基板保持具
【課題】フレームの重量増大を招くことなく剛性を高めることができ、積層時の位置ずれや崩れを防止したり、専用の輸送容器等を省略したり、さらにはハンドリング作業の便宜を図ることのできる基板保持具を提供する。
【解決手段】フレーム2にその中空を覆う弾性の保持層3を貼着し、この保持層3上に大口径の半導体ウェーハWを着脱自在に保持させ、フレーム2の表裏厚さ方向に、剛性を向上させる凹凸部4を形成する。また、フレーム2の凹凸部4を、フレーム2の外周縁部を断面略山形に屈曲することにより形成する。凹凸部4が断面略山形に屈曲してフレーム2の剛性を高めるので、フレーム2の大口径化が要求されても、フレーム2の反りや撓みが大きくなるのを防止できる。
【解決手段】フレーム2にその中空を覆う弾性の保持層3を貼着し、この保持層3上に大口径の半導体ウェーハWを着脱自在に保持させ、フレーム2の表裏厚さ方向に、剛性を向上させる凹凸部4を形成する。また、フレーム2の凹凸部4を、フレーム2の外周縁部を断面略山形に屈曲することにより形成する。凹凸部4が断面略山形に屈曲してフレーム2の剛性を高めるので、フレーム2の大口径化が要求されても、フレーム2の反りや撓みが大きくなるのを防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等からなる基板を保持する基板保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体のダイシング工程等で使用される従来の基板保持具1は、図10ないし図14に示すように、中空のフレーム2Aと、このフレーム2Aに緊張状態で接着されて中空を覆う保持層3とを備え、この保持層3上に半導体ウェーハWを着脱自在に保持したり、上下方向に複数枚積層されたり、あるいは積層された状態でコイン型の輸送容器20に収納される(特許文献1参照)。
【0003】
フレーム2Aは、図10ないし図12に示すように、SUS等の所定の材料を使用して半導体ウェーハWよりも拡径の平面略リング形に形成され、かつ平坦な薄い板に形成されており、裏面に可撓性の保持層3が接着剤を介して接着されている。また、輸送容器20は、図13や図14に示すように、積層された複数枚の基板保持具1を整列収納する略有底円筒形の容器本体21と、この容器本体21の開口した上部に着脱自在に嵌合される平面円形の蓋体22とを備えて構成されている。
【特許文献1】特開2002−240883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来における基板保持具1は、以上のように構成され、フレーム2Aが単に平坦な板に形成されているので、半導体ウェーハWの大口径化に伴いフレーム2Aの大口径化が要求されると、反りや撓みが大きくなるという問題がある。この問題を解消するには、フレーム2Aを肉厚にして剛性を高めれば良いが、そうすると、フレーム2Aの重量が増大して取り扱いに支障を来たすおそれがある。
【0005】
また、従来における基板保持具1のフレーム2Aには、スタッキング構造やズレ防止構造が何ら設けられていないので、複数枚の基板保持具1の積層時にガイド等を付設しないと、位置ずれしたり、崩れたりし、又専用の輸送容器20を用意して収納せざるを得ないという問題がある。
【0006】
また、従来の基板保持具1は、図12に示すように、フレーム2Aが平坦な板である関係上、外周縁部に凹凸や隙間がなくその掴持が困難である。したがって、専用のロボット23でハンドリングする場合には図15や図16に示すように、積層された複数枚の基板保持具1を上方から吸着パッド24で一枚ずつ真空吸着し、基板保持具1を順番に取り出さざるを得ない。
【0007】
さらに、積層された複数枚の基板保持具1の中段から基板保持具1を一枚取り出す場合には図17に示すように、前後の開口した専用のカセット25に複数枚の基板保持具1を移し替えて整列収納するとともに、上下に並んだ基板保持具1と基板保持具1との間にハンドリング用の隙間を形成し、この隙間を用いて中段の基板保持具1を取り出すしかないという問題もある。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、フレームの重量増大を招くことなく剛性を高めたり、位置ずれや崩れを防止したり、専用の輸送容器等を省略することができ、さらにはハンドリング作業の便宜を図ることのできる基板保持具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、フレームにその中空を覆う保持層を貼り付け、この保持層に基板を着脱自在に保持させるものであって、
フレームの表裏厚さ方向に凹凸部を形成したことを特徴としている。
なお、フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部を断面略山形に屈曲することにより形成することができる。
【0010】
また、フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部の表裏面からそれぞれ突片を突出させることにより形成することができる。
さらに、フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部の表裏面いずれか一方から突片を突出させるとともに、他方から複数の突片を突出させることにより形成することもできる。
【0011】
