説明

地理画像処理システム

【課題】衛星画像や航空写真画像などの地理画像を用いて地図を作成する作業において、地理画像中の建築物等の形状・輪郭の認識を容易にすることができる画像処理システムを提供する。
【解決手段】地理画像中の建築物等の輪郭、すなわちエッジを抽出し、抽出したエッジに基づいて、地理画像中の建築物等の構造上の特徴点を抽出し、ユーザがこの特徴点に基づいて建築物等の輪郭を画定することができる地理画像処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星画像や航空写真画像を利用して地図を作成するために用いる地理画像処理システムに関し、特に、地理画像に含まれる建築物等の地物の形状・輪郭の認識を容易にするための画像処理を行うシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、衛星画像や航空写真画像の利用が広まってきており、特に地図の作成、更新における広大な領域の探査を効率的に行うために利用されている。衛星画像や航空写真画像の利用により、従来の現地での測量をする手間を省くことができ、広い範囲の地図データを一度に得ることができる。特に、衛星画像では撮影頻度を上げることにより、より新しい地図データを常に用意することが可能となる。
【0003】
従来、衛星画像や航空写真画像における建築物等の地物の認識は、操作者が地理画像を見ながら手作業で行っていた。具体的には、地理画像中の宅地、農地、道路、河川、建築物等の地物が占める領域を目視により判断し、それらの輪郭をトレースして入力することで、地図データを作成する。また、近年では、コンピュータを使って複数の地理画像データ間の変化を検知することによって、データベースのメンテナンス作業の省力化や地図データの修正精度の向上が図られている。
【0004】
【非特許文献1】八木伸行、外5名,「C言語で学ぶ実践画像処理」,株式会社オーム社,1999年12月8日,p.27−31,38−50
【非特許文献2】酒井幸市,「デジタル画像処理入門」,CQ出版株式会社,2002年10月1日,p.127−129
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
衛星画像や航空写真画像を利用した地図の作成、更新の際には、これらの地理画像から、宅地、農地、道路、河川、建築物等の地物を認識し、地図データとしてデータベース化する作業が必要となる。従来、この作業は自動化されておらず、多大な人的コストを必要とするものであった。
【0006】
特に、建築物の詳細な形状・輪郭を認識するには、画像を見て、一つ一つの建築物の輪郭を正確にトレースする作業が必要である。このような作業は操作者に対して多大な集中力、時間を要するものとなっている。さらに、広範囲の地図を限られた時間で作るためには複数の操作者が必要となり、操作者の熟練度の差によってデータベースの精度にばらつきが出てしまう。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、衛星画像や航空写真画像などの地理画像を用いて地図を作成する作業において、地理画像中の建築物等の形状・輪郭の認識を容易にすることができる地理画像処理システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、地理画像中の建築物等の輪郭、すなわちエッジを抽出し、抽出したエッジに基づいて、地理画像中の建築物等の構造上の特徴点を抽出し、ユーザがこの特徴点に基づいて建築物等の輪郭を画定することができるようにすることにより、上記課題が解決されることに想到した。
【0009】
すなわち、本発明は、地理画像に含まれる地物の輪郭を画定するためのシステムであって、地理画像データからエッジを抽出するエッジ抽出手段と、前記抽出されたエッジから特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、前記地理画像と前記特徴点とを表示し、ユーザによる地物の輪郭を画定する入力を受け付ける輪郭画定手段とを備えていることを特徴とするシステムを提供するものである。
【0010】
本発明の地理画像処理システムにおいて、前記エッジ抽出手段は、地理画像データからエッジを抽出して得られるデータを2値化し、全てのエッジを1画素幅とする細線化を行い、所定長さに満たないエッジをノイズとして除去することを特徴とする。このように、エッジデータのノイズ除去を行うことにより、後の特徴点抽出の精度が向上される。
【0011】
本発明の地理画像処理システムにおいて、前記特徴点抽出手段は、前記抽出されたエッジの端点、交点、角点のうち少なくとも1種類を特徴点として抽出することを特徴とする。これらの点は、地物の輪郭を決定するために重要となる点である。
【0012】
本発明の地理画像処理システムにおいて、前記特徴点抽出手段は、前記抽出されたエッジを特徴点のテンプレートとマッチングすることにより特徴点抽出を行うことを特徴とする。例えば、エッジの交点、角点の画素パターンを予め登録しておくことにより、特徴点抽出処理を迅速に実行することができる。
