説明

基材の塗工方法及び塗工装置

【課題】ワイヤーロッドを回転することによって基材に塗液を塗工する際、インラインでワイヤーロッドへの異物の固着を抑制しつつ、塗液の目詰まりを防止して、塗工量の経時変化がなく塗膜品質及び塗膜の膜厚精度を安定して確保でき、また、設備稼働率の向上に寄与できる基材の塗工方法及び塗工装置を提供すること。
【解決手段】塗液貯留部2に貯留する塗液に少なくとも外周部の一部を浸漬し、ロッドの外周部にワイヤーを巻回したワイヤーロッド3を回転させて、基材の表面に塗液を塗工する基材の塗工方法であって、前記ワイヤーロッド3に弾性波を照射しながら塗工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてリチウムイオン2次電池の電極に使用する基材に、ワイヤーロッドを用いて塗液を塗工する基材の塗工方法及び塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン2次電池の電極(正極及び負極)は、集電体であるアルミ箔や銅箔などの基材表面に活物質とバインダ樹脂とをスラリー状にしたペーストを薄膜状に塗工し、乾燥することによって製造される。この塗工設備のコスト削減のためには、乾燥速度向上が必須となっている。しかし、乾燥するときの熱流入により薄膜状に塗工されたペースト内部で活物質とバインダ樹脂とが遊離し、バインダ樹脂が膜厚方向へ偏析するマイグレーションが生じやすい。
そのため、バインダ樹脂を基材に塗工してから、その上にバインダ樹脂抜きの合剤層を塗工する、いわゆる2層塗工が行われている。バインダ樹脂は、活物質間及び活物質と基材間の接合には不可欠であるが、多すぎるとリチウムイオンの移動を妨げ電池特性を低下させてしまうという問題がある。したがって、バインダ樹脂を塗液として基材に塗工する際の膜厚を高精度に維持することは、電池特性上、非常に重要である。
そこで、現在、膜厚精度を維持しやすいワイヤーロッドを用いて基材へのバインダ樹脂の薄膜塗工を行っている。
【0003】
しかし、一般にワイヤーロッドは、外径が10(mm)程度の小径ロッドに外径が数十(μm)程度のワイヤーを幅方向に緊密に巻回したものであって、ワイヤー間の隙間は狭い。このワイヤー間の狭い隙間にバインダ樹脂の塗液が入り込むと、塗液として塗工されずにいつまでも残る液淀みが生じやすい。その結果、液淀みとして残った塗液は、互いに結着し異物としてワイヤー間の隙間に固着することがある。
ワイヤーロッドのワイヤー間に塗液が異物として固着すると、ワイヤー間の隙間が目詰まり状態となる。そして、目詰まりした箇所は、塗液を保持する容積が減少する。
図5(a)に、ワイヤーロッド3のワイヤー4、4間に異物Sが固着した状態を示し、図5(b)に、ワイヤー4、4間に異物Sが固着して塗液Pを保持する容積42が異物Sの体積分だけ減少している様子を示す。
この目詰まりしたワイヤーロッドを用いて基材に塗液を塗工すると、塗工した塗膜の膜厚が部分的に薄くなるストリーク現象を起こしたり、全体的に薄くなる塗工量の経時変化を起こす。
そこで、ワイヤーロッドの目詰まりに対応する技術として、例えば、特許文献1には、ロッドバー(ワイヤーロッドに相当)のワイヤー間の溝に捕捉された異物等を異物除去用ブラシと洗浄水と吸引ノズルとで除去する異物除去技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−246358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された異物除去技術には、以下の問題がある。
まず、狭いワイヤー間の隙間に入るブラシの毛先は、先端が細いので掻きだす力が弱く、ワイヤーの隙間に固着した異物を除去しにくいという問題がある。これに対して、掻きだす力を強くするためにブラシをステンレス等の金属製として硬くする方法も考えられるが、かえってワイヤーロッドのワイヤー表面を傷つけ、そのワイヤー傷の跡が塗膜に転写して塗工品質を低下させる。
【0006】
また、特許文献1に記載された塗布方法は、ファウンテンノズルより吹き出した塗料が走行するウエブ(基材に相当)上に塗布された後、バッキングロール上にロッドバーを押圧することによってウエブ上の塗布量を計量するロッドコーターに関するものである。すなわち、塗液の塗布工程と塗布量を計量する工程とが分かれている塗布方法において、適用できる異物除去技術である。
これに対して、塗液の塗布工程と塗布量を計量する工程とが一体で行われている塗布方法、具体的には、塗液貯留部に貯留された塗液にワイヤーロッドを浸漬させて、ワイヤーロッドを回転することによって塗液を掻き上げながら塗工する方法には、不向きであると言える。なぜなら、異物除去用ブラシと洗浄水と吸引ノズルとで除去する技術では、塗工するためワイヤーロッドのワイヤー間の溝に保持した塗液までが、同時に除去されてしまうからである。
