説明

垂直配向型液晶配向剤および垂直配向型液晶表示素子

【課題】高い垂直配向性能を有しつつ、印刷性や良好な電気特性を有する垂直配向型液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】アミック酸繰返し単位およびイミド繰返し単位の少なくとも一方の繰返し単位からなる重合体と、分子内に少なくとも2つのエポキシ基を含有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種のエポキシ含有化合物を、上記重合体100重量部に対して上記エポキシ含有化合物を1〜50重量部の割合で、含有する垂直配向型液晶配向剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は垂直配向型液晶配向剤および垂直配向型液晶配向膜を有する液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、優れた垂直配向性を有し、かつ良好な電気特性を示し、さらには印刷法による塗布性に優れた垂直配向型液晶配向剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示素子としては、透明導電膜が設けられている基板表面にポリアミック酸、ポリイミドなどからなる液晶配向膜を形成して液晶表示素子用基板とし、その2枚を対向配置してその間隙内に正の誘電異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにした、いわゆるTN型(Twisted Nematic)液晶セルを有するTN型液晶表示素子が知られている。
また、TN型液晶表示素子に比してコントラストが高くて、その視角依存性の少ないSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子や、垂直配向型液晶表示素子が開発されている。このSTN型液晶表示素子は、ネマチック型液晶に光学活性物質であるカイラル剤をブレンドしたものを液晶として用い、液晶分子の長軸が基板間で180度以上にわたって連続的に捻れる状態となることにより生じる複屈折効果を利用するものである。
【0003】
また近年では、新規な液晶表示素子の開発も盛んであり、その中の一つとして、液晶を駆動するための2つの電極を片側の基板に櫛歯状に配置し、基板面に平行な電界を発生させ、液晶分子をコントロールする横電界型液晶表示素子が提案されている。この素子は一般的にインプレーンスイッチング型(IPS型)と呼ばれ、広視野角特性に優れることで知られている。また最近では光学補償フィルムを使用し、広視野角特性をさらに向上させることで、階調反転や色調変化のないブラウン管にも匹敵する広視野角を得られることが大きな特徴となっている。
上記とは別の液晶表示素子として、負の誘電異方性を有する液晶分子を基板に垂直に配向させてなるMVA(Multi domain Vertical Alignment)方式やPVA(Patterned Vertical Alignment)方式と呼ばれる垂直配向型液晶表示素子が提案されている。これらのMVA方式やPVA方式の液晶表示素子は、視野角・コントラストが優れるのみでなく、液晶配向膜の形成においてラビング処理を行わなくて良いなど、製造工程の面でも優れている。
【0004】
近年、液晶表示素子における液晶注入方法として、特に大型基板を使用する場合、従来の真空注入方式に代わってODF(One−Drop−Filling)方式と呼ばれる手法が用いられている。これは、基板上に液晶の微小液滴を滴下し、その後基板を貼り合わせ、表示素子全体に液晶を行き渡らせることで、液晶注入を行う方法である。本手法を用いることで、工程数の削減およびタクトタイム短縮が達成できるというメリットがある。一方、デメリットとして挙げられているのが、ODFムラと呼ばれる配向不良の発生である。これは、液晶滴下時の衝撃および液晶広がり時の流動により、液晶配向膜表面の垂直配向性が乱れることで発生すると考えられている。本不良を低減させるためには、垂直配向成分量を増加させるなどの垂直配向性向上が効果あると予想されるが、印刷性低下や電気特性悪化などその他特性の低下を引き起こすことから、困難であることが予想される。このような背景から、ODFムラを改善しつつ、印刷性や電気特性などのトータルバランスに優れた垂直配向型液晶配向膜の開発が待ち望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高い垂直配向能を有しつつ、印刷性や良好な電気特性例えば高電圧保持特性や低残像性を有する垂直配向型液晶配向剤およびそれから形成される配向膜を備えた液晶表示素子を提供することにある。
【0006】
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、下記式(I−1)で表されるアミック酸繰返し単位および下記式(I−2)で表されるイミド繰返し単位の少なくとも一方の繰返し単位からなる重合体(以下、「特定重合体」という場合がある)と、下記式(II−1)および(II−2)のそれぞれで表される分子内に少なくとも2つのエポキシ基を含有する化合物(以下、「特定エポキシ化合物」という場合がある)よりなる群から選ばれる少なくとも一種のエポキシ含有化合物を、上記重合体100重量部に対して上記エポキシ含有化合物を1〜50重量部の割合で、含有することを特徴とする垂直配向型液晶配向剤により達成される。
【0008】
【化1】

