説明

地表面変位測定装置

【課題】 応急的な災害前兆初動段階において、測定精度を妨げることなく、容易に設置でき、作業者の安全性を高め、警戒避難警報を素早く発信可能な装置を提供すること。
【解決手段】 土砂災害監視地表面50の一方側に、支持杭16と支持板17によって取り付けられる計器取り付け台19と、計器取り付け台19に取り付けられ、伸縮計18を搭載する受け台21と、伸縮計18と地表面50の他方側の基準点との間に所定の張力で張設された計測線47とを具備し、計器取り付け台19は、台板23と、台板23の一方側にヒンジ25を介して設けられた支持板嵌合枠24と、台板23の他方側にヒンジ27を介して設けられた支持杭嵌合枠26とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂崩れ、地すべり、地表面陥没などの発生しやすい土砂災害監視場所に設置されて地表面の変位を計測するための地表面変位測定装置に関するもので、特に、応急的に素早く安全に設置可能な装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地すべり斜面災害の応急的な観測対応における地盤の移動量を測定するための簡易な方法として、土砂災害監視場所に丁張りを配設し、地盤が移動することによって生じる貫き板のずれを作業員が現地で巻き尺等により目視で計測する方法が行なわれている。
【0003】
このような作業員が現地にて直接巻き尺などで測定する方法では、目視により計測するため、数ミリの計測誤差が生じ、正確な地表面50の移動量が把握できない。また、測定作業毎に人が危険個所に近づくことは、安全性から好ましいものではない。さらに、伸縮計を設置する際、緊急時に木杭や板、パイプ管などの資材を、土砂災害監視場所まで運び込み、伸縮計を設置するための台を配設しなければならず、作業効率が悪く、伸縮計の移動や撤去も容易ではない。さらにまた、作業員に、緊急時に長時間強いられる設置作業は作業者の安全管理上重要な問題である。
【0004】
地面50が傾斜した区域での地すべりを遠隔地で監視する装置には、図6に示すようなものが知られており、つぎのような構成となっている(特許文献1)。
地すべりを検知しようとする地面50に、所定間隔で光ファイバ用杭53を打ち込み、この光ファイバ用杭53の地上から突出した上端に、作動箱55を取付け、これらの作動箱55間に1本の光ファイバ54を貫通する。また、この作動箱55からインバ線52を引出して別に打ち込んだインバ線用杭51に連結しておく。
【0005】
作動箱55の内部では、図6(b)のように、上ローラ56と下ローラ57が図示しないばねにより矢印方向に常時付勢されており、インバ線52の先端のストッパ62が上ローラ56のカム58に係合して上ローラ56と下ローラ57が回転しないように止めている。または、図6(c)のように、インバ線52のストッパ62が錘60が落下しないように保持している。
地面50が地すべりして光ファイバ用杭53が流されると、ストッパ62がカム58から外れて、上ローラ56と下ローラ57が矢印方向に回転し、カム58とカム59により光ファイバ54に局部的な曲げが発生する。または、ストッパ62が外れて錘60が落下してカッター61により光ファイバ54を切断する。
【0006】
正常時には、光ファイバ54の一端部から入力した光パルス信号は、光ファイバ54の伝送損失により、徐々に減少するため、後方散乱光の強度も徐々に減少するが、図6(b)のように、光ファイバ54に局部的な曲げが発生するか、図6(c)のように光ファイバ54が切断すると、後方散乱光の強度が急激に減少して特性線に段差を生じる。この段差により、地すべり発生時刻と、光パルスの段差までの往復時間から地すべり発生場所を検出する。
【0007】
この図6に示した地すべり検出方法では、複数本のインバ線用杭51と光ファイバ用杭53を地中に打ち込んで、この光ファイバ用杭53の地上から突出した上端に、作動箱55を取付け、これらの作動箱55間に1本の光ファイバ54を貫通し、また、この作動箱55からインバ線52を引出して別に打ち込んだインバ線用杭51に連結するなどの設置作業が必要であり、このような地すべりを検出しようとする区域内に所定間隔で多数の装置を設置する作業が極めて面倒である。
【0008】