さらに、バインダ樹脂のように固着しやすく、いったん固着すると剥離することが困難な塗液の場合、例えば、塗工設備がしばらく休止しただけで、ワイヤーロッドのワイヤー間の溝に目詰まりが発生するので、設備稼働率の低下という問題がある。
【0007】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤーロッドを回転することによって基材に塗液を塗工する際、インラインでワイヤーロッドへの異物の固着を抑制しつつ、塗液の目詰まりを防止して、塗工量の経時変化がなく塗膜品質及び塗膜の膜厚精度を安定して確保でき、また、設備稼働率の向上に寄与できる基材の塗工方法及び塗工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る基材の塗工方法及び塗工装置は、次のような構成を有している。
(1)塗液貯留部に貯留する塗液に少なくとも外周部の一部を浸漬し、ロッドの外周部にワイヤーを巻回したワイヤーロッドを回転させて、基材の表面に塗液を塗工する基材の塗工方法であって、
前記ワイヤーロッドに弾性波を照射しながら塗工することを特徴とする。
ここで、ロッドには、内部が中実と中空の別は問わない。また、弾性波には、超音波を含む。
【0009】
(2)(1)に記載された基材の塗工方法において、
前記ワイヤーロッドの端部に振動子を配設し、該振動子が振動して前記弾性波を照射することを特徴とする。
ここで、ワイヤーロッドの端部とは、外周部に巻回されたワイヤーの幅方向端からロッドの幅方向端までを意味する。また、振動子はロッドに連結しても、内蔵しても、接触するだけでもよい。
(3)(2)に記載された基材の塗工方法において、
前記ワイヤーに前記振動子を接触させて、前記弾性波を照射することを特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された基材の塗工方法において、
前記弾性波は、所定時間毎に間欠的に照射することを特徴とする。
(5)(4)に記載された基材の塗工方法において、
前記弾性波の照射時間は、前記ワイヤーロッドの外周部が前記塗液貯留部の塗液に浸漬している箇所の周長に比例し、前記弾性波の非照射時間は、前記ワイヤーロッドの外周部が前記塗液貯留部の塗液から露出している箇所の周長に比例することを特徴とする。
(6)(5)に記載された基材の塗工方法において、
前記ワイヤーロッドの回転数の増加に従って前記弾性波の周波数を増加させ、前記照射時間と前記非照射時間との合計が前記弾性波の周期の整数倍であることを特徴とする。
(7)塗液を貯留する塗液貯留部と、ロッドの外周部にワイヤーを巻回したワイヤーロッドとを備え、前記塗液貯留部に貯留する塗液に少なくとも外周部の一部を浸漬した前記ワイヤーロッドを回転させて、基材の表面に塗液を塗工する基材の塗工装置であって、
前記ワイヤーロッドに弾性波を照射する振動子を前記ワイヤーロッドの端部に配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明の基材の塗工方法は、以下のような作用効果を奏する。
(1)に記載された発明は、塗液貯留部に貯留する塗液に少なくとも外周部の一部を浸漬し、ロッドの外周部にワイヤーを巻回したワイヤーロッドを回転させて、基材の表面に塗液を塗工する基材の塗工方法であって、ワイヤーロッドに弾性波を照射しながら塗工するので、以下に説明する作用効果を奏する。
【0011】
(1)の発明は、ワイヤーロッドに弾性波を照射するので、ワイヤーロッドには弾性波の進行方向と平行に振動する縦波と進行方向と垂直に振動する横波が作用する。この縦波と横波は、ロッドの外周部に巻回したワイヤーに伝達する。ロッドとワイヤーとは共振周波数が異なり、ロッドとワイヤーとの間、及び隣同士のワイヤー間には僅かな隙間が存在するので、ロッドとワイヤーとに伝達された縦波及び横波の影響を受けて、ロッドとワイヤーとは別々の方向及び振幅で振動する。この振動はワイヤー間でも生じるので、ワイヤー間の隙間は拡大、縮小を繰り返すことになる。ワイヤー間の隙間が拡大、縮小を繰り返すと、その隙間に固着した異物は、引張り・圧縮の荷重を受けて剥離しやすくなる。その結果、異物はワイヤーから分離、除去される。異物は、ワイヤー自身の振動によって除去されるので、ブラシで掻き取る方法と違い、確実性が高い。したがって、ワイヤーロッドへの異物の固着を抑制しつつ、塗液の目詰まりを防止でき、塗工量の経時変化がなく塗膜品質及び塗膜の膜厚精度を安定して確保できる。また、ワイヤーを傷つける心配もないので、塗膜品質の安定に役立つことができる。
【0012】