【0009】
(ここで、Pはテトラカルボン酸二無水物に由来する四価の有機基を示しそしてQはジアミンに由来する二価の有機基を示す。)
【0010】
【化2】

【0011】
(ここで、Pはテトラカルボン酸二無水物に由来する四価の有機基を示しそしてQはジアミンに由来する二価の有機基を示す。)
【0012】
【化3】

【0013】
(ここで、aは2〜6の整数であり、bは1〜4の整数であり、Rはa価の芳香環を含有する有機基であり、Rはb価の芳香環を含有する有機基である。)
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、本発明の上記液晶配向剤から形成される垂直配向型液晶配向膜を具備することを特徴とする垂直配向型液晶表示素子により達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の垂直配向型液晶配向剤により形成される垂直配向型液晶配向膜は、高い垂直配向能を有することから、ODFムラ耐性に優れた液晶配向膜が得られる。また同時に、印刷性や高い電圧保持特性、良好な残像特性を有する好適な垂直配向型液晶配向膜が得られる。
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に使用することができ、例えば、卓上計算機、腕時計、置時計、携帯電話、計数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、液晶テレビなどの表示装置として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明における垂直配向型液晶配向剤(以下、「本発明の液晶配向剤」ともいう)は、上記のとおり、特定重合体および特定エポキシ化合物を含有する。
【0017】
[特定重合体]
特定重合体は、アミック酸繰り返し単位および/またはイミド繰り返し単位を含有する重合体からなる。上記繰り返し単位のうち、アミック酸繰り返し単位からなる重合体(以下、「ポリアミック酸重合体」ともいう)は、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを有機溶剤中で反応させて得られる。またイミド繰り返し単位を含有する重合体(以下、「イミド化重合体」ともいう)は、ポリアミック酸重合体のアミック酸部分を脱水閉環することで得られる。なお、イミド化重合体には、その繰り返し単位の全てがイミド化されているものも、部分的にイミド化されているものも含まれる。また、イミド環の一部がイソイミド環であっても良い。
【0018】
本発明における好ましい重合体としては、ポリアミック酸重合体とイミド化重合体とを両方含有する重合体、アミック酸構造を有するプレポリマーと、イミド構造を有するプレポリマーとから得られるブロック共重合体を含有する重合体、ポリアミック酸重合体を部分的に脱水閉環させて得られるイミド化重合体、が挙げられる。以下、本発明に用いることのできるポリアミック酸重合体、イミド化重合体の製法について述べる。以下、本発明に用いることのできるポリアミック酸重合体、イミド化重合体の製法について述べる。
本発明における液晶配向剤を構成するポリアミック酸重合体および/またはイミド化重合体に用いることのできるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、下記式(1)
【0019】
【化4】

【0020】
ここで、R、R、RおよびRは、互に独立に、水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基である、
で表わされるシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,4−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、テトラシクロ[4.4.0.12,77.10]ドデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、下記式(2)
【0021】
【化5】

【0022】
ここで、Rは水素原子または一価の有機基である。
で表わされるジカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−4−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ「5.3.1.02,6」ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、下記式(3)および(4)で表される化合物などの脂肪族および脂環式テトラカルボン酸二無水物;
【0023】
【化6】

【0024】
ここで、RおよびRは、芳香環を有する二価の有機基を示し、R10およびR11は、水素原子またはアルキル基を示し、複数存在するR10およびR11は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0025】
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)、下記式(5)〜(8)で表される化合物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0026】
【化7】

【0027】
上記式(1)で表わされるシクロブタンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジエチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジエチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物および1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
【0028】
また、上記式(2)で表わされるジカルボン酸二無水物としては、例えば、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオンおよび1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオンを挙げることができる。
【0029】
これらのうち、上記式(2)で表わされるテトラカルボン酸二無水物例えば1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン;2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸二無水物を、全テトラカルボン酸二無水物に対し、好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、就中、特性向上の観点から、60モル%以上含有することが特に好ましい。
【0030】
[ジアミン化合物]
本発明における液晶配向剤を構成するポリアミド酸重合体および/またはイミド化重合体に用いることのできるジアミン化合物としては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ジメチル−2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル、4−(4−n−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ−2,4−ジアミノベンゼンなどの芳香族ジアミン;
1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1,4−ビス(アミノプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノプロピル)シクロヘキサン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族および脂環式ジアミン;
2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、5,6−ジアミノ−2,3−ジシアノピラジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−2−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、2,6−ジアミノプリン、5,6−ジアミノ−1,3−ジメチルウラシル、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、6,9−ジアミノ−2−エトキシアクリジンラクテート、3,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、1,4−ジアミノピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ジ(4−アミノフェニル)−ベンジジンなどの、分子内に2つの1級アミノ基および該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン;
下記式(9)で表されるジアミノオルガノシロキサン;
【0031】
【化8】

