説明

垂直共振器型面発光レーザ

【課題】活性領域への電流の供給を促進させ、しきい値電流の低く、高出力で長寿命の垂直共振器型面発光レーザを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の垂直共振器型面発光レーザは、n型半導体層、活性層及びp型半導体層を含む窒化物半導体層の少なくとも一方の表面に、開口部を有する絶縁層と、前記開口部を被覆するように前記絶縁層上に設けられた透光性電極と、該透光性電極を介して前記開口部上に設けられた誘電体材料からなる反射鏡とを有し、前記絶縁層と前記反射鏡の間に導電性材料を設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体材料からなる反射鏡を有する窒化物半導体を用いた垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザプリンタや光通信装置等の光源として垂直共振器型面発光レーザが利用されている。垂直共振器型面発光レーザでは、レーザの横モード制御の目的からその半導体層表面に、所定の大きさで開口部を有する絶縁層、上部電極及び半透明電極を設ける技術が提供されている(例えば、特許文献1)。また、キャップ層及びそれに接触する電極の構造を工夫することにより、しきい値電流の低下及び横モードの安定を図る技術が提供されている(例えば、特許文献2)。
また、窒化物半導体を用いた垂直共振器型面発光レーザについても、その研究が進められている(例えば、非特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−59672号公報
【特許文献2】特開平10−027941公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Applied physics letters, vol. 92, p141102
【非特許文献2】Applied Physics Express, vol. 1, p121102
【非特許文献3】Applied Physics Express, vol. 2, p052101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窒化物半導体は抵抗が高いため、特許文献1のように、レーザ発振に寄与する領域(以下、活性領域)において開口部を有するように部分的に電極を設けると、活性領域内での電流の偏りが見られる。そのため、活性領域の全体に電極を設けることが必要になる。しかし、活性領域の全体に電極を設けたとしても、特許文献2のように、活性領域以外の領域、具体的には活性領域よりも外周に優先的に電流が注入される構造とすると、活性領域への電流注入の均一性が不十分になり、しきい値電流が高くなる。そのため、窒化物半導体を用いた垂直共振器型面発光レーザでは、活性領域への電流の供給を促進させ、活性領域に供給される電流分布を均一にし、レーザ発振に寄与する活性領域に均一に電流を注入するような構造が求められる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、活性領域への電流の供給を促進させ、しきい値電流の低い垂直共振器型面発光レーザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の垂直共振器型面発光レーザは、n型半導体層、活性層及びp型半導体層を含む窒化物半導体層の少なくとも一方の表面に、開口部を有する絶縁層と、前記開口部を被覆するように前記絶縁層上に設けられた透光性電極と、該透光性電極を介して前記開口部上に設けられた誘電体材料からなる反射鏡とを有し、前記絶縁層と前記反射鏡の間に導電性材料を設けることを特徴とする。
また、前記導電性材料は、前記絶縁層の開口部と一致するように開口部を有する、もしくは前記絶縁層の開口部よりも外側で絶縁層を覆うように開口部を有することが好ましい。
また、前記導電性材料と、前記透光性電極は異なる材料であることが好ましい。
また、前記導電性材料の導電率は、前記透光性電極の導電率より大きいことが好ましい。
前記導電性材料は、前記絶縁層と透光性電極の間に形成されることが好ましい。
前記導電性材料は、p型半導体層側に形成されることが好ましい。
前記反射鏡の外周側面には、前記透光性電極と電気的に接続するように設けられた電極を有し、前記導電性材料の外周端部は、前記電極の外周側面よりも内側であることが好ましい。
前記導電性材料は、いずれかの層にTi、NiまたはCrを含む積層構造であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の垂直共振器型面発光レーザによれば、活性領域への電流の供給を促進させ、しきい値電流の低い垂直共振器型面発光レーザを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)本発明の垂直共振器型面発光レーザの構造を説明するための概略断面図である。 (b)本発明の垂直共振器型面発光レーザの構造を説明するための要部の拡大図である。
【図2】本発明の垂直共振器型面発光レーザの構造を説明するための概略断面図である。
【図3】本発明の垂直共振器型面発光レーザの構造を説明するための概略上面図である。
【図4】(a)本発明の垂直共振器型面発光レーザの構造を説明するための概略断面図である。 (b)本発明の垂直共振器型面発光レーザの構造を説明するための要部の拡大図である。
【図5】本発明の垂直共振器型面発光レーザの構造を説明するための概略断面図である。
【図6】本発明の垂直共振器型面発光レーザの構造を説明するための要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は一例であって、本発明を以下に限定するものではなく、記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等についても本発明を限定するものではない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、説明を簡略化するために、同一の構成要件には同一の符号を付し、その説明を一部省略する。
なお、説明の便宜上、「第2反射鏡50b」との区別のため「反射鏡50a」を「第1反射鏡」と記載することがある。また、「第2電極70」との区別のため「電極60」を「第1電極」と記載することがある。