また、(1)の発明は、ワイヤーロッドに弾性波を照射しながら塗工するので、ワイヤーの振動に伴ってワイヤー間の隙間が変化し、ワイヤーロッドのワイヤー間に古い塗液がいつまでも残留(液淀み)することが少ない。そのため、ワイヤー間に目詰まりが生じにくく、塗液を保持する容積が略一定に維持されるので、塗工量の経時変化がなく塗膜の膜厚精度を安定して確保できる。また、インラインで、すなわち塗工設備が稼働しているときにワイヤーロッドの異物除去を行うので、ワイヤーロッドの交換頻度が減り、稼働率の向上にも寄与できる。
【0013】
(2)に記載された発明は、(1)に記載された基材の塗工方法において、ワイヤーロッドの端部に振動子を配設し、振動子が振動して弾性波を照射するので、ワイヤーロッドの端から幅方向全体に弾性波が伝達されやすい。同様に、ロッドの外周部に巻回されたワイヤーにも端から幅方向全体に弾性波が伝達されやすい。その結果、ワイヤーロッド及びワイヤー全体に振動が伝わり、どの部位の異物も確実に除去しやすい。したがって、ワイヤーロッドへの異物の固着を抑制しつつ、塗液の目詰まりを防止して、塗工量の経時変化がなく塗膜品質及び塗膜の膜厚精度をより安定して確保できる。
また、振動子はロッド端部に配設されているので、メンテナンス等の設備制約が少ない。結果として、設備稼働率の向上にもいっそう寄与できる。
【0014】
(3)に記載された発明は、(2)に記載された基材の塗工方法において、ワイヤーに振動子を接触させて、弾性波を照射するので、ワイヤーに直接伝達された縦波及び横波の影響を受けて、ワイヤーはより確実に振動する。そのため、その隙間に固着した異物は、いっそう剥離しやすくなる。その結果、異物はワイヤーからより確実に分離、除去される。
よって、ワイヤーロッドへの異物の固着を抑制しつつ、塗液の目詰まりを防止して、塗工量の経時変化がなく塗膜品質及び塗膜の膜厚精度をよりいっそう安定して確保できる。
【0015】
(4)に記載された発明は、(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された基材の塗工方法において、弾性波は、所定時間毎に間欠的に照射するので、照射時間をより少なく設定することができる。そのため、過度にワイヤーロッドやワイヤーを振動させることがない。
よって、ワイヤーロッドへの異物の固着を抑制しつつ、塗液の目詰まりを防止して、塗工量の経時変化がなく塗膜品質及び塗膜の膜厚精度を安定して確保しながら、ワイヤーロッドやワイヤーの過度な振動が防止できるので、ワイヤーの外れなどの故障を低減でき、稼働率をいっそう向上できる。
【0016】
(5)に記載された発明は、(4)に記載された基材の塗工方法において、弾性波の照射時間は、ワイヤーロッドの外周部が塗液貯留部の塗液に浸漬している箇所の周長に比例するので、ワイヤー間に固着された異物が塗液に浸漬しているときにワイヤーロッドから遊離しやすくできる。そして、遊離した異物は、塗液に浸漬しているので塗液に混じって落下しやすくなる。したがって、ワイヤーロッドの目詰まりを効率的に防止できる。
また、弾性波の非照射時間は、ワイヤーロッドの外周部が塗液貯留部の塗液から露出している箇所の周長に比例するので、ワイヤー間に固着された異物が塗液に浸漬していない間はワイヤーロッドの振動を止めることができる。したがって、ワイヤーロッドやワイヤーの過度な振動が防止できるので、ワイヤーの外れなどの故障を低減でき、稼働率をいっそう向上できる。
【0017】
(6)(5)に記載された基材の塗工方法において、ワイヤーロッドの回転数の増加に従って弾性波の周波数を増加させ、照射時間と非照射時間との合計が弾性波の周期の整数倍であるので、ワイヤーロッドの回転数が大きくなるほど塗液貯留部の塗液にワイヤーの浸漬する機会が増えるが、ワイヤーロッドを塗液に浸漬する位置で常に振動させることができる。したがって、ワイヤー間に固着した異物は塗液に浸漬しているときに振動を受けて遊離しやすくなり、より効率的にワイヤーロッドへの異物の固着を抑制しつつ、塗液の目詰まりを防止できる。
【0018】
本発明の基材の塗工装置は、以下のような作用効果を奏する。
(7)塗液を貯留する塗液貯留部と、ロッドの外周部にワイヤーを巻回したワイヤーロッドとを備え、塗液貯留部に貯留する塗液に少なくとも外周部の一部を浸漬したワイヤーロッドを回転させて、基材の表面に塗液を塗工する基材の塗工装置であって、ワイヤーロッドに弾性波を照射する振動子をワイヤーロッドの端部に配設したので、ワイヤーロッドには弾性波の進行方向と平行に振動する縦波と進行方向と垂直に振動する横波が作用する。この縦波と横波は、ロッドの外周部に巻回したワイヤーに伝達する。ロッドとワイヤーとは共振周波数が異なり、ロッドとワイヤーとの間、及び隣同士のワイヤー間には僅かな隙間が存在するので、ロッドとワイヤーとに伝達された縦波及び横波の影響を受けて、ロッドとワイヤーとは別々の方向及び振幅で振動する。この振動はワイヤー間でも生じるので、ワイヤー間の隙間は拡大、縮小を繰り返すことになる。ワイヤー間の隙間が拡大、縮小を繰り返すと、その隙間に固着した異物は、引張り・圧縮の荷重を受けて剥離しやすくなる。その結果、異物はワイヤーから分離、除去される。異物は、振動によって除去されるので、ブラシで掻き取る方法と違い、確実性が高い。したがって、ワイヤーロッドへの異物の固着を抑制しつつ、塗液の目詰まりを防止でき、塗工量の経時変化がなく塗膜品質及び塗膜の膜厚精度を安定して確保できる。また、ワイヤーを傷つける心配もないので、塗膜品質の安定に役立つことができる。
