基板の歪み測定装置、基板の歪み測定方法、および半導体装置の製造方法
【課題】基板におけるチップ面積の確保を容易に行うことができ、基板の保持方法による影響を受けることなく、また、高価な計測機器を用いることなく、高精度かつ簡便に、基板の歪みを測定することができる基板の歪み測定装置を提供する。
【解決手段】基板20を保持する保持面に、前記基板20に設けられた位置ズレ測定用のマーク40の比較対象となる基準マーク50を有する基板保持部31と、前記基板20を透過する光を照射する光源部32と、前記光源部32により前記光が前記基板20に照射されることで得られる前記位置ズレ測定用のマーク40と前記基準マーク50との重なりを観察する観察部33と、前記観察部33により観察された前記重なりから、前記基準マーク50に対する前記位置ズレ測定用のマーク40のズレ量を算出する算出部36と、前記算出部36により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する測定部37とを備える測定装置。
【解決手段】基板20を保持する保持面に、前記基板20に設けられた位置ズレ測定用のマーク40の比較対象となる基準マーク50を有する基板保持部31と、前記基板20を透過する光を照射する光源部32と、前記光源部32により前記光が前記基板20に照射されることで得られる前記位置ズレ測定用のマーク40と前記基準マーク50との重なりを観察する観察部33と、前記観察部33により観察された前記重なりから、前記基準マーク50に対する前記位置ズレ測定用のマーク40のズレ量を算出する算出部36と、前記算出部36により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する測定部37とを備える測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えば固体撮像装置等を構成する基板の歪み測定装置、基板の歪み測定方法、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、固体撮像装置は、シリコン等により構成される半導体基板を有し、その半導体基板において、複数の画素が例えば行列状に配置される画素領域を有する。この画素領域に配置される各画素は、光電変換機能を有する受光素子としてのフォトダイオードを有する。また、固体撮像装置においては、半導体基板の一方の板面側に、例えば複数の配線が層間に絶縁膜を介して積層された配線層が設けられる。
【0003】
近年、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の固体撮像装置として、いわゆる裏面照射型の固体撮像装置の開発および生産が進められている。裏面照射型の固体撮像装置は、半導体基板に対して配線層が設けられる側と反対側を受光面側とする。このため、裏面照射型の固体撮像装置においては、半導体基板に対して、配線層が設けられる側と反対側に、カラーフィルタおよびマイクロレンズ(オンチップレンズ)が形成される。
【0004】
したがって、裏面照射型の場合、マイクロレンズ側から入射する光は、カラーフィルタを透過した後、配線層を通過することなく、画素のフォトダイオードにより受光される。このため、裏面照射型の構造によれば、マイクロレンズ側から入射する光は、配線層によって遮られることなく、画素のフォトダイオードにより受光されるので、フォトダイオードの実質的な受光面積を広く確保することができ、感度を向上させることができる。
【0005】
このような裏面照射型の固体撮像装置には、その製造過程で、固体撮像素子(イメージ・センサ)が形成された基板(以下「センサ基板」という。)と他の基板とを貼り合わせる工程と、裏面側からの入射光を得るために、センサ基板を、貼り合わされた他の基板側とは反対側から薄くする薄膜化の工程とが行われるものがある。センサ基板と貼り合わされる他の基板は、例えば、センサ基板の平坦性や機械強度を保つための基板であったり、センサ基板に形成される固体撮像素子を制御する論理回路が形成された基板であったりする。
【0006】
センサ基板と他の基板とは、接着剤を用いた手法やプラズマを用いた手法等によって貼り合わされ、これらの基板を貼り合わせる工程においては、基板に対する加熱や加圧が行われる。また、基板を薄くする薄膜化の工程では、研磨やエッチング等によってセンサ基板が薄膜化される。このようにセンサ基板と他の基板との貼り合わせ、およびセンサ基板の薄膜化が行われる製造過程によれば、基板に対する加熱や加圧、あるいはセンサ基板の薄膜化に際して生じる残留応力等により、センサ基板が歪む(変形する)という問題がある。
【0007】
このようなセンサ基板の歪み(変形)の問題を解決するための手法として、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されているものがある。特許文献1には、互いに貼り合わされる基板の結晶方位に基づいて、基板間における内部応力を調整する手法が開示されている。特許文献2には、基板同士を貼り合わせる工程における熱と圧力を制御する手法が開示されている。
【0008】
基板同士の貼り合わせの工程および基板の薄膜化の工程が行われる製造過程によって生じる基板の歪みについては、これらの工程の後に行われるカラーフィルタやマイクロレンズ等を形成する工程に際し、どのような歪みが生じているかが重要となる。この点、特許文献1および特許文献2には、基板にどのような歪みが生じているかを測定することについては言及されていない。基板の歪みの測定が行われない場合、カラーフィルタやマイクロレンズ等を形成する工程での位置合わせの段階となって初めて、基板がどれだけ歪んでいるかが判明することになる。
【0009】
そこで、特許文献3に、互いに貼り合わされた状態の基板の歪みを計測する手法が開示されている。特許文献3には、互いに貼り合わされるセンサ基板と参照基板との両基板に一定の周期を有する周期パターンを形成し、両基板が貼り合わされることによる周期パターンの重なりによって生じるモアレ縞の形状から、基板の歪みを計測する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−234725号公報
【特許文献2】特開2009−200279号公報
【特許文献3】特開2009−294001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3の手法は、周期パターンの重なりによって生じるモアレ縞を利用するものである。このため、特許文献3の手法に用いられる周期パターンは、基板において、モアレ縞を形成することができる程度の領域に形成される必要がある。したがって、特許文献3の手法によれば、周期パターンを形成する領域により、基板におけるチップ面積が圧迫されるという問題がある。
【0012】
また、参照基板に対してセンサ基板をどのように保持するかという基板保持方法や、途中工程等によっても、基板で生じる歪みが変化する。この点、特許文献3の手法では、このような基板保持方法や途中工程が基板の歪みに影響を与えることについては考慮されていない。
【0013】
特許文献3の手法の他にも、例えば、レーザ干渉計等の精密な計測機器、あるいは、基板が搭載される高精度なステージや、このステージに保持された基板を透過する赤外線等を照射する光学系等を備える計測機器を用いることで、基板の歪みを計測することは可能である。しかしながら、このような計測機器は、高価であるうえに、操作に熟練を要すること等から、導入が困難である。
【0014】
本技術の目的は、基板におけるチップ面積の確保を容易に行うことができ、基板の保持方法による影響を受けることなく、また、高価な計測機器を用いることなく、高精度かつ簡便に、基板の歪みを測定することができる基板の歪み測定装置、基板の歪み測定方法、および半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本技術に係る基板の歪み測定装置は、基板を保持する保持面を有し、前記保持面に、前記基板に設けられた位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する基板保持部と、前記基板保持部により保持された前記基板に対して、前記基板を透過する光を照射する光源部と、前記光源部により前記光が前記基板に照射されることで得られる前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりを観察する観察部と、前記観察部により観察された前記重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する算出部と、前記算出部により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する測定部と、を備えるものである。
【0016】
また、本技術に係る基板の歪み測定装置においては、好ましくは、前記基板は、固体撮像素子が形成されたセンサ基板と他の基板とが貼り合わされたものであり、前記位置ズレ測定用のマークは、前記センサ基板の前記他の基板と対向する側の面に設けられ、前記基板保持部は、前記他の基板側が前記保持面に対向するように、前記基板を保持する。
【0017】
また、本技術に係る基板の歪み測定装置においては、好ましくは、前記位置ズレ測定用のマークおよび前記基準マークは、いずれも格子点状に配列され、前記位置ズレ測定用のマークは、前記基準マークを複数含む大きさを有する。
【0018】
本技術に係る基板の歪み測定方法は、位置ズレ測定用のマークを有する基板を、前記位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する保持面に保持する工程と、前記保持する工程により前記保持面に保持された前記基板に、前記基板を透過する光を照射することで観察される前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する工程と、前記算出する工程により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する工程と、を備えるものである。
【0019】
本技術に係る半導体装置の製造方法は、位置ズレ測定用のマークを有する基板を、前記位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する保持面に保持する工程と、前記保持する工程により前記保持面に保持された前記基板に、前記基板を透過する光を照射することで観察される前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する工程と、前記算出する工程により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する工程と、前記測定する工程で測定により測定した前記基板の歪みが、前記測定する工程以降、所定の工程までにどのように変化するかを予測する工程と、前記予測する工程により予測された前記基板の変化を用いて、前記基板の位置合わせの補正を行う工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0020】
本技術によれば、基板におけるチップ面積の確保を容易に行うことができ、また、高価な計測機器を用いることなく、高精度かつ簡便に、基板の歪みを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本技術の一実施形態に係る固体撮像装置の構成を示す断面図。
【図2】本技術の一実施形態に係る基板の歪み測定装置の構成を示す模式図。
【図3】本技術の一実施形態に係る基板保持部の構成を示す図。
【図4】本技術の一実施形態に係る位置ズレ測定用のマークについての説明図。
【図5】本技術の一実施形態に係る基準マークについての説明図。
【図6】本技術の一実施形態に係る位置ズレ測定用のマークおよび基準マークの一例を示す図。
【図7】本技術の一実施形態に係る基板の歪み測定装置の構成の変形例を示す模式図。
【図8】本技術の実施例に係る位置ズレ測定用のマークの配置の一例を示す図。
【図9】本技術の実施例に係る測定結果等の表を示す図。
【図10】本技術の実施例に係る測定結果等を模式的に示す図。
【図11】本技術の実施例に係る測定結果等の表を示す図。
【図12】本技術の実施例に係る測定結果等を模式的に示す図。
【図13】本技術の一実施形態に係る位置ズレ測定用のマークの他の例を示す図。
【図14】本技術の一実施形態に係る基準マークの他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[本技術の概要]
本技術は、基板を保持する基板保持部の保持面に基準マークを設け、この基準マークと、歪みの測定対象となる基板に設けられた位置ズレ測定用のマークとの相対的な位置関係から、基板の歪みを測定するものである。基準マークと位置ズレ測定用のマークとの相対的な位置関係は、基板を透過する光を基板に対して照射することで観察される、基準マークと位置ズレ測定用のマークとの重なりの状態から得られる。このような構成を採用することにより、本技術は、高価な計測機器を用いることなく、高精度かつ簡便に、基板の歪みを測定しようとするものである。以下、本技術の実施の形態を説明する。
【0023】
[基板の構成]
まず、本実施形態において、歪みの測定対象となる基板(以下「被測定基板」という。)について説明する。図1に示すように、本実施形態では、被測定基板20は、半導体装置の一例であるCMOS型の固体撮像装置1を構成する。本実施形態に係る被測定基板20は、固体撮像素子(イメージ・センサ)が形成された第1の基板としてのセンサ基板21と、第2の基板としての支持基板22とを備える。
【0024】
センサ基板21および支持基板22は、互いに略同じ大きさの略円形状の基板であり、互いに貼り合わされた状態で、被測定基板20を構成する。このように、本実施形態に係る被測定基板20は、センサ基板21と他の基板としての支持基板22とが貼り合わされたものである。本実施形態では、センサ基板21および支持基板22は、シリコン基板(シリコンウェハ)である。
【0025】
被測定基板20によって構成される固体撮像装置1の構成について説明する。図1に示すように、固体撮像装置1は、半導体基板2を有する。固体撮像装置1は、半導体基板2の平面視において、画素領域3と、画素領域3の周囲に設けられる周辺回路領域(図示略)とを有する。画素領域3は、半導体基板2に設けられる撮像領域であり、所定の配列で設けられる複数の画素5を有する。
【0026】
本実施形態では、複数の画素5の配列として、複数の画素5が画素領域3において平面的に行列状に配置される一般的な正方格子配列が採用される。したがって、複数の画素5は、例えば矩形状の画素領域3に沿って、縦方向(垂直方向)・横方向(水平方向)に2次元行列状に配置される。
【0027】
画素5は、光電変換機能を有する受光部としてのフォトダイオード6と、複数のMOSトランジスタ7とを有する。フォトダイオード6は、受光面を有し、その受光面に入射した光の強度(光量)に応じた信号電荷を生成する。
【0028】
本実施形態では、フォトダイオード6は、第1導電型としてのn型半導体領域8と、半導体基板2の表面および裏面の両面に臨むように形成される第2導電型としてのp型半導体領域9とを有し、pn接合型のフォトダイオードとして構成される。p型半導体領域9は、暗電流抑制のための正孔電荷蓄積領域を兼ねる。
【0029】
MOSトランジスタ7は、図示せぬソース・ドレイン領域と、ゲート電極10とを有する。MOSトランジスタ7のソース・ドレイン領域は、半導体基板2の一方の板面側である表面2a側に形成されたp型半導体ウェル領域11においてn型の領域として形成される。ゲート電極10は、MOSトランジスタ7のソース・ドレイン領域の両領域間における半導体基板2の表面2a上にゲート絶縁膜を介して形成される。なお、画素5は、複数のMOSトランジスタ7として、例えばフォトダイオード6により生成された信号電荷の増幅、転送、選択、およびリセットをそれぞれ受け持つトランジスタを有する。
【0030】
このようにフォトダイオード6およびMOSトランジスタ7からなる各画素5は、素子分離領域12により隣接する画素5と分離される。素子分離領域12は、p型半導体領域として形成され、接地される。
【0031】
また、固体撮像装置1において、上記のとおり画素領域3の周囲に設けられる周辺回路領域には、固体撮像装置1を動作させるための種々の回路が配置される。周辺回路領域に配置される回路には、垂直方向および水平方向の各方向で画素を選択するための垂直走査回路および水平走査回路、各画素5からの出力信号の処理を行う信号処理回路、信号処理回路から順次供給される信号に対して所定の信号処理を行って出力する出力回路、これらの回路の動作の基準となるクロック信号や制御信号を生成し、各回路を制御する制御回路等が含まれる。
【0032】
裏面照射型の固体撮像装置1においては、半導体基板2の表面2a上に、絶縁膜等を介して配線層13が設けられる。配線層13は、層間絶縁膜14を介して積層される複数の配線15を有する。層間絶縁膜14は、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)により形成されるシリコン酸化膜により構成される。複数の配線15は、例えば異なる金属により形成され、層間に形成されるプラグ等を介して互いに接続される。
【0033】
一方、半導体基板2の他方の板面である裏面2b上には、カラーフィルタ層17が設けられる。なお、半導体基板2とカラーフィルタ層17との間には、例えばシリコン窒化膜(SiN膜)等の無機膜として形成される反射防止膜や、例えばシリコン酸化膜(SiO2膜)等の無機膜として形成される保護用のパシベーション膜(平坦化膜)等が設けられる。
【0034】
カラーフィルタ層17は、各画素5に対応して設けられるカラーフィルタ18に区分される。つまり、カラーフィルタ層17は、各画素5を構成するフォトダイオード6毎に複数のカラーフィルタ18に区分される。本実施形態の固体撮像装置1では、各カラーフィルタ18は、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)のいずれかの色のフィルタ部分であり、各色の成分の光を透過させる。各色のカラーフィルタ18は、いわゆるオンチップカラーフィルタであり、複数の画素5の配列に従って形成される。
【0035】
カラーフィルタ層17上には、複数のマイクロレンズ19が設けられる。マイクロレンズ19は、いわゆるオンチップマイクロレンズであり、画素5を構成するフォトダイオード6に対応して、画素5毎に形成される。したがって、複数のマイクロレンズ19は、画素5と同様に例えば平面的に行列状に配置される。マイクロレンズ19は、外部からの入射光を、対応する画素5のフォトダイオード6に集光する。マイクロレンズ19は、例えば、SiN(窒化シリコン)等の無機材料により構成される。
【0036】
以上のように、本実施形態の固体撮像装置1は、半導体基板2に対して、配線層13が設けられる表面2a側と反対側である裏面2b側に、カラーフィルタ18およびマイクロレンズ19が設けられる裏面照射型の構造を有する。つまり、固体撮像装置1においては、配線層13とカラーフィルタ層17とは、半導体基板2に対して互いに異なる板面側に設けられており、半導体基板2に対して光が入射する裏面2b側と反対側の表面2a側に、配線層13が設けられる。
【0037】
裏面照射型の固体撮像装置1においては、マイクロレンズ19側から入射する光は、カラーフィルタ層17を透過した後、配線層13を通過することなく、画素5のフォトダイオード6により受光される。このため、固体撮像装置1においては、マイクロレンズ19側から入射する光は、配線層13によって遮られることなく、画素5のフォトダイオード6により受光されることから、いわゆる表面照射型の構造に対して、フォトダイオード6の実質的な受光面積の確保が容易であり、比較的高い感度が得られる。また、配線層13が半導体基板2に対して光が入射する側(裏面2b側)と反対側である表面2a側に設けられることから、配線層13を構成する配線15のレイアウトについて高い自由度を得ることができる。
【0038】
以上のような構成を備える本実施形態の固体撮像装置1においては、半導体基板2および配線層13により、センサ基板21が構成される。そして、センサ基板21の表面側、つまり配線層13の半導体基板2側と反対側(図1において下側)に、支持基板22が設けられる。支持基板22には、センサ基板21に形成される固体撮像素子を制御する論理回路等が形成される。センサ基板21と支持基板22とは、上記のとおり互いに貼り合わされることで、被測定基板20を構成する。
【0039】
センサ基板21と支持基板22とは、接着剤を用いた手法やプラズマを用いた手法等によって貼り合わされる。接着剤を用いた手法の場合、例えば、接着剤として熱硬化性樹脂が用いられ、センサ基板21と支持基板22とが接着剤を介して重ねられた状態で加熱ないし加圧されることで、接着剤が硬化し、センサ基板21と支持基板22とが互いに接着される。このように接着剤を用いた手法によってセンサ基板21と支持基板22とが貼り合わされる場合、センサ基板21と支持基板22との間には、接着剤によって形成される接着層が存在する。
【0040】
また、プラズマを用いた手法の場合、例えば、センサ基板21および支持基板22の各基板の接合面が、洗浄された後、プラズマ処理によって活性化される。そして、センサ基板21と支持基板22とが重ねられた状態で加圧等されることで、活性化された接合面同士が接合される。
【0041】
このように、被測定基板20については、センサ基板21と支持基板22とを貼り合わせる工程が行われる。なお、この工程で用いられるセンサ基板21と支持基板22とを貼り合わせる手法としては、特に限定されずに適宜周知の手法が採用される。
【0042】
センサ基板21と支持基板22とを貼り合わせる工程が行われた後は、固体撮像装置1において裏面側からの入射光を得るために、センサ基板21を支持基板22側とは反対側、つまり裏面側から薄くする薄膜化の工程が行われる。この薄膜化の工程では、研磨やエッチング等によって、センサ基板21が例えば3ミクロン程度の薄さまで薄膜化される。センサ基板21は、薄膜化されることで、シリコン活性層を裏面側の面部に臨ませる。
【0043】
[基板の歪み測定装置の構成]
次に、本実施形態の基板の歪み測定装置(以下単に「測定装置」という。)の構成について説明する。図2に示すように、本実施形態の測定装置30は、上述したようにセンサ基板21と支持基板22とが貼り合わされることで得られる被測定基板20における基板の歪みを測定する。
【0044】
測定装置30による被測定基板20についての歪みの測定は、固体撮像装置1の製造過程において、上述したように半導体基板2の裏面側に設けられるカラーフィルタ18およびマイクロレンズ19を形成する工程の前の段階で行われる。具体的には、本実施形態では、測定装置30による被測定基板20の歪みの測定は、被測定基板20を形成するためにセンサ基板21と支持基板22とを貼り合わせる工程の後、被測定基板20の薄膜化の工程の前に行われる。
【0045】
図2に示すように、測定装置30は、被測定基板20を保持する基板保持部であるチャック31と、被測定基板20に赤外線(IR光:Infrared light)を照射する光源部であるIR光源32と、観察部である顕微鏡33と、測定装置30を制御する制御部34とを備える。
【0046】
チャック31は、被測定基板20を保持する保持面35を有する。チャック31は、保持面35に、被測定基板20に設けられた位置ズレ測定用のマーク(以下「位置ズレ測定マーク」という。)40の比較対象となる基準マーク50を有する。
【0047】
チャック31は、保持面35が上側を向くように設けられ、保持面35上に被測定基板20を保持する。チャック31の保持面35は、被測定基板20を載せた状態で、被測定基板20の板面が略水平方向となるように、被測定基板20を保持する。
【0048】
被測定基板20は、支持基板22が下側となるように、つまり支持基板22のセンサ基板21に対する貼り合わせ側の面と反対側の面が保持面35に対向するように保持される。したがって、被測定基板20は、保持面35上で、カラーフィルタ18およびマイクロレンズ19が形成される側が上側となる状態で保持される。
【0049】
本実施形態では、被測定基板20に設けられる位置ズレ測定マーク40は、被測定基板20において、センサ基板21の支持基板22に対する貼り合わせ側の面部に設けられる。この被測定基板20の位置ズレ測定マーク40の比較対象として、チャック31の保持面35に、基準マーク50が設けられる。基準マーク50は、チャック31において、保持面35を構成するチャック31の表層部分に設けられる。なお、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50については後述する。
【0050】
IR光源32は、チャック31により保持された被測定基板20に対して、被測定基板20を透過する光を照射する。つまり、IR光源32は、チャック31に保持された被測定基板20に対して被測定基板20を透過する透過光を照射する光学系を構成する。本実施形態では、IR光源32は、被測定基板20を透過する光として、上記のとおり赤外線を照射する。
【0051】
本実施形態のように、被測定基板20を構成するセンサ基板21および支持基板22がシリコン基板である場合、高い透過率を得る観点からは、IR光源32から照射される赤外線としては、波長が1100nmから1600nm程度の近赤外線が望ましい。ただし、被測定基板20に照射される光としては、赤外線に限定されず、被測定基板20を透過する光であればよい。つまり、被測定基板20に照射される光としては、被測定基板20を構成する材質等に応じて、被測定基板20を透過する光が適宜用いられる。したがって、例えば、被測定基板20が石英基板である場合も、石英基板は赤外線を透過させることから、被測定基板20を透過する光として赤外線を採用することができる。
【0052】
本実施形態では、図2に示すように、IR光源32は、落射照明により、被測定基板20に対して赤外線を照射する。IR光源32は、赤外線の照射方向がチャック31の保持面35に対向するように、チャック31の上方に設けられる。IR光源32による赤外線の照射方向は、被測定基板20の板面に対して垂直な方向である。つまり、IR光源32は、保持面35上において水平に支持される被測定基板20に対して、上方から鉛直方向下向きに赤外線を照射する。
【0053】
顕微鏡33は、IR光源32により赤外線が被測定基板20に照射されることで得られる位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との重なりを観察する。顕微鏡33は、IR光源32から保持面35上の被測定基板20に照射された赤外線の反射光を受光することで、位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との重なりの状態を観察する。
【0054】
本実施形態の測定装置30においては、チャック31に保持された被測定基板20の全体を顕微鏡33によって観察するため、チャック31および顕微鏡33は、少なくともチャック31に保持された被測定基板20の板面に沿う2次元方向(XY方向)に、相対的に移動可能に設けられる。例えば、チャック31が移動可能に設けられる場合は、チャック31を2次元方向に移動させるステージ機構等の移動機構に対して、チャック31が設けられる。
【0055】
IR光源32から照射される赤外線は、被測定基板20を透過する。このため、顕微鏡33の観察範囲内において、チャック31の基準マーク50に重なった状態の位置ズレ測定マーク40が含まれる場合、顕微鏡33により、被測定基板20を透過した赤外線の反射光から、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50が観察される。つまり、IR光源32から照射された赤外線は、被測定基板20を透過するとともに保持面35の基準マーク50により反射され、顕微鏡33により受光されることで、顕微鏡33に位置ズレ測定マーク40および基準マーク50を観察させる。
【0056】
したがって、チャック31の保持面35は、赤外線を吸収する材料により構成されることが望ましい。保持面35を構成する材料としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム、Al2O3)や炭化ケイ素(SiC)等のセラミック材料が用いられる。
【0057】
顕微鏡33による観察画面は、顕微鏡画像として取得される。顕微鏡33は、顕微鏡画像を、2次元の画像データとして出力する機能を有する。顕微鏡33により取得された画像データは、制御部34に入力される。このように、測定装置30においては、顕微鏡33は、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50の観察画面を顕微鏡画像の画像データとして取得する画像取得部として機能する。
【0058】
制御部34は、顕微鏡33により取得された画像データを処理することで、基準マーク50に対する位置ズレ測定マーク40のズレ量(以下「マークズレ量」ともいう。)の算出と、算出したマークズレ量に基づいた被測定基板20の歪みの測定とを行う機能を有する。このため、制御部34は、マークズレ量の算出を行うズレ量算出部36と、被測定基板20の歪みの測定を行う歪み測定部37とを有する。
【0059】
ズレ量算出部36は、顕微鏡33により観察された位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との重なりから、マークズレ量を算出する。具体的には、ズレ量算出部36は、顕微鏡33により取得された画像データについて、2次元の座標を用い、マークズレ量を、2次元の座標値として算出する。
【0060】
