説明

基板処理方法

【課題】処理液の濃度を安定して制御できるとともに、基板処理装置の処理効率の低下を防止できる基板処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】濃度測定手段37により測定された濃度が、正常濃度範囲内でなければ濃度異常とし、全量液交換を実施する。正常濃度範囲内の場合は、目標濃度範囲内であれば測定された濃度の処理液で基板を処理し、第1濃度範囲であれば処理液を所定の量だけ補充して濃度補正を行う。また、第2濃度範囲内であれば、処理液を所定の量だけ排液した後、所定の量だけ液補充を行う。複数の濃度補正範囲を有することにより、濃度を安定して制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、半導体ウエハ、液晶ディスプレイ用基板、プラズマディスプレイ用基板、有機EL用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板などの基板に対して、処理液により洗浄、エッチング、剥離等の処理を行う基板処理方法であって、特に、処理液の濃度を安定して制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から処理液が貯留された処理槽に基板を浸漬して基板を処理する基板処理方法がある。この基板処理方法では、処理液の使用寿命を延命し、基板処理装置の処理効率を向上させる技術が要求されている。
そこで、基板に対して浸漬処理を行う基板処理方法では、処理槽に貯留された処理液の一部を排液した後、その排液した処理液と同量の新たな処理液を補充することによって、処理槽内の処理液の処理寿命を延命するとともに、処理槽内の液を全量交換する回数を減少させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-261610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術のように処理槽に貯留された処理液の一部を排液した後、排液した処理液と同量の新たな処理液を補充した場合、処理液によっては濃度が急変し、それが外乱となって、処理槽内の処理液の濃度が一時的に濃度異常の濃度に達したり、或いは、処理槽内の処理液を全量液交換しなければならない濃度に達したりすることがあった。そのため、装置の基板処理が一時的に停止し、基板処理装置の処理効率が低下するといった問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、処理液の濃度を安定して制御できるとともに、基板処理装置の処理効率の低下を防止できる基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板を処理液で処理する基板処理方法であって、複数の液を混合して生成された処理液に含まれる所定の成分の濃度を濃度測定手段により測定するとともに、測定した濃度が基板処理を許容できる正常濃度範囲の濃度であるか否かを判断し、前記正常濃度範囲を処理液の濃度補正を必要としない目標濃度範囲と、処理液の濃度補正を必要とする第1濃度範囲および第2濃度範囲とに区分し、前記濃度測定手段で得られる処理液に含まれる所定の成分の濃度が、前記目標濃度範囲にある場合には、この濃度の処理液を用いて基板に所定の処理を行うことを許容し、前記濃度測定手段で得られる処理液に含まれる所定の成分の濃度が、前記第1濃度範囲内にある場合には、処理液を構成する所定の液を所定の量だけ処理槽へ供給することにより処理液の濃度を補正し、前記濃度測定手段で得られる処理液に含まれる所定の成分の濃度が、前記第2濃度範囲内にある場合には、前記処理槽に貯留された処理液を所定の量だけ排液した後、処理液を構成する所定の液を所定の量だけ前記処理槽へ供給することにより処理液の濃度を補正し、前記濃度測定手段で得られる処理液に含まれる所定の成分の濃度が、前記正常濃度範囲内にない場合には、処理槽の処理液の全量を液交換することを特徴とするものである。
【0007】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、複数の液を混合して生成された処理液に含まれる所定の成分の濃度を濃度測定手段により測定する。そして、測定した濃度が基板処理を許容できる正常濃度範囲の濃度であるか否かを判断する。この正常濃度範囲は処理液の濃度補正を必要としない目標濃度範囲と、処理液の濃度補正を必要とする第1濃度範囲および第2濃度範囲とに区分されている。
【0008】
目標濃度範囲にある場合には、この濃度の処理液を用いて基板に所定の処理を行うことを許容する。濃度測定手段で得られる処理液に含まれる所定の成分の濃度が、第1濃度範囲内にある場合には、処理液を構成する所定の液を所定の量だけ処理槽へ供給することにより処理液の濃度を補正する。濃度測定手段で得られる処理液に含まれる所定の成分の濃度が、第2濃度範囲内にある場合には、処理槽に貯留された処理液を所定の量だけ排液した後、処理液を構成する所定の液を所定の量だけ処理槽へ供給することにより処理液の濃度を補正する。最後に、濃度測定手段で得られる処理液に含まれる所定の成分の濃度が、前記正常濃度範囲内にない場合には、処理槽の処理液の全量を液交換する。
