説明

基地局及び呼制御方法

【課題】移動局が発呼したにも係らず、移動局と発呼先装置との間に通信回線が確立されない場合に、通信回線を確立するための移動局の発呼に関する消費電力を低減するように制御する基地局及び呼制御方法を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る基地局103は、移動局101から発呼を受け取る第1通信部121と、第1通信部121が発呼を受け取ると、移動局101と、移動局101の発呼先装置117との間の通信回線の確立に関する処理を実行する制御部125とを備え、制御部125は、移動局101からの発呼で通信回線を確立できない場合、発呼先装置117に対して移動局101の代わりに代理発呼を行い、代理発呼を行っていることを示すデータを移動局101に送信するように第1通信部121を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局及び呼制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震や津波、火事などによって多数の人が被災するような状況では、消防、警察及び救急センター等に救急や救助を求める緊急通報が多数発呼されることになる。同じ発呼先に電話が集中するため、発呼先の回線の空きがなくなることがある。ある移動局(発呼者)がある発呼先装置に発呼した場合、図8のように発呼先装置が通話中であると、移動局には、交換機から基地局を介して発呼先装置が話中である旨の通知(話中通知)がなされる。当該通知を受け取った移動局は、一度発呼を切断し、間をおいて再び発呼を行う。発呼及び切断は、発呼先の回線が空くまで、つまり移動局と発呼先装置との間の通信回線が確立されるまで繰り返される。通信回線が確立されると、呼び出し中である旨の通知(呼出中通知)が移動局に送られる。発呼先装置が移動局からの発呼に応答することにより、通話が開始される。つまり、発呼先装置が通話中である場合、発呼者は、発呼先の回線が空くまで繰り返し発呼することになる。また、災害時には、被災者は、緊急通報以外にも家族等に自らの安否を伝えようと連絡をとろうとするが、家族が他の者と通話中であった場合、通話が終了するまで繰り返し発呼することが考えられる。
【0003】
近年、災害時の消防や家族等への発呼は、携帯端末(移動局)で行われることが多くなっている。しかし、携帯端末は、電力供給源が一般に小容量の電池であるため、充電なしでは長時間使用することができない。災害時には、建物の崩壊等により容易に充電できないことが多い。充電が不可能な状況で上記のように発呼先の回線が空くまで繰り返し発呼すると、携帯端末は発呼するたびに電力を消費し、発呼先装置との通話が可能になる前に電池が切れるおそれがある。災害時に通信手段が途絶えることは、救助の要請や安否の連絡ができなくってしまうため深刻な問題である。
【0004】
従来、緊急通報時に携帯端末の電池の消費電力を削減する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明では、緊急通報時に電話機能以外の付加機能(写真撮影機能やGPS(Global Positioning System)受信機能等)の動作を制限(停止又は禁止)する。これより、緊急通報が行われた後は、電話機能以外の機能についての消費電力を抑えられるため、電池の寿命を延ばすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−196980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の技術では、発呼に必要な電力を確保するために電話機能以外の機能についての消費電力は節約されるが、発呼自体に関する消費電力が節約されるわけではない。災害時に繰り返される発呼による電池の消耗を効果的に防ぐには、発呼自体に関する消費電力を低減させる必要がある。
【0007】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、移動局が発呼したにも係らず、移動局と発呼先装置との間に通信回線が確立されない場合に、通信回線を確立するための移動局の発呼に関する消費電力を低減するように制御する基地局及び呼制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した諸課題を解決すべく、第1の発明による基地局は、
移動局から発呼を受け取る通信部と、
前記通信部が前記発呼を受け取ると、前記移動局と、該移動局の発呼先装置との間の通信回線の確立に関する処理を実行する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記移動局からの発呼で前記通信回線を確立できない場合、前記発呼先装置に対して前記移動局の代わりに代理発呼を行い、前記代理発呼を行っていることを示すデータを前記移動局に送信するように前記通信部を制御する
ことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記制御部は、前記通信部が災害に関するデータを受信したことを検出した場合、前記代理発呼を行うことが望ましい。
【0010】
また、前記制御部は、前記通信部が受信した前記移動局からの同一の発呼先装置への発呼が所定回数を超えた場合、前記代理発呼を行うことが望ましい。