歪み測定部37は、ズレ量算出部36により算出されたマークズレ量から、被測定基板20の歪みを測定する。具体的には、歪み測定部37は、被測定基板20におけるマークズレ量の分布等から、被測定基板20が歪むことによる被測定基板20の変形を測定する。すなわち、歪み測定部37は、被測定基板20の各部のマークズレ量の大きさから、マークズレ量がゼロの状態を基準として、被測定基板20の各部における変形の度合いを測定することで、被測定基板20の歪みを測定する。
【0061】
このようにズレ量算出部36および歪み測定部37を有する制御部34は、データ通信用のバス等により互いに接続されるCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)や入出力インターフェイス等の各種機能部分を有する。制御部34は、顕微鏡33に接続され、顕微鏡33により取得された画像データの入力を受けるための入力インターフェイスを有する。
【0062】
以上のような構成を備える本実施形態の測定装置30によれば、次のようにして被測定基板20の歪みの測定が行われる。まず、チャック31の保持面35上に、被測定基板20が保持された状態でセットされる。保持面35上に被測定基板20がセットされることで、チャック31側の基準マーク50と、被測定基板20側の位置ズレ測定マーク40とが平面視で重なった状態となる。
【0063】
チャック31にセットされた被測定基板20に対して、IR光源32により、落射照明にて赤外線が照射される。被測定基板20に赤外線が照射された状態で、顕微鏡33により、位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との重なりが観察され、その重なりの状態を捉えた画像データが得られる。
【0064】
顕微鏡33により取得された画像データは、制御部34のズレ量算出部36および歪み測定部37の各部によって処理される。すなわち、顕微鏡33により取得された画像データから、ズレ量算出部36によってマークズレ量が算出され、算出されたマークズレ量に基づいて、歪み測定部37によって被測定基板20の歪みが測定される。以上のようにして、被測定基板20の歪みの測定が行われる。
【0065】
以上のような本実施形態の測定装置30によれば、被測定基板20におけるチップ面積の確保を容易に行うことができ、また、高価な計測機器を用いることなく、高精度かつ簡便に、基板の歪みを測定することができる。以下、本実施形態の測定装置30について、より詳細に説明する
【0066】
(チャックの構成)
まず、本実施形態の測定装置30が備えるチャック31の構成について説明する。
【0067】
図3に、チャック31の構造を示す。図3(a)は、チャック31の平面図であり、同図(b)は、同図(a)におけるA−A´位置の断面図である。図3に示すように、チャック31は、全体として略円板状に構成される。チャック31は、略円形状の被測定基板20に対応して円板状の外形を有する本体61を備える。円板状の本体61の一方の板面61a側に、保持面35が構成される。なお、本体61の板面61aは、水平面をなす。
【0068】
チャック31は、多数のピン62を有する。ピン62は、被測定基板20を支持する支持突起として機能する部分であり、本体61の一方の板面61aにおいて突出するように設けられる円柱状の突起部である。多数のピン62は、本体61の板面61aにおいて全面的に分布するように設けられる。
【0069】
ピン62の上面である突出側の端面62aは、他のピン62の端面62aとの関係において同一の水平面上に位置する。つまり、チャック31が有する多数のピン62は、同じ高さ(板面61aからの突出寸法)を有し、各ピン62の端面62aは、平面として形成され、共通の水平面(図3(b)、仮想線62b参照)の一部をなす。
【0070】
そして、多数のピン62の端面62aにより、保持面35上に保持される被測定基板20が支持される。このように、本実施形態では、チャック31が有する本体61の一方の板面61a上に設けられる多数のピン62により、保持面35が構成される。ピン62は、例えば円柱状の外形における直径が2mm程度の大きさに設けられる。また、多数のピン62は、隣り合うピン62との間の間隔(ピッチ)が例えば5mm程度となるように設けられる。
【0071】
チャック31は、周壁部63を有する。周壁部63は、本体61の一方の板面61aにおいて、円形状の本体61の全周に沿って円環状に設けられる。周壁部63は、ピン62と同じ高さを有し、周壁部63の上面である端面63aは、平面として形成され、ピン62の端面62aとともに共通の水平面(仮想線62b参照)の一部をなす。
【0072】
チャック31が有する本体61、ピン62、および周壁部63を構成する材料としては、例えば、赤外線を反射させる材料であるアルミナ(酸化アルミニウム、Al2O3)や炭化ケイ素(SiC)等のセラミック材料が用いられる。
【0073】
チャック31は、吸引力を用いて被測定基板20を保持する。このため、チャック31は、吸引孔64を有する。吸引孔64は、本体61の中心位置において、板面61aに対して垂直方向に本体61を貫通するように設けられる。本実施形態では、チャック31は、吸引孔64を、本体61の中心位置の1箇所に有する。
【0074】
被測定基板20が保持面35上に載置された状態、つまり被測定基板20がピン62の端面62aおよび周壁部63の端面63a上に支持された状態で、吸引孔64から、図示せぬ吸引部によって真空排気が行われることで、被測定基板20が保持面35に吸着されて固定される。ここで、被測定基板20を保持面35に吸着させる吸引力は、吸引孔64からの真空排気によって、本体61の板面61aと被測定基板20の底面(ピン62に支持される面)との間において周壁部63に囲まれた空間が負圧となることにより得られる。
【0075】
チャック31は、保持面35上において被測定基板20を持ち上げるためのリフトピン65を有する。リフトピン65は、上下動作するように設けられ、板面61aに対して垂直方向に本体61を貫通するように設けられる貫通孔66によって、本体61を貫通する。
【0076】
リフトピン65は、上昇動作によって貫通孔66から板面61a上に突出することで、保持面35上の被測定基板20に当接し、被測定基板20を持ち上げる。本実施形態では、図3(a)に示すように、リフトピン65は、本体61の半径方向の中間位置において本体61の周方向に略等角度間隔で3箇所に設けられている。被測定基板20は、チャック31により保持された状態で受ける加工や処理等を終えると、リフトピン65によって持ち上げられ、次の工程が行われる場所へと搬送される。
【0077】
以上のような構成を備えるチャック31により、被測定基板20が保持される。なお、チャック31の構成は、上述したような本実施形態の構成に限定されない。例えば、本実施形態では被測定基板20の形状に対応して円板状である本体61の形状は、被測定基板20の形状等に応じて適宜設定される。また、ピン62の形状や大きさや数、あるいは吸引孔64やリフトピン65の形状や大きさや数等についても特に限定されない。本実施形態のチャック31のように複数のピン62による保持構造は、カラーフィルタ18を形成する際等のリソグラフィの工程で用いられる露光機において基板を保持するチャック構造として多用される。
【0078】
また、本実施形態のチャック31は、保持面35に多数のピン62を有し、被測定基板20に対して部分的に接触した状態で被測定基板20を保持する構成であるが、被測定基板20を保持するチャックとしては、被測定基板20に対して全面的に接触した状態で被測定基板20を保持する構成のものであってもよい。かかる構成の場合、例えば、図3に示す構成において、本体61上のピン62および周壁部63が省略され、本体61の板面61aが被測定基板20の支持面となり、吸引孔64からの真空排気によって被測定基板20が板面61aに全面的に接触した状態で吸着されて保持される。
【0079】
チャック31の構造に関し、基準マーク50を配置する面積を確保する観点からは、被測定基板20に対して全面的に接触した状態で被測定基板20を保持するタイプの構造が望ましい。すなわち、基準マーク50は、被測定基板20に接触する支持面に設けられることから、被測定基板20の支持面が被測定基板20に全面的に接触する構造の方が、多数のピン62によって被測定基板20に部分的に接触する構造よりも、基準マーク50の配置面積を広く確保することができる。
【0080】
一方で、チャック31と被測定基板20との間の異物の噛み込みを減らす観点や、被測定基板20のチャック構造を、カラーフィルタ18を形成する工程等で用いられる露光機のチャック構造になるべく似せておくという観点等からは、図3に示すように多数のピン62によって被測定基板20に対して部分的に接触した状態で被測定基板20を保持するタイプの構造が望ましい。測定装置30のチャック構造を、測定装置30による被測定基板20の歪みの測定が行われる工程以降の露光工程で用いられる露光機のチャック構造に似せておくことにより、被測定基板20を保持するチャック構造が変わることによる、被測定基板20の歪みの変化を低減することができる。
【0081】
(位置ズレ測定マークおよび基準マークについて)
本実施形態の測定装置30による被測定基板20の歪みの測定に用いられる位置ズレ測定マーク40および基準マーク50について、図4、図5、および図6を用いて説明する。
【0082】
まず、位置ズレ測定マーク40について説明する。位置ズレ測定マーク40は、上述したように被測定基板20においてセンサ基板21の支持基板22に対する貼り合わせ側の面部に設けられる(図2参照)。図4に示すように、位置ズレ測定マーク40は、被測定基板20の平面視において、格子点状に配列される。
【0083】
図4に示すように、被測定基板20においては、被測定基板20が切断され分離されることで各固体撮像装置1を構成する複数のチップ23と、被測定基板20を複数のチップに分離するためのダイシングラインが存在するダイシング領域(スクライブ領域)24とが存在する。ダイシングの工程において、ダイシング領域に存在するダイシングラインに沿って被測定基板20が切断されることで、被測定基板20が複数の半導体チップに分離され、固体撮像装置1が得られる。
【0084】
複数のチップ23は、被測定基板20において、縦方向・横方向に沿って各方向について等間隔に規則的に配列される。複数のチップ23の配列について、横方向(図4における左右方向)を第1の方向とした場合、縦方向(図4における上下方向)は、第1の方向に直交する第2の方向ということができる。図4に示すように、複数のチップ23は、被測定基板20において平面的に略全範囲にわたって設けられる。
【0085】
ダイシング領域24は、上述のような複数のチップ23の配列に対応して、格子状に形成される。すなわち、ダイシング領域24は、縦方向に互いに隣り合うチップ23同士の間隔の幅を有する横方向のライン部分と、横方向に互いに隣り合うチップ23同士の間隔の幅を有する縦方向のライン部分とにより、格子状に形成される。
【0086】
このように縦方向・横方向に沿って規則的に配置されるチップ23群と、格子状に形成されるダイシング領域24とを有する被測定基板20において、位置ズレ測定マーク40は、ダイシング領域24における格子点の部分に設けられる。なお、位置ズレ測定マーク40は、図4に示すようにダイシング領域24における格子点の部分に設けられるのが好適であるが、必ずしもこの格子点の部分に設けられる必要はない。位置ズレ測定マーク40は、ダイシング領域24に複数箇所、望ましくは4点以上設けられていればよい。
【0087】
また、位置ズレ測定マーク40の配置に関しては、被測定基板20において全面的に設けられることが望ましい。つまり、位置ズレ測定マーク40は、被測定基板20において平面的に略全範囲にわたって設けられるチップ23との関係において均一的に配置されることが望ましい。
【0088】
位置ズレ測定マーク40を被測定基板20において全面的に配置することで、被測定基板20の歪みを全体的に測定することができる。また、位置ズレ測定マーク40を被測定基板20において全面的に配置することで、チャック31側の基準マーク50との関係において被測定基板20の配置を変える必要がなくなり、作業性の向上を図ることができる。
【0089】
図4および図6に示すように、位置ズレ測定マーク40は、一方の対向する辺と他方の対向する辺とがそれぞれチップ23の配列を規定する縦方向または横方向に沿うような正方形状の外形を有する。詳細には、図6に示すように、本実施形態の位置ズレ測定マーク40は、内側が中抜きされた枠状の形状を有する。
【0090】
位置ズレ測定マーク40は、例えば、シリコン基板であるセンサ基板21に金属パターンが形成されることにより設けられる。図6に示すように枠状の形状を有する位置ズレ測定マーク40は、所定の幅を有する金属パターンが枠形状に沿って設けられることで形成される。センサ基板21に金属パターンを形成するための手法としては、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)やエッチング等の公知の手法が用いられる。
【0091】
位置ズレ測定マーク40は、上述したように被測定基板20を透過した赤外線の反射光から、顕微鏡33によって観察される。このため、位置ズレ測定マーク40は、赤外線の反射光から顕微鏡33によって観察されるように、他の部分(シリコン部分)とは異なる反射率を有する部分として設けられる。
【0092】
例えば、上述したように位置ズレ測定マーク40がシリコン基板に形成される金属パターン部分である場合、位置ズレ測定マーク40の金属部分は他の部分(シリコン部分)より大きな反射率を有する部分となる。つまり、この場合、位置ズレ測定マーク40の部分からは赤外線の反射光が戻ってくるので顕微鏡33によって位置ズレ測定マーク40が観察される。
【0093】
位置ズレ測定マーク40としては、被測定基板20における他の部分(シリコン部分)に対する反射率の差により、赤外線の反射光から顕微鏡33によって観察されるものであればよい。したがって、位置ズレ測定マーク40は、シリコン基板にシリコンとは反射率が異なる材料が埋め込まれることで構成されている。ここで、位置ズレ測定マーク40を構成する、シリコンとは反射率が異なる材料としては、例えばアルミニウム、銅、タングステン等の金属が挙げられる。ただし、位置ズレ測定マーク40を形成する材料は、金属材料に限定されず、例えば酸化膜等であってもよい。
【0094】
本実施形態のように位置ズレ測定マーク40がセンサ基板21の一方の板面部に設けられる場合、センサ基板21が支持基板22と貼り合わされる前に単体で製造プロセスを経ている間に、所定のタイミングで、センサ基板21に位置ズレ測定マーク40が形成される。そして、位置ズレ測定マーク40が形成されたセンサ基板21が、位置ズレ測定マーク40が形成された面側から、支持基板22と貼り合わされ、被測定基板20が構成される。
【0095】
位置ズレ測定マーク40は、例えば、金属パターン部分の線幅が0.1μm〜数マイクロメートルとなるように形成される。この点、位置ズレ測定マーク40は、IR光源32から照射される赤外線が用いられて検出されることから、位置ズレ測定マーク40の線幅については、1μm以上であることが望ましい。また、同じく赤外線による検出の観点から、位置ズレ測定マーク40の外形の大きさについては、5〜100μmの範囲であることが望ましい。
【0096】
図4において、センサ基板21に重ねて記載された矩形群を構成する各矩形1Sは、カラーフィルタ18を形成する際等に行われるフォトリソグラフィの工程での露光機による1回のショットの露光フィールドを示す。図4において、矢印B1で示す拡大部分は、1ショットの露光フィールドの部分拡大図である。
【0097】
図4に示すように、本実施形態では、センサ基板21の周縁部分の露光フィールドを除き、1ショットの露光フィールドに、4×4の16個のチップ23が存在する。また、本実施形態では、センサ基板21において、矩形1Sにより示される露光フィールドは108個存在し、センサ基板21の露光は108ショットで完了する。
【0098】
次に、基準マーク50について説明する。基準マーク50は、上述したようにチャック31の保持面35を構成するチャック31の表層部分に設けられる(図2参照)。
【0099】
本実施形態では、チャック31において被測定基板20を保持する保持面35は、多数のピン62により構成され、ピン62の端面62aにより、被測定基板20の支持面が構成される(図3参照)。そこで、図5に示すように、基準マーク50は、チャック31において各ピン62の端面62aに臨むように設けられる。
【0100】
基準マーク50は、ピン62の端面62aにおいて、格子点状に配置されて設けられる(図6参照)。つまり、複数の基準マーク50は、ピン62の端面62aにおいて、縦方向・横方向に沿って各方向について等間隔に規則的に配列される。基準マーク50の配列について、横方向(図6における左右方向)を第1の方向とした場合、縦方向(図6における上下方向)は、第1の方向に直交する第2の方向ということができる。本実施形態の説明では、基準マーク50の配列を規定する横方向(第1の方向)をX方向とし、同配列を規定する縦方向(第2の方向)をY方向とする(図6参照)。
【0101】
図6に示すように、基準マーク50は、一方の対向する辺と他方の対向する辺とがそれぞれ基準マーク50の配列を規定するX方向またはY方向に沿うような正方形状を有する。本実施形態では、複数の基準マーク50は、同じ形状、同じ寸法を有し、X方向およびY方向について等間隔に配置される。
【0102】
図6に示すように、基準マーク50は、例えば、1辺の長さd1が0.1μm〜数マイクロメートルとなるように形成され、隣り合う基準マーク50との間の間隔(ピッチ)d2が0.1μm〜数マイクロメートルとなるように設けられる。例えば、上述したように直径2mmのピン62が、5mm程度のピッチで配置される場合、基準マーク50は、1辺の長さd1が10μm、ピッチd2が20μmに設定される。
【0103】
基準マーク50は、位置ズレ測定マーク40と同様にIR光源32から照射される赤外線が用いられて検出されることから、基準マーク50のサイズについては、1辺の長さd1が1μm以上であることが望ましく、より望ましくは1辺の長さd1が5〜100μmの範囲で設定される。また、同じく赤外線による検出の観点から、基準マーク50のピッチd2については、5〜100μmの範囲であることが望ましい。
【0104】
また、基準マーク50の配置に関しては、チャック31の保持面35において全面的に設けられることが望ましい。つまり、基準マーク50は、チャック31が有する全てのピン62の各端面62aにおいて全面的に設けられることが望ましい。
【0105】
基準マーク50を保持面35において全面的に配置することで、被測定基板20のサイズに合わせてチャック31の基準マーク50の配置を変える必要がなくなり、チャック31の汎用性を高めることができる。このような観点からは、基準マーク50は、チャック31が有する周壁部63の端面63aにおいても、ピン62の端面62aと同様に設けられてもよい。
【0106】
図5に示すように、基準マーク50は、ピン62の表面近傍、つまり端面62aの近傍に、ピン62を構成する材料とは異なる材料(符号51参照)が埋め込まれることにより構成される。基準マーク50を構成する材料(以下「マーク材料」という。)51は、ピン62に設けられる穴部52に埋め込まれる。
【0107】
穴部52は、ピン62において、端面62aに開口するように設けられる。穴部52の開口形状が、基準マーク50の形状となる。したがって、穴部52は、基準マーク50の配置に対応して設けられるとともに、端面62aに対する開口形状が基準マーク50の形状に対応して正方形状となるように形成される。穴部52に埋め込まれたマーク材料51は、端面62aと同一平面を形成するように、端面62aとともに平坦化される。このようにして、基準マーク50は、ピン62の端面62aに臨むように設けられる。
【0108】
マーク材料51としては、例えば、銅やタングステン等の金属材料が好適に用いられる。銅やタングステン等の金属材料は、赤外線について比較的高い反射率を有する。これに対し、チャック31の保持面35を構成する材料として例示したアルミナや炭化ケイ素等のセラミック材料は、赤外線を吸収する。また、位置ズレ測定マーク40が設けられる被測定基板20を構成する材料であるシリコンや石英は、赤外線を透過させる。
【0109】
このように、赤外線を吸収あるいは透過させる材料により構成されるチャック31の保持面35や被測定基板20に対して、基準マーク50のマーク材料51として赤外線を比較的高い反射率によって反射させる金属材料が用いられる。これにより、赤外線による基準マーク50の観察において、基準マーク50とそれ以外の部分(保持面35や被測定基板20)との間で高いコントラストを得ることができ、基準マーク50の認識を容易に行うことができる。
【0110】
また、基準マーク50は、位置ズレ測定マーク40に対して、赤外線に対する反射率が異なるように設けられることが好ましい。基準マーク50と位置ズレ測定マーク40との赤外線に対する反射率が互いに異なることで、基準マーク50と位置ズレ測定マーク40とが重なった状態において、両マークの境界が明確となり、各マークの識別が容易となる。
【0111】
基準マーク50は、例えばフォトリソグラフィの技術が用いられて作成される。フォトリソグラフィの技術が用いられる場合、例えば次のような工程が行われることで、基準マーク50が作成される。ピン62の端面62aにフォトレジストを塗布する工程、塗布されたフォトレジストをプリベークする工程、フォトマスクを用いて露光を行うことでレジストパターンを形成する工程、溶媒を用いた現象を行う工程、フォトレジストをポストベークする工程、端面62a上のフォトレジスト等をエッチング等によって除去する工程である。
【0112】
これらの工程が行われることで、ピン62において、穴部52が形成される。そして、この穴部52に、銅やタングステン等の金属材料であるマーク材料51が埋め込まれることで、基準マーク50が形成される。
【0113】
このような手法によって、ピン62の端面62aにおいて正方形状として表れる基準マーク50が格子点状に配置されるように作成される。基準マーク50は、マークズレ量の算出に際して位置ズレ測定マーク40に対する基準となるため、基準マーク50の配置が理想格子となるように設けられる。
【0114】
基準マーク50の配置が理想格子とみなせるような高精度な配置を実現するためには、基準マーク50を形成するための工程で、公知の二光波干渉露光や多重露光などといった手法を採用することが望ましい。なお、二光波干渉露光としては、例えば、特開平11−26344号公報に記載されている手法を用いることができる。これらの高い位置精度を持つ露光方法を用いて、ピン62上に基準マーク50を作成するためのレジストパターンを形成し、穴部52を形成してから、その後、マーク材料51を埋め込む工程等を行うことで、基準マーク50の配置を高い精度で理想格子に近付けることができる。
【0115】
また、図5に示すように、基準マーク50が形成されるチャック31のピン62においては、基準マーク50が臨む端面62a上に、金属等によるコンタミネーションを防ぐ機能を有する被覆膜53が設けられる。被覆膜53は、赤外線による基準マーク50検出の妨げとならないように、赤外線を透過させる。
【0116】
したがって、被覆膜53を構成する材料としては、赤外線を透過し、かつ、金属によるコンタミネーションを防ぐことが可能な材料が用いられる。被覆膜53を構成する材料としては、例えば、PMMA(Poly Methyl Methacrylate:ポリメタクリル酸メチル樹脂)やフッ素含有ポリイミドやポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK(登録商標))等のような赤外線に対して透明な樹脂材料、あるいは、シリコンや石英といった無機材料等が挙げられる。被覆膜53は、半導体の製造過程で用いられる公知の成膜方法によってピン62上に形成される。
【0117】
このように、基準マーク50が形成されるピン62上に被覆膜53が設けられることにより、金属等によるコンタミネーションを防止することができる。具体的には次のとおりである。ピン62上に被覆膜53が無い場合、ピン62に支持された被測定基板20は、基準マーク50を構成するマーク材料51が臨む端面62aに直接的に接触することになる。この場合、マーク材料51が、ピン62に支持された被測定基板20に接触する。したがって、マーク材料51が金属材料である場合、マーク材料51としての金属材料が被測定基板20に接触することになる。
【0118】
このように金属材料が被測定基板20に接触すると、マーク材料51において生じた金属イオンが被測定基板20の内部に侵入することが考えられる。被測定基板20内に侵入した金属イオンは、例えば被測定基板20において形成されるMOSトランジスタ7等に欠陥を生じさせる原因となる可能性がある。
【0119】
そこで、ピン62上に被覆膜53を設けることにより、ピン62上に支持される被測定基板20は、端面62aに臨むマーク材料51に接触することなく、被覆膜53に接触した状態で支持される。このため、コンタミネーションとしての被測定基板20への金属イオンの侵入を防止することができる。
【0120】
なお、上述したように被測定基板20を保持するチャックが被測定基板20に対して全面的に接触した状態で被測定基板20を保持する構造である場合においても、保持面35が多数のピン62を有する構造の場合と同様にして、基準マーク50が形成される。すなわち、多数のピン62を有する構造の場合においては、基準マーク50が形成される面が多数の端面62aであるのに対し、チャックが被測定基板20に対して全面的に接触する構造の場合、基準マーク50が形成される面が例えば本体61の板面61aのような単一の面となる。
【0121】
また、チャックが被測定基板20に対して全面的に接触する構造においても、上述した被覆膜53と同様に、金属によるコンタミネーションを防ぐための被覆膜を設けることができる。この場合、被測定基板20が接触することになる単一の支持面(例えば本体61の板面61a)において、少なくとも基準マーク50が配置される部分を覆うように、PMMA等を材料とする被覆膜が形成される。
【0122】
以上のようにして、被測定基板20側には、位置ズレ測定マーク40が設けられ、チャック31側には、基準マーク50が設けられる。図6には、位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との相対的な大きさの関係の一例が表されている。
【0123】
本実施形態では、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50は、いずれも格子点状に配列される(図4、図6参照)。すなわち、矩形枠状のマークである各位置ズレ測定マーク40は、多数の位置ズレ測定マーク40からなる要素群を構成する各要素であり、正方形状のマークである各基準マーク50は、多数の基準マーク50からなる要素群を構成する各要素である。
【0124】
そして、図6に示すように、位置ズレ測定マーク40は、基準マーク50を複数含む大きさを有する。つまり、図6に示すような平面視において、位置ズレ測定マーク40と基準マーク50とが重なった状態で、位置ズレ測定マーク40の外形の内部に、複数の基準マーク50が存在する。
【0125】
図6は、顕微鏡33によって観察される視野における位置ズレ測定マーク40および基準マーク50の配置の一例を示している。図6に示す例では、顕微鏡33の視野内に、5×5の25個の基準マーク50が存在し、これらの基準マーク50に対して、1個の位置ズレ測定マーク40が存在している。
【0126】
このような本実施形態の位置ズレ測定マーク40および基準マーク50によれば、測定装置30による被測定基板20の歪みの測定を好適に実施することができる。具体的には次のとおりである。基準マーク50は、上述したように位置ズレ測定マーク40に対する基準となるため、基準マーク50の配置が理想格子に近付くように設けられ、その配置に高い精度が要求される。このため、基準マーク50については、大きさが位置ズレ測定マーク40よりも小さく、単位面積あたりに存在する数が位置ズレ測定マーク40よりも多い方が、マークの配置の精度を確保する面で有利である。基準マーク50の配置の精度が高くなることにより、被測定基板20の歪みをより高精度に測定することができる可能となる。
【0127】
ただし、位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との相対的な大きさは、特に限定されず、基準マーク50の方が大きかったり、両マークが互いに同程度の大きさであったりしてもよい。また、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50の配置密度についても、特に限定されず、位置ズレ測定マーク40の配置密度の方が大きかったり、両マークが互いに同程度の配置密度であったりしてもよい。
【0128】
また、配置について高い精度が要求される基準マーク50については、理想格子に近い配置状態が維持されることが望ましい。このため、基準マーク50が設けられるチャック31を構成する材料に関しては、基準マーク50の位置を変化させる熱膨張を考慮した材料の選択が行われることが望ましい。
【0129】
チャック31を構成する材料としては、上述したようなアルミナや炭化ケイ素等のセラミック材料が一般的である。ただし、チャック31の熱膨張による基準マーク50の位置ズレを考慮した場合、基準マーク50の配置状態を維持する観点からは、チャック31の材料としては、測定装置30の設置温度域でなるべく熱膨張係数が小さい材料を採用することが望ましい。つまり、温度変化によってチャック31に熱膨張が生じると、基準マーク50の位置がずれてしまうことから、チャック31を熱膨張が小さい材料で構成することにより、チャック31の熱膨張による基準マーク50の位置ズレを抑制することができる。
【0130】