【0009】
第1濃度範囲での補正は、処理液を構成する所定の液を所定の量だけ処理槽へ供給して行うため、処理液を排液する必要がなく、所定量排液した後に液を所定量補充する方法と比べて処理液の置換量が少量となり、緩やかに濃度補正を行うことができる。また、第2濃度範囲での補正は、処理槽から所定の量だけ処理液を排液した後、この処理液を構成する所定の液を所定の量だけ処理槽へ供給して行うので、処理液を多く置換できるとともに、より早く濃度補正を行うことができる。さらに、正常濃度範囲内の濃度では無いと判断された場合は、基板処理が許容されない濃度範囲(異常濃度範囲)であるため、処理槽に貯留された処理液を全量排液した後、新たな液を供給して液交換を行うことにより、処理槽の全液を置換するので、液交換後は安定した濃度で基板処理を行うことができる。
【0010】
このように、請求項1に記載の発明では、正常濃度範囲は処理液の濃度補正を必要としない目標濃度範囲と、処理液の濃度補正を必要とする第1濃度範囲および第2濃度範囲とに区分して、濃度の補正を行うので、処理液の濃度を安定して制御できる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第2濃度範囲において、排液される前記処理液の所定の排液量と、供給される所定の液の所定の供給量とが、同量となるように前記処理液を構成する液を処理槽へ供給することを特徴とする。
【0012】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、第2濃度範囲で処理槽から排液される処理液の所定の排液量と、第2濃度範囲で処理槽へ供給される所定の液の所定の供給量とが同じ液量であるため、濃度補正に伴う処理液の量の増加が無く、処理槽に貯留された総液量としては増加しない。そのため、早く濃度補正を行うことができるとともに、液の供給動作に伴う処理槽の液面上昇を抑制でき、処理槽からのオーバーフローを未然に防止できるという利点がある。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記濃度測定手段で得られた前記濃度が、前記第1濃度範囲および前記第2濃度範囲にある場合に、アラームを発報するとともに、基板の処理を継続させることを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]請求項3に記載の発明によれば、事前にオペレータに対して処理液の濃度に対する注意喚起を促すことができるため、基板処理中に突然、濃度異常で装置を停止させてしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、正常濃度範囲は処理液の濃度補正を必要としない目標濃度範囲と、処理液の濃度補正を必要とする第1濃度範囲および第2濃度範囲とに区分して、濃度の補正を行うので、処理液の濃度を安定して制御できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る基板処理方法を実施するための基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る基板処理方法を実施するための処理動作を表すフローチャートであり、準備完了前の処理フローである。
【図3】本発明に係る基板処理方法を実施するための処理動作を表すフローチャートであり、準備完了後のロット処理およびロット待ち時の処理フローである。
【図4】本発明に係る基板処理方法を実施するための濃度補正動作の概念の一例を表したものであり、濃度の状態を判断して処理液に含まれる薬液の成分の濃度を補正するための処理フローである。
【図5】本発明に係る基板処理方法における濃度範囲の概念を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る基板処理装置の実施の形態について具体的について説明する。
【0018】
この基板処理装置は、基板を浸漬して処理するための内槽2および、内槽2からオーバーフローした処理液を受けるための外槽3を有する処理槽1と、内槽2へ薬液および純水を供給するための液供給手段5と、外槽2へ薬液および純水を補充するための液補充手段6と、液供給手段5および液補充手段6によって供給される複数の液を外槽2と内槽2との間で循環させて混合、攪拌し、処理液として生成するための処理液循環手段8と、バルブ等の機器の制御を含む基板処理装置全体を制御する制御部100と、装置の異常発報して装置の異常をオペレータに伝えるためのアラーム表示手段104と、を備える。
【0019】