【0011】
また、前記制御部は、前記通信部が受信した前記移動局からの発呼が緊急通報を示す場合、前記代理発呼を行うことが望ましい。
【0012】
また、前記制御部は、前記代理発呼を行う場合、前記移動局と前記通信部との間の通信接続を切断または休止することが望ましい。
【0013】
また、前記制御部は、前記通信部が前記発呼に関する発呼データを受信すると、前記発呼データに基づいて、前記代理発呼が行われるべき前記移動局の優先度を決定することが望ましい。
【0014】
また、前記発呼データは、前記移動局の電力に関する情報を含み、前記制御部は、前記電力に関する情報に基づいて、前記優先度を決定することが望ましい。
【0015】
上述したように本発明の解決手段を装置として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0016】
例えば、本発明の第1の発明を方法として実現させた呼制御方法は、
移動局と、発呼先装置と、該移動局から発呼を受けて前記移動局と前記発呼先装置との間の通信回線の確立に関する処理を実行する基地局とを含むネットワークシステムにおける呼制御方法において、前記移動局からの発呼で前記移動局と前記発呼先装置との間の通信回線が確立されない場合に、
前記基地局が、前記発呼先装置に対して前記移動局の代わりに代理発呼を行うステップと、
前記基地局が、前記代理発呼を行っていることを示すデータを前記移動局に送信するステップと
を含むものである。
【発明の効果】
【0017】
上記のように構成された本発明に係る基地局及び呼制御方法によれば、移動局と発呼先装置との間に通信回線が確立されない場合に、基地局が代理発呼を行うため、移動局は、発呼先装置との間の通信回線を確立するために繰り返し発呼する必要がなくなる。これにより、移動局は、発呼に関する処理回数を低減でき、発呼による電力消費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るLTEシステムにおける概略的なネットワーク構成図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る基地局の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る移動局の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る基地局の処理を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る移動局の処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る移動局と発呼先装置との間の通信回線が確立されるまでのシーケンス図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係る基地局が代理発呼中であることを示す表示部の表示例である。
【図8】図8は、従来の移動局と発呼先装置との間の通信回線が確立されるまでのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るLTE(Long Term Evolution)システムにおける概略的なネットワーク構成図である。移動局101は、携帯電話やPHSといった無線通信端末などである。基地局103は、移動局101と無線通信を行い、移動局101と発呼先装置117との間の通信回線を確立するための処理を実行する装置である。MME(Mobility Management Entity)105は、位置登録、着信時の呼出処理及び基地局間ハンドオーバなどのモビリティ管理を行う装置である。S−GW(Serving Gateway)107は、パケット通信データや音声データなどのユーザデータ処理を行い、ユーザデータの中継を実現する装置である。P−GW(Packet Data Node Gateway)109は、コアネットワークとIMS(IP Multimedia Subsystem)111との接続を実現する装置である。コアネットワークは、MME105と、S−GW107と、P−GW109とで構成される。IMS111は、マルチメディアアプリケーションをIPパケットで実現するためのサブシステムである。MGW(Media Gateway)113は、音声をIPパケットに変換する、又はIPパケットを音声に変換して通信回線に送出する装置である。交換機115は、多対多の通信回線を相互接続し、回線交換網を構成する装置である。発呼先装置117とは、移動局101の使用者が通話を希望する通話相手先の装置であり、例えば携帯電話や固定電話である。移動局101が発呼を行うと、当該発呼を基地局103が受け取り、当該発呼に伴う信号を、コアネットワークとを介して、交換機115に伝える。交換機115と発呼先装置117との間の通信回線に空きがあれば、交換機115は、MGW113からの通信回線と、発呼先装置117の通信回線とを接続する。これにより、移動局101と発呼先装置117との間に通信回線が確立され、移動局101の使用者は、希望する相手と通話が可能となる。
【0021】