【0011】
図1に、本発明の垂直共振器型面発光レーザの一例を示す。図1(a)は、本発明の半導体レーザ装置の断面図、図1(b)は、図1(a)中の丸囲み部分の拡大図である。また、図6は、図1(a)の要部の拡大図である図1(b)について、別の形態を示したものである。
本発明の垂直共振器型面発光レーザは、図1に示すように、窒化物半導体層10の表面に、開口部を有する絶縁層20と、開口部を被覆するように絶縁層上に設けられた透光性電極40と、透光性電極を介して開口部上に設けられた反射鏡50aとを有し、絶縁層20と反射鏡50aの間に導電性材料30が設けられている。
また、窒化物半導体層10は、n型半導体層11、活性層12及びp型半導体層13を含んで形成される。また、反射鏡50aの外周側面には、透光性電極40と電気的に接続するように設けられた電極60を有している。また、n型半導体層11の表面には、第2反射鏡50b及び第2電極70が形成されている。
【0012】
本発明の各構成について説明する。
(窒化物半導体層)
窒化物半導体層は、後述する成長基板上に形成し、得ることができる。
窒化物半導体層は、例えば、一般式InAlGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で示されるものが好ましい。これに加えて、III族元素としてBが一部に置換されたものを用いてもよいし、V族元素としてNの一部をP、Asで置換されたものを用いてもよい。本発明の垂直共振器型面発光レーザとしては、300nm〜650nm程度の波長域のレーザ光を得られるように活性層の組成を調整することが適当である。
【0013】
n型半導体層は、n型不純物としてSi、Ge、Sn、S、O、Ti、Zr、CdなどのIV族元素又はVI族元素等を1種類以上含有していてもよい。また、p型半導体層は、p型不純物としてMg、Zn、Be、Mn、Ca、Sr等を含有している。
不純物は、5×1016/cm〜1×1021/cm程度の濃度範囲で含有されていることが好ましい。ただし、n型半導体層及びp型半導体層を構成する半導体層の全てが必ずしも不純物を含有していなくてもよい。
また、n型半導体層、活性層、p型半導体層は、それぞれ単一膜構造、多層膜構造又は組成比が互いに異なる2層を含む超格子構造等であってもよい。これらの層は、組成傾斜層、濃度傾斜層を備えたものであってもよい。活性層は、単一量子井戸構造、多重量子井戸構造等の量子井戸構造を用いることができる。
【0014】
窒化物半導体層の膜厚は特に限定されないが、活性領域に効果的に電流を注入することができるように適宜調整することが好ましい。例えば、n型半導体層は、0.2〜12μm、好ましくは0.2〜6μm程度、活性層は、15〜300nm程度、p型半導体層は、0.01〜1μm、好ましくは0.06〜1μm程度が挙げられる。好ましくは、窒化物半導体層の全体としての膜厚が0.3〜6μm程度のものである。この程度の膜厚の窒化物半導体層に本発明を適用するとより効果的である。
なお、本明細書において、「活性領域」は、図1(a)中にMで示すように、対向する反射鏡に挟まれた窒化物半導体層のうち、p型半導体層側の表面が透光性電極と接触して規定される領域、あるいは、絶縁層の開口部で規定される領域とする。
【0015】
また、窒化物半導体層は、活性領域を含む領域が任意に凸部状に加工されていてもよい。これにより、活性領域において横方向の光閉じ込めの効果を高め、より高効率に発振させることができる。
なお、「横方向」は、レーザ光の出射方向に実質的に垂直な向きを指し、窒化物半導体層の積層面と平行な方向を指す。「縦方向」は、レーザ光の出射方向に実質的に平行な向きを指し、半導体層の積層方向と平行な方向を指す。
この凸部は、p型半導体層側若しくはn型半導体層側のいずれに突出するように設けてもよい。n型半導体層側に凸部が設けられる場合は、成長基板を剥離した後に設けられることが好ましい。また、凸部の高さは特に限定されず、p型半導体層側から設けられた凸部の底面が、p型半導体層、活性層やn型半導体層のいずれであってもよいし、n型半導体層側から設けられた凸部についても同様である。好ましくは、p型半導体層側から設けられ、p型半導体層の途中に底面を有するような凸部であり、これによってより効果的に横方向の光閉じ込めをすることができる。上面視したときの凸部の形状は特に限定されず、円、楕円、矩形等を選択できる。
また凸部は、公知の加工方法としてウェットエッチング又はドライエッチング等を用いて設けることができ、なかでも、反応性イオンエッチング(RIE)を用いることが好ましい。例えば、窒化物半導体層表面に凸部形状を決定するための適当な大きさ及び形状を有するマスクパターンを形成し、このマスクパターンをマスクとしてエッチングする方法が挙げられる。マスクパターンは、レジスト、SiO等の絶縁体をフォトリソグラフィ及びエッチングする方法等により形成することができる。
【0016】
また、垂直共振器型面発光レーザの共振器長は、例えば、図1では、窒化物半導体層10の膜厚で決定される。共振器長の調整を窒化物半導体層のエッチングにより行う場合、高精度で膜厚を制御するために、窒化物半導体層中にエッチングストップ層を挿入してもよい。エッチングストップ層の材料は特に限定されるものでなく、エッチングされる半導体層よりもエッチングされにくいものであればよい。具体的には、Al組成比が0.1以上、好ましくは0.2〜0.3程度のAlGaNによる層等が挙げられる。エッチングストップ層の膜厚は特に限定されず、例えば、10〜50nm程度が例示される。
【0017】
窒化物半導体の成長方法は、MOVPE(有機金属気相成長法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)など窒化物半導体の成長方法として知られている方法を用いることができる。
【0018】
(絶縁層)
本発明の垂直共振器型面発光レーザでは、窒化物半導体層の少なくとも一方の表面に、開口部を有する絶縁層が形成される。絶縁層は、所望の領域に電流を注入するために設けられる。特に、p型半導体層表面に絶縁層を設けることで、効果的に活性領域への電流注入を行うことができる。
また、絶縁層は、窒化物半導体及び/又は後述する透光性電極よりも屈折率が小さい材料であることが好ましい。これにより、横方向の光の閉じ込めを行うことができる。また、絶縁層の屈折率が透光性電極よりも大きい材料を用いると、高次の横モードの発生を抑制することができるという点で好ましい。
