説明

基板の保管方法、運搬方法並びに保管装置

【課題】有機機能層を備えてなる基板をより安価な装置で保管できる方法、運搬方法および保管装置を提供する。
【解決手段】有機機能層を備えてなる基板を不活性液体中に保管することを特徴とし、好ましくは前記不活性液体が、(イ)化学的に不活性であり、有機機能層を構成する化合物と化学反応を起こさず、(ロ)常温にて液体であり、かつ(ハ)常温において5000Pa以上の蒸気圧を持つ基板の保管方法。該保管方法を適用する運搬方法。有機機能層を備えてなる基板を収納可能でありかつ密閉可能なチャンバー101と、チャンバー101に収納された不活性液体102と、チャンバー101に不活性液体102を出し入れするための手段103,104とを具備する基板保管装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機機能層を備えてなる基板を保管若しくは運搬する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部材の薄層軽量化やフレキシブル化を目標とした、有機機能性材料を用いた有機EL素子、有機太陽電池、有機機能層トランジスタなどの有機機能性素子の開発が盛んに行われている。
その様な有機機能性材料には、π電子系有機機能性材料が広く用いられている(例えば非特許文献1)。
【0003】
その様な化合物は、酸素や水と化学反応を起こし素子特性を劣化させる可能性が高い。
特に酸素は、熱や光により反応性の高い励起一重項酸素やスーパーオキシドアニオン等の活性酸素種になりやすく、π電子系分子の二重結合部位と反応を起こす恐れがある。
【0004】
そのため、有機機能性材料を取り扱う際には、窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気下で行う必要がある場合が多い。特に、加熱を行う工程や、常温であっても数時間以上の保管を行う場合には、不活性雰囲気で行うことが好ましい。
【0005】
半導体基板においても、同様に光や酸素、水により、基板が劣化することが知られている。
この問題を解決するために、真空若しくは不活性ガス雰囲気(特許文献1から5)や、不活性液体中(特許文献6)、遮光条件(特許文献7)にて基板を保管する方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、真空状態を作るためにはチャンバーを耐圧構造にしたり、真空ポンプを用意したりする必要があり、装置コストが高く付く。また、一旦真空状態を経由すると、ベント時にゴミが舞い上がり基板に付着する恐れもある。
また、不活性ガス雰囲気を作り出すためにはガスの置換を行う必要があり一旦真空状態を作るか、若しくは非常に大量の不活性ガスを垂れ流すか、若しくは高性能なガス精製機を用いる必要がある。
真空状態を作るには、前述の通り耐圧チャンバーや真空ポンプが必要となり装置コストが高く付く。また、不活性ガスを垂れ流す場合にはランニングコストが高く付く。
また、高性能なガス精製機を用いる場合には、一旦真空にして窒素置換してから精製を行うか、いきなり大気状態から精製を行うかのいずれかとなるが、前者の場合は真空状態が必要となり装置コストが上がり、後者の場合にはチャンバー内が不活性ガス雰囲気となるまでに数時間単位での時間がかかり、その間に基板が劣化するおそれがある。
【0007】
遮光する方式では、光誘起電子移動反応や光誘起エネルギー移動反応は抑えられるが、熱による反応は抑えられない。たとえ室温での反応速度が非常に遅くても、長時間の基板保管を想定すると光を遮断するだけでは保管環境としては十分ではない。
【0008】
特許文献6(特開平5−218174号公報)に示される方法では、半導体基板製造装置と連結しているため真空槽が記載されているが、基板の保管そのものは0族の希ガス若しくは液体不活性ガスにて行っている。尚、この文献の中で言う液体不活性ガスとは常温で気体で0℃以下で液体であるフッ素化合物又は一酸化炭素若しくは二炭化酸素の液体、液体窒素などを示している。
希ガスを用いる場合は前述の不活性ガス雰囲気と同じであるため、コスト高となる。
一方、液体不活性ガスを用いる場合には、特に真空環境を作る必要はないが、常温で気体の液体なので、チャンバーを断熱材で覆う等の工夫が必要となる。また、低温を維持し続けなくてはいけないので長期保管には向いていない。また、液状の二酸化炭素を用いる場合には約0.5MPa以上の圧をかける必要がある。一酸化炭素を用いる場合は、中毒症を起こす危険が高い。
【0009】
有機機能性材料を担持した基板に関しても、半導体基板と同様、不活性ガス雰囲気で保管をするのが好ましいため、前述の半導体基板用保管装置を用いることが可能である。
【0010】
しかしながら、前述の保管手段は装置やランニングコストが高価であるため、安価な商品を提供することを考えると好ましくない。
【特許文献1】特開平5−259445号公報
【特許文献2】特開平5−243116号公報
【特許文献3】特開平11−168135号公報
【特許文献4】特開2005−340330号公報
