説明

培養器および滅菌器用2ガス製造装置、並びに培養器および滅菌器用2ガス供給システム

【課題】一連のバイオ処理操作で相前後して使用される培養器と滅菌器に対し、合理的な設備構成であって、また、使用ガスの連続供給ができて量的管理の煩雑さも解消することが可能な培養器および滅菌器用2ガス製造装置、並びに培養器および滅菌器用2ガス供給システムを提供する。
【解決手段】培養器2に接続され、炭素分を含む燃料を燃焼して二酸化炭素ガスを生成する燃焼部3と、滅菌器4に接続され、二酸化炭素ガスの生成と同時に燃焼部3の燃焼熱で水を加熱して、水蒸気を生成する水蒸気生成部5とを一体的に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一連のバイオ処理操作で相前後して使用される培養器と滅菌器に対し、合理的な設備構成であって、また、使用ガスの連続供給ができて量的管理の煩雑さも解消することが可能な培養器および滅菌器用2ガス製造装置、並びに培養器および滅菌器用2ガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
顕著な成長を遂げているバイオ技術にあっては、例えば、遺伝子組み換えした動植物の細胞を培養増殖させて目的とする特殊なタンパク質を得たり、人の幹細胞を増殖して移植用組織にしたりできるようになってきている。この種の培養増殖プロセスの最初の段階では、滅菌過程が必須であり、また培養増殖過程では、二酸化炭素を使用する場合がある(特許文献1または2参照)。
【0003】
滅菌とは、環境中に存在する微生物を死滅させることで、細菌を初めとして、ウイルスやリケッチア、マクロファージなどのウイロイド、そしてまた種子・胞子までも除去する必要がある。滅菌操作には、紫外線や過酸化水素水、低温プラズマ、電磁波を利用するものの他、一般によく用いられるものとして、高圧の過熱蒸気がある。この高圧の過熱蒸気を利用し、実験や生産を開始する前に、器具や容器などをオートクレーブの滅菌器内で滅菌処理し、目的物以外のものの増殖を防いでいる。
【0004】
滅菌処理が完了した後、例えば細胞培養の場合には、細胞をガラス製やプラスチック製の容器に、培養液(培地)とともに移し、二酸化炭素を所定量添加しながら、所定の温度に保ったインキュベータの培養器にて静置すると、細胞分裂して増殖する。培養が終わると、コラゲナーゼなどで細胞を容器から剥がし、集めてから、次の工程へと移す。培養液や容器などは、滅菌処理され、廃棄もしくは再使用される。
【0005】
従来は図3に示すように、過熱蒸気を用いるオートクレーブ51と二酸化炭素を用いるインキュベータ52とは、個別の装置として取り扱われている。それは、取り扱うガスそのものが異なり、また温度条件や圧力条件も異なることから、個々に独立した装置として設計製作されるからである。オートクレーブ51は、連続的に水が供給される給水部53と、電気式の加熱装置54と、滅菌器55と、圧力弁56とから主に構成されている。滅菌対象物として、高温かつ酸化雰囲気で変質しない容器や器具、一部培養液を、滅菌器に入れた後、給水部53より水を加熱装置54に供給し、120℃以上になるまで加圧加熱する。圧力弁56は、設定圧力以上になると自動的に開き、これにより、滅菌器55内の圧力・温度をほぼ一定に保つ。所定時間経過後、滅菌処理は完了し、空気で復圧後、滅菌器55から滅菌対象物を取り出すようにしている。
【0006】
インキュベータ52は、炭酸ボンベ57と、冷凍機チラー58と、培養器59とから主に構成されている。培養器59には、グローブボックス内などで、オートクレーブ51により滅菌した容器内に、細胞と培養液を詰めて蓋をしたものが入れられる。そして、炭酸ボンベ57を開き、冷凍機チラー58で水分などの不純物を除去した上で、二酸化炭素が所定濃度で培養器59に導入され、これにより、所定温度に保たれた培養器59内にて細胞の培養が行われるようになっている。