液供給手段5は、薬液供給源10に接続された薬液供給配管50と、純水供給源11に接続された純水供給配管52と、薬液供給配管50に設けられた薬液供給バルブ14と、純水供給配管52に設けられた純水供給バルブ15と、を備える。薬液供給源10から内槽2への薬液の供給・停止は、薬液供給配管50を介して薬液供給バルブ14を開閉することにより行われる。純水供給源11から内槽2への純水の供給・停止は、純水供給配管52を介して純水供給バルブ15を開閉することにより行われる。
【0020】
液補充手段6は、薬液供給源10に薬液供給配管50を介して接続された薬液補充配管51と、薬液補充配管51に設けられた薬液補充流量計22および薬液補充バルブ18と、純水供給源11に純水供給配管52を介して接続された純水補充配管53と、純水補充配管53に設けられた純水補充流量計23および純水補充バルブ19と、を備える。薬液の補充開始・停止は、薬液供給源10から供給される薬液を、薬液供給配管50および薬液補充配管51を通じて、薬液補充バルブ18を開閉することにより行われる。純水の補充開始・停止は、純水供給源11から供給される純水を、純水供給配管52および純水補充配管53を通じて、純水補充バルブ19を開閉することにより行われる。
【0021】
薬液補充量は、薬液補充流量計22によって積算流量として測定されており、純水補充量は、純水補充流量計23によって積算流量として測定されている。薬液補充流量計22および純水補充流量計23で測定された積算流量のデータは、アナログまたはデジタルデータとして、リアルタイムに制御部100の演算部101へ送られている。
【0022】
処理液循環手段8は、上流側が外槽3の底部に、下流側が内槽2に接続された循環配管54を備えている。循環配管54は、上流側から、外槽3に貯留された処理液を排液するための外槽排液バルブ40と、ポンプ31と、循環切替バルブ42と、温度調節手段32と、フィルタ36と、濃度計37とを備えている。処理液循環手段8に処理液を循環させる際には、外槽排液バルブ40および循環切替バルブ42を開けた後、ポンプ31を駆動し、内槽2から外槽3へオーバーフローさせた処理液を、循環配管54を通じ、処理液中の不純物を除去するためのフィルタ36を介して再び内槽2へ戻すことにより行われる。なお。このとき、後述する内槽排液バルブ41と排液バルブ43とは閉じた状態である。
【0023】
温度調節手段32は、処理液の温度を調節する手段である。詳しくは、図示されない測温抵抗体等の温度測定手段と、ヒータ等の加熱手段と、冷却配管等の冷却手段等と、を備えており、処理液の使用温度に応じて加熱手段や冷却手段が適宜使用される。また、温度調節手段32の温度測定手段によって測定された処理液の温度データは、アナログまたはデジタルデータとして、リアルタイムに制御部100の演算部101へ送られている。
【0024】
濃度計37は、処理槽1の処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度を測定している。濃度計37により測定された濃度は、アナログまたはデジタルデータとして、リアルタイムに制御部100の演算部101へ送られている。
【0025】
内槽2の底部には、内槽排液配管55の上流側が接続されている。内槽排液配管55の下流側は、循環配管54の外槽排液バルブ40とポンプ31との間の位置に接続されている。内槽排液配管55には、内槽排液バルブ41が設けられている。
【0026】
循環配管54に備えられたポンプ31と循環切替バルブ42との間の位置に、ドレン配管56の上流側が接続されている。このドレン配管56には、内槽2および外槽3から排液された処理液を装置の外へ排液するための排液バルブ43が設けられている。
【0027】
制御部100は、濃度範囲メモリ102と、現在濃度メモリ103と、演算部101と、を備える。
濃度範囲メモリ102は、処理液に含まれる薬液の所定の成分の目標濃度と、基板の処理を許容できる正常な濃度範囲を区分した複数の濃度範囲と、基板の処理が許容されず、正常でない濃度範囲(異常濃度範囲)とを個別に設定するためのメモリ領域を備える。
現在濃度メモリ103は、濃度計37から受信した薬液の所定の成分の濃度を現在成分濃度として一時的にバッファリングするためのバッファメモリである。
【0028】
演算部101は、各流量計と、温度調節手段32と、濃度計37と各バルブの制御を行うとともに、濃度範囲メモリ102に予め設定された処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度範囲と、現在濃度メモリ103に保存された現在成分濃度とを比較して、現在濃度がどの濃度範囲にあるかを判断する。さらに、測定した濃度の濃度範囲によって、アラームを発報することが必要となった場合に、アラーム表示手段104へアラーム出力を指示する。
【0029】
