説明

基板処理装置

【課題】簡単な加工で高い寸法精度が得られ、液処理後の液残りを少なくしてウォーターマーク等のしみの発生を抑制することができ、かつウエハを安定した状態で保持することができ、スループットの向上を図れるようにする。
【解決手段】半導体ウエハWを複数の保持体で垂直に保持した状態で搬送する搬送手段であるウエハボートを具備する基板処理装置において、ウエハボート5は、ウエハの下端部を支持する下側保持体20と、ウエハの下部側端部を保持する左右一対の上側保持体30とを具備し、少なくとも一つの保持体は、該保持体の長手方向に対して所定角度に傾斜する略V字状の保持溝21,31を形成してなる。保持溝を構成する第1の傾斜面41でウエハの一方の面を保持すると共に、保持溝を構成する第2の傾斜面でウエハの他方の面を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体ウエハやFPD等の被処理基板を複数の保持体で垂直に保持した状態で搬送する搬送手段を具備する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスの製造工程においては、被処理基板としての半導体ウエハやFPD等(以下にウエハ等という)にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いて回路パターンを縮小してフォトレジストに転写し、これを現像処理し、その後、ウエハ等からフォトレジストを除去する一連の処理が施されている。
【0003】
また、上記処理の過程において、ウエハ等を複数の保持体で垂直に保持する搬送手段によって、ウエハ等を垂直状態のまま処理液例えば薬液を貯留する処理槽内に浸漬した後、ウエハ等の表面に向かってリンス液を吐出して処理する基板処理装置が知られている。
【0004】
従来のこの種の基板処理装置においては、搬送手段は、ウエハ等の下端部を支持する例えば下側保持体と、ウエハ等の下部側端部を保持する左右一対の上側保持体とを具備しており、下側保持体及び上側保持体には、V字状あるいは略Y字状の保持溝が設けられている。
【0005】
また、上記Y字状保持溝における問題すなわちウエハ等の両側の主面との面接触することによるパーティクル等の汚染物質の発生の問題と、上記V字状保持溝における問題すなわちウエハ等の倒れによる隣接するウエハ等同士の接触の問題を解決するために、下側保持体及び上側保持体の保持溝を、開き角度2°以上28°以下となる断面V字形状とし、ウエハ等と接触する面が防塵性を有する材料としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、処理液の除去効率を向上させるために、各保持体を構成する支持棒に一定間隔を置いて多数配設され、ウエハ等側へ延出して各ウエハ等の縁部に当接する支持爪を設け、隣り合う保持体に配設された隣り合う2つの支持爪は、ウエハ等の縁部にその両側面から個別に当接してその縁部を挟持することで、ウエハ等を倒れないように支持するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−124297号公報(特許請求の範囲、図4)
【特許文献2】特開平11−145270号公報(特許請求の範囲、図2〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のものにおいては、V字状保持溝によって保持されるウエハ等は、接触断面においてウエハ等の端部両面が接触するため、処理に供された処理液例えば薬液の液残りが生じ、液処理後の乾燥処理に時間を要しスループットの低下をきたすと共に、乾燥処理後にウォーターマーク等のしみが生じる懸念がある。
【0008】
また、特許文献2記載のものにおいては、隣り合う2つの支持爪は、ウエハ等の縁部にその両側面から個別に当接してその縁部を挟持する構造であるため、同一断面でウエハ等の両側面を挟持するものに比べて処理液の液残りを少なくすることができる。しかし、特許文献2記載のものにおいては、支持棒に頭部を除去した四角錐状に形成される支持爪を設ける構造であるため、支持棒と支持爪の接合部に液溜まりが生じる虞があり、液処理後の乾燥処理に時間を要しスループットの低下をきたすと共に、乾燥処理後にウォーターマーク等のしみが生じる懸念がある。また、特許文献2記載の構造のものは、寸法精度に注意を要する上、加工が面倒であるという問題がある。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡単な加工で高い寸法精度が得られると共に、液処理後の液残りを少なくしてウォーターマーク等のしみの発生を抑制することができ、かつウエハ等を安定した状態で保持することができ、スループットの向上を図れるようにした基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明の基板処理装置は、被処理基板を複数の保持体で垂直に保持した状態で搬送する搬送手段を具備する基板処理装置において、 少なくとも一つの上記保持体は、該保持体の長手方向に対して所定角度に傾斜する略V字状の保持溝を形成してなり、 上記保持溝を構成する第1の傾斜面で被処理基板の一方の面を保持すると共に、保持溝を構成する第2の傾斜面で被処理基板の他方の面を保持する溝傾斜保持体であることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
