説明

基材及びゲル組成物を含む美容トリートメント物品

(1)水不溶性基材;(2)以下を含むゲル組成物:(a)水溶性ポリマーゲル化剤を含む第1のゲル形成組成物;及び(b)ゲル強化剤を含む第2のゲル形成組成物;、(3)好ましくは、レオロジー変性剤を含むトリートメント組成物を含む美容トリートメント物品を開示する。更に、美容トリートメント物品であって、少なくとも2つの別個のトリートメント組成物が含まれており、各トリートメント組成物が水不溶性基材の1つ又は複数の選択された箇所に提供される美容トリートメント物品を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所適用の美容トリートメント物品、とりわけマスク組成物に関するものである。美容トリートメント物品には水不溶性基材及びゲル組成物が含まれており、トリートメント組成物も含まれているのが好ましい。
【背景技術】
【0002】
皮膚にトリートメントを施すように設計されたマスクなどの美容トリートメント物品は、例えば、日本市場のSKIIフェイシャル・トリートメント・マスク(SKII Facial Treatment Mask)のように、当該技術分野において既知である。このようなマスクは、基材と基材の中に染み込ませた液体から製造され、このマスクは、皮膚を特に伸張することなくマスクを簡単に皮膚から取り除くことができるように、非常に弱く皮膚に接着しているだけである。これらのトリートメントマスクは、取り外し可能なマスクと区別することができる。取り外し可能なマスクは、皮膚にしっかりと接着し、それにより、皮膚の表面及び毛穴の中の汚れ、詰まり、並びに過剰な角質層を、マスクを剥がすときに取り除くように設計されている。トリートメントマスクは、湿った、通常は水性の環境を通して、保湿剤及び他の有益な薬剤を皮膚に送り届けるために、皮膚に適用するのに特に好適である。実際、マスクを介して保湿剤及び他の有益な薬剤を送り届けることは、長期間にわたって皮膚がこうした十分な量の薬剤にさらされるという点で有利である。トリートメントマスクはまた、その使用法のためにユーザーは座ったり又は横たわったりするので、使用時にユーザーにリラックス効果をもたらす。トリートメントマスクは、一般に顔の皮膚に適用される。
【0003】
顔の皮膚に使用するための市販の別種のマスクには、ヒドロゲル系基材のマスク、例えば日本で久光製薬から入手可能な「ライフセラ」マスクがある。この種のマスクは、使用が簡単で、皮膚に良好に密着してフィットするが、一般にスキンケア活性物質の送達において意図した効果をもたらさない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のことから、向上したスキンケア効果を提供する美容トリートメント物品、とりわけ向上した使用感及び皮膚への密着性を提供し、同時に皮膚処理剤又は皮膚処理活性物質を良好に送達するマスク組成物の必要性が依然として存在している。
【0005】
既存の技術には、本発明の利点及び効果の全てを提供するものは存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(1)水不溶性基材;(2)以下を含むゲル組成物:(a)水溶性ポリマーゲル化剤を含む第1のゲル形成組成物;及び(b)ゲル強化剤を含む第2のゲル形成組成物;(3)好ましくはレオロジー変性剤を含むトリートメント組成物、を含む美容トリートメント物品に関するものである。更に、本発明は、(1)水不溶性基材;(2)以下を含むゲル組成物:(a)水溶性ポリマーゲル化剤を含む第1のゲル形成組成物;及び(b)ゲル強化剤を含む第2のゲル形成組成物;(3)少なくとも2つの別個のトリートメント組成物であって、前記トリートメント組成物の少なくとも一方はレオロジー変性剤を含み、それぞれのトリートメント組成物が水不溶性基材の1つ又は複数の選択された箇所に提供されている美容トリートメント物品に関するものでもある。また、本発明は、美容トリートメント物品のキットであって、(1)水不溶性基材;(2)以下を含むゲル組成物:(a)水溶性ポリマーゲル化剤を含む第1のゲル形成組成物;(b)ゲル強化剤を含む第2のゲル形成組成物;(3)レオロジー変性剤を含むトリートメント組成物を含み、前記水不溶性基材を物品の使用時まで、第1のゲル形成組成物、第2のゲル形成組成物、及びトリートメント組成物の少なくとも1つから分離して維持する美容トリートメント物品のキットに関するものでもある。
【0007】
これらの物品は、使用時に皮膚への水和作用などのスキンケア効果を提供し、同時に皮膚への良好なフィット性及び密着性を提供することができる。これらの物品は、使用が簡単で便利でもある。
【0008】
本発明の前述及びその他の特徴、態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を読むことで、さらに理解が深まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書は、本発明を特に指摘し明確に請求する請求項をもって結論とするが、本発明は、添付図面と併せて以下の好ましい非限定的な実施形態と表示の説明を解釈することによって更なる理解が得られると考えられる。
【0010】
本明細書は、本発明を特に指摘し明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は、以下の説明からさらなる理解が得られるものと考えられる。
【0011】
本発明の物品は、顔用マスクとの関連で記載されているが、当業者は、本発明を美容物品一般に容易に応用できることを理解し、実際に応用できるであろう。本明細書で使用する時、「美容物品」という用語は、体(とりわけ人体)に使用するものとして適合させた用具を意味する。より詳細には、「美容物品」とは、拭き取り用品、顔用マスクなどを含む、パーソナルケア用用具又は美容用具である。
【0012】
本明細書において「含む」とは、最終結果に影響を与えない他の工程及び他の成分を追加できることを意味する。この用語には「から成る」及び「から本質的に成る」という用語が含まれる。
【0013】
特に指定しない限り、百分率、割合、及び比率はすべて、本発明の組成物の総重量を基準とする。提示された成分に関するこのような重量は、全て、活性物質の濃度に基づき、したがって市販材料に含まれる可能性があるキャリア又は副生成物を含まない。
【0014】
本明細書では、「局所適用」とは、物質を皮膚表面に適用又は広げることを意味する。
【0015】
本明細書では、「化粧品として許容可能な」とは、このように記載されているこれらの組成物又は構成成分が、不当な毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応等を有することなく、人の皮膚に接触させて使用するのに適していることを意味する。
【0016】
本明細書では、「混合物」とは、物質の単純な組み合わせ及びそのような組み合わせの結果として生成するいかなる化合物も含むことを意味する。
【0017】
本明細書に有用な活性物質及び他の成分のようなすべての成分は、美容的及び/若しくは治療的な効果、又はそれらが要求される作用様式によって分類又は記述することができる。ただし、本明細書に有用な活性物質及び他の成分が、場合によっては美容及び/若しくは治療的な複数の効果をもたらすこと、又は複数の作用様式で作用することもあることを理解すべきである。したがって、本明細書での分類は便宜上のものであって、ある成分を特に記載される用途又は列挙される用途に制限しようとするものではない。
【0018】
水不溶性基材
本発明の好ましい実施形態には、人体に適用するためのトリートメントマスクなどの美容トリートメント物品が含まれている。前記物品には水不溶性基材を含む。「水不溶性」とは、基材を水に浸したときに、溶解もせず、容易に分解もしないことを意味する。水不溶性基材は、トリートメント組成物を皮膚に送り届けるための手段又は媒体である。
【0019】
多種多様な材料を基材として使用することができる。非限定的な望ましい特性は、(i)使用するのに十分な湿潤強度、(ii)十分な柔軟性、(iii)十分な厚さ、(iv)適切な大きさ、(v)空気透過性、及び(vi)親水性である。
【0020】
上記の基準を満たす好適な基材の非限定的例としては、不織布基材、織布基材、湿式からみ合わせ基材、空気式からみ合わせ基材、天然の海綿、合成スポンジ、ポリマー網状メッシュなどが挙げられる。好ましい実施形態では、経済的であり、様々な材料で容易に入手できることから、不織布基材が用いられている。「不織布」とは、布地状に織り上げられたものではなく、シート、マット、又はパッド層として形成されたような繊維で、層が構成されていることを意味する。
【0021】
基材は、様々な天然材料及び合成材料で構成させてもよい。本発明で有用な天然材料の非限定例としては、絹繊維、羊毛繊維及びラクダ被毛繊維などのケラチン繊維等、並びに木材パルプ繊維、綿繊維、麻繊維、黄麻繊維、及び亜麻繊維のようなセルロース繊維が挙げられる。本発明において有用な合成材料の非限定的な例としては、アセテート繊維、アクリル繊維、セルロースエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維のようなポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維及びポリエチレン繊維のようなポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、レーヨン繊維、並びにポリウレタン発泡体が挙げられる。