測定装置30の設置温度域での熱膨張係数が小さい材料としては、例えば、SCHOTT社のZERODUR(登録商標)として知られている低膨張ガラスセラミック等が適している。ここに例示した材料によれば、半導体の製造環境としての温度制御下における温度変化であれば、チャック31の熱膨張を極めてゼロに近くすることが可能となる。
【0131】
また、チャック31の熱膨張による基準マーク50の位置ズレを抑制するためには、測定装置30に高精度な温調機構を設けてもよい。この場合、測定装置30に設けた温調機構によって、測定装置30の温度が所定の温度に維持され、チャック31の熱膨張が抑制され、基準マーク50の位置ズレが抑制される。
【0132】
以上説明した本実施形態においては、センサ基板21と支持基板22とが貼り合わされた被測定基板20において、位置ズレ測定マーク40は、センサ基板21の支持基板22と対向する側の面に設けられる。具体的には、センサ基板21において、位置ズレ測定マーク40は、半導体基板2の表面側に設けられる配線層13の表面に設けられる(図1参照)。そして、被測定基板20の歪みの測定に際しては、被測定基板20を保持するチャック31は、支持基板22側が保持面35に対向するように、被測定基板20を保持する。
【0133】
このような被測定基板20における位置ズレ測定マーク40の配置、およびチャック31による被測定基板20の支持によれば、次のような効果が得られる。被測定基板20においては、センサ基板21に固体撮像素子(イメージ・センサ)が形成されることから、センサ基板21の部分の歪みが重要である。このため、位置ズレ測定マーク40をセンサ基板21に設けることで、被測定基板20においてセンサ基板21の部分の歪みを重点的に測定することができる。これにより、被測定基板20の歪みとして、固体撮像装置1の構造に与える影響が比較的高い部分の歪みの測定を行うことができる。
【0134】
また、センサ基板21に位置ズレ測定マーク40を設ける構成によれば、センサ基板21単体での製造プロセスにおいて位置ズレ測定マーク40を形成することができ、位置ズレ測定マーク40を比較的容易に形成することができる。
【0135】
ただし、被測定基板20において位置ズレ測定マーク40が設けられる部分は、本実施形態に限定されるものではない。位置ズレ測定マーク40は、例えば、センサ基板21の表層部分ではなく内層部分に設けられたり、支持基板22側に設けられたりしてもよい。支持基板22側に位置ズレ測定マーク40を設けた場合は、被測定基板20において支持基板22の部分の歪みを重点的に測定することができる。
【0136】
(変形例)
本実施形態に係る測定装置30の変形例について説明する。図7に示すように、この変形例の測定装置30Aは、チャック31A上に保持された被測定基板20に対して、赤外線をチャック31Aの下側から照射するIR光源32Aを備える。つまり、この変形例の測定装置30Aにおいては、図2に示すような落射照明の代わりに、被測定基板20を透過する赤外線を照射するIR光源32Aが、チャック31Aを透過させて被測定基板20に赤外線を照射する。
【0137】
このようにチャック31Aに対して被測定基板20を支持する側とは反対側(図7において下側)から赤外線を照射する構成においては、チャック31Aは、赤外線に対して透明な材料、つまり赤外線を透過させる材料により構成される。言い換えると、チャック31Aが赤外線に対して透明な材料により構成される場合、本変形例のように、赤外線をチャック31Aの下側から照射し、チャック31Aに赤外線を透過させる構成が採用される。具体的には、本変形例は、チャック31Aが石英やシリコン等の、赤外線を透過させる材料により構成される場合に採用される。
【0138】
この変形例の測定装置30Aにおいては、顕微鏡33は、IR光源32Aから照射されてチャック31Aおよび被測定基板20を透過した赤外線の透過光を受光することで、位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との重なりの状態を観察する。IR光源32Aから照射される赤外線は、チャック31Aおよび被測定基板20を透過する。
【0139】
このため、顕微鏡33の観察範囲内において、チャック31Aの基準マーク50に重なった状態の位置ズレ測定マーク40が含まれる場合、顕微鏡33により、チャック31Aおよび被測定基板20を透過した赤外線の透過光から、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50が観察される。つまり、IR光源32Aから照射された赤外線は、チャック31Aおよび被測定基板20を透過し、顕微鏡33により受光されることで、顕微鏡33に位置ズレ測定マーク40および基準マーク50を観察させる。以上のように、変形例の測定装置30Aは、チャック31Aを透過した透過光を観察する光学系を備える。
【0140】
[基板の歪み測定方法]
本実施形態に係る基板の歪み測定方法について、具体的な実施例(数値例)を挙げて説明する。本実施形態では、上述したような測定装置30(30A)が用いられて、被測定基板20の歪みの測定が行われる。なお、本実施例では、多数の基準マーク50は、所定の位置に設定される原点を中心としてピッチ20μmで配置されている(図6、ピッチd2参照)。
【0141】
図8に示すように、本実施例では、便宜上、被測定基板20に設けられる位置ズレ測定マーク40は、被測定基板20上において92箇所に設けられている。具体的には、被測定基板20上において、各ショットを符号S2で示す23ショットが配置され、各ショットの四隅に対応する位置に、位置ズレ測定マーク40が配置されている。
【0142】
したがって、被測定基板20上には、4(点)×23(ショット)=92(点)の位置ズレ測定マーク40が配置される。23個のショットは、被測定基板20において、位置ズレ測定マーク40の格子点状の配列における横方向(図8における左右方向)に7個のショットが並ぶ列Sa1を中心に、格子点状の配列における縦方向(図8における上下方向)の両側に、5個のショットが並ぶ列Sa2と、3個のショットが並ぶ列Sa3とが順に配置されたものである。
【0143】
このように、本実施例では、92個の位置ズレ測定マーク40を有する被測定基板20を準備する工程が行われる。具体的には、被測定基板20の準備に際しては、次のような工程が行われる。センサ基板21の製造プロセスにおいて、センサ基板21に92箇所の位置ズレ測定マーク40を形成する工程が行われる。次に、接着剤を用いた手法やプラズマを用いた手法等によって、位置ズレ測定マーク40が形成されたセンサ基板21と、支持基板22とを貼り合わせる工程が行われる。この被測定基板20の歪みの測定前において行われる基板同士の貼り合わせの工程では、後述するように、基板同士の接合は仮接合であることが望ましい。
【0144】
被測定基板20が準備された後、位置ズレ測定マーク40を有する被測定基板20を、位置ズレ測定マーク40の比較対象となる基準マーク50を有する保持面35に保持する工程が行われる。つまり、この工程では、保持面35を有するチャック31に対する被測定基板20の保持が行われる。具体的には、被測定基板20は、保持面35を構成するピン62および周壁部63上に載置された状態で、吸引孔64からの真空排気によって得られる吸引力により、保持面35に吸着されることで保持される(図3参照)。
【0145】
この被測定基板20をチャック31に保持する工程においては、格子点状に配置される位置ズレ測定マーク40の配列方向が、基準マーク50の配列を規定するX方向およびY方向に沿うように、被測定基板20のチャック31に対する位置合わせが行われる。つまり、被測定基板20は、位置ズレ測定マーク40の配列における横方向(図8における左右方向)および縦方向(図8における上下方向)が、それぞれ基準マーク50の配列におけるX方向およびY方向に対して略一致するように、チャック31の保持面35上に保持される。
【0146】
このようにして、位置ズレ測定マーク40を有する被測定基板20が、基準マーク50を有するチャック31に保持される。
【0147】
被測定基板20がチャック31に保持された状態で、マークズレ量(基準マーク50に対する位置ズレ測定マーク40のズレ量)の算出が行われる。すなわち、被測定基板20を保持する工程により保持面35に保持された被測定基板20に、赤外線を照射することで観察される位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との重なりから、マークズレ量を算出する工程が行われる。
【0148】
本実施形態では、理想格子となるように設けられる基準マーク50の配列を規定するX方向とY方向による2次元座標が用いられ、マークズレ量が算出される。つまり、マークズレ量として、基準マーク50の位置に対する位置ズレ測定マーク40の位置のズレ量が、X方向およびY方向の座標値として算出される。
【0149】
具体的には、図6に示すように、マークズレ量の算出に際し、位置ズレ測定マーク40の比較対象となる基準マーク50としては、位置ズレ測定マーク40に最も近い基準マーク50(「最近接基準マーク50A」とする。)が採用される。ここで、基準マーク50の位置としては、正方形状の基準マーク50の中心位置C1が採用され、位置ズレ測定マーク40の位置としては、正方形状の外形を有する位置ズレ測定マーク40の中心位置C2が採用される。これらの各マークの中心位置C1、C2の座標は、例えば、各マークの四隅のエッジの座標値から求められる。
【0150】
したがって、図6に示す例では、位置ズレ測定マーク40の中心位置C2の座標が、最近接基準マーク50Aの中心位置C1の座標に対してどれくらいずれているかを示す座標値が、マークズレ量として算出される。なお、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50の各マークの位置としては、マークの中心位置以外の位置が採用されてもよい。つまり、各マークの位置としては、位置ズレ測定マーク40の基準マーク50に対する2次元的なズレを把握することができる位置であれば特に限定されない。
【0151】
図9に示す表の「マーク座標(μm)」の列に、本実施例におけるマークNo「1」〜「92」までの92個の位置ズレ測定マーク40の位置を示すX方向およびY方向の座標値が記載されている。このマーク座標の値は、被測定基板20において中心位置に規定される所定の位置Cpを原点とする各位置ズレ測定マーク40のX座標、Y座標であり、被測定基板20の歪み等の影響が加味されてない基準となる値である。本実施例の場合、図9に示す表より、例えば、マークNo「1」のマーク座標(μm)は、(X、Y)=(−27500、−70050)である。
【0152】
図9に示す表の「格子ズレ量(μm)」の値は、位置ズレ測定マーク40のマーク座標の、最近接基準マーク50Aの位置に対するズレ量である。つまり、格子ズレ量は、位置ズレ測定マーク40のマーク座標について、上記のとおり基準マーク50の配置に対応する20μmピッチの格子点のうち最も近い格子点の位置(座標)に対するズレ量である。
【0153】
したがって、位置ズレ測定マーク40のマーク座標のX座標値およびY座標値のいずれもが20の倍数の場合、そのマーク座標の位置ズレ測定マーク40は、基準マーク50の配置に対応する20μmピッチの格子点上に位置することになる。
【0154】
基準マーク50の配置に対応する20μmピッチの格子点のうち、マークNo「1」の位置ズレ測定マーク40に最も近い格子点の座標は、(X、Y)=(−27500、−70060)となる。したがって、マーク座標が(X、Y)=(−27500、−70050)であるマークNo「1」の位置ズレ測定マーク40についての格子ズレ量は、(X、Y)=(0、−10)となる。なお、本実施例では、全ての位置ズレ測定マーク40が保持面35上の基準マーク50群と重なる場所にあるものとする。
【0155】
図9の表に示すように、本実施例では、マーク座標のX座標については、92個の位置ズレ測定マーク40いずれも下3桁の値が「(±)500」であるため、格子ズレ量のX座標値は、いずれも「0」となる。一方、マーク座標のY座標については、下2桁の値が「(−)50」の場合は、格子ズレ量のY座標値は「−10」となり、下2桁の値が「(+)50」の場合は、格子ズレ量のY座標値は「(+)10」となり、下2桁の値が「(−)05」の場合は、格子ズレ量のY座標値は「−5」となり、下2桁の値が「(−)95」の場合は、格子ズレ量のY座標値は「−15」となる。ここで、本実施例では、格子ズレ量に関し、マーク座標の座標値が負(−)の値のものについては、−方向にずれているとし、マーク座標の座標値が正(+)の値のものについては、+方向にずれているとしている。
【0156】
図9に示す表の「測定値(μm)」の値は、上述した格子ズレ量を含むマークズレ量である。つまり、この測定値の値は、被測定基板20の歪み等により生じたマークズレ量と、上述した格子ズレ量とが足し合わされた値である。したがって、正味のマークズレ量を得るためには、測定値から格子ズレ量を差し引く必要がある。
【0157】
そこで、図9に示す表において、「測定値(μm)」から「格子ズレ量(μm)」を引いた値が、「位置ズレ量(μm)」である。ここで、本実施例の場合、X座標値については、格子ズレ量がいずれも0であるため、測定値の値が、そのまま位置ズレ量の値となる。これに対し、Y座標値については、格子ズレ量が0ではないため、測定値の値から格子ズレ量の値を差し引いた値が、位置ズレ量となる。
【0158】
例えば、マークNo「1」の場合、X座標値については、測定値の「48.162」が、そのまま位置ズレ量の値となる。一方、Y座標値については、測定値の「−47.555」から「−10」を差し引いた値である「−37.555」が、位置ズレ量の値となる。
【0159】
本実施例において92個の位置ズレ測定マーク40についての位置ズレ量を図示したものが、図10である。図10において、破線は、理想格子を示し、実線は、算出された位置ズレ量を示す。破線で示す矩形状D1における四隅の位置が、位置ズレ量が0の位置に対応し、破線の矩形状D1からずれた位置にある実線で示す四角形状D2における四隅の位置が、位置ズレ量が加味された各位置ズレ測定マーク40の位置を示す。なお、図10においては、位置ズレ量の値を100倍し、各位置ズレ測定マーク40のズレを拡大して表示している。
【0160】
そして、マークズレ量を算出する工程により算出されたマークズレ量から、被測定基板20の歪みを測定する工程が行われる。つまり、ここでは、上述したように算出された位置ズレ量(マークズレ量)に基づいて、被測定基板20の歪みが測定される。
【0161】
この被測定基板20の歪みを測定する工程では、上述したように算出された92点の位置ズレ測定マーク40の各位置ズレ量を、被測定基板20の歪みとして測定してもよい。ただし、上述したように算出された位置ズレ量は、被測定基板20を保持する工程において被測定基板20をチャック31に載せる際の、チャック31に対する被測定基板20の相対的なズレ量(以下「相対ズレ量」という。)を含む。このため、被測定基板20の歪みの測定値としては、位置ズレ量について相対ズレ量による影響を補正した値が採用される。
【0162】
ここで補正される相対ズレ量は、被測定基板20とチャック31との互いの中心位置のズレ量、および被測定基板20のチャック31に対する回転方向のズレ量に相当するものである。本実施例では、相対ズレ量を用いた位置ズレ量の補正において、位置ズレ量についての92点の平均値と、被測定基板20全体の回転量とが補正値として用いられる。
【0163】
被測定基板20全体の回転量の補正としては、マーク座標のY座標値が共通の値のもの、つまり共通のX方向の直線に沿って並ぶ点については、被測定基板20の回転量に相当する共通のX座標値を差し引くことが行われる。また、マーク座標のX座標値が共通の値のもの、つまり共通のY方向の直線に沿って並ぶ点については、被測定基板20の回転量の相当する共通のY座標値を差し引くことが行われる。
【0164】
相対ズレ量を用いた位置ズレ量の補正について、マークNo「1」〜「4」を例に挙げて具体的に説明する。図9に示す表から、マークNo「1」〜「4」の各マークの位置ズレ量は、それぞれ次の値である。
「1」:(X、Y)=(48.162、−37.555)
「2」:(X、Y)=(51.743、−38.968)
「3」:(X、Y)=(59.795、−37.725)
「4」:(X、Y)=(58.316、−43.340)
これらの位置ズレ量の値は、相対ズレ量による補正前の値である。つまり、これらの位置ズレ量の値に対して、相対ズレ量を用いた補正を行う。
【0165】
相対ズレ量を用いた補正として、位置ズレ量について92点の平均値が補正値に用いられ、この平均値を各位置ズレ量の値から差し引くことが行われる。本実施例において、位置ズレ量のX座標値の92点の平均値は「75.245」であり、位置ズレ量のY座標値の92点の平均値は、「−45.050」である。したがって、上記のマークNo「1」〜「4」の各マークの位置ズレ量から、これらの平均値を引いた値は、次の値となる。
「1」:(X、Y)=(−27.083、7.495)
「2」:(X、Y)=(−23.502、6.082)
「3」:(X、Y)=(−15.450、7.325)
「4」:(X、Y)=(−16.929、1.710)
【0166】
そして、これらの各座標値に対する被測定基板20全体の回転量の補正として、マーク座標のY座標値が共通の値(−70050)となるマークNo「1」および「2」のX座標値に対しては、「24.062」が加算され、同じくマーク座標のY座標値が共通の値(−49905)となるマークNo「3」および「4」のX座標値に対しては、「17.213(17.212)」が加算される。また、マーク座標のX座標値が共通の値(−27500)となるマークNo「1」および「3」のY座標値に対しては、「9.4」が減算され、同じくマーク座標のY座標値が共通の値(−12500)となるマークNo「2」および「4」のY座標値に対しては、「4.3」が減算される。
【0167】
このように位置ズレ量から92点の平均値を引いた値に対して加算または減算される値が、被測定基板20の回転量の補正値となる。この被測定基板20の回転量の補正値は、被測定基板20のチャック31に対する回転方向の相対的なズレによる座標値のズレ量に応じて、マークの座標値ごとに設定される。
【0168】
図11に示す表に、相対ズレ量による補正を行った後の位置ズレ量を示している。例えば、マークNo「1」の場合、X座標値については、相対ズレ量による補正前の値「48.162」から、92点の平均値「75.245」を減算し、被測定基板20の回転量の補正値「24.062」を加算した値である「−3.021」が、相対ズレ量による補正後の位置ズレ量の値となる。
【0169】
同じくマークNo「1」の場合、Y座標値については、相対ズレ量による補正前の値「−37.555」から、92点の平均値「−45.050」を減算し、被測定基板20の回転量の補正値「9.4」を減算した値である「−1.905」が、相対ズレ量による補正後の位置ズレ量の値となる。他のマークNoの座標値についても同様にして、相対ズレ量による補正が行われる。なお、図11に示す表では、「測定値(μm)」についても相対ズレ量による補正が行われた値となっている。つまり、この補正後の「測定値(μm)」から「格子ズレ量(μm)」を差し引くことで、相対ズレ量が補正された位置ズレ量が得られる。
【0170】
本実施例において92個の位置ズレ測定マーク40について相対ズレ量による補正を行った位置ズレ量を図示したものが、図12である。図12において、破線は、図10と同様に理想格子を示し、実線は、相対ズレ量が補正された位置ズレ量(補正後の位置ズレ量)を示す。破線で示す矩形状D1における四隅の位置が、位置ズレ量が0の位置に対応し、実線で示す四角形状D3における四隅の位置が、補正後の位置ズレ量が加味された各位置ズレ測定マーク40の位置を示す。なお、図12においては、位置ズレ量の値を600倍し、各位置ズレ測定マーク40のズレを拡大して表示している。
【0171】
このように、位置ズレ量に対して相対ズレ量による補正が行われることで、図10と図12との比較からもわかるように、被測定基板20をチャック31に載せる際の被測定基板20のチャック31に対する相対的な位置のズレが被測定基板20の歪みの測定値に与える影響を低減することができ、より正確な歪み量を測定することが可能となる。
【0172】
ここで補正される相対ズレ量は、被測定基板20の歪みとは無関係の値であり、被測定基板20をチャック31に保持する際に生じるものである。このため、位置ズレ量に対して相対ズレ量を補正することで、位置ズレ量から、被測定基板20をチャック31に保持する際に生じたズレが除かれ、位置ズレ量を、被測定基板20の歪みによって生じた量に修正することができる。
【0173】
したがって、位置ズレ量について相対ズレ量による補正を行うことで、被測定基板20をチャック31に保持する工程において、被測定基板20のチャック31に対する位置合わせに際して要求される厳密さが軽減され、工程の簡略化を図ることが可能となる。つまりは、位置ズレ量について相対ズレ量による補正を行うことで、被測定基板20とチャック31との位置合わせを不要にすることも可能となる。
【0174】
このように、被測定基板20の歪みを測定する工程においては、算出された位置ズレ量に対して、相対ズレ量による補正が行われる。つまり、被測定基板20の歪みを測定する工程によって得られる歪みの測定値としては、相対ズレ量による補正が行われた位置ズレ量が採用される。
【0175】
また、被測定基板20の歪みを測定する工程では、図11の表に示すような相対ズレ量による補正が行われた位置ズレ量に対して統計処理を施した値を、被測定基板20の歪み量として測定してもよい。ここで、統計処理としては、例えば、92点の位置ズレ量について、平均値の絶対値に、3σの値を加算するという演算が行われる。つまり、ここでの統計処理により得られる処理値Z(μm)は、次式(1)により表される。
Z=|ave|+3s ・・・(1)
ここで、|ave|は、92点の位置ズレ量の平均値の絶対値であり、sは、92点の位置ズレ量の標準偏差σ(分散:σ2)である。
【0176】
したがって、ここでの統計処理は、上記(1)式が用いられ、相対ズレ量が補正された位置ズレ量のX座標値およびY座標値それぞれについて行われる。すなわち、位置ズレ量のX座標値については、92点のX座標値の平均値の絶対値に、標準偏差σを3倍した値が加算されることで、処理値Zが得られる。また、位置ズレ量のY座標値については、92点のY座標値の平均値の絶対値に、標準偏差σを3倍した値が加算されることで、処理値Zが得られる。
【0177】
本実施例では、図11の表に示す相対ズレ量による補正後の位置ズレ量に対して上述のような統計処理を施すことにより、X方向については、X座標値として、4.904(μm)という値が算出される。また、Y方向については、Y座標値として、4.346(μm)という値が算出される。
【0178】
このように、被測定基板20の歪み量の測定に際し、位置ズレ量に対して統計処理を施すことにより、被測定基板20の歪みの測定値を、1組の座標値として得ることができる。これにより、被測定基板20の歪み量を代表的な数値によって把握することが可能となり、被測定基板20の歪み量を容易に認識することが可能となる。
【0179】
また、被測定基板20の歪みを測定する工程では、被測定基板20の歪み量の測定値として、被測定基板20の歪みを測定する工程の後に行われる工程で補正可能な歪み量を除去した値を採用してもよい。被測定基板20の歪みを測定する工程の後に行われる工程としては、例えば、カラーフィルタ18を形成する工程が挙げられる。
【0180】
カラーフィルタ18を形成する工程においては、カラーフィルタ18を形成するためのリソグラフィの工程等で用いられる露光機により、被測定基板20の歪みを補正することができる場合がある。この場合、露光機によって補正可能な被測定基板20の歪み量をあらかじめ除去した歪み量を、被測定基板20の歪みを測定する工程における歪み量の測定値とする。
【0181】
このように、被測定基板20の歪みを測定する工程で得られる歪み量の測定値を、後の工程で補正可能な歪み量をあらかじめ除いた値とすることにより、被測定基板20の歪み量として、後の工程において露光機等で補正された後に残る歪み量を把握することが可能となる。なお、被測定基板20の歪みを測定する工程の後に行われる工程としては、カラーフィルタ18を形成する工程のほか、例えばマイクロレンズ19を形成する工程等であってもよく、露光機等によって被測定基板20の歪みを補正することができる工程であればよい。この場合、位置ズレ量の情報を露光機に転送し、例えば露光フィールドシフト量を補正することができる。補正可能な歪み量は露光機でどのようなアラインメントを行うかに依存するので、そのアラインメントの設定に合わせて歪み量の算出を行う。
【0182】
また、本実施形態に係る基板の歪み測定方法においては、上述したマークズレ量を算出する工程において、基準マーク50の配置について、複数の基準マーク50の格子位置から、理想格子となるように設けられる基準マーク50の格子位置を算出することが望ましい。このことについて、図6を用いて具体的に説明する。
【0183】
図6に示す例では、顕微鏡33による同一視野に、5×5の25個の基準マーク50が配置される領域が含まれており、この領域に、1個の位置ズレ測定マーク40が存在している。なお、図6は、顕微鏡33による視野範囲を示している。
【0184】
図6に示す視野範囲では、25個の基準マーク50のうち、少なくとも一部が位置ズレ測定マーク40と重なって隠れている基準マーク50が、10個存在する。つまり、図6に示す視野には、位置ズレ測定マーク40に重なることなく全体が現れている基準マーク50(50B)が、15個存在する。
【0185】
このように同一視野に全体が現れている基準マーク50が15個存在する場合、これら15個の基準マーク50の位置(座標値)についての統計値から、基準マーク50の格子位置が算出される。ここで、統計値としては、例えば平均値や中央値等が用いられる。そして、この場合、15個の基準マーク50の統計値として算出された格子位置(基準マーク50の位置)のうち、最近接基準マーク50Aの格子位置(中心位置C1)が、最近接基準マーク50Aの位置に対する位置ズレ測定マーク40の中心位置C2のズレ量の算出に際して用いられる。
【0186】
このように、同一視野に存在する複数の基準マーク50の格子位置から、位置ズレ測定マーク40の位置(中心位置C2)比較対象となる基準マーク50(最近接基準マーク50A)の格子位置(中心位置C1)を算出することで、算出されるマークズレ量に対する、基準マーク50の位置のバラツキの影響を抑制することができる。これにより、マークズレ量(位置ズレ量)の算出精度が向上し、被測定基板20の歪みの測定精度を向上することができる。
【0187】
また、同一視野に存在する複数の基準マーク50の格子位置から最近接基準マーク50Aの格子位置を算出する場合、算出に用いられる基準マーク50の数は多い方が望ましい。そこで、算出に用いられる基準マーク50の数を増やす観点から、図6に示すような位置ズレ測定マーク40に代えて、図13(a)に示すような位置ズレ測定マーク40Bが好適に用いられる。
【0188】
図13(a)に示す位置ズレ測定マーク40Bは、図6に示す位置ズレ測定マーク40と同様に枠形状を有するが、枠形状の部分が中抜きされている。つまり、図6に示す位置ズレ測定マーク40が1重の枠形状であるのに対し、図13(a)に示す位置ズレ測定マーク40Bは、外側枠部40xと内側枠部40yとからなる2重の枠形状を有する。
【0189】
図13(a)に示すような位置ズレ測定マーク40Bによれば、図6に示す位置ズレ測定マーク40との比較において、マークのサイズを確保したまま、基準マーク50を隠すことになる部分の面積を小さくすることができる。これにより、位置ズレ測定マーク40によって隠される基準マーク50の数を少なくすること、つまり位置ズレ測定マーク40に隠されることなく全体が現れる基準マーク50の数を多くすることができる。したがって、上述したような同一視野に存在する複数の基準マーク50の格子位置を用いた基準マーク50の格子位置の算出に用いられる基準マーク50の数を多くすることができるので、マークズレ量の算出に用いられる基準マーク50の位置の精度を向上することができる。
【0190】
また、図13(a)に示すような位置ズレ測定マーク40Bによれば、図6に示す位置ズレ測定マーク40との比較において、マークにおけるエッジの数を増やすことができる。このため、上述したように位置ズレ測定マーク40の中心位置C2の座標を求める際にマークのエッジの座標値を用いる場合、座標値の算出に用いるエッジの数を増やすことで、中心位置C2の位置精度を高めることができる。これにより、マークズレ量の算出精度を向上することができる。
【0191】
また、位置ズレ測定マークの他の形状の例として、図13(b)〜(g)に示すような形状を挙げることができる。図13(b)に示す位置ズレ測定マーク41Aは、菱形の外形を有し、図6に示す位置ズレ測定マーク40と同様に内側が中抜きされた枠状の形状を有する。図13(c)に示す位置ズレ測定マーク41Bは、図6の位置ズレ測定マーク40と図13(a)の位置ズレ測定マーク40Bとの関係と同様に、図13(b)の位置ズレ測定マーク41Aの枠形状の部分が中抜きされたものであり、外側枠部41xと内側枠部41yとからなる2重の枠形状を有する。
【0192】
図13(d)に示す位置ズレ測定マーク42Aは、バツ印状の形状を有する。図13(e)に示す位置ズレ測定マーク42Bは、同図(d)に示す位置ズレ測定マーク42Aがバツ印状の形状に沿って間が抜かれたものであり、縦方向および横方向に互いに対向する2組のV字形状部42x、42yを有する。
【0193】
図13(f)に示す位置ズレ測定マーク43Aは、八角形状の外形を有し、内側が中抜きされた枠状の形状を有する。図13(g)に示す位置ズレ測定マーク43Bは、図6の位置ズレ測定マーク40と図13(a)の位置ズレ測定マーク40Bとの関係と同様に、図13(f)の位置ズレ測定マーク43Aの枠形状の部分が中抜きされたものであり、外側枠部43xと内側枠部43yとからなる2重の八角形の枠形状を有する。
