説明

基地局装置

【課題】 内部に浸水があった場合にも、基地局装置としての機能をできる限り維持し、サービスを継続させることのできる基地局装置を提供する。
【解決手段】 筐体内に、通信装置を備えてなる基地局装置であり、通信装置に接続して、筐体内の浸水を検出する検出器と、検出器が浸水を検出した場合に、当該検出器が接続する通信装置の動作を停止制御する制御装置と、を有し、制御装置は、浸水を検出した検出器が接続する通信装置の動作を停止させる際に、当該動作を停止させる通信装置のバッファ内の情報を、出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機システムやPHS等における基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機システムなどの基地局装置は通常、屋外に配備されている。このため、雨水などが装置内部に入り込まないよう、筐体の目地にはガスケットやパッキンなどを配して浸水を防止している。
【0003】
なお、特許文献1には、筐体の浸水検知構造において、前記筐体の設置状態で底になる筐体内壁面に傾斜をもたせるとともに筐体内に侵入する水が当該傾斜を伝い流れ込む窪みを形成し、前記窪み内に漏水センサを配置した筐体の漏水検知構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−135955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の基地局装置においても、例えば修理等で設置場所で筐体を開けて作業し、再び筐体を閉じることがある。この際、修理担当者の気がつかないうちに、ガスケットやパッキンが変形するなどして、その水密・気密性に影響がでる場合がある。さらに筐体構造の経時劣化によっても水密・気密性に影響があることがある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、内部に浸水があった場合にも、基地局装置としての機能をできる限り維持し、サービスを継続させることのできる基地局装置を提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、通信にかかる情報を保持するバッファを備え、回路要素に接続する通信装置を筐体内に備えてなる基地局装置であって、前記通信装置に接続し、前記筐体内の浸水を検出する検出器と、前記検出器により浸水が検出された場合に、前記通信装置の動作を停止制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記検出器により浸水が検出されて前記通信装置の動作を停止させる際に、前記通信装置のバッファ内の情報を、前記回路要素に出力させる。これにより、浸水しても、基地局装置としての機能をできる限り維持し、サービスを継続させることができる。
【0008】
さらに、基地局装置において、回路要素は、前記通信装置よりも、筐体上方に配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る基地局装置の筐体の一部を示した説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る基地局装置における通信装置を示した構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る基地局装置の筐体は、ケース10を含み、このケース10内部には、図1に示すように、ケース10の外壁の一部と、隔壁11a,11bとによって画成され、この隔壁11aによって互いに水密又は気密状態となる複数の格納室12a,b,…nを含む。各格納室の天面の隔壁11bには、コネクタ等を内部から導出するための凸部が形成されている。この隔壁11bもまた、ケース10上部の空間との間で互いに水密又は気密状態となるよう構成されている。また、ケース10の外壁内部には、ガスケットを設けてあり、ケースの蓋(不図示)との間の目地からの浸水を防止している。
【0011】
なお、ここで各格納室12を水密又は気密の状態とする方法としては、隔壁11a,b内部など、各格納室と蓋部と間の目地にもガスケットを用いたり、各格納室12ごとに個別の蓋を設置したり、コネクタを導出する開口をシールするなど、通常の防水施工方法を採用することができる。
【0012】
これら基地局装置内の各格納室12には、それぞれ通信装置30が格納される。この通信装置30には、浸水検出器としての水センサ40が接続されており、この水センサ40は、通信装置30に含まれる回路の筐体内下端よりも低い位置であって、例えば各格納室12の底面近傍に設置される。なお、水センサ40は、格納室12の底面に接触しないように、熱電導性の低い素材を用いて形成した保持部材によって保持しておく。これにより、格納室12の底面に生じ得る結露を浸水と誤判断することがなくなる。また、保持部材の素材を熱電導性の低いものとしておくことで当該保持部材自体に結露が生じることを防止している。
【0013】
通信装置30は、図2に示すように、制御部31と、情報記憶部32と、プログラム記憶部33と、通信部34とを主として含んで構成されている。またこれら通信装置30は、サーキュレータや分波器など、各通信装置30によって共用される回路要素50を介して公衆回線網に接続されている(図1参照)。
【0014】
なお、ここで本実施の形態において特徴的なことの一つは、この回路要素50が格納室12よりも筐体上方側に配置されることである。これにより筐体内で浸水を検出したとき(筐体内部に浸水が生じているとき)にも、当該回路要素50部分が水没するまでの時間を稼ぐことができるようになっている。
【0015】
ここで通信装置30の動作について説明する。制御部31は、プログラム記憶部33に格納されているプログラムに従って動作しており、通常の状態(水センサ40が浸水を検出していない状態)では、通常の基地局としての動作を行っている。具体的には、通信部34にて受信される移動局側からの信号を復調して情報を取り出し、この取り出した情報を情報記憶部32にバッファし、このバッファした情報を回路要素50を介して公衆回線網側に出力する動作を行っている。また、公衆回線網から回路要路50を介して情報を受信して情報記憶部32にバッファしておき、このバッファした情報を変調して通信部34に出力し、別の周波数の搬送波に乗せて、移動局側に送出させるなどの動作を行っている。
【0016】
またこの制御部31は、水センサ40が浸水を検出したことを示す信号を出力している状態では、浸水を管理者側に報知するとともに、同一筐体内の他の通信装置30に浸水を報知する等の処理(浸水時処理)を実行している。この浸水時処理の具体的内容については後に詳しく述べる。
