説明

基体の製造方法、レーザ加工装置、表示装置、電気光学装置、電子機器

【課題】レーザ光を用いて基体を切断・分割する方法において、基体の厚さが厚くなっても、基体を精度よく切断・分割することが可能な基体の製造方法、レーザ加工装置、および、表示装置、電気光学装置、並びに、電子機器を提供する。
【解決手段】基体としての基板Pの製造方法は、基板Pに第1のレーザ光45aを照射して、第1の材料変質部47aを形成する工程と、第1のレーザ光45aとは性質の異なる第2のレーザ光45bを照射して、第1の材料変質部47aに接続するように第2の材料変質部47bを形成する工程と、基板Pに応力Fを加えて、分割片Qを形成する工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法による基体の製造方法、レーザ加工装置、表示装置、および、電気光学装置、並びに、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体材料基板、圧電材料基板、ガラス基板などの基板を切断する場合、基板にレーザ光を照射させて、切断・分割する方法があった。
【0003】
例えば特許文献1に開示されているように、半導体材料基板、圧電材料基板、ガラス基板などの基板を切断・分割する方法では、その切断予定ラインに沿って基板が吸収するレーザ光を照射し、多光子吸収によって基板の最深部から基板の表面まで改質層としての材料変質部を形成する。形成された材料変質部に沿って切断・分割することで分割片を製造する方法が提案されていた。
【0004】
【特許文献1】特開2002−192371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の製造方法では、基板に照射されるレーザ光の軸上収差の影響によって、基板の表面に比べて基板の最深部の方では収差の程度が異なる傾向にあった。レーザ光の集光位置で収差の程度が異なると、例えば基板の表面に比べて基板の最深部の方ではレーザ光の集光性が低下する傾向になり、基板の最深部の方では、集光点でのレーザ光のパワー密度が低下することがあった。つまり、基板が厚くなると、基板の最深部の方では、レーザ光のパワー密度が低下することで、材料変質部を精度よく形成することが困難であった。基板に材料変質部を精度よく形成することが困難であると、狙った位置で切断・分割しにくくなり、結果的に、厚い基板を精度よく切断することが困難となっていた。
【0006】
本発明の目的は、レーザ光を用いて基体を切断・分割する方法において、基体の厚さが厚くなっても、基体を精度よく切断・分割することが可能な基体の製造方法、レーザ加工装置、および、表示装置、電気光学装置、並びに、電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基体の製造方法は、前記基体に第1のレーザ光を照射して、第1の材料変質部を形成する工程と、前記第1のレーザ光とは性質の異なる第2のレーザ光を照射して、前記第1の材料変質部に接続するように第2の材料変質部を形成する工程と、前記基体に応力を加えて、分割片を形成する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、基体に第1のレーザ光を照射して、基体の最深部に第1の材料変質部を形成してから、第1のレーザ光とは性質の異なる第2のレーザ光を照射して、第1の材料変質部に接続するように第2の材料変質部を形成することができる。したがって、基体が厚くなっても、基体の内部に材料変質部を精度よく形成することができる。基体の内部に精度よく材料変質部を形成できれば、基体の外部から加える応力もほぼ均一にできるので、狙った位置で切断・分割することができ、外形精度の向上ができる。
【0009】
本発明の基体の製造方法は、前記基体が、レーザ光に対して透過性を有する材料で構成されており、前記第1の材料変質部を形成する工程では、前記基体に前記第1のレーザ光を集光素子で集光して照射させて、前記第1の材料変質部を形成することが望ましい。
【0010】
この発明によれば、基体に第1のレーザ光を集光素子で集光して照射させると、基体が第1のレーザ光を透過することができる材料であるから、基体が第1のレーザ光を吸収することができるので、基体の所定の位置に第1の材料変質部を形成することができる。
【0011】
本発明の基体の製造方法は、前記第1の材料変質部を形成する工程では、前記第1のレーザ光は、チタンサファイヤレーザ、またはYAGレーザのうちのいずれかであり、前記チタンサファイヤレーザ、または前記YAGレーザの基本波を照射させて、前記第1の材料変質部を形成することが望ましい。
【0012】
この発明によれば、チタンサファイヤレーザ、またはYAGレーザの基本波を基体に照射させると、チタンサファイヤレーザ、またはYAGレーザの基本波が、基体に対して透過性を有している波長であるので、基体の所定の位置に第1の材料変質部を形成することができる。
【0013】
本発明の基体の製造方法は、前記第1の材料変質部を形成する工程では、前記第1のレーザ光を回折光学素子により複数のビームに分岐し、前記複数のビームを照射させて、前記第1の材料変質部を形成することが望ましい。
【0014】
この発明によれば、第1のレーザ光を回折光学素子により複数のビームに分岐させることで、ビームが分割されるから、分割されたビームを基体に照射することによって、基体に第1の材料変質部を複数形成することができる。
【0015】
本発明の基体の製造方法は、前記基体が、レーザ光に対して透過性を有する材料で構成されており、前記第2の材料変質部を形成する工程では、前記基体に前記第2のレーザ光を集光素子で集光して照射させて、前記第2の材料変質部を形成することが望ましい。
【0016】
この発明によれば、基体に第2のレーザ光を集光素子で集光して照射させると、基体が第2のレーザ光を透過することができる材料であるから、基体が第2のレーザ光を吸収することができるので、基体の所定の位置に第2の材料変質部を形成することができる。
【0017】
本発明の基体の製造方法は、前記第2の材料変質部を形成する工程では、前記第2のレーザ光は、YAGレーザであり、前記YAGレーザの基本波を照射させて、前記第2の材料変質部を形成することが望ましい。
【0018】
この発明によれば、YAGレーザの基本波を基体に照射させると、YAGレーザの基本波が、基体に対して透過性を有している波長であるので、基体の所定の位置に第2の材料変質部を形成することができる。
