説明

型体と無機質硬化体の製造方法

【課題】寸法精度の良い無機質硬化体を得ることのできる型体を提供する。
【解決手段】無機質硬化性組成物5が充填される型体1Aであって、無機質硬化性組成物5の表面を形成するゴム弾性体からなる表面型11Aの周縁部に無機質硬化性組成物5の周縁部を形成する繊維強化樹脂からなる側面型21Aが設けられ、表面型11Aと側面型21Aとを当接させると共に側面型21Aを支持する金属製の枠体22Dが側面型21Aの周縁部に接合され、側面型21Aを形成する繊維強化樹脂に補強繊維としてガラス繊維もしくは炭素繊維が添加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料等に用いられる無機質硬化体の製造に用いる無機質硬化性組成物用の型体と無機質硬化体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セメントと水、又は、SiO2 ―Al2 3系無機質粉体とアルカリ金属珪酸塩水溶液のような無機質粉体とこの粉体に反応する液体とを混合した無機質硬化性組成物を型体に充填し、加熱硬化させて無機質硬化体からなるパネルを得る方法が一般に知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
この従来の方法に用いる型体1Eは、図7に示すようにゴム弾性体によって形成される表面型11Eの周縁部にゴム弾性体や樹脂によって形成された側面型21Eを設けたものである。
【特許文献1】特開2001−260119号公報
【特許文献2】特開2001−138314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した無機質硬化性組成物を充填する型体1Eのうち、側面型21Eを形成する材料にゴムを用いたものでは、側面型21E自体を寸法精度良く加工することができず、結果的に、寸法精度の良いパネルを得ることができないという問題がある。
【0005】
また、側面型21Eの材料が、ゴム又は樹脂である場合の両方に共通の課題として、無機質硬化性組成物を型体内で加熱硬化する際、熱膨張により側面型21Eの材料が膨張して寸法精度の良いパネルが得られないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、寸法精度の良い無機質硬化体を得ることのできる型体とその型体を使用した無機質硬化体の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、無機質硬化体となる無機質硬化性組成物が充填される型体であって、前記無機質硬化体の表面を形成するゴム弾性体からなる表面型の周縁部に前記無機質硬化体の周縁部を形成する繊維強化樹脂からなる側面型が設けられ、前記表面型と前記側面型とを当接させると共に前記側面型を支持する金属製の枠体が前記側面型の周縁部に接合され、前記側面型を形成する繊維強化樹脂に補強繊維としてガラス繊維もしくは炭素繊維が添加されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、無機質硬化性組成物を型体に充填して加熱する無機質硬化体の製造方法であって、前記無機質硬化性組成物を加熱硬化した後、前記金属製の枠体である外型から前記表面型と前記側面型からなる内型を取り出し、その後、その内型から無機質硬化体を取り出すことを特徴とする。
【0009】
さらに、前記無機質硬化性組成物をSiO2 ―Al2 3 系無機質粉体とこの無機質粉体と反応するアルカリ金属珪酸塩水溶液とを混合したものとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された本発明は、側面型を繊維強化樹脂から形成することにより、熱に対する寸法安定性に優れ、かつ寸法精度の良い側面型を成形することができる。
【0011】
このため、型体に充填した無機質硬化性組成物を加熱硬化する際、側面型の熱膨張による変形が最小限に抑えられ、寸法精度の良い無機質硬化体を形成することができると共に、無機質硬化体成形時のバリ取りや研削などの加工作業を減らすことができるので容易かつ短時間で無機質硬化体を製造することができる。
【0012】
また、繊維強化樹脂からなる側面型と金属製の枠体とを接合することにより、金属に比べて剛性の小さい繊維強化樹脂であっても金属製の枠体と支え合うことで、側面型の歪みを抑止することができる。
【0013】
さらに、側面型を形成する繊維強化樹脂に補強繊維としてガラス繊維もしくは炭素繊維を添加することにより、金属製の枠体と熱膨張率がほぼ一致する側面型を形成することができる。