【0022】
本発明で有用な基材はまた、多種多様な市販品から入手することができる。本明細書で有用な好適な不織布基材の非限定的な例としては、次のものが挙げられる。ハヴィックス(Havix)2360は、PE/PPの2成分繊維(90%)及びPE/PETの2成分繊維(10%)の層を有する単層基材(カード空気透過不織布)である。ハヴィックス(Havix)不織布は、親水性を増すように化学処理されている。合計坪量は約23gである。更に好適な基材としては、PET繊維の層を有する単層基材(カード水流交絡不織布)のクラレイ(Kuraray)TT463Q60が挙げられる。PET樹脂は、親水性を増すように化学処理されている。合計坪量は約60gである。同様に好適な基材としては、ウォルキィソフトU.S.A(Walkisoft U.S.A.)から入手可能なウォルキィソフト(WALKISOFT)(登録商標)(セルロース基材)、ヴェラテック(Veratec,Inc.)(マサチューセッツ州ウォルポール)から入手可能なノヴォネット(NOVONET)(登録商標)149−801及び149−191(約69%のレーヨン、約25%のポリプロピレン、及び約6%の綿を含有する基材)、PGI/チコピー(PGI/Chicopee)(ニュージャージー州デイトン(Dayton))から入手可能なケイバック(KEYBAK)(登録商標)951V及び1368(約75%のレーヨン及び約25%のアクリル繊維を含有する基材)、RMT−90(それぞれレーヨン及びポリエステルの組み合わせから製造された2つの外層、並びに内層としてパルプ層を有する三層基材)及びRFP−90(内層として30gのPPのカード熱接着不織布、及び外層として60gのレーヨン繊維(各側30g)を有する三層基材)が挙げられる。外層は、カードプロセスを使用してウェブに形成され、水流交絡プロセスを使用して内層と組み合わされている。RMT−90及びRFP−90は、ダイワボ(Daiwabo)K.K.から入手可能である。
【0023】
基材は、所望のマスクの用途及び特性により、多種多様な形状及び形態、例えば、平らなパッド、厚いパッド、薄いシート及び不規則な厚さのシートに製造することができる。基材は、通常、局所適用が望ましい皮膚の領域に適合するように設計する。例えば、マスクが顔に適用される場合には、基材は目、鼻孔及び口の領域を必要に応じて避ける顔の形状に対応して設計する。
【0024】
1つの好ましい実施形態では、基材は、目と鼻孔の領域を開け、実質的に顔の皮膚の全体の領域を覆うように形成されている。図1を参照すると、単一片の顔全体のマスク(10)のために好適な基材の特に好ましい実施形態の平面図が描写されている。図1の基材の外周は、目及び口のための複数個の開口部(12)と共に、顔の輪郭とほぼ適合するように設計されており、その際、複数個の切れ目(13)は、マスクが鼻、頬及び口に適合するように作られている。図1の実施形態は、平均的な顔の全体領域を覆うために、長さ約15cm〜約25cm、好ましくは約18cm〜約23cm、及び幅約15cm〜約30cm、好ましくは約20cm〜約25cmを有する。別の好ましい実施形態では、基材は顔の皮膚の実質的に全体領域を覆うように形成され、また2つの部分から作製され、第一の部分は顔の上部領域、即ち鼻とその上を覆い、第二の部分は顔の下部領域、即ち上唇、頬とその下を覆っている。別の好ましい実施形態では、基材は顔の特別な部分の領域、例えば、鼻、頬骨、あご、前額部、又はこれらの組み合わせに適合するように形成されている。別の好ましい実施形態において、基材は、皮膚上にあるマスクを置換及び/又は除去するのを促進するために、取っ手、引き手、又は輪を有するように形成されている。
【0025】
基材は、ゲル組成物を染み込ませた場合に、容易に皮膚に沿って適合するのに十分なほど柔軟であるが、使用時に容易に裂けたり、崩れたりしない程十分な強度を備えている。基材の厚さは、基材を製造する材料、並びに製品の用途及び特性に応じて、約100μm〜約1cm、より好ましくは約300μm〜約3mmであるのが好ましい。
【0026】
本明細書で特に有用な基材の材料としては、親水性の特性を有するものが挙げられ、それによりゲル組成物をより多量に吸収することができる。水不溶性基材は、親水性材料単独で、又は親水性材料及び疎水性材料の混合物から製造することができる。本発明の基材は、単一層又は複数層から構成させることができる。1つの好ましい実施形態では、基材は、綿、パルプ、レーヨン、及びこれらの混合物から選択される親水性の材料により少なくとも部分的に製造されている。部分的にとは、親水性材料の一層を単一層基材用に使用する場合、親水性材料の少なくとも一層を多層基材用に使用する場合、親水性材料及び別の材料の混合物の一層を単一層基材用に使用する場合、並びに親水性材料及び別の材料の混合物の少なくとも一層を多層基材用に使用する場合の状態を含むことを意味する。
【0027】
基材が多層から成る場合、皮膚に面した層は少なくとも親水性の特性を有する層であり、それによってより多量のゲル組成物を吸収できることが好ましい。基材が多層からなる場合、基材にはフィルム及び他の非繊維性材料を含めることができる。1つの実施形態において、基材はまた、基材上にポリマーフィルムで積層してもよいし、基材をコーティングしてもよいし、又は基材をヒートシールしてもよい。ポリマーフィルムによる積層、コーティング、又はヒートシールの結果として生じる基材は、基材の一方の側面に閉塞側面を備えており、これは皮膚及び皮膚表面上に配置される皮膚に面する側面とは反対方向を向いている。基材に閉塞側面をもたせることにより、基材は低空気透過性を得る。「低空気透過性」とは、フィルム、コーティング、又はヒートシールした基材の側面が、基材の中へほとんど空気を通さず、また基材からもほとんど蒸気を排出させないことを意味する。好ましくは、空気透過性は約5mg/cm2/分未満、より好ましくは約0.01mg/cm2/分〜約4.8mg/cm2/分である。空気透過性は、完全に飽和した基材サンプルの重量を測り、基材を大気にさらした後の基材の重量を測ることにより測定することができる。
【0028】
ゲル組成物
本発明のトリートメント物品には、上述した水不溶性基材に加えてゲル組成物を含む。ゲル組成物は、(a)水溶性ポリマーゲル化剤を含む第1のゲル形成組成物、及び(b)ゲル強化材を含む第2のゲル形成組成物から構成されている。
【0029】
第1のゲル形成組成物
第1のゲル形成組成物は、合成又は天然ポリマー、及びこれらの混合物から選択した水溶性ポリマーゲル化剤から構成されている。好ましい水溶性ポリマーゲル化剤は、ゼラチン、多糖類、及びこれらの混合物などの天然ポリマーである。本明細書で用いる多糖類としては、好ましくは、紅藻多糖類、グルコマンナン類、ガラクトマンナン類、発酵多糖類若しくはその誘導体、褐藻多糖類、海生無脊椎動物抽出物、デンプン若しくはその誘導体、天然果実抽出物、植物繊維誘導体、ケルプ、天然植物滲出物、樹脂性ゴム類、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
褐藻多糖類は、様々な種の褐藻綱(Phaebophyceae)の抽出によって単離する。本明細書に用いるのに好適な褐藻多糖類としては、アルギン、アルギン酸及びその塩、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸プロピレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。本明細書において好ましいアルギン酸塩はアルギン酸ナトリウム及びアルギン酸カリウムである。
【0031】
紅藻多糖類は、紅藻綱に属する海生植物種から単離する。紅藻多糖類は、水性ゲルに機械的な強度をもたらす。本明細書に用いるのに好適な紅藻多糖類には、産業界でCFTA通称寒天フレーク(agar agar flake)として既知であり、ガミックス・インターナショナル社(Gumix International Inc.)(米国ニュージャージー州フォートリー(Fort Lee))から寒天(Agar Agar)100として市販されている種々のテングサ種若しくは近縁種である紅藻由来の寒天、FMC社(米国ペンシルバニア州フィラデルフィア)からシー・プラーク(Sea Plaque)として、及びシグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Co.Ltd.)(英国プール(Poole))からアガロース・タイプ(Agarose Type)1−bとして市販されているアガロース、産業界で(CTFA)通称ツノマタ属(chondrus)として既知であり、全てFMC社(米国ペンシルバニア州フィラデルフィア)から「ゲルカリン(Gelcarin)(登録商標)LA」、「シーケム(Seakem)(登録商標)3/LCM」、又は「ビスカリン(Viscarin)(登録商標)XLV」として市販されており、スギノリ科又はミリン科の種々のメンバーから得られる水抽出物である、λ型、ι型、及びκ型の分留を含むカラギーナン、並びに、ガム・テクノロジー社(Gum Technology Corporation)(米国アリゾナ州トゥーソン(Tucson))及びコンチネンタル・コロイド社(Continental Colloids Inc.)(米国イリノイ州シカゴ(Chicago)))から市販されているファーセレラン、或いはこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、本明細書で使用する紅藻多糖類は、寒天、アガロース、κ−カラギーナン、及びファーセレラン、又はこれらの混合物から選択する。