基地局103の機能について、図2を参照して説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る基地局の概略構成を示す機能ブロック図である。基地局103は、第1通信部121と、第2通信部123と、記憶部124と、制御部125とを有している。なお、第1通信部121の機能と、第2通信部123の機能とを合わせたものが、請求項における通信部に相当する。説明の便宜上、基地局の通信部を第1通信部121と、第2通信部123とに分けて記載している。
【0022】
第1通信部121は、移動局101から発呼を受け取ったり、移動局101と各種データを送受信したりする。第2通信部123は、コアネットワークに接続し、コアネットワーク側の装置とデータを送受信する。記憶部124は、移動局101から送られてくる移動局101の発呼に関するデータ(発呼データ)を記憶する。発呼データは、発呼元、発呼先、発呼時の時間を含めることができる。更に、発呼データは、移動局101の電池残量又はデータ送信電力などの情報(請求項における電力に関する情報)を含めることもできる。なお、これらのデータは、まとめて移動局101から送られてくることに限定されず、個別に送られてきてもよい。制御部125は、基地局103の各機能ブロックをはじめとして基地局103の全体を制御及び管理し、移動局101と発呼先装置117との間の通信回線の確立に関する処理を実行する。ここで、制御部125は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。
【0023】
制御部125についてより詳細に説明する。制御部125は、移動局101と発呼先装置117との間の通信回線が確立できない場合、代理発呼を行い、発呼先装置117との間の通信回線の確立を試みる。代理発呼とは、移動局101の代わりに、移動局101の識別子(電話番号等)を発呼元番号として、基地局103が発呼先装置117に発呼を行うことである。なお、識別子としては、基地局103の識別子を発呼元番号として利用してもよい。制御部125は、代理発呼を行うと、第1通信部121を制御して、代理発呼を行っていることを示すデータを移動局101に送信する。制御部125は、移動局101と発呼先装置117との間の通信回線に空きが生じるまで、代理発呼を行う。つまり、移動局101は、移動局101と発呼先装置117との間の通信回線が確立されるまで、繰り返し発呼する必要はない。そのため、移動局101は、発呼の処理回数の低減により、電力消費を低減することができる。
【0024】
続いて、移動局101の機能について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る移動局の概略構成を示す機能ブロック図である。移動局101は、移動局通信部131と、移動局記憶部133と、表示部135と、音出力部137と、移動局制御部139とを有している。
【0025】
移動局通信部131は、基地局103とデータを送受信する。移動局記憶部133は、移動局101の送信電力や電池残量等の各種情報を記憶する。表示部135は、基地局103が代理発呼している場合に、その旨を表示するもので、液晶表示パネルや有機EL表示パネル等を用いて構成される。音出力部137は、基地局103が代理発呼している場合に、その旨に対応する音を出力するもので、例えばスピーカである。移動局制御部139は、移動局101の各機能ブロックをはじめとして移動局101の全体を制御及び管理する。ここで、移動局制御部139は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。
【0026】
移動局制御部139についてより詳細に説明する。移動局制御部139は、基地局103が代理発呼を行っていることを示すデータを受信すると、表示部135又は音出力部137を制御して、基地局103が代理発呼中であることを移動局101の使用者に通知する。この通知により、移動局101の使用者は、移動局101と発呼先装置117との間の通信回線が確立されるまで繰り返し発呼する必要がないことを認識できる。
【0027】
基地局103が、代理発呼を行う方法について図4、図5及び図6を参照して説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る基地局の処理を示すフローチャートである。図5は、本発明の一実施形態に係る移動局の処理を示すフローチャートである。図6は、本発明の一実施形態に係る、移動局と発呼先装置との間の通信回線が確立されるまでのシーケンス図である。以下、一例として災害発生時の基地局103の代理発呼についてとりあげる。災害発生時には、発生前にETWS(Earthquake and Tsunami Warning System:地震津波警報システム)が、地震や津波等の広域災害が発生しうることを示す災害に関する警報(請求項における災害に関するデータ)を、コアネットワークと基地局103とを介して移動局101に発するものとする。
【0028】