【0194】
以上のように、位置ズレ測定マークの形状については、様々なバリエーションが考えられ、例示した形状のうち、いずれかの形状のマークが用いられたり、複数種類の形状のマークが用いられたりする。ただし、位置ズレ測定マークや基準マークの形状や、本実施形態で示した形状に限定されず、例えば円形状や三角形状等、互いのマークの位置のズレが把握できる形状であればよい。
【0195】
位置ズレ測定マークとしては、本実施形態の位置ズレ測定マーク40や図13に例示したもののように要素群を構成する各要素である場合に限られず、例えば格子状の模様等をなす一体の連続したものであってもよい。位置ズレ測定マーク40が格子状の模様である場合、位置ズレ測定マーク40は、例えば被測定基板20のダイシング領域24に沿って格子状に設けられる。
【0196】
また、基準マーク50の位置精度に関しては、チャック31における基準マーク50の配置の位置を、あらかじめ計測しておき、その計測値に基づく補正を行ってもよい。この場合、チャック31の保持面35上において格子点状に配置される全ての基準マーク50の位置があらかじめ計測される。ここで、基準マーク50の位置の計測には、例えば、レーザ干渉計等の精密な計測機器、あるいは、基板が搭載される高精度なステージや、このステージに保持された基板を透過する赤外線等を照射する光学系等を備える計測機器等の、高精度な計測機器が用いられる。基準マーク50の位置は、XY座標値として計測される。
【0197】
このように計測された基準マーク50の位置について、個々の基準マーク50の位置が、理想格子からどれだけずれているか、つまり各基準マーク50の位置の理想格子に対するズレ量が、あらかじめデータとして取得される。ここで取得された基準マーク50の位置に関するデータは、例えばルックアップテーブル等の参照可能なデータ群として、測定装置30の制御部34が有する記憶部等においてあらかじめ記憶される。
【0198】
そして、マークズレ量(位置ズレ量)を算出する工程において、あらかじめ取得され記憶された基準マーク50の位置に関する参照可能なデータ群から、そのデータ群を得たチャック31に設けられた各基準マーク50が有する理想格子に対するズレ量が呼び出され、マークズレ量が補正される。具体的には、位置ズレ測定マーク40の位置の基準となる最近接基準マーク50Aの位置に対して、その最近接基準マーク50Aの理想格子に対するズレ量の分の補正が行われる。
【0199】
つまり、マークズレ量の算出に用いられる最近接基準マーク50Aの位置(座標値)に対して、その最近接基準マーク50Aとしての基準マーク50がチャック31上で有する理想格子に対するズレ量の分だけ、そのズレ量を打ち消すように値を増減させる補正が行われる。なお、あらかじめ計測された基準マーク50の理想格子に対するズレ量による補正は、基準マーク50(最近接基準マーク50A)の位置(座標値)に対して行われてもよく、図9の表等に示す測定値や位置ズレ量に対して行われてもよい。
【0200】
このようにチャック31における基準マーク50の理想格子に対するズレ量をあらかじめ計測し、その計測値に基づく補正を行うことにより、基準マーク50の位置精度が向上するので、マークズレ量の算出精度が向上し、被測定基板20の歪みの測定精度を向上することができる。そして、計測した基準マーク50の理想格子に対するズレ量をルックアップテーブル等の参照可能なデータ群として取得することにより、このデータ群はチャック31ごとに得られる補正値であるので、チャック31によって保持されて歪みが測定される多数の被測定基板20について補正値を共用することができる。これにより、被測定基板20の歪みの測定に要する処理の負荷を軽減することができる。
【0201】
この点、被測定基板20の歪みの測定ごとに、その都度、レーザ干渉計等といった高精度な計測機器を用いて被測定基板20の歪みの測定を行うことは、コスト面や操作に熟練を要すること等から現実的ではない。これに対し、上述したように測定装置30の基準マーク50についての理想格子に対するズレ量をあらかじめレーザ干渉計等の高精度な計測機器によって計測し、その計測値による補正を行うことは、比較的容易に実現可能であり、位置ズレ量等の測定値の精度向上に貢献する。
【0202】
また、上述したようにチャック31における各基準マーク50の理想格子に対するズレ量をあらかじめ計測する場合、その理想格子に対するズレ量の計測の際、同一視野に複数の基準マーク50が存在すると、理想格子に対するズレ量の計測値がどの基準マーク50の値であるかが分からなくなってしまう可能性がある。また、チャック31に対する被測定基板20の置き位置精度の面からも、各基準マーク50の理想格子に対するズレ量の事前計測値と基準マーク50との紐付けが困難となる場合がある。
【0203】
そこで、チャック31に設けられる基準マーク50については、例えば図14に示すように、同一視野に含まれることになる、近隣に配置される複数の基準マーク50が互いに異なる形状を有することが望ましい。図14には、5×5=25個の基準マーク50が示されており、これら25個の基準マーク50は、互いに異なる形状を有するパターンを構成する。
【0204】
なお、近隣に配置される複数の基準マーク50について、互いに異なる形状となる基準マーク50の数は、顕微鏡33の視野の広さ等によって適宜設定される。例えば、図14に示すように、近隣に配置され互いに異なる形状となる基準マーク50の数が5×5=25個である場合、この5×5のパターンが繰り返し単位としてX方向およびY方向に繰り返して配置される。近隣に配置され互いに異なる形状となる基準マーク50の数は、5×5=25個のほか、4×4=16個であったり、6×6=36個であったりしてもよく、上記のとおり顕微鏡33の視野の広さ等によって適宜設定される。
【0205】
このように近隣に配置される複数の基準マーク50について互いに異なる形状が用いられることにより、近隣に配置される複数の基準マーク50の判別が容易となり、各基準マーク50の理想格子に対するズレ量の事前計測値と基準マーク50との対応付けを確実に行うことができる。これにより、マークズレ量(位置ズレ量)の算出精度が向上し、被測定基板20の歪みの測定精度を向上することができる。
【0206】
以上説明した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によれば、次のような効果が得られる。被測定基板20におけるチップ面積の確保を容易に行うことができる。すなわち、本実施形態の歪み測定において、被測定基板20が有する位置ズレ測定マーク40は、基準マーク50との関係においてモアレ縞等を形成する周期パターンではないため、例えば基板におけるダイシング領域24等に配置することができるので、基板におけるチップ面積を圧迫することなく設けることができる。
【0207】
また、本実施形態の歪み測定によれば、被測定基板20の保持方法による影響を考慮した基板の歪みの測定を行うことができる。すなわち、基板の歪みは、チャック31に保持された状態の被測定基板20の位置ズレ測定マーク40と、チャック31の基準マーク50との位置関係に基づいて測定されることから、測定される歪みには、被測定基板20をチャック31に保持することによって生じた被測定基板20の歪みが含まれる。したがって、本実施形態の歪み測定によれば、基板保持方法によって生じる歪みの変化も測定することができる。
【0208】
また、本実施形態の歪み測定によれば、高価な計測機器を用いることなく、高精度かつ簡便に、被測定基板20の歪みを測定することができる。被測定基板20の歪みが高精度に測定できることで、例えば、カラーフィルタ18やマイクロレンズ19を形成する際のリソグラフィの工程(露光工程)での重ね合わせ精度を向上することができる。
【0209】
また、本実施形態の歪み測定によれば、デバイスに合わせて被測定基板20を保持するためのチャックを準備する必要がない。
【0210】
また、本実施形態の歪み測定は、赤外線等の被測定基板20を透過する光を用いてマークを読み取る手法を採用するものであることから、被測定基板20を薄膜化することなく、被測定基板20の内部に設けられた位置ズレ測定マーク40を読み取ることができる。この点、露光機のアラインメントは可視光を利用するものであることから、被測定基板20の薄膜化後でないと被測定基板20の内部に存在するマークを読み取ることができない。
【0211】
このように、本実施形態の歪み測定によれば、被測定基板20の薄膜化の工程の前段階で、被測定基板20の歪みを把握することが可能となる。したがって、本実施形態の歪み測定によれば、被測定基板20を薄膜化する工程が行われる前の、被測定基板20を構成するセンサ基板21と支持基板22との仮接合段階で歪みの特定を行うことができる。
【0212】
具体的には、接着剤を用いた基板接合の場合は、接着剤を硬化させる前の状態で、被測定基板20の歪みを測定することで、また、プラズマを用いた基板接合の場合は、加熱ないし必要に応じて行われる加圧等の処理を行う前の状態で、被測定基板20の歪みを測定することで、センサ基板21と支持基板22との仮接合段階で歪みの特定を行うことができる。センサ基板21と支持基板22との仮接合段階においては、一旦基板同士を引き離して再度貼り合わせることができる。
【0213】
したがって、例えば、センサ基板21と支持基板22の基板同士の仮接合段階において本実施形態の歪み測定手法によって測定した歪み量がある閾値以上であれば、基板同士を一旦引き離し、再度貼り合わせることができる。つまり、基板同士の仮接合段階での基板の歪み量が所定値以上の場合、基板同士を一旦引き離し、貼り合わせによる影響が軽減されるように、基板同士を再度貼り合わせることが可能となる。これにより、貼り合わせ工程まで流動した基板を廃棄しなくて済み、材料コストや廃棄コストを削減することができる。また、基板の歪み改善のタクトタイムを短縮することができる。
【0214】
また、本実施形態の基板の歪み測定の説明においては、測定対象となる被測定基板20は、センサ基板21と支持基板22との2枚の基板が貼り合わされたものであるが、本実施形態の基板の歪み測定手法は、例えば1枚の基板であったり3枚以上の基板が貼り合わされたものであったりしても、測定対象とすることができる。
【0215】
[固体撮像装置の製造方法]
上述した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によって求めた被測定基板20の歪みは、被測定基板20の歪みを測定する工程の後の工程、例えばカラーフィルタ18やマイクロレンズ19を形成する工程(露光機を用いたリソグラフィの工程)に到着するまでの加工過程によって変化することが予測できる。特に、この加工過程においては、被測定基板20を薄膜化する工程が、基板の歪みに対して比較的大きな影響を与える。また、露光機を用いたリソグラフィの工程において被測定基板20が保持されるチャックが変化することによっても、被測定基板20の歪みは変化する。
【0216】
そこで、センサ基板21と支持基板22とを貼り合わせる工程以降において、上述した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によって被測定基板20の歪みを測定する工程の後に行われる所定の工程で、被測定基板20の歪みを測定し、ここで測定した歪みと、先に測定した歪みとを比較することで、工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化をあらかじめ算出する。そして、工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化を用いて、上述したような手法で測定した被測定基板20の歪みがどのように変化するかを予測する。
【0217】
このように、本実施形態の固体撮像装置1の製造方法においては、上述した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によって測定した被測定基板20の歪みが、被測定基板20の歪みを測定する工程以降、所定の工程までにどのように変化するかを予測する工程が行われる。つまり、この工程では、被測定基板20の歪みを測定する工程以降、例えば露光機を用いたリソグラフィの工程が行われるカラーフィルタ18を形成する工程までの間に、工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化が予測される。そして、予測された被測定基板20の歪みの変化は、被測定基板20の歪みを測定する工程以降の工程で用いられる。
【0218】
なお、以下の説明では、上述した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によって測定される被測定基板20の歪みを「本測定歪み」とし、上述した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によって被測定基板20の歪みを測定する工程の後に行われる所定の工程で測定される被測定基板20の歪みを「後工程測定歪み」とする。
【0219】
後工程測定歪みを測定する所定の工程としては、例えば、カラーフィルタ18を形成する工程やマイクロレンズ19を形成する工程等が挙げられる。この場合、後工程測定歪みは、例えば、カラーフィルタ18やマイクロレンズ19を形成する際のリソグラフィの工程(露光工程)で用いられる露光機でのアラインメントにより測定される。具体的には、後工程測定歪みとしては、露光機でアラインメントを行うことで、被測定基板20の位置ズレ測定マーク40、もしくは、位置ズレ測定マーク40に相当するマークの位置座標を露光機のステージを基準として測定することができる。
【0220】
そして、後工程測定歪みと本測定歪みとを比較することで、被測定基板20の歪みについて、本測定歪みから後工程測定歪みまでの変化量が、あらかじめ算出される。ここで算出された被測定基板20の歪みの変化量は、例えばルックアップテーブル等の参照可能なデータ群として作成され、測定装置30の制御部34が有する記憶部等においてあらかじめ記憶される。
【0221】
このようにして作成された被測定基板20の歪みの変化量についての参照可能なデータ群(以下「歪み変化量データ」という。)が用いられ、被測定基板20の歪みの変化が予測される。具体的には、例えば、カラーフィルタ18を形成する際の露光工程で、被測定基板20の歪みがどのような歪みとなっているのかが予測される。そして、この歪み変化量データが用いられて予測された被測定基板20の歪みに合わせて、露光工程での露光機のアライメントに補正を施すことが行われる。
【0222】
カラーフィルタ18等を形成する際の露光工程では、例えば、公知のアラインメント手法により、被測定基板20の位置合わせが行われる。ここで用いられるアライメント手法としては、例えば、特開平6−314648号公報や特開平10−125576号公報に記載されている手法を用いることができる。
【0223】
露光工程でのアラインメントにおいて、本測定歪みに対して後工程測定歪みを補正した被測定基板20の位置合わせを行うためには、アラインメントに膨大な時間がかかってしまうという問題がある。つまり、露光工程でのアラインメントによる被測定基板20の位置合わせによって、後工程測定歪みによる本測定歪みからの歪みの変化を補正しようとした場合、多くの時間を要することになる。
【0224】
そこで、上述したように後工程測定歪みを測定し、歪み変化量データをあらかじめ作成することにより、被測定基板20の歪みの変化を予測することができる。そして、歪み変化量データを、例えば、カラーフィルタ18を形成する工程の露光工程で用いられる露光機に引き渡すことで、露光工程でアラインメント点数が少なくても被測定基板20の歪みの測定値を補正して被測定基板20の位置合わせを行い、露光を行うことが可能となる。
【0225】
すなわち、露光工程でのアラインメントに補正を施すことによって被測定基板20の歪みの変化に対応する場合と比べて、歪み変化量データによって被測定基板20の歪みを予測することにより、露光工程でのアラインメントを簡易なものとすることができる。これにより、加工時間の長期化を招くことなく、被測定基板20の薄膜化の工程等の後工程により生じた被測定基板20の歪みを考慮した露光を行うことができる。
【0226】
上記のとおり露光機に引き渡す歪み変化量データは、例えば、被測定基板20におけるウェハ面内での位置ズレ情報をマップ化した位置ズレマップに変換されて用いられる。ただし、歪み変化量データを露光機に引き渡すための形式としては、歪み変化量データに基づいて作成したマップに限定されず、例えば、歪み変化量データに基づいて作成した、例えば5次の線形多項式等のウェハ面内の高次の補正式の形式等であってもよい。このように、工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化を用いた予測手法によれば、基板の貼り合わせの工程以降の露光工程に被測定基板20の歪み情報を提供することができる。
【0227】
このように、本実施形態の固体撮像装置1の製造方法においては、被測定基板20の歪みを予測する工程により予測された被測定基板20の変化を用いて、被測定基板20の位置合わせの補正を行う工程が行われる。
【0228】
以上のように、歪み変化量データをあらかじめ作成して、被測定基板20の歪みの変化を予測する手法においては、被測定基板20の歪みを測定する工程の後の工程での、被測定基板20の歪みの変化が一定量に安定していれば、歪み変化量データの作成は事前に一度だけ行えばよい。ただし、被測定基板20の薄膜化の工程の経時変化、例えば研磨パッドの磨耗やエッチング工程の薬液の濃度変化等によって被測定基板20の歪みの変化が一定量とならない場合もあることから、こうした歪み変化量データについては、被測定基板20の薄膜化の工程の経時変化等を考慮し、例えば所定の期間ごとに更新することが望ましい。
【0229】
また、被測定基板20の歪みの変化を予測するに際しては、上述したようなルックアップテーブル等の歪み変化量データの代わりに、被測定基板20の歪みの変化を、例えば3次の線形多項式等の何らかの数式により記述し、この数式を用いて被測定基板20の歪みの変化を予測してもよい。この場合、被測定基板20の歪みの変化を予測するための数式は、本測定歪みと後工程測定歪みとの関係に基づいて、近似式等として導かれる。
【0230】
一方、上記のとおり各工程によって被測定基板20が保持されるチャックが変化することによっても、被測定基板20の歪みは変化する。この点、上述したようにセンサ基板21および支持基板22を貼り合わせる工程から用いられる測定装置30のチャック31と、センサ基板21および支持基板22を貼り合わせる工程以降の工程、例えばカラーフィルタ18を形成する工程等の、被測定基板20の位置合わせを要する工程で用いられる露光機が有するチャックとが同一であれば、チャックに依存する被測定基板20の歪みを考慮する必要はない。しかしながら、実際には、測定装置30のチャック31と、基板の貼り合わせの工程以降の工程で用いられるチャックとを全く同一のものとすることは、極めて困難である。
【0231】
そこで、測定装置30において基準マーク50を有するチャック31と、基板の貼り合わせの工程以降に用いる露光機のチャックとの各チャックに依存する被測定基板20の歪みの違いをあらかじめ把握し、本測定歪みがどのように変化するかを予測する。つまり、チャック31に被測定基板20が保持された状態で測定された本測定歪みが、本測定歪みを測定する工程の後の所定の工程においてチャック31とは異なる露光機のチャックに保持されることで、どのように変化するかをあらかじめ把握し、予測する。
【0232】
したがって、被測定基板20の歪みについて、本測定歪みを測定する工程の後の所定の工程で、被測定基板20を保持するチャックがチャック31から異なるチャックに変わることによる、本測定歪みからの変化量が、あらかじめ算出される。ここで算出された被測定基板20の歪みの変化量は、上述したような工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化を用いた予測手法と同様に、ルックアップテーブル等の参照可能なデータ群や数式等として記述され、測定装置30の制御部34が有する記憶部等においてあらかじめ記憶される。また、本測定歪みを測定する工程の後の所定の工程は、上述した後工程測定歪みを測定する所定の工程と同様に、例えば、カラーフィルタ18を形成する工程やマイクロレンズ19を形成する工程等である。
【0233】
そして、上述したような工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化を用いた予測手法と同様に、被測定基板20を保持するチャックが変わることによる本測定歪みからの変化量についてのデータや数式が用いられ、被測定基板20の歪みの変化が予測される。そして、予測された被測定基板20の歪みの変化は、被測定基板20の歪みを測定する工程以降の工程で用いられる。すなわち、例えば、予測された被測定基板20の歪みに合わせて、露光工程での露光機のアライメントに補正を施すことが行われる。
【0234】
このように、上述した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によって測定した被測定基板20の歪みが、被測定基板20の歪みを測定する工程以降、所定の工程までにどのように変化するかを予測する工程としては、被測定基板20を保持するチャックが変わることによる被測定基板20の歪みの変化を予測する工程が行われてもよい。つまり、この工程では、被測定基板20の歪みを測定する工程以降、例えば露光機を用いたリソグラフィの工程が行われるカラーフィルタ18を形成する工程において、被測定基板20を保持するチャックが測定装置30のチャック31から他のチャックに変わることによる被測定基板20の歪みの変化が予測される。
【0235】
このように、固体撮像装置1の製造過程において、被測定基板20を保持するチャックに依存する被測定基板20の歪みの変化を予測することによっても、上述したような工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化を用いた予測手法と同様に、基板の貼り合わせの工程以降の露光工程に被測定基板20の歪み情報を提供することができ、露光工程でのアラインメントを簡易なものとすることができる。これにより、加工時間の長期化を招くことなく、被測定基板20を保持するチャックが変わること、つまり基板保持方法の違いにより生じた被測定基板20の歪みを考慮した露光を行うことができる。
【0236】
以上のように、被測定基板20の歪みについて、工程を経ることによる歪みの変化や基板保持方法による歪みの変化を予測する手法を採用することで、基板の薄膜化の工程等の途中工程や、チャックによる基板保持方法が基板の歪みに与える影響を考慮することができ、本測定歪みを有効に活用することができる。つまり、途中工程や基板保持方法によって変化する基板の歪みの変化を、本測定歪みを基準として予測することで、各工程での被測定基板20の歪みを正確に把握することが可能となる。
【0237】
なお、被測定基板20の歪みの変化を予測する工程において予測の対象となる歪みの変化は、工程を経ることによる歪みの変化および基板保持方法による歪みの変化のいずれか一方であってもよく、両方であってもよい。
【0238】
また、上述したような被測定基板20の歪みを予測する手法の代わりに、チャックの構造に基づいて、被測定基板20を保持するチャックが異なるものとなった場合の被測定基板20上の位置ズレ測定マーク40の位置を補正する手法を用いてもよい。この手法を用いる場合、チャックが有するピンやリフトピンの形状・位置・大きさ、平坦度等に基づいて、工程によって被測定基板20を保持するチャックが変わった場合に、そのチャックの構造の変化に応じて、位置ズレ測定マーク40の位置を補正する。ここでの補正においては、例えば、特開2006−157014号公報に記載されている公知の手法を用いることができる。
【0239】
以上説明した本技術の実施の形態では、半導体装置の一例として、CMOS型の固体撮像装置1を挙げて説明したが、本技術の適用対象となる半導体装置は、CMOS型の固体撮像装置のほか、例えばCCD型の固体撮像装置等、種々の半導体装置が含まれる。
【0240】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることができる。
(1)基板を保持する保持面を有し、前記保持面に、前記基板に設けられた位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する基板保持部と、前記基板保持部により保持された前記基板に対して、前記基板を透過する光を照射する光源部と、前記光源部により前記光が前記基板に照射されることで得られる前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりを観察する観察部と、前記観察部により観察された前記重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する算出部と、前記算出部により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する測定部と、を備える、基板の歪み測定装置。
(2)前記基板は、固体撮像素子が形成されたセンサ基板と他の基板とが貼り合わされたものであり、前記位置ズレ測定用のマークは、前記センサ基板の前記他の基板と対向する側の面に設けられ、前記基板保持部は、前記他の基板側が前記保持面に対向するように、前記基板を保持する、前記(1)に記載の基板の歪み測定装置。
(3)前記位置ズレ測定用のマークおよび前記基準マークは、いずれも格子点状に配列され、前記位置ズレ測定用のマークは、前記基準マークを複数含む大きさを有する、前記(1)または前記(2)に記載の基板の歪み測定装置。
(4)位置ズレ測定用のマークを有する基板を、前記位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する保持面に保持する工程と、前記保持する工程により前記保持面に保持された前記基板に、前記基板を透過する光を照射することで観察される前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する工程と、前記算出する工程により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する工程と、を備える、基板の歪み測定方法。
(5)位置ズレ測定用のマークを有する基板を、前記位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する保持面に保持する工程と、前記保持する工程により前記保持面に保持された前記基板に、前記基板を透過する光を照射することで観察される前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する工程と、前記算出する工程により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する工程と、前記測定する工程で測定により測定した前記基板の歪みが、前記測定する工程以降、所定の工程までにどのように変化するかを予測する工程と、前記予測する工程により予測された前記基板の変化を用いて、前記基板の位置合わせの補正を行う工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0241】
1 固体撮像装置(半導体装置)
20 被測定基板
21 センサ基板
22 支持基板(他の基板)
30 測定装置(歪み測定装置)
31 チャック(基板保持部)
32 IR光源(光源部)
33 顕微鏡(観察部)
35 保持面
36 ズレ量算出部
37 歪み測定部
40 位置ズレ測定マーク
50 基準マーク
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えば固体撮像装置等を構成する基板の歪み測定装置、基板の歪み測定方法、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、固体撮像装置は、シリコン等により構成される半導体基板を有し、その半導体基板において、複数の画素が例えば行列状に配置される画素領域を有する。この画素領域に配置される各画素は、光電変換機能を有する受光素子としてのフォトダイオードを有する。また、固体撮像装置においては、半導体基板の一方の板面側に、例えば複数の配線が層間に絶縁膜を介して積層された配線層が設けられる。
【0003】
近年、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の固体撮像装置として、いわゆる裏面照射型の固体撮像装置の開発および生産が進められている。裏面照射型の固体撮像装置は、半導体基板に対して配線層が設けられる側と反対側を受光面側とする。このため、裏面照射型の固体撮像装置においては、半導体基板に対して、配線層が設けられる側と反対側に、カラーフィルタおよびマイクロレンズ(オンチップレンズ)が形成される。
【0004】
したがって、裏面照射型の場合、マイクロレンズ側から入射する光は、カラーフィルタを透過した後、配線層を通過することなく、画素のフォトダイオードにより受光される。このため、裏面照射型の構造によれば、マイクロレンズ側から入射する光は、配線層によって遮られることなく、画素のフォトダイオードにより受光されるので、フォトダイオードの実質的な受光面積を広く確保することができ、感度を向上させることができる。
【0005】
このような裏面照射型の固体撮像装置には、その製造過程で、固体撮像素子(イメージ・センサ)が形成された基板(以下「センサ基板」という。)と他の基板とを貼り合わせる工程と、裏面側からの入射光を得るために、センサ基板を、貼り合わされた他の基板側とは反対側から薄くする薄膜化の工程とが行われるものがある。センサ基板と貼り合わされる他の基板は、例えば、センサ基板の平坦性や機械強度を保つための基板であったり、センサ基板に形成される固体撮像素子を制御する論理回路が形成された基板であったりする。