【0019】
本発明の基体の製造方法は、前記第2の材料変質部を形成する工程では、前記第2のレーザ光を回折光学素子により複数のビームに分岐し、前記複数のビームを照射させて、前記第2の材料変質部を形成することが望ましい。
【0020】
この発明によれば、第2のレーザ光を回折光学素子により複数のビームに分岐させることで、ビームが分割されるから、分割されたビームを基体に照射することによって、基体に第2の材料変質部を複数形成することができる。
【0021】
本発明の基体の製造方法は、前記第2の材料変質部を形成する工程では、前記第1のレーザ光を入射する側の入射面と、前記第1のレーザ光を射出する側の射出面とのいずれか一方の面から前記第2のレーザ光を照射して、前記第2の材料変質部を形成することが望ましい。
【0022】
この発明によれば、基体のどちら側の面からでも第2のレーザ光を照射することができる。そして、第2のレーザ光を照射することで、第2の材料変質部を形成することができる。
【0023】
本発明の基体の製造方法は、前記分割片を形成する工程では、前記基体に曲げ応力または引っ張り応力のうち、いずれか一方の応力を加えて、前記分割片を形成することが望ましい。
【0024】
この発明によれば、基体に応力を加えるだけで基体を切断・分割することができるので、分割片を簡単に形成することができる。
【0025】
本発明のレーザ加工装置は、レーザ光を集光する集光素子と、前記集光素子から集光された前記レーザ光が照射される基板を載置するステージと、前記ステージを制御するステージ制御部と、前記レーザ光は、第1のレーザ光と、前記第1のレーザ光とは性質の異なる第2のレーザ光と、を含み、前記第1のレーザ光を照射する第1レーザ光源と、前記第2のレーザ光を照射する第2レーザ光源と、前記第1レーザ光源および前記第2レーザ光源を制御するレーザ制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、基体に第1のレーザ光を照射して、基体の最深部に第1の材料変質部を形成してから、第1のレーザ光とは性質の異なる第2のレーザ光を照射して、第1の材料変質部に接続するように第2の材料変質部を形成することができる。したがって、基体が厚くなっても、基体の内部に材料変質部を精度よく形成することができる。基体の内部に精度よく材料変質部を形成できれば、基体の外部から加える応力もほぼ均一にできるので、狙った位置で切断・分割することができ、外形精度の向上可能なレーザ加工装置を提供できる。
【0027】
本発明のレーザ加工装置は、前記第1のレーザ光が、チタンサファイヤレーザ、YAGレーザのいずれかであり、前記チタンサファイヤレーザ、または前記YAGレーザの基本波を照射する前記第1レーザ光源を備えていることが望ましい。
【0028】
この発明によれば、チタンサファイヤレーザ、またはYAGレーザの基本波を基体に照射させると、チタンサファイヤレーザ、またはYAGレーザの基本波が、基体に対して透過性を有している波長であるので、基体の所定の位置に第1の材料変質部を形成することが可能なレーザ加工装置を提供できる。
【0029】
本発明のレーザ加工装置は、前記第2のレーザ光が、YAGレーザであり、前記YAGレーザの基本波を照射する前記第2レーザ光源を備えていることが望ましい。
【0030】
この発明によれば、YAGレーザの基本波を基体に照射させると、YAGレーザの基本波が、基体に対して透過性を有している波長であるので、基体の所定の位置に第2の材料変質部を形成することが可能なレーザ加工装置を提供できる。
【0031】
本発明のレーザ加工装置は、レーザ光を集光する集光素子と、前記集光素子から集光された前記レーザ光が照射される基板を載置するステージと、前記ステージを制御するステージ制御部と、前記レーザ光を照射するレーザ光源と、前記レーザ光源を制御するレーザ制御部と、前記レーザ光を反射する反射板と、前記反射板を駆動して、前記レーザ光を第1のレーザ光と、前記第1のレーザ光とは経路の異なる第2のレーザ光とに、生成するミラー制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、ミラー制御部で反射板の出し入れを制御することによって、レーザ光を分岐して第1のレーザ光と、第1のレーザ光とは経路の異なる第2のレーザ光とに、生成することができる。第1のレーザ光を用いて第1の材料変質部を形成し、経路の異なる第2のレーザ光を用いて第2の材料変質部を形成すれば、基体の所定の位置に材料変質部を形成することが可能なレーザ加工装置を提供できる。レーザ光源がひとつで済むので装置が大型化になることはなく、しかも、経済的である。
【0033】
本発明の表示装置は、前述に記載の基体の製造方法を用いて形成されていることを特徴とする。
【0034】
この発明によれば、切断・分割品質を向上させることが可能な製造方法で製造されているので、より品質の良好な表示装置を提供することができる。
【0035】
本発明の電気光学装置は、前述に記載の表示装置を備えていることを特徴とする。
【0036】
この発明によれば、より品質の良好な表示装置を備えているので、より表示品質の良好な電気光学装置を提供することができる。
【0037】
本発明の電子機器は、前述に記載の電気光学装置を備えていることを特徴とする。
【0038】
この発明によれば、より表示品質の良好な電気光学装置を備えているので、より表示性能の良好な電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の基体の製造方法およびレーザ加工装置について実施形態を挙げ、添付図面に沿って詳細に説明する。なお、本発明の特徴的な製造方法について説明する前に、基体、材料変質部の形成方法、について説明する。
<基体>
【0040】
本発明に用いうる基体は、その材料にガラス、石英、水晶、シリコン、などの材料(主に、セラミックス材料)を用いることができる。なお、ここでは、基体材料として石英を用いた。
<材料変質部の形成方法>
【0041】
レーザ光を照射して基体に材料変質部を形成する方法について説明する。
【0042】
図1は、レーザ光による改質層としての材料変質部の形成方法を説明するための説明図である。
【0043】
図1において、基体としての基板Pの内部にレーザ光45を集光素子としてのレンズ46で集光して照射させて、スキャン方向X(分割方向)に、レーザ光45をスキャンする。レーザ光45は集光素子としてのレンズ46で集光されるから、基板Pの内部に焦点を合わせることができる。スキャン方向X(分割方向)に、レーザ光45をスキャンさせると、基板Pの内部に材料変質部47を形成できる。なお、レーザ光45のスキャン方向Xにおける移動速度は、100mm/secである。基板Pの厚さは約200μmである。
