説明

基板テーブル、リソグラフィ装置、基板のエッジを平らにする方法、及びデバイス製造方法

【課題】例えば、基板のエッジの平坦度を調整することのできる基板テーブルを提供することが望ましい。
【解決手段】基板を支持するための基板テーブルが開示される。基板テーブルは、基板を支持し、基板のエッジに第1方向の曲げ力を付与するための基板支持部を含む。基板エッジ操作部が設けられており、第2方向の可変の曲げ力を基板のエッジに付与するよう構成されている。第2方向は、第1方向とは反対向きの成分を少なくとも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板テーブル、リソグラフィ装置、基板のエッジを平らにする方法、及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板の目標部分に転写する機械である。リソグラフィ装置は例えば集積回路(IC)の製造に用いられる。この場合、例えばマスクまたはレチクルとも称されるパターニングデバイスが、ICの個別の層に形成されるべき回路パターンを生成するために使用される。このパターンが基板(例えばシリコンウェーハ)の(例えばダイの一部、あるいは1つまたは複数のダイからなる)目標部分に転写される。パターン転写は典型的には基板に形成された放射感応性材料(レジスト)層への結像による。一般に一枚の基板には網状に隣接する一群の目標部分が含まれ、これらは連続的にパターン付けされる。公知のリソグラフィ装置にはいわゆるステッパとスキャナとがある。ステッパにおいては、目標部分にパターン全体が一度に露光されるようにして各目標部分は照射を受ける。スキャナにおいては、所与の方向(スキャン方向)に放射ビームによりパターンを走査するとともに基板をスキャン方向に平行または逆平行に走査するようにして各目標部分は照射を受ける。パターニングデバイスから基板へのパターン転写は、基板にパターンをインプリントすることによっても可能である。
【0003】
リソグラフィ投影装置において基板を液体に浸すことが提案されている。この液体は比較的高い屈折率をもつ液体であり、例えば水である。そうして投影システムの最終要素と基板との間の空間が液体で満たされる。一実施例においては液体は蒸留水であるが、その他の液体も使用可能である。本発明の一実施形態は液体に言及して説明しているが、その他の流体、特に濡れ性流体、非圧縮性流体、及び/又は屈折率が空気より高い、望ましくは屈折率が水より高い流体が適切なこともある。気体を除く流体が特に好ましい。その真意は、露光放射は液体中で波長が短くなるので、より小さい形状の結像が可能となるということである(液体の効果は、システムの有効開口数(NA)を大きくし、焦点深度も大きくすることと見なすこともできる。)。別の液浸液も提案されている。固体粒子(例えば石英)で懸濁している水や、ナノ粒子(例えば最大寸法10nm以下の粒子)で懸濁している液体がある。懸濁粒子はその液体の屈折率と同程度の屈折率を有していてもよいし、そうでなくてもよい。その他に適切な液体として炭化水素もある。例えば芳香族、フッ化炭化水素、及び/または水溶液がある。
【0004】
基板を、又は基板と基板テーブルとを液体の浴槽に浸すということは(例えば米国特許第4,509,852号参照)、走査露光中に加速すべき大きな液体の塊があるということである。これには、追加のモータ又はさらに強力なモータが必要であり、液体中の乱流が望ましくない予測不能な効果を引き起こすことがある。
【0005】
液浸装置においては液浸流体が、流体ハンドリングシステム、流体ハンドリングデバイス、流体ハンドリングデバイス構造、または流体ハンドリング装置によって操作される。ある実施例における流体ハンドリングシステムは液浸流体を供給してもよく、よって流体供給システムであってもよい。ある実施例における流体ハンドリングシステムは液浸流体を少なくとも部分的に閉じ込めてもよく、よって流体閉じ込めシステムであってもよい。ある実施例における流体ハンドリングシステムは液浸流体に対する障壁を提供してもよく、よってバリア部材、例えば流体閉じ込め構造であってもよい。ある実施例における流体ハンドリングシステムは気体流れを生成または使用して、例えば液浸流体の流れ及び/または位置の制御を支援するようにしてもよい。その気体流れは液浸流体を閉じ込めるシールを形成してもよく、流体ハンドリング構造はシール部材と称されてもよい。こうしたシール部材が流体閉じ込め構造であってもよい。一実施例においては液浸流体として液浸液が使用される。その場合流体ハンドリングシステムは液体ハンドリングシステムであってもよい。既述の説明を参照する際には、流体に関し定義された構成についての本段落における言及は、液体に関し定義される構成も含むものと理解されたい。
【0006】
リソグラフィ露光装置においては、バール(突起)を備える基板テーブルの基板支持部によって基板が支持される。基板は通常、真空を適用することにより基板テーブルに吸引される。液浸システム(すなわち、基板を露光するときに投影システムと基板との間に液浸液を供給するシステム)においては、基板テーブルは大抵、基板と基板テーブルとの間の真空空間から液浸液を遮断するためのシールを備える。
【発明の概要】
【0007】
基板のエッジはできるだけ平坦であることが望ましい。それ故に、基板のエッジはできるだけ平坦に保たれる。
【0008】
そのために、最適なバール・パターンを、シールの位置(及び、より多くの真空区域がある場合には、それら区域間の相対圧力差)との組み合わせのもとで、選択することが行われている。ところがこれは、すべての基板が理想的に平坦であり一定の厚さを持つことを前提としている。また、基板及び基板支持部が完全に清浄であると仮定し、さらに、基板支持部が位置公差ゼロで製造されていることを仮定している。
【0009】
現実には、コーティングや基板処理、汚染の1つまたは複数がエッジの平坦度を乱す原因となる。エッジ平坦度は基板ごとに変わりうる。それに加えて、またはそれに代えて、誤った真空設定、及び/またはバール・パターンの製造上の公差は、エッジ平坦度に一定のオフセットを生じさせる。これはエッジでのデフォーカスへとつながり、性能のみならず歩留まりにも不利益を与えうる。こうした領域は何ら露光され得ないからである。エッジの特性は、汚染及び/または摩耗のせいで経時的に変化し、性能及び歩留まりを時間とともに低下させることになる。
【0010】
例えば、基板エッジの平坦度を調整することのできる基板テーブルを提供することが望ましい。
【0011】
1つの側面によれば、基板を支持する基板テーブルであって、基板を支持し、基板エッジに第1方向の曲げ力を付与する基板支持部と、第2方向の可変の曲げ力を基板エッジに付与するよう構成され、第2方向は第1方向とは反対向きの成分を少なくとも有する基板エッジ操作部と、を備える基板テーブルが提供される。
【0012】
1つの側面によれば、基板を支持する基板テーブルであって、使用時に、基板テーブルに支持されている基板のエッジを基板の上側主面との物理的接触によって曲げるよう構成されている部材を備える基板テーブルが提供される。
【0013】
