説明

型内被覆成形方法及び型内被覆成形用金型

【課題】 型内被覆成形において成形品の表面側から注入した塗料を側面から裏面側に周り込ませて塗装する場合でも、効果的に塗料の漏れを防止する技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係わる型内被覆成形用金型では、製品キャビティの金型割面に隣設した補助キャビティに突起部を配して金型開閉方向に伸びる壁部を形成するとともに、該壁部を形成する金型部分に対して、金型開閉方向に直交する方向に伸びる微小突起を成形するための溝部を形成した。本発明は、前述の構成により、成形時において金型を微小に開くことにより塗料を注入するための隙間を確保するとともに、微小突起が溝部から外れて金型のキャビティ面に強く押し付けられるので漏れを防止するためのシール部を形成する。従って、本発明によれば、樹脂成形品の表面側から注入した塗料を側面から裏面側に周り込んで広げて塗装する場合においても、塗料の漏れを効果的に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型内で樹脂成形品を成形した後、樹脂成形品を金型から取り出さないまま塗料によって被覆(塗装と称することもある)する型内被覆成形方法と型内被覆成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂成形品の表面を塗料で被覆して加飾する方法の一つとして、樹脂成形品の成形と被覆を同一の金型で行う型内被覆成形方法(インモールドコーティング方法と称されることもある)が知られている。
【0003】
熱可塑性樹脂を基材とする型内被覆成形方法の1例を、以下、簡略に説明する。
型内被覆成形方法においては、金型キャビティ内に樹脂を射出充填することによって、樹脂成形品を金型内で成形した後、該金型をわずかに開いた状態(金型微開)とする。
前記工程で金型をわずかに開くと、金型内で成形した樹脂成形品と金型キャビティ面との間に塗料を注入することのできる隙間が生じるので、該隙間に塗料注入機を使用して塗料を注入する。そして、塗料注入後に、金型を再度型締することにより樹脂成形品の表面に塗料を均一に拡張させて硬化させる。塗料が硬化した後に、金型を開いて塗料で被覆した樹脂成形品を金型より取り出す。
【0004】
前述した従来の型内被覆成形方法によれば、熱可塑性樹脂の成形と被覆を同一の金型内で行うことができるので、浮遊している塵が硬化する以前の被覆に付着して不良となる等といったことがほとんどなく、高い品質の型内被覆成形品を得ることができる。
なお、型内被覆成形方法については、近年、数多くの提案がなされており、又型内被覆成形方法に用いるに好適な金型として、様々な構造の金型が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−256088公報
【0006】
型内被覆成形に使用する金型としては、特許文献1に例を示めすような技術が公知である。特許文献1に開示された発明は、主キャビティを囲む割面の横に、溝部を加工した副キャビティを設けて、塗料注入の際に、金型外へ塗料が漏れだすことを防止しようとする技術である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献1に開示された従来技術は、副キャビティに形成した溝部で成形した樹脂部によって金型キャビティ部を強く挟み込んで塗料の漏れを防止する発明である。
しかしながら、前述した特許文献1の従来技術は、その構造上、樹脂成形品の表面側から注入した塗料を、側面から裏面側に流して塗装することが難しい。従って、そのような場合には、金型内に塗料注入機を複数個配する必要等があって、構造上、複雑なものにならざるを得なかった。
【0008】
また、従来技術は、樹脂成形品端末部の形状に制限を受ける可能性がある。例えば、樹脂成形品の端末部が玉縁形状となっているような場合においては表面側から注入した塗料を玉縁の側面から裏面側に流し込んで塗装する必要があるが、従来技術では、適応することが難しい。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、樹脂成形品の表面側から注入した塗料を側面から裏面側に周り込んで広げて塗装する場合においても、塗料の漏れを効果的に防止できる型内被覆成形方法と、それに使用するに好適な型内被覆成形用金型を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明による型内被覆成形方法は、