【0044】
また、レーザ光45を1回スキャンさせるだけでは、改質層としての材料変質部47のできる量が数十μmであるので、基板Pの深さ方向全域に材料変質部47を形成するためには、レーザ光45を何回かスキャン方向X(分割方向)にスキャンさせる必要がある。そして、レーザ光45をスキャンさせるごとに、集光素子としてのレンズ46の焦点位置を基板Pの下面から上面に向かって上昇させる。ここで、基板Pの下面から上面に向けてレーザ光45の焦点位置を上昇させるのは、先に形成された材料変質部47によってレーザ光45が散乱してしまい、基板Pの深さ方向全域にわたって材料変質部47を形成することができなくなることを避けるためである。
【0045】
(第1実施形態)
本実施形態では、厚さの厚い基板に2種類のレーザ光を照射させて、基板の内部に材料変質部を形成し、基板の外部から応力を加えて基板を切断・分割して分割片を形成する製造方法について説明する。
【0046】
図2は、本実施形態におけるレーザ加工装置の概略図であり、図3は、レーザ加工装置の制御系のブロック図である。
【0047】
図2および図3を参照して、レーザ加工装置について説明する。
【0048】
図2に示すように、レーザ加工装置100は、第1のレーザ光45aを射出する第1レーザ光源101と、第2のレーザ光45bを射出する第2レーザ光源201と、射出された第1のレーザ光45aを反射するダイクロイックミラー102と、射出された第2のレーザ光を反射するダイクロイックミラー202と、反射した第1のレーザ光45aと、第2のレーザ光45bとを、集光する集光素子としてのレンズ46aとを、備えている。また、加工対象物である基体としての基板Pを載置するステージ107と、ステージ107を集光素子としてのレンズ46aに対して、X軸方向、Y軸方向へ移動させるX軸スライド部110およびY軸スライド部108とを、備えている。
【0049】
また、ステージ107に載置された基板Pに対して集光素子としてのレンズ46aのZ軸方向の位置を変えてレーザ光の集光点の位置を調整するZ軸スライド機構104を備えている。さらに、ダイクロイックミラー102、202を挟んで集光素子としてのレンズ46aの反対側に位置する撮像装置112を備えている。撮像装置112は、同軸落射型光源(図示省略)と、CCD(Charge Coupled Device)(図示省略)とが、組み込まれたものである。そして、同軸落射型光源から射出した可視光は、集光素子としてのレンズ46aを透過して焦点を結ぶ。
【0050】
集光素子としてのレンズ46aは、Z軸スライド機構から延びたスライドアーム104aによって支持されており、倍率が100倍、開口数が0.8、WD(Working Distance)が3mmの対物レンズである。
【0051】
図3に示すように、レーザ加工装置100は、上記各構成を制御することができるメインコンピュータ120を備えている。メインコンピュータ120には、CPU127(Central Processing Unit)と、RAM128(Random Access Memory)と、撮像装置112が撮像した画像情報を処理する画像処理部124とを、備えている。
【0052】
メインコンピュータ120には、レーザ加工の際に用いられる各種加工条件のデータを入力する入力部125と、レーザ加工時の各種情報を表示することができる表示部126とが、接続されている。
【0053】
第1レーザ光源101および第2レーザ光源201の出力や、パルス幅、パルス周期などを制御するレーザ制御部121が、I/F131を介して、バッファ129によってメインコンピュータ120と接続されている。また、Z軸スライド機構104(図2参照)を駆動して集光素子としてのレンズ46aのZ軸方向の位置を制御するレンズ制御部122と、メインコンピュータ120とが、接続されている。さらに、X軸スライド部110(図2参照)と、Y軸スライド部108(図2参照)とを、それぞれレール111、109(図2参照)に沿って移動させるサーボモータ(図示省略)を駆動するステージ制御部123と、メインコンピュータ120とが、接続されている。
【0054】
集光素子としてのレンズ46aをZ軸方向に移動させるZ軸スライド機構104(図2参照)には、移動距離を検出することが可能な位置センサ(図示省略)が内蔵されており、レンズ制御部122は、この位置センサの出力を検出することにより、集光素子としてのレンズ46aのZ軸方向の位置を制御することができる。
【0055】
ここで、第1のレーザ光45aおよび第2のレーザ光45bは、基板Pに対して透過性を有するものが採用される。本実施形態では、第1レーザ光源101(図2参照)から射出される第1のレーザ光45aに、チタンサファイアを固体光源とするレーザ光をフェムト秒のパルス幅で射出するいわゆるフェムト秒レーザを採用した。この場合のレーザ光の波長は、約800nmである。パルス幅は、約300fs(フェムト秒)である。パルス周期は、1kHzである。出力は、約700mWである。
【0056】
第2レーザ光源201(図2参照)から射出される第2のレーザ光45bには、半導体レーザを励起するYAGレーザを採用した。YAGレーザは、ナノ秒のパルス幅で射出するいわゆるナノ秒レーザである。この場合のレーザ光の波長は、約1064nmである。レーザ光スポット断面積は、3.14×10-8cm2である。発振形態は、Qスイッチパルスである。繰り返し周波数は、100KHzである。パルス幅は、30nsである。出力は、20μJ/パルスである。
【0057】
第1のレーザ光45aを射出する第1レーザ光源101(図2参照)、および第2のレーザ光45bを射出する第2レーザ光源201(図2参照)は、レーザ制御部121(図2参照)によって所定の条件で制御されている。
【0058】
図4は、本実施形態における基板を切断・分割して分割片を形成する製造方法を示す図であり、同図(a)は、基板に第1のレーザ光を照射して第1の材料変質部の形成過程を示す図であり、同図(b)は、第2のレーザ光を照射して第2の材料変質部の形成過程を示す図であり、同図(c)は、分割片を示す図である。図5は、基板を切断・分割して分割片を形成する製造手順を説明するためのフローチャートである。
【0059】
図4および図5を参照して、分割片の製造方法について説明する。