【0019】
また、(7)の発明は、ワイヤーロッドの端部に振動子を配設し、振動子が振動して弾性波を照射するので、ワイヤーロッドの端から幅方向全体に弾性波が伝達されやすい。同様に、ロッドの外周部に巻回されたワイヤーにも端から幅方向全体に弾性波が伝達されやすい。その結果、ワイヤーロッド及びワイヤー全体に振動が伝わり、どの部位の異物も確実に除去しやすい。したがって、ワイヤーロッドへの異物の固着を抑制しつつ、塗液の目詰まりを防止して、塗工量の経時変化がなく塗膜品質及び塗膜の膜厚精度をより安定して確保できる。
さらに、振動子はロッド端部に配設されているので、メンテナンス等の設備制約が少ない。結果として、設備稼働率の向上にもいっそう寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は外周部の一部を塗液貯留部の塗液に浸漬したワイヤーロッドが回転して塗液を基材の表面に塗工する塗工装置の模式的な断面図であり、(b)はワイヤーロッドの外周部が塗液貯留部の塗液に浸漬している箇所の周長と、塗液から露出している箇所の周長とを示す断面図である。
【図2】(a)はワイヤーロッドの模式的な斜視図であり、(b)はAのワイヤー拡大図であってワイヤーが弾性波の照射を受けて振動し異物が剥離する様子を模式的に示す断面図である。
【図3】ワイヤーロッドの回転軌跡と弾性波の照射時間、非照射時間、及び周期との関係を示すグラフである。
【図4】基材の送り速度に対するワイヤーロッドが回転した時の周速度の比(速比)と弾性波の周波数の関係を示すグラフである。
【図5】(a)はワイヤーロッドのワイヤー間に異物が固着した状態を示す部分斜視図であり、(b)はワイヤー間に異物が固着して塗液を保持する容積が異物の体積分だけ減少している様子を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る基材の塗工方法及び塗工装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1(a)に、外周部の一部を塗液貯留部2の塗液Pに浸漬したワイヤーロッド3が回転して塗液Pを基材Uの表面に塗工する塗工装置1の模式的な断面図を示し、図1(b)に、ワイヤーロッド3の外周部が塗液貯留部2の塗液Pに浸漬している箇所の周長L1と、塗液から露出している箇所の周長L2とを示す。図2(a)に、ワイヤーロッド3の模式的な斜視図を示し、図2(b)に、Aのワイヤー拡大図であってワイヤー4が弾性波の照射を受けて振動し異物Sが剥離する様子を模式的に示す。図3に、ワイヤーロッド3の回転軌跡と弾性波の照射時間T1、非照射時間T2、及び周期1/fとの関係を示す。図4に、基材の送り速度V1に対するワイヤーロッド3が回転した時の周速度V2の比(速比Z=V2/V1)と弾性波の周波数fとの関係を示す。
ここでは、本発明に係る基材の塗工方法及び塗工装置の構成、作用を詳細に説明してから、異物除去の方法と装置について詳細に説明する。
【0022】
まず、本発明に係る基材の塗工方法及び塗工装置の構成、作用について説明する。
図1(a)に示すように、塗工装置1は、リチウムイオン2次電池の電極に使用する基材Uに塗液Pを塗工する装置であって、塗液Pを貯留する塗液貯留部2と該塗液貯留部2に貯留された塗液Pを基材Uの表面に塗工するワイヤーロッド3とを備えている。
塗液貯留部2の上端部には、上方が開放された円弧状の凹溝21が幅方向(図面に垂直方向)に形成されている。凹溝21の底には塗液供給路22が穿設され、矢印P1方向から図示しない配管を経由して凹溝21内に塗液Pを供給している。そのため、凹溝21内には塗液Pが貯留されている。
また、凹溝21内には、幅方向に延びる円形断面のワイヤーロッド3が外周部の一部を収容して配設されている。ワイヤーロッド3は、図示しないサーボモータを備える駆動装置に連結され、図面上で反時計方向に周速度V2で回転する。ワイヤーロッド3を回転することによって、塗液Pは上方に掻き上げられ、ワイヤーロッド3の上方を近接して送り速度V1で図面上右から左へ移送される基材Uの下表面に塗液Pを塗工する。基材Uは、コイル状に巻かれていて、図示しない送りロール、テンションロールを経て送られてくる。