(1) 固定型と可動型の間で、製品キャビティと、該製品キャビティの金型割面に隣設して該製品キャビティを周りから囲むようにして配された補助キャビティとを形成し、
該補助キャビティの内部に突起部を配して金型開閉方向に伸びる壁部を形成するとともに、該壁部を形成する金型部分に金型開閉方向に直交する方向に伸びる微小突起を成形するための溝部を形成した型内被覆成形用金型を用いて、
該製品キャビティと補助キャビティに樹脂を充填した後、固定型と可動型の間を微開状態として、該製品キャビティに塗料を注入するための隙間を形成し、該隙間に塗料を注入することによって、樹脂成形品を被覆する。
【0011】
また、本発明による型内被覆成形用金型は、
(2) 製品キャビティ、並びに、該製品キャビティの金型割面に隣設して該製品キャビティを周りから囲むようにして配された補助キャビティ、を形成する固定型と可動型を備えるとともに、製品キャビティで成形した樹脂成形品の表面に被覆を施すための塗料注入機、並びに、該製品キャビティと補助キャビティに樹脂を充填するためのゲートを備えた型内被覆成形用金型であって、該補助キャビティの内部に突起部を配して、金型開閉方向に伸びる壁部を形成するとともに、該壁部を形成する金型部分に、金型開閉方向に直交する方向に伸びる微小突起を成形するための溝部を形成した。
【0012】
(3) (1)に記載の型内被覆成形用金型において、前記製品キャビティの端末部にアンダーカット形状を有する構成とした。
【0013】
(4) (2)又は(3)に記載の型内被覆成形用金型において、前記製品キャビティの端末部が玉縁形状の場合において、該玉縁形状の端末部を成形する製品キャビティの塗装境界部に、金型開閉方向に直交する方向に伸びる微小突起を成形するための溝部を形成した。
【0014】
(5) (2)から(4)に記載したいずれか1つの型内被覆成形用金型において、前記溝部を、金型を構成する金型ブロックの組み合わせ面で形成した。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、製品キャビティの金型割面に隣設した補助キャビティに突起部を配して、金型開閉方向に伸びる壁部を形成するとともに、該壁部を形成する金型部分に対して、金型開閉方向に直交する方向に伸びる微小突起を成形するための溝部を形成した。
成形時においては、金型を微小に開くことにより、塗料を注入するための隙間を確保するとともに、微小突起が溝部から外れて金型のキャビティ面に強く押し付けられて、塗料漏れを防止するためのシール部を形成する。
本発明は前述の構成により、樹脂成形品の表面側から注入した塗料を側面から裏面側に周り込んで広げて塗装する場合においても、塗料の漏れを効果的に防止できる。
【0016】
また、本発明であれば、製品キャビティの端末部にアンダーカット形状を有する場合や、製品キャビティの端末部が玉縁形状の場合においても、適用できる
【0017】
また、本発明において、前記溝部を金型を構成する金型ブロックの組み合わせ面で形成すれば、製作が容易で、メンテナンスしやすいという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係わり第1金型の全体構造について説明するための断面図である。
【図2】本実施形態に係わり第1金型のキャビティ構造を説明するための断面図である。
【図3】本実施形態に係わり樹脂挙動を説明するための概念図である。
【図4】本実施形態に係わり第1金型を使用した際のシール挙動を説明する図である。
【図5】本実施形態に係わり第2金型の構造について説明するための図である。
【図6】本実施形態に係わり第2金型のキャビティ構造を説明するための断面図である。
【図7】本実施形態に係わり第2金型を使用した際のシール挙動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明に係わる実施形態の好ましい例を説明する。
図1から図4は、本発明の実施形態に係わり第1の型内被覆成形用金型100(第1金型100と称することもある)を使用した場合を示している。
図1は第1金型100の構造を説明するための図であり(a)が型開状態を示し、(b)が型閉状態を示したものであって、図2は第1金型100のキャビティ構造の詳細を説明するための図である
図3は第1金型100を使用した際における金型内の樹脂の挙動を概念的に説明するための図であり(1)から(6)まで順次進行する工程を示す。