【0032】
(ここで、R12は、水素原子または一価の有機基を示し、R13は、メチレン基または炭素数2〜20のアルキレン基であり、複数あるR12およびR13は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、pは、1〜20の整数である。)
下記式(10)〜(12)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。これらのジアミン化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
【化9】

【0034】
(ここで、Xは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基またはフェニレン基であり、Rは、炭素数10〜20のアルキル基、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する一価の有機基または炭素数6〜20のフッ素原子を有する一価の有機基であり、Rは、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する二価の有機基または炭素数5〜30のフッ素原子を有する二価の有機基であり、式(11)中に複数存在するXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、qは1〜20の整数である。)
これらのうち、上記式(10)で表される化合物例えば下記式(13)〜(27)のそれぞれで表されるジアミン;および/または
【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
上記式(11)で表される化合物例えば下記式(28)〜(32)のそれぞれで表されるジアミン;
【0038】
【化12】

【0039】
を、確実な垂直配向性を付与するために、全ジアミンの少なくとも1部として使用するのが好ましく、全ジアミンに対して8モル%以上含有することがより好ましく、10モル%以上含有することがさらに好ましい。
【0040】
また、その他のジアミン化合物としては、本発明の液晶配向剤の効果を十分に得る上で、p−フェニレンジアミン、2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2−エチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジエチル−1,4−フェニレンジアミンおよび2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミンよりなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンを全ジアミンに対して20モル%以上含有することが好ましく、40モル%以上含有することがより好ましい。
【0041】
[ポリアミック酸の合成]
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.5〜2.0当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.2当量となる割合である。ポリアミック酸の合成反応は、有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。
ここで、有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えば1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を例示することができる。また、有機溶媒の使用量(α)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(β)が、反応溶液の全量(α+β)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
【0042】
なお、上記有機溶媒には、ポリアミック酸の貧溶媒であるアルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを、生成するポリアミック酸が析出しない範囲で併用することができる。かかる貧溶媒の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを挙げることができる。
【0043】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。そして、この反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥するか、または、反応溶液をエバポレーターで減圧留去することによりポリアミック酸を得ることができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解させ、次いで貧溶媒で析出させる工程、または、エバポレーターで減圧留去する工程を1回または数回行うことにより、ポリアミック酸を精製することができる。
【0044】
[イミド化重合体の合成]
本発明の液晶配向剤を構成するイミド化重合体は、上記ポリアミック酸を脱水閉環することにより合成することができる。本発明で用いるイミド化重合体は、イミド化率100%未満の、部分的に脱水閉環されたものであってもよい。ここでいう「イミド化率」とは、重合体の全繰り返し単位中、イミド環またはイソイミド環を有する繰り返し単位の割合を、百分率で表した値である。本発明に用いられるポリアミック酸重合体および/またはイミド化重合体のイミド化率は、30%以上が好ましく、40%以上がさらに好ましく、電圧保持特性の観点から50%以上がより好ましい。ポリアミック酸の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により、縮合させて合成する方法が用いられる。
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるイミド化重合体の分子量が低下することがある。
【0045】
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、所望するイミド化率によるが、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとするのが好ましい。イミド化率は上記の脱水剤、脱水閉環剤の使用量が多いほど高くすることができる。なお、脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒と同じものを挙げることができる。そして、脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。また、このようにして得られる反応溶液に対し、ポリアミック酸の精製方法と同様の操作を行うことにより、イミド化重合体を精製することができる。
【0046】
[末端修飾型の重合体]
本発明のポリアミック酸/イミド化重合体は、分子量が調節された末端修飾型のものであってもよい。この末端修飾型の重合体を用いることにより、本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。このような末端修飾型の重合体は、ポリアミック酸を合成する際に、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを反応系に添加することにより合成することができる。ここで、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができる。また、モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。また、モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを挙げることができる。
【0047】
[重合体の対数粘度]
以上のようにして得られるポリアミック酸および/またはイミド化重合体は、その対数粘度(ηln)の値が好ましくは0.05〜10dl/g、より好ましくは0.05〜5dl/gである。
本発明における対数粘度(ηln)の値は、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として用い、濃度が0.5g/100ミリリットルである溶液について30℃で粘度の測定を行い、下記式(i)によって求められるものである。
【0048】
【数1】