また、塗液貯留部2に対して基材Uの送り方向前後には、ニアロール7が配設され、基材Uの送り高さを調節している。その結果、基材Uの下表面には、所定の膜厚で塗膜Wが形成される。
なお、基材Uは、負極側の集電体として銅泊を用いている。塗液Pは、負極用バインダ樹脂として水分散系のスチレン・ブタジエンゴム(SBR)水溶液を用いている。
【0023】
図1(b)に示すように、ワイヤーロッド3の中心は、凹溝21の上端面23より下方に位置している。そのため、ワイヤーロッド3が塗液Pに浸漬している外周部(直径r)の周長L2と塗液Pから露出している外周部(直径r)の周長L1とが異なることになる。
【0024】
図2(a)に示すように、ワイヤーロッド3は幅方向に延びる断面円形のロッド本体5とロッド本体5の外周面に幅方向に巻回されたワイヤー4とを備えている。
ロッド本体5は、外径が8〜12(mm)程度で幅方向の長さが400〜500(mm)程度として形成されている。なお、材質は、耐食性、剛性の高いステンレス製(例えば、SUS304、SUS316等)である。また、ロッド本体5の内部は、中実と中空の別は問わない。中空であれば、軽量化でき高速回転に向いている。
また、ワイヤー4は、外径が20〜200(μm)程度でロッド本体5の中央部に幅方向長さ200〜300(mm)程度の長さで一重巻きに巻回されている。ワイヤー4は、塗工された塗膜Wの膜厚をできるだけ均一にするため、ワイヤー4、4間の隙間を狭くして緊密に巻かれている。ワイヤー4、4間の溝の深さは、1〜100(μm)程度、溝ピッチは0.01〜1(mm)程度である。ワイヤー表面は、塗液の種類によって撥水処理等の表面コートを行う場合がある。ワイヤー端部41は、溶着又は半田付け等によってロッド本体5に固定している。なお、材質は、耐食性、引っ張り強度等を考慮してステンレス製である。
ワイヤー4が巻回されていないワイヤーロッド3の端部51には、弾性波を照射する振動子6が装着されている。振動子6は、例えば超音波振動子で、ドーナツ状に形成され、ロッド本体5に嵌合されている。振動子6の一端は巻回されたワイヤー4の端部41に接触している。したがって、振動子6の振動は、ロッド本体5のみならず、ワイヤー4にも直接伝達される。振動子6の電源及び制御配線は、図示しないが、ロッド本体5の回転に支障のない箇所から外部に延設されている。
なお、ワイヤー端部41は、ロッド本体5に溶着又は半田付けされているので、振動子6は、溶着又は半田付けを避けて装着することになる。したがって、ワイヤー端部41から10〜15(mm)程度離して装着してもよい。
【0025】
次に、ワイヤー間に固着する異物除去の方法及び装置について説明する。
図2(b)に示すように、振動子6から照射する弾性波の縦波及び横波がワイヤー4に伝達されて、ワイヤー4は上下左右に振動する。ワイヤー4は、前述のようにワイヤー4、4間の隙間を狭くして緊密に巻かれているが、隣同士のワイヤー4、4間やワイヤー4とロッド本体5間には微小な隙間が存在する。ロッド本体5とワイヤー4とは共振周波数が異なるので、ロッド本体5とワイヤー4とに伝達された縦波及び横波の影響を受けて、ロッド本体5とワイヤー4とは別々の方向及び振幅で振動する。この振動はワイヤー4、4間でも生じるので、ワイヤー4、4間やワイヤー4とロッド本体5間の隙間は拡大、縮小を繰り返すことになる。これらの隙間が拡大、縮小を繰り返すと、その隙間に固着した異物Sは、引張り・圧縮の荷重を受けて剥離しやすくなる。その結果、異物Sはワイヤー4から分離、除去される。つまり、異物Sはロッド本体5やワイヤー4自身の振動によって除去される。
【0026】
また、ワイヤー4、4間に固着された異物Sが塗液Pに浸漬しているときに振動を加えると、ワイヤーロッド3から遊離しやすくできる。そして、遊離した異物Sは、塗液Pに浸漬しているので塗液Pに混じって落下しやすくなる。そのため、ワイヤーロッド3が塗液貯留部2の塗液Pに浸漬している位置で振動を加えるとよい。本実施形態では、弾性波の照射時間T1は、ワイヤーロッド3の外周部が塗液貯留部2の塗液Pに浸漬している箇所の周長L1に比例し、弾性波の非照射時間T2は、ワイヤーロッド3の外周部が塗液貯留部2の塗液Pから露出している箇所の周長L2に比例するよう制御している。
【0027】
さらに、ワイヤーロッド3の回転数N(rpm)の増加に従って弾性波の周波数f(Hz)を増加させると、ワイヤーロッド3の回転数N(rpm)が大きくなるほど塗液貯留部2の塗液Pにワイヤー4の浸漬する機会が増えるので、異物Sが発生する浸漬時に弾性波を照射することができる。
例えば、図3に示すように、ワイヤーロッド3の回転数N(rpm)を弾性波の周波数f(Hz)に等しくして(f=N/60)、弾性波の照射時間T1と非照射時間T2の合計(T1+T2)を弾性波の周期1/f(秒)の整数n倍に等しくすると(n/f=T1+T2)、ワイヤーロッド3は塗液Pに浸漬する位置で常に振動することになり、異物Sも塗液Pに浸漬しているときに振動を受けて遊離しやすくできる。