【特許文献1】特開平3−98568号公報
【特許文献2】特開平11−225751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来にあっては、一連のバイオ処理操作に必要な装置として相前後して用いられ、比較的近隣に設置される滅菌器55を含むオートクレーブ51と、培養器59を含むインキュベータ52とが別々の独立した装置として設置され、別々に取り扱われていて、装置設備として合理性に欠けるという課題があった。また、連続的な給水が可能なオートクレーブ51の給水部53とは異なり、インキュベータ52での二酸化炭素の供給に、容量が限定されたボンベ57を用いていて、使用量の管理が煩雑であり、また実験・製造中にボンベ57が空になると、当該実験等に失敗するなど、支障をきたすおそれがあった。
【0008】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、一連のバイオ処理操作で相前後して使用される培養器と滅菌器に対し、合理的な設備構成であって、また、使用ガスの連続供給ができて量的管理の煩雑さも解消することが可能な培養器および滅菌器用2ガス製造装置、並びに培養器および滅菌器用2ガス供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる培養器および滅菌器用2ガス製造装置は、培養器に接続され、炭素分を含む燃料を燃焼して二酸化炭素ガスを生成する燃焼部と、滅菌器に接続され、二酸化炭素ガスの生成と同時に上記燃焼部の燃焼熱で水を加熱して、水蒸気を生成する水蒸気生成部とを一体的に備えることを特徴とする。
【0010】
本発明にかかる培養器および滅菌器用2ガス供給システムは、炭素分を含む燃料を燃焼して、培養器に供給するための二酸化炭素ガスを生成する燃焼部、並びに二酸化炭素ガスの生成と同時に上記燃焼部の燃焼熱で水を加熱して、滅菌器に供給するための水蒸気を生成する水蒸気生成部とを一体的に備える培養器および滅菌器用2ガス製造装置と、該2ガス製造装置の上記水蒸気生成部に接続され、水蒸気を上記滅菌器へ供給する水蒸気供給系と、上記2ガス製造装置の上記燃焼部に接続され、二酸化炭素ガスを上記培養器へ供給するガス供給系と、該ガス供給系に設けられ、上記燃焼部から供給される二酸化炭素ガスを含む燃焼後ガスを冷却するクーラと、上記ガス供給系に設けられ、上記クーラから供給される二酸化炭素ガスを脱水乾燥するチラーとを備えたことを特徴とする。
【0011】
前記ガス供給系に二酸化炭素ガスリザーブタンクを設けたことを特徴とする。
【0012】
前記二酸化炭素ガスリザーブタンクの出口側に、二酸化炭素ガス用開閉バルブを設けるとともに、前記培養器の操作信号を検出して、該二酸化炭素ガス用開閉バルブへ制御信号を出力する二酸化炭素ガス供給コントローラを備えたことを特徴とする。
【0013】
前記クーラは、前記水蒸気供給系と接続され、水蒸気と二酸化炭素ガスとの間で熱交換する熱交換器であることを特徴とする。
【0014】
前記チラーに代えて、湿式除湿機を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる培養器および滅菌器用2ガス製造装置、並びに培養器および滅菌器用2ガス供給システムにあっては、一連のバイオ処理操作で相前後して使用される培養器と滅菌器に対し、合理的な設備構成であって、また、使用ガスの連続供給ができて量的管理の煩雑さも解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる培養器および滅菌器用2ガス製造装置、並びに培養器および滅菌器用2ガス供給システムの第1実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。第1実施形態にかかる培養器および滅菌器用2ガス製造装置1は基本的には、図1に示すように、培養器2に接続され、炭素分を含む燃料を燃焼して二酸化炭素ガスを生成する燃焼部3と、滅菌器4に接続され、二酸化炭素ガスの生成と同時に燃焼部3の燃焼熱で水を加熱して、水蒸気を生成する水蒸気生成部5とを一体的に備えて構成される。