1つの側面によれば、基板のエッジを平らにする方法であって、基板のエッジに第1方向に曲げを引き起こすのに十分な力を基板のエッジに与えることと、基板のエッジの平坦度を改善するために、第1方向とは実質的に反対向きの第2方向の可変の力を基板のエッジに与えることと、を含む方法が提供される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態が付属の図面を参照して以下に説明されるがこれらは例示に過ぎない。各図面において対応する参照符号は対応する部分を指し示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を示す図である。
【0016】
【図2】リソグラフィ投影装置に使用される液体供給システムを示す図である。
【図3】リソグラフィ投影装置に使用される液体供給システムを示す図である。
【0017】
【図4】リソグラフィ投影装置に使用される他の液体供給システムを示す図である。
【0018】
【図5】リソグラフィ投影装置に使用される他の液体供給システムを示す図である。
【0019】
【図6】一実施形態に係る基板テーブルの断面を示す。
【0020】
【図7】一実施形態に係る基板テーブルの断面を示す。
【0021】
【図8】一実施形態に係る基板テーブルの断面を示す。
【0022】
【図9】図7の基板テーブルの平面図を示す。
【0023】
【図10】一実施形態の基板テーブルの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を模式的に示す図である。この装置は、
放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成されている照明システム(イルミネータ)ILと、
パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構成され、いくつかのパラメタに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするよう構成されている第1の位置決め装置PMに接続されている支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
基板(例えばレジストで被覆されたウエーハ)Wを保持するよう構成され、いくつかのパラメタに従って基板Wを正確に位置決めするよう構成されている第2の位置決め装置PWに接続されている基板テーブル(例えばウエーハテーブル)WTと、
パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つまたは複数のダイからなる)目標部分Cに投影するよう構成されている投影システム(例えば屈折投影レンズ系)PSと、を備える。
【0025】
照明システムILは、放射の方向や形状の調整、または放射の制御のために、各種の光学素子例えば屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子または他の各種光学部品を含んでもよく、あるいはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0026】
支持構造MTは、パターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、パターニングデバイスMAの向きやリソグラフィ装置の設計、あるいはパターニングデバイスMAが真空環境下で保持されるか否かなどの他の条件に応じた方式でパターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、機械的固定、真空固定、静電固定、またはパターニングデバイスMAを保持するその他の固定技術を用いてもよい。支持構造MTは例えばフレームまたはテーブルであってよく、必要に応じて固定されていてもよいし移動可能であってもよい。支持構造MTは、パターニングデバイスMAが例えば投影システムPSに対して所望の位置にあることを保証してもよい。本明細書では「レチクル」または「マスク」という用語を用いた場合には、より一般的な用語である「パターニングデバイス」に同義であるとみなされるものとする。
【0027】
本明細書では「パターニングデバイス」という用語は、基板の目標部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用され得るいかなるデバイスをも指し示すよう広く解釈されるべきである。放射ビームに与えられるパターンは、基板の目標部分に所望されるパターンと厳密に対応していなくてもよい。このような場合には例えば、パターンが位相シフトフィーチャあるいはいわゆるアシストフィーチャを含む場合がある。一般には、放射ビームに付与されるパターンは、目標部分に形成される集積回路などのデバイスにおける特定の機能層に対応する。
【0028】
パターニングデバイスMAは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜可能であるというものがある。これらの傾斜ミラーにより、マトリックス状ミラーで反射された放射ビームにパターンが付与されることになる。
【0029】
本明細書では「投影システム」という用語は、使用される露光放射あるいは液浸液や真空の利用などの他の要因に関して適切とされるいかなる投影システムをも包含するよう広く解釈されるべきである。投影システムには屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系、またはこれらの任意の組み合わせなどが含まれる。以下では「投影レンズ」という用語は、より一般的な用語である「投影システム」と同義に用いられ得る。
【0030】
ここに図示されるのは、(例えば透過型マスクを用いる)透過型のリソグラフィ装置である。これに代えて、(例えば上述のようなプログラマブルミラーアレイまたは反射型マスクを用いる)反射型のリソグラフィ装置を用いることもできる。
【0031】
リソグラフィ装置は2つ以上(2つの場合にはデュアルステージと呼ばれる)のテーブルを備えてもよい。テーブルのうち少なくとも1つまたはすべてが基板を保持してもよい。リソグラフィ装置は、2つ以上のパターニングデバイステーブルを備えてもよい。こうした多重ステージ型の装置においては追加されたテーブルは並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルで露光が行われている間に他の1以上のテーブルで準備工程を実行するようにしてもよい。
【0032】
図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば放射源SOがエキシマレーザである場合には、放射源SOとリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、放射源SOはリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは放射源SOからイルミネータILへとビーム搬送系BDを介して受け渡される。ビーム搬送系BDは例えば適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを備える。あるいは放射源SOが例えば水銀ランプである場合には、放射源SOはリソグラフィ装置に一体に構成されていてもよい。放射源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射システムと総称されてもよい。