また、上ローラ56と下ローラ57をばねで駆動する方式では、機械的駆動部品を有するので、長期間放置すると動作しなくなる恐れがあり、また、錘60とカッター61による方式では、光ファイバ用杭53が地すべりで横向きに倒されると光ファイバ54が切断されない恐れがあり、さらに、光ファイバ54の他にインバ線52を設置しなければならないので、構造が複雑になるとともに、インバ線52を設置していない個所の地すべりは、検知できない恐れがある。しかも、装置が大掛かりで高価であり、地すべり区域への設置や調整が面倒である、などの問題があった。
【0009】
また、地面50が平坦な盛土などの土砂崩落を監視する装置には、図5に示すように、監視すべき区間の両端部に、収納箱11とワイヤ固定箱13とを杭12により固定的に埋設し、これらの間に保護管内を挿通し、かつ、等間隔で錘15を係合させたワイヤ14を敷設し、このワイヤ14の一端をワイヤ固定箱13内に固定し、他端を収納箱11内の張力検知器10に固定し、この状態で地表面50の一部が土砂崩壊すると、錘15の荷重がワイヤ14に吊り下がり、張力検知器10に付加される張力の変化にてワイヤ14の移動量に変化が生じ、崩壊現象を知るようにしたものが知られている(特許文献2)。
【0010】
この図5に示す方法では、ワイヤ14の一端を固定するための、ワイヤ固定箱13を杭12により土中に固定的に埋設する作業、また、ワイヤ14の他端を連結した張力検知器10を収納するための、収納箱11を杭12により土中に固定的に埋設する作業、さらに、保護管に挿入されたワイヤ14に所定間隔で錘15を取り付けて土中に埋設する作業など、据え付け作業が極めて面倒であるという問題があった。
【0011】
しかしながら、「平成11年度版地すべり対策事業の手引き(地すべり事業の実務)」(非特許文献1)によれば、地すべり斜面災害の応急観測対応方法に、通常の伸縮計の精度を落としても設置の簡易なもので対応できる、と定められているが、現状では、恒久観測体制以前の災害前兆初動段階で地盤の移動量など、警戒避難情報を含めた情報収集を素早く行なえる手段が望まれている。
【特許文献1】特公平3―9247号公報
【特許文献2】特開平5―99761号公報
【非特許文献1】「平成11年度版地すべり対策事業の手引き(地すべり事業の実務)」社団法人全国治水砂防協会発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、恒久観測体制以前の災害前兆初動段階において、従来の伸縮計による測定精度を妨げることなく、しかも、容易に設置することができる地表面変位測定装置を提供し、さらに、作業者の安全性を高め、警戒避難警報を早期に提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、土砂災害監視すべき地表面50の一方側に、支持杭16と支持板17によって固定的に取り付けられる計器取り付け台19と、この計器取り付け台19に着脱自在に取り付けられ、伸縮計18を搭載するための受け台21と、前記伸縮計18と地表面50の他方側の基準点との間に所定の張力で張設された計測線47とを具備し、前記計器取り付け台19は、台板23と、この台板23の一方側に設けられた支持板嵌合枠24と、前記台板23の他方側に設けられた支持杭嵌合枠26とからなる。
前記支持板嵌合枠24は、台板23の一方側にヒンジ25を介して連結し、前記支持杭嵌合枠26は、台板23の他方側にヒンジ27を介して連結する。
また、前記台板23の略中央に取り付けねじ34を進退自在に設け、受け台21の略中央に穿設したねじ通し孔の上面側に、前記取り付けねじ34と螺合するナット38を設ける。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、土砂災害監視すべき地表面50の一方側に、支持杭16と支持板17によって固定的に取り付けられる計器取り付け台19と、この計器取り付け台19に着脱自在に取り付けられ、伸縮計18を搭載するための受け台21と、前記伸縮計18と地表面50の他方側の基準点との間に所定の張力で張設された計測線47とを具備し、前記計器取り付け台19は、台板23と、この台板23の一方側に設けられた支持板嵌合枠24と、前記台板23の他方側に設けられた支持杭嵌合枠26とにより構成したので、つぎの効果を有する。
(1)恒久観測体制以前の緊急を要する災害前兆初動段階で地盤の移動量など、警戒避難情報を含めた情報収集を素早く行なえる。
(2)災害時における緊急処置として、従来の通常フルスペックで対応する場合に比較して簡易な設置方法であり、装置の設置作業期間とコストを大幅に短縮することができる。