ここで、特許請求の範囲におけるフレームは、中空であれば、リング形や枠形等を特に問うものではない。保持層は、弾性や可撓性を有するものであれば、密着性のエラストマーでも良いし、その他の材質の薄いフィルムでも良い。また、基板は、口径300mmや450mmの大口径の半導体ウェーハが主ではあるが、何らこれに限定されるものではない。例えば、大きな液晶基板や各種のガラス基板等でも良い。凹凸部は、エンドレスでも良いし、そうでなくても良い。さらに、突片は、先細りの形でも良いし、これ以外の形に形成することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フレームの重量増大を招くことなく剛性を高めることができ、しかも、基板保持具の位置ずれや崩れを防止したり、基板保持具専用の輸送容器等を省略することができるという効果がある。また、基板保持具のハンドリング作業の便宜を図ることができるという効果がある。
【0013】
また、フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部の表裏面からそれぞれ突片を突出させることにより形成したり、あるいはフレームの外周縁部の表裏面いずれか一方から突片を突出させるとともに、他方から複数の突片を突出させることにより形成すれば、必要に応じ、凹凸部のバリエーションを変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る基板保持具の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板保持具1は、図1ないし図3に示すように、丸いフレーム2にその中空を覆う弾性の保持層3を貼着し、この保持層3に口径300mmの大口径の半導体ウェーハWを着脱自在に保持させ、フレーム2の表裏厚さ方向には、フレーム2の強度や剛性を向上させるエンドレスの凹凸部4を形成するようにしている。
【0015】
フレーム2は、図1ないし図3に示すように、SUS等の金属や所定の樹脂を含む成形材料を使用して薄い半導体ウェーハWよりも拡径の平面略リング形に成形され、平坦で軽量の薄い板に形成されており、裏面には可撓性を有する保持層3の周縁部が接着剤を介して接着される。所定の樹脂を含む成形材料は、例えば流動性や寸法安定性、精密成形に優れるPPSやナイロン系の樹脂等に、強度や剛性に優れるカーボンファイバーや炭酸カルシウム等が混合混練されることにより調製される。このフレーム2の表面前側には、位置決め用の複数の切り欠きが形成され、表面後部には、RFIDタグ用の凹み穴が選択的に形成される。
【0016】
保持層3は、図1や図3に示すように、例えばオレフィン系で単層の薄いエラストマー等からなり、半導体ウェーハWよりも拡径の平面円形に形成されており、基板保持具1の使用後にフレーム2のリサイクルに給するべく、剥離される。この保持層3の表面は、例えば半導体ウェーハWに対して隙間のない密着が要求される場合には、フィルムやロールの鏡面転写により鏡面加工される。
【0017】
凹凸部4は、図3に示すように、フレーム2の外周縁部がその厚さ方向に握持しやすい断面略山形、換言すれば、断面略V字形に屈曲することにより平面略リング形に形成され、複数枚の基板保持具1の積層時にスタッキング機能やズレ防止機能を発揮する。
【0018】
このような基板保持具1を複数枚積層する場合には図2や図3に示すように、基板保持具1を上下方向に積み重ねて隣接するフレーム2の凹凸部4同士を相互に嵌合すれば良い。この際、凹凸部4同士の嵌合により、上下に隣接するフレーム2の間には、ハンドリング用の隙間や段差が生じることとなる。
【0019】
また、係る複数枚の基板保持具1を輸送、搬送、ハンドリングしたい場合には図4や図5に示すように、基板保持具1と同じ大きさの底板10と天板11とを用意し、これら底板10と天板11との間に積層した複数枚の基板保持具1を挟み、これらの周縁部に複数のクランプ治具12を間隔をおき嵌合係止すれば、複数枚の基板保持具1を一体的に輸送、搬送、ハンドリングすることができる。
【0020】
底板10と天板11とは、部品点数を削減する観点から、共通の円板部品を使用しても良いが、異なる部品を使用することもできる。また、クランプ治具12は、バネ性を有する材料を使用して断面略U字形に屈曲形成される。
【0021】
上記によれば、フレーム2の凹凸部4が断面略山形に屈曲してフレーム2の撓み方向の剛性を著しく高めるので、例え半導体ウェーハWの大口径化に伴いフレーム2の大口径化が要求されても、フレーム2の反りや撓みが大きくなるのを有効に抑制防止し、デザイン性をも大幅に向上させることができる。また、フレーム2を肉厚にして剛性を高める必要もないので、フレーム2の重量が増大して取り扱いに支障を来たすのを防止することができる。また、上下に隣接する基板保持具1の凹凸部4が干渉し合い、スタッキング機能やズレ防止機能を発揮するので、複数枚の基板保持具1の積層時に位置ずれしたり、崩れたりすることが実に少ない。
【0022】
また、上下方向や水平方向への位置ずれを防ぐことができるので、従来のような専用の輸送容器20を用意して収納、輸送、搬送等する必要が全くなく、ランニングコストの削減を図ることが可能になる。また、凹凸部4がフレーム2の外周縁部に凹凸を形成し、しかも、複数のフレーム2間にハンドリング用の隙間を形成するので、外周縁部の握持によるハンドリング作業の容易化が大いに期待できる。したがって、エッジクランプタイプの専用のロボット23でハンドリングする場合でも、積層された複数枚の基板保持具1を上方から吸着パッド24で一枚ずつ真空吸着し、基板保持具1を順次取り出す必要がない。
【0023】