【0014】
これにより、例えば加熱時の側面型と金属製の枠体の熱膨張率が大きく異なるために側面型が変形するという事態が生じないので、枠体と側面型とを剛接合して一体化することができる。
【0015】
また、表面型に当接する部分を繊維強化樹脂からなる高価な側面型にして、その側面型を支持する部分を金属製の安価な枠体にすることで、材料費等のコストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
まず、本実施の形態に係る型体に充填される無機質硬化性組成物について説明する。
【0018】
本実施の形態に係る無機質硬化性組成物に配合される無機質粉体(A)としては、SiO2 5〜85重量%とAl2 3 90〜10重量%のものが好適に使用される。このような粉体としては、フライアッシュ、メタカオリン、カオリン、ムライト、コランダム、アルミナ系研磨材を製造する際のダスト、粉砕焼成ボーキサイト等が使用できるが組成と粒度が適当であればこれらに限定されるものではない。
【0019】
また、容易に入手できるものは、不純物を含有するため、SiO2 とAl2 3 との合計が100重量%となっていないが、合成により合計が100重量%となるようにしてもよい。また、これらの粉体をそのまま用いてもよいが、活性化させるために、溶射処理、粉砕分級、機械的エネルギーの作用等の方法を用いてもよい。
【0020】
溶射処理する方法としては、セラミックコーティングに適用される溶射技術が応用される。その溶射技術は、好ましくは材料粉末が2000〜16000度の温度で溶融され、30〜800m/秒の速度で噴霧されるものであり、プラズマ溶射法、高エネルギーガス溶射法、アーク溶射法等が可能である。得られた粉体の比表面積は、0.1〜100m2 /gが好ましい。
【0021】
粉砕分級する方法としては公知の任意の方法が採用できる。つまり、粉砕の方法としてはジェットミル、ロールミル、ボールミル等による方法があげられる。また、分級の方法としては篩、比重、風力、湿式沈降等の方法があげられる。これらの手段は併用されてもよい。
【0022】
機械的エネルギーを作用させる方法としては、ボール媒体ミル、媒体撹拌型ミル、ローラミル等が使用され、作用させる機械的エネルギーは0.5kwh/kg〜30kwh/kgが好ましい。機械的エネルギーが小さいと粉体を活性化しにくく、大きいと装置への負荷が大きい。
【0023】
また、フライアッシュは、必要に応じて、焼成されたものでもよい。焼成温度が低すぎるとフライアッシュの黒色が残り、顔料等による着色が困難となり、高すぎるとアルカリ金属珪酸塩との反応性が低くなるので、400度〜1000度であることが好ましい。
【0024】
一方、本実施の形態に係る無機質硬化性組成物に配合されるアルカリ金属珪酸塩水溶液(液体(B))のアルカリ金属珪酸塩とは、M2 O・nSiO2 (M=K,Na,Liから選ばれる1種以上の金属)で表される塩であって、nの値は小さすぎると緻密な無機硬化体が得られず、大きすぎると水溶液の粘度が上昇し混合が困難になるので0.05〜8が好ましく、さらに好ましくは0.5〜2.5である。
【0025】
また、無機質硬化体を発泡体とするために、必要に応じて発泡剤が添加されてもよい。発泡剤としては過酸化物(過酸化水素、過酸化ソーダ、過酸化カリ、過ほう酸ソーダ等)、金属粉末(Mg,Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、Sn、Si、フェロシリコン)等が用いられる。発泡剤が多すぎると発泡ガスが過剰となり破泡して良好な発泡体が得られず、少なすぎると発泡倍率が小さすぎて発泡体の意味を失うので0.01〜10重量部であることが好ましい。
【0026】
尚、過酸化水素を発泡剤として用いるときは、安全性の面や安定した発泡のために水溶液として用いるのが好ましい。金属粉末を用いる場合は、安定した発泡を得るために、粒径が200μm以下であることが好ましい。
【0027】
また、発泡を均一にするために、必要に応じて発泡助剤が添加されてもよい。発泡助剤は発泡を均一に生じさせるものなら特に限定されず、たとえばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、アルミナ粉末等の多孔質粉体などがあげられる。これらは単独で使用されてもよいし、2種類以上のものが併用されてもよい。発泡助剤の量は多すぎると無機質硬化性組成物の粘度が上昇して良好な発泡が得られないので、上記無機質粉体(A)100重量部に対して10重量部以下が好ましい。