【0033】
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタADを備えてもよい。一般には、イルミネータILの瞳面における照度分布の少なくとも外径及び/または内径(通常それぞれ「シグマ−アウタ(σ−outer)」、「シグマ−インナ(σ−inner)」と呼ばれる)が調整される。加えてイルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の要素を備えてもよい。イルミネータILはビーム断面における所望の均一性及び照度分布を得るべく放射ビームを調整するために使用されてもよい。放射源SOと同様に、イルミネータILはリソグラフィ装置の一部を構成するとみなされてもよいし、そうでなくてもよい。例えば、イルミネータILは、リソグラフィ装置に一体の部分であってもよいし、リソグラフィ装置とは別体であってもよい。後者の場合、リソグラフィ装置はイルミネータILを搭載可能に構成されていてもよい。イルミネータILは取り外し可能とされ、(例えば、リソグラフィ装置の製造業者によって、またはその他の供給業者によって)別々に提供されてもよい。
【0034】
放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射して、パターニングデバイスMAによりパターンが付与される。パターニングデバイスMAを通過した放射ビームBは投影システムPSに進入する。投影システムPSはビームを基板Wの目標部分Cに合焦する。第2の位置決め装置PWと位置センサIF(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、静電容量センサなど)により基板テーブルWTを正確に移動させることができる。そうして基板テーブルWTは例えば放射ビームBの経路に異なる目標部分Cを順次位置決めするように移動される。同様に、第1の位置決め装置PMと他の位置センサ(図1には明示せず)とにより放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。この位置決めは例えばマスクライブラリからのマスクの機械的交換後や走査中に行われる。一般に支持構造MTの移動は、第1の位置決め装置PMの一部を構成するロングストロークモジュール(粗い位置決め用)及びショートストロークモジュール(精細な位置決め用)により実現される。同様に基板テーブルWTの移動は、第2の位置決め装置PWの一部を構成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現される。ステッパでは(スキャナとは異なり)、支持構造MTはショートストロークのアクチュエータにのみ接続されているか、あるいは固定されていてもよい。パターニングデバイスMAと基板Wとは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークが専用の目標部分を占拠しているが、アライメントマークは目標部分間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブライン・アライメントマークとして公知である)。同様に、パターニングデバイスMAに複数のダイがある場合にはパターニングデバイスアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0035】
図示の装置は例えば次のうちの少なくとも1つのモードで使用され得る。
【0036】
1.ステップモードにおいては、放射ビームBに付与されたパターンの全体が1回の照射(すなわち単一静的露光)で目標部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる。そして基板テーブルWTがX方向及び/またはY方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で結像される目標部分Cのサイズを制限することになる。
【0037】
2.スキャンモードにおいては、放射ビームBに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間(すなわち単一動的露光の間)、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期して走査される。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一動的露光での目標部分Cの(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離が目標部分Cの(走査方向の)長さを決定する。
【0038】
3.別のモードにおいては、支持構造MTがプログラム可能パターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、基板テーブルWTが移動または走査される。このモードではパルス放射源が通常用いられ、プログラム可能パターニングデバイスは、基板テーブルWTの毎回の移動後、または走査中の連続放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述のプログラマブルミラーアレイ等のプログラム可能パターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0039】
上記で記載したモードを組み合わせて動作させてもよいし、各モードに変更を加えて動作させてもよいし、さらに全く別のモードでリソグラフィ装置を使用してもよい。
【0040】
本発明のある実施形態は、リソグラフィ装置に、特に液浸リソグラフィ装置に、適用される。本発明のある実施形態は、非液浸リソグラフィ装置、例えばEUVリソグラフィ装置に適用される。液浸リソグラフィ装置の例を後述するのは、本明細書に述べる基板エッジ操作部が基板Wの端部と基板テーブルWTの上面との隙間を封じるシールとしても機能することができるからである。これは液浸装置に望ましい。しかし、後述の原理は非液浸装置にも同様に適用可能である。
【0041】
投影システムの最終要素と基板との間に液体を提供する構成は少なくとも三種類に大きく分類することができる。2つの大まかな分類は、浴槽型の構成といわゆる局所液浸システムとである。浴槽型は基板の実質的に全体と任意的に基板テーブルの一部とが液槽に浸される。いわゆる局所液浸システムは、基板の局所域にのみ液体を供給する液体供給システムを使用する。後者の分類においては、液体で満たされる空間は平面図にて基板上面よりも小さく、液体で満たされた領域は基板がその領域の下を移動しているとき投影システムに対し実質的に静止状態にある。もう1つの分類は、本発明のある実施形態に向けられるものであるが、液体が閉じ込められない全濡れ型である。この構成においては、実質的に基板の上面全体と基板テーブルの全体または一部が液浸液で覆われる。少なくとも基板を覆う液体の深さは浅い。液体は、基板上の(例えば薄い)液体フィルムであってもよい。図2乃至図5の液体供給デバイスのいずれもがこうしたシステムにも使用可能であるが、シール構造はなくすか、動作させないか、通常ほどは効果的でないようにするか、あるいはその他の手法で、局所域のみに液体を封じないようにする。4つの異なる形式の局所液体供給システムが図2乃至図5に図示されている。