また、積層された複数枚の基板保持具1の中段から基板保持具1を1枚抜き取るようなランダムアクセスの場合にも図6や図7に示すように、2台のロボット23で取り出すことができる。したがって、図17に示すような専用のカセット25に複数枚の基板保持具1を移し替えて整列収納する必要がない。さらにこれら以外にも、図7に示すように、ロボット23のハンドリングの多種多様化が大いに期待できる。
【0024】
次に、図8は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、フレーム2の凹凸部4を、フレーム2の外周縁部の表裏面からそれぞれ突片5・5Aを上下方向に突出させることにより形成するようにしている。
【0025】
これら表裏面の突片5・5Aは、それぞれ平面略リング形のエンドレスの先細りに形成され、相互に隣接しており、複数枚の基板保持具1の積層時にスタッキング機能やズレ防止機能を発揮する。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、凹凸部4のバリエーションの多様化を図ることができるのは明らかである。
【0026】
次に、図9は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、フレーム2の凹凸部4を、フレーム2の外周縁部の表面から先細りの突片5を上方向に突出させるとともに、裏面から先細りの一対の突片5Aをそれぞれ下方向に突出させることにより形成するようにしている。
【0027】
表面の突片5は、裏面における一対の突片5・5A間に位置するよう形成され、裏面の突片5Aと共に基板保持具1の積層時にスタッキング機能やズレ防止機能を発揮する。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、簡易な構成で凹凸部4のバリエーションを増加させることができる。
【0028】
なお、フレーム2の内外方向に位置する凹凸部4については、フレーム2の外周縁部を断面略C字形、U字形、W字形等に屈曲することにより形成しても良い。また、屈曲することにより複数形成しても良い。また、フレーム2の周方向に凹凸部4をエンドレスに設けても良いが、同様の機能を営む凹凸部4を間隔をおいて複数設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る基板保持具の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板保持具の実施形態における複数枚の基板保持具を積層する状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係る基板保持具の実施形態における複数枚の基板保持具を積層する状態を模式的に示す一部断面説明図である。
【図4】本発明に係る基板保持具の実施形態における輸送形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図5】本発明に係る基板保持具の実施形態における底板、天板、クランプ治具等を模式的に示す斜視説明図である。
【図6】本発明に係る基板保持具の実施形態における積層された複数枚の基板保持具をハンドリングする状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図7】図6の状態から積層された基板保持具の中段の1枚を2台のロボットにより取り出している状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図8】本発明に係る基板保持具の第2の実施形態を模式的に示す一部断面説明図である。
【図9】本発明に係る基板保持具の第3の実施形態を模式的に示す一部断面説明図である。
【図10】従来の基板保持具を模式的に示す斜視説明図である。
【図11】従来の基板保持具の積層状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図12】従来の基板保持具の積層状態を模式的に示す一部断面説明図である。
【図13】従来の輸送容器を模式的に示す斜視説明図である。
【図14】図13の分解斜視説明図である。
【図15】従来の基板保持具をロボットによりハンドリングする状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図16】従来の基板保持具をハンドリングした状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図17】専用のカセットに複数枚の基板保持具を移し替えて整列収納した状態を模式的に示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 基板保持具
2 フレーム
3 保持層
4 凹凸部
5 突片
5A 突片
20 輸送容器
23 ロボット
24 吸着パッド
25 カセット
W 半導体ウェーハ(基板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等からなる基板を保持する基板保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体のダイシング工程等で使用される従来の基板保持具1は、図10ないし図14に示すように、中空のフレーム2Aと、このフレーム2Aに緊張状態で接着されて中空を覆う保持層3とを備え、この保持層3上に半導体ウェーハWを着脱自在に保持したり、上下方向に複数枚積層されたり、あるいは積層された状態でコイン型の輸送容器20に収納される(特許文献1参照)。