アラーム表示手段104は、装置オペレータに対して注意喚起を促すための表示手段であり、ディスプレイ等の表示器やLED等の表示灯等が使用される。
【0030】
次に、本発明に係る基板処理方法の処理動作について説明する。図2、図3および図4は、基板処理装置の処理動作を示すフローチャートである。具体的には、図2は、準備完了前の処理フローであり、図3は準備完了後のロット処理およびロット待ち時の処理フローであり、図4は濃度の状態を判断して処理液に含まれる薬液の成分の濃度を補正するための処理フローである。図5は、基板処理方法における濃度範囲の概念を示したものである。
【0031】
まず、純水供給バルブ15を開け、内槽2への純水の供給を開始する(ステップS1)。純水の供給量は、図示しない純水供給量測定手段により測定されており、供給量が所定の量に達した時点で、純水供給バルブ15を閉じて内槽2への純水の供給を停止し、純水の供給が完了する(ステップS2)。
【0032】
純水の供給完了後、続いて薬液供給バルブ14を開け、内槽2への薬液の供給を開始する(ステップS3)。薬液の供給量は、図示しない薬液供給量測定手段により測定されている。
【0033】
薬液を供給し、薬液と純水との混合比が目標とする混合比になる前に、所定の量に達した時点で、処理液循環手段による処理液の循環および温調動作を開始する(ステップS4)。ここでいう循環および温調動作を開始することができる液量とは、ポンプおよび温調の加熱手段を動作させるために必要な最低限の液量である。
【0034】
循環と温調動作を行いながら、薬液の供給を継続し、純水の供給量と薬液の供給量との混合比が目標とする所定の混合比に達した時点で、薬液供給バルブ14を閉じて内槽2への薬液の供給を停止する(ステップS5)。その後、内槽2内の処理液の温度と、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度とが、基板処理を許容できる値となるか否かを判断する(ステップS6)。内槽2内の処理液の温度と、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度とが、許容できる値に安定した時点で準備完了となり(ステップS7)、内槽2への処理ロットの受け入れが可能となる。
【0035】
ステップS7の準備完了後、処理ロットが投入されたか否かを確認する(ステップS8)。すぐに処理ロットが投入された場合は、図示しないリフタにより処理ロットを内槽2へ搬入し(ステップ9)、基板を内槽2内の処理液に浸漬し(ステップS10)、所定時間処理した後(ステップS11)、図示しないリフタにより基板を内槽2から搬出する(ステップS12)。なお、ステップS8において、処理ロットが投入されない場合には、処理ロットの投入を待つ(ステップS13)
【0036】
ステップS12、およびステップS13に続いて、濃度計37で測定された処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度が正常濃度範囲であるか否か(異常濃度範囲)を確認する(ステップS14)。この正常濃度範囲は、目標濃度範囲と、第1濃度範囲と、第2濃度範囲との3つの濃度範囲に区分されており、区分に応じて、それぞれ異なる処理が行われる。ステップS14は、ステップS12の基板処理後の状態において、基板表面の付着物や基板表面を構成する膜との反応等により、処理液に含まれる薬液の成分の濃度が変化することや、ステップS13の処理ロットの投入待ち時において、処理液に含まれる成分が蒸発したり、薬液の所定の成分が化学反応により劣化したりすること等によって処理液に含まれる薬液の成分の濃度が変化するために行っている。
【0037】
ステップS14における濃度確認の結果、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度が正常濃度範囲でない(異常濃度範囲)と判断された場合には、全量液交換を実施する(ステップS15)。全量液交換が終了したら、基板処理の動作が終了する。
【0038】
ステップS14における濃度確認の結果、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度が、正常濃度範囲であると判断された場合には、この濃度が目標濃度範囲内(S0+、S0−)にあるか否かを判断する(ステップS16)。なお、この濃度範囲S0+とは、目標濃度範囲において、処理液に含まれる薬液の所定の成分濃度が、目標濃度より少し高い濃度範囲であって、濃度補正を必要とすることなく基板処理を行うことができる濃度範囲をいう。
また、S0−とは、目標濃度範囲において、処理液に含まれる薬液の所定の成分濃度が、目標濃度より少し低い濃度範囲であって、濃度補正を必要とすることなく基板処理を行うことができる濃度範囲をいう。
【0039】