(3)従来の地表面変位測定機能を損なわず、例えば、1ヶ月程度の暫定的な簡易測定装置としての機能をもち、通常の監視体制に移行する場合でも、測定機材の変更を必要としない。
(4)従来は、コンベックスやメジャーによる手動計測のため危険を伴なう作業であったが、計器取り付け台19と伸縮計18を組み合わせることで、遠隔計測が可能となり、労働災害の抑制になる。
(5)支持杭16と支持板17は、土木建設現場に水平管理、角度管理、掘削施工管理などに略常設されている水杭や貫板をそのまま利用できるので、伸縮計を設置するための特有の設備がなくてもすぐに設置できる。
(6)機器、資材として、現場にある支持杭16と支持板17の他、伸縮計18、計器取り付け台19と、受け台21と、計測線47だけで済み、運搬が容易である。
(7)設置場所が危険箇所であっても、素早く組み立てができる。伸縮計18の移動や不要になったときの撤去も容易である。
(8)支持杭16と支持板17を据え付け、これに計器取り付け台19を固定し、伸縮計18を搭載した受け台21を固定し、伸縮計18と基準点との間に計測線47を張設するだけであるから、専門の技術者によらずに据え付けができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、支持板嵌合枠24は、台板23の一方側にヒンジ25を介して連結し、支持杭嵌合枠26は、台板23の他方側にヒンジ27を介して連結したので、設置地盤が凸凹であったり、柔らかかったり、石や根っこなどの障害物があったりするような悪条件の場所であっても、支持板嵌合枠24と支持杭嵌合枠26は、ヒンジ25とヒンジ27とによって傾きを調整して台板23を適正な向きに設定でき、伸縮計18を安定した状態に保持することができる。設置後に伸縮計18の方向が変わるようなことがあっても容易に調整できる。測定点が絶えず移動しているような場合でも地盤の移動に合わせて台板23角度を適正な向きに変えながら伸縮計18の設置状態を維持することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、台板23の略中央に取り付けねじ34を進退自在に設け、受け台21の略中央に穿設したねじ通し孔の上面側に、前記取り付けねじ34と螺合するナット38を設けたので、計器取り付け台19における台板23に、伸縮計18を搭載した受け台21を簡単に取り付けできるだけでなく、伸縮計18の方位を台板23の面内で最適な方向に調整することができる。このことは、従来のように、最初の設置時に方位が違っていると、全てをやり直していたのに比較し、最初の設置時に方位が違っていても簡単に調整することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、受け台21は、底部36と、この底部36の両側部をやや立ち上がらせ、立ち上げた上端から左右に延びた計器受部37とからなり、この計器受部37には、それぞれ伸縮計18の下端の脚部40をねじ42で固定するためのねじ通し孔39を形成したので、受け台21と計器取り付け台19における台板23との取り付け作業、受け台21と伸縮計18との取り付け作業のための隙間ができ、作業性に優れている。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、支持板嵌合枠24は、天板部とその両側の側板部とで支持板17を嵌合するための下向きコ字形に開口した下向き嵌合溝28を形成し、前記天板部分に支持杭16を挿入するための支持杭用窓孔29を開口し、前記いずれか一方の側板部に固定ねじ30が螺合され、支持杭嵌合枠26は、3方の側板部が支持杭16を挿入するための横向きコ字形に開口した横向き嵌合溝31を形成し、左右いずれか一方の側板部に固定ねじ30が螺合されているので、支持板嵌合枠24は、支持杭16と支持板17に、又は支持杭16と支持板17のいずれか一方に嵌め込んで固定ねじ30をねじ込むだけで固定的に取り付けでき、また、支持杭嵌合枠26は、支持杭16に嵌め込んで固定ねじ32をねじ込むだけで固定的に取り付けできる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、伸縮計18は、計測される変位量が設定された閾値を越えると警報を発する警報機能を具備したので、動物が接触して計測線47の長さが一時的に変位しても、時間単位の累積変位量が閾値を超えない限り、警報の誤った発信を防止し、信頼性の高い警戒避難情報を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による地表面変位測定装置は、公知のレベル取り付け台19(特開2003−315044号)の有する回動面の角度を調整して水平を維持する機能に着目し、これに改良を加えて伸縮計を利用した地表面変位測定装置として応用可能な状態にし、さらに、土木建設現場に略常設されている丁張りを利用し、これに本発明の地表面変位測定装置を据え付けるようにしたものである。