図4は第1金型100のシール部構造を説明するために樹脂の挙動を示した図であって(1)から(4)まで順次進行する工程を示す。
【0020】
また、図5から図7は、本発明の実施形態に係わり第2の型内被覆成形用金型200(第2金型200と称することもある)を使用した場合を示している。
図5は第2金型200の構造を説明するための図であり(a)が型開状態を示し、(b)が型閉状態を示したものであって、図6は第2金型200のキャビティ構造の詳細を説明するための図である。図7は第2金型200のシール部構造を説明するために樹脂の挙動を示した図であって(1)から(4)まで順次進行する工程の図を示す。
【0021】
なお、図5から図7までの図面で説明する第2金型200の構造について、第1金型100と類似の構造については、同一符号を使用する。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、第1金型100を使用した例を説明する。
図1及び図2を用いて第1金型100の構造を説明する。
本実施形態による金型100は、図1(a)及び(b)に示すように、可動型5と固定型3を備えており、可動型5と固定型3を組み合わせて閉じた際に、可動型5と固定型3の間に、樹脂成形品を成形するための製品キャビティ15が形成される。
そして、また、製品キャビティ15を形成する固定型3と可動型5の金型分割面である金型割面に隣設して製品キャビティ15の全周を周りから囲むようにして配置された補助キャビティ17が形成される。
図2に示すように、第1金型100の補助キャビティ17は、製品キャビティ15に対して、固定型3の金型ブロック3Bと、可動型5を構成する金型ブロック5Aとの嵌め合わせ部(嵌合部)を金型割面として、外周側から周りを囲むようにして隣設している。
なお、本実施形態による第1金型100においては、固定型3と可動型5の嵌合部を金型割面としたが、金型割面の形態はこれに限らないことは勿論であって、対向した金型面同士を押し当てる金型割面(所謂、フラットパーティング)等であっても勿論良い。
【0023】
ここで、金型同士の金型割面だけでは、樹脂成形の際に射出充填した樹脂の流通を遮断することができても、塗料のような液体を遮断してシールすることは一般的に難しい。
詳細は後述するが、第1金型100は、製品キャビティ15の金型割面を介して外部に漏れ出そうとする塗料の流れを、隣設した補助キャビティによって、遮断してシールするものである。
【0024】
また、前述したように第1金型100は、固定型3と可動型5とが組み合わされて、その内部に、所望の樹脂成形品を成形するために必要な製品キャビティ15を形成する構造となっているが、その製品キャビティ15で成形される樹脂成形品の形状は所謂、箱型と呼ばれるものであって、平板の端部全周に型開閉方向に伸びる玉縁が形成されている。
【0025】
そして、第1金型100においては、製品キャビティ15の端部に形成された玉縁から可動型5と固定型3の金型割面を介して、補助キャビティ17が隣設されている。
【0026】
ここで、第1金型100においては、図1及び図2に示すように補助キャビティ17の内部に、可動型5のキャビティ部分の一部として、金型ブロック5Aと金型ブロック5Aに取り付けられた金型ブロック5Bによって突起部が形成されている。
第1金型100は、補助キャビティ17の内部に突起部を配することにより、補助キャビティ17の断面形状をコの字型にすることで、金型開閉方向に伸びる壁部を形成(第1金型100においては2箇所)している。図2のA部拡大を見ると明らかなように、第1金型100においては、前述したコの字型の補助キャビティ17の中に、金型ブロック3A及び3Bで形成される固定型3側部分と、可動型5A及び5Bで形成される可動型部分との間で、金型開閉方向に伸びる壁部H1が形成されている。
なお、壁部H1の形状は、金型開閉方向に対して完全に一致する方向に伸びていなければならないという必要はなく、後述する微小突起を金型キャビティ部分に押し付けてシールするという本発明の効果が損なわれない程度に傾斜等しても良い。
【0027】
そして、壁部H1の一方の側の面を形成する金型ブロック3Aと金型ブロック3Bの組み合わせ面においては、金型ブロック3Bの端部がC面加工されることにより、略3角形の溝部が形成される形となっている。前記溝部は、その深さ方向が、金型開閉方向に対して直交する方向(図2においては上下方向)に伸びており、その長手方向は、製品キャビティ15の全周を周りから囲むようにして配置された補助キャビティ17の中に配された突起部に沿って形成される壁部H1に沿って伸びている。