【特許文献5】特開2002−117759号公報
【特許文献6】特開平5−218174号公報
【特許文献7】国際公開WO01/048813号パンフレット
【非特許文献1】「季刊化学総説 35 π電子系有機固体」、1998年、日本化学会 編
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、有機機能層を備えてなる基板をより安価な装置で保管できる方法、運搬方法および保管装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、好適には、揮発性の高い化学的に不活性な常温で液体である溶媒(不活性液体)を用いることで、上記課題が解決できることを見いだした。
【0013】
請求項1に記載の発明は、有機機能層を備えてなる基板を不活性液体中に保管することを特徴とする、基板の保管方法である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記不活性液体が、
(イ)化学的に不活性であり、有機機能層を構成する化合物と化学反応を起こさず、
(ロ)常温にて液体であり、かつ
(ハ)常温において5000Pa以上の蒸気圧を持つ
ことを特徴とする請求項1に記載の基板の保管方法である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記不活性液体に有機機能層を浸漬させたとき、浸漬前の前記有機機能層の表面粗さRaに対する浸漬させてから24時間後の前記有機機能層の表面粗さRaの変化率が1%未満であり、24時間後の前記不活性液体へ溶解した前記有機機能層の重量が、浸漬前の前記有機機能層の重量の0.1%未満であることを満たす液体を前記不活性液体として用いることを特徴とする請求項1または2に記載の基板の保管方法である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記不活性液体が、一分子中にフッ素原子を5個以上含む化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の基板の保管方法である。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の基板の保管方法を適用しながら、前記基板を運送することを特徴とする基板の運送方法である。
【0018】
請求項6に記載の発明は、有機機能層を備えてなる基板を収納可能でありかつ密閉可能なチャンバーと、前記チャンバーに収納された不活性液体と、前記チャンバーに前記不活性液体を出し入れするための手段とを具備する基板保管装置である。
【0019】
請求項7に記載の発明は、前記不活性液体中に含まれる不純物を除去するための手段を具備する、請求項6に記載の基板保管装置である。
【0020】
請求項8に記載の発明は、前記不純物が固体不純物であり、前記固体不純物を除去するための手段が、前記固体不純物を濾過するフィルターであることを特徴とする請求項7に記載の基板保管装置である。
【0021】
請求項9に記載の発明は、前記不純物が不活性液体に溶解した活性なガスであり、かつ、その不純物を除去するための手段が、不活性ガスのバブリングによる置換手段または超音波若しくは液加熱による脱ガス手段であることを特徴とする請求項7に記載の基板保管装置である。
【0022】
請求項10に記載の発明は、前記不純物が液体不純物であり、前記液体不純物を除去するための手段が、前記液体不純物を濾過するフィルター若しくは蒸留装置であることを特徴とする請求項7に記載の基板保管装置である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明は、有機機能層を備えてなる基板(以下、基板という)を不活性液体中に保管することを特徴とする、基板の保管方法であるので、基板をより安価な装置で保管することができる。
請求項2に記載の発明によれば、不活性液体を特定することにより、基板上の有機機能性材料(有機機能層に含まれる材料)が化学反応により劣化することがない。また、不活性液体が常温で液体であるため保管装置を冷却する必要がなく、更にはチャンバー内を一旦真空にする必要なくチャンバー内へ不活性液体を導入することが可能である。従来技術において、チャンバー内に酸素などの活性なガスが残っている場合、不活性ガスをチャンバー内に導入しても活性なガスと混合してしまい完全なガスの置換を行うことは容易ではない。そのため、一旦真空として活性なガスを除去する必要がある。一方、本発明のように不活性液体を導入した場合には活性なガスとの混合は起こりにくく、真空状態を経由せずとも基板周りを素早く不活性雰囲気に切り替えられる。また、保管後の基板をチャンバーから取り出す際に、常温での蒸気圧が高く揮発性が高いため、特に液切りを行わずとも乾燥した基板を取り出すことが可能である。
請求項3に記載の発明によれば、不活性液体の条件をさらに特定したので、有機機能性材料が溶けることなく、かつ有機機能層の構造も変化することなく基板が保管される。