【0042】
1つの提案される構成は、液体供給システムが基板の局所域のみにかつ投影システムの最終要素と基板との間に液体閉じ込めシステムを使用して液体を供給するというものである(基板は一般に投影システムの最終要素よりも大きな面積をもつ)。そのための構成の一例がPCT特許出願公開第WO99/49504号に開示されている。図2及び図3に示されるように、液体が少なくとも1つの入口によって基板上に、好ましくは最終要素に対する基板の移動方向に沿って供給され、投影システムの下を通過した後に少なくとも1つの出口によって除去される。つまり、基板が−X方向に最終要素の下を走査されると、液体が要素の+X側にて供給され、−X側にて除去される。図2は、液体が入口を介して供給され、低圧源に接続された出口によって要素の他方側で除去される構成を概略的に示したものである。図において基板Wの上方の矢印は液体流れ方向を示し、基板Wの下方の矢印は基板テーブル移動方向を示す。図2では液体が最終要素に対する基板の移動方向に沿って供給されるが、こうである必要はない。最終要素の周囲に配置された入口及び出口の様々な方向及び数が可能であり、一例が図3に示され、ここでは各側に4組の入口と出口が、最終要素の周囲に規則的なパターンで設けられる。液体供給デバイス及び液体回収デバイスにおける矢印が液体流れ方向を示す。
【0043】
局所液体供給システムをもつ液浸リソグラフィの更なる解決法が、図4に示されている。液体は、投影システムPSの両側にある2つの溝入口によって供給され、入口の半径方向外側に配置された複数の分離された出口によって除去される。入口及び出口は、投影ビームを通す穴を中心に有するプレートに設けることができる。液体は、投影システムPSの一方側にある1つの溝入口によって供給され、投影システムPSの他方側にある複数の分離された出口によって除去され、これによって投影システムPSと基板Wとの間に液体の薄膜の流れが生じる。入口と出口のどちらの組合せを使用するかの選択は、基板Wの移動方向によって決まる(他方の組合せの入口及び出口は作動させない)。図4の断面図において矢印は入口での液体流入方向と出口での液体流出方向とを示す。
【0044】
本明細書に参照によりその全体が援用される欧州特許出願公開第1420300号及び米国特許出願公開第2004−0136494号には、二重ステージまたはデュアルステージの液浸リソグラフィ装置の着想が開示されている。こうした装置には基板を支持するための2つのテーブルが設けられている。レベリング計測が1つのテーブルで第1位置で液浸液なしで実行され、露光が1つのテーブルで第2位置で液浸液ありで実行される。一実施例においては、装置は1つのテーブルのみを有するか、または一方のテーブルのみが基板を支持することのできる2つのテーブルを有する。
【0045】
PCT特許出願公開第WO2005/064405号は、液体が閉じ込められない全濡れ型を開示する。こうしたシステムにおいては、基板上面全体が液体で覆われる。これが有利であり得るのは、基板上面全体が実質的に同じ条件にさらされるからである。このことは温度制御と基板処理に利点をもつ。WO2005/064405においては、液体供給システムは投影システムの最終要素と基板との隙間に液体を供給する。その液体が基板の残部へと漏れ(または流れ)出ることが許容されている。基板テーブル端部の障壁が液漏れを防いでおり、液体は基板テーブル上面から制御された方式で除去されることができる。こうしたシステムは温度制御と基板処理を改善するが、それでも液浸液の蒸発は生じ得る。その問題の緩和を支援する1つの方法が米国特許出願公開第2006/0119809号に記載されている。すべての位置で基板を覆う部材が設けられている。この部材は、基板上面及び/または基板を保持する基板テーブルと当該部材との間に液浸液を延在させるよう構成されている。
【0046】
提案されている別の構成は流体ハンドリング構造をもつ液体供給システムを設けることである。流体ハンドリング構造は、投影システムの最終要素と基板テーブルとの間の空間の境界の少なくとも一部に沿って延在してもよい。こうした構成を図5に示す。流体ハンドリング構造は、投影システムに対してXY面で実質的に静止しているが、Z方向(光軸の方向)では多少の相対運動があってよい。流体ハンドリング構造と基板表面との間にシールが形成される。一実施例においては、流体ハンドリング構造と基板の表面との間にシールが形成され、このシールはガスシール等の非接触シールであってもよい。こうしたシステムは米国特許出願公開第2004−0207824号に開示されている。他の一実施例においては流体ハンドリング構造は非ガスのシールであるシールを有し、液体閉じ込め構造と呼ばれてもよい。
【0047】
図5は、バリア部材または液体閉じ込め構造を形成する本体12を有する局所液体供給システム、流体ハンドリング構造またはデバイスIHを模式的に示す図である。局所液体供給システムは、投影システムPSの最終要素と基板テーブルWTまたは基板Wとの間の空間11の境界の少なくとも一部に沿って延在する(以下の説明においては、そうではないと明示していない限り、基板Wの表面との言及は、それに加えてまたはそれに代えて基板テーブルWTの表面にも言及するものと留意されたい)。液体ハンドリング構造は、投影システムPSに対してXY面で実質的に静止しているが、Z方向(一般には光軸方向)では多少の相対運動があってよい。一実施例においては、本体12と基板Wの表面との間にシールが形成され、このシールはガスシールまたは流体シール等の非接触シールであってもよい。
【0048】
流体ハンドリング構造は、投影システムPSの最終要素と基板Wとの間の空間11の少なくとも一部に液体を収容する。基板Wに対する非接触シール、例えばガスシール16が投影システムPSの像フィールドの周囲に形成され、基板W表面と投影システムPSの最終要素との間の空間11に液体が閉じ込められてもよい。この空間11は少なくとも一部が、投影システムPSの最終要素の下方に配置され当該最終要素を囲む本体12により形成される。液体が、投影システムPSの下方かつ本体12内部の空間11に、液体入口13によって供給される。液体出口13によって液体が除去されてもよい。本体12は、投影システムPSの最終要素の少し上方まで延在していてもよい。液位が最終要素の上まで上昇することで、液体のバッファが提供される。一実施例においては本体12は、上端において内周が投影システムPSまたはその最終要素の形状に近似し、例えば円形であってもよい。下端において内周が像フィールドの形状に近似し、例えば長方形であってもよい。これらの形状は必須ではない。内周はいかなる形状であってもよく、例えば内周は投影システムの最終要素の形状に一致していてもよい。内周は円形であってもよい。
【0049】