【0028】
さらに、壁部H1の他方の側の面を形成する金型ブロック5Aと金型ブロック5Bの組み合わせ面においては、金型ブロック5Bの端部がC面加工されることにより、略3角形の溝部が形成される形となっている。
前記溝部は、その深さ方向が、金型開閉方向に対して直交する方向(図2においては上下方向)に伸びており、その長手方向は、製品キャビティ15の全周を周りから囲むようにして配置された補助キャビティ17の中に配された突起部に沿って伸びている。
【0029】
また、第1金型100では、壁部H1の片側の面を形成する金型ブロック5Bと金型ブロック5Aの組み合わせ面において金型ブロック5Bの端部をC面加工することにより溝部を形成しているので、金型ブロック5Bの両側に溝部が形成されている形状となっている。
【0030】
詳細は後述するが、第1金型100は、樹脂成形の際に、壁部H1の両側に形成した前述の溝部により、補助キャビティ17で成形した樹脂成形品に対して、金型開閉方向に直交する方向に伸びる微小突起を成形することによって、塗料注入工程の際に、製品キャビティ15に連通している金型割面を介して補助キャビティ17に流れ込んでくる塗料をシールすることが可能になる。
【0031】
なお、前述した第1金型100においては、溝部の断面形状が略3角形であって、その深さ方向について、金型開閉方向に対して直交する方向に伸びている。
しかし、本発明に適応できる溝部の形状が、これに限らないことは勿論であって、例えば、溝部の断面形状としては、正方形、長方形、台形、半円形、又、楕円形等であっても良く、その深さ方向についても、全体的に見て金型開閉方向に対して直交(略直交する方向も含む)する方向に伸びていれば良い。
【0032】
また、第1金型100においては、図1及び図2に示すように、製品キャビティ17について、塗料注入機50を配した側の金型キャビティ面に対して、対向する側の金型キャビティ面について、金型ブロック5Bと金型ブロック5Cを組み合わせて配し、その組み合わせ面において金型ブロック5Cの端部をC面加工することにより溝部を形成しており、金型ブロック5Cの全周に溝部が形成されている形状となっている。
【0033】
詳細は後述するが、第1金型100は、樹脂成形の際に、前記溝部によって、金型開閉方向に直交する方向に伸びる微小突起を成形することによって、塗料注入工程の際に、製品キャビティ15の塗料注入機50を配した側(第1金型100においては、固定型3側)から、製品キャビティ15の端部に形成した玉縁の側面を介して、玉縁の裏側に周りこむ塗料をシールすることが可能になる。
【0034】
なお、金型ブロック5Cの端部をC面加工して形成した溝部により微小突起を形成する位置は、塗料を被覆して塗装する部分と、塗装しない部分の境界になる。従って、金型ブロック5Bと5Cを組み合わせて溝部を形成する位置として、塗装境界部分形成する位置を選定すれば良い。
【0035】
また、第1金型100は、図1に示したように、固定型3の中に、ホットランナーと第1バルブゲート60A、並びに第2バルブゲート60Bを配する構造となっており、固定型3に射出ノズル60を当接させて、樹脂を射出することによって、前述したホットランナー、第1バルブゲート60A並びに第2バルブゲート60Bを使用して金型内に樹脂を供給することができるように構成されている。
なお、第1金型100は、製品キャビティ15に第1バルブゲート60Aを、補助キャビティ17に第2バルブゲート60Bを配しており、樹脂を充填する際に両方のバルブを別個に制御することができ、製品キャビティ15と補助キャビティ17について、樹脂の充填状態を細かに制御することが可能である。
【0036】
ここで、第1金型100は、樹脂成形品の表面片側から塗料を注入して被覆を施すことを目的として製作されている。なお、第1金型100は、後述する金型の微開時、及び金型の全開時に、図示しない係止機構により、樹脂成形品が可動型5に残る構成となっている。そのため、固定型3に、塗料注入機50が取り付けられており、塗料注入機50から製品キャビティ15に配された塗料注入ノズルを介して、製品キャビティ15内に塗料を注入することができるように構成されている。
【0037】
塗料注入機50は、図示しない駆動装置によって駆動されており、所望する量の塗料を正確に、製品キャビティ15内に注入することができるように構成されており、後述する型内被覆成形の際には、型内に塗料を注入して、樹脂成形品の被覆が可能である。