この発明において、処理液を貯留する処理槽を更に具備し、被処理基板を上記搬送手段の保持体によって保持した状態で処理槽内の処理液に浸漬させて被処理基板に処理を施すように形成するようにしてもよい(請求項2)。
【0012】
また、この発明において、上記搬送手段は、被処理基板の下端部を支持する下側保持体と、被処理基板の下部側端部を保持する左右一対の上側保持体とを具備する方が好ましい(請求項3)。この場合、上記下側保持体が溝傾斜保持体にて形成される(請求項4)か、あるいは、上記下側保持体及び上側保持体が溝傾斜保持体にて形成される方が好ましい(請求項5)。
【0013】
また、この発明において、隣り合う少なくとも二以上の保持体を溝傾斜保持体にて形成し、上記隣り合う溝傾斜保持体に形成される保持溝の傾斜角度を両溝傾斜保持体間の中心点に対して対称としてもよい(請求項6)。
【0014】
また、この発明において、上記溝傾斜保持体における該保持体の保持溝に保持される被処理基板の保持部は、保持体の長手方向に沿う中心点に対して対称位置にある方が好ましい(請求項7)。
【0015】
また、この発明において、上記下側保持体及び上側保持体における各溝傾斜保持体の保持溝に保持される被処理基板の保持部は、被処理基板の面中心点に対して対称位置にある方が好ましい(請求項8)。
【0016】
また、この発明において、上記下側保持体及び上側保持体における保持溝を有する保持面を、上記下側保持体及び上側保持体によって保持される被処理基板の面中心方向に対向して設ける方が好ましい(請求項9)。
【0017】
また、この発明において、上記保持体は、複数枚の被処理基板を互いに並行に保持すべく複数の保持溝を適宜間隔に列設する構成とすることができる(請求項10)。
【0018】
加えて、この発明において、上記下側保持体は親水性を有する部材にて形成され、上記上側保持体は疎水性を有する部材にて形成される方が好ましい(請求項11)。
【0019】
請求項1,2記載の発明によれば、少なくとも一つの溝傾斜保持体に設けられた傾斜する略V字状の保持溝の第1及び第2の傾斜面によって被処理基板の両面の異なる位置を保持することができる。
【0020】
また、請求項3記載の発明によれば、被処理基板の下端部を下側保持体によって保持すると共に、被処理基板の下部側端部を左右一対の上側保持体によって保持することができ、下側保持体及び上側保持体のうちの少なくとも一つの保持体を溝傾斜保持体によって形成することにより、溝傾斜保持体に設けられた傾斜する略V字状の保持溝の第1及び第2の傾斜面によって被処理基板の両面の異なる位置を保持することができる。
【0021】
また、請求項4記載の発明によれば、下側保持体を形成する溝傾斜保持体に設けられた傾斜する略V字状の保持溝の第1及び第2の傾斜面によって被処理基板の両面の異なる位置を保持することができる。
【0022】
また、請求項5記載の発明によれば、下側保持体及び上側保持体を形成する溝傾斜保持体に設けられた傾斜する略V字状の保持溝の第1及び第2の傾斜面によって被処理基板の両面の異なる位置を保持することができる。
【0023】
また、請求項6記載の発明によれば、隣り合う少なくとも二以上の溝傾斜保持体の保持溝に保持される被処理基板の保持部は、隣り合う保持体間の中心点に対して対称位置にあるので、各保持体において被処理基板は安定した状態で保持される。
【0024】
また、請求項7記載の発明によれば、溝傾斜保持体の保持溝に保持される被処理基板の保持部は、保持体の長手方向に沿う中心点に対して対称位置にあるので、保持体において被処理基板は安定した状態で保持される。
【0025】
また、請求項8記載の発明によれば、下側保持体及び上側保持体の保持溝に保持される被処理基板の保持部は、被処理基板の面中心点に対して対称位置にあるので、下側保持体及び上側保持体によって被処理基板は安定した状態で保持される。
【0026】
また、請求項9記載の発明によれば、下側保持体及び上側保持体における保持溝を有する保持面を上記下側保持体及び上側保持体によって保持される被処理基板の面中心方向に対向して設けることで、搬送手段への下側保持体及び上側保持体の組み付けを容易にすることができると共に、被処理基板を安定した状態に保持することができる。