【0028】
さらに、無機質硬化体の強度等を改良するために、必要に応じて無機質充填材が添加されてもよい。無機質充填材は、水に溶解せず、アルカリ金属珪酸塩と反応しないものであれば特に限定されず、例えば珪砂、川砂、ジルコンサンド、結晶質アルミナ、岩石粉末、火山灰、シリカフラワー、シリカヒューム、ベントナイト、高炉スラグ等の混合セメント用混合材、セピオライト、ワラストナイト、マイカ等の天然鉱物、炭酸カルシウム、珪藻土等が挙げられる。
【0029】
これらは単独で添加されてもよいし、2種類以上併用されてもよい。上記無機質充填材は、平均粒径が小さすぎると組成物の粘度が上昇して無機質硬化性組成物の成形性が悪くなり、大きすぎると均一な無機質硬化体が得られないので0.01〜1000μmが好ましい。無機質充填材の量は多すぎると得られる無機質硬化体の強度が低下するので上記無機質粉体(A)100重量部に対して700重量部以下が好ましい。
【0030】
また、無機質硬化体を補強するために、必要に応じて補強繊維が添加されてもよい。補強繊維は、無機質硬化体に付与したい性能に応じ任意のものが使用できる。例えば、ビニロン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、鋼繊維などが使用できる。
【0031】
上記補強繊維の繊維径は、細すぎると混合時に再凝集し、交絡によりファイバーボールが形成されやすくなり、最終的に得られる無機質硬化体の強度は向上しない。また、太すぎたり短かすぎたりすると引張強度向上などの補強効果が小さい。また、長すぎると繊維の分散性及び配向性が低下して無機質硬化体の強度が改善されない。
【0032】
そのため、繊維径1〜500μm、繊維長1〜15mmが好ましい。上記補強繊維の添加量は多くなると繊維の分散性が低下するので、上記無機質粉体(A)100重量部に対して、10重量部以下が好ましい。
【0033】
さらに、無機質硬化体の軽量化を図る目的でシリカバルーン、パーライト、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、ガラスバルーン、発泡焼成粘土等の無機質発泡体、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン等の合成樹脂の発泡体、ポリ塩化ビニリデンバルーン、ポリアクリルバルーンなどが添加されてもよい。
【0034】
これらは単独で添加されてもよいし、2種類以上併用されてもよい。さらに必要に応じて、アルミナセメント、γ−アルミナ、溶射されたアルミナ、アルミン酸アルカリ金属塩又は水酸化アルミニウムを加えても良い。
【0035】
次に、本実施の形態に係る繊維強化樹脂からなる側面型について説明する。
【0036】
まず、繊維強化樹脂とは、一般にFRP(Fiber Reinforced Plastic)と呼ばれる繊維で強化された樹脂の事であり、樹脂の強度を向上させる以外に、熱膨張の小さい繊維を樹脂に混入させることで、成形体の熱寸法安定性を向上させる効果が得られる。
【0037】
成形法としてはハンドレイアップ法、RTM法(Regin Transfer Molding)などの方法が用いられるが、特にRTM法は本発明の目的の形状の成形品が、精度よく効率的に製造されるので好ましい。
【0038】
また、繊維強化樹脂に用いる材料は、一般に使用される不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、フェノール樹脂などが用いられる。
【0039】
補強繊維としては、寸法安定性を向上できるガラス繊維や炭素繊維が有効である。
【0040】
尚、繊維強化樹脂は、無機硬化体と付着しないように、内部離型剤を添加してもかまわない。また成形前に離型剤を塗布することも有効である。
【0041】
さらに、表面型の下に金属製や合成樹脂製等の表面が平坦な支持体を設けると、ゴム弾性体の表面型の変形が防げるので好ましい。表面型と支持体とは接着や粘着等により固着されていてもよいし、当接しているだけで簡単に分離可能となされていてもよい。
【0042】
さらに、本発明の型体には表面型を覆う蓋体を設けることもできる。また、表面型と側面型と蓋体とで形成される空間に無機質硬化性組成物を充満するよう構成して、型体を任意の角度で保持して無機質硬化性組成物を硬化できるようにしてもよい。
【0043】
以下、本実施の形態に係る型体と無機質硬化体の製造方法を実施例に基づいて説明する。
【0044】