【0038】
以下、第1金型100を用いた型内被覆成形方法について説明する。
まず、図示しない射出成形機の型締装置に、図3(1)に示すように取り付けられた可動型5と固定型3を、図3(2)に示したように組み合わせて型閉及び型締めして、製品キャビティ15、補助キャビティ17を形成する。なお、この際に製品キャビティ15と補助キャビティ17は、金型割面を介して隣設している。
【0039】
次に、図3(3)に示すように、射出ノズル60から第1バルブゲート60A及び第2バルブゲート60Bを介して、基材である熱可塑性樹脂(本実施形態においては基材としてABS樹脂を使用した)を、それぞれ製品キャビティ15並びに補助キャビティ17内に射出する。そして、樹脂の射出充填完了後、可動型5をわずかに移動させて、金型100が微小に開いた状態(微開)となるように調整する。
第1金型100が微開すると、成形された樹脂成形品は、固定型3と樹脂成形品の間には、図3(4)に示すような塗料を注入するためのスペースとして、塗料注入隙間が形成される。
【0040】
なお、この際に、前述した金型の溝部に充填されていた樹脂は硬化して微小突起を形成しており、金型の微小型開きによって、微小突起は溝部から外れる方向に移動しようとする。しかし、前述した溝部は、その深さ方向が、金型開閉方向に対して直交する方向に伸びている。そのため、金型の微開動作によって、微小突起が溝部から外れることにより、微小突起自体がつぶれながら金型キャビティ面に強く押し付けられた状態となる。
従って、補助キャビティ17に充填した樹脂が、熱収縮して金型キャビティ面との間にわずかな隙間を形成したとしても、その隙間を微小突起が塞いでシール部を形成する。
【0041】
図4に金型微開した時のシール挙動を示す。図4(2)で第1金型100に充填した樹脂Jは微小突起となって、金型の微開動作により、溝部から外れる方向に移動して、シール部を形成する。
図4(3)に、シール部の配置を示す。前述した壁部H1の両側に形成した溝部によって成形された微小突起によってシール部S2、及びシール部S3を形成している。また、前述した金型ブロック5CのC面加工により形成した溝部によって成形された微小突起によってシール部S1を形成している。
【0042】
シール部S1、S2及びS3が形成された状態で、図3(5)に示したように、塗料注入機50から製品キャビティ15の塗料注入隙間内に塗料を注入する。
この際に、前述したシール部S2及びシール部S3は、その長手方向について、製品キャビティ15の全周を周りから囲むようにして配置された補助キャビティ17の中に配された突起部に沿って形成された壁部H1に沿って伸びている。従って、塗料注入の工程の際に、製品キャビティ15に連通している金型割面の全周を介して、補助キャビティ17に流れ込んでくる塗料をシールできる。
【0043】
また、シール部S1は、図1及び図2に示すように、金型ブロック5Cの全周に形成されているので、塗料注入工程の際に、製品キャビティ15の塗料注入機50を配した側から、製品キャビティ15の端部に形成した玉縁の側面を介して、玉縁の裏側に周りこむ塗料をシールできる。
【0044】
なお、第1金型100においては、玉縁の裏側(第1金型100においては可動型5側)の略半分程度まで塗装することを目的として、その位置を塗装境界線として微小突起が形成されるように、金型ブロック5Aと金型ブロック5Cの位置を調整して、シール部S3を形成した。
【0045】
本実施形態では、その後、図3(6)に示すように、塗料を硬化させて、樹脂成形品Jを塗料で被覆した後、被覆した樹脂成形品Jを、製品として第1金型100から取り出す。
【0046】
本実施形態によれば、例え、製品キャビティの端末部が玉縁形状の場合等であっても、成形時において、金型を微小に開くことにより、塗料漏れを防止するためのシール部ができる。また、従来技術では難しかった樹脂成形品の表面から注入した塗料を、樹脂成形品の側面を介して裏側にまで流すことができるようになり、1台の塗料注入機で樹脂成形品の表面と裏面の両方を塗装することが可能になり、また、アンダーカットの樹脂成形品であっても塗装することが可能になった。
なお、第1金型100のように、製品キャビティ15と補助キャビティ17を近づければ、金型割面に侵入した塗料も、樹脂成形品と同時に金型から取り出しやすくなる。
【0047】