制御部125は、第2通信部123がコアネットワークを介して警報を受信したか否かを監視する(ステップS101)。災害発生時には、119番や110番などの緊急通報先の回線が埋まりやすく、また被災者が家族に安否を確実に伝えたいとのニーズがあるため、代理発呼の必要性が特に増すと考えられる。そこで、基地局103は、警報の有無を元に、以下の代理発呼処理を進めるか否かを決定する。制御部125が、警報の受信を検出した後(ステップS101のYes)、移動局制御部139が、移動局通信部131を制御して、発呼を行い、当該発呼に関する発呼データを基地局103に送信する(ステップS201)。移動局制御部139は、発呼データに電池残量又はデータ送信電力などの情報を含めて送ることができるが、これらの情報を移動局記憶部133に記憶させ、基地局103からの情報要求に応じて送ることもできる。なお、第2通信部123が、警報が誤報であることを示すデータを受信すると、制御部125は、以下の代理発呼処理を中止することができる。
【0029】
制御部125が、第1通信部121が移動局101の発呼及び発呼データを受信したことを検出すると(ステップS102)、制御部125は、発呼データを記憶部124に記憶させる(ステップS103)。発呼データは、発呼元と発呼先とで通信回線が確立されるまで保持される。
【0030】
そして、制御部125は、移動局101と発呼先装置117との間の通信回線を確立しようとする(ステップS104)。制御部125が、交換機115と発呼先装置117との間の通信回線が確立され、発呼先装置117からの応答を待っていることを示すデータ(呼出中通知)を受信すると(ステップS104のYes)、移動局101は、発呼先装置117の応答次第、発呼先装置117と通話が可能となる。図6のように発呼先装置117が、通話中であると、制御部125は、交換機115と発呼先装置117との間の通信回線に空きがないことを示すデータ(話中通知)を受信する(ステップS104のNo)。
【0031】
次に、制御部125は、移動局101のために代理発呼が必要か否かを判断する(ステップS105)。制御部125は、記憶部124に記憶されている発呼先の情報から、発呼先が119番や110番などの緊急通報であると判断した場合に、代理発呼が必要と判断することができる。また、制御部125は、記憶部124に記憶されている発呼元及び発呼先の情報から、同じ移動局101から同じ発呼先装置117への発呼が所定回数を越えた場合に、代理発呼が必要と判断することもできる。所定回数の値を大きく設定すればするほど、緊急性の強い発呼に対してのみ優先的に代理発呼することが可能となる。なお、制御部125は、代理発呼の必要性について判断することなく、移動局101と発呼先装置117との間の通信回線が確立されない場合は常に代理発呼することもできる。
【0032】
発呼先装置117との間の通信回線を確立できなかった移動局101が複数存在する場合は、制御部125は、どの移動局101から優先的に代理発呼を行うかを決定することができる(ステップS106)。基地局103の処理能力等が原因で、代理発呼が可能な回線の数に限りがある場合に、制御部125が、代理発呼が行われるべき移動局の優先度を決定することは有利となる。制御部125は、代理発呼が行われるべき移動局の優先度を、例えば、記憶部124に記憶されている電池残量、データ送信電力又は発呼時の時間から求めることができる。代理発呼が行われない移動局101は、自ら何度も発呼を繰り返し、電池を消耗するおそれがあり、電池残量が少ない移動局101ほど、自ら発呼できる回数が限られてしまう。よって、電池残量が少ない移動局101に対して制御部125が優先的に代理発呼を行うと有利である。また、データ送信電力の大きい移動局101ほど、発呼処理に必要な電力が大きいので、自ら発呼できる回数が限られてしまう。よって、データ送信電力が大きい移動局101に対して制御部125が優先的に代理発呼を行うと有利である。更に、発呼時の時間から長い時間が経過している移動局101ほど、待ち時間が長いので、発呼先装置117との通話を強く望んでいると考えられる。よって、発呼時からの経過時間が長い移動局101に対して制御部125が優先的に代理発呼を行うと有利である。なお、制御部125は、電池残量、データ送信電力又は発呼時の時間などの発呼データをステップS102で受信していたが、優先度を決定する段階で移動局101に要求して、取得することもできる。
【0033】
優先度の決定後、制御部125は、移動局101の識別子を発呼元番号として、移動局101に関する発呼先装置117に発呼を開始する(代理発呼を開始する)(ステップS107)。代理発呼は、図6のように、繰り返し行われる。繰り返す周期は、一定であっても可変であってもよく、また優先度に応じて周期の長さを決定することもできる。代理発呼を行う場合、制御部125は、第1通信部121を介して移動局101に代理発呼を行っていることを示すデータ(代理発呼開始通知)を送信する(ステップS108)。代理発呼中、制御部125は、第1通信部121と移動局101との無線接続(請求項における通信接続)を切断又は休止することができる(ステップS109)。無線接続の切断とは、基地局103と移動局101との間で制御メッセージのやりとりの停止及びセッションの開放を意味する。無線接続の休止とは、ドーマント状態のことであり、基地局103と移動局101との間で制御メッセージのやりとりは停止されるものの、セッションは維持されることを意味する。このように制御部125が、移動局101との無線接続を切断又は休止することにより、無線接続を維持するために必要な制御メッセージの送受信が不要となる。そのため、移動局101は、制御メッセージを送受信するために必要となる電力を節約することができる。制御部125は、第1通信部121と移動局101との無線接続を切断又は休止する場合、無線接続の切断又は休止を示すデータを、代理発呼開始通知と併せて移動局101に送信することができる。