【0017】
また、本実施形態にかかる培養器および滅菌器用2ガス供給システム6は基本的には、培養器および滅菌器用2ガス製造装置1と、2ガス製造装置1の水蒸気生成部5に接続され、水蒸気を滅菌器4へ供給する水蒸気供給系7と、2ガス製造装置1の燃焼部3に接続され、二酸化炭素ガスを培養器2へ供給するガス供給系8と、ガス供給系8に設けられ、燃焼部3から供給される二酸化炭素ガスを含む燃焼後ガスを冷却するクーラとしての熱交換器9と、ガス供給系8に設けられ、熱交換器9から供給される二酸化炭素ガスを脱水乾燥するチラー10とを備えて構成される。
【0018】
本実施形態にあっては、2ガス製造装置1はボイラで構成される。ボイラは周知のように、燃焼部3と、給水を水蒸気に変換する水蒸気生成部5とを一体的に備える。図示例にあっては、中空筒体状に形成された燃焼部3の外周りに、水蒸気生成部5が中空環状に形成されて、両者が一体的に構成されている。
【0019】
ボイラの燃焼部3には、バーナユニット11が設けられる。バーナユニット11には、ガス状もしくは液体状の炭素分を含む燃料をバーナユニット11に向けて供給するための燃料供給ポート12と、燃料供給ポート12をバーナユニット11に接続して燃料を供給する燃料配管13と、燃料配管13の途中に設けられ、燃料をろ過してゴミや塵埃、微生物を除去するフィルタ14とを備える燃料供給系15が接続される。また、バーナユニット11には、燃焼用空気を取り込むためのブロア16と、ブロア16をバーナユニット11に接続して空気を供給する空気配管17と、空気配管17の途中に設けられ、空気からゴミや塵埃、微生物を除去するフィルタ18とを備える空気供給系19が接続される。
【0020】
そしてバーナユニット11は、燃料供給系15および空気供給系19それぞれから供給される燃料および空気を混合し、図示しない着火源によって着火されて燃焼動作を行う。バーナユニット11の燃焼動作により、燃焼部3内では、燃焼熱でその内部雰囲気が昇温すると同時に、二酸化炭素ガスを含む排気ガスが生成される。燃焼部3には、生成された二酸化炭素ガスを含む燃焼後ガスを排ガスとして排出する排気口20が設けられ、この排気口20は、後述する設備を介して培養器2に接続される。
【0021】
他方、ボイラの水蒸気生成部5には、高圧の給水を水蒸気生成部5に向けて送り込むための給水ポート21と、給水ポート21を水蒸気生成部5に接続して給水する給水管22とを備える給水系23が接続される。そして水蒸気生成部5では、給水系23からの高圧な給水が燃焼部3の燃焼熱で加熱されて、燃焼部3での二酸化炭素ガスの生成と同時に、水蒸気に変換される。水蒸気生成部5には、生成された水蒸気を取り出す取り出し口24が設けられ、この取り出し口24は、後述する設備を介して滅菌器4に接続される。
【0022】
燃焼部3の排気口20には、生成された二酸化炭素ガスを含む排ガスを培養器2に向かって供給するガス供給系8が接続される。このガス供給系8には、排ガスの流れ方向に沿って、排気口20から排出される排ガスを冷却する熱交換器9と、熱交換器9から供給される排ガスを脱水乾燥し、排ガス中から水蒸気などの不純物を除去して、ガス供給系8に流通するガス成分を乾燥状態の二酸化炭素ガスと窒素ガスのみにする冷凍用のチラー10とが順次設けられる。熱交換器9には、水蒸気供給系7が接続され、二酸化炭素ガスを含む排ガスは、水蒸気供給系7を流通する水蒸気との熱交換によって冷却される。換言すれば、水蒸気は排ガスによって加熱される。これにより、単一装置であるボイラとして一体化された燃焼部3および水蒸気生成部5それぞれから供給される二酸化炭素ガスを含む排ガスと水蒸気とを、熱効率よく加熱・冷却することができる。