液体は、本体12の底部と基板Wの表面との間に使用時に形成されるガスシール16によって空間11に収容されてもよい。ガスシール16は、例えば空気又は合成空気、一実施例ではN又はその他の不活性ガスなどの気体によって形成される。ガスシール16の気体は、圧力の作用で入口15を介して本体12と基板Wとの隙間に提供される。気体は出口14から抜き取られる。気体入口15での過剰圧力、出口14の真空レベル、及び当該隙間の幾何学的形状は、液体を閉じ込める内側への高速の気体流れが存在するように構成される。本体12と基板Wとの間の液体に作用する気体の力が空間11に液体を収容する。入口及び出口は空間11を取り巻く環状溝であってもよい。環状溝は連続していてもよいし不連続であってもよい。気体流れは空間11に液体を収容する効果がある。こうしたシステムは米国特許出願公開第2004−0207824号に開示されている。
【0050】
図5の例はいわゆる局所域型であり、液体はいかなる時点においても基板Wの上面の局所域に供給されるのみである。異なる構成も可能であり、例えば米国特許出願公開第2006−0038968号には、単相抽出器または二相抽出器を利用する流体ハンドリング構造を含む構成が開示されている。一実施例においては、単相抽出器または二相抽出器は、多孔質材料に覆われている入口を備えてもよい。一実施例の単相抽出器においては、多孔質材料が気体から液体を分離し単相の液体抽出を可能とするために使用される。多孔質材料の下流のチャンバがいくらか負圧に保たれて液体で満たされる。そのチャンバの負圧は、多孔質材料の孔に形成されるメニスカスが周囲の気体のチャンバへの引き込みを妨げるような大きさとされる。その一方、多孔質材料が液体に接触すれば流れを制限するメニスカスはなくなるので液体が自由にチャンバに流入できる。多孔質材料は多数の小孔、例えば5μm乃至300μmの、望ましくは5μm乃至50μmの範囲の直径の小孔を有する。一実施例においては、多孔質材料は少なくともいくらかの親液性(例えば親水性)をもつ。すなわち、多孔質材料は液浸液例えば水に対する接触角が90度未満である。
【0051】
液浸リソグラフィ装置の実施例においては、液浸リソグラフィ装置の形式そのもの(局所液浸であるとか、濡れ、浴槽など)は重要ではない。また、流体ハンドリングシステムが特定の形式であることも無関係であり、本発明はいかなる形式の流体ハンドリングシステムにも適用可能である。
【0052】
基板W上のコーティングには、その基板Wを基板テーブルWTの基板支持部100に取り付けたときに基板Wのエッジを上方または下方に曲げる効果を有しうる。加えて、コーティングは厚さ変動を有し、それによって基板Wエッジの平坦度に変動が生じうる。基板Wエッジ平坦度の別の変動原因は、基板Wの厚さ変動である。これは例えば研磨に起因する。基板W上部でエッジの特定位置からの材料除去が多い場合には、エッジに非平坦表面がもたらされる。加えて、基板Wの下側からの材料除去が多い場合には、基板Wが基板支持部100に取り付けられたときに、基板Wエッジが下方に曲げられることになる。基板Wの裏側端部または基板支持部100の端部は体系的または非体系的に汚染され、基板Wエッジの非平坦性の原因となる。例えばこれは時間とともに変化する。摩耗は時間とともにエッジ特性を低下させる。本発明の一実施形態は、経時的なエッジ特性変化を補償することにより、装置の有用な寿命を延ばすことができる。
【0053】
基板Wのエッジにおける非平坦性はレベリングの悪化さらにはフォーカス性能の悪化を招く。結像に先行して基板Wの全部分の高さを決定して結像中の基板Wの高さを変化させるために基板W表面を計測することは可能であるが、これは計算コストが高く、スループットを低下させることになる。加えて、エッジが湾曲している場合、当該エッジにおけるフィールド全体で焦点を合わせた状態に維持することは不可能かもしれない。例えば、そのフィールドの一部分は投影システムPSからの焦点距離が大きい一方で、フィールドの別の一部分は投影システムPSからの焦点距離が小さいかもしれない。その場合、焦点距離の最良適合が選択される必要があり、それは必然的に妥協である。加えて、基板エッジの局所的傾斜はオーバレイ性能を悪化させる。
【0054】
したがって、基板のエッジをできるだけ平坦に保つことが望ましい。これは基板エッジのオーバレイ性能を改善する。これにより、基板上で利用可能なダイが増えるので歩留まりが高くなる。
【0055】
基板Wのエッジにおける平坦度に体系的誤差がある場合には、受動的な手法が、基板Wを基板支持部100に位置決めしたときに所望の方向に基板Wのエッジを曲げるために、使用可能である。いくつかの受動的手法を、例えば図6を参照して後述する。
【0056】
エッジ平坦度を補正する能動的手法もまた、あるいは上記に代えて、下記の通り利用可能である。基板Wのエッジの平坦度が計測される。これは例えば、リソグラフィ装置の外部でなされてもよいし、リソグラフィ装置内のある計測位置でなされてもよいし、あるいは、リソグラフィ装置の露光位置でなされてもよい。一実施例においては基板Wのエッジの平坦度は、基板が基板支持部に載置されているときに計測される。計測の結果に従って、ある能動的方法が基板Wのエッジに力を付与するために使用され、それによって基板のエッジが曲げられて非平坦度が補償されてもよい。この補償力が付与された後に、基板Wの平坦度を再計測することは可能である。基板Wの平坦度の再計測後に、基板Wに像が形成される。あるいは必要であれば、エッジ平坦度の再計測と、基板Wエッジに付与されている力の再調整を必要に応じて行うことが可能である。こうしたループは必要な回数または所望の回数だけ行われてもよい。
【0057】
この処理は基板ごとに実行されてもよい。あるいはバッチごとに1枚の基板だけに実行されてもよい。この場合、そのバッチの各基板Wには同じ曲げ力が付与される。一実施例においては、調整力が、計測された平坦度に従ってルックアップテーブルから決定される。
【0058】
図6は、基板テーブルWTと、付随する基板支持部100と、を示す。基板支持部100は複数の突起(バール)110を備える。基板Wは基板支持部100に支持されている。基板支持部100は、基板Wのエッジに第1方向120に曲げ力を付与するよう適応されている。
【0059】
一実施例においては、基板支持部100は静電基板支持部である。すなわち、基板Wは、静電気力によって基板支持部100に保持されている。一実施例においては、基板支持部100は、基板Wと基板支持部100との間に負圧を生成することによって、自身に基板Wを吸引する。本明細書において負圧への言及は静電気力への言及とも読むものとする。負圧基板支持部100への言及により説明されるものと同一の原理が静電基板支持部にも等しく適用されるからである。
【0060】
各種の方法で基板支持部100によって曲げ力が付与される。基板支持部100と基板Wとの間に負圧を適用し、それによって基板Wを基板支持部100に向けて下方に引っ張り、そうして基板Wを突起110の上面に静止させるというように、基板支持部100は動作する。
【0061】
能動的な負圧変動または受動的な負圧変動(負圧は1つまたは複数の開口130を通じて適用される)によって、あるいは、1つまたは複数の突起110における能動的な変動または受動的な変動によって、曲げ力が基板Wに付与されてもよい。例えば、一実施例においては、最も外側の突起110Aの位置が基板Wのエッジに近づくようにシフトされ、または遠ざかるようシフトされ、それによって基板Wのエッジに生じる曲げ力を変化させてもよい。一実施例においては、突起110間のピッチ、剛性、平面図での断面積、及び/または突起110の高さが、基板支持部100によって基板Wに第1方向120の力を与えるものであってもよい。ある能動システムにおいては、突起110の平面図での位置及び/または断面高さが、例えば圧電アクチュエータを使用して、調整可能であってもよい。