絶縁層の具体的な材料としては例えば、SiO、Ga、Al、ZrO等の酸化物、SiN、AlN及びAlGaN等の窒化物等が例示される。その膜厚としては、5〜1000nm程度、好ましくは、10〜100nm程度が例示される。
【0019】
また、本発明の絶縁層は開口部を有する。図1に示すような垂直共振器型面発光レーザでは、p側の絶縁層の開口部が、垂直共振器型面発光レーザの活性領域の大きさを規定する。開口部の形状としては、特に限定されず、円形、楕円形、矩形、これらに近似する形状等が挙げられる。図3に示すように、活性領域の中心までの距離を等距離とすることで、活性領域に均一に電流注入することができ、均一に光閉じ込めをできるという点からも、円形であることが好ましい。開口部の大きさとしては、円形の場合は、その直径が1〜15μm程度、好ましくは3〜10μm程度が挙げられ、この程度の大きさの活性領域であれば活性領域へ均一に電流注入を行うことが可能である。
【0020】
絶縁層は、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、ECRプラズマスパッタ法、マグネトロンスパッタ法等が挙げられる。
開口部の形成方法としては、公知の方法を用いて形成することが可能であるが、リフトオフ法、フォトリソグラフィを用いたエッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)などの方法でパターニングし、開口部を設けることが好ましい。
また、所望の領域に電流を注入する方法として、イオン注入、選択酸化(熱酸化、陽極酸化など)等の当該分野で公知の方法を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(透光性電極)
絶縁層の開口部を被覆するように透光性電極が設けられる。つまり、透光性電極は、窒化物半導体層表面に接触して、絶縁層上に跨るように形成される。また、透光性電極は、その一部は、絶縁層を介して窒化物半導体層上に配置されている。
このような配置としては、例えば、図1に示すように、p型半導体層上の中央部分が透光性電極に直接接触し、この中央部分を取り囲む領域では、絶縁層を介して透光性電極が配置している形態等が例示される。
【0022】
また、透光性電極が形成される領域としては特に限定されず、図1に示すように、絶縁層を介して窒化物半導体層表面の全面に形成されてもよいし、図5に示すように、窒化物半導体層表面の一部に形成されてもよい。なお、電流注入の観点から、活性領域のみで窒化物半導体層と接触するように形成されることが好ましい。
また、詳細は後述するが、電極60と電気的に接続させるために、開口部上に設けられる反射鏡50aから露出するように形成することが好ましい。
【0023】
このように透光性電極を形成することにより、活性領域の外周部に偏る傾向のある電流の供給を中心部にも拡散させ、活性領域内で均一に電流を供給することができ、効率よく発振させることができる。つまり、透光性電極が設けられることで、電流を横方向に広げ、効率よく活性領域に電流を供給することができる。
【0024】
透光性電極の材料は、透明、例えば、透明電極に入射する光の50%以上を透過すること、60%以上、70%以上、さらに80%以上の光を透過するものであれば、特に限定されない。また、透光性電極による光吸収は、透明電極に入射する光の3%以下、さらに1%以下であることが好ましい。例えば、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)及びマグネシウム(Mg)からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む層の単層膜又は積層膜により形成することができる。また、導電性酸化物で形成することが好ましく、具体的にはZnO、In、SnO、ATO、ITO、MgO等が挙げられる。なかでも、ITOが好ましい。
透光性電極の膜厚は特に限定されず、3〜100nm程度が例示される。また、20nm以下、特に、5〜20nm程度とすることで、透光性電極による光の吸収を軽減することができる一方で、電流が外周付近に偏り、活性領域内への電流の広がりが不十分となる傾向にあり、発熱が増大するため、本発明を適用するとより効果的である。
【0025】
透光性電極は、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、ECRプラズマスパッタ法、マグネトロンスパッタ法等が挙げられる。
【0026】
(反射鏡)
図1等に示すように、反射鏡は、透光性電極を介して開口部上に設けられる。また、反射鏡は、その一部が絶縁層と対向するように設けられる。つまり、反射鏡は絶縁層の開口部を被覆するように、絶縁層の開口部よりも大きく設けられる。
【0027】
反射鏡の大きさは特に限定されないが、開口部の径よりも5〜30μm程度、好ましくは10〜20μm大きく形成することが好ましい。詳細は後述するが、反射鏡端部の膜厚や膜質に分布がある領域が活性領域上に設けられないようにするためである。また、反射鏡の形状は特に限定されないが、絶縁層の開口部と相似する形状若しくはそれに近似する形状で設けることができる。具体的な形状としては、円、楕円、矩形等で形成することができる。円形の場合、直径10〜70μm程度であることが好ましい。
【0028】
反射鏡は、誘電体材料で形成され、誘電体多層膜から形成されることが好ましい。
具体的な誘電体材料としては、例えば、Si、Mg、Al、Hf、Nb、Zr、Sc、Ta、Ga、Zn、Y、B、Ti等の酸化物、窒化物(例えば、AlN、AlGaN、GaN、BN、SiN等)又はフッ化物等が挙げられる。具体的には、SiO、TiO、ZrO、Ta、HfO等が例示される。これらの誘電体のうち、屈折率が異なる2種以上の材料層を交互に積層することにより誘電体多層膜を得ることができる。例えば、SiO/Nb、SiO/ZrO、SiO/AlN、Al/Nb等の多層膜が好ましい。
【0029】
