【0055】
実施形態の中には、第1動作モード及び第2動作モードを実質的に同時に行うことができ、第1位置と第2位置との間の差を用いて、搬送波位相測定において浮動曖昧値を初期化する場合もある。実施形態の中には、第1動作モード及び第2動作モードを実質的に同時に行うことができ、第1位置と第2位置との間の差を用いて、ユーザ140の第3位置を判定する場合もある。ユーザの第3位置は、第3動作モードにあるローカル基準受信機122においてRTKシステム150から受信する情報に応じればよい。
【0056】
実施形態の中には、第3動作モードを用いるのを、ローカル測位システム174との通信が失われたときとするとよく、第1動作モードを用いるのを、ローカル測位システム174が再度利用可能となったときとするとよい場合がある。
【0057】
実施形態の中には、第2動作モードを用いるのは、ローカル基準受信機122及びローカル測位システム174との通信が失われたときであり、第1動作モードを用いるのは、ローカル測位システム174との通信が利用可能なときであり、更に、第3動作モードを用いるのは、ローカル基準受信機122との通信が利用可能であり、ローカル測位システム174との通信が失われたときである場合がある。
【0058】
実施形態の中には、第2動作モードを用いるのは、ローカル測位システム174からユーザ140までの距離が第1値(10,000m等)よりも大きいときであり、第1動作モードを用いるのは、ローカル測位システム174からユーザ140までの距離が第2値(1000m等)よりも小さいときであり、第3動作モードを用いるのは、ローカル測位システム174からユーザ140までの距離が第1所定値と第2所定値との間である場合がある。
【0059】
実施形態の中には、第2動作モードによって決定した位置と、第1動作モードによって決定した位置とを比較して、第2動作モードによって決定した位置と第1モードによって決定した位置との差が既定の閾値を超えるときに、第2動作モードを用いる場合がある。
【0060】
実施形態の中には、第2動作モードを用いるのは、第2動作モードによって決定した位置と、第3動作モードによって決定した位置とを比較して、第2動作モードによって決定した位置と第3モードによって決定した位置との差が既定の閾値を超えるときである場合がある。
【0061】
処理400は、多くのアプリケーションで利用できる。一アプリケーションは、WADGPS通信リンクが少なくとも一般的には利用できるがローカル測位システム及び/又はRTK無線リンクを維持できない領域にローカル測位システム及び/又はRTK動作を拡張することを含む。例えば、図5に示すように、ユーザ又は対象140は、うねりのある丘陵の領域501の列520毎に移動する農業車両510であってもよく、その場合、ユーザ受信機142を農業車両又は農業車両に接続した農業装置に取り付けることができる。領域501は、ローカルRTKシステム150内の基準局120から見える領域503、及び基準局120からは見えない領域(陰影付き)505、507を含む。RTK通信リンクは通常見通し線となるため、ユーザGPS受信機142が領域503から領域505又は507へ移動するたびにRTKデータが失われる。しかし、ユーザ受信機142とWADGPSシステム100との間のデータ・リンクは、多くの場合衛星群によって使い易くなっているので、一般に利用可能である。RTK無線リンクが利用可能であってRTKシステム150が動作中の場合はいつでもWADGPSシステム100における浮動曖昧さを初期化することにより、RTKリンクが失われた場合にその間におけるRTK動作の精度を現実的に保持することができる。
【0062】
図1のWADGPS/RTKシステム100は、先の説明において用いられているが、測位及び/又はナビゲーション目的で衛星群からの搬送波位相測定値を利用し、したがって位相測定値に付随する曖昧値を判定する必要がある任意の地域、広域、又は大域システムも、上述の方法300及び処理400の利点が得られることは認められよう。これらのシステムの例として、John Deere Company(ジョン・ディア社)が開発したStarfire(商標)システム、及びいくつかの米国政府機関において開発中の地域的高精度全国差動(HA−ND:High Accuracy-National Differential)GPSシステムが含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域作動衛星測位システム及びローカル測位システムの双方を用いて対象を測位又はナビゲートする方法において、該方法は、
前記広域作動衛星測位システムからの情報に基づいて、前記対象の第1位置を判定するステップと、
前記ローカル測位システムの基地局から位置補正情報を受信し、前記ローカル測位システムの基地局から受信した補正情報に基づいて、前記対象の第2位置を判定するステップと、
前記第1位置及び第2位置を比較するステップと、
前記第1位置及び第2位置に既定の閾値を超える差がある場合、前記第1位置をナビゲーションのために用い、前記第1位置及び第2位置に前記既定の閾値未満の差がある場合、前記第2位置をナビゲーションのために用いるステップと
からなることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記既定の閾値は、対象の第1及び第2位置の共分散行列のカイ二乗比率検査を用いて決定されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記既定の閾値は、既定の方向に関して15〜20cmの間の値であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記ローカル測位システムは、ローカル・リアル・タイム力学的(RTK)測位システムであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、該方法は、前記ローカル測位システムの基地局との通信の損失を検出した場合、前記ローカル測位システムを用いた前記対象のナビゲートから、前記広域作動衛星測位システムを用いた前記対象のナビゲートに移行するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、該方法は、前記ローカル測位システムの基地局との通信の再捕獲を検出し、前記第1位置及び第2位置の差が前記既定の閾値未満であると判定した場合、前記広域作動衛星測位システムを用いた前記対象のナビゲートから前記ローカル測位システムを用いた前記対象のナビゲートに移行するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記第1位置を判定するステップは、前記広域作動衛星測位システムからの位置補正情報を受信するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
コンピュータ読み取り可能プログラム命令を格納したコンピュータ読み取り可能媒体であって、前記プログラム命令をプロセッサによって実行すると、当該プロセッサに、広域作動衛星測位システム及びローカル測位システムの双方を用いて対象を測位又はナビゲートする方法を実行させるよう構成されており、前記プログラム命令は、