請求項4に記載の発明によれば、不活性液体が、一分子中にフッ素原子を5個以上含む化合物であるので、有機機能性材料が溶けない、有機機能層の構造も変化しない、という効果が一層高まる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の基板の保管方法を適用しながら、基板を運送することを特徴とする基板の運送方法であるので、基板をより安価に、有機機能性材料が溶けない、有機機能層の構造も変化しない、という効果を保ちながら基板を運搬することができる。
請求項6に記載の発明は、有機機能層を備えてなる基板を収納可能でありかつ密閉可能なチャンバーと、前記チャンバーに収納された不活性液体と、前記チャンバーに前記不活性液体を出し入れするための手段とを具備する基板保管装置であるので、基板をより安価に、有機機能性材料が溶けない、有機機能層の構造も変化しない、という効果を保ちながら基板を保管することができる。なお該装置を密閉せずとも、基板を不活性液体に浸漬しておけば基板上の有機機能層の劣化は起こりにくいが、特に密閉可能なチャンバーとすることで、チャンバー外からの不純物の混入や不活性液体の揮発を抑制することが可能となる。
また、請求項7〜10に記載された基板保管装置によれば、不活性液体に混入した不純物を容易に除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
まず、本発明に利用可能な不活性液体について説明する。不活性液体は、次の3つの要件を満たすものが好ましい。
(イ)化学的に不活性であり、有機機能層を構成する化合物と化学反応を起こさず、
(ロ)常温にて液体であり、かつ
(ハ)常温において5000Pa以上の蒸気圧を持つ。
ここでいう常温とは、25℃を意味する。
この様な不活性液体としては、不活性液体に有機機能層を浸漬させたとき、浸漬前の前記有機機能層の表面粗さRaに対する浸漬させてから24時間後の前記有機機能層の表面粗さRaの変化率が1%未満であり、24時間後の前記不活性液体へ溶解した前記有機機能層の重量が、浸漬前の前記有機機能層の重量の0.1%未満であることを満たす液体が好ましい。
さらに好ましくは、一分子中にフッ素原子を5個以上含む化合物である。
下記表1に、本発明にとくに好ましく用いることができる不活性液体を例示する。
【0025】
【表1】

【0026】
次に、図面を用いて本発明の実施の形態をさらに詳しく説明する。
【0027】
図1に示されたチャンバー101は、その内部に不活性液体102と、図示しない基板および基板ホルダーを保管することが可能である。
チャンバー101としては、中にある不活性液体102およびそれが気化したガスが外に漏れないように、また、外から不純物が混入しないように密閉可能である必要がある。減圧や加圧に耐える必要はないため、チャンバー壁の肉厚は厚くなくてもよく、また、素材も不純物が溶出せず不活性液体102や基板および基板ホルダーの重みに耐える物であれば自由に選択可能である。具体的にはSUSおよびアルマイト処理済みアルミニウム等の腐食されにくい金属や、その金属の表面にフッ素樹脂をコーティングした物が好ましく用いることが可能である。
基板および基板ホルダーを出し入れするための蓋は、基板搬送機構にあわせて、上部若しくは側面に自由に配置することが可能である。また、図2に示すようにチャンバー101の中に、内部チャンバー108を設置してもよい。特に、チャンバー101側面に蓋を設置する場合には、液漏れの恐れが少ない図2の方式を好ましく用いることが可能である。
その際には、内部チャンバー108を横方向にスライドさせてから、基板を上部より取り出すことが出来る。
【0028】
チャンバー101には、不活性液体102を入れるための不活性液体注入バルブ103と、不活性液体102を外に取り出すための不活性液体排出バルブ104とが接続されている。
【0029】
チャンバー101内に残っている大気が問題になる場合もある。その大気を置換するために、不活性ガスを導入することも可能である。不活性ガスとしては、窒素やアルゴンなどの化学的に不活性なガスを用いることが出来る。不活性ガスは、チャンバー101内部の大気と置換する場合には、不活性ガス注入バルブ105を経由して導入する。また、不活性液体102内に溶存する酸素等の化学的に活性なガスと置換する場合には、バブリング用不活性ガス注入バルブ106を経由して導入する。
本発明におけるこの不活性ガスの導入は、チャンバー内部全体を不活性ガスに置換する場合と異なり、不活性液体102が存在しない僅かな隙間の大気を置換することが主目的であり、大量の不活性ガスを必要としない。また、基板は不活性液体102に覆われているため、厳密な置換を行う必要はない。従って、真空ポンプによる置換や、高性能なガス精製機による精製は不要である。
チャンバー内に導入した不活性ガスをチャンバー外に出すために、不活性ガス排出バルブ107やチェックバルブを設置する。
【0030】
この不活性ガスは、チャンバー内の不活性液体を出し入れする際に、チャンバー内の圧力を維持するためにも出し入れする。