【0049】
[重合体のイミド化率]
以上のようにして得られるイミド化重合体は、そのイミド化率が電圧保持特性の向上という観点から30〜100%が好ましく、40〜100%がさらに好ましく、50〜100%がより好ましい。
本発明におけるイミド化重合体のイミド化率の値は、イミド化重合体を60℃で減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定し、下記式(ii)で示される式により求められるものである。
イミド化率(%)=(1−A1/A2×α)×100 −−−−−−(ii)
A1:NH基のプロトン由来のピーク面積(10ppm)
A2:芳香環由来のプロトン由来のピーク面積(7〜8ppm)
α :重合体の前駆体(ポリアミック酸)における、NH基のプロトン1個に対する芳香環由来のプロトンの個数割合
【0050】
[エポキシ含有化合物]
また本発明の液晶配向剤は、下記式(II−1)および(II−2)のそれぞれで表される特定エポキシ化合物を含有する。
【0051】
【化13】

【0052】
(ここで式中、aは2〜6の整数であり、bは1〜4の整数であり、Rはa価の芳香環を含有する有機基であり、Rはb価の芳香環を含有する有機基である。)
かかる特定エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジメチル−4.4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス[4−(N,N−ジグリシジル−4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−p−キシレンジアミン、下記式(III−1)および(III−2)
【0053】
【化14】

【0054】
(ここで、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のフッ素原子を有する一価の有機基である。)
のそれぞれで表されるエポキシ含有化合物を挙げることができる。これらのうち、特に好ましい特定エポキシ化合物としては、上記式(III−1)で表されるエポキシ含有化合物例えば、ベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル、2−メチルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル、2−エチルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル、2−n−ヘキシルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル、2−n−ドデシルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル、2−トリフルオロメチルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテルおよび2,5−ジエチルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテルなどのエポキシ含有化合物;
および上記式(III−2)で表されるエポキシ含有化合物例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2−n−プロピル−1,4−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2−ドデシル−4,4’−ジアミノベンゼン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2−n−ヘキシル−1,4−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミンおよび2,5−ジエチル−1,4−フェニレンジアミンなどのエポキシ含有化合物;
が挙げられる。また、かかるエポキシ含有化合物の含有量は、重合体100重量部に対して好ましくは1〜50重量部、より好ましくは5〜45重量部である。
【0055】
[アミン化合物]
また本発明の液晶配向剤には、目的の物性を損なわない範囲内で、保存安定性および電気特性の観点から、アミン化合物が含有されていてもよい。
かかるアミン化合物としては、例えば、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミン、2−メトキシエチルアミン、2−メトキシベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルエチルアミン、n−エチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、下記式(VI−1)〜(VI−3)のそれぞれで表されるアミン化合物;
【0056】
【化15】

【0057】
(ここで、Xは、一価の有機基を示し、各分子中に複数存在するXは、同一でも異なっていてもよい。)
下記式(VI−4)〜(VI−5)のそれぞれで表されるアミン化合物;
【0058】
【化16】