【0027】
また、請求項10記載の発明によれば、複数枚の被処理基板を安定させた状態で保持することができ、同時に例えば液処理することができる。
【0028】
また、請求項11記載の発明によれば、被処理基板の下端部を保持する下側保持体の保持溝は処理液を吸着して被処理基板への処理液の液残りを抑制することができ、被処理基板の下部両側端部を保持する上側保持体の保持溝は、処理液を弾いて、処理後の液残りを抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような顕著な効果が得られる。
【0030】
(1)請求項1,2記載の発明によれば、少なくとも一つの溝傾斜保持体に設けられた傾斜する略V字状の保持溝の第1及び第2の傾斜面によって被処理基板の両面の異なる部位を保持することができるので、液処理後の液残りを少なくしてウォーターマーク等のしみの発生を抑制することができると共に、スループットの向上が図れ、かつ被処理基板を安定した状態に保持することができる。
【0031】
(2)請求項3〜5記載の発明によれば、被処理基板の下端部を下側保持体によって保持すると共に、被処理基板の下部側端部を左右一対の上側保持体によって保持することができるので、上記(1)に加えて、更に被処理基板を安定した状態で保持することができる。
【0032】
(3)請求項6記載の発明によれば、隣り合う少なくとも二以上の溝傾斜保持体の保持溝に保持される被処理基板の保持部は、隣り合う保持体間の中心点に対して対称位置にあるので、上記(1)に加えて、更に被処理基板を安定した状態で保持することができる。
【0033】
(4)請求項7記載の発明によれば、下側保持体及び上側保持体の保持溝に保持される被処理基板の保持部は、各保持体の長手方向に沿う中心点に対して対称位置にあり、各保持体において被処理基板は安定した状態で保持されるので、上記(1)〜(3)に加えて、更に被処理基板を安定した状態で保持することができる。
【0034】
(5)請求項8記載の発明によれば、下側保持体及び上側保持体の保持溝に保持される被処理基板の保持部は、被処理基板の面中心点に対して対称部位にあり、下側保持体及び上側保持体によって被処理基板は安定した状態で保持されるので、上記(2)に加えて、更に被処理基板を安定した状態で保持することができる。
【0035】
(6)請求項9記載の発明によれば、上記(1),(2),(4),(5)に加えて、更に搬送手段への下側保持体及び上側保持体の組み付けを容易にすることができると共に、被処理基板を安定した状態に保持することができる。
【0036】
(7)請求項10記載の発明によれば、上記(1)〜(6)に加えて、更に複数枚の被処理基板を安定させた状態で保持することができると共に、同時に例えば液処理を行うことができる。
【0037】
(8)請求項11記載の発明によれば、被処理基板の下端部を保持する下側保持体の保持溝は処理液を吸着して被処理基板への処理液の液残りを抑制することができ、被処理基板の下部両側端部を保持する上側保持体の保持溝は、処理液を弾いて、処理後の液残りを抑制することができる。したがって、上記(1)〜(7)に加えて、更に液処理後の液残りを確実に少なくしてウォーターマーク等のしみの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る基板処理装置を半導体ウエハの洗浄・乾燥処理装置に適用した場合について説明する。
【0039】
<第1実施形態>
上記洗浄・乾燥処理装置は、図1に示すように、被処理基板である半導体ウエハW(以下にウエハWという)を収容する処理室である処理槽1と、この処理槽1の上方に位置するウエハWを収容する乾燥室2と、処理槽1内のウエハWに処理液である酸化膜除去用の薬液例えば希フッ酸水(DHF)を供給する薬液供給手段3と、処理槽1内のウエハWに別の処理液である洗浄用のリンス液を供給するリンス液供給手段4と、乾燥室2内に例えば窒素ガス(N2ガス)や清浄空気等の乾燥気体を供給する乾燥気体供給手段6と、薬液供給手段3、リンス液供給手段4及び乾燥気体供給手段6やこの発明における後述する搬送手段であるウエハボート5、容器カバー昇降機構8、シャッタ9等に制御(作動)信号を伝達する制御手段例えば中央演算処理装置10(以下にCPU10という)と、を具備している。
【0040】
この場合、上記処理槽1は、ウエハWを収容する内槽1aと、この内槽1aの上端開口の外周部を包囲する外槽1bとで構成されている。また、内槽1aの底部には、ドレイン口1cが設けられており、このドレイン口1cにドレイン弁1dを介設したドレイン管1eが接続されている。また、外槽1bの底部には、排水口1fが設けられており、この排水口1fに開閉弁1gを介設した排水管1hが接続されている。