【0006】
センサ基板と他の基板とは、接着剤を用いた手法やプラズマを用いた手法等によって貼り合わされ、これらの基板を貼り合わせる工程においては、基板に対する加熱や加圧が行われる。また、基板を薄くする薄膜化の工程では、研磨やエッチング等によってセンサ基板が薄膜化される。このようにセンサ基板と他の基板との貼り合わせ、およびセンサ基板の薄膜化が行われる製造過程によれば、基板に対する加熱や加圧、あるいはセンサ基板の薄膜化に際して生じる残留応力等により、センサ基板が歪む(変形する)という問題がある。
【0007】
このようなセンサ基板の歪み(変形)の問題を解決するための手法として、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されているものがある。特許文献1には、互いに貼り合わされる基板の結晶方位に基づいて、基板間における内部応力を調整する手法が開示されている。特許文献2には、基板同士を貼り合わせる工程における熱と圧力を制御する手法が開示されている。
【0008】
基板同士の貼り合わせの工程および基板の薄膜化の工程が行われる製造過程によって生じる基板の歪みについては、これらの工程の後に行われるカラーフィルタやマイクロレンズ等を形成する工程に際し、どのような歪みが生じているかが重要となる。この点、特許文献1および特許文献2には、基板にどのような歪みが生じているかを測定することについては言及されていない。基板の歪みの測定が行われない場合、カラーフィルタやマイクロレンズ等を形成する工程での位置合わせの段階となって初めて、基板がどれだけ歪んでいるかが判明することになる。
【0009】
そこで、特許文献3に、互いに貼り合わされた状態の基板の歪みを計測する手法が開示されている。特許文献3には、互いに貼り合わされるセンサ基板と参照基板との両基板に一定の周期を有する周期パターンを形成し、両基板が貼り合わされることによる周期パターンの重なりによって生じるモアレ縞の形状から、基板の歪みを計測する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−234725号公報
【特許文献2】特開2009−200279号公報
【特許文献3】特開2009−294001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3の手法は、周期パターンの重なりによって生じるモアレ縞を利用するものである。このため、特許文献3の手法に用いられる周期パターンは、基板において、モアレ縞を形成することができる程度の領域に形成される必要がある。したがって、特許文献3の手法によれば、周期パターンを形成する領域により、基板におけるチップ面積が圧迫されるという問題がある。
【0012】
また、参照基板に対してセンサ基板をどのように保持するかという基板保持方法や、途中工程等によっても、基板で生じる歪みが変化する。この点、特許文献3の手法では、このような基板保持方法や途中工程が基板の歪みに影響を与えることについては考慮されていない。
【0013】
特許文献3の手法の他にも、例えば、レーザ干渉計等の精密な計測機器、あるいは、基板が搭載される高精度なステージや、このステージに保持された基板を透過する赤外線等を照射する光学系等を備える計測機器を用いることで、基板の歪みを計測することは可能である。しかしながら、このような計測機器は、高価であるうえに、操作に熟練を要すること等から、導入が困難である。
【0014】
本技術の目的は、基板におけるチップ面積の確保を容易に行うことができ、基板の保持方法による影響を受けることなく、また、高価な計測機器を用いることなく、高精度かつ簡便に、基板の歪みを測定することができる基板の歪み測定装置、基板の歪み測定方法、および半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本技術に係る基板の歪み測定装置は、基板を保持する保持面を有し、前記保持面に、前記基板に設けられた位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する基板保持部と、前記基板保持部により保持された前記基板に対して、前記基板を透過する光を照射する光源部と、前記光源部により前記光が前記基板に照射されることで得られる前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりを観察する観察部と、前記観察部により観察された前記重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する算出部と、前記算出部により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する測定部と、を備えるものである。
【0016】
また、本技術に係る基板の歪み測定装置においては、好ましくは、前記基板は、固体撮像素子が形成されたセンサ基板と他の基板とが貼り合わされたものであり、前記位置ズレ測定用のマークは、前記センサ基板の前記他の基板と対向する側の面に設けられ、前記基板保持部は、前記他の基板側が前記保持面に対向するように、前記基板を保持する。
【0017】
また、本技術に係る基板の歪み測定装置においては、好ましくは、前記位置ズレ測定用のマークおよび前記基準マークは、いずれも格子点状に配列され、前記位置ズレ測定用のマークは、前記基準マークを複数含む大きさを有する。
【0018】
本技術に係る基板の歪み測定方法は、位置ズレ測定用のマークを有する基板を、前記位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する保持面に保持する工程と、前記保持する工程により前記保持面に保持された前記基板に、前記基板を透過する光を照射することで観察される前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する工程と、前記算出する工程により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する工程と、を備えるものである。
【0019】
本技術に係る半導体装置の製造方法は、位置ズレ測定用のマークを有する基板を、前記位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する保持面に保持する工程と、前記保持する工程により前記保持面に保持された前記基板に、前記基板を透過する光を照射することで観察される前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する工程と、前記算出する工程により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する工程と、前記測定する工程で測定により測定した前記基板の歪みが、前記測定する工程以降、所定の工程までにどのように変化するかを予測する工程と、前記予測する工程により予測された前記基板の変化を用いて、前記基板の位置合わせの補正を行う工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0020】
本技術によれば、基板におけるチップ面積の確保を容易に行うことができ、また、高価な計測機器を用いることなく、高精度かつ簡便に、基板の歪みを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本技術の一実施形態に係る固体撮像装置の構成を示す断面図。
【図2】本技術の一実施形態に係る基板の歪み測定装置の構成を示す模式図。
【図3】本技術の一実施形態に係る基板保持部の構成を示す図。
【図4】本技術の一実施形態に係る位置ズレ測定用のマークについての説明図。
【図5】本技術の一実施形態に係る基準マークについての説明図。
【図6】本技術の一実施形態に係る位置ズレ測定用のマークおよび基準マークの一例を示す図。
【図7】本技術の一実施形態に係る基板の歪み測定装置の構成の変形例を示す模式図。
【図8】本技術の実施例に係る位置ズレ測定用のマークの配置の一例を示す図。
【図9】本技術の実施例に係る測定結果等の表を示す図。
【図10】本技術の実施例に係る測定結果等を模式的に示す図。
【図11】本技術の実施例に係る測定結果等の表を示す図。
【図12】本技術の実施例に係る測定結果等を模式的に示す図。
【図13】本技術の一実施形態に係る位置ズレ測定用のマークの他の例を示す図。
【図14】本技術の一実施形態に係る基準マークの他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[本技術の概要]
本技術は、基板を保持する基板保持部の保持面に基準マークを設け、この基準マークと、歪みの測定対象となる基板に設けられた位置ズレ測定用のマークとの相対的な位置関係から、基板の歪みを測定するものである。基準マークと位置ズレ測定用のマークとの相対的な位置関係は、基板を透過する光を基板に対して照射することで観察される、基準マークと位置ズレ測定用のマークとの重なりの状態から得られる。このような構成を採用することにより、本技術は、高価な計測機器を用いることなく、高精度かつ簡便に、基板の歪みを測定しようとするものである。以下、本技術の実施の形態を説明する。
【0023】
[基板の構成]
まず、本実施形態において、歪みの測定対象となる基板(以下「被測定基板」という。)について説明する。図1に示すように、本実施形態では、被測定基板20は、半導体装置の一例であるCMOS型の固体撮像装置1を構成する。本実施形態に係る被測定基板20は、固体撮像素子(イメージ・センサ)が形成された第1の基板としてのセンサ基板21と、第2の基板としての支持基板22とを備える。
【0024】
センサ基板21および支持基板22は、互いに略同じ大きさの略円形状の基板であり、互いに貼り合わされた状態で、被測定基板20を構成する。このように、本実施形態に係る被測定基板20は、センサ基板21と他の基板としての支持基板22とが貼り合わされたものである。本実施形態では、センサ基板21および支持基板22は、シリコン基板(シリコンウェハ)である。
【0025】
被測定基板20によって構成される固体撮像装置1の構成について説明する。図1に示すように、固体撮像装置1は、半導体基板2を有する。固体撮像装置1は、半導体基板2の平面視において、画素領域3と、画素領域3の周囲に設けられる周辺回路領域(図示略)とを有する。画素領域3は、半導体基板2に設けられる撮像領域であり、所定の配列で設けられる複数の画素5を有する。
【0026】
本実施形態では、複数の画素5の配列として、複数の画素5が画素領域3において平面的に行列状に配置される一般的な正方格子配列が採用される。したがって、複数の画素5は、例えば矩形状の画素領域3に沿って、縦方向(垂直方向)・横方向(水平方向)に2次元行列状に配置される。
【0027】
画素5は、光電変換機能を有する受光部としてのフォトダイオード6と、複数のMOSトランジスタ7とを有する。フォトダイオード6は、受光面を有し、その受光面に入射した光の強度(光量)に応じた信号電荷を生成する。
【0028】
本実施形態では、フォトダイオード6は、第1導電型としてのn型半導体領域8と、半導体基板2の表面および裏面の両面に臨むように形成される第2導電型としてのp型半導体領域9とを有し、pn接合型のフォトダイオードとして構成される。p型半導体領域9は、暗電流抑制のための正孔電荷蓄積領域を兼ねる。
【0029】
MOSトランジスタ7は、図示せぬソース・ドレイン領域と、ゲート電極10とを有する。MOSトランジスタ7のソース・ドレイン領域は、半導体基板2の一方の板面側である表面2a側に形成されたp型半導体ウェル領域11においてn型の領域として形成される。ゲート電極10は、MOSトランジスタ7のソース・ドレイン領域の両領域間における半導体基板2の表面2a上にゲート絶縁膜を介して形成される。なお、画素5は、複数のMOSトランジスタ7として、例えばフォトダイオード6により生成された信号電荷の増幅、転送、選択、およびリセットをそれぞれ受け持つトランジスタを有する。
【0030】
このようにフォトダイオード6およびMOSトランジスタ7からなる各画素5は、素子分離領域12により隣接する画素5と分離される。素子分離領域12は、p型半導体領域として形成され、接地される。
【0031】
また、固体撮像装置1において、上記のとおり画素領域3の周囲に設けられる周辺回路領域には、固体撮像装置1を動作させるための種々の回路が配置される。周辺回路領域に配置される回路には、垂直方向および水平方向の各方向で画素を選択するための垂直走査回路および水平走査回路、各画素5からの出力信号の処理を行う信号処理回路、信号処理回路から順次供給される信号に対して所定の信号処理を行って出力する出力回路、これらの回路の動作の基準となるクロック信号や制御信号を生成し、各回路を制御する制御回路等が含まれる。
【0032】
裏面照射型の固体撮像装置1においては、半導体基板2の表面2a上に、絶縁膜等を介して配線層13が設けられる。配線層13は、層間絶縁膜14を介して積層される複数の配線15を有する。層間絶縁膜14は、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)により形成されるシリコン酸化膜により構成される。複数の配線15は、例えば異なる金属により形成され、層間に形成されるプラグ等を介して互いに接続される。
【0033】
一方、半導体基板2の他方の板面である裏面2b上には、カラーフィルタ層17が設けられる。なお、半導体基板2とカラーフィルタ層17との間には、例えばシリコン窒化膜(SiN膜)等の無機膜として形成される反射防止膜や、例えばシリコン酸化膜(SiO2膜)等の無機膜として形成される保護用のパシベーション膜(平坦化膜)等が設けられる。
【0034】
カラーフィルタ層17は、各画素5に対応して設けられるカラーフィルタ18に区分される。つまり、カラーフィルタ層17は、各画素5を構成するフォトダイオード6毎に複数のカラーフィルタ18に区分される。本実施形態の固体撮像装置1では、各カラーフィルタ18は、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)のいずれかの色のフィルタ部分であり、各色の成分の光を透過させる。各色のカラーフィルタ18は、いわゆるオンチップカラーフィルタであり、複数の画素5の配列に従って形成される。
【0035】
カラーフィルタ層17上には、複数のマイクロレンズ19が設けられる。マイクロレンズ19は、いわゆるオンチップマイクロレンズであり、画素5を構成するフォトダイオード6に対応して、画素5毎に形成される。したがって、複数のマイクロレンズ19は、画素5と同様に例えば平面的に行列状に配置される。マイクロレンズ19は、外部からの入射光を、対応する画素5のフォトダイオード6に集光する。マイクロレンズ19は、例えば、SiN(窒化シリコン)等の無機材料により構成される。
【0036】
以上のように、本実施形態の固体撮像装置1は、半導体基板2に対して、配線層13が設けられる表面2a側と反対側である裏面2b側に、カラーフィルタ18およびマイクロレンズ19が設けられる裏面照射型の構造を有する。つまり、固体撮像装置1においては、配線層13とカラーフィルタ層17とは、半導体基板2に対して互いに異なる板面側に設けられており、半導体基板2に対して光が入射する裏面2b側と反対側の表面2a側に、配線層13が設けられる。
【0037】
裏面照射型の固体撮像装置1においては、マイクロレンズ19側から入射する光は、カラーフィルタ層17を透過した後、配線層13を通過することなく、画素5のフォトダイオード6により受光される。このため、固体撮像装置1においては、マイクロレンズ19側から入射する光は、配線層13によって遮られることなく、画素5のフォトダイオード6により受光されることから、いわゆる表面照射型の構造に対して、フォトダイオード6の実質的な受光面積の確保が容易であり、比較的高い感度が得られる。また、配線層13が半導体基板2に対して光が入射する側(裏面2b側)と反対側である表面2a側に設けられることから、配線層13を構成する配線15のレイアウトについて高い自由度を得ることができる。
【0038】
以上のような構成を備える本実施形態の固体撮像装置1においては、半導体基板2および配線層13により、センサ基板21が構成される。そして、センサ基板21の表面側、つまり配線層13の半導体基板2側と反対側(図1において下側)に、支持基板22が設けられる。支持基板22には、センサ基板21に形成される固体撮像素子を制御する論理回路等が形成される。センサ基板21と支持基板22とは、上記のとおり互いに貼り合わされることで、被測定基板20を構成する。
【0039】
センサ基板21と支持基板22とは、接着剤を用いた手法やプラズマを用いた手法等によって貼り合わされる。接着剤を用いた手法の場合、例えば、接着剤として熱硬化性樹脂が用いられ、センサ基板21と支持基板22とが接着剤を介して重ねられた状態で加熱ないし加圧されることで、接着剤が硬化し、センサ基板21と支持基板22とが互いに接着される。このように接着剤を用いた手法によってセンサ基板21と支持基板22とが貼り合わされる場合、センサ基板21と支持基板22との間には、接着剤によって形成される接着層が存在する。
【0040】
また、プラズマを用いた手法の場合、例えば、センサ基板21および支持基板22の各基板の接合面が、洗浄された後、プラズマ処理によって活性化される。そして、センサ基板21と支持基板22とが重ねられた状態で加圧等されることで、活性化された接合面同士が接合される。
【0041】
このように、被測定基板20については、センサ基板21と支持基板22とを貼り合わせる工程が行われる。なお、この工程で用いられるセンサ基板21と支持基板22とを貼り合わせる手法としては、特に限定されずに適宜周知の手法が採用される。
【0042】
センサ基板21と支持基板22とを貼り合わせる工程が行われた後は、固体撮像装置1において裏面側からの入射光を得るために、センサ基板21を支持基板22側とは反対側、つまり裏面側から薄くする薄膜化の工程が行われる。この薄膜化の工程では、研磨やエッチング等によって、センサ基板21が例えば3ミクロン程度の薄さまで薄膜化される。センサ基板21は、薄膜化されることで、シリコン活性層を裏面側の面部に臨ませる。
【0043】
[基板の歪み測定装置の構成]
次に、本実施形態の基板の歪み測定装置(以下単に「測定装置」という。)の構成について説明する。図2に示すように、本実施形態の測定装置30は、上述したようにセンサ基板21と支持基板22とが貼り合わされることで得られる被測定基板20における基板の歪みを測定する。
【0044】
測定装置30による被測定基板20についての歪みの測定は、固体撮像装置1の製造過程において、上述したように半導体基板2の裏面側に設けられるカラーフィルタ18およびマイクロレンズ19を形成する工程の前の段階で行われる。具体的には、本実施形態では、測定装置30による被測定基板20の歪みの測定は、被測定基板20を形成するためにセンサ基板21と支持基板22とを貼り合わせる工程の後、被測定基板20の薄膜化の工程の前に行われる。
【0045】
図2に示すように、測定装置30は、被測定基板20を保持する基板保持部であるチャック31と、被測定基板20に赤外線(IR光:Infrared light)を照射する光源部であるIR光源32と、観察部である顕微鏡33と、測定装置30を制御する制御部34とを備える。
【0046】
チャック31は、被測定基板20を保持する保持面35を有する。チャック31は、保持面35に、被測定基板20に設けられた位置ズレ測定用のマーク(以下「位置ズレ測定マーク」という。)40の比較対象となる基準マーク50を有する。
【0047】
チャック31は、保持面35が上側を向くように設けられ、保持面35上に被測定基板20を保持する。チャック31の保持面35は、被測定基板20を載せた状態で、被測定基板20の板面が略水平方向となるように、被測定基板20を保持する。
【0048】
被測定基板20は、支持基板22が下側となるように、つまり支持基板22のセンサ基板21に対する貼り合わせ側の面と反対側の面が保持面35に対向するように保持される。したがって、被測定基板20は、保持面35上で、カラーフィルタ18およびマイクロレンズ19が形成される側が上側となる状態で保持される。
【0049】
本実施形態では、被測定基板20に設けられる位置ズレ測定マーク40は、被測定基板20において、センサ基板21の支持基板22に対する貼り合わせ側の面部に設けられる。この被測定基板20の位置ズレ測定マーク40の比較対象として、チャック31の保持面35に、基準マーク50が設けられる。基準マーク50は、チャック31において、保持面35を構成するチャック31の表層部分に設けられる。なお、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50については後述する。
【0050】
IR光源32は、チャック31により保持された被測定基板20に対して、被測定基板20を透過する光を照射する。つまり、IR光源32は、チャック31に保持された被測定基板20に対して被測定基板20を透過する透過光を照射する光学系を構成する。本実施形態では、IR光源32は、被測定基板20を透過する光として、上記のとおり赤外線を照射する。
【0051】
本実施形態のように、被測定基板20を構成するセンサ基板21および支持基板22がシリコン基板である場合、高い透過率を得る観点からは、IR光源32から照射される赤外線としては、波長が1100nmから1600nm程度の近赤外線が望ましい。ただし、被測定基板20に照射される光としては、赤外線に限定されず、被測定基板20を透過する光であればよい。つまり、被測定基板20に照射される光としては、被測定基板20を構成する材質等に応じて、被測定基板20を透過する光が適宜用いられる。したがって、例えば、被測定基板20が石英基板である場合も、石英基板は赤外線を透過させることから、被測定基板20を透過する光として赤外線を採用することができる。
【0052】
本実施形態では、図2に示すように、IR光源32は、落射照明により、被測定基板20に対して赤外線を照射する。IR光源32は、赤外線の照射方向がチャック31の保持面35に対向するように、チャック31の上方に設けられる。IR光源32による赤外線の照射方向は、被測定基板20の板面に対して垂直な方向である。つまり、IR光源32は、保持面35上において水平に支持される被測定基板20に対して、上方から鉛直方向下向きに赤外線を照射する。
【0053】
顕微鏡33は、IR光源32により赤外線が被測定基板20に照射されることで得られる位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との重なりを観察する。顕微鏡33は、IR光源32から保持面35上の被測定基板20に照射された赤外線の反射光を受光することで、位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との重なりの状態を観察する。
【0054】
本実施形態の測定装置30においては、チャック31に保持された被測定基板20の全体を顕微鏡33によって観察するため、チャック31および顕微鏡33は、少なくともチャック31に保持された被測定基板20の板面に沿う2次元方向(XY方向)に、相対的に移動可能に設けられる。例えば、チャック31が移動可能に設けられる場合は、チャック31を2次元方向に移動させるステージ機構等の移動機構に対して、チャック31が設けられる。
【0055】
IR光源32から照射される赤外線は、被測定基板20を透過する。このため、顕微鏡33の観察範囲内において、チャック31の基準マーク50に重なった状態の位置ズレ測定マーク40が含まれる場合、顕微鏡33により、被測定基板20を透過した赤外線の反射光から、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50が観察される。つまり、IR光源32から照射された赤外線は、被測定基板20を透過するとともに保持面35の基準マーク50により反射され、顕微鏡33により受光されることで、顕微鏡33に位置ズレ測定マーク40および基準マーク50を観察させる。
【0056】
したがって、チャック31の保持面35は、赤外線を吸収する材料により構成されることが望ましい。保持面35を構成する材料としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム、Al2O3)や炭化ケイ素(SiC)等のセラミック材料が用いられる。
【0057】
顕微鏡33による観察画面は、顕微鏡画像として取得される。顕微鏡33は、顕微鏡画像を、2次元の画像データとして出力する機能を有する。顕微鏡33により取得された画像データは、制御部34に入力される。このように、測定装置30においては、顕微鏡33は、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50の観察画面を顕微鏡画像の画像データとして取得する画像取得部として機能する。
【0058】
制御部34は、顕微鏡33により取得された画像データを処理することで、基準マーク50に対する位置ズレ測定マーク40のズレ量(以下「マークズレ量」ともいう。)の算出と、算出したマークズレ量に基づいた被測定基板20の歪みの測定とを行う機能を有する。このため、制御部34は、マークズレ量の算出を行うズレ量算出部36と、被測定基板20の歪みの測定を行う歪み測定部37とを有する。
【0059】
ズレ量算出部36は、顕微鏡33により観察された位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との重なりから、マークズレ量を算出する。具体的には、ズレ量算出部36は、顕微鏡33により取得された画像データについて、2次元の座標を用い、マークズレ量を、2次元の座標値として算出する。
【0060】
歪み測定部37は、ズレ量算出部36により算出されたマークズレ量から、被測定基板20の歪みを測定する。具体的には、歪み測定部37は、被測定基板20におけるマークズレ量の分布等から、被測定基板20が歪むことによる被測定基板20の変形を測定する。すなわち、歪み測定部37は、被測定基板20の各部のマークズレ量の大きさから、マークズレ量がゼロの状態を基準として、被測定基板20の各部における変形の度合いを測定することで、被測定基板20の歪みを測定する。
【0061】
このようにズレ量算出部36および歪み測定部37を有する制御部34は、データ通信用のバス等により互いに接続されるCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)や入出力インターフェイス等の各種機能部分を有する。制御部34は、顕微鏡33に接続され、顕微鏡33により取得された画像データの入力を受けるための入力インターフェイスを有する。
【0062】
以上のような構成を備える本実施形態の測定装置30によれば、次のようにして被測定基板20の歪みの測定が行われる。まず、チャック31の保持面35上に、被測定基板20が保持された状態でセットされる。保持面35上に被測定基板20がセットされることで、チャック31側の基準マーク50と、被測定基板20側の位置ズレ測定マーク40とが平面視で重なった状態となる。
【0063】
チャック31にセットされた被測定基板20に対して、IR光源32により、落射照明にて赤外線が照射される。被測定基板20に赤外線が照射された状態で、顕微鏡33により、位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との重なりが観察され、その重なりの状態を捉えた画像データが得られる。
【0064】
顕微鏡33により取得された画像データは、制御部34のズレ量算出部36および歪み測定部37の各部によって処理される。すなわち、顕微鏡33により取得された画像データから、ズレ量算出部36によってマークズレ量が算出され、算出されたマークズレ量に基づいて、歪み測定部37によって被測定基板20の歪みが測定される。以上のようにして、被測定基板20の歪みの測定が行われる。
【0065】
以上のような本実施形態の測定装置30によれば、被測定基板20におけるチップ面積の確保を容易に行うことができ、また、高価な計測機器を用いることなく、高精度かつ簡便に、基板の歪みを測定することができる。以下、本実施形態の測定装置30について、より詳細に説明する
【0066】
(チャックの構成)
まず、本実施形態の測定装置30が備えるチャック31の構成について説明する。
【0067】
図3に、チャック31の構造を示す。図3(a)は、チャック31の平面図であり、同図(b)は、同図(a)におけるA−A´位置の断面図である。図3に示すように、チャック31は、全体として略円板状に構成される。チャック31は、略円形状の被測定基板20に対応して円板状の外形を有する本体61を備える。円板状の本体61の一方の板面61a側に、保持面35が構成される。なお、本体61の板面61aは、水平面をなす。
【0068】
チャック31は、多数のピン62を有する。ピン62は、被測定基板20を支持する支持突起として機能する部分であり、本体61の一方の板面61aにおいて突出するように設けられる円柱状の突起部である。多数のピン62は、本体61の板面61aにおいて全面的に分布するように設けられる。
【0069】
ピン62の上面である突出側の端面62aは、他のピン62の端面62aとの関係において同一の水平面上に位置する。つまり、チャック31が有する多数のピン62は、同じ高さ(板面61aからの突出寸法)を有し、各ピン62の端面62aは、平面として形成され、共通の水平面(図3(b)、仮想線62b参照)の一部をなす。
【0070】
そして、多数のピン62の端面62aにより、保持面35上に保持される被測定基板20が支持される。このように、本実施形態では、チャック31が有する本体61の一方の板面61a上に設けられる多数のピン62により、保持面35が構成される。ピン62は、例えば円柱状の外形における直径が2mm程度の大きさに設けられる。また、多数のピン62は、隣り合うピン62との間の間隔(ピッチ)が例えば5mm程度となるように設けられる。