【0032】
グルコマンナン類は、グルコース及びマンノース残基の実質的に直鎖状の主鎖を含む多糖類である。グルコマンナン類は、直鎖状の主鎖に結合している短い側鎖を有し、アセチル基が糖単位のC−6位にランダムに存在している。このアセチル基は、一般に、糖単位6個当たり1つから糖単位20個当たり1つで見られる。本明細書で用いるのに好適なグルコマンナン類又はその誘導体では、マンノースとグルコースの比率が約0.2〜約3である。本明細書に用いるのに好ましいグルコマンナン類としては、サトイモ科コンニャク属(Amorphophallus konjac)植物(ゾウヤムイモ)の塊茎根を挽いて作った粉末の総称で、FMC社(米国ペンシルバニア州フィラデルフィア)から商標名「ニュートリコール(Nutricol)(登録商標)コンニャク粉末(konjac flour)」として市販されているコンニャクマンナン、及び脱アセチル化したコンニャクマンナン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
ガラクトマンナン類は、マメ科の多くの種子の胚乳細胞中に存在する植物貯蔵多糖類である。「ガラクトマンナン」という総称には、ガラクトース及びマンノース残基で形成された全ての多糖類が含まれる。ガラクトマンナン類には、(1→4)結合したβ−D−マンノピラノシル単位の直鎖状の主鎖が含まれる。これらの環には、分枝として、α−(1,6)−グルコシド結合により単離ガラクトピラノース残基が結合している。加えてガラクトマンナン類には更に、微量の他の糖残基が含有されることもある。本明細書に用いるのに好適なガラクトマンナン類は、フェヌグリークガム;アルファルファ;クローバー;例えば、産業界で(CTFA)通称イナゴマメ(carob bean)ゴムとして既知であり、FMC社(米国ペンシルバニア州フィラデルフィア)から「シーガル(Seagul)L」として市販されているイナゴマメゴム;スターライト・プロダクツ社(Starlight Products)(フランス、ルーアン(Rouen))又はブンゲ・フーズ社(Bunge Foods)(米国ジョージア州アトランタ)から市販されているタラゴム;TICゴム社(TIC Gums)(米国メリーランド州ベルキャンプ(Belcamp))から「バートナイト(Burtonite)V7E」として、ローヌ・プーラン社(Rhone-Poulenc)(米国ジョージア州マリエッタ(Marietta))から「ジャガー(Jaguar)C」として、又はアクアロン社(Aqualon)(米国デラウエア州ウィルミントン(Wilmington))から「スーパーコル(Supercol)」として市販されている、マメ科グアー種子(Cyamopsis tetragonolobus)の粉砕された胚乳由来のグアーガム;及びスターライト・プロダクツ社(フランス、ルーアン)から市販されているカッシアゴム、或いはこれらの混合物である。好ましくは、本明細書で使用するガラクトマンナン類は、平均して1〜約5個のマンノシル単位のうちの1個が(1→6)結合−α−D−ガラクトピラノシル単位で置換されているもので、グアーガム、イナゴマメゴム、及びカッシアゴム、又はこれらの混合物から選択する。
【0034】
発酵多糖類とは、炭素及び窒素源、緩衝剤、及び微量元素が含まれている培地中で、微生物発酵により商業的に生産される多糖類である。本発明に用いるのに好適な発酵多糖類又はその誘導体としては、産業界で(CTFA)通称ガム・ジェラン(gum gellan)として既知であり、シュードモナス・エロデア(Pseudomonas elodea)による炭水化物の純粋培養発酵によって産生される高分子量のヘテロ多糖類ゴムである、ケルコ社(Kelco)(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から「ケルコゲル(Kelcogel)」として市販されているジェランガム;産業界で(CTFA)通称キサンタンとして既知であり、キサントモナス・カムペストリス(Xanthomonas campestris)による炭水化物の純粋培養発酵により産生される高分子量のヘテロ多糖類ゴムである、例えば、カルゴン社(Calgon)(米国ペンシルバニア州ピッツバーグ)から「ケルトロール(Keltrol)CG1000/BT/F/GM/RD/SF/T/TF」として、又はケルコ社(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から「ケルザン(Kelzan)」として市販されている、キサンタンガム;納豆ゴム;プルラン;ラムサンガム;カードラン;サクシノグリカン;ウェランガム;ファルマシア・ファイン・ケミカルズ社(Pharmacia Fine Chemicals)(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway))から「セファデクス(Sephadex)G−25」として市販されているデキストラン及びその誘導体;並びにアルバン・ミュラー・インターナショナル社(Alban Muller International)(フランス、モントレイユ(Montreil))から「アミゲル(Amigel)」として市販されているスクレロチウムゴム、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましい発酵多糖類又はその誘導体は、ジェランガム及びキサンタンガム、又はこれらの混合物から選択する。より好ましい発酵多糖類又はその誘導体はキサンタンガムである。
【0035】
また、海生無脊椎動物の抽出物も使用することができる。海生無脊椎動物、特にこのような無脊椎動物の外骨格由来の多糖類は、主にN−アセチル−D−グルコサミン残基から成る。本明細書に用いるのに好適なそのような多糖類の例としては、例えば、味の素(Ajinomoto)(米国ニュージャージー州ティークネック(Teakneck))から「マリン・デュー(Marine Dew)」として市販されているキトサン、例えば、一丸ファルコス(Ichimaru Pharcos)(日本、岐阜県山県郡(Yamagata Gun Gifu-Pref))から「HPCH液(HPCH Liquid)」として市販されているヒドロキシプロピルキトサン及びその誘導体、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
デンプン類は、種々の比率の2つのグルコースポリマー類、アミロース、及びアミロペクチンからなる多糖類である。本明細書で用いるのに好適な材料としては、デンプン(例えば、米デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、及びこれらの混合物)、アミロペクチン及びデキストリン(ナショナル・スターチ(National Starch)(米国ニュージャージー州ブリッジウォーター(Bridgewater))からナデックス(Nadex)360として市販されている)、及びこれらの誘導体又は混合物が挙げられる。本明細書で用いるのに好適な天然果実抽出物の例としては、ペクチン酸ナトリウムなどのペクチン及びその塩、アラビアン(arabian)、並びにこれらの混合物が挙げられる。本明細書に用いるのに好適な植物繊維誘導体の好適な一例は、セルロースである。本明細書に用いるのに好適な天然植物滲出物から得られる多糖類としては、カラヤゴム、トラガカントゴム、アラビアゴム、タマリンドゴム、ガッチゴム類(ghatty gums)、又はこれらの混合物が挙げられる。本明細書に用いるのに好適な樹脂性ゴムの例としては、昆虫のラックカイガラムシ(Laccifer(Tachardia)lacca)の樹脂状分泌物から得られるシェラックゴム、ダマールゴム;コーパルゴム及びロジンゴム;又はこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
水溶性ポリマーゲル化剤は、好ましくは約0.01重量%〜約10重量%、更に好ましくは約0.05重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約2重量%の濃度で第1のゲル形成組成物に含まれている。
【0038】
第1のゲル形成組成物には、望ましくは更に水及び/又はグリセリンなどのキャリアが含まれており、更にメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イミダゾリジニル尿素、ジャーマル(Germall)115、ヒドロキシ安息香酸のメチル、エチル、プロピル、及びブチルエステル、ベンジルアルコール、EDTA、ブロノポール(2−ブロモ−2−ニトロプロパンー1,3−ジオール)、サリチル酸ナトリウム、フェノキシプロパノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びこれらの混合物などの水溶性又は分散性防腐剤が含まれている防腐剤及び防腐増強剤を含ませてもよい。美容/スキンケア製品及び医薬部外品に通常使用されるその他の防腐剤及び防腐増強剤も、本明細書で用いるのに好適な場合がある。