【0062】
基板支持部100の端にはシール112が設けられている。シール112は、基板W下方の空間を、基板エッジと基板テーブルWTとの間の空間から分離する。一実施例においてはシール112は基板Wの下表面に接触する。一実施例においてはシール112は基板Wの下表面に接触せず、基板Wの下表面とシール112の上端との隙間の寸法は、基板Wとシール112との間をシールを通過して(図において)シール112の左右に液体がほとんど漏れ出ないように設定されている。シール112は例えば環状であってもよい。シール112は、基板Wを基板支持部100に保持するために使用される負圧が、基板Wのエッジと基板テーブルWTとの隙間におけるシール112の放射方向外側の負圧と干渉することなく最適化されるようになっている。このことは、特に、基板Wのエッジと基板テーブルWTの端部との隙間から液体を抽出する工程が行われ得る液浸リソグラフィ装置において有用である。図7及び図8の以下の実施形態においては、シール112は、基板エッジ操作部200によって基板Wエッジに付与される力が、基板支持部100によって基板Wに付与される力とは独立に調整されることを許容する。
【0063】
一実施例においては基板Wに誘起される曲げ量は、基板Wエッジと基板支持部100との間に与えられる局所的負圧によって決定される。
【0064】
一実施例においては、図6に示されるように、基板エッジ操作部200が設けられている。基板エッジ操作部200は部材210を備える。部材210は使用時において、基板Wの上側の主面に、望ましくは基板Wエッジにおいて、物理的に接触する。部材210と基板Wの上側主面との物理的接触によって、基板Wのエッジに曲げが誘起される。すなわち、部材210は、基板Wのエッジに方向220に曲げ力を付与する。ある実施例においては方向220は、方向120とは反対方向の成分を少なくとも有する。ある実施例においては方向120は方向220と同一方向である。
【0065】
一実施例においては部材210は、基板Wのエッジに可変の力を付与するよう構成されている。部材210は、基板Wのエッジに可変の力を付与するために、及び/または基板Wの基板支持部100上での位置決めを許容するために、矢印230で図示される双方向に作動されてもよい。
【0066】
一実施例においては、図10にも示されるように、部材210は矢印240に図示される双方向に位置決め可能である。方向240の移動によって、基板Wの基板支持部100へのローディングがより容易となる。
【0067】
部材210はアクチュエータ250によって作動されてもよい。アクチュエータ250は例えば、圧電アクチュエータ、電磁アクチュエータ、空気圧式アクチュエータ、静電アクチュエータ等であってもよい。ある実施例においてはアクチュエータ250は基板テーブルWTに取り付けられている。ある実施例においてはアクチュエータ250は基板支持部100に取り付けられている。
【0068】
基板Wの平坦度を測定する測定デバイス600(図1参照)は、基板Wのエッジの平坦度を表す信号を生成する。測定は基板Wに力を与えずに行ってもよい。あるいは、基板支持部100及び部材210の一方または双方からの名目上の(受動的な)力のみがあるときに測定がなされてもよい。この信号は、それに応じてアクチュエータ250を制御するコントローラ300に送信される。すなわち、アクチュエータ250は、部材210によって基板Wのエッジに付与される力が欠落しているときの基板Wエッジの平坦度に比べてそれが改善されるよう、部材210が基板Wエッジに付与する力を変化させるように作動される。
【0069】
一実施例においてはコントローラ300は、基準位置(例えば、本装置の投影システムPSの下方の位置)に対する基板テーブルWTの位置を表す信号を受信する。この信号に基づいてアクチュエータ250は、部材210が基板Wに所望の力を付与するように制御される。このようにして、基板Wエッジの外周に沿って平坦度が変化する場合に、基板Wエッジのどの部分がいま投影システムPSの下方にあるのかに従って、基板Wエッジに付与する力を変えることができる。したがって、平坦からの乖離が大きい基板Wエッジの一部分に像が形成されようとしているときには、部材210によって基板Wエッジに大きな力が付与される。逆に、相当に平坦であると測定されている基板Wエッジの一部分が投影システムPSの下方にあるときには、部材210によって基板Wエッジに小さな力が付与される。図10は、ある代替的な構成を示す。基板エッジ操作部200は基板Wの外周に沿って分割されており、平坦からの局所的な乖離を補正するのに適した局所的な力が基板Wのエッジに与えられる。
【0070】
一実施例においては基板Wの平坦度を測定する測定デバイス600は、基板Wに方向120または220のいずれにも力が与えられていないときに基板Wの平坦度を測定してもよい。一実施例においては測定デバイス600は、基板支持部100により付与される力120のみが存在するときに基板Wの平坦度を測定してもよい。一実施例においては測定デバイス600は、ある力が、例えば予め定められた力が、基板Wエッジに基板エッジ操作部200によって付与されているときに基板Wの平坦度を測定してもよい。検出された平坦からのいかなる変動であっても、基板エッジ操作部200によって基板Wエッジに付与される力を変化させることにより補正されうる。これは、平坦からのある大きさの乖離をある大きさの力の変化量と同一とみなすルックアップテーブルに基づいてもよい。
【0071】
一実施例においては、基板テーブルWTは、基板Wのエッジ平坦度とは無関係に基板Wのエッジに第1方向120に力を付与するために使用される。基板支持部100は、受動的に基板Wに力を付与してもよい。基板支持部100は、1つのバッチの基板ごとに、またはバッチごとには変化をしない方法で基板Wに力を付与してもよい。エッジに力を付与する既述の手法のいずれかが使用されてもよく、そうした手法には、基板支持部100の表面形状(特に、突起110の表面形状)による方式、複数の突起110間の機械的特性の違いによる方式、及び/または、基板Wエッジに比較したときの基板W中心における基板Wと基板支持部100の間の負圧変化による方式、が含まれる。
【0072】
一実施例においては、基板Wが基板支持部100に置かれた後に、エッジ平坦度が測定される。そのエッジ平坦度に従って、基板エッジ操作部200の部材210によって付与される力が変更され、それによってエッジ平坦度が改善される。
【0073】
上述の方法は、基板支持部100を用いて基板支持部100から離れるほうに基板Wエッジに曲げを意図的に引き起こし、その曲げを、部材210により付与される曲げ力の適用によって補正するものと理解される。このことの利点は、(基板支持部100に対し)上方向に曲げるのか下方向に曲げるのかに関係なく、基板Wの平坦度を改善するために使用される能動的な構成要素(基板エッジ操作部200)が1つだけであるということにある。