【0041】
また、処理槽1の内槽1a内の下部側には供給ノズル11が配設されている。この供給ノズル11は、主供給管12を介してリンス液である純水(DIW)の供給源4aに接続されている。主供給管12における純水供給源4a側には第1の開閉弁V1が介設されており、これら純水供給源4a、主供給管12、第1の開閉弁V1及び供給ノズル11によってリンス液供給手段4が形成されている。
【0042】
また、主供給管12の途中には切換開閉弁V0が介設されており、この切換開閉弁V0に接続する薬液供給管13を介して薬液例えばフッ酸水(HF)の供給タンク3aが接続されている。なお、薬液供給管13にはポンプ3bが介設されている。これら供給タンク3a、薬液供給管13、ポンプ3b、切換開閉弁V0、主供給管12及び供給ノズル11によって薬液供給手段3が形成されている。この場合、主供給管12内を流れる純水と供給タンク3aから供給されるHFとが混合されて所定濃度の薬液(DHF)が供給ノズル11から処理槽1内に供給されるように構成されている。
【0043】
一方、乾燥室2は、複数例えば50枚のウエハWを収容可能な大きさを有すると共に、上端部に搬入・搬出口15を有する容器本体16aと、この容器本体16aの上端に形成された搬入・搬出口15を開放又は閉鎖する容器カバー16bとで主に構成されている。この場合、容器カバー16bは、例えば断面逆U字状に形成され、昇降機構8によって昇降可能に形成されている。昇降機構8は、CPU10に電気的に接続されており、CPU10からの制御(作動)信号により、昇降機構8が作動して、容器カバー16bが開放又は閉鎖されるように構成されている。そして、容器カバー16bが上昇した際には、搬入・搬出口15は開放され、容器本体16aに対してウエハWを搬入できる状態となる。容器本体16aにウエハWを搬入して収容した後、容器カバー16bが下降することで、搬入・搬出口15が塞がれる。この場合、容器本体16aと容器カバー16bの間の隙間は、例えばリップ式のOリング17aによって密封されるように構成されている。
【0044】
また、上記ウエハボート5は、図1及び図2に示すように、ガイド部7と、このガイド部7に水平状態に固着され、ウエハWの周縁の下端部を支持する1本の下側保持体20と、ウエハWの周縁の下部側端部を保持する左右一対の上側保持体30とで主に構成されている。
【0045】
上記下側保持体20は、該下側保持体20の長手方向に対して所定角度(図面では同一角度を示す)に傾斜する略V字状の保持溝21を適宜間隔に50箇所列設してなる。各保持溝21は、下側保持体20の基端部側の第1の傾斜面41と、下側保持体20の先端側の第2の傾斜面42とで構成されている。このように構成される下側保持体20は溝傾斜保持体にて形成される。この場合、下側保持体20は、親水性を有する部材、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)にて断面矩形状に形成されている。このように、下側保持体20を親水性の部材にて形成することにより、下側保持体20の保持溝21は処理液を吸着してウエハWへの処理液の液残りを抑制することができる。
【0046】
上記上側保持体30は、それぞれ各上側保持体30の長手方向に対して同一角度かつ下側保持体20の保持溝21と同一角度に傾斜する略V字状の保持溝31を適宜間隔に50箇所列設してなる。各保持溝31は、上側保持体30の基端部側の第1の傾斜面41と、上側保持体30の先端側の第2の傾斜面42とで構成されている。このように構成される上側保持体30も溝傾斜保持体にて形成されている。この場合、上側保持体30は、疎水性を有する部材、例えばポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)にて断面矩形状に形成されている。このように、上側保持体30を疎水性の部材にて形成することにより、ウエハWの下部両側端部を保持する上側保持体30の保持溝31は処理液を弾いて、処理後の液残りを抑制することができる。
【0047】
上記のように構成されるウエハボート5によれば、ウエハWの下端部を下側保持体20の保持溝21で保持し、ウエハWの下部両側端部を一対の上側保持体30の保持溝31で保持することができる(図2ないし図4参照)。
【0048】
下側保持体20及び上側保持体30によるウエハWの保持の形態は、下側保持体20を代表して説明すると、保持溝21を構成する第1の傾斜面41でウエハWの一方の面例えば表面Waを保持すると共に、保持溝21を構成する第2の傾斜面42でウエハWの他方の面例えば裏面Wbを保持する(図4ないし図7参照)。この場合、図5に示すように、下側保持体20の保持溝21に保持されるウエハWの保持部すなわち表面側保持部43aと裏面側保持部43bは、下側保持体20の長手方向に沿う中心点C1に対して対称位置にある。ここでは、下側保持体20の保持溝21について説明したが、上側保持体30の保持溝31においても同様に、保持溝31に保持されるウエハWの保持部すなわち表面側保持部43aと裏面側保持部43bは、上側保持体30の長手方向に沿う中心点(図示せず)に対して対称位置にある。