【0003】
フレーム2Aは、図10ないし図12に示すように、SUS等の所定の材料を使用して半導体ウェーハWよりも拡径の平面略リング形に形成され、かつ平坦な薄い板に形成されており、裏面に可撓性の保持層3が接着剤を介して接着されている。また、輸送容器20は、図13や図14に示すように、積層された複数枚の基板保持具1を整列収納する略有底円筒形の容器本体21と、この容器本体21の開口した上部に着脱自在に嵌合される平面円形の蓋体22とを備えて構成されている。
【特許文献1】特開2002−240883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来における基板保持具1は、以上のように構成され、フレーム2Aが単に平坦な板に形成されているので、半導体ウェーハWの大口径化に伴いフレーム2Aの大口径化が要求されると、反りや撓みが大きくなるという問題がある。この問題を解消するには、フレーム2Aを肉厚にして剛性を高めれば良いが、そうすると、フレーム2Aの重量が増大して取り扱いに支障を来たすおそれがある。
【0005】
また、従来における基板保持具1のフレーム2Aには、スタッキング構造やズレ防止構造が何ら設けられていないので、複数枚の基板保持具1の積層時にガイド等を付設しないと、位置ずれしたり、崩れたりし、又専用の輸送容器20を用意して収納せざるを得ないという問題がある。
【0006】
また、従来の基板保持具1は、図12に示すように、フレーム2Aが平坦な板である関係上、外周縁部に凹凸や隙間がなくその掴持が困難である。したがって、専用のロボット23でハンドリングする場合には図15や図16に示すように、積層された複数枚の基板保持具1を上方から吸着パッド24で一枚ずつ真空吸着し、基板保持具1を順番に取り出さざるを得ない。
【0007】
さらに、積層された複数枚の基板保持具1の中段から基板保持具1を一枚取り出す場合には図17に示すように、前後の開口した専用のカセット25に複数枚の基板保持具1を移し替えて整列収納するとともに、上下に並んだ基板保持具1と基板保持具1との間にハンドリング用の隙間を形成し、この隙間を用いて中段の基板保持具1を取り出すしかないという問題もある。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、フレームの重量増大を招くことなく剛性を高めたり、位置ずれや崩れを防止したり、専用の輸送容器等を省略することができ、さらにはハンドリング作業の便宜を図ることのできる基板保持具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、フレームにその中空を覆う保持層を貼り付け、この保持層に基板を着脱自在に保持させるものであって、
フレームの表裏厚さ方向に凹凸部を形成したことを特徴としている。
なお、フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部を断面略山形に屈曲することにより形成することができる。
【0010】
また、フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部の表裏面からそれぞれ突片を突出させることにより形成することができる。
さらに、フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部の表裏面いずれか一方から突片を突出させるとともに、他方から複数の突片を突出させることにより形成することもできる。
【0011】
ここで、特許請求の範囲におけるフレームは、中空であれば、リング形や枠形等を特に問うものではない。保持層は、弾性や可撓性を有するものであれば、密着性のエラストマーでも良いし、その他の材質の薄いフィルムでも良い。また、基板は、口径300mmや450mmの大口径の半導体ウェーハが主ではあるが、何らこれに限定されるものではない。例えば、大きな液晶基板や各種のガラス基板等でも良い。凹凸部は、エンドレスでも良いし、そうでなくても良い。さらに、突片は、先細りの形でも良いし、これ以外の形に形成することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フレームの重量増大を招くことなく剛性を高めることができ、しかも、基板保持具の位置ずれや崩れを防止したり、基板保持具専用の輸送容器等を省略することができるという効果がある。また、基板保持具のハンドリング作業の便宜を図ることができるという効果がある。
【0013】
また、フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部の表裏面からそれぞれ突片を突出させることにより形成したり、あるいはフレームの外周縁部の表裏面いずれか一方から突片を突出させるとともに、他方から複数の突片を突出させることにより形成すれば、必要に応じ、凹凸部のバリエーションを変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る基板保持具の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板保持具1は、図1ないし図3に示すように、丸いフレーム2にその中空を覆う弾性の保持層3を貼着し、この保持層3に口径300mmの大口径の半導体ウェーハWを着脱自在に保持させ、フレーム2の表裏厚さ方向には、フレーム2の強度や剛性を向上させるエンドレスの凹凸部4を形成するようにしている。
【0015】