反射鏡は、所望の反射率を得るために、材料、膜厚、多層膜のペア数等を適宜調整することができる。各層の膜厚は、用いる材料等により適宜調整することができ、所望の発振波長(λ)、用いる材料のλでの屈折率(n)によって決まる。具体的には、λ/(4n)の奇数倍とすることが好ましく、反射率と放熱性を考慮して適宜調整することが好ましい。例えば、発振波長が410nmの素子において、Nb/SiOで形成される場合、40〜70nm程度が例示される。ペア数は、2ペア以上、好ましくは5〜15ペア程度が例示される。誘電体多層膜の全体としての膜厚は、例えば、0.3〜2.5μm、好ましくは0.6〜1.7μm程度が例示される。
【0030】
また、図2に示すように、反射鏡上に金属材料からなる接着層が形成される場合、反射鏡の最上層は、反射鏡を構成する多層膜のうち、屈折率の低い材料を用いることが好ましい。これにより、接着層との界面における反射率を高めることができる。また、反射率の高い金属材料を選択することで接着層との界面における反射率をさらに高めることができる。
【0031】
誘電体多層膜は、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、ECRプラズマスパッタ法、マグネトロンスパッタ法又はこれらの方法の2種以上を組み合わせる方法が挙げられる。また、これらの方法と、全体又は部分的な前処理、不活性ガス(Ar、He、Xe等)、酸素、オゾンガス又はプラズマの照射、酸化処理、熱処理、露光処理のいずれか1種以上とを組み合わせる方法等種々の方法を利用することができる。なお、組み合わせの方法では、必ずしも同時又は連続的に成膜及び/又は処理しなくてもよく、成膜した後に処理等を行ってもよいし、その逆でもよい。
【0032】
(導電性材料)
本発明の垂直共振器型面発光レーザでは、絶縁層と反射鏡の間に導電性材料が設けられる。この導電性材料は、活性領域への電流の供給を促進させ、活性領域に供給される電流分布を均一にし、しきい値電流の低い垂直共振器型面発光レーザを提供するために寄与するものである。
【0033】
図1を参照しながら詳細について説明する。
反射鏡は、その材料及び膜厚により反射率が決定され、それによってレーザの特性が大きく左右される。また、反射鏡は、誘電体材料で形成されるため、窒化物半導体層表面の全面に形成されると、外部と電気的に接続させることができない。そのため、図1(a)に示すように、窒化物半導体層表面の一部の領域に形成する必要があるが、一部の領域に形成する場合、その全体において同一の膜厚で形成することはきわめて困難であり、特にその外周部付近で膜厚の分布及び膜質の劣化が起こってしまう。活性領域内で反射鏡に膜厚及び/又は膜質の分布がある場合、反射率が低下して、所望の特性の垂直共振器型面発光レーザが得られず、発振自体が困難となることがある。また、外周部での光の散乱や吸収によって、損失が増加する恐れがある。そのため、活性領域の全体で所望の反射率を有する反射鏡を形成する必要があり、活性領域よりも大きく反射鏡を形成することで活性領域の全体で所望の反射率を有する反射鏡を形成することができる。
さらに、このような構造とすると、図1(b)中のWで示すように、反射鏡と絶縁層とが対向するような領域が設けられる。この反射鏡と絶縁層に挟まれた部分では、透光性電極のみで電流を供給することになるので、絶縁層上のその他の領域(電極60が形成された領域)よりも横方向の電流の広がりが悪くなる。
そこで、絶縁層と反射鏡の間に導電性材料を形成することによって、反射鏡と絶縁層の間、言い換えると絶縁層上に形成された反射鏡の下部において、透光性電極40に加えて、導電性材料30、特に、図1(b)中のWとHで囲まれた部分にも電流が流れ、絶縁層上における電流の広がりを改善し、活性領域への電流の拡散を促し、活性領域に均一に電流を注入することができ、ひいてはしきい値が低く、横モードの安定した垂直共振器型面発光レーザを得ることができる。さらに、素子内部で発生する熱を低減させることができ、高出力で長寿命の垂直共振器型面発光レーザを得ることができると考えられる。
【0034】
また、導電性材料は、絶縁層の開口部と一致するように開口部を有する、もしくは絶縁層の開口部よりも外側で絶縁層を覆うように開口部を有することが好ましい。導電性材料が開口部内に形成される場合、その導電性材料が形成された領域に優先的に電流が供給されてしまうため、活性領域内で電流の偏りを引き起こす原因となるが、これを抑制しつつ活性領域に電流を供給し、活性領域内での電流の広がりを均一なものとするためである。また、活性領域に導電性材料が形成された場合と比較して光損失を低減し、効率よく発振させることができる。
【0035】
また、図1、2又は5のように、絶縁層の開口部と一致するように開口部を有する導電性材料であれば、絶縁層の形成後に導電性材料を同じマスクで形成することができるので、より簡便に本発明の効果を得ることができる垂直共振器型面発光レーザを得ることができる。
また、図4に示すように、絶縁層の開口部よりも外側で絶縁層を覆うように開口部を有するように形成すると、導電性材料に金属を用いた場合に、図4(b)中の矢印aに示すように、活性領域の外周部において絶縁層と接触する部材を透光性電極とすることができ、活性領域の外周部における光の吸収や散乱の影響を低減させることができるため好ましい。
【0036】
また、導電性材料が形成される位置としては、絶縁層と反射鏡の間であれば特に限定されない。具体的には、図1等に示すように、絶縁層20と透光性電極40の間に形成することができる。あるいは、絶縁層20と透光性電極40の間に形成する代わりに、透光性電極40と反射鏡50aの間に形成してもよい。そのなかでも、絶縁層と透光性電極の間に形成されることが好ましい。半導体層で発生した熱をより効率良く逃がすことができると考えられるためである。さらに、上述したような、絶縁層の開口部と一致するような開口部を有する導電性材料であれば、絶縁層の形成後に導電性材料を同じマスクを用いて形成することができるので、より簡便に本発明の垂直共振器型面発光レーザを得ることができる。
【0037】
また、導電性材料は、p型半導体層側に設けられることが好ましい。窒化物半導体は、特にp型半導体層の抵抗が高いため、透光性電極を用いて電流を広げる必要があり、導電性材料を設けることで、絶縁層上での電流の広がりを改善することができるためである。
【0038】