【0060】
図5のステップS1では、図4(a)に示すように、内部加工1を行う。内部加工1では、第1のレーザ光45aを集光素子としてのレンズ46aで集光して基板Pに対して射出する。そして、基板Pの最深部に改質層としての第1の材料変質部47aを形成する。ここで、第1のレーザ光45aを入射する側の面が、入射面Puである。入射面Puと反対側の面が、射出面Pdである。第1のレーザ光45aは、入射面Pu側から照射される。ここで使用される第1のレーザ光45aは、フェムト秒レーザを採用したレーザ光である。フェムト秒レーザはナノ秒レーザにくらべて加工速度が遅いことが知られているが、ビーム径が収差の影響で多少大きくなったとしても、フェムト秒レーザはナノ秒レーザに比べてパルス幅が10万分の1であるため、問題なく内部加工ができるというメリットがある。また、基体としての基板Pは、その材料が石英であり、屈折率が約1.45である。
【0061】
次に、図5のステップS2では、図4(b)に示すように、内部加工2を行う。内部加工2では、第2のレーザ光45bを集光素子としてのレンズ46aで集光して基板Pに対して射出する。第1のレーザ光45aと同様に、第2のレーザ光45bは、入射面Pu側から照射される。そして、第1の材料変質部47aに接続するように、第2の材料変質部47bを形成する。第2の材料変質部47bは、基板Pの表面まで形成され、基板Pの深さ方向全域に改質層としての材料変質部47を形成する。ここで使用される第2のレーザ光45bは、YAGレーザを採用したレーザ光である。そして、ナノ秒レーザであるYAGレーザは、フェムト秒レーザにくらべて加工速度が早いというメリットがある。本実施形態のように、最深部の1層だけフェムト秒レーザで加工を行い、残りをナノ秒レーザで加工するようにすれば、加工速度を低下することなく内部加工ができる。
【0062】
また、YAGレーザのレーザ波長は、1064nmにこだわることはなく、例えばYAGレーザの第2高調波を用いてもよい。第2高調波のレーザ波長は、532nmである。
【0063】
次に、図5のステップS3では、図4(c)に示すように、分割を行う。ここでの分割は、基板Pの上面側から基板Pに対して応力Fを加える。基板Pの外部から応力Fを加える方法としては、例えば切断予定ラインに沿って基板Pに曲げや、せん断応力を加えることである。また、基板Pに温度差を与えることによって熱応力を発生させることもできる。材料変質部47(第1の材料変質部47aと、第2の材料変質部47b)を有する基板Pに対して外部から応力Fを加えると、分割片Qを形成することができる。
【0064】
以上のような実施形態では、以下の効果が得られる。
【0065】
(1)基体としての基板Pに第1のレーザ光45aを照射して、基板Pの最深部に第1の材料変質部47aを形成してから、第1のレーザ光45aとは性質の異なる第2のレーザ光45bを照射して、第1の材料変質部47aに接続するように第2の材料変質部47bを形成することができる。したがって、基板Pが厚くなっても、基板Pの内部に材料変質部47を精度よく形成することができる。基板Pの内部に精度よく材料変質部47を形成できれば、基板Pの外部から加える応力Fもほぼ均一にできるので、狙った位置で切断・分割することができ、外形精度の向上ができる。
(2)基板Pに第1のレーザ光45aを集光素子としてのレンズ46aで集光して照射させると、基板Pが第1のレーザ光45aを透過することができる材料であるから、基板Pが第1のレーザ光45aを吸収することができるので、基板Pの所定の位置に第1の材料変質部47aを形成することができる。
(3)チタンサファイヤレーザ、またはYAGレーザの基本波を基板Pに照射させると、チタンサファイヤレーザ、またはYAGレーザの基本波が、基板Pに対して透過性を有している波長であるので、基板Pの所定の位置に第1の材料変質部47aを形成することができる。
(4)基板Pに第2のレーザ光45bを集光素子としてのレンズ46aで集光して照射させると、基板Pが第2のレーザ光45bを透過することができる材料であるから、基板Pが第2のレーザ光45bを吸収することができるので、基板Pの所定の位置に第2の材料変質部47bを形成することができる。
(5)YAGレーザの基本波を基板Pに照射させると、YAGレーザの基本波が、基板Pに対して透過性を有している波長であるので、基板Pの所定の位置に第2の材料変質部47bを形成することができる。
(6)基板Pに応力を加えるだけで基板Pを切断・分割することができるので、分割片Qを簡単に形成することができる。
(7)基板Pに第1のレーザ光45aを照射して、基板Pの最深部に第1の材料変質部47aを形成してから、第1のレーザ光45aとは性質の異なる第2のレーザ光45bを照射して、第1の材料変質部47aに接続するように第2の材料変質部47bを形成することができる。したがって、基板Pが厚くなっても、基板Pの内部に材料変質部47を精度よく形成することができる。基板Pの内部に精度よく材料変質部47を形成できれば、基板Pの外部から加える応力Fもほぼ均一にできるので、狙った位置で切断・分割することができ、分割片Qの外形精度の向上可能なレーザ加工装置100を提供できる。
(8)チタンサファイヤレーザ、またはYAGレーザの基本波を基板Pに照射させると、チタンサファイヤレーザ、またはYAGレーザの基本波が、基板Pに対して透過性を有している波長であるので、基板Pの所定の位置に第1の材料変質部47aを形成することが可能なレーザ加工装置100を提供できる。
(9)YAGレーザの基本波を基板Pに照射させると、YAGレーザの基本波が、基板Pに対して透過性を有している波長であるので、基板Pの所定の位置に第2の材料変質部47bを形成することが可能なレーザ加工装置100を提供できる。
【0066】
(第2実施形態)
本実施形態では、基板の裏面と表面とからレーザ光を照射させて、基板の内部に材料変質部を形成し、外部から応力を加えて基板を切断・分割して分割片を形成する製造方法について説明する。前述の第1実施形態と異なる点は、レーザ光源がひとつであることと、レーザ光を二つに分岐するための反射板とを、有してレーザ加工装置が構成されていることである。なお、前述の第1実施形態と同じ部品および同様な機能を有する部品には同一記号を付し、説明を省略する。
【0067】
図6は、本実施形態におけるレーザ加工装置の概略図であり、図7は、レーザ加工装置の制御系のブロック図である。
【0068】
図6および図7を参照して、レーザ加工装置について説明する。