【0049】
また、下側保持体20及び上側保持体30において、これら下側及び上側保持体20,30の保持溝21,31に保持されるウエハWの保持部すなわち表面側保持部43aと裏面側保持部43bは、ウエハWの面中心点C0(図3参照)に対して対称位置にある(図4参照)。
【0050】
更に、下側保持体20及び上側保持体30における保持溝21,31を有する保持面22,32は、下側保持体20及び上側保持体30によって保持されるウエハWの面中心方向に対向している(図3参照)。この場合、図3では上側保持体30がウエハWの面中心点C0から半径方向に延びる軸線Lに沿って配設されているが、図8に示すように、上側保持体30の保持面32のみをウエハWの面中心方向に対向して設け、上側保持体30自体を下側保持体20と平行に垂直状に配設してもよい。このように、上側保持体30自体を垂直状に配設することにより、上側保持体30に付着する処理液の液切れを良好にすることができる。
【0051】
上記のように構成されるウエハボート5によれば、下側保持体20及び上側保持体30に設けられた傾斜する略V字状の保持溝21,31の第1及び第2の傾斜面41,42によってウエハWの両面の異なる位置を保持することができる。また、下側保持体20及び上側保持体30の各保持溝21,31を同一の傾斜する略V字状に形成することができ、簡単な加工で高い寸法精度の保持溝21,31が得られるので、複数のウエハWを安定した状態で保持することができる。
【0052】
また、下側保持体20及び上側保持体30の保持溝21,31に保持されるウエハWの保持部(表面側保持部43a,裏面側保持部43b)は、下側保持体20及び上側保持体30の長手方向に沿う中心点C1に対して対称位置にあるので、下側保持体20及び上側保持体30によってウエハWは安定した状態で保持される。また、下側保持体20及び上側保持体30の保持溝21,31に保持されるウエハWの保持部(表面側保持部43a,裏面側保持部43b)は、ウエハWの面中心点C0に対して対称位置にあるので、下側保持体20及び上側保持体30によってウエハWは安定した状態で保持される。したがって、ウエハWを安定した状態で保持することができる。
【0053】
また、下側保持体20及び上側保持体30における保持溝21,31を有する保持面22,32を、下側保持体20及び上側保持体30によって保持されるウエハWの面中心方向に対向して配設することにより、ウエハボート5への下側保持体20及び上側保持体30の組み付けを容易にすることができる。
【0054】
なお、ウエハボート5は、ガイド部7に連なるシャフト14が容器カバー16bの頂部に設けられた透孔16c内に摺動可能に貫通されており、透孔16cとシャフト14との間には、伸縮式のOリング17bが介在されて、乾燥室2内の気水密が維持できるように構成されている。なお、ウエハボート5の昇降機構(図示せず)はCPU10に接続されており、CPU10からの制御(作動)信号によって作動し得るように構成されている。
【0055】
また、処理槽1と乾燥室2とは連通口15aを介して連設されており、連通口15aに開閉手段であるシャッタ9が開閉可能に配設されており、このシャッタ9によって処理槽1と乾燥室2が遮断されるように構成されている。この場合、シャッタ9の駆動部9aはCPU10に電気的に接続されており、CPU10からの制御(作動)信号によって連通口15aを開閉し得るように構成されている。
【0056】
上記乾燥気体供給手段6は、乾燥室2内の中央部両側に配設されるガス供給ノズル11Aと、このガス供給ノズル11Aにガス供給管18を介して接続する乾燥気体例えばN2ガスの供給源6aと、ガス供給管18に介設される第2の開閉弁V2とで主要部が構成されている。この場合、ガス供給管18には、温度調整器6bが介設されており、この温度調整器6bによってホットN2ガスが生成されるようになっている。この温度調整器6bと第2の開閉弁V2は、CPU10からの制御(作動)信号によって作動し得るように構成されている。
【0057】
なお、上記薬液供給手段3、リンス液供給手段4及び乾燥気体供給手段6やウエハボート5、容器カバー昇降機構8、シャッタ9等は、CPU10に予めプログラムされた記憶情報に基いて制御されるようになっている。
【0058】