【0074】
一実施例においては、上方向120の曲げ及び下方向220の曲げが基板支持部100によって(例えば、突起110の表面形状及び負圧変化のそれぞれを使用することにより)実現されることが可能である。この場合、基板支持部100は基板エッジ操作部として動作する。
【0075】
一実施例においては、部材210は、基板Wのエッジと基板テーブルWTの上面410の端部との隙間に延在する。これは部材210への延長部分280として図6に破線で示されている。これにより、基板エッジ操作部200は、基板Wエッジと基板テーブルWTの上面410との隙間を封じるシールであってもよい。部材210及び延長部分280は、基板Wの周囲において基板テーブルWTの上側表面410から基板Wの上側主表面の外周部へと延びるカバーを使用時に形成する。このカバーは開放された中心部分を画定し、それによって基板Wの上側主面のビームPBへの露光が許容される。開放中心部分のサイズは、基板Wの上側表面のサイズよりも若干小さくてもよい。図9に示されるように、基板Wが円形である場合には、カバーは、平面図で見たときに、略環状の形状であってもよい。
【0076】
部材210、延長部分280、及びアクチュエータ250の構成は、部材210に基板Wのエッジを曲げる効果があることを除いて、2009年6月30日に出願された米国特許出願第61/213,658号に開示されたカバー及びアクチュエータと同様であってもよい。
【0077】
図7は、一実施形態の基板テーブルWTの断面を示す。図7の実施例は後述の点を除いて図6の実施例と同一である。
【0078】
図7においては、基板エッジ操作部200は、基板Wのエッジと、基板Wの位置する凹部400の端部と、の間にシールを形成するカバー2100を備える。カバー2100は、基板テーブルWT、カバー2100、及び基板Wにより画定される窪み2250に生成される負圧によって所定の位置に保持される。負圧がカバー2100を所定位置に保持する。負圧は、負圧源2600によって生成され、基板Wエッジにカバー2100が付与する力は負圧の大きさを変えることによって変化させることができる。この負圧は例えば、真空、静電気力、磁力等であってもよい。
【0079】
図8は基板テーブルの別の実施例の断面を示す。図8の実施例は後述の点を除いて図7の実施例と同一である。
【0080】
図8の実施例においては、カバー座部2200が設けられている。カバー2100はカバー座部2200に載っており、2つの窪み2300、2400がカバー2100の下に画定されている。第1窪み2300は基板W側に画定されている。負圧源2600により第1窪み2300に与えられる負圧が、カバー2100によって基板Wのエッジに付与される力を決定する。第2窪み2400はカバー座部2200と基板テーブルWTとの間にある。負圧源2600により第2窪み2400に与えられる負圧が、カバー2100を基板テーブルWTに保持する力を決定する。この力及びカバー2100が基板Wに接触する力は、カバー2100に与えられるいかなる力によっても、特に流体ハンドリングシステムによって、カバー2100が持ち上がって外れるのを避けるのに十分な大きさとすべきである。負圧は例えば、真空、静電気力、磁力等であってもよい。
【0081】
一実施例においては、負圧源は、第1窪み230への負圧と第2窪み2400への負圧とを独立に変化させることができる。
【0082】
基板エッジ操作部200が基板Wと基板テーブルWTとの隙間を覆うシールを形成する実施例は、液浸リソグラフィでの使用に有利である。液浸リソグラフィにおいては、基板Wエッジと基板テーブルWTとの隙間に捉えられた液体及び/または気体によって問題が生じうる。カバー2100を設けることにより、こうした問題は回避されるか縮小される。
【0083】
窪み2300、2400における通常の負圧は50mbarないし100mbarであってもよい。通常、平坦からの変動が10nm大きくなるごとに、10mbarの負圧を追加する必要があるかもしれない。
【0084】
基板エッジ操作部200がシールを備える実施例においては、基板Wに方向220に力を付与することがともかく良好なシールを保証するために一般に必要である。したがって、基板支持部100の使用により方向120に基板Wエッジを意図的に曲げ、その力を変えることにより補正をすることは、いずれにしても負圧が与えられているので、システムの複雑さを増やさない。
【0085】
図9は、図7の実施例に係るカバー2100の平面図を示す。図9は、カバー2100がどのように窪み2250、基板Wのエッジ、及び凹部400の端部を覆って延びているのかを示す。
【0086】
図10は、本発明の一実施形態の平面図を示す。図10においては、基板エッジ操作部200は6つのカバー2100AないしFを備える。いくつのカバー2100A〜Fが設けられてもよい。図6、7、または8のカバー2100は、基板Wの外周に沿う局所位置での平坦からの乖離が、大域的な補正というよりも、局所的に補正されるように、分割されていてもよい。よって、カバー2100A〜Fのそれぞれが、関連する基板Wエッジの局所的平坦度を補正するのに適した力を付与してもよい。そのために、例えば基板エッジ操作部200に図7の負圧源2600が装備される場合には、別個の窪み2250A〜Fがカバー2100A〜Fのそれぞれに関連して基板Wと基板テーブルWTとの間に設けられていてもよい。
【0087】
理解されるように、本願にて網羅される明記された組み合わせには限られず、任意の上記の特徴は他の任意の上記の特徴とともに使用可能である。
【0088】
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用を例として説明しているが、本リソグラフィ装置は他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。他の用途としては、集積光学システム、磁区メモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどがある。当業者であればこれらの他の適用に際して、本明細書における「ウェーハ」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「目標部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされると理解することができるであろう。基板は露光前または露光後においてトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本明細書における基板という用語は既に処理されている多数の処理層を含む基板をも意味する。
【0089】
本明細書において「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば約365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を示す。「レンズ」という用語は、文脈が許す限り、屈折光学素子及び反射光学素子を含む1つの光学素子またはこれら各種の光学素子の組み合わせを指し示すものであってもよい。
【0090】