【0069】
図6に示すように、レーザ加工装置300は、レーザ光を射出するレーザ光源101と、射出されたレーザ光を反射するダイクロイックミラー102、202と、ダイクロイックミラー202で反射された第1のレーザ光45aを集光する集光素子としてのレンズ46aと、ダイクロイックミラー102で反射された第2のレーザ光45bを集光する集光素子としてのレンズ46bとを、備えている。
【0070】
さらに、レーザ加工装置300は、ステージ107に載置された基板Pに対して集光素子としてのレンズ46aのZ軸方向の位置を変えてレーザ光の集光点の位置を調整するZ軸スライド機構105を備えている。集光素子としてのレンズ46aは、Z軸スライド機構から延びたスライドアーム105aによって支持されており、倍率が100倍、開口数が0.8、WD(Working Distance)が3mmの対物レンズである。
【0071】
なお、レーザ光を射出するレーザ光源101は、同図に示すように1台である。
【0072】
レーザ加工装置300は、反射板としてのダイクロイックミラー202を矢印の方向に出し入れすることが可能なスライド機構133を備えている。ダイクロイックミラー202は、スライド機構133から延びたスライドアーム133aによって支持されており、スライドアーム133aを駆動させることで反射板としてのダイクロイックミラー202を出し入れすることができる。ダイクロイックミラー202を出し入れすると、レーザ光源101から射出されたレーザ光の射出方向を変えることができる。
【0073】
例えばダイクロイックミラー202を図6に示す位置Mに移動させて配置することによって、レーザ光源101から射出されたレーザ光は、ダイクロイックミラー202で反射してダイクロイックミラー204の方向に向けて射出する。また、ダイクロイックミラー202で反射したレーザ光を集光素子としてのレンズ46aに導くようにダイクロイックミラー204、206を備えている。そして、ダイクロイックミラー204、206によって導かれたレーザ光は、第1のレーザ光45aとなる。
【0074】
次に、ダイクロイックミラー202を図6に示す位置Lに移動させて配置することによって、レーザ光源101から射出されたレーザ光は、ダイクロイックミラー102に入射する。入射したレーザ光は、ダイクロイックミラー102で反射して射出方向を変えて集光素子としてのレンズ46bに導かれるように構成されている。そして、ダイクロイックミラー102によって導かれたレーザ光は、第2のレーザ光45bとなる。
【0075】
ここで採用されるレーザ光は、半導体レーザを励起するYAGレーザである。YAGレーザは、ナノ秒のパルス幅で射出するいわゆるナノ秒レーザである。この場合のレーザ光の波長は、約1064nmである。レーザ光スポット断面積は、3.14×10-8cm2である。発振形態は、Qスイッチパルスである。繰り返し周波数は、100KHzである。パルス幅は、30nsである。出力は、20μJ/パルスである。なお、第1のレーザ光45aおよび第2のレーザ光45bは、ともにYAGレーザであり、レーザ光源101(図6参照)から射出される。
【0076】
図7に示すように、レーザ加工装置300は、上記各構成を制御することができるメインコンピュータ120を備えている。
【0077】
レーザ加工装置300は、レーザ光源101の出力や、パルス幅、パルス周期などを制御するレーザ制御部121を備えており、レーザ制御部121が、I/F131を介して、バッファ129によってメインコンピュータ120と接続されている。
【0078】
そして、レーザ加工装置300は、ダイクロイックミラー202(図6参照)を矢印の方向に出し入れすることができるスライド機構133(図6参照)を備えており、このスライド機構133の駆動を制御するミラー制御部132が、I/F131を介して、バッファ129によってメインコンピュータ120と接続されている。
【0079】
図8は、本実施形態における基板を切断・分割して分割片を形成する製造方法を示す図であり、同図(a)は、基板に第1のレーザ光を照射して第1の材料変質部の形成過程を示す図であり、同図(b)は、第2のレーザ光を照射して第2の材料変質部の形成過程を示す図であり、同図(c)は、分割片を示す図である。なお、基板を切断・分割して分割片を形成する製造手順については、図5のフローチャートと同じである。
【0080】
図8を参照して、分割片の製造方法について説明する。
【0081】
最初に、図8(a)に示すように、内部加工1を行う。内部加工1では、第1のレーザ光45aを集光素子としてのレンズ46aで集光して基板Pに対して射出する。そして、基板Pの入射面Puの1層に改質層としての第1の材料変質部47aを形成する。ここで、第1のレーザ光45aを入射する側の面が、入射面Puである。入射面Puと反対側の面が、射出面Pdである。第1のレーザ光45aは、入射面Pu側から照射される。ここで使用される第1のレーザ光45aは、ナノ秒レーザを採用したレーザ光である。ナノ秒レーザは、フェムト秒レーザにくらべて加工速度が早いというメリットがあるので、フェムト秒レーザを用いるときに比べて短時間で第1の材料変質部47aを形成することができるから、効率的である。
【0082】
次に、図8(b)に示すように、内部加工2を行う。内部加工2では、第2のレーザ光45bを集光素子としてのレンズ46bで集光して基板Pに対して射出する。第2のレーザ光45bは、基板Pの射出面Pd側から照射される。そして、形成された第1の材料変質部47aと接続するように、第2の材料変質部47bを形成する。そして、第1の材料変質部47aと、第2の材料変質部47bとで、構成される材料変質部47を形成することができる。
【0083】
本実施形態のように、基板Pの入射面Puの側から1層だけナノ秒レーザで加工を行う。次に、残りの分を基板Pの射出面Pdの側からナノ秒レーザで加工するようにすれば、ナノ秒レーザのみで材料変質部47を形成することができる。つまり、レーザ光源101から射出するレーザの種類を変えることなく材料変質部47を形成することができるので、レーザ光源101を交換することがないので、加工速度を低下することなく基板Pに内部加工をすることができる。しかも、レーザ光源がひとつで済むので、経済的である。
【0084】
最後に、図8(c)に示すように、基板Pの上面側から基板Pに対して応力Fを加える。材料変質部47を有する基板Pに対して外部から応力Fを加えると、分割片Qを形成することができる。
【0085】