具体的には、不活性液体をチャンバーに導入する場合には内部圧力が高くなるのを防ぐために不活性ガス排出バルブからガスを抜き出す。その際、不活性液体によりガスが押しだされるため、敢えてポンプでガスを抜き出さなくてもよい。
また、不活性液体をチャンバーより抜き出す場合には内部圧力が低くなるのを防ぐために不活性ガス注入バルブからガスを導入する。液の排出をスムーズにするためには、ガスを若干陽圧とすることで液を押しだすことも可能である。その場合には、チェックバルブのクラッキング圧を若干高めに設定するとよい。
【0031】
不活性液体排出バルブ104から排出された不活性液体は、必要に応じ不純物除去処理を施される。その処理装置としては、例えば図3に示されるようなものが一例として挙げられる。
図3では、不活性液体は液回収ポンプ306により吸引され、ダストフィルター305にてゴミ・塵などの固形不純物と濾別される。濾過された不活性液体は不活性液体保存容器301に一旦保管される。不活性液体は、液注入ポンプ308により運搬され、ダストフィルター309や水分除去フィルター310にて固形不純物や水分を除去した後に、再びチャンバー101へ導入される。
大気暴露などにより不活性液体に混入した酸素等の化学的に活性なガスは、超音波発生器303によるキャビテーション脱ガス処理やバブリング用不活性ガス注入バルブ307によるバブリング処理にて除去することが可能である。また、不活性ガスをヒーター304にて加熱するのも脱ガス処理に有効である。
不活性液体に不活性液体以外の溶媒が混入した場合には、別途図示されない蒸留精製機にて蒸留処理を行ってもよい。
【0032】
本発明の装置は真空系を用いず、また、大量の不活性ガスも使用しないため、極めて低コストで作成でき、ランニングコストも低価格に抑えることが可能である。
また、耐圧性を必要としないため軽量化が可能であり、チャンバーを何台も並列に並べて多数の基板を保管する用途にも用いることが出来るし、また、図3に示された様な装置一式を移動架台に組み込んで、基板を所望の場所に運搬することもできる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を具体的に述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
<有機EL素子の実施例>
図4において、ガラス基板401上にITO402が付いた基板を用意し、そのITOを所定のパターンにエッチングした。次いで、エッチングした透明導電層上に、電子輸送層の塗工液としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物を水に分散させた液を、凸版印刷法によりITO基板上にパターン状に塗布した。この基板を200℃にて3min、大気下にて乾燥させ、正孔輸送層403aを得た。乾燥後の厚さは50nmであった。
【0035】
また、発光層の塗工液としてポリアリーレンビニレン系高分子発光体であるポリ(2−(2−エチルヘキシロキシメトキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン)のトルエン溶液を基板上にスピンコートしたのち、130℃のホットプレート上で10min加熱処理し、100nmの発光層403bを得た。尚、この工程は酸素濃度1ppm、露点−70℃のグローブボックス中で行った。
【0036】
さらにこの有機機能層403を備えた基板を、実施例1、および比較例1、2、3に記載した保管工程を経た後、陰極404としてリチウムおよびアルミニウムを真空蒸着によりそれぞれ0.5nm、200nm設けて、有機EL素子を得た。以下、各実施例について作製結果を主に説明する。
【0037】
(実施例1)
図3に示された保管装置にて、不活性液体としてノナフルオロブチルメチルエーテルを、不活性ガスとしてアルゴンを用いて、基板を一週間保管した。尚、チャンバー内のデッドスペースのガス中に含まれる酸素濃度を随時モニターしながら、その濃度が1000ppm以上となる度に、アルゴンをバブリング用不活性ガス注入バルブより注入した。チャンバーから取り出した基板は特に何の処理も施さずに真空蒸着工程を実施した。
【0038】
得られた有機EL素子に8Vの電圧を印可したところ、100cd/mのパターン化された発光を示した。また、初期輝度100cd/mにて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は3000hrであった。
【0039】
(比較例1)
基板を、0.01mPaの高真空チャンバー内に一週間保管した。その後、真空蒸着工程を実施した。
【0040】
得られた有機EL素子に8Vの電圧を印可したところ、100cd/mのパターン化された発光を示した。また、初期輝度100cd/mにて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は3000hrであった。
【0041】
(比較例2)