【0039】
第2のゲル形成組成物
第2のゲル形成組成物は、例えば、糖、アルコール、一価の塩又は多価の塩のいずれか、又は金属イオン、及びこれらの混合物などのゲル強化剤から構成されている。ただし、第1のゲル形成組成物の水溶性ポリマーゲル化剤としてアルギン酸塩を使用している場合、マグネシウム及び水銀金属イオンは、アルギン酸塩との融和性がないため、好適ではない。このような塩類に好適なカチオン類は、カリウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、及びこれらの混合物から選択することができる。上記カチオン類と組み合わせるのに好適なアニオン類は、塩素アニオン、クエン酸アニオン、硫酸アニオン、炭酸アニオン、ホウ酸アニオン、リン酸アニオン、及びこれらの混合物から選択してよい。ゲル強化剤は、好ましくは約0.01重量%〜約10重量%、更に好ましくは約0.05重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約2重量%の濃度で第2のゲル形成組成物に含まれている。
【0040】
第2のゲル形成組成物には、望ましくは更に水などのキャリアが含まれており、更にメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イミダゾリジニル尿素、ジャーマル(Germall)115、ヒドロキシ安息香酸のメチル、エチル、プロピル、及びブチルエステル、ベンジルアルコール、EDTA、ブロノポール(2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール)、サリチル酸ナトリウム、フェノキシプロパノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びこれらの混合物などの水溶性又は分散性防腐剤が含まれている防腐剤及び防腐増強剤を含ませてもよい。美容/スキンケア製品及び医薬部外品に通常使用されるその他の防腐剤及び防腐増強剤も、本明細書で用いるのに好適な場合がある。
【0041】
第1のゲル形成組成物及び第2のゲル形成組成物を混合すると、ゲル構造が形成される。理論に束縛されるものではないが、第1のゲル形成組成物の水溶性ポリマーゲル化剤と第2のゲル形成組成物のゲル強化剤との間でイオン交換反応が生じると考えられる。例えば、水溶性ポリマーゲル化剤として負に帯電したカルボキシル基を有するアルギン酸塩、及びゲル強化剤として二価の金属塩を使用している場合、アルギン酸塩鎖は、橋の役割をする二価のカチオンとイオン結合して架橋する。この化学構造の変化により、粘度が上昇し、流動性が低下する。反応が進むにつれて、アルギン酸塩は架橋して流動性を失い、最終的にゲル化する。
【0042】
このようなゲル構造は、水不溶性基材に適用されると基材に浸透し、ゲル構造のない基材に比べて異なる肌ざわり、感触、及びフィット性をもたらす。このため、本明細書では親水性基材が好ましい。
【0043】
トリートメント組成物
本発明の美容トリートメント物品には、ゲル組成物に加えて、好ましくは更に少なくとも1つの皮膚処理剤を提供するトリートメント組成物を含む。トリートメント組成物としてはレオロジー変性剤が挙げられる。好適なレオロジー変性剤としては、ラポナイトなどの合成増粘剤、並びにベントナイト及びヘクトライトなどの天然粘度が挙げられる。本明細書では、粒径が比較的小さく、透明なゲル様トリートメント組成物を形成可能なことから、ラポナイトが好ましい。本明細書に用いるのに好適な代表的なラポナイトは、英国のロックウッド・アディティブズ社(Rockwood Additives, Ltd.)から入手可能なXLGである。レオロジー変性剤は、好ましくは約0.01重量%〜約20重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、更に好ましくは約1重量%〜約5重量%の濃度でトリートメント組成物に含まれている。
【0044】
レオロジー変性剤が存在すると、これまで水不溶性基材の顔用マスクに提供されてきた液体トリートメント組成物に比べて異なる粘度特性、好ましくはより高い粘度特性が本明細書のトリートメント組成物にもたらされる。本発明のトリートメント組成物は、皮膚に適用すると、レオロジー変性剤の存在により粘度が上昇する。粘度上昇の程度は、トリートメント組成物に添加されるレオロジー変性剤の量によって異なる。
【0045】
トリートメント組成物には、更に追加的なレオロジー変性剤を含有させてもよい。追加的なレオロジー変性剤は、トリートメント組成物の安定性及び物理的特性の向上、及びシネレシスの防止を助ける可能性がある。本明細書に好適な追加的なレオロジー変性剤としては、組成物の粘度を上昇させる能力を有し、組成物に使用されるその他の成分と融和性がある水溶性又は水混和性ポリマーが挙げられる。追加的なレオロジー変性剤は、好ましくはトリートメント組成物の約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約3重量%、更に好ましくは約0.2重量%〜約2重量%の濃度で含有させてもよい。
【0046】
追加的なレオロジー変性剤として本明細書で有用な水溶性増粘化ポリマーとしては、アニオン性ポリマー及び非イオン性ポリマーが挙げられる。本明細書で有用な水溶性増粘化ポリマーとしては、例えば、アクリルポリマー、約10000を超える分子量を有するポリアルキレングリコールポリマー、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グアーガム及びキサンタンガムのようなガム、カラゲーナン、ペクチン、寒天、マルメロ種子(シドニア・アブロンガ・ミル(Cydonia oblonga Mill))、デンプン(米、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦)、藻類コロイド(藻類抽出物)、デキストラン、スクシノグルカン、プレラン、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン、アルギン酸ナトリウム、及びアルギン酸プロピレングリコールエステルが挙げられる。中和剤は、上記の陰イオン性増粘剤を中和するために含まれてもよい。このような中和剤の非限定例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム(potssium hydroxide)、水酸化アンモニウム、モノエタノールアミン(monethanolamine)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、トロメタミン、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
上記ポリマー類のうち、極めて好ましいのは、トリートメント組成物が皮膚上で乾燥した場合に、望ましくないポリマーフレークが少ないものである。このような極めて好ましいポリマー類としては、例えば、アクリルポリマー類が挙げられる。本明細書で有用なアクリルポリマー類としては、アクリル酸、アクリル酸の塩類、アクリル酸の誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸の塩類、メタクリル酸の誘導体、及びこれらの混合物から成る群から選択されるモノマー類を含むものが挙げられる。誘導体としては、例えば、アルキルアクリレート、アクリルアミド、アルキルメタクリレート、及びメタクリルアミドが挙げられる。このようなアクリルポリマーとしては、例えば、カルボマーというCTFA名称を有する架橋アクリル酸ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、及びアクリレート/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマーというCTFA名称を有するアクリル酸/アルキルアクリレートコポリマーが挙げられる。本明細書に極めて有用な市販のアクリルポリマー類としては、例えば、セピック(SEPPIC Inc.)から商品名セピゲル(Sepigel)305として入手可能なポリアクリルアミド、及び全てB.F.グッドリッチカンパニー(B.F.Goodrich Company)から商品名ペミュレン(Pemulen)TR−1、ペミュレン(Pemulen)TR−2、カーボポール(Carbopol)1342、カーボポール(Carbopol)1382、及びカーボポール(Carbopol)ETD2020として入手可能なアクリレート/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマーが挙げられる。
【0048】
本発明のトリートメント組成物には、好ましくは少なくとも1つの皮膚処理剤が含まれている。本発明の皮膚処理剤としては、当該技術分野において既知のものが挙げられ、水溶性保湿剤、長期持続美白剤、皮膚の色調変化剤又は脱色素剤、ペプチド、フラボノイド、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの成分については、本明細書で更に詳しく記載する。
【0049】