【0023】
ガス供給系8には、チラー10と培養器2との間に配置して、二酸化炭素ガスリザーブタンク25が設けられるとともに、二酸化炭素ガスリザーブタンク25の出口側には、培養器2との間に二酸化炭素ガス用開閉バルブ26が設けられる。二酸化炭素ガスリザーブタンク25は、培養器2での二酸化炭素ガスの消費に応じていつでも当該二酸化炭素ガスを培養器2へ供給できるように、チラー10から供給される二酸化炭素ガス等を貯留する。二酸化炭素ガスリザーブタンク25には、その内圧を予め設定された一定圧力に維持するリリーフバルブ27が設けられる。
【0024】
二酸化炭素ガス用開閉バルブ26は、培養器2における培養操作の起動・停止や濃度調整操作、使用量の操作信号を検出する二酸化炭素ガス供給コントローラ28から出力される制御信号によって開閉作動されて、二酸化炭素ガスリザーブタンク25から培養器2へ二酸化炭素ガスを供給し、またその供給を停止するようになっている。また、培養器2には、内部温度を検出する温度センサ29と、培養器2内温度を昇温するヒータ30とが設けられ、温度センサ29からの制御信号に従ってヒータ30により培養器2内温度を調整できるようになっている。
【0025】
水蒸気生成部5の取り出し口24には、生成された水蒸気を滅菌器4に向かって供給する水蒸気供給系7が接続される。この水蒸気供給系7には、水蒸気の流れ方向に沿って、取り出し口24から供給される水蒸気を貯留する水蒸気リザーブタンク31と、水蒸気リザーブタンク31の出口側の水蒸気用開閉バルブ32と、水蒸気と排ガスとの間で熱交換する熱交換器9と、水蒸気を加熱するマイクロ波加熱器などのヒータ33と、滅菌器4へ供給される水蒸気圧を昇圧する昇圧ポンプ34とが順次設けられる。水蒸気リザーブタンク31は、滅菌器4での水蒸気の消費に応じていつでも当該水蒸気を滅菌器4へ供給できるように、水蒸気生成部5から供給される水蒸気を貯留する。水蒸気リザーブタンク31には、その内圧を予め設定された一定圧力に維持するリリーフバルブ35と、ドレンを排出するドレンバルブ36とが設けられる。
【0026】
水蒸気用開閉バルブ32は、滅菌器4における滅菌操作の起動・停止や使用量の操作信号を検出する水蒸気供給コントローラ37から出力される制御信号によって開閉作動されて、水蒸気リザーブタンク31から滅菌器4へ水蒸気を供給し、またその供給を停止するようになっている。水蒸気用開閉バルブ32の配置は、熱交換器9のレイアウトとの関係で、熱交換器9の後段にすると、水蒸気供給系7内に滞留することとなる水蒸気の結露によるドレン発生が憂慮されることから、熱交換器9の前段に設定することが好ましい。ヒータ33は、滅菌器4内の温度を検出する温度センサ38から出力される制御信号によって作動されて、水蒸気温度を調節する。昇圧ポンプ34は、滅菌器4内の圧力を検出する圧力センサ39から出力される制御信号によって作動されて、水蒸気の圧送圧力を調節する。
【0027】
図2には、本発明にかかる培養器および滅菌器用2ガス供給システム6の第2実施形態が示されている。第1実施形態と異なる点は、チラー10に代えて、湿式除湿機40を用いたことにあり、その他の構成は第1実施形態と同様である。湿式除湿機40は主に、熱交換器9を介して燃焼部3の排気口20に接続され、排ガスが導入されるとともに、例えば塩化リチウム溶液や炭酸カルシウム溶液などの吸湿剤が貯留される貯槽41と、貯槽41に連設されるとともに二酸化炭素ガスリザーブタンク25に接続され、吸湿剤を排ガスと接触させる機能を有するエリミネータ42と、貯槽41から吸湿剤を導出するポンプ43と、ポンプ43から供給される吸湿剤をろ過するフィルタ44と、フィルタ44から供給される吸湿剤をエリミネータ42に向けて滴下させる分配器45とから構成される。エリミネータ42に滴下された吸湿剤は貯槽41に回収される。