前記広域作動衛星測位システムからの情報に基づいて、前記対象の第1位置を判定する命令と、
前記ローカル測位システムの基地局から位置補正情報を受信し、前記ローカル測位システムの基地局から受信した補正情報に基づいて、前記対象の第2位置を判定する命令と、
前記第1位置及び第2位置を比較する命令と、
前記第1位置及び第2位置に既定の閾値を超える差がある場合、前記第1位置をナビゲーションのために用い、前記第1位置及び第2位置に前記既定の閾値未満の差がある場合、前記第2位置をナビゲーションのために用いる命令と
を含んでいることを特徴とするコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項9】
請求項8記載のコンピュータ読み取り可能媒体において、前記既定の閾値は、対象の第1及び第2位置の共分散行列のカイ二乗比率検査を用いて決定されることを特徴とするコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項10】
請求項8記載のコンピュータ読み取り可能媒体において、前記既定の閾値は、既定の方向に関して15〜20cmの間の値であることを特徴とするコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項11】
請求項8記載のコンピュータ読み取り可能媒体において、前記ローカル測位システムは、ローカル・リアル・タイム力学的(RTK)測位システムであることを特徴とするコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項12】
請求項8記載のコンピュータ読み取り可能媒体において、前記プログラム命令は更に、前記ローカル測位システムの基地局との通信の損失を検出した場合、前記ローカル測位システムを用いた前記対象のナビゲートから、前記広域作動衛星測位システムを用いた前記対象のナビゲートに移行する命令を含むことを特徴とするコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項13】
請求項12記載のコンピュータ読み取り可能媒体において、前記プログラム命令は更に、前記ローカル測位システムの基地局との通信の再捕獲を検出し、前記第1位置及び第2位置の差が前記既定の閾値未満であると判定した場合、前記広域作動衛星測位システムを用いた前記対象のナビゲートから前記ローカル測位システムを用いた前記対象のナビゲートに移行する命令を含むことを特徴とするコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項14】
請求項8記載のコンピュータ読み取り可能媒体において、該媒体は、前記広域作動衛星測位システムからの位置補正情報を受信する命令を含むことを特徴とするコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項15】
広域作動衛星測位システム及びローカル測位システムの双方を用いて対象を測位又はナビゲートする衛星ナビゲーション受信機において、該受信機は、
メモリと、
衛星信号受信機と、
広域作動衛星測位システム及びローカル測位システムから位置補正情報を受信する少なくとも1つの補助受信機と、
プロセッサと、
前記メモリに格納され前記プロセッサが実行するプログラムであって、
前記広域作動衛星測位システムからの情報に基づいて、前記対象の第1位置を判定する命令と、
前記ローカル測位システムの基地局から位置補正情報を受信し、前記ローカル測位システムの基地局から受信した補正情報に基づいて、前記対象の第2位置を判定する命令と、
前記第1位置及び第2位置を比較する命令と、
前記第1位置及び第2位置に既定の閾値を超える差がある場合、前記第1位置をナビゲーションのために用い、前記第1位置及び第2位置に前記既定の閾値未満の差がある場合、前記第2位置をナビゲーションのために用いる命令と
を含むプログラムと
を備えていることを特徴とする衛星ナビゲーション受信機。
【請求項16】
請求項15記載の衛星受信機において、前記既定の閾値は、対象の第1及び第2位置の共分散行列のカイ二乗比率検査を用いて決定されることを特徴とする衛星受信機。
【請求項17】
請求項15記載の衛星受信機において、前記既定の閾値は、既定の方向に関して15〜20cmの間の値であることを特徴とする衛星受信機。
【請求項18】
請求項15記載の衛星受信機において、前記ローカル測位システムは、ローカル・リアル・タイム力学的(RTK)測位システムであることを特徴とする衛星受信機。
【請求項19】
請求項15記載の衛星受信機において、前記受信機は、前記ローカル測位システムの基地局との通信の損失を検出した場合、前記ローカル測位システムを用いた前記対象のナビゲートから、前記広域作動衛星測位システムを用いた前記対象のナビゲートに移行するよう構成されていることを特徴とする衛星受信機。
【請求項20】
請求項19記載の衛星受信機において、前記受信機は、前記ローカル測位システムの基地局との通信の再捕獲を検出し、前記第1位置及び第2位置の差が前記既定の閾値未満であると判定した場合、前記広域作動衛星測位システムを用いた前記対象のナビゲートから前記ローカル測位システムを用いた前記対象のナビゲートに移行することを特徴とする衛星受信機。
【請求項21】
請求項15記載の衛星受信機において、該受信機は、前記広域作動衛星測位システムからの位置補正情報を受信する命令を含むことを特徴とする衛星受信機。
【請求項22】
広域作動衛星測位システム及びローカル測位システムの双方を用いて対象を測位又はナビゲートする衛星ナビゲーション受信機において、該受信機は、
前記広域作動衛星測位システムからの情報に基づいて、前記対象の第1位置を判定し、
前記ローカル測位システムの基地局から位置補正情報を受信し、前記ローカル測位システムの基地局から受信した補正情報に基づいて、前記対象の第2位置を判定し、
前記第1位置及び第2位置を比較し、
前記第1位置及び第2位置に既定の閾値を超える差がある場合、前記対象をナビゲートするために前記第1位置を用い、前記第1位置及び第2位置に前記既定の閾値未満の差がある場合、前記対象をナビゲートするために前記第2位置を用いる
よう構成されていることを特徴とする衛星ナビゲーション受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−544037(P2009−544037A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520741(P2009−520741)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/013814
【国際公開番号】WO2008/008146
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(504278123)ナヴコム テクノロジー インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】