基板を減圧チャンバーに投入し、真空引きと高純度窒素ベントを繰り返し、酸素濃度が1000ppm未満となるようにした。尚、酸素濃度が上昇する度にこの置換工程を繰り返し、一週間保管した。チャンバーから取り出した基板は特に何の処理も施さずに真空蒸着工程を実施した。
【0042】
得られた有機EL素子に8.5Vの電圧を印可したところ、100cd/mのパターン化された発光を示した。また、初期輝度100cd/mにて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は2000hrであった。但し、置換を繰り返したためにチャンバー内に舞い上がったゴミが基板表面に付着したことが原因と思われるダークスポットがいくつかの発光セル内に発生した。
【0043】
(比較例3)
基板をSUS製の密閉容器に入れ、大気下に一週間放置した。その基板をエアブローした後に蒸着処理を施した。
【0044】
得られた有機EL素子に9Vの電圧を印可したところ、100cd/mのパターン化された発光を示した。また、初期輝度100cd/mにて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は1000hrであった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明における基板保管装置の模式図である。
【図2】本発明における基板保管装置の模式図である。
【図3】本発明における基板保管装置の模式図である。
【図4】本発明における有機EL素子の一例の断面図である。
【符号の説明】
【0046】
101:チャンバー
102:不活性液体
103:不活性液体注入バルブ
104:不活性液体排出バルブ
105:不活性ガス注入バルブ
106:バブリング用不活性ガス注入バルブ
107:不活性ガス排出バルブ
108:内部チャンバー
301:不活性液体保存容器
302:不活性液体
303:超音波発生器
304:ヒーター
305:ダストフィルター
306:液回収ポンプ
307:バブリング用不活性ガス注入バルブ
308:液注入ポンプ
309:ダストフィルター
310:水分除去フィルター
401:ガラス基板
402:ITO
403:有機機能層
403a:正孔輸送層
403b:発光層
404:陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機機能層を備えてなる基板を不活性液体中に保管することを特徴とする、基板の保管方法。
【請求項2】
前記不活性液体が、
(イ)化学的に不活性であり、有機機能層を構成する化合物と化学反応を起こさず、
(ロ)常温にて液体であり、かつ
(ハ)常温において5000Pa以上の蒸気圧を持つ
ことを特徴とする請求項1に記載の基板の保管方法。
【請求項3】
前記不活性液体に有機機能層を浸漬させたとき、浸漬前の前記有機機能層の表面粗さRaに対する浸漬させてから24時間後の前記有機機能層の表面粗さRaの変化率が1%未満であり、24時間後の前記不活性液体へ溶解した前記有機機能層の重量が、浸漬前の前記有機機能層の重量の0.1%未満であることを満たす液体を前記不活性液体として用いることを特徴とする請求項1または2に記載の基板の保管方法。
【請求項4】
前記不活性液体が、一分子中にフッ素原子を5個以上含む化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の基板の保管方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の基板の保管方法を適用しながら、前記基板を運送することを特徴とする基板の運送方法。
【請求項6】
有機機能層を備えてなる基板を収納可能でありかつ密閉可能なチャンバーと、前記チャンバーに収納された不活性液体と、前記チャンバーに前記不活性液体を出し入れするための手段とを具備する基板保管装置。
【請求項7】
前記不活性液体中に含まれる不純物を除去するための手段を具備する、請求項6に記載の基板保管装置。
【請求項8】
前記不純物が固体不純物であり、前記固体不純物を除去するための手段が、前記固体不純物を濾過するフィルターであることを特徴とする請求項7に記載の基板保管装置。
【請求項9】
前記不純物が不活性液体に溶解した活性なガスであり、かつ、その不純物を除去するための手段が、不活性ガスのバブリングによる置換手段または超音波若しくは液加熱による脱ガス手段であることを特徴とする請求項7に記載の基板保管装置。
【請求項10】
前記不純物が液体不純物であり、前記液体不純物を除去するための手段が、前記液体不純物を濾過するフィルター若しくは蒸留装置であることを特徴とする請求項7に記載の基板保管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−117663(P2009−117663A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289946(P2007−289946)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】