【0028】
そして湿式除湿機40では、吸湿剤をポンプ43によって貯槽41からエリミネータ42にわたって循環供給し、エリミネータ42を通過する排ガスを吸湿剤と気液接触させることにより、排ガス中に含まれる不純物としての水蒸気やその他の塵埃を除去しつつ、排ガスを乾燥するようになっている。
【0029】
次に、以上の実施形態にかかる培養器および滅菌器用2ガス製造装置1、並びに培養器および滅菌器用2ガス供給システム6の作用について説明する。燃料供給系15および空気供給系19から燃料および空気をバーナユニット11に供給してこれらを混合し着火して当該バーナユニット11の燃焼運転を開始し、また給水系23から水蒸気生成部5へ給水を開始してボイラの運転を開始すると、燃焼部3ではバーナユニット11の運転に応じて連続的に二酸化炭素ガスを含む排ガスが生成され、また水蒸気生成部5では給水系23からの給水の継続に従って、二酸化炭素ガスの生成と同時に水蒸気が生成される。基本的に、水蒸気は、水蒸気供給系7を介して滅菌器4に供給されるとともに、余剰分は水蒸気リザーブタンク31に貯留される。同様に、二酸化炭素ガスを含む排ガスは、培養器2へ向かってガス供給系8に流通される。
【0030】
ガス供給系8では、熱交換器9で水蒸気と熱交換して排ガスを冷却する。冷却された排ガスは、チラー10もしくは湿式除湿機40により、水蒸気などの不純物が除去されて乾燥状態の二酸化炭素ガスおよび窒素ガスとされる。これら二酸化炭素ガス等は、ガス供給系8を介して培養器2に供給されるとともに、余剰分は二酸化炭素ガスリザーブタンク25に貯留される。また水蒸気や二酸化炭素ガスは滅菌器4や培養器2へ適宜なタイミングで供給することができる。すなわち、培養器2や滅菌器4の起動・停止や、二酸化炭素ガスあるいは水蒸気の使用量、また二酸化炭素ガスについては濃度調整などの操作状態を二酸化炭素ガス供給コントローラ28や水蒸気供給コントローラ37が検出して制御信号を出力し、これら制御信号に従って二酸化炭素ガス用開閉バルブ26や水蒸気用開閉バルブ32が開閉作動されて、二酸化炭素ガスリザーブタンク25や水蒸気リザーブタンク31に一旦貯留しておいた二酸化炭素ガスや水蒸気が適宜必要に応じて培養器2や滅菌器4に供給される。
【0031】
さらに、水蒸気供給系7では、滅菌器4内の温度や圧力を温度センサ38や圧力センサ39が検出してヒータ33や昇圧ポンプ34に制御信号を出力し、これら制御信号に従ってヒータ33や昇圧ポンプ34が作動されて、水蒸気温度や水蒸気圧力が調整される。以上のようにして、ボイラで生成された二酸化炭素ガスおよび水蒸気がそれぞれ必要に応じて適宜なタイミングで、滅菌器4や培養器2に供給される。
【0032】
以上説明した本実施形態にかかる培養器および滅菌器用2ガス製造装置1は、燃焼部3と水蒸気生成部5とを一体的に備える単一装置であって、単一熱源から得られる熱と、これと同時に得られる排ガスとで、一連のバイオ処理操作で相前後して使用される培養器2と滅菌器4に対して必要な水蒸気と二酸化炭素ガスとを一緒に生成することができ、きわめて合理的に設備構成することができる。
【0033】
また本実施形態にかかる培養器および滅菌器用2ガス供給システム6は、上記培養器および滅菌器用2ガス製造装置1を備えるとともに、水蒸気供給系7や、排ガスを処理して二酸化炭素ガスを供給するガス供給系8とを備えて、単一装置で連続的に生成することが可能な水蒸気と二酸化炭素ガスとを適切に滅菌器4や培養器2に供給することができ、これら水蒸気や二酸化炭素ガスの量的管理の煩雑さや、ボンベ交換などの手間を解消することができる。