次に、上記洗浄・乾燥処理装置を用いたウエハWの処理の手順の一例を簡単に説明する。まず、図示しないウエハ搬送手段によって搬送された複数例えば50枚のウエハWを、洗浄・乾燥処理装置の上方に上昇するウエハボート5に受け渡し、次いで、ウエハボート5が下降した後、容器カバー16bが閉鎖してウエハWを処理槽1内に収容する。処理槽1内にウエハWを収容した状態において、最初に、ポンプ3bを作動させると共に、第1の開閉弁V1を開放し、切換開閉弁V0を薬液供給タンク3a側に切り換えて処理槽1内に収容されるウエハWに薬液(DHF)を供給(浸漬)し、DHFによりエッチング処理を施して、ウエハW表面の酸化膜を除去する。次に、ポンプ3bを停止すると共に、切換開閉弁V0を純水供給源4a側のみに切り換えて処理槽1内に収容されるウエハWにリンス液(DIW)を供給すると共に、外槽1bにオーバーフローさせながらウエハW表面を洗浄する。上記エッチング処理又はリンス処理中に、ウエハWが保持溝21から浮き上った場合は、ウエハWは転倒防止溝23によって転倒が防止される。
【0059】
上記のようにして、ウエハW表面の酸化膜を除去するエッチング処理及びウエハW表面を洗浄するリンス処理を行った後、ウエハボート5を上昇させてウエハWを処理槽1の上方の乾燥室2内に移動する。このとき、シャッタ9が閉鎖位置に移動して乾燥室2と処理槽1とが遮断されると共に、乾燥室2内が密閉される。この状態で、第2の開閉弁V2が開放すると共に、温度調整器6bが作動してN2ガス供給源6aから乾燥室2内にホットN2ガスが供給されて、ウエハWの乾燥が行われる。この乾燥工程では、ウエハWと保持溝21の接触面積が小さく、ウエハWに付着する液が少ないので、ウエハW表面にウォーターマークが生じる虞がない。
【0060】
上記のようにして乾燥処理を行った後、昇降機構8を作動させて、容器カバー16bを上昇して、容器本体16aの搬入・搬出口15を開放した後、ウエハボート5を上昇して、ウエハWを乾燥室2の上方に搬出する。そして、図示しないウエハ搬送手段にウエハWを受け渡して、次の処理部に搬送する。
【0061】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、下側保持体20が1本の場合について説明したが、下側保持体20Aを2本にしてもよい。すなわち、第2実施形態のウエハボート5Aは、図9ないし図11に示すように、ガイド部7と、このガイド部7に水平状態に固着された互いに平行な、ウエハWの周縁の下端部を支持する2本の下側保持体20A,20Bと、ウエハWの周縁の下部側端部を保持する左右一対の上側保持体30とで主に構成されている。
【0062】
この場合、2本の下側保持体20A,20Bは、それぞれ各下側保持体20A,20Bの長手方向に対して同一角度に傾斜する略V字状の保持溝21を適宜間隔に50箇所列設してなる。各保持溝21は、下側保持体20A,20Bの基端部側の第1の傾斜面41と、下側保持体20A,20Bの先端側の第2の傾斜面42とで構成されている。
【0063】
また、各下側保持体20A,20Bの保持溝21を構成する第1の傾斜面41でウエハWの一方の面例えば表面Waを保持すると共に、保持溝21を構成する第2の傾斜面42でウエハWの他方の面例えば裏面Wbを保持している(図11ないし図13参照)。この場合、図12に示すように、下側保持体20A,20Bの保持溝21に保持されるウエハWの保持部すなわち表面側保持部43aと裏面側保持部43bは、下側保持体20の長手方向に沿う中心点C1に対して対称位置にある。
【0064】
また、下側保持体20A,20B及び上側保持体30において、これら下側及び上側保持体20A,20B,30の保持溝21,31に保持されるウエハWの保持部すなわち表面側保持部43aと裏面側保持部43bは、ウエハWの面中心点C0(図10参照)に対して対称位置にある(図11参照)。
【0065】
更に、下側保持体20A,20B及び上側保持体30における保持溝21,31を有する保持面22,32は、下側保持体20A,20B及び上側保持体30によって保持されるウエハWの面中心方向に対向している(図10参照)。この場合、図10では下側保持体20A,20B及び上側保持体30がウエハWの面中心点C0から半径方向に延びる軸線Lに沿って配設されているが、図10に二点鎖線で示すように、下側保持体20A,20B及び上側保持体30の保持面32のみをウエハWの面中心方向に対向して設け、下側保持体20A,20B及び上側保持体30自体を垂直状に配設してもよい。このように、下側保持体20A,20B及び上側保持体30自体を垂直状に配設することにより、下側保持体20A,20B及び上側保持体30に付着する処理液の液切れを良好にすることができる。
【0066】
また、第1実施形態と同様に、下側保持体20Aは、親水性を有する部材、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)にて断面矩形状に形成されている。