第1実施形態で述べた(1)〜(9)の効果に加えて、第2実施形態では次のような効果が得られる。
(10)基板Pのどちら側の面、例えば入射面Puまたは射出面Pdのどちらからでも第2のレーザ光45bを照射することができる。そして、第2のレーザ光45bを照射することで、第2の材料変質部47bを形成することができる。
(11)スライド機構133の駆動をミラー制御部132によって制御することで、反射板としてのダイクロイックミラー202の出し入れを行い、ひとつのレーザ光源101から射出されたレーザ光を分岐することができる。そして、レーザ光源101から第1のレーザ光45aと、第1のレーザ光45aとは経路の異なる第2のレーザ光45bとを生成することができる。第1のレーザ光45aを用いて第1の材料変質部47aを形成し、第2のレーザ光45bを用いて第2の材料変質部47bを形成すれば、基板Pの所定の位置に材料変質部47を形成することが可能なレーザ加工装置300を提供できる。レーザ光源101がひとつで済むので装置が大型化になることはなく、しかも、経済的である。
【0086】
次に、本発明に係る表示装置としての液晶パネルについて説明する。
【0087】
図9は、本実施形態における液晶パネルの構造を示す概略図であり、同図(a)は、概略平面図であり、同図(b)は、同図(a)のA−A線に沿って切断した概略断面図である。
【0088】
図9(a)および(b)に示すように、液晶パネル10は、TFT3を有するTFT基板1と、対向電極6を有する対向基板2と、シール材4によって接着されたTFT基板1と、対向基板2との隙間に充填された液晶5とを備えている。
【0089】
TFT基板1には、厚さ約1.2mmの石英基板が用いられており、その表面には画素
を構成する画素電極(図示省略)と、複数のトランジスタ素子(図示省略)で構成されて
いるTFT3とが形成されている。TFT3を構成する個々のトランジスタ素子の3端子
のうちの一つは画素電極に接続されており、残りの二つは、画素電極を囲んで互いに絶縁
状態で格子状に配置されたデータ線(図示省略)と走査線(図示省略)とに接続されてい
る。データ線および走査線は、配線パターン11を介して端子部1aにおいて駆動回路部9に接続されている。駆動回路部9の入力側配線パターン12は、端子部1aに配列形成された実装端子13に接続されている。
【0090】
対向基板2は、対向基板本体2a、マイクロレンズ15およびカバーガラス16より構成されている。対向基板本体2aには、厚さ約1.1mmの石英基板が用いられており、TFT基板1の画素電極に対向する部分にはマイクロレンズ面2bが形成されている。マイクロレンズ15は、対向基板本体2aのマイクロレンズ面2bに合性樹脂を充填することにより形成したものである。カバーガラス16には、厚さ約50μmの石英基板が用いられており、マイクロレンズ15を形成している合性樹脂により、対向基板本体2aに接着されている。
【0091】
マイクロレンズ15は、液晶パネル10の開口率を向上させる働きをしており、画素電
極とは一対一で対応している。カバーガラス16は、対向基板本体2aの全域を覆うこと
により、マイクロレンズ15を保護している。
【0092】
対向基板2には、共通電極としての対向電極6が設けられている。対向電極6は、対向
基板2の四隅に設けられた上下導通部14を介してTFT基板1側に設けられた配線パタ
ーン(図示省略)と導通しており、当該配線パターンも端子部1aに設けられた実装端子
13に接続されている。液晶5に面するTFT基板1の表面および対向基板2の表面には、それぞれ配向膜7、8が形成されている。
【0093】
液晶パネル10は、外部駆動回路(図示省略)と電気的に繋がる中継基板(図示省略)
が実装端子13に接続される。そして、外部駆動回路からの入力信号が駆動回路部9に入
力されることにより、TFT3が画素電極ごとにスイッチングされ、画素電極と対向電極
6との間に駆動電圧が印加されて表示が行われる。
【0094】
TFT基板1の厚さが厚くなったとしても、TFT基板1が、本発明の切断・分割方法で製造されているので、外形精度の良好な分割片Qを製造することができる。
【0095】
次に、本発明に係る電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。
【0096】
図10は、電気光学装置としての液晶表示装置の分解斜視図である。
【0097】
図10に示すように、液晶表示装置500は、本実施形態で説明した多層回路基板30を備えている。そして、液晶表示装置500は、カラー表示用の液晶パネル10と、液晶パネル10に接続される多層回路基板30と、多層回路基板30に実装される液晶駆動用IC200などで構成されている。なお必要に応じて、バックライト等の照明装置や、その他の付帯機器が、液晶パネル10に付設される。なお、液晶表示装置500は、COF(Chip・On・Film)構造である。
【0098】
液晶パネル10は、シール材4によって接着された一対のTFT基板1および対向基板2を有し、これらのTFT基板1と、対向基板2との、間に形成される間隙(セルギャップ)に液晶5が封入され、封入された液晶5は、TFT基板1と、対向基板2とに、よって挟持される。これらのTFT基板1と、対向基板2とは、一般には透光性材料、例えば石英、ガラス、合成樹脂等によって形成される。TFT基板1および対向基板2の外側表面には偏光板56が貼り付けられている。
【0099】
また、TFT基板1の内側表面には画素電極66が形成され、対向基板2の内側表面には対向電極6が形成される。これらの画素電極66、対向電極6は、例えばITO((Indium・Tin・Oxide):インジウムスズ酸化物)等の透光性材料によって形成される。TFT基板1は対向基板2に対して張り出した張り出し部を有し、この張り出し部に複数の実装端子13が形成されている。これらの実装端子13は、TFT基板1上に画素電極66を形成するときに画素電極66と同時に形成される。従って、これらの実装端子13は、例えばITOによって形成される。これらの実装端子13には、画素電極66から一体に延びるもの、および導電材(図示省略)を介して対向電極6に接続されるものが含まれる。
【0100】
一方、多層回路基板30の表面には、配線パターン39a、39bが形成されている。すなわち、多層回路基板30の一方の短辺から中央に向かって入力用配線パターン39aが形成され、他方の短辺から中央に向かって出力用配線パターン39bが形成されている。これらの入力用配線パターン39aおよび出力用配線パターン39bの中央側の端部には、電極パッド(図示省略)が形成されている。