【0034】
また、水蒸気や二酸化炭素ガスの使用量は、製造側ではなく、滅菌器4や培養器2における処理操作に依存し、滅菌器4や培養器2における個々個別の消費量に応じて水蒸気や二酸化炭素ガスを供給することが必要である。本実施形態にあっては、二酸化炭素ガスや水蒸気を貯留する二酸化炭素ガスリザーブタンク25および水蒸気リザーブタンク31を設けたので、二酸化炭素ガスや水蒸気を滅菌器4や培養器2に、それら個別の消費量に応じて供給することができる。換言すれば、滅菌器4や培養器2での消費量に影響されることなく、単純かつ容易な制御で2ガス製造装置1を稼働することができる。
【0035】
また、培養器2や滅菌器4の操作信号を検出して制御信号を出力するコントローラ28,37で開閉バルブ26,32を制御して、リザーブタンク25,31から水蒸気や二酸化炭素ガスを滅菌器4や培養器2へ供給するようにしたので、システム運転の自動制御化を達成することができる。また、滅菌器4内の温度や圧力をセンサ38,39で検出してヒータ33や昇圧ポンプ34を作動制御するようにしたので、滅菌器4へ供給される水蒸気の温度や圧力を適切に制御することができる。さらに、水蒸気と排ガスとの間で熱交換する熱交換器9を設けたので、単一装置であるボイラとして一体化された燃焼部3および水蒸気生成部5それぞれから供給される二酸化炭素ガスを含む排ガスと水蒸気とを、熱効率よく加熱・冷却することができる。
【0036】
また、水蒸気生成を燃料の燃焼熱で行うようにしたので、従来のように電気式加熱装置で水蒸気を生成するのに比べて、コストダウンを確保することができる。また、ボンベで二酸化炭素ガスを購入するのに比べて、コストダウンを確保することができる。
【0037】
上記実施形態にあっては、滅菌器4および培養器2が1台ずつの場合を例示して説明したが、これら滅菌器4や培養器2が複数台の場合には、リザーブタンク25,31よりも下流側で水蒸気供給系7やガス供給系8を複数に分岐させ、かつそれら分岐配管それぞれに開閉弁を設けて、各滅菌器4や培養器2と接続するように構成すればよい。このようにすれば、水蒸気等の使用量が平均化され、システムの稼働効率を上げることができる。また上記実施形態では、滅菌器4と培養器2とを別々に構成したが、滅菌操作と培養操作を行うことができる単一の筐体の場合には、これにガス供給系8および水蒸気供給系7をともに接続すれば、開閉バルブ26,32の切り換えで水蒸気と二酸化炭素ガスとを交互に供給して処理操作することができる。
【0038】
さらに、水蒸気供給系7から、例えば二酸化炭素ガスリザーブタンク25や熱交換器9などに、非常滅菌用配管を連通しておき、常時閉じておくバルブを当該非常滅菌用配管に配設しておけば、非常時、例えば雑菌に汚染されたときに、当該バルブを開くことで、これら二酸化炭素ガスリザーブタンク25や熱交換器9などを滅菌することも可能である。
【0039】
燃料としては、ガスでも油でもよいが、油は炭素比率が高いので、同じ水蒸気生成量で比較すると、油の方が二酸化炭素ガスの生成量を高く確保できて、好ましい。また、計算によれば、燃料として都市ガスを用い、空気比1.2(理論燃焼量の1.2倍の空気量)とした場合、体積比率で二酸化炭素10%、酸素4%、窒素86%の組成の排ガスが生成される。これに空気もしくは酸素を0%〜等量添加することで、5〜10%の二酸化炭素ガスを生成することができる。以上の実施形態にあっては、燃焼部3と水蒸気生成部5とを一体化した装置構成としてボイラを例示して説明したが、その他の組み合わせ形態であってもよいことはもちろんである。
【0040】