まず、本実施例で使用した無機質硬化性組成物5を説明する。
【0045】
表1は無機質硬化性組成物5の配合を示すものである。
【0046】
【表1】

無機質粉体(A)としてSiO2 −Al2 3 系無機質粉体であるメタカオリンを使用した。このメタカオリンは、エンゲルハード社製の商品名SatintoneSP−33を三菱重工業社製ウルトラファインミル(ジルコニアボール直径10mm使用、ボール充填率85%、粉砕助剤としてトリエタノールアミン25%、エタノール75%の混合液をメタカオリンの0.6%添加)にて、3.3kW/kgのエネルギーで、3時間処理したものである。その他の粉体としては無機質充填材と補強繊維と発泡剤とを加えた。
【0047】
無機質充填材は、珪石粉とワラストナイトとを使用した。珪石粉は、住友セメント社製、ブレーン値5000cm2 /gのものであり、ワラストナイトは、WOLCHEM社製の商品名ケモリットA−60を使用した。
【0048】
また、補強繊維はビニロン繊維であり、クラレ社製の商品名RM182×3を使用した。発泡剤は金属珪素粉末(Si)200メッシュ(目の開き74μm)パス品である。
【0049】
さらに、アルカリ金属珪酸塩水溶液(B)は、珪酸カリウム水溶液であり、SiO2 /K2 O=1.4、濃度45重量%のものを使用した。この無機質反応性組成物で得られる無機質硬化体(パネル)は発泡体である。
【0050】
型体は図1〜4に示す型体1A〜1Dを使用した。型体1A〜1Dの内寸は、それぞれ幅900mm,長さ3000mm,深さ30mmであり、側面型は300mm間隔で打たれるボルトによって鉄製の枠体に固定される(図5を参照)。
【0051】
無機質硬化性組成物5は、各原料をそれぞれオムニミキサーに投入して15分間混合して調製した。また、無機質硬化体(パネル)5A〜5Dは、型体1A〜1Dに無機質硬化性組成物5を充填して、フッ素塗装した鋼板製の蓋体4を型枠2A〜2Dの上に載置固定し、蒸気吹き出しで85℃に温度調節した養生庫に設置し、5時間養生後取り出し、無機質硬化体であるパネルを型体脱型して製造した。そして、このパネルの外周端部の直線度を測定した。
【0052】
尚、直線度とはパネルの外周端部の直線状部分において、例えばバリ等が発生した場合にその直線状部分からのバリ等の突出量の大きさを測定した測定値(mm)である。
【0053】
以下、上記のように生成された無機質硬化性組成物5を充填する型体1A〜1Dについて実施例ごとに説明する。
【実施例1】
【0054】
図1は、実施例1に係る型体1Aの概略構成を示す断面図である。
【0055】
まず、構成から説明すると、図1に示す実施例1の型体1Aは、鉄製の金属板部(支持体)3と、無機質硬化性組成物5の表面を形成するEPDMゴム製の表面型11Aと、型枠2Aとから形成されている。
【0056】
この表面型11Aには、無機質硬化性組成物5が硬化した際にパネルの表面に凹凸模様を付与するための凸部11などが形成されている。
【0057】
また、型枠2Aは、表面型11Aの外周縁部に設けられ、パネル5Aの外周端部を形成する繊維強化樹脂からなる断面視矩形状の側面型21Aと、この側面型21Aの外周縁部に設けられた外型としての鉄製の枠体22Aとからなる。
【0058】
尚、側面型21Aを形成する樹脂材料には、補強繊維としてガラス繊維もしくは炭素繊維が添加されている。ところで、繊維補強のない樹脂を用いて側面型21Aを形成すると、加熱時の金属と線膨張率が大きく異なるため、樹脂部分が変形することとなる。
【0059】
また、断面視矩形状の枠体22Aは側面型21Aの外周縁部に当接するように接合されて側面型21Aを外周側から支持している。これにより、表面型11Aと側面型21Aの位置が固定され、無機質硬化性組成物5が充填される型の寸法が規制されることとなる。尚、枠体22Aは金属板部3の上に接着剤等により固定されている。
【0060】
さらに、側面型21Aには、図6(a)に示すようにその内部から枠体22Aと当接する面に跨って、雌ねじ部を有する筒状のヘリサート70Aが埋設されている。
【0061】
そして、鉄製の枠体22Aに形成された貫通孔22aに挿通されたボルト60Aがヘリサート70Aに螺合されることにより、側面枠21Aと枠体22Aとが剛接合される。
【0062】
尚、ボルト60Aの先端縁部には雄ねじ部60aが形成され、ヘリサート70Aの内周面に形成された雌ねじ部に螺合されるようになっている。
【0063】
一方、表面型11Aは、金属板部3の上に載置されており、この表面型11Aの外周面に当接するように側面型21Aが設けられている。