【0059】
(ここでXは、二価の有機基を示し、各分子中に複数存在するXは、同一でも異なっていてもよい。)
などを挙げることができる。
【0060】
上記式(VI−1)〜(VI−3)で表されるアミン化合物としては、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2−エチルアニリン、3−エチルアニリン、4−エチルアニリン、p−ヘキシルアニリン、2−フルオロアニリン、4−フルオロアニリン、2,4,6−トリフルオロアニリン、o−フェネチジン、m−フェネチジン、p−フェネチジン、p−トリフルオロメトキシアニリン、p−トリフルオロエトキシアニリン、シクロヘキシルアミンおよびシクロオクチルアミンなどを挙げることができる。
また上記式(VI−4)〜(VI−5)で表されるアミン化合物としては、例えば、ピリジン、ピペリジン、ピペラジン、1−シクロヘキシルピペラジン2−アザビシクロ[2.2.2]オクタン、9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン、9−メチル−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンなどを挙げることができる。
【0061】
このうち、特に好ましいアミン化合物としては、電気特性の観点から、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−デシルアミン、n−ヘキシルアミン、2−メトキシベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、アニリン、p−トルイジン、p−エチルアニリン、p−フェネチジン、p−トリフルオロメトキシアニリン、p−トリフルオロエトキシアニリン、シクロヘキシルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンなどが挙げられる。またアミン化合物の含有量は、好ましくは重合体100重量部に対して0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部である。
【0062】
また、本発明の液晶配向剤には、目的の物性を損なわない範囲内で、基板表面に対する接着性を向上させる観点から、官能性シラン含有化合物が含有されていてもよい。かかる官能性シラン含有化合物としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(N−アリルーNーグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランおよび3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0063】
[垂直配向型液晶配向剤]
本発明の液晶配向剤を得るためには、上記ポリアミック酸重合体および/またはイミド化重合体、エポキシ含有化合物および必要に応じ用いられる上記の如きその他の化合物が、好ましくは、有機溶媒中に溶解含有されて構成される。また本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは0℃〜200℃であり、より好ましくは20℃〜60℃である。
【0064】
本発明の液晶配向剤を構成する有機溶媒としては、例えば、ポリアミック酸の合成反応に用いられるものとして例示した溶媒を挙げることができる。また、ポリアミック酸の合成反応の際に併用することができるものとして例示した貧溶媒も適宜選択して併用することができる。本発明の液晶配向剤に使用される特に好ましい有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを挙げることができる。これらは単独で使用することができ、または2種以上を混合して使用することができる。
【0065】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度は、粘性、揮発性などを考慮して選択される。好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる樹脂膜が形成されるが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この樹脂膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることが難しく、固形分濃度が10重量%を超える場合には、樹脂膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。なお、特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えば、スピンナー法による場合には1.5〜4.5重量%の範囲である。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲であり、それにより、溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲であり、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは0℃〜200℃、より好ましくは20℃〜60℃である。
【0066】
[液晶配向剤を用いた表示素子の製造]
本発明の垂直配向型液晶配向剤を用いた垂直配向型液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
【0067】
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの方法によって塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィンなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や予めマスクを用いる方法が用いられる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面と樹脂膜との接着性をさらに良好にするために、例えば官能性シラン含有化合物、官能性チタン含有化合物などを予め塗布することもできる。液晶配向剤塗布後塗布した配向剤の液垂れ防止等の目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。その後、溶剤を完全に除去し、ポリアミック酸を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。この焼成(ポストベーク)温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。このようにして、ポリアミック酸を含有する本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって液晶配向膜となる塗膜を形成し、さらに加熱することによって脱水閉環を進行させ、よりイミド化された液晶配向膜とすることもできる。形成される樹脂膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0068】
(2)上記のようにして垂直液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、2枚の基板を、間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成する透明基板側に、偏光板を配することにより、液晶表示素子が得られる。
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶としては、ネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができる。その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶や商品名「C−15」「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
また、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0069】
(3)なお、垂直配向性評価を行うために、上記(1)において形成された垂直配向型液晶配向膜を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を行ったのち、液晶表示素子を作成する。ラビング処理は、表面の垂直配向性を乱す効果があるので、ラビング後の液晶表示素子についてプレチルト角を測定した際に、本来の90°により近いプレチルト角を示すほど、良好な垂直配向性を有すると考えられる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例の各種測定は、下記の方法により行った。
【0071】
(1)電圧保持率の測定
60℃において液晶表示素子に5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、16.7マイクロ秒のスパンで印加した後、印加解除から16.7ミリ秒後の電圧保持率を測定した。
(2)輝度による残像評価
2組の液晶表示素子を準備し、そのうち一つは直流電圧1V(素子A)、もう一つは直流電圧5V(素子B)を室温にて2時間印加する。その後直流電圧2.5V印加において観測される素子Aと素子Bの輝度を256階調で表した際に、その輝度差が15以下のものを「残像良好」とした。
(3)垂直配向性評価
上記方法にて作製したラビング処理済みの垂直配向型液晶表示素子について、結晶回転角法によりプレチルト角を測定した際、プレチルト角が86°以上のものを垂直配向性「良好」、86°未満のものを垂直配向性「不良」とした。
(4)印刷性評価
粘度12〜25mPa・sec(固形分濃度6.0重量%〜8.0重量%)、溶剤組成が全溶剤量を100としてγ−ブチロラクトン:N−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=40:30:30(重量比)になるように調製した垂直配向型液晶配向剤を用いて、印刷法により塗布・焼成したのち、塗膜を目視により観察した。塗布膜について、ハジキや塗布ムラがないものを「良好」とした。
(5)イミド化重合体のイミド化率測定方法
イミド化重合体を室温で減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、テトラメチルシランを基準物質として室温で1H−NMRを測定し、下記式(ii)で示される式により求めた。
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100 −−−−−−(i)
:NH基のプロトン由来のピーク面積(10ppm)
:その他のプロトン由来のピーク面積
α :重合体の前駆体(ポリアミック酸)における、NH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合
(6)溶液粘度
重合体の溶液粘度(mPa・s)は、所定の溶媒を用い、所定の固形分濃度に希釈した溶液ついてE型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
【0072】
合成例1〜21
N−メチル−2−ピロリドンに、表1に示す組成で、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物(表中、「酸無水物」と表示)の順で加えて固形分濃度20重量%の溶液とし、60℃で4時間反応させて、ポリアミック酸重合体を得た。得られたポリアミック酸重合体に、ポリアック酸重合体の総量に対して表1に示す倍モル数のピリジンおよび無水酢酸を加えた後、110℃に加熱して4時間脱水閉環反応を行った。得られた溶液をジエチルエーテルで再沈殿させた後、回収、減圧乾燥することで、表1に示す溶液粘度、イミド化率のイミド化重合体である(A−1)〜(A−21)を得た。
【0073】
【表1】