本実施形態にかかる培養器および滅菌器用2ガス製造装置1、並びに培養器および滅菌器用2ガス供給システム6は、例えば、医薬品業、農業、食品業などの細胞培養操作を伴うバイオ産業に好ましく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明にかかる培養器および滅菌器用2ガス製造装置、並びに培養器および滅菌器用2ガス供給システムの第1実施形態を示す系統図である。
【図2】本発明にかかる培養器および滅菌器用2ガス製造装置、並びに培養器および滅菌器用2ガス供給システムの第2実施形態を示す系統図である。
【図3】従来例を示す系統図である。
【符号の説明】
【0042】
1 培養器および滅菌器用2ガス製造装置
2 培養器
3 燃焼部
4 滅菌器
5 水蒸気生成部
6 培養器および滅菌器用2ガス供給システム
7 水蒸気供給系
8 ガス供給系
9 熱交換器
10 チラー
25 二酸化炭素ガスリザーブタンク
26 二酸化炭素ガス用開閉バルブ
28 二酸化炭素ガス供給コントローラ
31 水蒸気リザーブタンク
32 水蒸気用開閉バルブ
33 ヒータ
34 昇圧ポンプ
37 水蒸気供給コントローラ
38 温度センサ
39 圧力センサ
40 湿式除湿機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養器に接続され、炭素分を含む燃料を燃焼して二酸化炭素ガスを生成する燃焼部と、滅菌器に接続され、二酸化炭素ガスの生成と同時に上記燃焼部の燃焼熱で水を加熱して、水蒸気を生成する水蒸気生成部とを一体的に備えることを特徴とする培養器および滅菌器用2ガス製造装置。
【請求項2】
炭素分を含む燃料を燃焼して、培養器に供給するための二酸化炭素ガスを生成する燃焼部、並びに二酸化炭素ガスの生成と同時に上記燃焼部の燃焼熱で水を加熱して、滅菌器に供給するための水蒸気を生成する水蒸気生成部とを一体的に備える培養器および滅菌器用2ガス製造装置と、該2ガス製造装置の上記水蒸気生成部に接続され、水蒸気を上記滅菌器へ供給する水蒸気供給系と、上記2ガス製造装置の上記燃焼部に接続され、二酸化炭素ガスを上記培養器へ供給するガス供給系と、該ガス供給系に設けられ、上記燃焼部から供給される二酸化炭素ガスを含む燃焼後ガスを冷却するクーラと、上記ガス供給系に設けられ、上記クーラから供給される二酸化炭素ガスを脱水乾燥するチラーとを備えたことを特徴とする培養器および滅菌器用2ガス供給システム。
【請求項3】
前記ガス供給系に二酸化炭素ガスリザーブタンクを設けたことを特徴とする請求項2に記載の培養器および滅菌器用2ガス供給システム。
【請求項4】
前記二酸化炭素ガスリザーブタンクの出口側に、二酸化炭素ガス用開閉バルブを設けるとともに、前記培養器の操作信号を検出して、該二酸化炭素ガス用開閉バルブへ制御信号を出力する二酸化炭素ガス供給コントローラを備えたことを特徴とする請求項3に記載の培養器および滅菌器用2ガス供給システム。
【請求項5】
前記クーラは、前記水蒸気供給系と接続され、水蒸気と二酸化炭素ガスとの間で熱交換する熱交換器であることを特徴とする請求項2〜4いずれかの項に記載の培養器および滅菌器用2ガス供給システム。
【請求項6】
前記チラーに代えて、湿式除湿機を用いることを特徴とする請求項2〜5いずれかの項に記載の培養器および滅菌器用2ガス供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−124984(P2007−124984A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322672(P2005−322672)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】