【0064】
また、表面型11Aは、もともと側面型21Aの内周よりも若干幅広く形成されており、この表面型11Aを収縮させることにより型体1Aの中に設置してある。そのため、表面型11Aと側面型21Aとの当接面は、表面型11Aのゴム弾性により塞がれている。
【0065】
従って、液状の無機質硬化性組成物5が当接面に侵入するのを防ぐことができ、成形体に大きなバリが形成されるのを防止することができる。
【0066】
また、表面型11Aと側面型21Aからなる内型と、金属板部3とは、それぞれ簡単に分離可能となされているので、型体1Aの清掃等のメンテナンスを各部材毎にできる。
【0067】
しかも、不具合の生じた部材だけを取り替えるだけで、型体1Aを有効に使用することができる。また、型体1Aの廃棄は、材質毎に分別して行うことができる。
【0068】
ところで、パネル5Aを成形する際、無機質硬化性組成物5を型体1Aに充填して加熱硬化した後、鉄製の枠体22Aである外型から表面型11Aと側面型21Aからなる内型を取り出し、その後、その内型から無機質硬化体であるパネル5Aを取り出すようになっている。
【実施例2】
【0069】
図2に示す実施例2の型体1Bは、EPDMゴム製の表面型11Bと鉄製の枠体22B(型枠2B)との間に繊維強化樹脂からなる断面視L字状の側面型21B(型枠2B)が設けられている。
【0070】
また、表面型11Bの外周縁部には、凸部11の頂部と同じ高さの側面型載置部23Bが設けられている。
【0071】
このように側面型載置部23Bを表面型11Bの外周縁部に形成しておくことで、表面型11Bの外周端部に凹凸形状を形成することなく、パネル5Bの外周端部の表面に凹凸形状を形成することができる。
【0072】
このため、例えば形状安定性の悪い表面型11Bの外周端部に凹凸形状を形成した場合に、無機質硬化性組成物5を充填時に外周端部の凹凸形状が崩れて、パネル5B成形時にバリが発生することを防止することができる。
【0073】
そして、この側面型載置部23Bの上に側面型21Bの張出部21aが載置され、その張出部21aの内周面21bと表面型11Bの凹部12の内面12aとが連続するようになっている。
【0074】
また、側面型21Bには、図6(b)に示すようにその内周面から枠体22Bと当接する面に渡って断面視T字状の孔21cが形成されている。
【0075】
この孔21cは、径の異なる2つの孔の軸方向を水平方向に連通することによって段状に形成されている。
【0076】
一方、枠体22Bには、側面型21Bの孔21cと水平方向において連通する孔22bが形成され、この孔22bは鉄製の枠体22Bの内部から側面型21Bと当接する面の間に渡って形成されている。
【0077】
そして、この孔22bと側面型21Bの孔21cに跨ってボルト60Bが嵌め込まれ、ボルト60Bの軸部60bの先端縁部に形成された雌ねじ部60cが、鉄製の枠体22Bの孔22bに螺合されている。これにより、側面枠21Bと枠体22Bとが剛接合される。
【0078】
尚、この実施例2の型体1Bの側面型21Bと枠体22Bの接合は、上記実施例1のようなヘリサートとボルトを用いた方法により固定することも可能である。
【0079】
ところで、側面枠21Bと枠体22Bとを接合するボルト60Bは、図5に示すように金属板部3上の側面枠21Bと枠体22Bの延伸方向に沿って複数打たれるようになっている。
【0080】
尚、上記した型体1Aと後述する型体1C、1Dにおいても同様に金属板部3上の側面型と枠体の延伸方向の複数個所においてボルトが打たれるようになっている。
【実施例3】
【0081】
図3に示す実施例3の型体1Cは、表面型11Cの外周縁部に形成された側面型載置部23Cの上に、繊維強化樹脂からなる断面視矩形状の側面型21C(型枠2C)が載置されている。この側面型載置部23Cは、凸部11の頂部と同じ高さを有している。
【0082】
また、側面型21Cの内周面21dは、表面型11Cの凹部12の内面12aと連続するようになっている。
【0083】
さらに、側面型21Cと表面型11Cとを外周側から支持する断面視矩形状の枠体22Cが、表面型11Cと側面型21Cの外周縁部に設けられている。
【0084】
また、側面型21Cには、図6(c)に示すようにその内部から枠体22Cと当接する面に跨って雌ねじ部を有する筒状のヘリサート70Cが埋設されている。
【0085】
そして、鉄製の枠体22Cに形成された貫通孔22cに挿通されたボルト60Cがヘリサート70Cに螺合される。これにより、側面枠21Cと枠体22Cとが剛接合される。
【0086】