ステップS16によって、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度が目標濃度範囲内(S0+、S0−)にあると判断された場合は、処理液の濃度補正を行わず、この測定して得られた濃度の処理液での処理を許容する(ステップS17)。
【0040】
ステップS16によって、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度が目標濃度範囲内(S0+、S0−)に無いと判断された場合は、この濃度が第1濃度範囲内にあるか否かを判断する(ステップS18)。
【0041】
ステップS18において、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度が第1濃度範囲内にあると判断された場合は、この濃度がS1+の範囲内にあるかどうかを判断する(ステップS19)。なお、この濃度範囲S1+とは、第1濃度範囲において、処理液に含まれる薬液の所定の成分濃度が、目標濃度範囲のS0+より少し高い濃度範囲であって、処理液を構成する純水を所定量補充して処理液を希釈することにより、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度を目標濃度範囲(S0+、S0−)に近づけるための濃度補正を行うことを要する範囲をいう。
【0042】
ステップS19において、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度がS1+の範囲内にあると判断された場合は、処理液に含まれる薬液の所定の成分の混合比率を低下させるため、純水補充バルブ19を開けて所定の量の純水を補充する(ステップS20)。
【0043】
ステップS19において、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度がS1+の範囲内に無いと判断された場合は、この濃度はS1−の範囲にあると見なし、処理液に含まれる薬液の所定の成分の混合比率を上昇させるため、薬液補充バルブ18を開けて所定の量の薬液を補充する(ステップS21)。なお、この濃度範囲S1−とは、第1濃度範囲において、処理液に含まれる薬液の所定の成分濃度が、目標濃度範囲のS0−より少し低い濃度範囲であって、処理液を構成する薬液または薬液成分を所定量補充して処理液の濃縮を行うことにより、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度を目標濃度範囲(S0+、S0−)に近づけるための濃度補正を行うことを要する範囲をいう。
【0044】
ステップ18において、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度が第1濃度範囲内に無いと判断された場合は、第2濃度範囲内にあると見なし(ステップS22)、処理液の濃度範囲がS2+の範囲内にあるかどうかを判断する(ステップS23)。なお、この濃度範囲S2+とは、第2濃度範囲において、処理液に含まれる薬液の所定の成分濃度が、濃度範囲のS1+よりさらに高い濃度範囲であって、放置すると異常濃度範囲となる可能性を有し、処理槽に貯留された処理液を排液した後、処理液を構成する純水を所定量補充して、処理液の希釈を行うことにより、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度を目標濃度範囲(S0+、S0−)に近づけるための濃度補正を行うことを要する範囲をいう。
【0045】
ステップS23において、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度がS2+の範囲内にあると判断された場合は、処理液に含まれる薬液の所定の成分の混合比率を低下させるため、所定の量の処理液を排液した後、純水補充バルブ19を開けて所定の量の純水を補充する(ステップS24)。ステップS23において、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度がS2+の範囲内に無いと判断された場合は、濃度がS2−の範囲にあると見なし、処理液に含まれる薬液の成分の混合比率を上昇させるため、所定の量の処理液を排液した後、薬液補充バルブ18を開けて所定の量の薬液を補充する(ステップS25)。なお、この濃度範囲S2−とは、第2濃度範囲において、処理液に含まれる薬液の所定の成分濃度が、濃度範囲のS1−よりさらに低い濃度範囲であって、放置すると異常濃度範囲となる可能性を有し、処理槽に貯留された処理液を排液した後、処理液を構成する薬液または薬液成分を所定量補充して、処理液の濃縮を行うことにより、処理液に含まれる薬液の所定の成分の濃度を目標濃度範囲(S0+、S0−)に近づけるための濃度補正を行うことを要する範囲をいう。
【0046】
ステップS24およびステップS25における処理液の排液は、外槽排液バルブ40と排液バルブ43とを開け、ポンプ31を動作させることにより、循環配管54およびドレン配管56を通じて行われる。また、この時の排液量は、図示されないポンプの流量測定手段によって計測され、制御部100によって監視されており、排液量が所定の量に達した時に排液バルブ43が閉じられる。