【0013】
本発明の地理画像処理システムにおいて、前記輪郭画定手段は、前記地理画像及び特徴点の表示画面において、ユーザがポインタ操作により特徴点間を結線して地物の輪郭を画定することができるユーザインタフェースを提供することを特徴とする。さらには、このユーザインタフェースにより、特徴点間の結線の集合により1つの閉じられた領域を画定することにより、各地物の輪郭を画定することができるのが好ましい。
【0014】
本発明の地理画像処理システムにおいて、前記輪郭画定手段は、前記地理画像及び特徴点の表示画面において、ユーザが指定した範囲内に含まれる特徴点間を結線して得られる1以上の閉じられた領域を自動的に生成し、前記閉じられた領域を地物の輪郭の候補として表示することを特徴とする。これにより、ユーザがポインタ操作等により各特徴点間を結線する煩雑な操作を行わなくてもよくなり、ユーザの利便性が向上される。
【0015】
本発明の地理画像処理システムにおいて、前記輪郭画定手段は、前記地理画像及び特徴点の表示画面において、前記地物の輪郭の候補を表示する際に、前記閉じられた領域のうちユーザがポインタ操作により範囲を指定した際のポインタの軌跡との一致度が高いものを優先度の高い候補として表示することを特徴とする。これにより、ユーザが視覚的に判断した地物の輪郭と合致した候補を優先的に提示することができる。
【0016】
本発明の地理画像処理システムにおいて、前記輪郭画定手段は、前記地理画像及び特徴点の表示画面において、表示された地物の輪郭の候補に対して、特徴点の追加・削除を行うことができるユーザインタフェースを提供することを特徴とする。これにより、地物の輪郭の候補が適切に表示されない場合に、ノイズなどの影響を除去することができる。
【0017】
このようなユーザインタフェースにより、従来手作業により行っていた地物の輪郭の線引きを自動化することが可能となり、ユーザの作業負荷が大幅に軽減される。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、本発明の地理画像処理システムによれば、衛星画像や航空写真画像などの地理画像から地図データを作成する作業を大幅に効率化することができる。また、従来操作者の技量に頼っていた作業工程が自動化されるので、多数の操作者によって作業を行う場合であっても、操作者の熟練度の差に影響されることなく均質な地図データを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の地理画像処理システムを実施するための最良の形態を詳細に説明する。図1〜図14は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0020】
システム構成
図1は、本発明の地理画像処理システムの構成を概略的に示すブロック図である。図1において、本システムは、パソコン、ワークステーション等から構成される処理装置10と、メインメモリとして使用されるRAM(ランダムアクセスメモリ)及び磁気ディスク記憶装置等の補助記憶装置とを含む記憶装置20と、入出力装置30とを備えている。
【0021】
入出力装置30は、キーボード及びマウス等のポインティングデバイスを含む入力装置31と、CRTディスプレイ装置等の表示装置32と、プリンタ33とを備えている。入力装置31は、ユーザによるパラメータの入力やコマンドの起動等、並びに本システムにより画像処理を施した地理画像を用いた地図データ生成に用いられる。表示装置32及びプリンタ33は、本システムによる地理画像や地図データをユーザに提示するために用いられる。尚、表示装置としては、表示装置32及びプリンタ33のいずれか一方のみを備える構成としてもよい。
【0022】
処理装置10は、地理画像処理プログラム40を含んでいる。地理画像処理プログラム40は、プログラムモジュールとして、地理画像に含まれる建築物等のエッジを抽出するエッジ抽出部100、地理画像から抽出されたエッジを利用して画像中の特徴点を抽出する特徴点抽出部200、地理画像中の抽出された特徴点を利用してユーザ操作により建築物等の輪郭(以下、単に「家枠」という)を画定する家枠画定処理部300を含んでいる。
【0023】
記憶装置20は、地理画像データ21、エッジデータ22、特徴点データ23、家枠データ24を記憶する。これらのうち、地理画像データ21は、人工衛星画像又は航空写真画像から得られるものであり、本システムによる処理実行前に予め記憶されているデータである。一方、エッジデータ22、特徴点データ23、家枠データ24は、本システムにおいて地理画像データ21に基づいて生成されるデータである。
【0024】
地理画像処理の概要