【0028】
具体的には、弾性波の照射時間T1と非照射時間T2は、以下の数式(1)乃至(4)で表すことができる。
【数1】

ここで、nは整数、fは弾性波の周波数(Hz)、L1はワイヤーロッド3の外周部が塗液貯留部2の塗液Pに浸漬している箇所の周長(mm)、L2はワイヤーロッド3の外周部が塗液貯留部2の塗液Pから露出している(浸漬していない)箇所の周長(mm)、rはワイヤーロッド3の直径(mm)、Nはワイヤーロッド3の回転数(rpm)である。
【0029】
なお、弾性波の周波数fは、3000〜120000(Hz)程度となる。ワイヤーロッドの外径が10(mm)程度の小径であるので、高速回転によって所定の生産性を確保するためである。弾性波には超音波も含むが、周波数帯域は、むしろワイヤーロッド3の回転数Nによって決まる。この範囲の周波数帯域であれば、市販の振動子を利用できるので、設備費も安価に実現できる。
上記数式より、弾性波の照射時間T1を、ワイヤーロッド3の外周部が塗液貯留部2の塗液Pに浸漬している箇所の周長L1に比例させ、弾性波の非照射時間T2は、ワイヤーロッド3の外周部が塗液貯留部2の塗液Pから露出している(浸漬していない)箇所の周長L2に比例させた上で、ワイヤーロッド3の回転数Nの増加に従って弾性波の周波数fを増加させ、弾性波の照射時間T1と非照射時間T2の合計が弾性波の周期1/fの整数n倍であれば、ワイヤーロッド3は塗液Pに浸漬する位置で常に振動することになる。
【0030】
また、振動子6からの弾性波は、このように間欠的に照射することによって、ワイヤーロッド3への過度な振動をも防止している。過度な振動は、ワイヤー端部41の固定が外れる等の故障を招く原因になるからである。
【0031】
図4に示すように、本実施形態では、基材Uの送り速度V1に対するワイヤーロッド3が回転した時の周速度V2の比を速比Zと定義すると、速比Zは弾性波の周波数f(Hz)に比例している。
通常、基材Uの送り速度V1は一定に制御するので、ワイヤーロッド3の周速度V2を速くしたり遅くしたり調整して塗工した塗膜Wの膜厚を制御する。ワイヤーロッド3の周速度V2を速くすると回転数Nが増加するので、塗液貯留部2の塗液Pに浸漬する機会が増加する。ワイヤーロッド3が、塗液貯留部2の塗液Pに浸漬する機会が増加すると、異物Sが発生しやすくなるが、弾性波の周波数fを増加させることによって、浸漬する位置で振動させるように制御する。
このように、速比Zの増加に従って弾性波の周波数fを増加させることで、インラインでのワイヤーロッド3の異物除去を効率的に行うことができる。
【0032】
その弾性波の周波数帯域の狙い値は、5700〜60000(Hz)とするのが好ましい。その理由は、前述のように、ワイヤーロッド3の回転数Nから弾性波の周波数fが決まるが、ワイヤーロッド3の回転数Nを高くしすぎると、ワイヤー4、4間に保持する塗液Pの均一性が低下するため、塗工品質をより確保しやすい回転数Nから、弾性波の周波数fを選定する必要があるからである。
【0033】
本発明は、外径が10(mm)程度のワイヤーロッド3を用いて塗工するが、グラビアコータに対しても利用できる。グラビアコータは、ワイヤーを巻回していないが、ロッド本体を溝加工しているので、その溝に異物が固着しやすい。本発明の原理である、塗液にロッドが浸漬している位置で、弾性波を照射して振動を加えることによって、異物は遊離しやすく塗液に混じって落下するのでインラインでの異物除去が効率的に行える。
その際、グラビアコータは、外径が50(mm)程度と本発明のワイヤーロッド3に比べて大きいので、図4に示すように、弾性波の周波数帯域は本発明より低い帯域を使用する。
【0034】
<動作説明>
図1(a)に示すように、塗工装置1は、塗液Pを貯留する塗液貯留部2と該塗液貯留部2に貯留された塗液Pを基材Uの表面に塗工するワイヤーロッド3とを備えている。
塗液貯留部2の上端部には、上方が開放された円弧状の凹溝21が幅方向(図面に垂直方向)に形成されている。凹溝21の底には塗液供給路22が穿設され、矢印P1方向から図示しない配管を経由して凹溝21内に塗液Pが供給、貯留されている。凹溝21内には、幅方向に延びる円形断面のワイヤーロッド3が外周部の一部を収容して配設され、ワイヤーロッド3は、図示しない駆動装置に連結され、図面上で反時計方向に周速度V2で回転する。
基材Uは、ワイヤーロッド3の上方を近接して、送り速度V1で図面上右から左へ移送されている。
ワイヤーロッド3が回転すると、ワイヤー4が巻回された外周部によって塗液Pを上方に掻き上げて、移送される基材Uの下面に塗液Pを塗工する。その結果、基材Uの下面には、所定の塗膜Wが形成される。
【0035】