【0101】
多層回路基板30の表面には、液晶駆動用IC200が実装されている。具体的には、多層回路基板30の表面に形成された複数の電極パッドに対して、液晶駆動用IC200の能動面に形成された複数のバンプ電極が、ACF(Anisotropic・Conductive・Film:異方性導電膜)160を介して接続されている。このACF160は、熱可塑性又は熱硬化性の接着用樹脂の中に、多数の導電性粒子を分散させることによって形成されている。このように、多層回路基板30の表面に液晶駆動用IC200を実装することにより、いわゆるCOF構造が実現されている。
【0102】
そして、液晶駆動用IC200を備えた多層回路基板30が、液晶パネル10のTFT基板1に接続されている。具体的には、多層回路基板30の出力用配線パターン39bが、ACF140を介して、TFT基板1の実装端子13と電気的に接続されている。なお、多層回路基板30は可撓性を有するので、自在に折り畳むことによって省スペース化を実現しうるようになっている。
【0103】
上記のように構成された液晶表示装置500では、多層回路基板30の入力用配線パターン39aを介して、液晶駆動用IC200に信号が入力される。すると、液晶駆動用IC200から、多層回路基板30の出力用配線パターン39bを介して、液晶パネル10に駆動信号が出力される。これにより、液晶パネル10において画像表示が行われるようになっている。
【0104】
品質が良好で、より安価な表示装置としての液晶パネル10を備えているので、表示品質が良好で、より安価な電気光学装置としての液晶表示装置500を提供することができる。
【0105】
次に、本実施形態の電気光学装置としての液晶表示装置を搭載した電子機器について説明する。
【0106】
図11は、電子機器としての携帯電話の斜視図である。
【0107】
図11に示すように、本実施形態の電子機器としての携帯電話2000は、上述した液晶表示装置500を表示手段として搭載している。携帯電話2000は、表示部2001を備えている。このように本発明に係る電子機器としての携帯電話2000は、簡単に切断・分割することが可能な電気光学装置としての液晶表示装置500を備えることができるので、生産効率の良好な電子機器としての携帯電話2000を提供できる。また、電子機器としては、携帯電話2000にこだわることはなく、例えばプリンタ、腕時計、NOTE―PC、PDA、電子ペーパ、と呼ばれる携帯型情報機器、携帯端末機器、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、デジタルスチルカメラ、車載用モニタ、モニタ直視型のデジタルビデオレコーダ、カーナビゲーション装置、電子手帳、ワークステーション、テレビ電話機、POS端末機等々の画像表示手段として好適に用いることができる。このようにすれば、電気光学装置としての液晶表示装置500の用途は広がり、いろいろな電子機器を提供できる。
【0108】
以上、好ましい実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含み、本発明の目的を達成できる範囲で、他のいずれの具体的な構造および形状に設定できる。
【0109】
(変形例1)
前述の第1実施形態および第2実施形態で、第1のレーザ光45aおよび第2のレーザ光45bの集光方法として、基板Pの厚さ方向に集光点を移動させながら集光素子としてのレンズ46a、46bで集光して照射させたが、例えば図2および図6に示すレーザ加工装置100および300を用いて、図12に示すように、レーザ光45を回折光学素子である集光素子としてのレンズ46により複数のビームに分岐して多点同時に照射してもかまわない。このようにすれば、前述の第1実施形態および第2実施形態と同様の効果が得られる他に、材料変質部47の形成に必要な時間を短縮することができるから、加工効率を向上することが可能となる。
【0110】
(変形例2)
前述の第1実施形態および第2実施形態で、基板Pの材料に石英を採用したが、これに限らない。石英基板の他に、ガラス材料からなるガラス基板、シリコン材料からなるシリコン基板などその他の材料を基板Pとして使用してもかまわない。このようにしても、いろいろな材料の基板Pを切断・分割することができるので、本発明の製造方法およびレーザ加工装置100および300の用途は広い。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】レーザ光による改質層としての材料変質部の形成方法を説明するための説明図。
【図2】第1実施形態におけるレーザ加工装置の概略図。
【図3】レーザ加工装置の制御系のブロック図。
【図4】基板を切断・分割して分割片を形成する製造方法を示す図であり、図(a)は、基板に第1のレーザ光を照射して第1の材料変質部の形成過程を示す図であり、図(b)は、第2のレーザ光を照射して第2の材料変質部の形成過程を示す図であり、図(c)は、分割片を示す図。
【図5】基板を切断・分割して分割片を形成する製造手順を説明するためのフローチャート。
【図6】第2実施形態におけるレーザ加工装置の概略図。
【図7】レーザ加工装置の制御系のブロック図。
【図8】基板を切断・分割して分割片を形成する製造方法を示す図であり、図(a)は、基板に第1のレーザ光を照射して第1の材料変質部の形成過程を示す図であり、図(b)は、第2のレーザ光を照射して第2の材料変質部の形成過程を示す図であり、図(c)は、分割片を示す図。
【図9】表示装置としての液晶パネルの構造を示す概略図であり、図(a)は、概略平面図であり、図(b)は、図(a)のA−A線に沿って切断した概略断面図。
【図10】電気光学装置としての液晶表示装置の分解斜視図。
【図11】電子機器としての携帯電話の斜視図。
【図12】変形例1におけるレーザ光を回折光学素子により複数のビームに分岐して多点同時に照射する例を示す図。
【符号の説明】
【0112】
10…表示装置としての液晶パネル、45a…第1のレーザ光、45b…第2のレーザ光、46(46a、46b)…集光素子としてのレンズ、47…改質層としての材料変質部、47a…第1の材料変質部、47b…第2の材料変質部、100…レーザ加工装置、101…第1レーザ光源(レーザ光源)、107…ステージ、121…レーザ制御部、122…レンズ制御部、123…ステージ制御部、132…ミラー制御部、201…第2レーザ光源、202…反射板としてのダイクロイックミラー、300…レーザ加工装置、500…電気光学装置としての液晶表示装置、2000…電子機器としての携帯電話、F…応力、P…基体としての基板、Q…分割片。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の製造方法であって、