この型体1Cの側面型21Cは、断面視矩形状の単純な形状で、かつ対称性を有しているので繊維強化樹脂によって容易に成形加工することができる。
【実施例4】
【0087】
図4に示す実施例4の型体1Dは、表面型11Dの外周縁部に形成された側面型載置部23Dと断面視矩形状の枠体22Dの上に、繊維強化樹脂からなる断面視矩形状の側面型21D(型枠2D)が載置されている。
【0088】
即ち、枠体22Dは側面型21Dの内周よりも若干小さく形成され、この枠体22Dの内周面22cから内側に張り出す側面型21Dの内周縁部21eは、側面型載置部23Dの上に載置されている。尚、側面型載置部23Dは、凸部11の頂部と同じ高さを有している。
【0089】
また、側面型21Dの内周縁部21eの内周面21fは、表面型11Dの凹部12の内面12aと連続するようになっている。
【0090】
さらに、この側面型21Dには、図6(d)に示すように枠体22Dと当接する下面から側面型21Dの上面に渡って、断面視T字状の孔21gが形成されている。
【0091】
一方、鉄製の枠体22Dの上縁部には、側面型21Dに形成された孔21gと鉛直方向に連通するように孔22dが形成されている。
【0092】
そして、この孔22dと側面型21Dの孔21gに跨ってボルト60Dが嵌め込まれ、ボルト60Dの雌ねじ部60eが枠体22Dの孔22dに螺合されている。これにより、側面型21Dと枠体22Dとが剛接合される。
【0093】
尚、この実施例4の型体1Dの側面型21Dと枠体22Dの接合は、上記実施例1のようなヘリサートとボルトを用いた方法により固定することも可能である。
【0094】
また、この型体1Dの側面型21Dは、矩形状断面の面積が大きく、幅広に形成されているため、枠体22Dとの取付けを容易に行うことができる。
【0095】
以上、実施例1〜4を説明してきたが、実際にパネルを成形する際には、パネルの意匠形状や型のサイズによって上記実施例1〜4の型体1A〜1Dの中から、最適な型体を選ぶようになっている。
【0096】
次に、実施例1〜4の型体1A〜1Dを用いてパネルを成形した際のパネルの外周端部の直線度の評価結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

実施例1〜4では、側面型21A〜21Dの材料としてガラス繊維補強不飽和ポリエステル(S)を用いた。
【0098】
また、側面型21A〜21Dを枠体22A〜22Dに固定する方法として、上記実施例1〜4で説明したボルトによる固定法と同じ方法を用いた。
【0099】
詳細には、側面型に4.5mm径と9mm径の2段の孔を開けて、3.5mm径の6角穴付ボルトをその孔に嵌め込み、鉄製の枠体にボルトを螺合する固定法(H)と、側面型に3.5mm径のヘリサートを埋め込み、鉄製の枠体に開けた4.5mm径の穴にボルトを通して側面型のヘリサートに螺合する固定法(J)のいずれか一方の方法を用いた。
【0100】
また、実施例5〜7は、実施例2の型体1Bを用いてパネルを成形した。
【0101】
ただし、実施例ごとに異なる材質の側面型を使用しており、その材料として炭素繊維補強不飽和ポリエステル(T)、若しくはガラス繊維補強エポキシアクリレート樹脂(U)、ガラス繊維補強不飽和ポリエステル(S)を用いた。
【0102】
側面型の材料に繊維強化樹脂を用いた実施例1〜7では、成形品であるパネルにバリの発生が少なく、外周端部の直線度が良好なパネルを得ることができた。
【0103】
一方、比較例1〜4では、上記実施例1〜4の型体1A〜1Dを用いてパネルを成形する例であるが、側面型の材料として繊維補強のされていないポリプロピレン(V)を用いた。
【0104】
また、比較例5、6では、上記実施例2の型体1Bを用いてパネルを成形した。ただし、比較例ごとに異なる材質の側面型を使用しており、その材料としてフッ素樹脂(W)若しくはシリコンゴム(X)(硬度80度)を用いた。
【0105】
繊維補強のされていない樹脂を用いた比較例1〜6では、全体的にバリの発生が多く、パネルの外周端部の直線度が良くなかった。
【0106】
特に比較例1では、側面型21Aの熱膨張によって表面型11Aと側面型21Aの間に隙間が生じて、パネル5Aに大きなバリが発生した。また、比較例4では成形時に側面型21Dの熱膨張によって蓋4と側面型21Dとの間に隙間が生じ、その隙間に無機質硬化性組成物5が入り込んでパネル5Dに大きなバリが発生した。
【0107】
このように構成された本発明は、側面型21A〜21Dを繊維強化樹脂から形成することにより、熱に対する寸法安定性に優れ、かつ寸法精度の良い側面型21A〜21Dを成形することができる。