更に、皮膚処理剤には、酸化防止剤、クレンジング剤、遊離ラジカルスカベンジャー、保湿剤、皮膚の色調修正剤、抗ニキビ剤、抗ふけ剤、老化防止剤、軟化剤、抗しわ剤、角質溶解剤、抗炎症剤、皮膚のきめ処理剤、スキンローション、回復剤、脂肪調整剤(liporegulator)、血管保護剤、抗菌剤、抗真菌剤、制汗剤、防臭剤、皮膚コンディショナー、麻酔剤、栄養剤、皮脂吸収剤、及び水分吸収剤を含ませてもよい。このような成分は、一般にトリートメント組成物の約5重量%以下の濃度でトリートメント組成物中に含有させる。これらの成分については、本明細書で更に詳しく記載する。
【0050】
本発明のトリートメント組成物には、好ましくは皮膚処理剤として水溶性保湿剤を含む。水溶性保湿剤は、潤いを与える効果を皮膚にもたらすために好ましくは含まれる。更に水溶性保湿剤は、水溶性増粘剤の分散及び水性キャリア中で処理するのが比較的困難であるその他の構成成分の溶解/分散を助ける可能性がある。水溶性保湿剤は、好ましくは液体組成物の約0.1重量%〜約30重量%、より好ましくは約1重量%〜約20重量%、更に好ましくは約5重量%〜約15重量%の濃度で含まれてもよい。
【0051】
本明細書で有用な水溶性保湿剤としては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ソルビトール、エトキシル化グルコース、1,2−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、エリスリトール、トレハロース、キシリトール、マルチトール、マルトース、グルコース、フルクトース、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アデノシンリン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピロリドンカーボネート、グルコサミン、シクロデキストリン及びこれらの混合物のような多価アルコール類が挙げられる。
【0052】
本明細書で有用な水溶性湿潤剤としてはまた、CTFA名称PEG−200、600、PEG−1000、及びこれらの混合物などの約1000までの分子量を有するポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのような水溶性アルコキシル化非イオン性ポリマーが挙げられる。
【0053】
トリートメント組成物には、皮膚処理剤として長期持続美白剤を含有させてもよい。本明細書で有用な長期持続美白剤とは、皮膚の外観を改変するだけでなく、更に処置前と比較して色素沈着過度を改善する活性成分を意味する。長期的とは、定義上、対象の有効期間中に長期間にわたる、好ましくは少なくとも約1週間、より好ましくは少なくとも約1か月間、更により好ましくは少なくとも約3か月間、更により好ましくは少なくとも約1年間にわたる、本組成物の連続的な局所塗布を意味する。通常は、塗布はこのような長期間にわたって、1日当たり約1回程度であるが、塗布頻度は1週間当たり約1回から1日当たり約3回以上まで変動させることができる。長期持続美白剤は、液体組成物の、好ましくは約0.001重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約5重量%の濃度で含有させてもよい。
【0054】
本明細書で有用な長期持続美白剤としては、アスコルビン酸化合物、ビタミンB3化合物、アゼライン酸、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸とその誘導体、グリシルリジン酸、ヒドロキノン(hydroquinoine)、コウジ酸、アルブチン、クワ抽出物、及びエルゴチオネイン(ergothionein)、及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、好ましいものは、アスコルビン酸化合物、ビタミンB3化合物、及びこれらの混合物である。長期持続美白剤の組み合わせの使用は、それらが異なる機構により美白の効果をもたらす可能性があるという点で、有利であると考えられている。
【0055】
本明細書で有用なアスコルビン酸化合物としては、本質的にL型のアスコルビン酸、アスコルビン酸塩、及びそれらの誘導体が挙げられる。本明細書で有用なアスコルビン酸塩類としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウム及びプロタミン塩が挙げられる。本明細書で有用なアスコルビン酸誘導体としては、例えば、アスコルビン酸のエステル、及びアスコルビン酸のエステル塩が挙げられる。特に好ましいアスコルビン酸化合物としては、2−o−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸(アスコルビン酸及びグルコースのエステルであり、普通はL−アスコルビン酸2−グルコシド又はアスコルビルグルコシドと称される)及びその金属塩、並びにL−アスコルビン酸ホスフェートエステル塩、例えばリン酸アスコルビルナトリウム、リン酸アスコルビルカリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、及びリン酸アスコルビルカルシウムが挙げられる。市販のアスコルビン酸化合物としては、ハヤシバラ(Hayashibara)から入手可能な2−o−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸、及びロッシュ(Roche)から入手可能な商品名ステイ(STAY)Cのリン酸L−アスコルビルナトリウムが挙げられる。
【0056】
本明細書で有用なビタミンB3化合物としては、例えば、次式を有するものが挙げられる。
【0057】
【化1】

式中、Rは−CONH2(例えば、ニコチン酸アミド)、又は−CH2OH(例えば、ニコチニルアルコール)、これらの誘導体、及び上記いずれかの塩である。
【0058】
前出のビタミンB3化合物の代表的な誘導体としては、ニコチン酸の非血管拡張性エステル類、ニコチニルアミノ酸類、カルボン酸類のニコチニルアルコールエステル類、ニコチン酸N−オキシド及びナイアシンアミドN−オキシドを包含する、ニコチン酸エステル類が挙げられる。好ましいビタミンB3化合物は、ナイアシンアミド及びニコチン酸トコフェロールであり、より好ましいものはナイアシンアミドである。好ましい実施形態において、ビタミンB3化合物は、限られた量の塩の形態を含有し、より好ましくは、実質的に、ビタミンB3化合物の塩類を含まない。好ましくは、ビタミンB3化合物は、約50%未満のそのような塩を含有し、より好ましくは本質的に塩の形態を含まない。
【0059】
本発明のトリートメント組成物には、皮膚処理剤として皮膚の色調変化剤を含有させてもよい。本明細書で有用な皮膚の色調変化剤は、皮膚の色調変化顔料、反射微粒子物質、及びこれらの混合物から成る群から選択する。本明細書で有用な皮膚の色調変化剤とは、皮膚の色及び/又は色調の外観を改変するものであり、例えば皮膚の美白が挙げられるが、これらに限定されない。皮膚の色調変化剤は、好ましくは少なくとも約100nmの粒径を有する。本明細書に有用な皮膚の色調変化顔料としては、例えば、タルク、雲母、シリカ、マグネシウムシリケート、酸化チタン、酸化亜鉛、及び酸化チタン被覆雲母が挙げられる。
【0060】
本明細書で有用な反射微粒子物質は、約100nm〜約10μmの一次粒径(即ち、任意のキャリアとの組み合わせ前の、本質的に純粋な粉末形態において)を有する。反射微粒子物質は無機物質であってもよい。本明細書で有用な無機反射微粒子物質としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、より好ましくは粒子は本質的に二酸化チタンが挙げられる。無機反射微粒子物質は、陽イオン性ポリマー、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性ポリマー、及び陰イオン性界面活性剤のようなコーティング材料でコーティングすることができる。
【0061】
これらに限定されるものではないが、ジ−、トリ−、テトラ−、及びペンタペプチド、並びにそれらの誘導体などのペプチドは、本発明の組成物に安全且つ有効な量で含有させてもよい。本明細書で使用するとき、「ペプチド」という用語は、天然由来のペプチド及び合成ペプチドの両方を意味する。また、本明細書で有用なのは、ペプチドが含まれている天然由来の組成物及び市販されている組成物である。
【0062】
本明細書に用いるのに好適なジペプチドとしては、カルノシン(Carnosine)(登録商標)(β−Ala−His)が挙げられる。本明細書に用いるのに好適なトリペプチドとしては、Gly−His−Lys、Arg−Lys−Arg、His−Gly−Glyが挙げられる。好ましいトリペプチド及びその誘導体としては、バイオペプチド(Biopeptide)CL(登録商標)として購入可能なパルミトイル−Gly−His−Lys(セダーマ(Sederma)(フランス)から入手可能な100ppmのパルミトイル−Gly−His−Lys);ペプチドCK(Arg−Lys−Arg);ペプチドCK+(Ac−Arg−Lys−Arg−NH2);及びイアミン(Iamin)としてシグマ(ミズーリ州セントルイス)から購入可能なHis−Gly−Glyの銅誘導体が挙げられる。テトラペプチド及びペンタペプチドも本明細書に用いるのに好適である。好ましい市販のペンタペプチド誘導体組成物は、パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser(フランス、セダーマ(Sederma)から入手可能)である。