即ち、前記レベル取り付け台19は、台板23と、この台板23の一方側にヒンジ25を介して設けた支持板嵌合枠24と、前記台板23の他方側にヒンジ27を介して設けた支持杭嵌合枠26とからなり、前記支持板嵌合枠24には、下向き嵌合溝28と支持杭用窓孔29とを形成し、前記支持杭嵌合枠26には、横向き嵌合溝31を形成してある。
【0021】
この計器取り付け台19の上には、スペーサ20を介在して受け台21が取り付けねじ34により固定され、この受け台21の上に、伸縮計18を取り付け、さらに伸縮計18を計器用カバー22で被覆してなるものである。
前記計器取り付け台19に伸縮計18を搭載した後、地すべり斜面の山側に複数本の支持杭16を打ち込み、この支持杭16に、斜面の傾斜に合わせて支持板17を固定し、これらの支持板17と支持杭16に前記計器取り付け台19の支持板嵌合枠24には固定ねじ30にて、支持杭嵌合枠26には固定ねじ32にて固定的に取り付ける。
地すべり斜面の谷側固定物48に固定した固定具49と山側の伸縮計18との間に所定の張力をかけて計測線47を張設する。
地すべり等により伸縮計18に付加される張力の変化にて伸縮計18の移動量に変化が生じ、地滑りの発生を知る。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明による地表面変位測定装置の一実施例を図面に基づき説明する。
図2において、計器取り付け台19は、公知のレベル取り付け台(特開2003−315044号)で、この計器取り付け台19から水準器を取り外して利用される。この計器取り付け台19にスペーサ20、受け台21を介して伸縮計18を固定し、この伸縮計18に計器用カバー22を被せる。また、本発明の地表面変位測定装置は、土木建設現場に略常設されている丁張りを利用し、これに据え付けるようにしたものである。
【0023】
さらに詳しく説明すると、前記レベル取り付け台19には、後述の伸縮計18を載せて固定できるような大きさの台板23を有する。この台板23の一方側縁に連結された支持板嵌合枠24は、天板部分と側板部分の境の角部がヒンジ25によって回動自在に取り付けられ、天板部の両側板部分が下向きに折曲されて全体が下向きコ字形をなすことにより水平な支持板17に嵌合して固定するための下向き嵌合溝28となっており、また、天板部分には、支持杭16bを挿入するための支持杭用窓孔29が開口し、一方の側板部分には、3個のナットが固着されてそれぞれ固定ねじ30が螺合されている。
なお、この例では、3個のナットと固定ねじ30が用いられているが、左右の2個のナットとそれに螺合する固定ねじ30とすることもできる。
【0024】
前記台板23の他方側縁に連結された支持杭嵌合枠26は、3方の側板部分が横向きに折曲されて全体が横向きのコ字形をなし、中央の側板部分の上縁部がヒンジ27によって回動自在に取り付けられ、3方の側板で囲まれて形成された横向き嵌合溝31は、支持杭16bを挿入するためのもので、側板部分には、ナットが固着されて固定ねじ30が螺合されている。
前記台板23の略中心部には、貫通孔33が穿設され、台板23の下面から取り付けねじ34が上下動自在に遊嵌している。
【0025】
前記スペーサ20は、ゴム板などの滑り止め用で、中央に前記取り付けねじ34が突出するための遊嵌孔35が穿設されている。
このスペーサ20は、必須ではなく、省略することもできる。
【0026】
前記受け台21は、底部36と、この底部36の両側部をやや立ち上がらせ、上端から左右に延びた計器受部37とからなり、この計器受部37には、それぞれ複数個のねじ通し孔39が穿設されている。また、前記底部36の略中央部には、ねじ通し孔が穿設され、かつ、このねじ通し孔の上面側にナット38が溶着されている。なお、前記底部36の両側部をやや立ち上がらせて隙間を形成することで、取り付けねじ34や後述するねじ42のねじの頭の逃げの隙間とし、組み立ての作業性を容易にしている。
【0027】