フレーム2は、図1ないし図3に示すように、SUS等の金属や所定の樹脂を含む成形材料を使用して薄い半導体ウェーハWよりも拡径の平面略リング形に成形され、平坦で軽量の薄い板に形成されており、裏面には可撓性を有する保持層3の周縁部が接着剤を介して接着される。所定の樹脂を含む成形材料は、例えば流動性や寸法安定性、精密成形に優れるPPSやナイロン系の樹脂等に、強度や剛性に優れるカーボンファイバーや炭酸カルシウム等が混合混練されることにより調製される。このフレーム2の表面前側には、位置決め用の複数の切り欠きが形成され、表面後部には、RFIDタグ用の凹み穴が選択的に形成される。
【0016】
保持層3は、図1や図3に示すように、例えばオレフィン系で単層の薄いエラストマー等からなり、半導体ウェーハWよりも拡径の平面円形に形成されており、基板保持具1の使用後にフレーム2のリサイクルに給するべく、剥離される。この保持層3の表面は、例えば半導体ウェーハWに対して隙間のない密着が要求される場合には、フィルムやロールの鏡面転写により鏡面加工される。
【0017】
凹凸部4は、図3に示すように、フレーム2の外周縁部がその厚さ方向に握持しやすい断面略山形、換言すれば、断面略V字形に屈曲することにより平面略リング形に形成され、複数枚の基板保持具1の積層時にスタッキング機能やズレ防止機能を発揮する。
【0018】
このような基板保持具1を複数枚積層する場合には図2や図3に示すように、基板保持具1を上下方向に積み重ねて隣接するフレーム2の凹凸部4同士を相互に嵌合すれば良い。この際、凹凸部4同士の嵌合により、上下に隣接するフレーム2の間には、ハンドリング用の隙間や段差が生じることとなる。
【0019】
また、係る複数枚の基板保持具1を輸送、搬送、ハンドリングしたい場合には図4や図5に示すように、基板保持具1と同じ大きさの底板10と天板11とを用意し、これら底板10と天板11との間に積層した複数枚の基板保持具1を挟み、これらの周縁部に複数のクランプ治具12を間隔をおき嵌合係止すれば、複数枚の基板保持具1を一体的に輸送、搬送、ハンドリングすることができる。
【0020】
底板10と天板11とは、部品点数を削減する観点から、共通の円板部品を使用しても良いが、異なる部品を使用することもできる。また、クランプ治具12は、バネ性を有する材料を使用して断面略U字形に屈曲形成される。
【0021】
上記によれば、フレーム2の凹凸部4が断面略山形に屈曲してフレーム2の撓み方向の剛性を著しく高めるので、例え半導体ウェーハWの大口径化に伴いフレーム2の大口径化が要求されても、フレーム2の反りや撓みが大きくなるのを有効に抑制防止し、デザイン性をも大幅に向上させることができる。また、フレーム2を肉厚にして剛性を高める必要もないので、フレーム2の重量が増大して取り扱いに支障を来たすのを防止することができる。また、上下に隣接する基板保持具1の凹凸部4が干渉し合い、スタッキング機能やズレ防止機能を発揮するので、複数枚の基板保持具1の積層時に位置ずれしたり、崩れたりすることが実に少ない。
【0022】
また、上下方向や水平方向への位置ずれを防ぐことができるので、従来のような専用の輸送容器20を用意して収納、輸送、搬送等する必要が全くなく、ランニングコストの削減を図ることが可能になる。また、凹凸部4がフレーム2の外周縁部に凹凸を形成し、しかも、複数のフレーム2間にハンドリング用の隙間を形成するので、外周縁部の握持によるハンドリング作業の容易化が大いに期待できる。したがって、エッジクランプタイプの専用のロボット23でハンドリングする場合でも、積層された複数枚の基板保持具1を上方から吸着パッド24で一枚ずつ真空吸着し、基板保持具1を順次取り出す必要がない。
【0023】
また、積層された複数枚の基板保持具1の中段から基板保持具1を1枚抜き取るようなランダムアクセスの場合にも図6や図7に示すように、2台のロボット23で取り出すことができる。したがって、図17に示すような専用のカセット25に複数枚の基板保持具1を移し替えて整列収納する必要がない。さらにこれら以外にも、図7に示すように、ロボット23のハンドリングの多種多様化が大いに期待できる。
【0024】
次に、図8は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、フレーム2の凹凸部4を、フレーム2の外周縁部の表裏面からそれぞれ突片5・5Aを上下方向に突出させることにより形成するようにしている。
【0025】
これら表裏面の突片5・5Aは、それぞれ平面略リング形のエンドレスの先細りに形成され、相互に隣接しており、複数枚の基板保持具1の積層時にスタッキング機能やズレ防止機能を発揮する。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、凹凸部4のバリエーションの多様化を図ることができるのは明らかである。
【0026】
次に、図9は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、フレーム2の凹凸部4を、フレーム2の外周縁部の表面から先細りの突片5を上方向に突出させるとともに、裏面から先細りの一対の突片5Aをそれぞれ下方向に突出させることにより形成するようにしている。
【0027】
表面の突片5は、裏面における一対の突片5・5A間に位置するよう形成され、裏面の突片5Aと共に基板保持具1の積層時にスタッキング機能やズレ防止機能を発揮する。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、簡易な構成で凹凸部4のバリエーションを増加させることができる。