【0074】
表1中、ジアミン化合物および酸無水物について、括弧内の数字は含有割合(モル比)を示し、表中の記号の意味は下記の通りである。
【0075】
<ジアミン化合物>
D−1:上記式(13)で表されるジアミン
D−2:上記式(16)で表されるジアミン
D−3:上記式(17)で表されるジアミン
D−4:上記式(20)で表されるジアミン
D−5:1,4−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン
D−6:1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン
D−7:メタキシレンジアミン
D−8:3,3’−(テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(プロピルアミン)
D−9:p−フェニレンジアミン
D−10:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
D−11:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
<テトラカルボン酸二無水物>
T−1:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
T−2:1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン
T−3:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
【0076】
実施例1
合成例1で得られたイミド化重合体(A−1)を、γ−ブチロラクトン/N−メチル−2−ピロリドン/ブチルセロソルブ混合溶液(重量比40/30/30)に溶解させて、ベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル(エポキシA)およびn−プロピルアミン(アミンA)をそれぞれ、重合体100重量部に対して20重量部および2重量部溶解させ、固形分濃度6.5重量%の溶液とした。この溶液を目視観察したところ、濁りなく透明な溶液あった。続いて孔径0.2μmのフィルターを用いて濾過し、本発明の膜形成用組成物を調製したのち、印刷性評価を実施したところ、塗膜にハジキや塗布ムラは見られず、良好な印刷性を有することを確認した。
次に、固形分濃度4重量%とした以外は上記と同様に、本発明の膜形成用組成物を調製した。
次に、厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、当該膜形成用組成物をスピンナーにより塗布し、200℃で60分間乾燥することで、乾燥膜厚0.08μmの被膜を形成した。
【0077】
次に、一対の透明電極/透明電極基板の上記液晶配向膜塗布基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間に、ネガ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を張り合わせ、液晶表示素子を作製した。得られた液晶表示素子に関して、電圧保持率を測定したところ99%以上であり、良好な電圧保持特性を示した。また輝度による残像評価を実施したところ、輝度差が12であり、良好な残像特性を示した。結果をまとめて表3に示す。
次に、一対の透明電極/透明電極基板の上記液晶配向膜塗布基板について、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.4mmでラビング処理を実施し、超純水中で1分間の超音波洗浄ののち、100℃クリーンオーブンで10分間乾燥した以外は上記と同様に、垂直配向性評価用の液晶表示素子を作製した。得られた液晶表示素子に関して、垂直配向性評価を実施したところ、87.0°と良好な垂直配向性が得られた。結果をまとめて表5に示す。
【0078】
実施例2〜61、比較例1〜4
下記表2、3に示す処方に従って、実施例1と同様に固形分濃度6.5%の膜形成用組成物を調製し、印刷性を評価した。また同様に固形分濃度4%の膜形成用組成物を調製し、液晶表示素子を作製した。そして、電圧保持率、輝度による残像評価、垂直配向性評価を実施した。結果を表2、3に併せて示す。
【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
表2および表3中、エポキシ含有化合物において、括弧内の数字は重合体100重量部に対する含有重量部を示し、表中の記号の意味は下記の通りである。
【0084】
<エポキシ含有化合物>
エポキシA:ベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル
エポキシB:2−n−ドデシルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル
エポキシC:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン
エポキシD:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2−ドデシル−4,4’−ジアミノベンゼン
また表2および表3中、アミン化合物において、括弧内の数字は重合体100重量部に対する含有重量部を示し、表中の記号の意味は下記の通りである。
【0085】
<アミン化合物>
アミンA:n−プロピルアミン
アミンB:4−メトキシベンジルアミン、
アミンC:p−エチルアニリン
アミンD:p−フェネチジン
アミンE:p−トリフルオロメトキシアニリン
アミンF:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I−1)で表されるアミック酸繰返し単位および下記式(I−2)で表されるイミド繰返し単位の少なくとも一方の繰返し単位からなる重合体と、下記式(II−1)および(II−2)のそれぞれで表される分子内に少なくとも2つのエポキシ基を含有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種のエポキシ含有化合物を、上記重合体100重量部に対して上記エポキシ含有化合物を1〜50重量部の割合で、含有することを特徴とする垂直配向型液晶配向剤。
【化1】