【0063】
ペプチドは、本組成物に含有させる場合、好ましくは組成物の約0.000001重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.000001重量%〜約0.1重量%、更に好ましくは約0.00001重量%〜約0.01重量%の濃度で含有させる。ペプチドとしてカルノシン(Carnosine)(登録商標)が含まれているある組成物では、組成物には好ましくは前記ペプチドが組成物の約0.1重量%〜約5重量%の濃度で含まれている。ペプチド又はペプチド含有組成物としてパルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser及び/又はバイオペプチドCL(登録商標)が含まれている別の実施形態では、組成物には好ましくは約0.0001%〜約10%のパルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser及び/又はバイオペプチドCL(登録商標)ペプチド含有組成物が含まれている。
【0064】
フラボノイド化合物も本明細書で有用な場合があり、フラボノイド化合物としては非置換フラバノン類、置換フラバノン類、非置換フラボン類、置換フラボン類、非置換カルコン類、置換カルコン類、非置換イソフラボン類、及び置換イソフラボン類が挙げられる。本明細書で使用する時、「置換」という用語は、上述した骨格構造の1つ又は複数の水素原子が独立してヒドロキシル、C1〜C8アルキル、C1〜C4アルコキシル、O−グリコシドなど、又はこれらの置換基の混合物と置換されているフラボノイド化合物を意味する。本明細書で特に有用なフラボノイド化合物は、置換フラバノン類、置換フラボン類、置換カルコン類、置換イソフラボン類、及びこれらの混合物から成る群から選択する。
【0065】
本発明の一つの特に好ましい実施形態において、グリコシドフラボノイドは、グルコシルヘスペリジン、グルコシルルチン、グルコシルミリシトリン、グルコシルイソケルシトリン、グルコシルクエルシトリン、メチルヘスペリジン、及びこれらの混合物から成る群から選択される。これらのグルコシドフラボノイド化合物は、関連する天然のフラボノイド化合物から生化学的な方法によって得ることができる。
【0066】
本明細書で有用な抗ニキビ剤としては、サリチル酸、4−メトキシサリチル酸、過酸化ベンゾイル、乳酸、メトロニダゾール、パンテノール、レチノイン酸及びその誘導体、硫黄、トリクロサン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0067】
本明細書で有用な酸化防止剤及びラジカルスカベンジャーとしては、例えば、トコフェロール(ビタミンE)、トコフェロールアセテート及びトコフェロールニコチネートのようなトコフェロールのエステル、ブチル化ヒドロキシ安息香酸及びその塩、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸(商品名トロロックス(Trolox)(登録商標)で市販されている)、没食子酸及びそのアルキルエステル、特に没食子酸プロピル、尿酸及びその塩及びアルキルエステル、ソルビン酸及びその塩、アミン(即ち、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、アミノ−グアニジン)、スルフヒドリル化合物(即ち、グルタチオン)、ジヒドロキシフマル酸及びその塩、リシンピドレート、アルギニンピロレート、ノルジヒドログアヤレト酸、バイオフラボノイド、リジン、メチオニン、プロリン、スーパーオキシドジスムターゼ、シリマリン、茶抽出物、ブドウの皮/種の抽出物、メラニン、及びローズマリー抽出物が挙げられる。
【0068】
本明細書で有用な抗炎症剤としては、例えば、αビサボロール、アロエベラ、マンジスチャ(Manjistha)(アカネ属の植物、特にルビア・コルディフォリア(Rubia Cordifolia)からの抽出物)、及びグッカル(Guggal)(コミフォラ(Commiphora)属の植物、特にコミフォラ・ムクル(Commiphora Mukul)からの抽出物)、コーラノキ抽出物、カモミール、及びヤギ(sea whip)抽出物、並びにグリチルレチン酸、グリチルリチン酸、及びそれらの誘導体(例えば、塩及びエステル)を含むカンゾウ(グリチルリザ・グラベラ(Glycyrrhiza glabra)属/種の植物)族が挙げられる。
【0069】
本発明に有用な抗菌剤としては、過酸化ベンゾイル、エリスロマイシン、テトラサイクリン、クリンダマイシン、アゼライン酸、スルファレゾルシノールフェノキシエタノール、及びイルガサン(IRGASAN)(登録商標)DP300[チバ・ガイギー社(Ciba Geigy Corp.)、米国]が挙げられる。
【0070】
本明細書において有用な皮膚のきめ改善剤としては、ニコチン酸アミド、ニコチン酸エステル、ニコチニルアルコール、パンテノール、パンテニルエチルエーテル、n−アセチルシステイン、n−アセチル−L−セリン、ホスホジエステラーゼ阻害物質、トリメチルグリシン、トコフェリルニコチネート、ビタミンB3及び類似体又は誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。パンテノールが特に好ましい。パンテノールは、例えば、ロッシュ(Roche)により市販されている。本明細書に有用な皮膚活性化剤(Skin vitalizing agent)としては、藻類抽出物及びラミナリア・ディギタータ(Laminaria Digitata)抽出物のような海藻抽出物が挙げられる。
【0071】
更に、トリートメント組成物には、好ましくは1つ又は複数の水性キャリアが含有されている。このキャリアの濃度と種は、他の成分との適合性及び当該製品の他の所望の特性に応じて選択する。水性キャリアは、好ましくは約30重量%〜約99重量%、より好ましくは約50重量%〜約95重量%、さらにより好ましくは約70重量%〜約95重量%の濃度で組成物に含有させる。
【0072】
本発明で有用な担体としては、水及び低級アルキルアルコール類の水溶液が挙げられる。本明細書において有用な低級アルキルアルコール類は、1〜6個の炭素を有する一価アルコール、より好ましくはエタノールである。好ましくは、水性キャリアは実質的に水である。好ましくは脱イオン水を使用する。ミネラルカチオン類などの天然供給源からの水も、製品の所望の特性に応じて使用することができる。
【0073】
トリートメント組成物のpHは、好ましくは約6〜約8である。スキンケア活性物質をトリートメント組成物に含有させる場合には、pHは、活性な皮膚処理剤の最適な有効性をもたらすpHに調整してよい。望ましいpHを達成するために、緩衝剤及び他のpH調整剤を含有させることができる。本明細書に好適なpH調整剤としては、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸、クエン酸塩(ナトリウムなど)トリエタノールアミン、及び炭酸塩が挙げられる。
【0074】
また、トリートメント組成物には、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イミダゾリジニル尿素、ジャーマル(Germall)115、ヒドロキシ安息香酸のメチル、エチル、プロピル、及びブチルエステル、ベンジルアルコール、EDTA、ブロノポール(2−ブロモ−2−ニトロプロパンー1,3−ジオール)、サリチル酸ナトリウム、フェノキシプロパノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びこれらの混合物などの水溶性又は分散性防腐剤を含む防腐剤及び防腐増強剤を含有させてもよい。美容/スキンケア製品及び医薬部外品に通常使用されるその他の防腐剤及び防腐増強剤も、本明細書で用いるのに好適な場合がある。
【0075】
上記の成分に加えて、本発明のトリートメント組成物には更に、紫外線吸収剤又は散乱剤;隔離剤;抗アンドロゲン剤;脱毛剤;セラニーズ・スーパーアブソーバント・マテリアルズ(Celanese Superabsorbent Materials)(米国バージニア州ポートスミス)から入手可能で米国特許第4,076,663号に記載されているサンウェット(SANWET)(登録商標)IM−1000、IM−1500、及びIM−2500などのデンプングラフト化ポリアクリル酸ナトリウム及びヒアルロン酸などの可溶性又はコロイド可溶性保湿剤;タンパク質及びポリペプチド並びにその誘導体;有機ヒドロキシ酸;薬用収れん剤;外用鎮痛剤;皮膜形成剤;固化防止剤、消泡剤;結合剤;着色剤;香料、精油、及びその可溶化剤;天然抽出物;グアイアズレン;及びイースト酵素濾液を含有させてもよい。メントール、カンファー、メントール誘導体(メンチルラクテート、メントキシプロパンジオール、メンチルグルコシドなど)、及びこれらの混合物などの清涼剤を盛り込んでもよい。
【0076】
調製方法