【0034】
移動局通信部131が、基地局103から代理発呼開始通知を受信すると(ステップS202)、移動局制御部139は、基地局103が代理発呼中であることを移動局101の使用者に通知する(ステップS203)。当該通知は、例えば、移動局制御部139が、表示部135に図7のような文字を表示させることにより実現することができる。移動局101と基地局103との無線接続が切断又は休止されている場合には、無線接続を維持するために必要な制御メッセージの送受信が行われないので、移動局制御部139は図7のように「省電力モード」との記載を表示部135に表示させることができる。移動局制御部139は、表示部135ではなく音出力部137を制御して、基地局103が代理発呼中であることを移動局101の使用者に通知することもできる。例えば、移動局制御部139は、音出力部137に「代理発呼中」と音声で出力させたり、代理発呼中に対応する特別な音を出力させたりできる。
【0035】
移動局101の使用者は、発呼先との通話を望まなくなった場合、オンフックボタンを押下することになる。オンフックボタンとは、移動局101と発呼先装置117との間のいかなる通信回線を切断するために押下されるボタンであり、例えば、図7の終了マークに対応するボタンである。移動局制御部139がオンフックボタンへの押下を検出すると(ステップS204のYes)、基地局103の代理発呼は不要となるので、移動局制御部139は、基地局103に代理発呼不要を示すデータを送信する(ステップS205)。
【0036】
基地局103の制御部125が、第1通信部121が代理発呼不要を示すデータを受信したことを検出すると(ステップS110のYes)、制御部125は、代理発呼を中止する(ステップS115)。
【0037】
制御部125が、代理発呼不要を示すデータを受信する前に(ステップS110のNo)、交換機115と発呼先装置117との間の通信回線に空きが生じた場合(ステップS111のYes)、図6のように、基地局103は、発呼先装置117からの応答を待っていることを示すデータ(呼出中通知)を受信する(ステップS112)。呼出中通知の受信後、制御部125は、記憶部124に記憶されている発呼元のデータに基づいて、移動局101と再接続を行う(ステップS113)。そして、制御部125は、呼出中通知を移動局101に送信し(ステップS114)、代理発呼を終了する(ステップS115)。
【0038】
移動局101は、呼出中データを受信すると(ステップS206)、代理発呼中を示す通知を終了する(ステップS207)。図6のように、発呼先装置117の応答次第、移動局101と発呼先装置117との間の通信回線が確立され、移動局101は、発呼先装置117と通話を開始する(ステップS208)。
【0039】
このように本実施形態では、基地局103の制御部125は、第1通信部(通信部)121が受け取った移動局101からの発呼で通信回線を確立できない場合、代理発呼を行い、代理発呼を行っていることを示すデータを移動局101に送信するように第1通信部121を制御する。つまり、制御部125は、代理発呼を行い、発呼先装置117との間の通信回線の確立を試みる。これにより、移動局101が、発呼先装置117との間の通信回線が確立されるまで、繰り返し発呼する必要はなくなる。よって、移動局101は、発呼の処理回数の低減により、電力消費を低減することができる。
【0040】
また、本実施形態では、基地局103の制御部125は、第2通信部123(通信部)が災害に関する警報を受信したことを検出すると、代理発呼を行う。これにより、制御部125は、災害時にのみ代理発呼を行う。基地局103が代理発呼できる回線の数に限りがある場合でも、警報受信前に全ての基地局103の代理発呼用回線が埋まっているために、制御部125が災害時に代理発呼できないという状況を回避することができる。
【0041】
また、本実施形態では、基地局103の制御部125は、第1通信部121が受信した移動局101からの同一の発呼先装置117への発呼が所定回数を超えた場合、前記代理発呼を行う。被災者が家族に自己の安否を確実に伝えたい場合、たとえ発呼先装置117が話中であったとして、回線がつながるまで繰り返し発呼することが予想される。本実施形態により、制御部125は、このような通話を強く希望する緊急性の高い発呼を優先的に代理発呼することができる。よって、移動局101の使用者が安否の連絡をするまでに、移動局101の電池が切れてしまうという状況を回避することができる。
【0042】
また、本実施形態では、基地局103の制御部125は、第1通信部121が受信した移動局101からの発呼が緊急通報を示す場合、代理発呼を行う。これにより、制御部125は、基地局103が代理発呼できる回線の数に限りがある場合でも、緊急通報の発呼に対して優先的に代理発呼でき、災害時の被災者の迅速な救助を可能にする。また、移動局101の使用者が救助を要請する前に、移動局101の電池が切れてしまうという状況を回避することができる。
【0043】