また、導電性材料は、透光性電極と同じ材料であってもいいし、異なる材料であってもよいが、絶縁層上における電流の広がりを改善させるという観点から、導電性材料の導電率は、透光性電極の導電率以上であることが好ましい。導電性材料と透光性電極が同じ材料で形成される場合には、絶縁層の開口部を被覆する透光性電極を形成する前もしくは後に、異なる形状のマスクを用いて形成すればよい。また、異なる材料で形成される場合には、導電性材料の導電率は、透光性電極の導電率より大きいことが好ましい。これにより、透光性電極の膜厚を薄くしたとしても電流の広がりが悪化することなく活性領域への電流注入を行うことができる。具体的には、透光性電極よりも導電率が10倍以上、好ましくは、100倍以上大きいものである。また、導電性材料は、熱伝導率の高い材料を用いることが好ましい。
【0039】
導電性材料は、単層膜又は積層膜により形成することができ、具体的な材料としては、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、銅(Cu)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ITO、ZnO、In等の透明導電性酸化物からなる群から選択された少なくとも一種を含む金属、合金を含むものであることが好ましい。図6に示すように積層構造とする場合には、いずれかの層にTi、NiまたはCrを含む積層構造とすることが好ましい。Ti、NiまたはCrを用いることにより、絶縁層、透光性電極もしくは反射鏡との密着性を向上させることができるためである。つまり、図6中の最上層及び最下層30aが、絶縁層もしくは透光性電極と接触するように、Ti、NiまたはCrを含む層とすることが好ましい。具体的な積層構造としては、Ti−Rh−Ti、Ti−Pt−Ti、Ni−Ag−Ni、Ni−Au−Ni、Al−Ti等が挙げられる。またこの場合、絶縁層としてSiOを用い、透光性電極としてITOを用いることで、絶縁層、導電性材料及び透光性電極の密着性を向上させることができ、より効果的である。また、Ti、NiまたはCrの層に挟まれる中間層30bとしては、比較的導電率の高いAu,Ag,Cu、Rh、Pt、Al等を用いることが好ましい。
【0040】
また、導電性材料の膜厚は、特に限定されないが、全体で0.01〜1.7μm程度、好ましくは0.02〜0.15μm程度、さらに好ましくは0.03〜0.10μmで形成されるものである。また、上述したTi、NiまたはCrの層は、1〜30nm程度、好ましくは3〜10nmで形成されるものである。また、中間層30bの膜厚としては、10〜1700nm程度、好ましくは30〜70nmで形成されるものである。
【0041】
また、導電性材料の形成方法としては、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、ECRプラズマスパッタ法、マグネトロンスパッタ法等が挙げられる。
導電性材料の開口部の形成方法としては、公知の方法を用いて形成することが可能であるが、リフトオフ方法、フォトリソグラフィを用いたエッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)などを用いたパターニングにより開口部を設けることができる。そのなかでも、リフトオフ法を用いて形成することが好ましい。
【0042】
(電極)
電極は、透光性電極と電気的に接続される。また、例えば、図2に示すように、導電性の支持基板と貼り合わせるような場合に、外部と電気的に接続するために形成される。電極は、透光性電極に接触するように形成されることが好ましい。また、反射鏡の側面に接触するように形成されるか、反射鏡を貫通して透光性電極に接触するように形成することが好ましい。ただし、透光性電極に電流を供給し得る形態であれば、これら以外の形態で電極を形成してもよいし、垂直共振器型面発光レーザの構造によっては省略することもできる。
電極は、絶縁層上の透光性電極と接触するように設けることが好ましい。透光性電極が窒化物半導体層と接触している領域に電極を配置すると、電極の直下にのみに電流が流れ、活性領域の中心部まで電流が広がりにくくなるが、これを防ぐことができる。
【0043】
また、図5に示すように、導電性材料の外周端部(図5中の矢印c)が、電極の外周側面(図5中の矢印b)よりも内側になるように形成することが好ましい。このように導電性材料及び電極を形成すると、絶縁層と導電性材料の接触面積を減らすことができると共に、透光性電極及び導電性材料の側面から絶縁層の表面にかけて電極によって被覆されているので、両者の剥がれが起こるのを抑制することができる。それにより、導電性材料を導電率、熱伝導率の高い材料で形成することができるので、発熱低減、放熱性向上の点で好ましい。
【0044】
電極の膜厚は特には限定されないが、支持基板と接合する場合には、電極の上面が反射鏡の上面と同程度の高さになるように形成することが好ましい。これにより支持基板との接合を強固にすることができ、この後の工程中などに窒化物半導体層と支持基板の剥離が起こるのを防ぐことができる。具体的には、0.6〜1.7μm程度である。
電極は、抵抗が低く、熱伝導率の大きい材料が好ましい。例えば、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)、銅(Cu)、銀(Ag)、これらの酸化物又は窒化物、ITO、ZnO、In等の透明導電性酸化物からなる群から選択された少なくとも一種を含む金属、合金の単層膜又は積層膜により形成することができる。具体的には、Ti−Rh−Au、Cr−Pt−Au、Ni−Au、Ni−Au−Pt、Pd−Pt、Ni−Pt、Cr−Rh−Au等が挙げられる。
【0045】
また、電極は、反射鏡を形成する前又は後に形成することができる。
形成方法としては、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、ECRプラズマスパッタ法、マグネトロンスパッタ法等が挙げられる。
【0046】
以下、その他の構成及び本発明の垂直共振器型面発光レーザの製造方法について説明する。
図2及び3に本発明の垂直共振器型面発光レーザの一例を示す。図3は、本発明の垂直共振器型面発光レーザの上面図であり、図2は、図3中のI−I´断面の断面図である。
図2は、図1の垂直共振器型面発光レーザの反射鏡50aが形成された側を接着層80を介して支持基板90に接合したものである。また、図3に示すように、略矩形で形成された垂直共振器型面発光レーザの活性領域に、円形で第2の反射鏡50bが設けられており、透光性電極40は、窒化物半導体層との接触面積が第2の反射鏡50bよりも小さくなるように第2の反射鏡50bと対向して設けられている。