本発明の特定の実施形態が上述されたが、説明したもの以外の態様で本発明が実施されてもよい。例えば、本発明の実施形態は、上述の方法を記述する機械で読み取り可能な命令の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形式をとってもよいし、そのコンピュータプログラムを記録したデータ記録媒体(例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光ディスク)であってもよい。機械で読み取り可能な命令は2以上のコンピュータプログラムにより実現されてもよい。それら2以上のコンピュータプログラムは1つまたは複数の異なるメモリ及び/またはデータ記録媒体に記録されていてもよい。
【0091】
本明細書に記載のコントローラは各々がまたは組み合わされて、リソグラフィ装置の少なくとも1つの構成要素内部に設けられた1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって1つまたは複数のコンピュータプログラムが読み取られたときに動作可能であってもよい。コントローラは信号を受信し処理し送信するのに適切ないかなる構成であってもよい。1つまたは複数のプロセッサは少なくとも1つのコントローラと通信するよう構成されていてもよい。例えば、各コントローラが上述の方法のための機械読み取り可能命令を含むコンピュータプログラムを実行するための1つまたは複数のプロセッサを含んでもよい。コントローラはコンピュータプログラムを記録する記録媒体及び/またはそのような媒体を受けるハードウェアを含んでもよい。コントローラは1つまたは複数のコンピュータプログラムの機械読み取り可能命令に従って動作してもよい。
【0092】
本発明の1つまたは複数の実施形態はいかなる液浸リソグラフィ装置に適用されてもよい。特に、上述の形式のものを含むがこれらに限られない。液浸液が浴槽形式で提供されてもよいし、基板の局所領域のみに提供されてもよいし、非閉じ込め型であってもよい。非閉じ込め型においては、液浸液が基板及び/または基板テーブルの表面から外部に流れ出ることで、基板テーブル及び/または基板の覆われていない実質的に全ての表面が濡れ状態であってもよい。非閉じ込め液浸システムにおいては、液体供給システムは液浸流体を閉じ込めなくてもよいし、液浸液の一部が閉じ込められるが完全には閉じ込めないようにしてもよい。
【0093】
本明細書に述べた液体供給システムは広く解釈されるべきである。ある実施形態においては投影システムと基板及び/または基板テーブルとの間の空間に液体を提供する機構または構造体の組合せであってもよい。1つまたは複数の構造体、及び1つまたは複数の流体開口の組合せを含んでもよい。流体開口は、1つまたは複数の液体開口、1つまたは複数の気体開口、1つまたは複数の二相流のための開口を含む。開口のそれぞれは、液浸空間への入口(または流体ハンドリング構造からの出口)または液浸空間からの出口(または流体ハンドリング構造への入口)であってもよい。一実施例においては、液浸空間の表面は基板及び/または基板テーブルの一部であってもよい。あるいは液浸空間の表面は基板及び/または基板テーブルの表面を完全に含んでもよいし、液浸空間が基板及び/または基板テーブルを包含してもよい。液体供給システムは、液体の位置、量、性質、形状、流速、またはその他の性状を制御するための1つまたは複数の要素をさらに含んでもよいが、それは必須ではない。
【0094】
上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、後述の請求項の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持するための基板テーブルであって、
基板を支持するための基板支持部であって、基板エッジに第1方向の曲げ力を付与する基板支持部と、
第1方向とは反対向きの成分を少なくとも有する第2方向の可変の曲げ力を基板エッジに付与する基板エッジ操作部と、を備える基板テーブル。
【請求項2】
前記基板エッジ操作部により基板エッジに付与される力を信号に基づいて制御するコントローラをさらに備える、請求項1に記載の基板テーブル。
【請求項3】
前記信号は、(i)前記基板支持部に支持されているときの基板エッジの平坦度を表し、及び/または、(ii)基準位置に対する基板テーブルの位置を表す信号である、請求項2に記載の基板テーブル。
【請求項4】
前記コントローラは、前記基板エッジ操作部により付与される力が欠落しているときの平坦度に比べて、前記第2方向に基板エッジの曲げを引き起こして前記基板支持部にある基板エッジの平坦度を改善するために、前記基板エッジ操作部により基板エッジに付与される曲げ力を制御する、請求項2または3に記載の基板テーブル。
【請求項5】
前記基板支持部は、該基板支持部の表面形状によって基板エッジに力を付与する、請求項1から3のいずれかに記載の基板テーブル。
【請求項6】
前記基板支持部は、使用時に基板を支持する複数の突起間の機械的特性の違いによって基板エッジに力を付与する、請求項1から5のいずれかに記載の基板テーブル。
【請求項7】
前記基板支持部は、基板中心部に対して基板エッジにおける基板と基板支持部との間の負圧を変化させることによって基板エッジに力を付与する、請求項1から6のいずれかに記載の基板テーブル。
【請求項8】
前記基板エッジ操作部は、基板エッジと基板テーブルの上面との隙間を封じるシールである、請求項1から7のいずれかに記載の基板テーブル。
【請求項9】
前記基板エッジ操作部は、基板に物理的に接触する機械的操作部を備える、請求項1から8のいずれかに記載の基板テーブル。
【請求項10】
前記基板エッジ操作部は、基板の周囲において基板テーブルの上側表面から基板の上側主面の外周部分へと使用時に延びているカバーを備え、該カバーは開放された中央部分を画定する、請求項9に記載の基板テーブル。
【請求項11】
前記基板エッジ操作部は、負圧源、電磁アクチュエータ、圧電アクチュエータ、静電アクチュエータの1つまたは複数を通じて前記可変の曲げ力を付与する、請求項1から10のいずれかに記載の基板テーブル。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の基板テーブルを備えるリソグラフィ装置。
【請求項13】
基板の平坦度を測定するための測定デバイスをさらに備える、請求項12に記載のリソグラフィ装置。
【請求項14】
基板のエッジを平らにする方法であって、
基板のエッジに第1方向に曲げを引き起こすのに十分な力を基板のエッジに与えることと、
基板のエッジの平坦度を改善するために、第1方向とは実質的に反対向きの第2方向の可変の力を基板のエッジに与えることと、を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の基板のエッジの平坦度を改善する方法を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−243981(P2011−243981A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−106085(P2011−106085)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】