前記基体に第1のレーザ光を照射して、第1の材料変質部を形成する工程と、
前記第1のレーザ光とは性質の異なる第2のレーザ光を照射して、前記第1の材料変質部に接続するように第2の材料変質部を形成する工程と、
前記基体に応力を加えて、分割片を形成する工程と、
を備えていることを特徴とする基体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基体の製造方法において、
前記基体が、レーザ光に対して透過性を有する材料で構成されており、
前記第1の材料変質部を形成する工程では、
前記基体に前記第1のレーザ光を集光素子で集光して照射させて、
前記第1の材料変質部を形成することを特徴とする基体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基体の製造方法において、
前記第1の材料変質部を形成する工程では、
前記第1のレーザ光は、チタンサファイヤレーザ、またはYAGレーザのうちのいずれかであり、
前記チタンサファイヤレーザ、または前記YAGレーザの基本波を照射させて、
前記第1の材料変質部を形成することを特徴とする基体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の基体の製造方法において、
前記第1の材料変質部を形成する工程では、
前記第1のレーザ光を回折光学素子により複数のビームに分岐し、前記複数のビームを照射させて、
前記第1の材料変質部を形成することを特徴とする基体の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の基体の製造方法において、
前記基体が、レーザ光に対して透過性を有する材料で構成されており、
前記第2の材料変質部を形成する工程では、
前記基体に前記第2のレーザ光を集光素子で集光して照射させて、
前記第2の材料変質部を形成することを特徴とする基体の製造方法。
【請求項6】
請求項1または請求項5に記載の基体の製造方法において、
前記第2の材料変質部を形成する工程では、
前記第2のレーザ光は、YAGレーザであり、
前記YAGレーザの基本波を照射させて、
前記第2の材料変質部を形成することを特徴とする基体の製造方法。
【請求項7】
請求項1、請求項5、請求項6のいずれか一項に記載の基体の製造方法において、
前記第2の材料変質部を形成する工程では、
前記第2のレーザ光を回折光学素子により複数のビームに分岐し、前記複数のビームを照射させて、
前記第2の材料変質部を形成することを特徴とする基体の製造方法。
【請求項8】
請求項1、請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載の基体の製造方法において、
前記第2の材料変質部を形成する工程では、
前記第1のレーザ光を入射する側の入射面と、前記第1のレーザ光を射出する側の射出面とのいずれか一方の面から前記第2のレーザ光を照射して、前記第2の材料変質部を形成することを特徴とする基体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の基体の製造方法において、
前記分割片を形成する工程では、
前記基体に曲げ応力または引っ張り応力のうち、いずれか一方の応力を加えて、前記分割片を形成することを特徴とする基体の製造方法。
【請求項10】
レーザ光を集光する集光素子と、
前記集光素子から集光された前記レーザ光が照射される基板を載置するステージと、
前記ステージを制御するステージ制御部と、
前記レーザ光は、第1のレーザ光と、前記第1のレーザ光とは性質の異なる第2のレーザ光と、を含み、
前記第1のレーザ光を照射する第1レーザ光源と、
前記第2のレーザ光を照射する第2レーザ光源と、
前記第1レーザ光源および前記第2レーザ光源を制御するレーザ制御部と、
を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項11】
請求項10に記載のレーザ加工装置において、
前記第1のレーザ光が、チタンサファイヤレーザ、YAGレーザのいずれかであり、
前記チタンサファイヤレーザ、または前記YAGレーザの基本波を照射する前記第1レーザ光源を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項12】
請求項10に記載のレーザ加工装置において、
前記第2のレーザ光が、YAGレーザであり、
前記YAGレーザの基本波を照射する前記第2レーザ光源を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項13】
レーザ光を集光する集光素子と、
前記集光素子から集光された前記レーザ光が照射される基板を載置するステージと、
前記ステージを制御するステージ制御部と、
前記レーザ光を照射するレーザ光源と、
前記レーザ光源を制御するレーザ制御部と、
前記レーザ光を反射する反射板と、
前記反射板を駆動して、前記レーザ光を第1のレーザ光と、前記第1のレーザ光とは経路の異なる第2のレーザ光とに、生成するミラー制御部と、
を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項14】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の基体の製造方法を用いて形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の表示装置を備えていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項16】
請求項15に記載の電気光学装置を備えていることを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−283318(P2007−283318A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110922(P2006−110922)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】