また、本発明の垂直共振器型面発光レーザは、図2に示すように、p型半導体層側を支持基板に接合し、矢印で示すようにn型半導体層側からレーザ光を取り出すことが好ましい。
【0047】
まず、成長基板上に窒化物半導体層を形成する。成長基板は、窒化物半導体を成長させることができる基板であればどのような基板であってもよい。具体的には、スピネル(MgA1)、炭化珪素、シリコン、ZnS、ZnO、GaAs、ダイヤモンド、ニオブ酸リチウム、ガリウム酸ネオジウム等が挙げられるが、C面、M面、A面及びR面のいずれかを主面とするサファイアもしくは窒化物半導体基板(GaN、AlN等)を用いることが好ましい。また、成長基板は、その表面に0°〜10°程度のオフ角を有していてもよい。また、窒化物半導体層を成長させる前に、任意に下地層等を形成してもよい。
【0048】
次に、p型半導体層表面に、絶縁層、透光性電極、導電性材料、電極及び反射鏡を形成し、p型半導体層側を支持基板に接合する。
支持基板の具体的な材料としては、AlN、Si、SiC、Ni、Au、Cu、CuW、Ge等が挙げられる。なかでも、導電性を有し、熱伝導率が高いものが好ましい。機械的特性、弾性変形、塑性変形性、物理的強度、放熱性等の観点からは、Ni、Au、Cuからなる金属基板が好ましい。また、Si基板は、安価であり、加工容易性の点から好ましい。支持基板の厚さは、例えば、50〜500μm程度が適している。
【0049】
垂直共振器型面発光レーザを支持基板に接合する際には、接着層を反射鏡及び電極上に形成して接合することが好ましい。接着層は、反射鏡及び電極上の一部若しくは全面にわたって形成することができる。電極を外部と電気的に接続させるために、電極と接触するように形成することが好ましい。
接着層の材料としては、(Ti/Si)−Pt−Pd、Ti−Pt−Au−(Au/Sn)、Ti−Pt−Au−(Au/Si)、Ti−Pt−Au−(Au/Ge)、Ti−Pt−Au−In、Au−Sn、In、Au−Si、Au−Ge、Al−Rh−Au−(Au/Sn)等が挙げられる。
また、支持基板側にも同様の接着層が形成されていることが好ましい。この接着層は、反射鏡上に形成する接着層と同様の材料、膜厚、方法により形成することができる。
垂直共振器型面発光レーザと支持基板の接合方法としては、例えば、接合面を合わせた後所定の温度及び圧力下で保持することによって接合する方法が挙げられる。しかし、支持基板の形成方法は特に限定されず、当該分野で通常使用される方法を利用することができる。具体的には、熱圧着法、ダイレクトボンディング法、電解めっき法等が挙げられる。
【0050】
続いて、成長基板を一部若しくは全部除去する。この工程以降は、n型半導体層側を上方として加工を行う。成長基板が絶縁性基板である場合は、全部を除去することが好ましいが、活性領域を含む一部の領域だけ除去してもよい。
成長基板の除去方法は、特に限定されず、当該分野で公知の方法により行うことができる。例えば、レーザリフトオフ法、研磨、エッチング等を利用することができる。
【0051】
成長基板の一部もしくは全部を除去した後に、露出した基板またはn型半導体層の表面を任意の方法で加工してもよい。これにより、平滑な共振器面を形成し、共振器長の制御をすることができる。鏡面加工とすることにより、n型半導体層表面での光の散乱を最小限に抑えることができる。
加工方法としては、CMP(化学機械研磨)法やエッチング等を利用することができる。これらの方法や加工条件については、当該分野で公知のものを適宜用いて行うことができる。例えば、CMPの研磨剤としては、燐酸、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)等を用いることができる。また、ウェットエッチングは、エッチャントとして、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液、リン酸、硫酸、王水等の酸性溶液等を用い、窒化物半導体層を所定時間浸漬するなどしてエッチャントに晒すことにより行うことができる。ドライエッチングのエッチングガスとしては、CF4のようなフッ素系、Cl2、CCl4、SiCl4のような塩素系、HIのようなヨウ素系ガスの単独又は混合ガスを適宜選択することができる。
また、上述したように、窒化物半導体層にエッチングストップ層を含む場合、エッチングにより、窒化物半導体層を一部除去し、エッチングストップ層を露出させることで、共振器長の制御を高精度に行うことができる。この場合、エッチングは全面で行ってもよいし活性領域を含む一部の領域だけ行ってもよい。
また、この加工後の残りの窒化物半導体層の膜厚が、垂直共振器型面発光レーザの共振器長となる。窒化物半導体層の残りの膜厚が0.3〜6.0μm程度となるように加工することが好ましい。
【0052】
続いて、n型半導体層上に、第2電極及び第2反射鏡を任意の順序で形成する。
第2電極は、n型半導体層に電流を供給し得る形態であれば、その形成位置や接触面積などは限定されない。例えば、図3に示すように、第2反射鏡を取り囲むように配置される例が挙げられる。第2電極とn型半導体層との接触面積は、用いる材料、垂直共振器型面発光レーザの大きさ等によって適宜調整することができる。また、第2電極は、第2反射鏡の上もしくは下に外周の一部が重なるように形成してもよい。また、成長基板に導電性基板を用いる場合には、成長基板を一部残しておき第2電極を形成してもよい。
第2電極は、第1電極の材料と同様の材料、膜厚、方法により形成することができる。
また、第2電極は、対向するように形成することには限定されず、p型半導体層及び活性層が除去されて露出されたn型半導体層表面に形成されていてもよい。
【0053】
第2反射鏡50bは、第1反射鏡と同様の材料、形状、大きさで、同様に形成することができる。ただし、第1反射鏡50a及び第2反射鏡50bは、必ずしも同一の材料、同一の構成でなくてもよい。所望の反射率を得るために、材料、膜厚、多層膜のペア数等を適宜調整することができる。第2反射鏡は、第1反射鏡と対向する領域に設けられていればよい。
また、第2反射鏡は、第1反射鏡よりも面積を大きく、第1反射鏡と対向する領域を被覆するように設けられることが好ましい。第2反射鏡をこのように形成することで、効率の良い垂直共振器型面発光レーザを簡便に、再現性よく製造することができる。