また、本実施形態では、基地局103の制御部125は、代理発呼を行う場合、移動局101と第1通信部121との間の通信接続を切断または休止する。つまり、移動局101は、基地局103の代理発呼中、移動局101と第1通信部121との間の無線接続を維持するために、制御メッセージを送受信する必要がなくなる。そのため、移動局101は、制御メッセージを送受信するために必要となる電力を節約することができる。移動局101は、節約された電力分、通話までに電池が切れてしまう可能性をより低くできる。
【0044】
また、本実施形態では、基地局103の制御部125は、第1通信部121が発呼に関する発呼データを受信すると、発呼データに基づいて、代理発呼が行われるべき移動局101の優先度を決定する。これにより、制御部125は、電池残量、データ送信電力又は発呼時の時間などの情報を含む発呼データから、代理発呼の必要性が高い移動局101のために優先的に代理発呼することができる。優先度を決定することは、基地局103が代理発呼できる回線の数に限りがある場合に、特に有利となる。
【0045】
また、本実施形態では、基地局103の制御部125は、移動局101の電池残量又はデータ送信電力などの情報に基づいて、前記優先度を決定する。これにより、基地局103が代理発呼できる回線の数に限りがある場合にも、制御部125は、移動局101と発呼先装置117との間の通信回線が確立されるまでに電池の切れる可能性の高い移動局101のために優先的に代理発呼することができる。
【0046】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0047】
例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
101 移動局
103 基地局
105 MME
107 S−GW
109 P−GW
111 IMS
113 MGW
115 交換機
117 発呼先装置
121 第1通信部
123 第2通信部
124 記憶部
125 制御部
131 移動局通信部
133 移動局記憶部
135 表示部
137 音出力部
139 移動局制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局から発呼を受け取る通信部と、
前記通信部が前記発呼を受け取ると、前記移動局と、該移動局の発呼先装置との間の通信回線の確立に関する処理を実行する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記移動局からの発呼で前記通信回線を確立できない場合、前記発呼先装置に対して前記移動局の代わりに代理発呼を行い、前記代理発呼を行っていることを示すデータを前記移動局に送信するように前記通信部を制御する
ことを特徴とする基地局。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局において、
前記制御部は、
前記通信部が災害に関するデータを受信したことを検出した場合、前記代理発呼を行う
ことを特徴とする基地局。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基地局において、
前記制御部は、前記通信部が受信した前記移動局からの同一の発呼先装置への発呼が所定回数を超えた場合、前記代理発呼を行う
ことを特徴とする基地局。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基地局において、
前記制御部は、前記通信部が受信した前記移動局からの発呼が緊急通報を示す場合、前記代理発呼を行う
ことを特徴とする基地局。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基地局において、
前記制御部は、前記代理発呼を行う場合、前記移動局と前記通信部との間の通信接続を切断または休止する
ことを特徴とする基地局。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の基地局において、
前記制御部は、前記通信部が前記移動局から前記発呼に関する発呼データを受信すると、前記発呼データに基づいて、前記代理発呼が行われるべき前記移動局の優先度を決定する
ことを特徴とする基地局。
【請求項7】
請求項6に記載の基地局において、
前記発呼データは、前記移動局の電力に関する情報を含み、
前記制御部は、前記電力に関する情報に基づいて、前記優先度を決定する
ことを特徴とする基地局。
【請求項8】
移動局と、発呼先装置と、該移動局から発呼を受けて前記移動局と前記発呼先装置との間の通信回線の確立に関する処理を実行する基地局とを含むネットワークシステムにおける呼制御方法において、前記移動局からの発呼で前記移動局と前記発呼先装置との間の通信回線が確立されない場合に、
前記基地局が、前記発呼先装置に対して前記移動局の代わりに代理発呼を行うステップと、
前記基地局が、前記代理発呼を行っていることを示すデータを前記移動局に送信するステップと
を含む呼制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−211399(P2011−211399A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75830(P2010−75830)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】