【0067】
なお、第2実施形態において、その他のウエハボート5A以外の部分は第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0068】
第2実施形態によれば、第1実施形態に比べてウエハWの下端部を2本の下側保持体20によって保持することができるので、更にウエハWの保持の安定化を図ることができる。
【0069】
<その他の実施形態>
(1)上記実施形態では、下側保持体20及び上側傾斜保持体30がウエハWの表面を保持する第1の傾斜面41と第2の傾斜面42を有する溝傾斜保持体にて形成される場合について説明したが、下側保持体20及び上側傾斜保持体30のうちの少なくとも一つを溝傾斜保持体にて形成してもよい。この場合、好ましくは少なくとも下側保持体20を溝傾斜保持体にて形成する方がよい。
【0070】
なお、下側保持体20を溝傾斜保持体にて形成した場合、上側保持体の保持溝は、通常のV字状保持溝としてもよい。このように上側保持体の保持溝をV字状溝とすることにより、ウエハWの下部側端部をV字状溝で保持するので、ウエハWの保持の安定性が高まる。
【0071】
また、上側保持体の保持溝を上記V字状溝に代えてY字状溝にしてもよい。このように上側保持体の保持溝をY字状溝とすることにより、ウエハWの保持の安定性が高まると共に、非接触であるため、液残りの影響を少なくすることができる。
【0072】
(2)上記第1,第2実施形態では、下側保持体20及び上側保持体30において、各保持体20,30の保持溝21,31に保持されるウエハWの保持部が、ウエハWの面中心点に対して対称位置にある場合について説明したが、図14(a)〜(d)に示すように隣り合う保持体すなわち下側保持体20A,20B同士又は下側保持体20,20A,20Bと上側保持体30において両保持体20,20A,20B,30に形成される保持溝21,31の傾斜角度を、隣り合う両保持体20,20A,20B,30間の中心点C2に対して対称に形成してもよい。なお、この実施形態において、その他の部分は上記第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0073】
(3)上記実施形態では、下側保持体20,20A,20Bが親水性を有する部材、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)にて形成され、上側保持体30が疎水性を有する部材、例えばポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)にて形成される場合について説明したが、下側保持体20,20A,20B及び上側保持体30を同じ材質の部材、例えば石英製部材にて形成してもよい。このように、下側保持体20,20A,20B及び上側保持体30を同じ石英製部材にて形成することにより、下側保持体20,20A,20B及び上側保持体30を同時に加工して保持溝21,31を形成することができるので、更に加工を容易にすることができると共に、下側保持体20,20A,20B及び上側保持体30を共通化して部材の削減を図ることができる。
【0074】
(4)また、上記実施形態では、この発明に係る液処理装置をウエハWの洗浄・乾燥処理装置に適用した場合について説明したが、この発明に係る液処理装置は、ウエハWを垂直状態に保持する搬送手段によって処理槽内の処理液に浸漬させてウエハWに処理を施す液処理装置の全てに適用可能である。
【0075】
(5)また、この発明に係る液処理装置は、被処理基板がウエハ以外の例えばFPD基板等についても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】この発明に係る液処理装置を適用した洗浄・乾燥処理装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】この発明におけるウエハボートの第1実施形態を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態のウエハボートによるウエハの保持状態を示す要部平面図である。
【図4】第1実施形態のウエハボートによるウエハの保持状態を示す平面図である。
【図5】図4のI部拡大平面図である。
【図6】図5の要部側面図である。
【図7】図5のII−II線に沿う断面図(a)及びIII−III線に沿う断面図(b)である。
【図8】この発明における上側保持体の変形例を示す要部正面図である。
【図9】この発明におけるウエハボートの第2実施形態を示す斜視図である。
【図10】第2実施形態のウエハボートによるウエハの保持状態を示す要部正面図である。
【図11】第2実施形態のウエハボートによるウエハの保持状態を示す平面図である。