好ましい実施形態では、美容トリートメント物品は、水不溶性基材及びゲル組成物から成るマスク組成物であり、好ましくは美容トリートメント物品には更にトリートメント組成物を含む。この実施形態では、ユーザーは物品を包装から取り出し、皮膚に適用するだけなので、最も使用が簡単という利点をユーザーに提供すると考えられる。別の実施形態では、物品は水不溶性基材及びゲル組成物から構成されている。この実施形態では、いずれかのトリートメント組成物を皮膚又はゲル化前の基材に別々に適用することができる。
【0077】
別の好ましい実施形態では、物品は、水不溶性基材、並びに使用時まで基材及び/又はその他の成分とは別に保持される1つ又は複数の第1のゲル形成組成物、第2のゲル形成組成物、又はトリートメント組成物が含まれているキットとして提供される。このような実施形態では、本明細書に記載するようにトリートメント物品を調整することで、ユーザーは自身でゲル組成物を作製することができる。
【0078】
本発明のマスク組成物の好ましい実施形態は、以下のように作製可能である。一般に、マスク組成物は、最初に水不溶性基材を第1のゲル形成組成物で十分にコーティングすることによって作製する。コーティング後、コーティングした水不溶性基材に、例えば、好ましくは両面にスプレーすることによって、第2のゲル形成組成物を適用する。これにより、水不溶性基材に浸透するゲルが形成される。ゲルが十分粘性になったら、好ましくはトリートメント組成物を、基材に浸透したゲルに均一にコーティング又はスプレーする。理論に束縛されるものではないが、処理組成物中に存在する水又は水性キャリアの一部はゲル構造に入り込むと考えられるが、トリートメント組成物はゲルに浸透しないと考えられる。したがって、大部分のトリートメント組成物は皮膚に接触可能である。
【0079】
別の好ましい実施形態では、上述したように第1及び第2のゲル形成組成物を基材に適用した後、ゲル浸透基材の全体にトリートメント組成物を均一にスプレー又はコーティングする代わりに、トリートメント組成物を選択的にスプレー又はコーティングしてもよい。この実施形態では、ゲル浸透基材の選択された箇所に別個のトリートメント組成物を提供することができる。例えば、高濃度の皮膚水分有益剤が含まれているトリートメント組成物を基材の頬の位置に提供する一方、より低濃度の皮膚水分有益剤及び/又は抗ニキビ有益剤が含まれている別個のトリートメント組成物を同じゲル浸透基材の鼻の位置に適用してもよい。同様に、抗しわ剤を目の輪郭領域及び/又は鼻唇溝の位置に選択的に提供してもよい。トリートメント組成物を基材の対応位置に選択的に適用することによって、望ましい有益剤を望ましい皮膚領域に提供することには、多くのバリエーションがあり、そのすべては本発明の範囲内に含まれる。このような皮膚処理剤のターゲット設定は、液体組成物を容器に流し込み、マスク基材を液体組成物に浸漬して作製された以前の基材マスクでは不可能であった。
【0080】
選択的なターゲット設定により、トリートメント組成物を適用する場合、基材の異なる領域に適用された別個のトリートメント組成物同士のブリージングや望ましくない混合を防止するため、拡散バリアを提供することが更に望ましい場合がある。例えば、拡散バリアとしては、空泡、プラスチックバリアなどの拡散経路を遮断するための物理的手段が挙げられる。
【0081】
好ましくは、美容トリートメント物品又は美容トリートメント物品キットは、気密封止して使用時に開封するパッケージに収容する。更に、本発明のマスク組成物には、より簡単でより衛生的な使用を提供するため、アプリケータを搭載してもよい。物品の適用時にユーザーの手が不要に触れないように、いずれの種類のアプリケータを提供してもよい。例えば、基材の片面に剥離ライナーを提供し、マスクの使用時にライナーを剥がしてマスクを皮膚に適用してもよい。剥離ライナーを使用すると、マスク組成物を巻いて密封封止パウチ内に収容することができる。
【0082】
使用方法
本発明のマスク組成物は、人体の皮膚、特に顔の皮膚への局所適用に好適である。本発明の組成物を使用すると、皮膚処理剤の付着及び浸透により、滑らかさ、柔らかさ、及び潤いのある感触のような皮膚コンディショニング効果が皮膚に提供される。本発明のマスク組成物を適用すると、トリートメント組成物に含まれている特定の有益剤によって、皮膚への別の効果が提供される可能性がある。本発明のマスク組成物は、保湿剤及びその他の有益剤を送り届ける上で、こうした薬剤が十分な量、長期間にわたって皮膚に接触するという点から特に有利である。不溶性基材を使用せずに液体組成物を皮膚に適用する場合と比較して、送達手段としてゲル組成物を備えた本発明のマスク組成物は、こうした薬剤のより良好な分配及び付着、並びに経皮送達可能なこれらの薬剤のより良好な浸透をもたらすと考えられる。更に、低い空気透過性を有する不溶性基材を用いる場合には、皮膚に有益な薬剤のより有効な皮膚への浸透が期待される。液体が飽和されたマスク組成物を使用する場合と比較して、本発明のマスク組成物は、異なる使用感及びより便利な適用性を提供する。本発明のマスク組成物はまた、使用時にユーザーに、爽快感、及びリラックス感のような感情的効果をもたらすと考えられている。
【0083】
ある好ましい実施形態では、マスク組成物は、顔の皮膚を処置するために、
(a)マスク組成物を顔の皮膚の大部分の領域に適用する工程、
(b)マスク組成物のいずれかの部分が乾くまでの期間、マスク組成物を顔の皮膚上に保つ工程、
(c)顔の皮膚からマスク組成物を取り除く工程、及び
(d)任意選択的に、顔の皮膚上に残された残留処理組成物を皮膚にマッサージする工程により用いる。
【0084】
マスクは、顔の皮膚上にやさしく置くことによって、皮膚にフィットする。指先を使用してマスクを顔の皮膚に押し付けると、マスクはよりぴったりフィットする。
【0085】
本明細書で使用する時、「乾燥する」とは、定義上、水、及び含まれている場合には香料のようなその他の揮発性構成成分が、水不溶性基材から蒸発し、それにより有益な薬剤を皮膚に送り届ける基材の能力が大幅に低下することを意味する。したがって、一旦マスクの一部が乾燥すると、有益剤の分配さえ期待することはできない。更に、乾燥した場合、マスク組成物は、適用時に、不快なこわばった及び堅い感じを皮膚に与える。
【0086】
本発明のマスク組成物は、通常の大気条件ヘの暴露により容易に乾燥するため、マスク組成物は貯蔵の間、密封された包装の中に収容しなければならない。
【0087】
乾燥した部分が現れるまでに必要な時間は、使用される周りの状況、即ち温度、湿度、空気循環、並びに構造及びユーザーの体温によって決まる。通常は、マスク組成物は、室温において、湿度約50%で使用した場合に、約15分間以内には乾燥した部分が現れないように設計しなければならない。低い空気透過性を有する不溶性基材を用いる場合には、マスク組成物が乾燥するまでの時間を、好ましくは約5分〜約45分延長することができる。
【0088】
別の好ましい実施形態では、マスク組成物のキットは以下の工程で顔の皮膚を処理するために使用する。
【0089】
(a)第1のゲル形成組成物を基材に適用する工程、
(b)第2のゲル形成組成物を基材に適用する工程、
(c)1つ又は複数のトリートメント組成物を基材、又は基材の選択された箇所に適用する工程、
(d)マスク組成物を顔の皮膚の大部分の領域に適用する工程、
(e)マスク組成物のいずれかの部分が乾くまでの期間、マスク組成物を顔の皮膚上に保つ工程、
(f)マスク組成物を顔の皮膚から取り除く工程、及び
(g)任意選択的に、顔の皮膚上に残された残留トリートメント組成物を皮膚にマッサージする工程。
【実施例】
【0090】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある実施形態を更に記載し実証する。これらの実施例は、説明の目的で提示されているに過ぎず、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多くの変形が可能であるため、本発明を限定するものと解釈すべきではない。成分は、適用できる場合は、化学名又はCTFA名称で識別され、そうでない場合には下記で定義される。
【0091】
【表1】

【0092】
成分の定義
*1 アルギン酸カリウム:キミカ・コーポレーション(Kimika corporation)から入手可能なキミカ・アルギン(Kimica Algin)K
*2 アルギン酸ナトリウム:キミカ・コーポレーション(Kimika corporation)から入手可能なキミカ・アルギン(Kimica Algin)Na
【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
成分の定義
*1 ラポナイト:ロックウッド・アディティブズ(Rockwood Additives, Ltd.)から入手可能なXLG
*2 ベントナイト:サザン・クレイ・プロダクツ(Southern Clay Products)から入手可能なベントライト(Bentolite)H
*3 ナイアシンアミド:ロッシュ(Roche)から入手可能なナイアシンアミド
*4 パンテノール:ロッシュ(Roche)から入手可能なDL−パンテノール
*5 クワ抽出物:マルゼン・ファーマスーティカルズ(Maruzen Pharmaceuticals)から入手可能なマルベリー・エクストラクト(Mulberry Extract)BG