【0028】
なお、フレーム2の内外方向に位置する凹凸部4については、フレーム2の外周縁部を断面略C字形、U字形、W字形等に屈曲することにより形成しても良い。また、屈曲することにより複数形成しても良い。また、フレーム2の周方向に凹凸部4をエンドレスに設けても良いが、同様の機能を営む凹凸部4を間隔をおいて複数設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る基板保持具の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板保持具の実施形態における複数枚の基板保持具を積層する状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係る基板保持具の実施形態における複数枚の基板保持具を積層する状態を模式的に示す一部断面説明図である。
【図4】本発明に係る基板保持具の実施形態における輸送形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図5】本発明に係る基板保持具の実施形態における底板、天板、クランプ治具等を模式的に示す斜視説明図である。
【図6】本発明に係る基板保持具の実施形態における積層された複数枚の基板保持具をハンドリングする状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図7】図6の状態から積層された基板保持具の中段の1枚を2台のロボットにより取り出している状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図8】本発明に係る基板保持具の第2の実施形態を模式的に示す一部断面説明図である。
【図9】本発明に係る基板保持具の第3の実施形態を模式的に示す一部断面説明図である。
【図10】従来の基板保持具を模式的に示す斜視説明図である。
【図11】従来の基板保持具の積層状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図12】従来の基板保持具の積層状態を模式的に示す一部断面説明図である。
【図13】従来の輸送容器を模式的に示す斜視説明図である。
【図14】図13の分解斜視説明図である。
【図15】従来の基板保持具をロボットによりハンドリングする状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図16】従来の基板保持具をハンドリングした状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図17】専用のカセットに複数枚の基板保持具を移し替えて整列収納した状態を模式的に示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 基板保持具
2 フレーム
3 保持層
4 凹凸部
5 突片
5A 突片
20 輸送容器
23 ロボット
24 吸着パッド
25 カセット
W 半導体ウェーハ(基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームにその中空を覆う保持層を貼り付け、この保持層に基板を着脱自在に保持させる基板保持具であって、
フレームの表裏厚さ方向に凹凸部を形成したことを特徴とする基板保持具。
【請求項2】
フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部を断面略山形に屈曲することにより形成した請求項1記載の基板保持具。
【請求項3】
フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部の表裏面からそれぞれ突片を突出させることにより形成した請求項1記載の基板保持具。
【請求項4】
フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部の表裏面いずれか一方から突片を突出させるとともに、他方から複数の突片を突出させることにより形成した請求項1記載の基板保持具。
【請求項1】
フレームにその中空を覆う保持層を貼り付け、この保持層に基板を着脱自在に保持させる基板保持具であって、
フレームの表裏厚さ方向に凹凸部を形成したことを特徴とする基板保持具。
【請求項2】
フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部を断面略山形に屈曲することにより形成した請求項1記載の基板保持具。
【請求項3】
フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部の表裏面からそれぞれ突片を突出させることにより形成した請求項1記載の基板保持具。
【請求項4】
フレームの凹凸部を、フレームの外周縁部の表裏面いずれか一方から突片を突出させるとともに、他方から複数の突片を突出させることにより形成した請求項1記載の基板保持具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−76646(P2009−76646A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243855(P2007−243855)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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