図2は、本システムにより行われる画像処理の概要を例示する図である。図2(a)は、予め記憶装置20に記憶されている地理画像データ21である。この地理画像データに対して、エッジ抽出処理を行うことにより、図2(b)に示すエッジ抽出画像が得られる。このエッジ抽出画像に対して、細線化処理を行って図2(c)に示す細線化画像を取得し、さらに、ノイズ除去を行って図2(d)に示す画像を得る。この画像は、建築物等の輪郭のみが抽出された画像であり、記憶装置20においてエッジデータ22として記憶される。以上のエッジ抽出処理は、Sobelフィルタ(非特許文献1参照)などのエッジフィルタを使用して行うことができる。この画像から建築物等の家枠を構成する可能性のある点である特徴点を抽出して、図2(e)に示す特徴点抽出画像を得る。この画像中の特徴点の座標データが記憶装置20において特徴点データ23として記憶される。最後に、地理画像データ21と特徴点データ23とを合わせて表示し、ユーザ操作により家枠を画定する入力を受け付けて、図2(f)に示す家枠表示画像が得られる。
【0025】
地理画像処理の詳細
以下、本発明の地理画像処理システムにおけるエッジ抽出処理、特徴点抽出処理、家枠画定処理について、詳細を説明する。本システムにおいて、地理画像処理プログラム40が起動されると、エッジ抽出部100、特徴点抽出部200、家枠画定処理部300の順に処理が実行される。以下、それぞれによる処理の詳細を述べる。
【0026】
(1)エッジ抽出処理
図3は、地理画像処理プログラム40のエッジ抽出部100による処理の流れを示すフローチャートである。図3において、エッジ抽出部100は、記憶装置20から地理画像データ21を読み込み(S301)、画像中の建築物等のエッジを抽出する(S302)。エッジを抽出する手法としては、種々の周知技術が適用可能である。建築物の輪郭を抽出できればどの手法を用いてもよい。本システムでは、上記したSobelフィルタを使用するものとする。この処理によって生成される図2(b)に示すような画像をエッジ抽出画像と呼ぶ。
【0027】
次に、エッジ抽出部100は、エッジ抽出画像中の強いエッジと弱いエッジとを区別するために、エッジ抽出画像を2値化する(S303)。2値化を行う際の閾値の決定方法としては、種々の周知技術が適用可能であるが(非特許文献1参照)、本システムでは、あらかじめ登録しておいた閾値を使用するものとする。閾値を低く設定しておくと、後述する特徴点抽出処理においてより多くの特徴点が設定され、詳細な家枠データを作成できる反面、特徴点が多くなる程、処理コストが大きくなる。一方で、閾値を高く設定しておくと、特徴点抽出処理において設定される特徴点の数が少なくなり、処理コストが小さくなる反面、家枠データの精度は低くなる。以上より、システムが耐え得る処理コストと、必要とされる家枠データの精度とを勘案して、適切な閾値を設定する。
【0028】
エッジ抽出部100は、この2値化したエッジ抽出画像に対して、細線化処理を行う(S304)。この処理により、図2(c)に示すように、画像中のエッジが全て1画素幅となる。細線化を行う方法についても、種々の周知技術が適用可能である(非特許文献1参照)。次に、この細線化した画像において微小なエッジを除去するノイズ除去処理を行う(S305)。この処理により、図2(c)に示すような細線化画像中の建築物の輪郭とは関係のない微小なエッジ(道路の路面の凹凸、建築物の壁面の模様、草木などから生成される)が取り除かれ、図2(d)に示すような画像が生成される。このノイズ除去処理についても、種々の周知技術が適用可能である(非特許文献1参照)。例えば、ノイズとなるエッジは、建築物のエッジとは異なりエッジの長さが短いことが多いので、あらかじめ指定した長さ以下のエッジを除去するようにすればよい。ノイズには様々なパターンによってノイズ除去の手法を変える手法も広く知られた周知技術であり、本システムにおいても、ノイズの特徴に合わせて最適なノイズ除去手法を選択するものとする。
【0029】
エッジ抽出部100は、このようにして生成された図2(d)に示すような画像を、エッジデータ22として記憶装置20に格納する。
【0030】
(2)特徴点抽出処理
図4は、地理画像処理プログラム40の特徴点抽出部200による処理の流れを示すフローチャートである。図4において、特徴点抽出部200は、記憶装置20からエッジデータ22を読み込み(S401)、このデータに含まれる特徴点として、各エッジの端点を抽出し(S402)、各エッジの交点を抽出し(S403)、各エッジの角点を抽出する(S404)。抽出された端点、交点、角点のそれぞれの座標を、特徴点データ23として記憶装置20に記録する(S405)。
【0031】
端点抽出処理(S402)では、1画素幅に細線化されているエッジデータ22から、各エッジの両端点となっている画素を検出する。交点抽出処理(S403)では、エッジデータ22における2本のエッジの交点となっている画素を検出する。角点抽出処理(S404)では、エッジがなす角の頂点となっている画素を検出する。ここで、交点抽出処理及び角点抽出処理は、それぞれ、図5及び図6に示すようなテンプレートを使用したテンプレートマッチング(非特許文献2参照)によって行うことができる。具体的には、図5の(a)〜(d)や図6の(a)〜(d)のような特徴点のテンプレートを予め登録しておき、このテンプレートをエッジデータ22の全画素に対してマッチングし、テンプレートにマッチした箇所を特徴点とする。