*6 天然抽出物:カネダ(Kaneda)から入手可能なフィテレン(Phytelene)EGX243[ウサギギクマウンテンフラワー(Arnica Mountan Flower)抽出物、セイヨウオトギリソウ抽出物、ツタ(セイヨウキズタ)抽出物、ウィッチヘーゼル(アメリカマンサク)抽出物、ブドウ(ヨーロッパブドウ)葉抽出物、及びマロニエ(セイヨウトチノキ)抽出物の混合物]
*7 緑茶の含水グリセリン溶液:バイオ−ボタニカ(Bio-Botanica)(ニューヨーク州ハウプページ(Hauppauge))から入手可能
*8 パルミトイル Lys Thr Thr Lys Ser:セダーマ(Sederma)から入手可能なペプチド
【0096】
実施例1〜6のマスク組成物は、図1に従って切断及び形成させた約0.7gのハヴィックス(Havix)2365基材から作製し、約20.0〜25.0gの第1のゲル形成組成物でコーティングした後、約20.0〜25.0gの第2のゲル形成組成物でコーティングし、次いで形成させたゲル表面から余分な水分を除去する。その後、好ましくは均一又は選択的に、約4.0gの1つ又は複数のトリートメント組成物でコーティングする。マスク組成物は、上記のハヴィックス(Havix)基材の代わりに、約1.8gのクラレイ(Kuraray)TT463Q60基材、又は約3.5gの綿基材から作製してもよい。
【0097】
調製方法
上記の組成物は、当業者に既知のいかなる方法でも製造することができる。組成物は次のように作製するのが好適である。
【0098】
第1のゲル形成組成物:
1.水溶性ポリマーゲル化剤を除くすべての成分を水に溶解し、均質になるまで混合する。必要に応じて加熱してもよい。
2.水溶性ポリマーゲル化剤を工程(1)の生成物に添加し、必要に応じて高速ミキサーを用いて均質になるまで混合する。
【0099】
第2のゲル形成組成物:
1.すべての成分を水に溶解し、均質になるまで混合する。
【0100】
トリートメント組成物:
1.存在する場合、レオロジー変性剤を容器内で水溶性保湿剤に事前に分散させる。香料などのその他の残りの成分が含まれる場合、これらの成分を容器に添加する。
2.pH調整剤を別容器で水に溶解し、均質になるまで混合する。
3.すべての成分を別容器で水に溶解し、均質になるまで混合する。
4.工程(1)及び(3)の生成物を、必要に応じて高速ミキサーを用いて均質になるまで混合する。
5.工程(4)の生成物の粘度が上昇したら、工程(2)の生成物を工程(4)の生成物に添加する。
6.工程(5)の生成物を、必要に応じて高速ミキサーを用いて均質になるまで混合する。
【0101】
開示した及び上記に説明した本発明の実施形態には、多くの利点がある。適合し易くするために指先を用いて顔に適用し、約15分間放置する場合、それらは、滑らかな、柔らかい、及び潤いのある感触のような改善された皮膚コンディショニング効果を皮膚に与える。
【0102】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれているが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であるとの容認及び解釈すべきではない。この文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれる文献における用語のいずれかの意味又は定義と対立する範囲内においては、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義を適用するものとする。
【0103】
本発明の特定の実施形態を説明し記載してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変形及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の水不溶性基材の好ましい実施形態の平面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水不溶性基材;及び
(2)以下を含むゲル組成物:
(a)水溶性ポリマーゲル化剤を含む第1のゲル形成組成物;
(b)ゲル強化剤を含む第2のゲル形成組成物;及び
(3)好ましくは、レオロジー変性剤を含むトリートメント組成物、
を含む美容トリートメント物品。
【請求項2】
前記水溶性ポリマーゲル化剤が、合成ポリマー、天然ポリマー、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の美容トリートメント物品。
【請求項3】
前記天然ポリマーが、ゼラチン、多糖類、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項2に記載の美容トリートメント物品。
【請求項4】
前記多糖類が、紅藻多糖類、グルコマンナン、ガラクトマンナン、発酵多糖類又はその誘導体、褐藻多糖類、海生無脊椎動物の抽出物、デンプン又はその誘導体、天然果実抽出物、植物繊維誘導体、ケルプ、天然植物滲出物、樹脂性ゴム類、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項3に記載の美容トリートメント物品。
【請求項5】
前記紅藻多糖類がアルギン酸塩である、請求項4に記載の美容トリートメント物品。
【請求項6】
前記ゲル強化剤が、糖、アルコール、一価の塩又は多価の塩のいずれか、又は金属イオン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の美容トリートメント物品。
【請求項7】
前記ゲル強化剤が多価の金属イオンである、請求項6に記載の美容トリートメント物品。
【請求項8】
前記レオロジー変性剤が、合成増粘剤、天然粘土、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の美容トリートメント物品。
【請求項9】
前記レオロジー変性剤がラポナイトである、請求項8に記載の美容トリートメント物品。
【請求項10】
前記トリートメント組成物が少なくとも1つの皮膚処理剤をさらに含む、請求項1に記載の美容トリートメント物品。
【請求項11】
前記皮膚処理剤が、水溶性保湿剤、長期持続美白剤、皮膚の色調変化剤、ペプチド、フラボノイド、酸化防止剤、クレンジング剤、遊離ラジカルスカベンジャー、保湿剤、抗ニキビ剤、抗ふけ剤、老化防止剤、軟化剤、抗しわ剤、角質溶解剤、抗炎症剤、皮膚のきめ処理剤、スキンローション、回復剤、脂肪調整剤(liporegulator)、血管保護剤、抗菌剤、抗真菌剤、制汗剤、防臭剤、皮膚コンディショナー、麻酔剤、栄養剤、皮脂吸収剤、水分吸収剤、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項10に記載の美容トリートメント物品。
【請求項12】
前記物品が人の顔の皮膚の大部分の領域をカバーするように構成されたマスク組成物である、請求項1に記載の美容トリートメント物品。
【請求項13】
前記水不溶性基材の厚さが約100μm〜約1cmである、請求項1に記載の美容トリートメント物品。
【請求項14】
前記水不溶性基材の少なくとも一部が、綿、パルプ、レーヨン、及びこれらの混合物から選択される親水性材料から作られている、請求項1に記載のマスク組成物。
【請求項15】
顔の皮膚を処置する方法であって、
(a)請求項12に記載のマスク組成物を顔の皮膚の大部分の領域に適用する工程;
(b)前記マスク組成物のいずれかの部分が乾くまでの期間、前記マスク組成物を前記顔の皮膚上に保つ工程;
(c)前記顔の皮膚から前記マスク組成物を取り除く工程;及び
(d)任意選択的に、前記顔の皮膚上に残された残留処理組成物を皮膚にマッサージする工程、
を含む方法。
【請求項16】
工程(b)の期間が約5〜約45分である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(1)水不溶性基材;及び
(2)以下を含むゲル組成物:
(c)水溶性ポリマーゲル化剤を含む第1のゲル形成組成物;
(d)ゲル強化剤を含む第2のゲル形成組成物;及び
(3)少なくとも2つの別個のトリートメント組成物であって、前記トリートメント組成物の少なくとも一方はレオロジー変性剤を含み、それぞれのトリートメント組成物は水不溶性基材の1つまたは複数の選択された箇所に提供されているトリートメント組成物
を含む美容トリートメント物品。
【請求項18】
美容トリートメント物品のキットであって、
(1)水不溶性基材;及び
(2)以下を含むゲル組成物:
(e)水溶性ポリマーゲル化剤を含む第1のゲル形成組成物;
(f)ゲル強化剤を含む第2のゲル形成組成物;及び
(3)レオロジー変性剤を含むトリートメント組成物
を含み、前記水不溶性基材を物品の使用時まで、前記第1のゲル形成組成物、第2のゲル形成組成物、及び処理組成物の少なくとも1つから分離して維持するキット。

【図1】
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【公表番号】特表2008−519864(P2008−519864A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541466(P2007−541466)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/041552
【国際公開番号】WO2006/053333
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】