【図12】図11のIV部拡大平面図である。
【図13】図12のVa−Va,Vb−Vb線に沿う断面図(a)及びVIa−VIa,VIb−VIb線に沿う断面図(b)である。
【図14】この発明における下側保持体と上側保持体の保持溝の別の形態を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0077】
W 半導体ウエハ(被処理基板)
1 処理槽
2 乾燥室
3 薬液供給手段
4 リンス液供給手段
5,5A ウエハボート(搬送手段)
6 乾燥気体供給手段
9 シャッタ
10 CPU(制御手段)
20,20A,20B 下側保持体
21 保持溝
22 保持面
30 上側保持体
31 保持溝
32 保持面
41 第1の傾斜面
42 第2の傾斜面
43a 表面側保持部
43b 裏面側保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を複数の保持体で垂直に保持した状態で搬送する搬送手段を具備する基板処理装置において、
少なくとも一つの上記保持体は、該保持体の長手方向に対して所定角度に傾斜する略V字状の保持溝を形成してなり、
上記保持溝を構成する第1の傾斜面で被処理基板の一方の面を保持すると共に、保持溝を構成する第2の傾斜面で被処理基板の他方の面を保持する溝傾斜保持体である、
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板処理装置において、
処理液を貯留する処理槽を更に具備し、被処理基板を上記搬送手段の保持体によって保持した状態で処理槽内の処理液に浸漬させて被処理基板に処理を施すように形成してなる、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の基板処理装置において、
上記搬送手段は、被処理基板の下端部を支持する下側保持体と、被処理基板の下部側端部を保持する左右一対の上側保持体とを具備する、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の基板処理装置において、
上記下側保持体が溝傾斜保持体にて形成されている、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項3記載の基板処理装置において、
上記下側保持体及び上側保持体が溝傾斜保持体にて形成されている、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載に基板処理装置において、
隣り合う少なくとも二以上の保持体が溝傾斜保持体にて形成され、
上記隣り合う溝傾斜保持体に形成される保持溝の傾斜角度が両溝傾斜保持体間の中心点に対して対称である、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置において、
上記溝傾斜保持体において、該保持体の保持溝に保持される被処理基板の保持部は、保持体の長手方向に沿う中心点に対して対称位置にある、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項5記載の基板処理装置において、
上記下側保持体及び上側保持体において、各溝傾斜保持体の保持溝に保持される被処理基板の保持部は、被処理基板の面中心点に対して対称位置にある、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項3,4,5,7又は8のいずれかに記載の基板処理装置において、
上記下側保持体及び上側保持体における保持溝を有する保持面は、上記下側保持体及び上側保持体によって保持される被処理基板の面中心方向に対向してなる、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の基板処理装置において、
上記保持体は、複数枚の被処理基板を互いに並行に保持すべく複数の保持溝を適宜間隔に列設してなる、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
請求項3,4,5,7,8,9又は10のいずれかに記載の基板処理装置において、
上記下側保持体は親水性を有する部材にて形成され、上記上側保持体は疎水性を有する部材にて形成される、ことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−98017(P2010−98017A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265900(P2008−265900)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】