【0032】
図7は、特徴点抽出部200により生成される特徴点データ23の構成例を示す図である。図7(a)に示すように、画像中のエッジの端点、交点、角点が特徴点として抽出されている場合には、図7(b)に示すような特徴点データ23が生成されている。尚、図7(b)に示す特徴点データ23のデータテーブルにおいて、特徴点の種類(端点、交点、角点のいずれであるか)を合わせて記憶していてもよい。
【0033】
(3)家枠画定処理−第1の形態
図8は、地理画像処理プログラム40の家枠画定処理部300による処理の流れを示すフローチャートである。また、図9は、家枠画定処理部300による処理を行う際にユーザに提示されるインタフェース画面を示す図である。図8において、家枠画定処理部300は、記憶装置20から地理画像データ21と、特徴点データ23とを読み込み、地理画像を表示装置32等に表示する(S801)。この表示画面において、ユーザは、入力装置31等を用いて地理画像中の家枠を画定する操作を行うことができるほか、画面を拡大したり表示箇所を変更したりすることができるようになっている。その後、家枠画定処理部300は、変数Nを1に初期化する(S802)。変数Nは、地理画像中の1つの閉じた領域(建築物等が占める領域に相当する)を構成する家枠群に含まれる家枠構成点の識別番号として用いられる。
【0034】
地理画像を表示した画面において、ユーザが家枠画定対象とする部分の近傍をクリックすると(S803)、家枠画定処理部300は、図9(a),(b)に示すように、クリック位置から一定の範囲内に存在する特徴点を地理画像上に重ねて表示する(S804)。このとき、最近傍の特徴点と他の特徴点とを区別して表示するのが好ましい。例えば、色による区別や、点滅させて区別するなどの表示方法が可能である。以後、クリック位置の最近傍の特徴点を「注目特徴点」と呼ぶ。尚、特徴点を操作するための方法は任意に決めることができる。例えば、上記でクリックの変わりにポインティングデバイスによるポイント操作やキーボード操作によって同様の動作が行われるようにしてもよい。
【0035】
地理画像上に特徴点が表示された画面において、ユーザは、表示されている注目特徴点を家枠構成点とするかどうかを入力する(S805)。ユーザが表示されている注目特徴点を家枠構成点としなかった場合には、別の特徴点を新たな注目特徴点として表示し(S806)、再度この点を家枠構成点とするかどうかをユーザに入力させる。以降、表示されている全ての特徴点についてS805〜S806の処理を繰り返すが、ユーザ操作により途中で家枠画定対象の選択を解除することもできる。
【0036】
S805において、いずれかの特徴点が家枠構成点とされた場合には、当該注目特徴点を家枠構成点Nとして、その座標を記憶する。その後、Nが1であるかどうかを判定し(S807)、N=1である場合には、S810に処理を進める。一方、N=1でない場合には、図9(c)に示すように、地理画像上で、家枠構成点Nと家枠構成点N−1とを直線で結合する(S808)。すなわち、家枠構成点N−1から家枠構成点Nまでの家枠が描かれたことになる。その後、家枠構成点Nの座標と家枠構成点1の座標とを比較し(S809)、両者が一致しない場合には、S810に処理を進める。S810では、変数Nを1インクリメントし、S803に処理を進める。以降、地理画像中の家枠画定対象が完全に画定されるまで(S809においてyesとなるまで)、上記同様の処理が繰り返される。S809において、家枠構成点Nの座標と家枠構成点1の座標とが一致する場合とは、図9(d)に示すように、家枠構成点同士を順に連結することにより1つの閉じた領域が形成されたことを意味するので、当該建築物等の家枠が画定されたとして、次の家枠画定対象に対する処理に移行する(S811)。
【0037】
このようにして、地理画像中に含まれる建築物等の対象物全ての輪郭が画定されることになる。家枠画定処理部300は、画定された各家枠の座標データを、家枠データ24として記憶装置20に記憶する。この家枠データ24のデータ構成例を図10に示す。
【0038】
(4)家枠画定処理−第2の形態
図11は、地理画像処理プログラム40の家枠画定処理部300による処理の他の形態について、流れを示すフローチャートである。また、図12は、家枠画定処理部300による処理を行う際にユーザに提示されるインタフェース画面を示す図である。図11において、家枠画定処理部300は、記憶装置20から地理画像データ21と、家枠データ24とを読み込み、地理画像を表示装置32等に表示する(S1101)。この表示画面において、ユーザは、入力装置31等を用いて地理画像中の家枠を画定する操作を行うことができるほか、画面を拡大したり表示箇所を変更したりすることができるようになっている。
【0039】