なお、本発明では導電性材料、絶縁層及び透光性電極は、p型半導体層側に形成されることには限定されず、n型半導体層側にも同様にして形成することができる。
また、本発明では、第2反射鏡を半導体材料で形成してもよい。その場合、成長基板上にn型半導体層を形成する前に第2反射鏡が形成されることが好ましい。その材料としては、AlN/GaN、AlGaN/GaN等が例示される。
【0054】
最後にウエハを分割し、垂直共振器型面発光レーザを得る。この際の分割方法としては、ダイサー、スクライバー、エッチング等当該分野で公知の方法を利用することができる。これらのうちの適当な方法でウエハに溝部を形成し、溝部に沿ってブレイカー等で加圧して分割してもよい。
なお、任意の段階で、ウエハ状態で形成された窒化物半導体層に溝部を設けることで、予め個々の垂直共振器型面発光レーザを規定してもよい。例えば、成長基板を除去した後、成長基板を除去後に窒化物半導体層表面を加工した後、あるいは、第2電極及び/又は第2反射鏡を形成する前後、又はこれ以外の適当な段階に行うことができる。
また、必ずしも各々の活性領域の間でウエハを分割することには限定されず、任意にウエハを分割することができる。例えば、複数の活性領域をもつような垂直共振器型面発光レーザアレイとしてもよい。
また、得られた素子を金属や樹脂等で形成される種々のパッケージに実装してレーザ装置を得ることができる。
【0055】
また、本発明の垂直共振器型面発光レーザは、その側面の一部又は全部あるいは窒化物半導体層の表面の一部に適宜に絶縁膜が設けられていてもよい。また、上述したような凸部を設ける場合には、凸部の側面を絶縁膜で被覆することが好ましい。
絶縁膜の材料としては、例えば、SiO、Ga、Al、ZrO等の酸化物、SiN、AlN及びAlGaN等の窒化物等が例示される。絶縁膜の膜厚は、例えば、20〜1000nm程度が挙げられる。絶縁膜の形成は、当該分野で公知の方法を利用して行うことができる。
【0056】
以下に本発明の垂直共振器型面発光レーザの実施例を示す。
(実施例1)
本実施例の垂直共振器型面発光レーザ100は、図2に示すように、支持基板90であるシリコン基板上に、接着層80、誘電体多層膜からなる反射鏡50a、ITOからなる透光性電極40、窒化物半導体層10、誘電体多層膜からなる第2反射鏡50bが形成されている。また、透光性電極40と窒化物半導体層10の間には部分的にSiOからなる絶縁層20が配置され、活性領域を規定している。さらに、絶縁層20と反射鏡50aの間には、導電性材料30が形成されている。また、導電性材料は、図6に示すように、積層構造で形成されている。
また、反射鏡50aの側面には、接着層80と透光性電極40の双方と電気的に接続された電極60が形成されている。さらに、第2反射鏡50bの外周には、窒化物半導体層と電気的に接続された第2電極70が形成されている。
【0057】
このような垂直共振器型面発光レーザは、以下の方法により製造することができる。
まず、成長基板であるサファイア基板上に、AlGaN層を10nm、アンドープのGaN層を1.5μm積層する。その上に、n型半導体層11として、SiをドープしたGaNを膜厚2μm積層する。次に、SiドープInGaNよりなる障壁層を13nm、アンドープInGaNよりなる井戸層を10nmの膜厚で積層する。これを2回繰り返し、最後にアンドープInGaNよりなる膜厚の13nm障壁層を積層して活性層12を形成する。次に、p型半導体層13として、MgをドープしたAlGaN層を7.5nmの膜厚で積層し、MgをドープしたGaN層を63nmの膜厚で積層する。
【0058】
続いて、p型半導体層13の表面に、SiOからなる絶縁層20を膜厚50nmで形成し、中央部分に直径8μmの円形の開口部を有する形状にパターニングする。
次に、絶縁層と同様の形状で、Ti/Rh/Ti(10nm/50nm/10nm)からなる導電性材料を形成する。
次に、導電性材料30の上に、開口部を被覆するように膜厚50nmのITOからなる透光性電極40を形成し、熱処理を行う。
次に、反射鏡の形成予定位置である活性領域をフォトリソグラフィによりレジストで覆い、Ti/Rh/Au(1.5nm/200nm/1100nm)を成膜し、リフトオフ法により電極60を形成する。
次に、活性領域に透光性電極40を介して直径18μmの円形で反射鏡50aを形成する。反射鏡は、Nb/SiO(40nm/70nm)の12ペアで形成し、1層目のNbを20nmで形成する。
【0059】
続いて、反射鏡50a及び電極60の上に、Ti/Pt/Au/AuSn(膜厚:100nm/250nm/500nm/2000nm)からなる接着層80を形成する。また、上記とは別に、TiSi/Pt/Au(膜厚:3nm/250nm/500nm)からなる接着層を表面に形成したシリコン基板を準備し、シリコン基板の接着層側を接着層80に貼り合わせる。
その後、レーザアシスト・エピタキシャル・リフトオフによって、成長基板を除去し、n型半導体層11の表面を露出させる。続いて、n型半導体層11の表面をCMP法により研磨し、窒化物半導体層10の全膜厚を1.1μm程度に調整する。
次に、n型半導体層11の上に、活性領域を中心として、直径28μmの円形の開口部を有する形状に、Ti/Pt/Au/Ni(膜厚:17nm/200nm/500nm/6nm)からなる第2電極70を形成する。
次に、活性領域を被覆するようにn型半導体層11上に直径48μmの円形で誘電体多層膜からなる第2反射鏡50bを形成する。第2反射鏡は、SiO/Nb(70nm/40nm)の7ペアで形成する。
最後に、ダイシングを行う領域の窒化物半導体層を除去し、ダイシングによりチップ状に分離して垂直共振器型面発光レーザを得る。
【0060】
このようにして製造された垂直共振器型面発光レーザ100に、室温にて電流を注入して動作させたところ、図2の矢印方向にレーザ光が出射され、安定した駆動を得ることができる。
【0061】
本発明との比較のため、導電性材料30を形成しない以外は、同様の構成で垂直共振器型面発光レーザを作製し、同条件で電流を注入して動作させる。
比較例の垂直共振器型面発光レーザは、本発明の垂直共振器型面発光レーザと比較してしきい値電流が高くなり、得られる最大の出力が小さくなり、寿命が短くなる。本発明の垂直共振器型面発光レーザは、活性領域に供給される電流分布が均一になり、透光性電極での発熱が低減して放熱性が向上する。その結果、しきい値電流が低く、横モードの安定した、高出力で長寿命の垂直共振器型面発光レーザが得られる。