以上、第1金型100を使用して成形を行った場合を説明したが、本発明に適応できる金型が第1金型100に限らないことは勿論であって、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で他の形態を適用することは可能であり、例えば、図5に示すような、第2金型200を使用して本発明を適応することが可能である。
【0048】
図5に示す第2金型100は、従来型の樹脂のシール技術と、本発明によるシール技術を1つの金型に同時に採用した例を示しており、塗料注入工程の際に、シール部S2A及びS3Aによって、製品キャビティ15に連通している金型割面を介して補助キャビティ17に流れ込んでくる塗料をシールするとともに、シール部S1Aにより成形した樹脂部によって金型キャビティ部を強く挟み込むことにより、製品キャビティ15の塗料注入機50を配した側(第2金型200においては、固定型3側)から、製品キャビティ15の端部に形成した玉縁の側面を介して、玉縁の裏側に周りこむ塗料の漏れを防止する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の適応範囲は特に限定されないが、自動車部品、或いは家電品等において使用される樹脂の表面を塗料で被覆した型内被覆成形品において、特に好ましく適用できる。
【符号の説明】
【0050】
3 固定型
3A 固定型構成金型ブロック(基礎部分)
3B 固定型構成金型ブロック(突起部溝形成部分)
5 可動型
5A 可動型構成金型ブロック(基礎部分)
5B 可動型構成金型ブロック(突起部溝形成部分)
5C 可動型構成金型ブロック(玉縁部溝形成部分)
15 製品キャビティ
17 補助キャビティ
50 塗料注入機
60 射出ノズル
60A 第1バルブゲート
60B 第2バルブゲート
100 第1の型内被覆成形用金型(第1金型)
200 第2の型内被覆成形用金型(第2金型)
J 樹脂
T 塗料
H1 壁部
S1 シール部(金型ブロック5C溝部)
S2 シール部(金型ブロック3B溝部)
S3 シール部(金型ブロック5B溝部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と可動型の間で、製品キャビティと、該製品キャビティの金型割面に隣設して該製品キャビティを周りから囲むようにして配された補助キャビティとを形成し、
該補助キャビティの内部に突起部を配して金型開閉方向に伸びる壁部を形成するとともに、該壁部を形成する金型部分に金型開閉方向に直交する方向に伸びる微小突起を成形するための溝部を形成した型内被覆成形用金型を用いて、
該製品キャビティと補助キャビティに樹脂を充填した後、固定型と可動型の間を微開状態として、該製品キャビティに塗料を注入するための隙間を形成し、該隙間に塗料を注入することによって、樹脂成形品を被覆することを特徴とした型内被覆成形方法。
【請求項2】
製品キャビティ、並びに、該製品キャビティの金型割面に隣設して該製品キャビティを周りから囲むようにして配された補助キャビティ、を形成する固定型と可動型を備えるとともに、
製品キャビティで成形した樹脂成形品の表面に被覆を施すための塗料注入機、並びに、該製品キャビティと補助キャビティに樹脂を充填するためのゲートを備えた型内被覆成形用金型であって、
該補助キャビティの内部に突起部を配して、金型開閉方向に伸びる壁部を形成するとともに、
該壁部を形成する金型部分に、金型開閉方向に直交する方向に伸びる微小突起を成形するための溝部を形成した型内被覆成形用金型。
【請求項3】
前記製品キャビティの端末部にアンダーカット形状を有する請求項3に記載の型内被覆成形用金型。
【請求項4】
前記製品キャビティの端末部が玉縁形状の場合において、該玉縁形状の端末部を成形する製品キャビティの塗装境界部に、金型開閉方向に直交する方向に伸びる微小突起を成形するための溝部を形成した請求項2又は請求項3に記載の型内被覆成形用金型。
【請求項5】
前記溝部を、金型を構成する金型ブロックの組み合わせ面で形成した請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の型内被覆成形用金型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−196928(P2012−196928A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63997(P2011−63997)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】