【0071】
チャック31は、周壁部63を有する。周壁部63は、本体61の一方の板面61aにおいて、円形状の本体61の全周に沿って円環状に設けられる。周壁部63は、ピン62と同じ高さを有し、周壁部63の上面である端面63aは、平面として形成され、ピン62の端面62aとともに共通の水平面(仮想線62b参照)の一部をなす。
【0072】
チャック31が有する本体61、ピン62、および周壁部63を構成する材料としては、例えば、赤外線を反射させる材料であるアルミナ(酸化アルミニウム、Al2O3)や炭化ケイ素(SiC)等のセラミック材料が用いられる。
【0073】
チャック31は、吸引力を用いて被測定基板20を保持する。このため、チャック31は、吸引孔64を有する。吸引孔64は、本体61の中心位置において、板面61aに対して垂直方向に本体61を貫通するように設けられる。本実施形態では、チャック31は、吸引孔64を、本体61の中心位置の1箇所に有する。
【0074】
被測定基板20が保持面35上に載置された状態、つまり被測定基板20がピン62の端面62aおよび周壁部63の端面63a上に支持された状態で、吸引孔64から、図示せぬ吸引部によって真空排気が行われることで、被測定基板20が保持面35に吸着されて固定される。ここで、被測定基板20を保持面35に吸着させる吸引力は、吸引孔64からの真空排気によって、本体61の板面61aと被測定基板20の底面(ピン62に支持される面)との間において周壁部63に囲まれた空間が負圧となることにより得られる。
【0075】
チャック31は、保持面35上において被測定基板20を持ち上げるためのリフトピン65を有する。リフトピン65は、上下動作するように設けられ、板面61aに対して垂直方向に本体61を貫通するように設けられる貫通孔66によって、本体61を貫通する。
【0076】
リフトピン65は、上昇動作によって貫通孔66から板面61a上に突出することで、保持面35上の被測定基板20に当接し、被測定基板20を持ち上げる。本実施形態では、図3(a)に示すように、リフトピン65は、本体61の半径方向の中間位置において本体61の周方向に略等角度間隔で3箇所に設けられている。被測定基板20は、チャック31により保持された状態で受ける加工や処理等を終えると、リフトピン65によって持ち上げられ、次の工程が行われる場所へと搬送される。
【0077】
以上のような構成を備えるチャック31により、被測定基板20が保持される。なお、チャック31の構成は、上述したような本実施形態の構成に限定されない。例えば、本実施形態では被測定基板20の形状に対応して円板状である本体61の形状は、被測定基板20の形状等に応じて適宜設定される。また、ピン62の形状や大きさや数、あるいは吸引孔64やリフトピン65の形状や大きさや数等についても特に限定されない。本実施形態のチャック31のように複数のピン62による保持構造は、カラーフィルタ18を形成する際等のリソグラフィの工程で用いられる露光機において基板を保持するチャック構造として多用される。
【0078】
また、本実施形態のチャック31は、保持面35に多数のピン62を有し、被測定基板20に対して部分的に接触した状態で被測定基板20を保持する構成であるが、被測定基板20を保持するチャックとしては、被測定基板20に対して全面的に接触した状態で被測定基板20を保持する構成のものであってもよい。かかる構成の場合、例えば、図3に示す構成において、本体61上のピン62および周壁部63が省略され、本体61の板面61aが被測定基板20の支持面となり、吸引孔64からの真空排気によって被測定基板20が板面61aに全面的に接触した状態で吸着されて保持される。
【0079】
チャック31の構造に関し、基準マーク50を配置する面積を確保する観点からは、被測定基板20に対して全面的に接触した状態で被測定基板20を保持するタイプの構造が望ましい。すなわち、基準マーク50は、被測定基板20に接触する支持面に設けられることから、被測定基板20の支持面が被測定基板20に全面的に接触する構造の方が、多数のピン62によって被測定基板20に部分的に接触する構造よりも、基準マーク50の配置面積を広く確保することができる。
【0080】
一方で、チャック31と被測定基板20との間の異物の噛み込みを減らす観点や、被測定基板20のチャック構造を、カラーフィルタ18を形成する工程等で用いられる露光機のチャック構造になるべく似せておくという観点等からは、図3に示すように多数のピン62によって被測定基板20に対して部分的に接触した状態で被測定基板20を保持するタイプの構造が望ましい。測定装置30のチャック構造を、測定装置30による被測定基板20の歪みの測定が行われる工程以降の露光工程で用いられる露光機のチャック構造に似せておくことにより、被測定基板20を保持するチャック構造が変わることによる、被測定基板20の歪みの変化を低減することができる。
【0081】
(位置ズレ測定マークおよび基準マークについて)
本実施形態の測定装置30による被測定基板20の歪みの測定に用いられる位置ズレ測定マーク40および基準マーク50について、図4、図5、および図6を用いて説明する。
【0082】
まず、位置ズレ測定マーク40について説明する。位置ズレ測定マーク40は、上述したように被測定基板20においてセンサ基板21の支持基板22に対する貼り合わせ側の面部に設けられる(図2参照)。図4に示すように、位置ズレ測定マーク40は、被測定基板20の平面視において、格子点状に配列される。
【0083】
図4に示すように、被測定基板20においては、被測定基板20が切断され分離されることで各固体撮像装置1を構成する複数のチップ23と、被測定基板20を複数のチップに分離するためのダイシングラインが存在するダイシング領域(スクライブ領域)24とが存在する。ダイシングの工程において、ダイシング領域に存在するダイシングラインに沿って被測定基板20が切断されることで、被測定基板20が複数の半導体チップに分離され、固体撮像装置1が得られる。
【0084】
複数のチップ23は、被測定基板20において、縦方向・横方向に沿って各方向について等間隔に規則的に配列される。複数のチップ23の配列について、横方向(図4における左右方向)を第1の方向とした場合、縦方向(図4における上下方向)は、第1の方向に直交する第2の方向ということができる。図4に示すように、複数のチップ23は、被測定基板20において平面的に略全範囲にわたって設けられる。
【0085】
ダイシング領域24は、上述のような複数のチップ23の配列に対応して、格子状に形成される。すなわち、ダイシング領域24は、縦方向に互いに隣り合うチップ23同士の間隔の幅を有する横方向のライン部分と、横方向に互いに隣り合うチップ23同士の間隔の幅を有する縦方向のライン部分とにより、格子状に形成される。
【0086】
このように縦方向・横方向に沿って規則的に配置されるチップ23群と、格子状に形成されるダイシング領域24とを有する被測定基板20において、位置ズレ測定マーク40は、ダイシング領域24における格子点の部分に設けられる。なお、位置ズレ測定マーク40は、図4に示すようにダイシング領域24における格子点の部分に設けられるのが好適であるが、必ずしもこの格子点の部分に設けられる必要はない。位置ズレ測定マーク40は、ダイシング領域24に複数箇所、望ましくは4点以上設けられていればよい。
【0087】
また、位置ズレ測定マーク40の配置に関しては、被測定基板20において全面的に設けられることが望ましい。つまり、位置ズレ測定マーク40は、被測定基板20において平面的に略全範囲にわたって設けられるチップ23との関係において均一的に配置されることが望ましい。
【0088】
位置ズレ測定マーク40を被測定基板20において全面的に配置することで、被測定基板20の歪みを全体的に測定することができる。また、位置ズレ測定マーク40を被測定基板20において全面的に配置することで、チャック31側の基準マーク50との関係において被測定基板20の配置を変える必要がなくなり、作業性の向上を図ることができる。
【0089】
図4および図6に示すように、位置ズレ測定マーク40は、一方の対向する辺と他方の対向する辺とがそれぞれチップ23の配列を規定する縦方向または横方向に沿うような正方形状の外形を有する。詳細には、図6に示すように、本実施形態の位置ズレ測定マーク40は、内側が中抜きされた枠状の形状を有する。
【0090】
位置ズレ測定マーク40は、例えば、シリコン基板であるセンサ基板21に金属パターンが形成されることにより設けられる。図6に示すように枠状の形状を有する位置ズレ測定マーク40は、所定の幅を有する金属パターンが枠形状に沿って設けられることで形成される。センサ基板21に金属パターンを形成するための手法としては、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)やエッチング等の公知の手法が用いられる。
【0091】
位置ズレ測定マーク40は、上述したように被測定基板20を透過した赤外線の反射光から、顕微鏡33によって観察される。このため、位置ズレ測定マーク40は、赤外線の反射光から顕微鏡33によって観察されるように、他の部分(シリコン部分)とは異なる反射率を有する部分として設けられる。
【0092】
例えば、上述したように位置ズレ測定マーク40がシリコン基板に形成される金属パターン部分である場合、位置ズレ測定マーク40の金属部分は他の部分(シリコン部分)より大きな反射率を有する部分となる。つまり、この場合、位置ズレ測定マーク40の部分からは赤外線の反射光が戻ってくるので顕微鏡33によって位置ズレ測定マーク40が観察される。
【0093】
位置ズレ測定マーク40としては、被測定基板20における他の部分(シリコン部分)に対する反射率の差により、赤外線の反射光から顕微鏡33によって観察されるものであればよい。したがって、位置ズレ測定マーク40は、シリコン基板にシリコンとは反射率が異なる材料が埋め込まれることで構成されている。ここで、位置ズレ測定マーク40を構成する、シリコンとは反射率が異なる材料としては、例えばアルミニウム、銅、タングステン等の金属が挙げられる。ただし、位置ズレ測定マーク40を形成する材料は、金属材料に限定されず、例えば酸化膜等であってもよい。
【0094】
本実施形態のように位置ズレ測定マーク40がセンサ基板21の一方の板面部に設けられる場合、センサ基板21が支持基板22と貼り合わされる前に単体で製造プロセスを経ている間に、所定のタイミングで、センサ基板21に位置ズレ測定マーク40が形成される。そして、位置ズレ測定マーク40が形成されたセンサ基板21が、位置ズレ測定マーク40が形成された面側から、支持基板22と貼り合わされ、被測定基板20が構成される。
【0095】
位置ズレ測定マーク40は、例えば、金属パターン部分の線幅が0.1μm〜数マイクロメートルとなるように形成される。この点、位置ズレ測定マーク40は、IR光源32から照射される赤外線が用いられて検出されることから、位置ズレ測定マーク40の線幅については、1μm以上であることが望ましい。また、同じく赤外線による検出の観点から、位置ズレ測定マーク40の外形の大きさについては、5〜100μmの範囲であることが望ましい。
【0096】
図4において、センサ基板21に重ねて記載された矩形群を構成する各矩形1Sは、カラーフィルタ18を形成する際等に行われるフォトリソグラフィの工程での露光機による1回のショットの露光フィールドを示す。図4において、矢印B1で示す拡大部分は、1ショットの露光フィールドの部分拡大図である。
【0097】
図4に示すように、本実施形態では、センサ基板21の周縁部分の露光フィールドを除き、1ショットの露光フィールドに、4×4の16個のチップ23が存在する。また、本実施形態では、センサ基板21において、矩形1Sにより示される露光フィールドは108個存在し、センサ基板21の露光は108ショットで完了する。
【0098】
次に、基準マーク50について説明する。基準マーク50は、上述したようにチャック31の保持面35を構成するチャック31の表層部分に設けられる(図2参照)。
【0099】
本実施形態では、チャック31において被測定基板20を保持する保持面35は、多数のピン62により構成され、ピン62の端面62aにより、被測定基板20の支持面が構成される(図3参照)。そこで、図5に示すように、基準マーク50は、チャック31において各ピン62の端面62aに臨むように設けられる。
【0100】
基準マーク50は、ピン62の端面62aにおいて、格子点状に配置されて設けられる(図6参照)。つまり、複数の基準マーク50は、ピン62の端面62aにおいて、縦方向・横方向に沿って各方向について等間隔に規則的に配列される。基準マーク50の配列について、横方向(図6における左右方向)を第1の方向とした場合、縦方向(図6における上下方向)は、第1の方向に直交する第2の方向ということができる。本実施形態の説明では、基準マーク50の配列を規定する横方向(第1の方向)をX方向とし、同配列を規定する縦方向(第2の方向)をY方向とする(図6参照)。
【0101】
図6に示すように、基準マーク50は、一方の対向する辺と他方の対向する辺とがそれぞれ基準マーク50の配列を規定するX方向またはY方向に沿うような正方形状を有する。本実施形態では、複数の基準マーク50は、同じ形状、同じ寸法を有し、X方向およびY方向について等間隔に配置される。
【0102】
図6に示すように、基準マーク50は、例えば、1辺の長さd1が0.1μm〜数マイクロメートルとなるように形成され、隣り合う基準マーク50との間の間隔(ピッチ)d2が0.1μm〜数マイクロメートルとなるように設けられる。例えば、上述したように直径2mmのピン62が、5mm程度のピッチで配置される場合、基準マーク50は、1辺の長さd1が10μm、ピッチd2が20μmに設定される。
【0103】
基準マーク50は、位置ズレ測定マーク40と同様にIR光源32から照射される赤外線が用いられて検出されることから、基準マーク50のサイズについては、1辺の長さd1が1μm以上であることが望ましく、より望ましくは1辺の長さd1が5〜100μmの範囲で設定される。また、同じく赤外線による検出の観点から、基準マーク50のピッチd2については、5〜100μmの範囲であることが望ましい。
【0104】
また、基準マーク50の配置に関しては、チャック31の保持面35において全面的に設けられることが望ましい。つまり、基準マーク50は、チャック31が有する全てのピン62の各端面62aにおいて全面的に設けられることが望ましい。
【0105】
基準マーク50を保持面35において全面的に配置することで、被測定基板20のサイズに合わせてチャック31の基準マーク50の配置を変える必要がなくなり、チャック31の汎用性を高めることができる。このような観点からは、基準マーク50は、チャック31が有する周壁部63の端面63aにおいても、ピン62の端面62aと同様に設けられてもよい。
【0106】
図5に示すように、基準マーク50は、ピン62の表面近傍、つまり端面62aの近傍に、ピン62を構成する材料とは異なる材料(符号51参照)が埋め込まれることにより構成される。基準マーク50を構成する材料(以下「マーク材料」という。)51は、ピン62に設けられる穴部52に埋め込まれる。
【0107】
穴部52は、ピン62において、端面62aに開口するように設けられる。穴部52の開口形状が、基準マーク50の形状となる。したがって、穴部52は、基準マーク50の配置に対応して設けられるとともに、端面62aに対する開口形状が基準マーク50の形状に対応して正方形状となるように形成される。穴部52に埋め込まれたマーク材料51は、端面62aと同一平面を形成するように、端面62aとともに平坦化される。このようにして、基準マーク50は、ピン62の端面62aに臨むように設けられる。
【0108】
マーク材料51としては、例えば、銅やタングステン等の金属材料が好適に用いられる。銅やタングステン等の金属材料は、赤外線について比較的高い反射率を有する。これに対し、チャック31の保持面35を構成する材料として例示したアルミナや炭化ケイ素等のセラミック材料は、赤外線を吸収する。また、位置ズレ測定マーク40が設けられる被測定基板20を構成する材料であるシリコンや石英は、赤外線を透過させる。
【0109】
このように、赤外線を吸収あるいは透過させる材料により構成されるチャック31の保持面35や被測定基板20に対して、基準マーク50のマーク材料51として赤外線を比較的高い反射率によって反射させる金属材料が用いられる。これにより、赤外線による基準マーク50の観察において、基準マーク50とそれ以外の部分(保持面35や被測定基板20)との間で高いコントラストを得ることができ、基準マーク50の認識を容易に行うことができる。
【0110】
また、基準マーク50は、位置ズレ測定マーク40に対して、赤外線に対する反射率が異なるように設けられることが好ましい。基準マーク50と位置ズレ測定マーク40との赤外線に対する反射率が互いに異なることで、基準マーク50と位置ズレ測定マーク40とが重なった状態において、両マークの境界が明確となり、各マークの識別が容易となる。
【0111】
基準マーク50は、例えばフォトリソグラフィの技術が用いられて作成される。フォトリソグラフィの技術が用いられる場合、例えば次のような工程が行われることで、基準マーク50が作成される。ピン62の端面62aにフォトレジストを塗布する工程、塗布されたフォトレジストをプリベークする工程、フォトマスクを用いて露光を行うことでレジストパターンを形成する工程、溶媒を用いた現象を行う工程、フォトレジストをポストベークする工程、端面62a上のフォトレジスト等をエッチング等によって除去する工程である。
【0112】
これらの工程が行われることで、ピン62において、穴部52が形成される。そして、この穴部52に、銅やタングステン等の金属材料であるマーク材料51が埋め込まれることで、基準マーク50が形成される。
【0113】
このような手法によって、ピン62の端面62aにおいて正方形状として表れる基準マーク50が格子点状に配置されるように作成される。基準マーク50は、マークズレ量の算出に際して位置ズレ測定マーク40に対する基準となるため、基準マーク50の配置が理想格子となるように設けられる。
【0114】
基準マーク50の配置が理想格子とみなせるような高精度な配置を実現するためには、基準マーク50を形成するための工程で、公知の二光波干渉露光や多重露光などといった手法を採用することが望ましい。なお、二光波干渉露光としては、例えば、特開平11−26344号公報に記載されている手法を用いることができる。これらの高い位置精度を持つ露光方法を用いて、ピン62上に基準マーク50を作成するためのレジストパターンを形成し、穴部52を形成してから、その後、マーク材料51を埋め込む工程等を行うことで、基準マーク50の配置を高い精度で理想格子に近付けることができる。
【0115】
また、図5に示すように、基準マーク50が形成されるチャック31のピン62においては、基準マーク50が臨む端面62a上に、金属等によるコンタミネーションを防ぐ機能を有する被覆膜53が設けられる。被覆膜53は、赤外線による基準マーク50検出の妨げとならないように、赤外線を透過させる。
【0116】
したがって、被覆膜53を構成する材料としては、赤外線を透過し、かつ、金属によるコンタミネーションを防ぐことが可能な材料が用いられる。被覆膜53を構成する材料としては、例えば、PMMA(Poly Methyl Methacrylate:ポリメタクリル酸メチル樹脂)やフッ素含有ポリイミドやポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK(登録商標))等のような赤外線に対して透明な樹脂材料、あるいは、シリコンや石英といった無機材料等が挙げられる。被覆膜53は、半導体の製造過程で用いられる公知の成膜方法によってピン62上に形成される。
【0117】
このように、基準マーク50が形成されるピン62上に被覆膜53が設けられることにより、金属等によるコンタミネーションを防止することができる。具体的には次のとおりである。ピン62上に被覆膜53が無い場合、ピン62に支持された被測定基板20は、基準マーク50を構成するマーク材料51が臨む端面62aに直接的に接触することになる。この場合、マーク材料51が、ピン62に支持された被測定基板20に接触する。したがって、マーク材料51が金属材料である場合、マーク材料51としての金属材料が被測定基板20に接触することになる。
【0118】
このように金属材料が被測定基板20に接触すると、マーク材料51において生じた金属イオンが被測定基板20の内部に侵入することが考えられる。被測定基板20内に侵入した金属イオンは、例えば被測定基板20において形成されるMOSトランジスタ7等に欠陥を生じさせる原因となる可能性がある。
【0119】
そこで、ピン62上に被覆膜53を設けることにより、ピン62上に支持される被測定基板20は、端面62aに臨むマーク材料51に接触することなく、被覆膜53に接触した状態で支持される。このため、コンタミネーションとしての被測定基板20への金属イオンの侵入を防止することができる。
【0120】
なお、上述したように被測定基板20を保持するチャックが被測定基板20に対して全面的に接触した状態で被測定基板20を保持する構造である場合においても、保持面35が多数のピン62を有する構造の場合と同様にして、基準マーク50が形成される。すなわち、多数のピン62を有する構造の場合においては、基準マーク50が形成される面が多数の端面62aであるのに対し、チャックが被測定基板20に対して全面的に接触する構造の場合、基準マーク50が形成される面が例えば本体61の板面61aのような単一の面となる。
【0121】
また、チャックが被測定基板20に対して全面的に接触する構造においても、上述した被覆膜53と同様に、金属によるコンタミネーションを防ぐための被覆膜を設けることができる。この場合、被測定基板20が接触することになる単一の支持面(例えば本体61の板面61a)において、少なくとも基準マーク50が配置される部分を覆うように、PMMA等を材料とする被覆膜が形成される。
【0122】
以上のようにして、被測定基板20側には、位置ズレ測定マーク40が設けられ、チャック31側には、基準マーク50が設けられる。図6には、位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との相対的な大きさの関係の一例が表されている。
【0123】
本実施形態では、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50は、いずれも格子点状に配列される(図4、図6参照)。すなわち、矩形枠状のマークである各位置ズレ測定マーク40は、多数の位置ズレ測定マーク40からなる要素群を構成する各要素であり、正方形状のマークである各基準マーク50は、多数の基準マーク50からなる要素群を構成する各要素である。
【0124】
そして、図6に示すように、位置ズレ測定マーク40は、基準マーク50を複数含む大きさを有する。つまり、図6に示すような平面視において、位置ズレ測定マーク40と基準マーク50とが重なった状態で、位置ズレ測定マーク40の外形の内部に、複数の基準マーク50が存在する。
【0125】
図6は、顕微鏡33によって観察される視野における位置ズレ測定マーク40および基準マーク50の配置の一例を示している。図6に示す例では、顕微鏡33の視野内に、5×5の25個の基準マーク50が存在し、これらの基準マーク50に対して、1個の位置ズレ測定マーク40が存在している。
【0126】
このような本実施形態の位置ズレ測定マーク40および基準マーク50によれば、測定装置30による被測定基板20の歪みの測定を好適に実施することができる。具体的には次のとおりである。基準マーク50は、上述したように位置ズレ測定マーク40に対する基準となるため、基準マーク50の配置が理想格子に近付くように設けられ、その配置に高い精度が要求される。このため、基準マーク50については、大きさが位置ズレ測定マーク40よりも小さく、単位面積あたりに存在する数が位置ズレ測定マーク40よりも多い方が、マークの配置の精度を確保する面で有利である。基準マーク50の配置の精度が高くなることにより、被測定基板20の歪みをより高精度に測定することができる可能となる。
【0127】
ただし、位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との相対的な大きさは、特に限定されず、基準マーク50の方が大きかったり、両マークが互いに同程度の大きさであったりしてもよい。また、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50の配置密度についても、特に限定されず、位置ズレ測定マーク40の配置密度の方が大きかったり、両マークが互いに同程度の配置密度であったりしてもよい。
【0128】
また、配置について高い精度が要求される基準マーク50については、理想格子に近い配置状態が維持されることが望ましい。このため、基準マーク50が設けられるチャック31を構成する材料に関しては、基準マーク50の位置を変化させる熱膨張を考慮した材料の選択が行われることが望ましい。
【0129】
チャック31を構成する材料としては、上述したようなアルミナや炭化ケイ素等のセラミック材料が一般的である。ただし、チャック31の熱膨張による基準マーク50の位置ズレを考慮した場合、基準マーク50の配置状態を維持する観点からは、チャック31の材料としては、測定装置30の設置温度域でなるべく熱膨張係数が小さい材料を採用することが望ましい。つまり、温度変化によってチャック31に熱膨張が生じると、基準マーク50の位置がずれてしまうことから、チャック31を熱膨張が小さい材料で構成することにより、チャック31の熱膨張による基準マーク50の位置ズレを抑制することができる。
【0130】
測定装置30の設置温度域での熱膨張係数が小さい材料としては、例えば、SCHOTT社のZERODUR(登録商標)として知られている低膨張ガラスセラミック等が適している。ここに例示した材料によれば、半導体の製造環境としての温度制御下における温度変化であれば、チャック31の熱膨張を極めてゼロに近くすることが可能となる。
【0131】
また、チャック31の熱膨張による基準マーク50の位置ズレを抑制するためには、測定装置30に高精度な温調機構を設けてもよい。この場合、測定装置30に設けた温調機構によって、測定装置30の温度が所定の温度に維持され、チャック31の熱膨張が抑制され、基準マーク50の位置ズレが抑制される。
【0132】
以上説明した本実施形態においては、センサ基板21と支持基板22とが貼り合わされた被測定基板20において、位置ズレ測定マーク40は、センサ基板21の支持基板22と対向する側の面に設けられる。具体的には、センサ基板21において、位置ズレ測定マーク40は、半導体基板2の表面側に設けられる配線層13の表面に設けられる(図1参照)。そして、被測定基板20の歪みの測定に際しては、被測定基板20を保持するチャック31は、支持基板22側が保持面35に対向するように、被測定基板20を保持する。
【0133】
このような被測定基板20における位置ズレ測定マーク40の配置、およびチャック31による被測定基板20の支持によれば、次のような効果が得られる。被測定基板20においては、センサ基板21に固体撮像素子(イメージ・センサ)が形成されることから、センサ基板21の部分の歪みが重要である。このため、位置ズレ測定マーク40をセンサ基板21に設けることで、被測定基板20においてセンサ基板21の部分の歪みを重点的に測定することができる。これにより、被測定基板20の歪みとして、固体撮像装置1の構造に与える影響が比較的高い部分の歪みの測定を行うことができる。
【0134】
また、センサ基板21に位置ズレ測定マーク40を設ける構成によれば、センサ基板21単体での製造プロセスにおいて位置ズレ測定マーク40を形成することができ、位置ズレ測定マーク40を比較的容易に形成することができる。
【0135】
ただし、被測定基板20において位置ズレ測定マーク40が設けられる部分は、本実施形態に限定されるものではない。位置ズレ測定マーク40は、例えば、センサ基板21の表層部分ではなく内層部分に設けられたり、支持基板22側に設けられたりしてもよい。支持基板22側に位置ズレ測定マーク40を設けた場合は、被測定基板20において支持基板22の部分の歪みを重点的に測定することができる。
【0136】
(変形例)
本実施形態に係る測定装置30の変形例について説明する。図7に示すように、この変形例の測定装置30Aは、チャック31A上に保持された被測定基板20に対して、赤外線をチャック31Aの下側から照射するIR光源32Aを備える。つまり、この変形例の測定装置30Aにおいては、図2に示すような落射照明の代わりに、被測定基板20を透過する赤外線を照射するIR光源32Aが、チャック31Aを透過させて被測定基板20に赤外線を照射する。
【0137】
このようにチャック31Aに対して被測定基板20を支持する側とは反対側(図7において下側)から赤外線を照射する構成においては、チャック31Aは、赤外線に対して透明な材料、つまり赤外線を透過させる材料により構成される。言い換えると、チャック31Aが赤外線に対して透明な材料により構成される場合、本変形例のように、赤外線をチャック31Aの下側から照射し、チャック31Aに赤外線を透過させる構成が採用される。具体的には、本変形例は、チャック31Aが石英やシリコン等の、赤外線を透過させる材料により構成される場合に採用される。
【0138】
この変形例の測定装置30Aにおいては、顕微鏡33は、IR光源32Aから照射されてチャック31Aおよび被測定基板20を透過した赤外線の透過光を受光することで、位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との重なりの状態を観察する。IR光源32Aから照射される赤外線は、チャック31Aおよび被測定基板20を透過する。