【0017】
情報記憶部32は、通信に係る情報を保持するバッファとして動作している。この情報記憶部32には従って現在通信中の情報が格納されている。プログラム記憶部33は、制御部31によって実行されるプログラムが格納されている。
【0018】
通信部34は、制御部31から入力される指示に従って動作しており、アンテナANTに到来した信号を受信して制御部31に出力し、また制御部31から入力される信号をアンテナANTを介して放射する動作を行っている。
【0019】
ここで制御部31の浸水時処理の具体的内容について説明する。制御部31は、浸水が検出された旨の信号が入力されると、同一筐体内の他の通信装置30のいずれか一つ(予め定めたものであってもよいし、所定の支援要求信号を出力して最も早く支援可能の応答を返答したものであってもよい)に対して情報記憶部32に格納されている情報を送出する。以下、この情報を受け入れた通信装置30を支援モード側通信装置30と呼び、浸水時処理を行っている制御部31を含む通信装置30を浸水時モード側通信装置30と呼んで区別する。
【0020】
浸水時モード側通信装置30の制御部31は、支援モード側通信装置30に対して、情報記憶部32に格納されていた情報を出力し終えると、シャットダウン処理を実行し、電源を切断して浸水時モード側の通信装置30の動作を停止制御する。これにより、万が一浸水量が多くなり、浸水時モードとなった通信装置30の一部が水没したとしても、短絡等によって機器自体が焼損することを防止できる。
【0021】
また支援モード側通信装置30の制御部31は、浸水時モード側通信装置30の制御部31から入力される情報を情報記憶部32に格納して、浸水時モード側通信装置30が本来行うべきであった通信処理を継続して行う。なお、支援モード側通信装置30は、浸水時モード側通信装置30から各種通信パラメータを受け入れて、当該通信パラメータを用いて通信処理を継続することとしてもよい。
【0022】
次に本実施の形態の基地局装置の動作について説明する。ケース10の外壁のうち、格納室12のうち一つ(以下、浸水格納室と呼ぶ)に対応する位置で、ケース10と蓋部との間の目地を防水するためのガスケットが欠損した場合に、基地局装置が雨にさらされた結果、当該欠損部分から基地局筐体内部に浸水があったとする。この浸水格納室12の内部には雨水がその下部から貯留し始めて、水センサ40に水面が接すると、水センサ40が浸水していることを表す信号を発する。
【0023】
このとき、他の格納室12と、この浸水格納室12との間は隔壁11a等によって互いに水密の構造となっているので、他の格納室12に対する浸水はない。
【0024】
浸水格納室12内に格納されている通信装置30は、浸水時モードとなって、予め自らに固有に割当てられている機器番号など、当該通信装置30や基地局装置を特定する情報とともに、浸水が発生していることを報知する信号を公衆回線側に送信する。これにより電話局側で浸水の発生を知ることができるようになる。
【0025】
また、この浸水時モードとなった通信装置30は、同一筐体内の他の通信装置30に対して支援要求信号を送出する。他の通信装置30は、この支援要求信号を受け入れると、支援可能との応答を行う。このとき、最初に支援可能との応答を行った通信装置30に対して、浸水時モードとなった通信装置30が支援モードとなるよう要求する。
【0026】
浸水時モードとなった通信装置30の制御部31は、支援モードとなった通信装置30の制御部31に対して情報記憶部32に格納されている情報を出力する。支援モードとなった通信装置30は、この情報を受け入れて、情報記憶部32に格納し、当該情報に係る通信を継続する。
【0027】
なお浸水時モードとなった通信装置30の制御部31は、例えば1つのパケットの送信中に浸水時モードとなったときには、パケットの途中であっても通信を中断して、当該パケットに係る情報を他の通信装置30に出力し、支援モードとなった他の通信装置30側で、当該パケットを再送することとしてもよい。
【0028】
浸水時モードとなった通信装置30の制御部31は、シャットダウンの処理を行って電源を切断する。なお、支援モードとなる通信装置30は、予め冗長な構成として配備されているものであってもよい。すなわち、予備の通信装置30を設置しておき、通常は当該予備の通信装置30は使わずに、他の通信装置30が浸水時モードとなったときに、当該予備の通信装置30が支援モードとなるようにしておいてもよい。
【0029】
また、ここでは浸水時モードとなった通信装置30の制御部31が当該通信装置30の停止制御を行っているが、例えば回路要素50内に通信装置30の停止制御を行わせるための制御装置を設けてもよい。また、浸水時モード側通信装置30は回路要素50を介して支援モード側通信装置30へと情報を送出するようにすればよい。
【符号の説明】
【0030】
10 ケース、11 隔壁、12 格納室、30 通信装置、31 制御部、32 情報記憶部、33 プログラム記憶部、34 通信部、40 水センサ、50 回路要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信にかかる情報を保持するバッファを備え、回路要素に接続する通信装置を筐体内に備えてなる基地局装置であって、
前記通信装置に接続し、前記筐体内の浸水を検出する検出器と、
前記検出器により浸水が検出された場合に、前記通信装置の動作を停止制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記検出器により浸水が検出されて前記通信装置の動作を停止させる際に、前記通信装置のバッファ内の情報を、前記回路要素に出力させることを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局装置において、
前記回路要素は、前記通信装置よりも、筐体上方に配置されることを特徴とする基地局装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−159614(P2009−159614A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14304(P2009−14304)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【分割の表示】特願2003−435147(P2003−435147)の分割
【原出願日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】