【0062】
(実施例2)
本実施例では、図4に示すような垂直共振器型面発光レーザについて、実施例1と同様に接着層80を介して支持基板90に接合したものを作製する。
実施例1と異なる点は、絶縁層上に形成された導電性材料の開口部を絶縁層の開口部よりも大きくなるように形成した点であり、具体的には、絶縁層を形成した後、絶縁層を形成したマスクよりも直径で5μm大きいマスクを設け、同様にして導電性材料を形成する。それ以外は、実施例1と同様にして作製する。
本実施例の垂直共振器型面発光レーザは、実施例1の垂直共振器型面発光レーザと比較して、活性領域の外周部での光の吸収や散乱の影響を低減させることができ、しきい値電流の低い垂直共振器型面発光レーザが得られる。
【0063】
(実施例3)
本実施例では、図5に示すような垂直共振器型面発光レーザについて、実施例1と同様に接着層80を介して支持基板90に接合したものを作製する。
実施例1と異なる点は、導電性材料及び透光性電極の外周端部が、電極の外周側面よりも内側になるように形成した点であり、具体的には、絶縁層を形成した後、開口部の大きさは同じで、活性領域の外周の絶縁層上に幅10μmのリング状に、同様の条件で導電性材料を形成する。続いて、開口部はなく、素子領域よりも直径で20μm大きくなるように直径28μmの円形状に透光性電極を形成する。それ以外は、実施例1と同様にして作製する。
本実施例の垂直共振器型面発光レーザは、実施例1の垂直共振器型面発光レーザと比較して導電性材料の面積を減らすことで密着性の問題が軽減され、導電性材料に導電率、熱伝導率の高い材料を用いることができるので、発熱低減、放熱性向上の効果が得られる。
【0064】
(実施例4)
本実施例では、図1に示すような垂直共振器型面発光レーザについて、実施例1と同様に接着層80を介して支持基板90に接合したものを作製する。
本実施例は、導電性材料をAu(70nm)で形成する点以外は、実施例1と同様の構成であり、同様にして形成することができる。
本実施例の垂直共振器型面発光レーザは、実施例1の垂直共振器型面発光レーザと比較して、放熱性の良好な垂直共振器型面発光レーザが得られる。
【0065】
(実施例5)
本実施例は、成長基板として窒化物半導体基板を用いた点以外は、実施例1と同様の構成であり、同様にして作製することができる。
得られた垂直共振器型面発光レーザ素子は、結晶性のよい窒化物半導体層を形成することができるため、駆動による窒化物半導体層の結晶の劣化を抑制することができ、実施例1と比較して長時間の駆動が可能になる。
【0066】
(実施例6)
本実施例では導電性材料30の材料及び膜厚を変更する。具体的には導電性材料30をAl/Ti(1.3μm/17nm)で形成する。それ以外は実施例1と同様の構成であり、同様にして作製することができる。
得られた垂直共振器型面発光レーザ素子は、実施例1と比較して活性領域に供給される電流分布がより均一になり、放熱性の良好な垂直共振器型面発光レーザ素子が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の垂直共振器型面発光レーザは、光ディスクシステム及び電子機器への利用、光ネットワークの光源、レーザプリンタの光源、レーザディスプレイ、レーザプロジェクタなどに用いるディスプレイの分野への応用、各種の分析機器等のバイオ関連用途への応用など、広範囲に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
100 垂直共振器型面発光レーザ
10 窒化物半導体層
11 n型半導体層
12 活性層
13 p型半導体層
20 絶縁層
30、30a、30b 導電性材料
40 透光性電極
50、50a 反射鏡
50b 第2反射鏡
60 電極
70 第2電極
80 接着層
90 支持基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体層、活性層及びp型半導体層を含む窒化物半導体層の少なくとも一方の表面に、
開口部を有する絶縁層と、
前記開口部を被覆するように前記絶縁層上に設けられた透光性電極と、
該透光性電極を介して前記開口部上に設けられた誘電体材料からなる反射鏡とを有し、
前記絶縁層と前記反射鏡の間に導電性材料を設ける垂直共振器型面発光レーザ。
【請求項2】
前記導電性材料は、前記絶縁層の開口部と一致するように開口部を有する、もしくは前記絶縁層の開口部よりも外側で絶縁層を覆うように開口部を有する請求項1に記載の垂直共振器型面発光レーザ。
【請求項3】
前記導電性材料と、前記透光性電極は異なる材料である請求項1又は2に記載の垂直共振器型面発光レーザ。
【請求項4】
前記導電性材料の導電率は、前記透光性電極の導電率より大きい請求項1乃至3のいずれか1項に記載の垂直共振器型面発光レーザ。
【請求項5】
前記導電性材料は、前記絶縁層と透光性電極の間に形成される請求項1乃至4のいずれか1項に記載の垂直共振器型面発光レーザ。
【請求項6】
前記導電性材料は、p型半導体層側に形成される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の垂直共振器型面発光レーザ。
【請求項7】
前記反射鏡の外周側面には、前記透光性電極と電気的に接続するように設けられた電極を有し、前記導電性材料の外周端部は、前記電極の外周側面よりも内側である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の垂直共振器型面発光レーザ。
【請求項8】
前記導電性材料は、いずれかの層にTi、NiまたはCrを含む積層構造である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の垂直共振器型面発光レーザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−29607(P2011−29607A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129283(P2010−129283)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】