【0108】
このため、型体1A〜1Dに充填した無機質硬化性組成物5を加熱硬化する際、側面型21A〜21Dの熱膨張による変形が最小限に抑えられ、寸法精度の良い無機質硬化体5A〜5Dを形成することができると共に、パネル成形時のバリ取りや研削などの加工作業を減らすことができるので、容易かつ短時間でパネルを製造することができる。
【0109】
また、繊維強化樹脂からなる側面型21A〜21Dと鉄製の枠体22A〜22Dとを接合するので、金属に比べて剛性の小さい繊維強化樹脂であっても金属製の枠体22A〜22Dと支え合うことで、側面型21A〜21Dの歪みを抑止することができる。
【0110】
さらに、側面型21A〜21Dを形成する繊維強化樹脂に補強繊維としてガラス繊維もしくは炭素繊維を添加することにより、金属製の枠体22A〜22Dと熱膨張率がほぼ一致する側面型21A〜21Dを形成することができる。
【0111】
これにより、例えば加熱時の側面型21A〜21Dと金属製の枠体22A〜22Dの熱膨張率が大きく異なるために側面型21A〜21Dが変形するという事態が生じないので、枠体22A〜22Dと側面型21A〜21Dとを剛接合して一体化することができる。
【0112】
また、表面型11A〜11Dに当接する部分を繊維強化樹脂からなる高価な側面型21A〜21Dにして、その側面型21A〜21Dを支持する部分を鉄製の安価な枠体22A〜22Dにすることで、材料費等のコストを抑えることができる。
【0113】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0114】
例えば、無機質硬化体5A〜5Dと直接接触する側面型21A〜21Dの部分(内周面21b、21d、21fなど)を、無機質硬化体5A〜5Dと付着性の低い樹脂から形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】実施例1に係る型体の概略構成を示す断面図である。
【図2】実施例2に係る型体の概略構成を示す断面図である。
【図3】実施例3に係る型体の概略構成を示す断面図である。
【図4】実施例4に係る型体の概略構成を示す断面図である。
【図5】実施例2に係る型体の概略構成を示す上面図である。
【図6】実施例1〜4に係る型体の側面型と枠体との接合状態を示す断面図であり、(a)は実施例1に係る側面型と枠体との接合状態であり、(b)は実施例2に係る側面型と枠体との接合状態であり、(c)は実施例3に係る側面型と枠体との接合状態であり、(d)は実施例4に係る側面型と枠体との接合状態である。
【図7】従来技術に係る型体の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0116】
1A〜1D 型体
5 無機質硬化性組成物
5A〜5D パネル(無機質硬化体)
11A〜11D 表面型(内型)
21A〜21D 側面型(内型)
22A〜22D 枠体(外型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質硬化体となる無機質硬化性組成物が充填される型体であって、
前記無機質硬化体の表面を形成するゴム弾性体からなる表面型の周縁部に前記無機質硬化体の周縁部を形成する繊維強化樹脂からなる側面型が設けられ、
前記表面型と前記側面型とを当接させると共に前記側面型を支持する金属製の枠体が前記側面型の周縁部に接合され、
前記側面型を形成する繊維強化樹脂に補強繊維としてガラス繊維もしくは炭素繊維が添加されていることを特徴とする型体。
【請求項2】
無機質硬化性組成物を請求項1に記載の型体に充填して加熱硬化した後、前記金属製の枠体である外型から前記表面型と前記側面型からなる内型を取り出し、その後、その内型から無機質硬化体を取り出すことを特徴とする無機質硬化体の製造方法。
【請求項3】
前記無機質硬化性組成物がSiO2 ―Al2 3 系無機質粉体とこの無機質粉体と反応するアルカリ金属珪酸塩水溶液とを混合したものであることを特徴とする請求項2に記載の無機質硬化体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−290316(P2007−290316A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123459(P2006−123459)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】