(ここで、Pはテトラカルボン酸二無水物に由来する四価の有機基を示しそしてQはジアミンに由来する二価の有機基を示す。)
【化2】

(ここで、Pはテトラカルボン酸二無水物に由来する四価の有機基を示しそしてQはジアミンに由来する二価の有機基を示す。)
【化3】

(ここで、aは2〜6の整数であり、bは1〜4の整数であり、Rはa価の芳香環を含有する有機基であり、Rはb価の芳香環を含有する有機基である。)
【請求項2】
上記エポキシ化合物が、下記式(III−1)および(III−2)のそれぞれで表されるエポキシ含有化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の垂直配向型液晶配向剤。
【化4】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のフッ素原子を有する一価の有機基である。)
【請求項3】
上記式(I−1)中のQの少なくとも1部および上記式(I−2)中のQの少なくとも1部が、下記式(IV−1)および(IV−2)のそれぞれで表される二価の有機基よりなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1もしくは2に記載の垂直配向型液晶配向剤。
【化5】

(ここで、Xは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基またはフェニレン基であり、Rは、炭素数10〜20のアルキル基、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する一価の有機基または炭素数6〜20のフッ素原子を有する一価の有機基であり、Rは、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する二価の有機基または炭素数5〜30のフッ素原子を有する二価の有機基であり、式(IV−2)中に複数存在するXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
上記式(I−1)中のPおよび上記式(I−2)中のPが、下記式(V−1)および(V−2)のそれぞれで示される四価の有機基よりなる群から選ばれる少なくとも一種を、全四価の有機基(P+P)に対して50モル%以上で含有する請求項1〜3のいずれかに記載の垂直配向型液晶配向剤。
【化6】

(ここで、Rは、水素原子または一価の有機基を示す。)
【請求項5】
上記重合体が上記式(I−1)で表されるアミック酸繰返し単位および上記式(I−2)で表されるイミド繰返し単位からなりそしてそれらの合計に対し該イミド繰返し単位が40モル%以上を占める請求項1〜4のいずれかに記載の垂直配向型液晶配向剤。
【請求項6】
下記式(VI−1)〜(VI−5)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種のアミン化合物を、上記重合体100重量部に対して0.1〜20重量部でさらに含有する請求項1〜5のいずれかに記載の垂直配向型液晶配向剤。
【化7】

(ここで、Xは、一価の有機基を示し、Xは、二価の有機基を示し、各分子中に複数存在するXおよびXは、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の垂直配向型液晶配向剤から形成される垂直配向型液晶配向膜を具備することを特徴とする、垂直配向型液晶表示素子。

【公開番号】特開2008−181102(P2008−181102A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323414(P2007−323414)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】