【0047】
ステップS17、ステップS20、ステップS21、ステップS24およびステップS25の処理液の正常濃度範囲における処理を行った後は、図3に示すステップS8へ戻って処理ロットの投入有無を確認する。
【0048】
ステップS24において、処理液の排液量と純水の補充量とは、同じ量であることが望ましい。また、ステップS25における処理液の排液量と薬液の補充量とは、同じ量であることが望ましい。排液した液量と供給した液量が同じであるため、処理液の全体量としては増加させることなく濃度補正を行うことができる。しかも、処理液の置換量が多いため、処理液の濃度をすばやく補正することができる。さらに、内槽2や外槽3の液面上昇を抑制でき、内槽2や外槽3からのオーバーフローを未然に防止できるという利点がある。
【0049】
ステップS18において、処理液に含まれる薬液の成分の濃度が第1濃度範囲内または、第2濃度範囲内にある場合には、アラーム表示手段104にアラームを表示し、基板処理は継続することが望ましい。新たなプロセスで基板を処理する場合、薬液寿命を事前に判断することができないため、複数のロットを処理した実績値から薬液寿命を導き出して判断することが多い。そのため、基板処理中に突然濃度異常が発生し、基板処理を停止させてしまうという問題が発生する。しかしながら、本発明によれば、処理液の濃度が正常な状態でアラームを表示するため、突然の濃度異常で装置を停止させることが無い。従って、基板処理装置のオペレータに対して処理液の処理寿命が近づきつつあるという注意喚起を行うことができ、基板の処理不良を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 処理槽
2 内槽
3 外槽
5 液供給手段
6 液補充手段
8 処理液循環手段
10 薬液供給源
11 純水供給源
14 薬液供給バルブ
15 純水供給バルブ
18 薬液補充バルブ
19 純水補充バルブ
22 薬液補充流量計
23 純水補充流量計
31 ポンプ
32 温度調節手段
36 フィルタ
37 濃度計
40 外槽排液バルブ
41 内槽排液バルブ
42 循環切替バルブ
43 排液バルブ
50 薬液供給配管
51 薬液補充配管
52 純水供給配管
53 純水補充配管
54 循環配管
55 内槽排液配管
100 制御部
101 演算部
102 濃度範囲メモリ
103 現在濃度メモリ
104 アラーム表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液で処理する基板処理方法であって、
複数の液を混合して生成された処理液に含まれる所定の成分の濃度を濃度測定手段により測定するとともに、測定した濃度が基板処理を許容できる正常濃度範囲の濃度であるか否か、を判断し、
前記正常濃度範囲を処理液の濃度補正を必要としない目標濃度範囲と、処理液の濃度補正を必要とする第1濃度範囲および第2濃度範囲とに区分し、
前記濃度測定手段で得られる処理液に含まれる所定の成分の濃度が、前記目標濃度範囲にある場合には、この濃度の処理液を用いて基板に所定の処理を行うことを許容し、
前記濃度測定手段で得られる処理液に含まれる所定の成分の濃度が、前記第1濃度範囲内にある場合には、処理液を構成する所定の液を所定の量だけ処理槽へ供給することにより処理液の濃度を補正し、
前記濃度測定手段で得られる処理液に含まれる所定の成分の濃度が、前記第2濃度範囲内にある場合には、前記処理槽に貯留された処理液を所定の量だけ排液した後、処理液を構成する所定の液を所定の量だけ前記処理槽へ供給することにより処理液の濃度を補正し、
前記濃度測定手段で得られる処理液に含まれる所定の成分の濃度が、前記正常濃度範囲内にない場合には、処理槽の処理液の全量を液交換することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記第2濃度範囲において、排液される前記処理液の所定の排液量と、供給される所定の液の所定の供給量とが、同量となるように前記処理液を構成する液を処理槽へ供給することを特徴とする請求項1の基板処理方法。
【請求項3】
前記濃度測定手段で得られた前記濃度が、前記第1濃度範囲および前記第2濃度範囲にある場合に、アラームを発報するとともに、基板の処理を継続させることを特徴とする請求項1または2の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−74552(P2012−74552A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218454(P2010−218454)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】