ワイヤー4が巻回されていないワイヤーロッド3の端部51には、弾性波を照射する振動子6が装着され、振動子6が照射する弾性波によってロッド本体5及びワイヤー4は上下左右に振動する。
弾性波の照射時間T1は、ワイヤーロッド3の外周部が塗液貯留部2の塗液Pに浸漬している箇所の周長L1に比例し、弾性波の非照射時間T2は、ワイヤーロッド3の外周部が塗液貯留部2の塗液Pから露出している箇所の周長L2に比例するよう制御している。
また、ワイヤーロッド3の回転数N(rpm)を弾性波の周波数f(Hz)に等しくして(f=N/60)、弾性波の照射時間T1と非照射時間T2の合計(T1+T2)を弾性波の周期1/f(秒)の整数n倍に等しくするよう(n/f=T1+T2)制御しているので、ワイヤーロッド3は塗液Pに浸漬する位置で常に振動することになり、異物Sも塗液Pに浸漬しているときに振動を受けて遊離しやすくできる。
【0036】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態の基材の塗工方法及び塗工装置によれば、ワイヤーロッド3に弾性波を照射するので、ワイヤーロッド3には弾性波の縦波と横波によって、ロッド本体5とワイヤー4とは別々の方向及び振幅で振動し、ワイヤー4、4間の隙間は拡大、縮小を繰り返すことになる。そのため、ワイヤー4、4間の隙間に固着した異物Sは、引張り・圧縮の荷重を受けて剥離しやすくなり、ワイヤー4から分離、除去される。異物Sは、ワイヤー4自身の振動によって除去されるので、ブラシで掻き取る方法と違い、確実性が高い。したがって、ワイヤーロッド3への異物の固着を抑制しつつ、塗液Pの目詰まりを防止でき、塗工量の経時変化がなく塗膜品質及び膜厚精度を安定して確保できる。また、ワイヤー4を傷つける心配もないので、塗膜品質の安定に役立つことができる。
【0037】
また、本実施形態では、ワイヤーロッド3に弾性波を照射しながら塗工するので、ワイヤー3の振動に伴ってワイヤー4、4間の隙間が変化し、隙間に古い塗液がいつまでも残留(液淀み)することが少ない。そのため、ワイヤー4、4間に目詰まりが生じにくく、塗液Pを保持する容積41が一定に維持されるので、塗工量の経時変化がなく塗膜Wの膜厚精度を安定して確保できる。また、インラインで、すなわち塗工設備が稼働しているときにワイヤーロッド3の異物除去を行うので、ワイヤーロッド3の交換頻度が減り、稼働率の向上にも寄与できる。
【0038】
また、本実施形態では、ワイヤーロッド3の端部51に振動子6を配設し、振動子6が振動して弾性波を照射するので、ワイヤーロッド3の端から幅方向全体に弾性波が伝達されやすい。その結果、ロッド本体5及びワイヤー4全体に振動が伝わり、どの部位の異物Sも確実に除去しやすい。したがって、ワイヤーロッド3への異物Sの固着を抑制しつつ、塗液Pの目詰まりを防止して、塗工量の経時変化がなく塗膜品質及び膜厚精度をより安定して確保できる。また、振動子6はロッド端部51に配設されているので、メンテナンス等の設備制約が少ない。結果として、設備稼働率の向上にもいっそう寄与できる。
【0039】
また、本実施形態では、ワイヤー4に振動子6を接触させて、弾性波を照射するので、ワイヤー4に直接伝達された縦波及び横波の影響を受けて、ワイヤー4はより確実に振動する。そのため、その隙間に固着した異物Sは、いっそう剥離しやすくなる。
また、本実施形態では、弾性波は、所定時間毎に間欠的に照射するので、照射時間T1をより少なく設定することができる。そのため、過度にワイヤーロッド3やワイヤー4を振動させることがない。よって、ワイヤー4の外れなどの故障を低減でき、稼働率をいっそう向上できる。
【0040】
また、本実施形態では、弾性波の照射時間は、ワイヤーロッド3の外周部が塗液貯留部2の塗液Pに浸漬している箇所の周長L1に比例するので、ワイヤー4、4間に固着された異物Sが塗液Pに浸漬しているときに振動され、ワイヤーロッド3から遊離しやすくできる。そして、遊離した異物Sは、塗液Pに浸漬しているので塗液Pに混じって落下しやすくなる。したがって、ワイヤーロッド3の目詰まりをインラインで効率的に防止できる。
また、弾性波の非照射時間T2は、ワイヤーロッド3の外周部が塗液貯留部2の塗液Pから露出している(浸漬していない)箇所の周長L2に比例するので、異物Sが塗液Pに浸漬していない間はワイヤーロッド3の振動を止めることができる。したがって、ワイヤーロッド3やワイヤー4の過度な振動が防止できるので、ワイヤー4の外れなどの故障を低減でき、稼働率をいっそう向上できる。
【0041】
また、本実施形態では、ワイヤーロッド3の回転数Nの増加に従って弾性波の周波数fを増加させ、照射時間T1と非照射時間T2との合計が弾性波の周期1/fの整数倍であるので、ワイヤーロッド3の回転数Nが大きくなるほど塗液貯留部2の塗液Pにワイヤー4の浸漬する機会が増えるが、異物Sが発生する浸漬時に弾性波を照射することができる。したがって、ワイヤー4、4間に固着した異物Sは塗液Pに浸漬しているときに振動を受けて遊離しやすくなり、より効率的にワイヤーロッド3への異物Sの固着を抑制しつつ、塗液Pの目詰まりを防止できる。