前記伸縮計18には、その底面にクランク上に折曲した脚部40が取り付けられ、この脚部40の外方へ突出した水平部分には、ねじ42を通すためのねじ通し孔41が穿設されている。なお、前記伸縮計18は、市販のもので、内部にインバー線が設けられ、このインバー線を引っ張ることでその移動量が地すべり移動量として計測されるように構成されている。また、伸縮計18の内部には、計測される変位量が設定された閾値を越えると警報を発する警報機能を具備せしめる。さらに、計測される変位量を時々刻々と有線又は無線で管理所等へ送信する機能を持たせることもできる。
【0028】
前記計器用カバー22は、伸縮計18を雨水等から保護するためのもので、底部が開口し、かつ、一側面部分には、引き出しワイヤ45を引き出すための切り欠きが形成されている。また、この計器用カバー22には、図3に示すように、前記受け台21に固定するための連結具44が設けられている。
【0029】
つぎに、地すべり等を検出しようとする地表面50への本発明による地表面変位測定装置の据え付けについて説明する。
図1において、いわゆる丁張りといわれる水杭などの支持杭16と、貫き板といわれる支持板17とが用いられ、地表面変位測定装置が据え付けられる。さらに詳しくは、地すべり等を検出しようとする地表面50の一方側(例えば山側)には、略垂直に数本の支持杭16aを打ち込み、この支持杭16aに、地表面50の傾斜と略一致するように支持板17を固定的に取り付ける。これらの支持杭16と支持板17は、土木建設現場に水平管理、角度管理、掘削施工管理などに略常設されている水杭や貫板をそのまま利用できる。また、既に他の目的で設置されているものを利用することもできる。
【0030】
この支持板17に、まず、計器取り付け台19がその支持板嵌合枠24における下向き嵌合溝28を支持板17の上から被せるように嵌め込み、固定ねじ30を締め込み固定される。前記支持板嵌合枠24には、必要に応じて支持杭用窓孔29に垂直な支持杭16を挿入して固定ねじ30で固定することもある。
この状態では、ヒンジ25によって台板23が傾いている。そこで、台板23を地表面50の傾斜面と略一致するように持ち上げ、支持杭嵌合枠26の横向き嵌合溝31に垂直な支持杭16を嵌合し、台板23を所定の向きにして固定ねじ32を締め込み固定する。
【0031】
つぎに、台板23の上にスペーサ20を載せ、さらにその上に受け台21を載せて取り付けねじ34とナット38で受け台21を固定する。このとき、受け台21の計器受部37の方向が伸縮計18の向き(引き出しワイヤ45の引き出し方向)と一致するようにして固定する。固定された受け台21の計器受部37の上に伸縮計18の脚部40を載せねじ42とナット43で伸縮計18を固定する。なお、伸縮計18を予め受け台21にねじ42とナット43で固定した後、計器取り付け台19の上に載せて取り付けねじ34で固定するようにしても良い。この方が引き出しワイヤ45の方向合わせがし易く、また、引き出しワイヤ45の方位を変えることもできる。
【0032】
伸縮計18を支持板17等に固定した後、図1に示すように、引き出しワイヤ45の先端のフック46に計測線47を張設し、地すべり等を検出しようとする地表面50の他方側(例えば谷側)における切り株や固定用杭などの基準点となる固定物48に、固定具49で前記計測線47の他端を連結する。このとき、計測線47には所定の張力が生じるように引っ張って連結する。計測線47を連結した後、計器用カバー22を被せ、計器用カバー22と受け台21との間を両側の連結具44で固定する。なお、計測線47は、剥き出しでも良いが、硬質のパイプなどに挿入しても良い。
【0033】
この状態で、土砂崩れ、地すべり、地表面陥没などの土砂災害を監視する。そして、伸縮計18に付加される張力の変化を伸縮計18で計測し、計測値の累積値が閾値を越えたときには、警報を発し、また、必要に応じて図示しない有線、無線などで管理所などにその情報を送る。また、安全と見られるときには、監視員が計器用カバー22を開けて伸縮計18内のデータの変化を監視するようにしても良い。これにより、恒久観測体制以前の災害前兆初動段階で地盤の移動量などの警戒避難情報を含めた情報が収集され、大きな災害を未然に防ぐことができる。
【0034】
伸縮計18による張力の変化は、計測線47に鳥などが乗ったようなときでも記録には残るが、閾値以下であったり、瞬間的である場合には、警報機を作動しないようにし、一定量の移動量が所定時間以上継続した場合のみ作動するように設定する。また、もし誤まって警報が発せられることがあっても、記録されたグラフその他のデータから地滑り等の前兆かどうかを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による地表面変位測定装置の一実施例を示す側面図である。