【0139】
このため、顕微鏡33の観察範囲内において、チャック31Aの基準マーク50に重なった状態の位置ズレ測定マーク40が含まれる場合、顕微鏡33により、チャック31Aおよび被測定基板20を透過した赤外線の透過光から、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50が観察される。つまり、IR光源32Aから照射された赤外線は、チャック31Aおよび被測定基板20を透過し、顕微鏡33により受光されることで、顕微鏡33に位置ズレ測定マーク40および基準マーク50を観察させる。以上のように、変形例の測定装置30Aは、チャック31Aを透過した透過光を観察する光学系を備える。
【0140】
[基板の歪み測定方法]
本実施形態に係る基板の歪み測定方法について、具体的な実施例(数値例)を挙げて説明する。本実施形態では、上述したような測定装置30(30A)が用いられて、被測定基板20の歪みの測定が行われる。なお、本実施例では、多数の基準マーク50は、所定の位置に設定される原点を中心としてピッチ20μmで配置されている(図6、ピッチd2参照)。
【0141】
図8に示すように、本実施例では、便宜上、被測定基板20に設けられる位置ズレ測定マーク40は、被測定基板20上において92箇所に設けられている。具体的には、被測定基板20上において、各ショットを符号S2で示す23ショットが配置され、各ショットの四隅に対応する位置に、位置ズレ測定マーク40が配置されている。
【0142】
したがって、被測定基板20上には、4(点)×23(ショット)=92(点)の位置ズレ測定マーク40が配置される。23個のショットは、被測定基板20において、位置ズレ測定マーク40の格子点状の配列における横方向(図8における左右方向)に7個のショットが並ぶ列Sa1を中心に、格子点状の配列における縦方向(図8における上下方向)の両側に、5個のショットが並ぶ列Sa2と、3個のショットが並ぶ列Sa3とが順に配置されたものである。
【0143】
このように、本実施例では、92個の位置ズレ測定マーク40を有する被測定基板20を準備する工程が行われる。具体的には、被測定基板20の準備に際しては、次のような工程が行われる。センサ基板21の製造プロセスにおいて、センサ基板21に92箇所の位置ズレ測定マーク40を形成する工程が行われる。次に、接着剤を用いた手法やプラズマを用いた手法等によって、位置ズレ測定マーク40が形成されたセンサ基板21と、支持基板22とを貼り合わせる工程が行われる。この被測定基板20の歪みの測定前において行われる基板同士の貼り合わせの工程では、後述するように、基板同士の接合は仮接合であることが望ましい。
【0144】
被測定基板20が準備された後、位置ズレ測定マーク40を有する被測定基板20を、位置ズレ測定マーク40の比較対象となる基準マーク50を有する保持面35に保持する工程が行われる。つまり、この工程では、保持面35を有するチャック31に対する被測定基板20の保持が行われる。具体的には、被測定基板20は、保持面35を構成するピン62および周壁部63上に載置された状態で、吸引孔64からの真空排気によって得られる吸引力により、保持面35に吸着されることで保持される(図3参照)。
【0145】
この被測定基板20をチャック31に保持する工程においては、格子点状に配置される位置ズレ測定マーク40の配列方向が、基準マーク50の配列を規定するX方向およびY方向に沿うように、被測定基板20のチャック31に対する位置合わせが行われる。つまり、被測定基板20は、位置ズレ測定マーク40の配列における横方向(図8における左右方向)および縦方向(図8における上下方向)が、それぞれ基準マーク50の配列におけるX方向およびY方向に対して略一致するように、チャック31の保持面35上に保持される。
【0146】
このようにして、位置ズレ測定マーク40を有する被測定基板20が、基準マーク50を有するチャック31に保持される。
【0147】
被測定基板20がチャック31に保持された状態で、マークズレ量(基準マーク50に対する位置ズレ測定マーク40のズレ量)の算出が行われる。すなわち、被測定基板20を保持する工程により保持面35に保持された被測定基板20に、赤外線を照射することで観察される位置ズレ測定マーク40と基準マーク50との重なりから、マークズレ量を算出する工程が行われる。
【0148】
本実施形態では、理想格子となるように設けられる基準マーク50の配列を規定するX方向とY方向による2次元座標が用いられ、マークズレ量が算出される。つまり、マークズレ量として、基準マーク50の位置に対する位置ズレ測定マーク40の位置のズレ量が、X方向およびY方向の座標値として算出される。
【0149】
具体的には、図6に示すように、マークズレ量の算出に際し、位置ズレ測定マーク40の比較対象となる基準マーク50としては、位置ズレ測定マーク40に最も近い基準マーク50(「最近接基準マーク50A」とする。)が採用される。ここで、基準マーク50の位置としては、正方形状の基準マーク50の中心位置C1が採用され、位置ズレ測定マーク40の位置としては、正方形状の外形を有する位置ズレ測定マーク40の中心位置C2が採用される。これらの各マークの中心位置C1、C2の座標は、例えば、各マークの四隅のエッジの座標値から求められる。
【0150】
したがって、図6に示す例では、位置ズレ測定マーク40の中心位置C2の座標が、最近接基準マーク50Aの中心位置C1の座標に対してどれくらいずれているかを示す座標値が、マークズレ量として算出される。なお、位置ズレ測定マーク40および基準マーク50の各マークの位置としては、マークの中心位置以外の位置が採用されてもよい。つまり、各マークの位置としては、位置ズレ測定マーク40の基準マーク50に対する2次元的なズレを把握することができる位置であれば特に限定されない。
【0151】
図9に示す表の「マーク座標(μm)」の列に、本実施例におけるマークNo「1」〜「92」までの92個の位置ズレ測定マーク40の位置を示すX方向およびY方向の座標値が記載されている。このマーク座標の値は、被測定基板20において中心位置に規定される所定の位置Cpを原点とする各位置ズレ測定マーク40のX座標、Y座標であり、被測定基板20の歪み等の影響が加味されてない基準となる値である。本実施例の場合、図9に示す表より、例えば、マークNo「1」のマーク座標(μm)は、(X、Y)=(−27500、−70050)である。
【0152】
図9に示す表の「格子ズレ量(μm)」の値は、位置ズレ測定マーク40のマーク座標の、最近接基準マーク50Aの位置に対するズレ量である。つまり、格子ズレ量は、位置ズレ測定マーク40のマーク座標について、上記のとおり基準マーク50の配置に対応する20μmピッチの格子点のうち最も近い格子点の位置(座標)に対するズレ量である。
【0153】
したがって、位置ズレ測定マーク40のマーク座標のX座標値およびY座標値のいずれもが20の倍数の場合、そのマーク座標の位置ズレ測定マーク40は、基準マーク50の配置に対応する20μmピッチの格子点上に位置することになる。
【0154】
基準マーク50の配置に対応する20μmピッチの格子点のうち、マークNo「1」の位置ズレ測定マーク40に最も近い格子点の座標は、(X、Y)=(−27500、−70060)となる。したがって、マーク座標が(X、Y)=(−27500、−70050)であるマークNo「1」の位置ズレ測定マーク40についての格子ズレ量は、(X、Y)=(0、−10)となる。なお、本実施例では、全ての位置ズレ測定マーク40が保持面35上の基準マーク50群と重なる場所にあるものとする。
【0155】
図9の表に示すように、本実施例では、マーク座標のX座標については、92個の位置ズレ測定マーク40いずれも下3桁の値が「(±)500」であるため、格子ズレ量のX座標値は、いずれも「0」となる。一方、マーク座標のY座標については、下2桁の値が「(−)50」の場合は、格子ズレ量のY座標値は「−10」となり、下2桁の値が「(+)50」の場合は、格子ズレ量のY座標値は「(+)10」となり、下2桁の値が「(−)05」の場合は、格子ズレ量のY座標値は「−5」となり、下2桁の値が「(−)95」の場合は、格子ズレ量のY座標値は「−15」となる。ここで、本実施例では、格子ズレ量に関し、マーク座標の座標値が負(−)の値のものについては、−方向にずれているとし、マーク座標の座標値が正(+)の値のものについては、+方向にずれているとしている。
【0156】
図9に示す表の「測定値(μm)」の値は、上述した格子ズレ量を含むマークズレ量である。つまり、この測定値の値は、被測定基板20の歪み等により生じたマークズレ量と、上述した格子ズレ量とが足し合わされた値である。したがって、正味のマークズレ量を得るためには、測定値から格子ズレ量を差し引く必要がある。
【0157】
そこで、図9に示す表において、「測定値(μm)」から「格子ズレ量(μm)」を引いた値が、「位置ズレ量(μm)」である。ここで、本実施例の場合、X座標値については、格子ズレ量がいずれも0であるため、測定値の値が、そのまま位置ズレ量の値となる。これに対し、Y座標値については、格子ズレ量が0ではないため、測定値の値から格子ズレ量の値を差し引いた値が、位置ズレ量となる。
【0158】
例えば、マークNo「1」の場合、X座標値については、測定値の「48.162」が、そのまま位置ズレ量の値となる。一方、Y座標値については、測定値の「−47.555」から「−10」を差し引いた値である「−37.555」が、位置ズレ量の値となる。
【0159】
本実施例において92個の位置ズレ測定マーク40についての位置ズレ量を図示したものが、図10である。図10において、破線は、理想格子を示し、実線は、算出された位置ズレ量を示す。破線で示す矩形状D1における四隅の位置が、位置ズレ量が0の位置に対応し、破線の矩形状D1からずれた位置にある実線で示す四角形状D2における四隅の位置が、位置ズレ量が加味された各位置ズレ測定マーク40の位置を示す。なお、図10においては、位置ズレ量の値を100倍し、各位置ズレ測定マーク40のズレを拡大して表示している。
【0160】
そして、マークズレ量を算出する工程により算出されたマークズレ量から、被測定基板20の歪みを測定する工程が行われる。つまり、ここでは、上述したように算出された位置ズレ量(マークズレ量)に基づいて、被測定基板20の歪みが測定される。
【0161】
この被測定基板20の歪みを測定する工程では、上述したように算出された92点の位置ズレ測定マーク40の各位置ズレ量を、被測定基板20の歪みとして測定してもよい。ただし、上述したように算出された位置ズレ量は、被測定基板20を保持する工程において被測定基板20をチャック31に載せる際の、チャック31に対する被測定基板20の相対的なズレ量(以下「相対ズレ量」という。)を含む。このため、被測定基板20の歪みの測定値としては、位置ズレ量について相対ズレ量による影響を補正した値が採用される。
【0162】
ここで補正される相対ズレ量は、被測定基板20とチャック31との互いの中心位置のズレ量、および被測定基板20のチャック31に対する回転方向のズレ量に相当するものである。本実施例では、相対ズレ量を用いた位置ズレ量の補正において、位置ズレ量についての92点の平均値と、被測定基板20全体の回転量とが補正値として用いられる。
【0163】
被測定基板20全体の回転量の補正としては、マーク座標のY座標値が共通の値のもの、つまり共通のX方向の直線に沿って並ぶ点については、被測定基板20の回転量に相当する共通のX座標値を差し引くことが行われる。また、マーク座標のX座標値が共通の値のもの、つまり共通のY方向の直線に沿って並ぶ点については、被測定基板20の回転量の相当する共通のY座標値を差し引くことが行われる。
【0164】
相対ズレ量を用いた位置ズレ量の補正について、マークNo「1」〜「4」を例に挙げて具体的に説明する。図9に示す表から、マークNo「1」〜「4」の各マークの位置ズレ量は、それぞれ次の値である。
「1」:(X、Y)=(48.162、−37.555)
「2」:(X、Y)=(51.743、−38.968)
「3」:(X、Y)=(59.795、−37.725)
「4」:(X、Y)=(58.316、−43.340)
これらの位置ズレ量の値は、相対ズレ量による補正前の値である。つまり、これらの位置ズレ量の値に対して、相対ズレ量を用いた補正を行う。
【0165】
相対ズレ量を用いた補正として、位置ズレ量について92点の平均値が補正値に用いられ、この平均値を各位置ズレ量の値から差し引くことが行われる。本実施例において、位置ズレ量のX座標値の92点の平均値は「75.245」であり、位置ズレ量のY座標値の92点の平均値は、「−45.050」である。したがって、上記のマークNo「1」〜「4」の各マークの位置ズレ量から、これらの平均値を引いた値は、次の値となる。
「1」:(X、Y)=(−27.083、7.495)
「2」:(X、Y)=(−23.502、6.082)
「3」:(X、Y)=(−15.450、7.325)
「4」:(X、Y)=(−16.929、1.710)
【0166】
そして、これらの各座標値に対する被測定基板20全体の回転量の補正として、マーク座標のY座標値が共通の値(−70050)となるマークNo「1」および「2」のX座標値に対しては、「24.062」が加算され、同じくマーク座標のY座標値が共通の値(−49905)となるマークNo「3」および「4」のX座標値に対しては、「17.213(17.212)」が加算される。また、マーク座標のX座標値が共通の値(−27500)となるマークNo「1」および「3」のY座標値に対しては、「9.4」が減算され、同じくマーク座標のY座標値が共通の値(−12500)となるマークNo「2」および「4」のY座標値に対しては、「4.3」が減算される。
【0167】
このように位置ズレ量から92点の平均値を引いた値に対して加算または減算される値が、被測定基板20の回転量の補正値となる。この被測定基板20の回転量の補正値は、被測定基板20のチャック31に対する回転方向の相対的なズレによる座標値のズレ量に応じて、マークの座標値ごとに設定される。
【0168】
図11に示す表に、相対ズレ量による補正を行った後の位置ズレ量を示している。例えば、マークNo「1」の場合、X座標値については、相対ズレ量による補正前の値「48.162」から、92点の平均値「75.245」を減算し、被測定基板20の回転量の補正値「24.062」を加算した値である「−3.021」が、相対ズレ量による補正後の位置ズレ量の値となる。
【0169】
同じくマークNo「1」の場合、Y座標値については、相対ズレ量による補正前の値「−37.555」から、92点の平均値「−45.050」を減算し、被測定基板20の回転量の補正値「9.4」を減算した値である「−1.905」が、相対ズレ量による補正後の位置ズレ量の値となる。他のマークNoの座標値についても同様にして、相対ズレ量による補正が行われる。なお、図11に示す表では、「測定値(μm)」についても相対ズレ量による補正が行われた値となっている。つまり、この補正後の「測定値(μm)」から「格子ズレ量(μm)」を差し引くことで、相対ズレ量が補正された位置ズレ量が得られる。
【0170】
本実施例において92個の位置ズレ測定マーク40について相対ズレ量による補正を行った位置ズレ量を図示したものが、図12である。図12において、破線は、図10と同様に理想格子を示し、実線は、相対ズレ量が補正された位置ズレ量(補正後の位置ズレ量)を示す。破線で示す矩形状D1における四隅の位置が、位置ズレ量が0の位置に対応し、実線で示す四角形状D3における四隅の位置が、補正後の位置ズレ量が加味された各位置ズレ測定マーク40の位置を示す。なお、図12においては、位置ズレ量の値を600倍し、各位置ズレ測定マーク40のズレを拡大して表示している。
【0171】
このように、位置ズレ量に対して相対ズレ量による補正が行われることで、図10と図12との比較からもわかるように、被測定基板20をチャック31に載せる際の被測定基板20のチャック31に対する相対的な位置のズレが被測定基板20の歪みの測定値に与える影響を低減することができ、より正確な歪み量を測定することが可能となる。
【0172】
ここで補正される相対ズレ量は、被測定基板20の歪みとは無関係の値であり、被測定基板20をチャック31に保持する際に生じるものである。このため、位置ズレ量に対して相対ズレ量を補正することで、位置ズレ量から、被測定基板20をチャック31に保持する際に生じたズレが除かれ、位置ズレ量を、被測定基板20の歪みによって生じた量に修正することができる。
【0173】
したがって、位置ズレ量について相対ズレ量による補正を行うことで、被測定基板20をチャック31に保持する工程において、被測定基板20のチャック31に対する位置合わせに際して要求される厳密さが軽減され、工程の簡略化を図ることが可能となる。つまりは、位置ズレ量について相対ズレ量による補正を行うことで、被測定基板20とチャック31との位置合わせを不要にすることも可能となる。
【0174】
このように、被測定基板20の歪みを測定する工程においては、算出された位置ズレ量に対して、相対ズレ量による補正が行われる。つまり、被測定基板20の歪みを測定する工程によって得られる歪みの測定値としては、相対ズレ量による補正が行われた位置ズレ量が採用される。
【0175】
また、被測定基板20の歪みを測定する工程では、図11の表に示すような相対ズレ量による補正が行われた位置ズレ量に対して統計処理を施した値を、被測定基板20の歪み量として測定してもよい。ここで、統計処理としては、例えば、92点の位置ズレ量について、平均値の絶対値に、3σの値を加算するという演算が行われる。つまり、ここでの統計処理により得られる処理値Z(μm)は、次式(1)により表される。
Z=|ave|+3s ・・・(1)
ここで、|ave|は、92点の位置ズレ量の平均値の絶対値であり、sは、92点の位置ズレ量の標準偏差σ(分散:σ2)である。
【0176】
したがって、ここでの統計処理は、上記(1)式が用いられ、相対ズレ量が補正された位置ズレ量のX座標値およびY座標値それぞれについて行われる。すなわち、位置ズレ量のX座標値については、92点のX座標値の平均値の絶対値に、標準偏差σを3倍した値が加算されることで、処理値Zが得られる。また、位置ズレ量のY座標値については、92点のY座標値の平均値の絶対値に、標準偏差σを3倍した値が加算されることで、処理値Zが得られる。
【0177】
本実施例では、図11の表に示す相対ズレ量による補正後の位置ズレ量に対して上述のような統計処理を施すことにより、X方向については、X座標値として、4.904(μm)という値が算出される。また、Y方向については、Y座標値として、4.346(μm)という値が算出される。
【0178】
このように、被測定基板20の歪み量の測定に際し、位置ズレ量に対して統計処理を施すことにより、被測定基板20の歪みの測定値を、1組の座標値として得ることができる。これにより、被測定基板20の歪み量を代表的な数値によって把握することが可能となり、被測定基板20の歪み量を容易に認識することが可能となる。
【0179】
また、被測定基板20の歪みを測定する工程では、被測定基板20の歪み量の測定値として、被測定基板20の歪みを測定する工程の後に行われる工程で補正可能な歪み量を除去した値を採用してもよい。被測定基板20の歪みを測定する工程の後に行われる工程としては、例えば、カラーフィルタ18を形成する工程が挙げられる。
【0180】
カラーフィルタ18を形成する工程においては、カラーフィルタ18を形成するためのリソグラフィの工程等で用いられる露光機により、被測定基板20の歪みを補正することができる場合がある。この場合、露光機によって補正可能な被測定基板20の歪み量をあらかじめ除去した歪み量を、被測定基板20の歪みを測定する工程における歪み量の測定値とする。
【0181】
このように、被測定基板20の歪みを測定する工程で得られる歪み量の測定値を、後の工程で補正可能な歪み量をあらかじめ除いた値とすることにより、被測定基板20の歪み量として、後の工程において露光機等で補正された後に残る歪み量を把握することが可能となる。なお、被測定基板20の歪みを測定する工程の後に行われる工程としては、カラーフィルタ18を形成する工程のほか、例えばマイクロレンズ19を形成する工程等であってもよく、露光機等によって被測定基板20の歪みを補正することができる工程であればよい。この場合、位置ズレ量の情報を露光機に転送し、例えば露光フィールドシフト量を補正することができる。補正可能な歪み量は露光機でどのようなアラインメントを行うかに依存するので、そのアラインメントの設定に合わせて歪み量の算出を行う。
【0182】
また、本実施形態に係る基板の歪み測定方法においては、上述したマークズレ量を算出する工程において、基準マーク50の配置について、複数の基準マーク50の格子位置から、理想格子となるように設けられる基準マーク50の格子位置を算出することが望ましい。このことについて、図6を用いて具体的に説明する。
【0183】
図6に示す例では、顕微鏡33による同一視野に、5×5の25個の基準マーク50が配置される領域が含まれており、この領域に、1個の位置ズレ測定マーク40が存在している。なお、図6は、顕微鏡33による視野範囲を示している。
【0184】
図6に示す視野範囲では、25個の基準マーク50のうち、少なくとも一部が位置ズレ測定マーク40と重なって隠れている基準マーク50が、10個存在する。つまり、図6に示す視野には、位置ズレ測定マーク40に重なることなく全体が現れている基準マーク50(50B)が、15個存在する。
【0185】
このように同一視野に全体が現れている基準マーク50が15個存在する場合、これら15個の基準マーク50の位置(座標値)についての統計値から、基準マーク50の格子位置が算出される。ここで、統計値としては、例えば平均値や中央値等が用いられる。そして、この場合、15個の基準マーク50の統計値として算出された格子位置(基準マーク50の位置)のうち、最近接基準マーク50Aの格子位置(中心位置C1)が、最近接基準マーク50Aの位置に対する位置ズレ測定マーク40の中心位置C2のズレ量の算出に際して用いられる。
【0186】
このように、同一視野に存在する複数の基準マーク50の格子位置から、位置ズレ測定マーク40の位置(中心位置C2)比較対象となる基準マーク50(最近接基準マーク50A)の格子位置(中心位置C1)を算出することで、算出されるマークズレ量に対する、基準マーク50の位置のバラツキの影響を抑制することができる。これにより、マークズレ量(位置ズレ量)の算出精度が向上し、被測定基板20の歪みの測定精度を向上することができる。
【0187】
また、同一視野に存在する複数の基準マーク50の格子位置から最近接基準マーク50Aの格子位置を算出する場合、算出に用いられる基準マーク50の数は多い方が望ましい。そこで、算出に用いられる基準マーク50の数を増やす観点から、図6に示すような位置ズレ測定マーク40に代えて、図13(a)に示すような位置ズレ測定マーク40Bが好適に用いられる。
【0188】
図13(a)に示す位置ズレ測定マーク40Bは、図6に示す位置ズレ測定マーク40と同様に枠形状を有するが、枠形状の部分が中抜きされている。つまり、図6に示す位置ズレ測定マーク40が1重の枠形状であるのに対し、図13(a)に示す位置ズレ測定マーク40Bは、外側枠部40xと内側枠部40yとからなる2重の枠形状を有する。
【0189】
図13(a)に示すような位置ズレ測定マーク40Bによれば、図6に示す位置ズレ測定マーク40との比較において、マークのサイズを確保したまま、基準マーク50を隠すことになる部分の面積を小さくすることができる。これにより、位置ズレ測定マーク40によって隠される基準マーク50の数を少なくすること、つまり位置ズレ測定マーク40に隠されることなく全体が現れる基準マーク50の数を多くすることができる。したがって、上述したような同一視野に存在する複数の基準マーク50の格子位置を用いた基準マーク50の格子位置の算出に用いられる基準マーク50の数を多くすることができるので、マークズレ量の算出に用いられる基準マーク50の位置の精度を向上することができる。
【0190】
また、図13(a)に示すような位置ズレ測定マーク40Bによれば、図6に示す位置ズレ測定マーク40との比較において、マークにおけるエッジの数を増やすことができる。このため、上述したように位置ズレ測定マーク40の中心位置C2の座標を求める際にマークのエッジの座標値を用いる場合、座標値の算出に用いるエッジの数を増やすことで、中心位置C2の位置精度を高めることができる。これにより、マークズレ量の算出精度を向上することができる。
【0191】
また、位置ズレ測定マークの他の形状の例として、図13(b)〜(g)に示すような形状を挙げることができる。図13(b)に示す位置ズレ測定マーク41Aは、菱形の外形を有し、図6に示す位置ズレ測定マーク40と同様に内側が中抜きされた枠状の形状を有する。図13(c)に示す位置ズレ測定マーク41Bは、図6の位置ズレ測定マーク40と図13(a)の位置ズレ測定マーク40Bとの関係と同様に、図13(b)の位置ズレ測定マーク41Aの枠形状の部分が中抜きされたものであり、外側枠部41xと内側枠部41yとからなる2重の枠形状を有する。
【0192】
図13(d)に示す位置ズレ測定マーク42Aは、バツ印状の形状を有する。図13(e)に示す位置ズレ測定マーク42Bは、同図(d)に示す位置ズレ測定マーク42Aがバツ印状の形状に沿って間が抜かれたものであり、縦方向および横方向に互いに対向する2組のV字形状部42x、42yを有する。
【0193】
図13(f)に示す位置ズレ測定マーク43Aは、八角形状の外形を有し、内側が中抜きされた枠状の形状を有する。図13(g)に示す位置ズレ測定マーク43Bは、図6の位置ズレ測定マーク40と図13(a)の位置ズレ測定マーク40Bとの関係と同様に、図13(f)の位置ズレ測定マーク43Aの枠形状の部分が中抜きされたものであり、外側枠部43xと内側枠部43yとからなる2重の八角形の枠形状を有する。
【0194】
以上のように、位置ズレ測定マークの形状については、様々なバリエーションが考えられ、例示した形状のうち、いずれかの形状のマークが用いられたり、複数種類の形状のマークが用いられたりする。ただし、位置ズレ測定マークや基準マークの形状や、本実施形態で示した形状に限定されず、例えば円形状や三角形状等、互いのマークの位置のズレが把握できる形状であればよい。
【0195】
位置ズレ測定マークとしては、本実施形態の位置ズレ測定マーク40や図13に例示したもののように要素群を構成する各要素である場合に限られず、例えば格子状の模様等をなす一体の連続したものであってもよい。位置ズレ測定マーク40が格子状の模様である場合、位置ズレ測定マーク40は、例えば被測定基板20のダイシング領域24に沿って格子状に設けられる。
【0196】
また、基準マーク50の位置精度に関しては、チャック31における基準マーク50の配置の位置を、あらかじめ計測しておき、その計測値に基づく補正を行ってもよい。この場合、チャック31の保持面35上において格子点状に配置される全ての基準マーク50の位置があらかじめ計測される。ここで、基準マーク50の位置の計測には、例えば、レーザ干渉計等の精密な計測機器、あるいは、基板が搭載される高精度なステージや、このステージに保持された基板を透過する赤外線等を照射する光学系等を備える計測機器等の、高精度な計測機器が用いられる。基準マーク50の位置は、XY座標値として計測される。
【0197】
このように計測された基準マーク50の位置について、個々の基準マーク50の位置が、理想格子からどれだけずれているか、つまり各基準マーク50の位置の理想格子に対するズレ量が、あらかじめデータとして取得される。ここで取得された基準マーク50の位置に関するデータは、例えばルックアップテーブル等の参照可能なデータ群として、測定装置30の制御部34が有する記憶部等においてあらかじめ記憶される。
【0198】
そして、マークズレ量(位置ズレ量)を算出する工程において、あらかじめ取得され記憶された基準マーク50の位置に関する参照可能なデータ群から、そのデータ群を得たチャック31に設けられた各基準マーク50が有する理想格子に対するズレ量が呼び出され、マークズレ量が補正される。具体的には、位置ズレ測定マーク40の位置の基準となる最近接基準マーク50Aの位置に対して、その最近接基準マーク50Aの理想格子に対するズレ量の分の補正が行われる。
【0199】
つまり、マークズレ量の算出に用いられる最近接基準マーク50Aの位置(座標値)に対して、その最近接基準マーク50Aとしての基準マーク50がチャック31上で有する理想格子に対するズレ量の分だけ、そのズレ量を打ち消すように値を増減させる補正が行われる。なお、あらかじめ計測された基準マーク50の理想格子に対するズレ量による補正は、基準マーク50(最近接基準マーク50A)の位置(座標値)に対して行われてもよく、図9の表等に示す測定値や位置ズレ量に対して行われてもよい。
【0200】
このようにチャック31における基準マーク50の理想格子に対するズレ量をあらかじめ計測し、その計測値に基づく補正を行うことにより、基準マーク50の位置精度が向上するので、マークズレ量の算出精度が向上し、被測定基板20の歪みの測定精度を向上することができる。そして、計測した基準マーク50の理想格子に対するズレ量をルックアップテーブル等の参照可能なデータ群として取得することにより、このデータ群はチャック31ごとに得られる補正値であるので、チャック31によって保持されて歪みが測定される多数の被測定基板20について補正値を共用することができる。これにより、被測定基板20の歪みの測定に要する処理の負荷を軽減することができる。
【0201】
この点、被測定基板20の歪みの測定ごとに、その都度、レーザ干渉計等といった高精度な計測機器を用いて被測定基板20の歪みの測定を行うことは、コスト面や操作に熟練を要すること等から現実的ではない。これに対し、上述したように測定装置30の基準マーク50についての理想格子に対するズレ量をあらかじめレーザ干渉計等の高精度な計測機器によって計測し、その計測値による補正を行うことは、比較的容易に実現可能であり、位置ズレ量等の測定値の精度向上に貢献する。