地理画像を表示した画面において、ユーザが家枠画定対象とする部分の周囲を囲むように選択すると(S1102)、家枠画定処理部300は、図12(a),(b)に示すように、選択した範囲内に存在する特徴点を地理画像上に重ねて表示する(S1103)。尚、特徴点を操作するための方法は任意に決めることができる。
【0040】
地理画像上に特徴点が表示された画面において、家枠画定処理部300は、家枠候補領域の表示処理を行う(S1104)。家枠候補領域とは、複数個の特徴点を結線してできた閉じられた領域であり、家枠の候補となる領域である。家枠候補領域を表示する際には、ユーザが選択範囲を指定した際の軌跡に近い軌跡を描くような家枠候補領域を、優先的に表示する。図12(c)はこの例を示す図である。図12(c)では、ユーザは「始点」から選択領域の指定を開始し、矢印に示す軌跡を描き、「終点」で選択範囲の指定を完了している。この場合、(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)の順番で特徴点を結線したパターンが、選択範囲指定の際の軌跡に最も近いためこのパターンを、優先的に家枠候補領域として表示する。この処理により、ユーザにとって好ましい家枠候補領域が表示されやすくなり、上記第1の形態の場合に比べて、ユーザの負担を減少させることができる。
【0041】
次に、図12(d)に示すように、ユーザは表示された家枠候補領域を家枠として画定するか否かを判断する(S1105)。表示された家枠候補領域に問題が無ければ、その家枠候補領域を家枠として画定する(S1107)。問題がある場合は、家枠候補領域を画面から消去し、必要に応じて特徴点の追加及び削除の処理を行う(S1106)。そして、改めて特徴点の結線のパターンを変えた家枠候補領域を表示し、表示された家枠候補領域を家枠として画定するか否かを問う。この際、代替として表示させる家枠候補領域は、ユーザが選択範囲を指定した際の軌跡に近いパターンを優先的に表示させる。この処理を繰り返し行い、図12(e)に示すように選択領域内の建物の家枠を画定する。尚、ユーザ操作により途中で家枠画定対象の選択を解除することもできる。
【0042】
選択領域内の建築物に対して家枠を画定したら、次の家枠画定対象に対する処理を行う。すべての家枠画定対象に対して家枠を画定したら家枠画定処理部300を終了する(S1108)。
【0043】
図13は、特徴点の追加を行う処理を示す図である。前記特徴点抽出処理200において、本来抽出されるべき特徴点が、ノイズなどの影響で抽出されないことがある。図13(a)では、A地点に、本来抽出されるべき特徴点がない。そのため、この建物に対して家枠候補領域を表示すると、図13(b)に示すように、好ましくない領域となってしまう。このような事態に対応するため、ユーザが特徴点を追加することが可能である。図13(c)はユーザによってA地点に特徴点が追加された様子を示す図である。この特徴点を含めた家枠候補領域を表示すると、図13(d)に示すような好ましい家枠を抽出することが可能である。
【0044】
図14は、特徴点の削除を行う処理を示す図である。前記特徴点抽出処理200において、ノイズなどの影響で特徴点が必要以上に抽出されることがある。図14(a)では、必要な特徴点以外に、不要な特徴点が存在する。このため、図14(b)に示すような好ましくない領域が、家枠候補領域として表示されることがある。本実施の形態における地理画像処理システムでは、好ましい家枠候補領域が表示されるまで、家枠候補領域を順次切り替えていくことができるため、不要な特徴点が抽出されていても最終的には好ましい家枠候補領域を画定できるが、特徴点削除処理により、家枠候補領域の選択にかかるユーザの負担を減らすことができる。
【0045】
このようにして、地理画像中に含まれる建築物等の対象物全ての輪郭が画定されることになる。家枠画定処理部300は、画定された各家枠の座標データを、家枠データ24として記憶装置20に記憶する。
【0046】
以上、本発明の地理画像処理システムについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態又は他の実施形態にかかる発明の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の地理画像処理システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の地理画像処理システムにより行われる画像処理の概要を例示する図である。
【図3】図1に示す地理画像処理プログラムのエッジ抽出部による処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図1に示す地理画像処理プログラムの特徴点抽出部による処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】特徴点抽出処理における交点検出のためのテンプレートの例を示す図である。
【図6】特徴点抽出処理における角点検出のためのテンプレートの例を示す図である。