【図2】図1における地表面変位測定装置の分解斜視図である。
【図3】図1における地表面変位測定装置の一部を切り欠いた背面図である。
【図4】図1における地表面変位測定装置の平面図である。
【図5】従来の地表面変位測定装置の一例を示す断面図である。
【図6】従来の地表面変位測定装置の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
10…張力検知器、11…収納箱、12…杭、13…ワイヤ固定箱、14…ワイヤ、15…錘、16…支持杭、17…支持板、18…伸縮計、19…計器取り付け台、20…スペーサ、21…受け台、22…計器用カバー、23…台板、24…支持板嵌合枠、25…ヒンジ、26…支持杭嵌合枠、27…ヒンジ、28…下向き嵌合溝、29…支持杭用窓孔、30…固定ねじ、31…横向き嵌合溝、32…固定ねじ、33…貫通孔、34…取り付けねじ、35…遊嵌孔、36…底部、37…計器受部、38…ナット、39…ねじ通し孔、40…脚部、41…ねじ通し孔、42…ねじ、43…ナット、44…連結具、45…引き出しワイヤ、46…フック、47…計測線、48…固定物、49…固定具、50…地表面、51…インバ線用杭、52…インバ線、53…光ファイバ用杭、54…光ファイバ、55…作動箱、56…上ローラ、57…下ローラ、58…カム、59…カム、60…錘、61…カッター、62…ストッパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂災害監視すべき地表面50の一方側に、支持杭16と支持板17によって固定的に取り付けられる計器取り付け台19と、この計器取り付け台19に着脱自在に取り付けられ、伸縮計18を搭載するための受け台21と、前記伸縮計18と地表面50の他方側の基準点との間に所定の張力で張設された計測線47とを具備し、前記計器取り付け台19は、台板23と、この台板23の一方側に設けられた支持板嵌合枠24と、前記台板23の他方側に設けられた支持杭嵌合枠26とからなることを特徴とする地表面変位測定装置。
【請求項2】
支持板嵌合枠24は、台板23の一方側にヒンジ25を介して連結し、支持杭嵌合枠26は、台板23の他方側にヒンジ27を介して連結したことを特徴とする請求項1記載の地表面変位測定装置。
【請求項3】
台板23の略中央に取り付けねじ34を進退自在に設け、受け台21の略中央に穿設したねじ通し孔の上面側に、前記取り付けねじ34と螺合するナット38を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の地表面変位測定装置。
【請求項4】
受け台21は、底部36と、この底部36の両側部をやや立ち上がらせ、立ち上げた上端から左右に延びた計器受部37とからなり、この計器受部37には、それぞれ伸縮計18の下端の脚部40をねじ42で固定するためのねじ通し孔39を形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の地表面変位測定装置。
【請求項5】
支持板嵌合枠24は、天板部とその両側の側板部とで支持板17を嵌合するための下向きコ字形に開口した下向き嵌合溝28を形成し、前記天板部分に支持杭16を挿入するための支持杭用窓孔29を開口し、前記いずれか一方の側板部に固定ねじ30が螺合され、支持杭嵌合枠26は、3方の側板部が支持杭16を挿入するための横向きコ字形に開口した横向き嵌合溝31を形成し、左右いずれか一方の側板部に固定ねじ30が螺合されていることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の地表面変位測定装置。
【請求項6】
伸縮計18は、計測される変位量が設定された閾値を越えると警報を発する警報機能を具備したことを特徴とする請求項1,2、3、4又は5記載の地表面変位測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−162308(P2006−162308A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350715(P2004−350715)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000230973)日本工営株式会社 (39)
【出願人】(303064329)
【Fターム(参考)】