以上のように、本実施形態では、インラインでワイヤーロッド3への異物Sの固着を抑制しつつ、塗液Pの目詰まりを防止して、塗工量の経時変化がなく塗膜品質及び塗膜の膜厚精度を安定して確保でき、また、設備稼働率の向上に寄与できる。
【0042】
なお、本発明に係る基材の塗工方法及び塗工装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で、いろいろな応用ができる。
(1)例えば、本実施形態では、基材をリチウムイオン2次電池の負極に用いる集電体としたが、正極に用いる集電体でもよい。さらに、リチウムイオン2次電池以外の電極でもよく、塗液を塗工する基材であれば、特に限定されるものではない。
(2)また、本実施形態では、塗液を負極用バインダ樹脂として水分散系のスチレン・ブタジエンゴム(SBR)水溶液としたが、有機溶剤系のポリフッ化ビニリデン(PVDF)溶液でもよいし、バインダ樹脂と活物質の混合溶液でもよい。
(3)また、本実施形態では、振動子6をロッド本体5に嵌合したが、ロッド本体5とは別に設置することもできる。具体的には、ワイヤーロッド3の端部51に振動子6を摺動させて設置したり、振動子6はロッド本体5と離れた位置に設置し振動伝達部材をロッド本体5、又はワイヤー4に接触させる方法でもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 塗工装置
2 塗液貯留部
3 ワイヤーロッド
4 ワイヤー
5 ロッド本体
6 振動子
7 ニアロール
21 凹溝
22 塗液供給路
41 ワイヤー端部
42 塗液を保持する容積
51 ワイヤーロッドの端部
P 塗液
S 異物
U 基材
W 塗膜
f 弾性波の周波数
r ワイヤーロッドの外径
L1 ワイヤーロッドの外周部が塗液貯留部の塗液に浸漬している箇所の周長
L2 ワイヤーロッドの外周部が塗液貯留部の塗液に浸漬していない箇所の周長
N ワイヤーロッドの回転数
T1 弾性波の照射時間
T2 弾性波の非照射時間
V1 基材の送り速度
V2 ワイヤーロッドが回転した時の周速度
Z 速比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗液貯留部に貯留する塗液に少なくとも外周部の一部を浸漬し、ロッドの外周部にワイヤーを巻回したワイヤーロッドを回転させて、基材の表面に塗液を塗工する基材の塗工方法であって、
前記ワイヤーロッドに弾性波を照射しながら塗工することを特徴とする基材の塗工方法。
【請求項2】
請求項1に記載された基材の塗工方法において、
前記ワイヤーロッドの端部に振動子を配設し、該振動子が振動して前記弾性波を照射することを特徴とする基材の塗工方法。
【請求項3】
請求項2に記載された基材の塗工方法において、
前記ワイヤーに前記振動子を接触させて、前記弾性波を照射することを特徴とする基材の塗工方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載された基材の塗工方法において、
前記弾性波は、所定時間毎に間欠的に照射することを特徴とする基材の塗工方法。
【請求項5】
請求項4に記載された基材の塗工方法において、
前記弾性波の照射時間は、前記ワイヤーロッドの外周部が前記塗液貯留部の塗液に浸漬している箇所の周長に比例し、前記弾性波の非照射時間は、前記ワイヤーロッドの外周部が前記塗液貯留部の塗液から露出している箇所の周長に比例することを特徴とする基材の塗工方法。
【請求項6】
請求項5に記載された基材の塗工方法において、
前記ワイヤーロッドの回転数の増加に従って前記弾性波の周波数を増加させ、前記照射時間と前記非照射時間との合計が前記弾性波の周期の整数倍であることを特徴とする基材の塗工方法。
【請求項7】
塗液を貯留する塗液貯留部と、ロッドの外周部にワイヤーを巻回したワイヤーロッドとを備え、前記塗液貯留部に貯留する塗液に少なくとも外周部の一部を浸漬した前記ワイ ヤーロッドを回転させて、基材の表面に塗液を塗工する基材の塗工装置であって、
前記ワイヤーロッドに弾性波を照射する振動子を前記ワイヤーロッドの端部に配設したことを特徴とする基材の塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−179552(P2012−179552A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44135(P2011−44135)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】