【図7】図1に示す地理画像処理プログラムの特徴点抽出処理部により生成される特徴点データの構成例を示す図である。
【図8】図1に示す地理画像処理プログラムの家枠画定処理部による処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】図1に示す地理画像処理プログラムの家枠画定処理部による処理を行う際に、ユーザに提示されるインタフェース画面を示す図である。
【図10】図1に示す記憶部に記憶されている家枠データのデータ構成例を示す図である。
【図11】図1に示す地理画像処理プログラムの家枠画定処理部による処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】図1に示す地理画像処理プログラムの家枠画定処理部による処理を行う際に、ユーザに提示されるインタフェース画面を示す図である。
【図13】図1に示す地理画像処理プログラムの家枠画定処理部による処理を行う際に、特徴点の追加処理の概要を例示する図である。
【図14】図1に示す地理画像処理プログラムの家枠画定処理部による処理を行う際に、特徴点の削除処理の概要を例示する図である。
【符号の説明】
【0048】
10 処理装置
20 記憶装置
21 地理画像データ
22 エッジデータ
23 特徴点データ
24 家枠データ
30 入出力装置
31 入力装置
32 表示装置
33 プリンタ
40 地理画像処理プログラム
100 エッジ抽出部
200 特徴点抽出部
300 家枠画定処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地理画像に含まれる地物の輪郭を画定するためのシステムであって、
地理画像データからエッジを抽出するエッジ抽出手段と、
前記抽出されたエッジから特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、
前記地理画像と前記特徴点とを表示し、ユーザによる地物の輪郭を画定する入力を受け付ける輪郭画定手段とを備えていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記エッジ抽出手段は、地理画像データからエッジを抽出して得られるデータを2値化し、全てのエッジを1画素幅とする細線化を行い、所定長さに満たないエッジをノイズとして除去することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記特徴点抽出手段は、前記抽出されたエッジの端点、交点、角点のうち少なくとも1種類を特徴点として抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記特徴点抽出手段は、前記抽出されたエッジを特徴点のテンプレートとマッチングすることにより特徴点抽出を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記輪郭画定手段は、前記地理画像及び特徴点の表示画面において、ユーザがポインタ操作により特徴点間を結線して地物の輪郭を画定することができるユーザインタフェースを提供することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記輪郭画定手段は、さらに、前記地理画像及び特徴点の表示画面において、特徴点間の結線の集合により1つの閉じられた領域を画定することにより、各地物の輪郭を画定することができるユーザインタフェースを提供することを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記輪郭画定手段は、前記地理画像及び特徴点の表示画面において、ユーザが指定した範囲内に含まれる特徴点間を結線して得られる1以上の閉じられた領域を自動的に生成し、前記閉じられた領域を地物の輪郭の候補として表示することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記輪郭画定手段は、前記地理画像及び特徴点の表示画面において、前記地物の輪郭の候補を表示する際に、前記閉じられた領域のうちユーザがポインタ操作により範囲を指定した際のポインタの軌跡との一致度が高いものを優先度の高い候補として表示することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記輪郭画定手段は、前記地理画像及び特徴点の表示画面において、表示された地物の輪郭の候補に対して、特徴点の追加・削除を行うことができるユーザインタフェースを提供することを特徴とする請求項7又は8に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−149046(P2007−149046A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38004(P2006−38004)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】