【0202】
また、上述したようにチャック31における各基準マーク50の理想格子に対するズレ量をあらかじめ計測する場合、その理想格子に対するズレ量の計測の際、同一視野に複数の基準マーク50が存在すると、理想格子に対するズレ量の計測値がどの基準マーク50の値であるかが分からなくなってしまう可能性がある。また、チャック31に対する被測定基板20の置き位置精度の面からも、各基準マーク50の理想格子に対するズレ量の事前計測値と基準マーク50との紐付けが困難となる場合がある。
【0203】
そこで、チャック31に設けられる基準マーク50については、例えば図14に示すように、同一視野に含まれることになる、近隣に配置される複数の基準マーク50が互いに異なる形状を有することが望ましい。図14には、5×5=25個の基準マーク50が示されており、これら25個の基準マーク50は、互いに異なる形状を有するパターンを構成する。
【0204】
なお、近隣に配置される複数の基準マーク50について、互いに異なる形状となる基準マーク50の数は、顕微鏡33の視野の広さ等によって適宜設定される。例えば、図14に示すように、近隣に配置され互いに異なる形状となる基準マーク50の数が5×5=25個である場合、この5×5のパターンが繰り返し単位としてX方向およびY方向に繰り返して配置される。近隣に配置され互いに異なる形状となる基準マーク50の数は、5×5=25個のほか、4×4=16個であったり、6×6=36個であったりしてもよく、上記のとおり顕微鏡33の視野の広さ等によって適宜設定される。
【0205】
このように近隣に配置される複数の基準マーク50について互いに異なる形状が用いられることにより、近隣に配置される複数の基準マーク50の判別が容易となり、各基準マーク50の理想格子に対するズレ量の事前計測値と基準マーク50との対応付けを確実に行うことができる。これにより、マークズレ量(位置ズレ量)の算出精度が向上し、被測定基板20の歪みの測定精度を向上することができる。
【0206】
以上説明した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によれば、次のような効果が得られる。被測定基板20におけるチップ面積の確保を容易に行うことができる。すなわち、本実施形態の歪み測定において、被測定基板20が有する位置ズレ測定マーク40は、基準マーク50との関係においてモアレ縞等を形成する周期パターンではないため、例えば基板におけるダイシング領域24等に配置することができるので、基板におけるチップ面積を圧迫することなく設けることができる。
【0207】
また、本実施形態の歪み測定によれば、被測定基板20の保持方法による影響を考慮した基板の歪みの測定を行うことができる。すなわち、基板の歪みは、チャック31に保持された状態の被測定基板20の位置ズレ測定マーク40と、チャック31の基準マーク50との位置関係に基づいて測定されることから、測定される歪みには、被測定基板20をチャック31に保持することによって生じた被測定基板20の歪みが含まれる。したがって、本実施形態の歪み測定によれば、基板保持方法によって生じる歪みの変化も測定することができる。
【0208】
また、本実施形態の歪み測定によれば、高価な計測機器を用いることなく、高精度かつ簡便に、被測定基板20の歪みを測定することができる。被測定基板20の歪みが高精度に測定できることで、例えば、カラーフィルタ18やマイクロレンズ19を形成する際のリソグラフィの工程(露光工程)での重ね合わせ精度を向上することができる。
【0209】
また、本実施形態の歪み測定によれば、デバイスに合わせて被測定基板20を保持するためのチャックを準備する必要がない。
【0210】
また、本実施形態の歪み測定は、赤外線等の被測定基板20を透過する光を用いてマークを読み取る手法を採用するものであることから、被測定基板20を薄膜化することなく、被測定基板20の内部に設けられた位置ズレ測定マーク40を読み取ることができる。この点、露光機のアラインメントは可視光を利用するものであることから、被測定基板20の薄膜化後でないと被測定基板20の内部に存在するマークを読み取ることができない。
【0211】
このように、本実施形態の歪み測定によれば、被測定基板20の薄膜化の工程の前段階で、被測定基板20の歪みを把握することが可能となる。したがって、本実施形態の歪み測定によれば、被測定基板20を薄膜化する工程が行われる前の、被測定基板20を構成するセンサ基板21と支持基板22との仮接合段階で歪みの特定を行うことができる。
【0212】
具体的には、接着剤を用いた基板接合の場合は、接着剤を硬化させる前の状態で、被測定基板20の歪みを測定することで、また、プラズマを用いた基板接合の場合は、加熱ないし必要に応じて行われる加圧等の処理を行う前の状態で、被測定基板20の歪みを測定することで、センサ基板21と支持基板22との仮接合段階で歪みの特定を行うことができる。センサ基板21と支持基板22との仮接合段階においては、一旦基板同士を引き離して再度貼り合わせることができる。
【0213】
したがって、例えば、センサ基板21と支持基板22の基板同士の仮接合段階において本実施形態の歪み測定手法によって測定した歪み量がある閾値以上であれば、基板同士を一旦引き離し、再度貼り合わせることができる。つまり、基板同士の仮接合段階での基板の歪み量が所定値以上の場合、基板同士を一旦引き離し、貼り合わせによる影響が軽減されるように、基板同士を再度貼り合わせることが可能となる。これにより、貼り合わせ工程まで流動した基板を廃棄しなくて済み、材料コストや廃棄コストを削減することができる。また、基板の歪み改善のタクトタイムを短縮することができる。
【0214】
また、本実施形態の基板の歪み測定の説明においては、測定対象となる被測定基板20は、センサ基板21と支持基板22との2枚の基板が貼り合わされたものであるが、本実施形態の基板の歪み測定手法は、例えば1枚の基板であったり3枚以上の基板が貼り合わされたものであったりしても、測定対象とすることができる。
【0215】
[固体撮像装置の製造方法]
上述した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によって求めた被測定基板20の歪みは、被測定基板20の歪みを測定する工程の後の工程、例えばカラーフィルタ18やマイクロレンズ19を形成する工程(露光機を用いたリソグラフィの工程)に到着するまでの加工過程によって変化することが予測できる。特に、この加工過程においては、被測定基板20を薄膜化する工程が、基板の歪みに対して比較的大きな影響を与える。また、露光機を用いたリソグラフィの工程において被測定基板20が保持されるチャックが変化することによっても、被測定基板20の歪みは変化する。
【0216】
そこで、センサ基板21と支持基板22とを貼り合わせる工程以降において、上述した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によって被測定基板20の歪みを測定する工程の後に行われる所定の工程で、被測定基板20の歪みを測定し、ここで測定した歪みと、先に測定した歪みとを比較することで、工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化をあらかじめ算出する。そして、工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化を用いて、上述したような手法で測定した被測定基板20の歪みがどのように変化するかを予測する。
【0217】
このように、本実施形態の固体撮像装置1の製造方法においては、上述した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によって測定した被測定基板20の歪みが、被測定基板20の歪みを測定する工程以降、所定の工程までにどのように変化するかを予測する工程が行われる。つまり、この工程では、被測定基板20の歪みを測定する工程以降、例えば露光機を用いたリソグラフィの工程が行われるカラーフィルタ18を形成する工程までの間に、工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化が予測される。そして、予測された被測定基板20の歪みの変化は、被測定基板20の歪みを測定する工程以降の工程で用いられる。
【0218】
なお、以下の説明では、上述した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によって測定される被測定基板20の歪みを「本測定歪み」とし、上述した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によって被測定基板20の歪みを測定する工程の後に行われる所定の工程で測定される被測定基板20の歪みを「後工程測定歪み」とする。
【0219】
後工程測定歪みを測定する所定の工程としては、例えば、カラーフィルタ18を形成する工程やマイクロレンズ19を形成する工程等が挙げられる。この場合、後工程測定歪みは、例えば、カラーフィルタ18やマイクロレンズ19を形成する際のリソグラフィの工程(露光工程)で用いられる露光機でのアラインメントにより測定される。具体的には、後工程測定歪みとしては、露光機でアラインメントを行うことで、被測定基板20の位置ズレ測定マーク40、もしくは、位置ズレ測定マーク40に相当するマークの位置座標を露光機のステージを基準として測定することができる。
【0220】
そして、後工程測定歪みと本測定歪みとを比較することで、被測定基板20の歪みについて、本測定歪みから後工程測定歪みまでの変化量が、あらかじめ算出される。ここで算出された被測定基板20の歪みの変化量は、例えばルックアップテーブル等の参照可能なデータ群として作成され、測定装置30の制御部34が有する記憶部等においてあらかじめ記憶される。
【0221】
このようにして作成された被測定基板20の歪みの変化量についての参照可能なデータ群(以下「歪み変化量データ」という。)が用いられ、被測定基板20の歪みの変化が予測される。具体的には、例えば、カラーフィルタ18を形成する際の露光工程で、被測定基板20の歪みがどのような歪みとなっているのかが予測される。そして、この歪み変化量データが用いられて予測された被測定基板20の歪みに合わせて、露光工程での露光機のアライメントに補正を施すことが行われる。
【0222】
カラーフィルタ18等を形成する際の露光工程では、例えば、公知のアラインメント手法により、被測定基板20の位置合わせが行われる。ここで用いられるアライメント手法としては、例えば、特開平6−314648号公報や特開平10−125576号公報に記載されている手法を用いることができる。
【0223】
露光工程でのアラインメントにおいて、本測定歪みに対して後工程測定歪みを補正した被測定基板20の位置合わせを行うためには、アラインメントに膨大な時間がかかってしまうという問題がある。つまり、露光工程でのアラインメントによる被測定基板20の位置合わせによって、後工程測定歪みによる本測定歪みからの歪みの変化を補正しようとした場合、多くの時間を要することになる。
【0224】
そこで、上述したように後工程測定歪みを測定し、歪み変化量データをあらかじめ作成することにより、被測定基板20の歪みの変化を予測することができる。そして、歪み変化量データを、例えば、カラーフィルタ18を形成する工程の露光工程で用いられる露光機に引き渡すことで、露光工程でアラインメント点数が少なくても被測定基板20の歪みの測定値を補正して被測定基板20の位置合わせを行い、露光を行うことが可能となる。
【0225】
すなわち、露光工程でのアラインメントに補正を施すことによって被測定基板20の歪みの変化に対応する場合と比べて、歪み変化量データによって被測定基板20の歪みを予測することにより、露光工程でのアラインメントを簡易なものとすることができる。これにより、加工時間の長期化を招くことなく、被測定基板20の薄膜化の工程等の後工程により生じた被測定基板20の歪みを考慮した露光を行うことができる。
【0226】
上記のとおり露光機に引き渡す歪み変化量データは、例えば、被測定基板20におけるウェハ面内での位置ズレ情報をマップ化した位置ズレマップに変換されて用いられる。ただし、歪み変化量データを露光機に引き渡すための形式としては、歪み変化量データに基づいて作成したマップに限定されず、例えば、歪み変化量データに基づいて作成した、例えば5次の線形多項式等のウェハ面内の高次の補正式の形式等であってもよい。このように、工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化を用いた予測手法によれば、基板の貼り合わせの工程以降の露光工程に被測定基板20の歪み情報を提供することができる。
【0227】
このように、本実施形態の固体撮像装置1の製造方法においては、被測定基板20の歪みを予測する工程により予測された被測定基板20の変化を用いて、被測定基板20の位置合わせの補正を行う工程が行われる。
【0228】
以上のように、歪み変化量データをあらかじめ作成して、被測定基板20の歪みの変化を予測する手法においては、被測定基板20の歪みを測定する工程の後の工程での、被測定基板20の歪みの変化が一定量に安定していれば、歪み変化量データの作成は事前に一度だけ行えばよい。ただし、被測定基板20の薄膜化の工程の経時変化、例えば研磨パッドの磨耗やエッチング工程の薬液の濃度変化等によって被測定基板20の歪みの変化が一定量とならない場合もあることから、こうした歪み変化量データについては、被測定基板20の薄膜化の工程の経時変化等を考慮し、例えば所定の期間ごとに更新することが望ましい。
【0229】
また、被測定基板20の歪みの変化を予測するに際しては、上述したようなルックアップテーブル等の歪み変化量データの代わりに、被測定基板20の歪みの変化を、例えば3次の線形多項式等の何らかの数式により記述し、この数式を用いて被測定基板20の歪みの変化を予測してもよい。この場合、被測定基板20の歪みの変化を予測するための数式は、本測定歪みと後工程測定歪みとの関係に基づいて、近似式等として導かれる。
【0230】
一方、上記のとおり各工程によって被測定基板20が保持されるチャックが変化することによっても、被測定基板20の歪みは変化する。この点、上述したようにセンサ基板21および支持基板22を貼り合わせる工程から用いられる測定装置30のチャック31と、センサ基板21および支持基板22を貼り合わせる工程以降の工程、例えばカラーフィルタ18を形成する工程等の、被測定基板20の位置合わせを要する工程で用いられる露光機が有するチャックとが同一であれば、チャックに依存する被測定基板20の歪みを考慮する必要はない。しかしながら、実際には、測定装置30のチャック31と、基板の貼り合わせの工程以降の工程で用いられるチャックとを全く同一のものとすることは、極めて困難である。
【0231】
そこで、測定装置30において基準マーク50を有するチャック31と、基板の貼り合わせの工程以降に用いる露光機のチャックとの各チャックに依存する被測定基板20の歪みの違いをあらかじめ把握し、本測定歪みがどのように変化するかを予測する。つまり、チャック31に被測定基板20が保持された状態で測定された本測定歪みが、本測定歪みを測定する工程の後の所定の工程においてチャック31とは異なる露光機のチャックに保持されることで、どのように変化するかをあらかじめ把握し、予測する。
【0232】
したがって、被測定基板20の歪みについて、本測定歪みを測定する工程の後の所定の工程で、被測定基板20を保持するチャックがチャック31から異なるチャックに変わることによる、本測定歪みからの変化量が、あらかじめ算出される。ここで算出された被測定基板20の歪みの変化量は、上述したような工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化を用いた予測手法と同様に、ルックアップテーブル等の参照可能なデータ群や数式等として記述され、測定装置30の制御部34が有する記憶部等においてあらかじめ記憶される。また、本測定歪みを測定する工程の後の所定の工程は、上述した後工程測定歪みを測定する所定の工程と同様に、例えば、カラーフィルタ18を形成する工程やマイクロレンズ19を形成する工程等である。
【0233】
そして、上述したような工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化を用いた予測手法と同様に、被測定基板20を保持するチャックが変わることによる本測定歪みからの変化量についてのデータや数式が用いられ、被測定基板20の歪みの変化が予測される。そして、予測された被測定基板20の歪みの変化は、被測定基板20の歪みを測定する工程以降の工程で用いられる。すなわち、例えば、予測された被測定基板20の歪みに合わせて、露光工程での露光機のアライメントに補正を施すことが行われる。
【0234】
このように、上述した本実施形態の測定装置30および歪み測定方法によって測定した被測定基板20の歪みが、被測定基板20の歪みを測定する工程以降、所定の工程までにどのように変化するかを予測する工程としては、被測定基板20を保持するチャックが変わることによる被測定基板20の歪みの変化を予測する工程が行われてもよい。つまり、この工程では、被測定基板20の歪みを測定する工程以降、例えば露光機を用いたリソグラフィの工程が行われるカラーフィルタ18を形成する工程において、被測定基板20を保持するチャックが測定装置30のチャック31から他のチャックに変わることによる被測定基板20の歪みの変化が予測される。
【0235】
このように、固体撮像装置1の製造過程において、被測定基板20を保持するチャックに依存する被測定基板20の歪みの変化を予測することによっても、上述したような工程を経ることによる被測定基板20の歪みの変化を用いた予測手法と同様に、基板の貼り合わせの工程以降の露光工程に被測定基板20の歪み情報を提供することができ、露光工程でのアラインメントを簡易なものとすることができる。これにより、加工時間の長期化を招くことなく、被測定基板20を保持するチャックが変わること、つまり基板保持方法の違いにより生じた被測定基板20の歪みを考慮した露光を行うことができる。
【0236】
以上のように、被測定基板20の歪みについて、工程を経ることによる歪みの変化や基板保持方法による歪みの変化を予測する手法を採用することで、基板の薄膜化の工程等の途中工程や、チャックによる基板保持方法が基板の歪みに与える影響を考慮することができ、本測定歪みを有効に活用することができる。つまり、途中工程や基板保持方法によって変化する基板の歪みの変化を、本測定歪みを基準として予測することで、各工程での被測定基板20の歪みを正確に把握することが可能となる。
【0237】
なお、被測定基板20の歪みの変化を予測する工程において予測の対象となる歪みの変化は、工程を経ることによる歪みの変化および基板保持方法による歪みの変化のいずれか一方であってもよく、両方であってもよい。
【0238】
また、上述したような被測定基板20の歪みを予測する手法の代わりに、チャックの構造に基づいて、被測定基板20を保持するチャックが異なるものとなった場合の被測定基板20上の位置ズレ測定マーク40の位置を補正する手法を用いてもよい。この手法を用いる場合、チャックが有するピンやリフトピンの形状・位置・大きさ、平坦度等に基づいて、工程によって被測定基板20を保持するチャックが変わった場合に、そのチャックの構造の変化に応じて、位置ズレ測定マーク40の位置を補正する。ここでの補正においては、例えば、特開2006−157014号公報に記載されている公知の手法を用いることができる。
【0239】
以上説明した本技術の実施の形態では、半導体装置の一例として、CMOS型の固体撮像装置1を挙げて説明したが、本技術の適用対象となる半導体装置は、CMOS型の固体撮像装置のほか、例えばCCD型の固体撮像装置等、種々の半導体装置が含まれる。
【0240】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることができる。
(1)基板を保持する保持面を有し、前記保持面に、前記基板に設けられた位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する基板保持部と、前記基板保持部により保持された前記基板に対して、前記基板を透過する光を照射する光源部と、前記光源部により前記光が前記基板に照射されることで得られる前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりを観察する観察部と、前記観察部により観察された前記重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する算出部と、前記算出部により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する測定部と、を備える、基板の歪み測定装置。
(2)前記基板は、固体撮像素子が形成されたセンサ基板と他の基板とが貼り合わされたものであり、前記位置ズレ測定用のマークは、前記センサ基板の前記他の基板と対向する側の面に設けられ、前記基板保持部は、前記他の基板側が前記保持面に対向するように、前記基板を保持する、前記(1)に記載の基板の歪み測定装置。
(3)前記位置ズレ測定用のマークおよび前記基準マークは、いずれも格子点状に配列され、前記位置ズレ測定用のマークは、前記基準マークを複数含む大きさを有する、前記(1)または前記(2)に記載の基板の歪み測定装置。
(4)位置ズレ測定用のマークを有する基板を、前記位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する保持面に保持する工程と、前記保持する工程により前記保持面に保持された前記基板に、前記基板を透過する光を照射することで観察される前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する工程と、前記算出する工程により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する工程と、を備える、基板の歪み測定方法。
(5)位置ズレ測定用のマークを有する基板を、前記位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する保持面に保持する工程と、前記保持する工程により前記保持面に保持された前記基板に、前記基板を透過する光を照射することで観察される前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する工程と、前記算出する工程により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する工程と、前記測定する工程で測定により測定した前記基板の歪みが、前記測定する工程以降、所定の工程までにどのように変化するかを予測する工程と、前記予測する工程により予測された前記基板の変化を用いて、前記基板の位置合わせの補正を行う工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0241】
1 固体撮像装置(半導体装置)
20 被測定基板
21 センサ基板
22 支持基板(他の基板)
30 測定装置(歪み測定装置)
31 チャック(基板保持部)
32 IR光源(光源部)
33 顕微鏡(観察部)
35 保持面
36 ズレ量算出部
37 歪み測定部
40 位置ズレ測定マーク
50 基準マーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する保持面を有し、前記保持面に、前記基板に設けられた位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する基板保持部と、
前記基板保持部により保持された前記基板に対して、前記基板を透過する光を照射する光源部と、
前記光源部により前記光が前記基板に照射されることで得られる前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりを観察する観察部と、
前記観察部により観察された前記重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する測定部と、を備える、
基板の歪み測定装置。
【請求項2】
前記基板は、固体撮像素子が形成されたセンサ基板と他の基板とが貼り合わされたものであり、
前記位置ズレ測定用のマークは、前記センサ基板の前記他の基板と対向する側の面に設けられ、
前記基板保持部は、前記他の基板側が前記保持面に対向するように、前記基板を保持する、
請求項1に記載の基板の歪み測定装置。
【請求項3】
前記位置ズレ測定用のマークおよび前記基準マークは、いずれも格子点状に配列され、
前記位置ズレ測定用のマークは、前記基準マークを複数含む大きさを有する、
請求項1に記載の基板の歪み測定装置。
【請求項4】
位置ズレ測定用のマークを有する基板を、前記位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する保持面に保持する工程と、
前記保持する工程により前記保持面に保持された前記基板に、前記基板を透過する光を照射することで観察される前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する工程と、
前記算出する工程により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する工程と、を備える、
基板の歪み測定方法。
【請求項5】
位置ズレ測定用のマークを有する基板を、前記位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する保持面に保持する工程と、
前記保持する工程により前記保持面に保持された前記基板に、前記基板を透過する光を照射することで観察される前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する工程と、
前記算出する工程により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する工程と、
前記測定する工程で測定により測定した前記基板の歪みが、前記測定する工程以降、所定の工程までにどのように変化するかを予測する工程と、
前記予測する工程により予測された前記基板の変化を用いて、前記基板の位置合わせの補正を行う工程と、を備える、
半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板を保持する保持面を有し、前記保持面に、前記基板に設けられた位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する基板保持部と、
前記基板保持部により保持された前記基板に対して、前記基板を透過する光を照射する光源部と、
前記光源部により前記光が前記基板に照射されることで得られる前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりを観察する観察部と、
前記観察部により観察された前記重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する測定部と、を備える、
基板の歪み測定装置。
【請求項2】
前記基板は、固体撮像素子が形成されたセンサ基板と他の基板とが貼り合わされたものであり、
前記位置ズレ測定用のマークは、前記センサ基板の前記他の基板と対向する側の面に設けられ、
前記基板保持部は、前記他の基板側が前記保持面に対向するように、前記基板を保持する、
請求項1に記載の基板の歪み測定装置。
【請求項3】
前記位置ズレ測定用のマークおよび前記基準マークは、いずれも格子点状に配列され、
前記位置ズレ測定用のマークは、前記基準マークを複数含む大きさを有する、
請求項1に記載の基板の歪み測定装置。
【請求項4】
位置ズレ測定用のマークを有する基板を、前記位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する保持面に保持する工程と、
前記保持する工程により前記保持面に保持された前記基板に、前記基板を透過する光を照射することで観察される前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する工程と、
前記算出する工程により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する工程と、を備える、
基板の歪み測定方法。
【請求項5】
位置ズレ測定用のマークを有する基板を、前記位置ズレ測定用のマークの比較対象となる基準マークを有する保持面に保持する工程と、
前記保持する工程により前記保持面に保持された前記基板に、前記基板を透過する光を照射することで観察される前記位置ズレ測定用のマークと前記基準マークとの重なりから、前記基準マークに対する前記位置ズレ測定用のマークのズレ量を算出する工程と、
前記算出する工程により算出された前記ズレ量から、前記基板の歪みを測定する工程と、
前記測定する工程で測定により測定した前記基板の歪みが、前記測定する工程以降、所定の工程までにどのように変化するかを予測する工程と、
前記予測する工程により予測された前記基板の変化を用いて、前記基板の位置合わせの補正を行う工程と、を備える、
半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−115384(P2013−115384A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263022(P2011−263022)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]