説明

基板収納容器

【課題】位置決め作業等に支障を来たすのを抑制し、位置決め精度の低下を招くことが少なく、位置決め具の滑り性を向上させることのできる基板収納容器を提供する。
【解決手段】半導体ウェーハを収納する容器本体1の底板2に、一対の位置決めピン51に嵌挿される位置決め具8を複数取り付け、各位置決め具8を、一対の位置決めピン51にそれぞれ嵌挿されて相互に対向する一対の位置決めブロック9とから構成する。各位置決めブロック9を対向面11が開口した平面略正方形に形成するとともに、断面略V字形に凹み形成してその傾斜した内面12を位置決めピンの上部に接触可能とし、一対の位置決めブロック9の開口した対向面11同士を突き合わせて連通させる。位置決め具8を後付けするので、位置決め具8の肉厚を薄肉化でき、しかも、成形時の冷却不足で位置決め具8の表面に凹凸が生じたり、変形して位置決め作業等に支障を来たすのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の基板を支持する基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハを収納する従来の基板収納容器は、図示しないが、例えばφ300mmの薄い半導体ウェーハを複数枚整列収納するフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の開口した正面部をガスケットを介して開閉する着脱自在の蓋体とを備え、蓋体開閉装置上に位置決めして搭載される(特許文献1、2、3、4、5、6参照)。
【0003】
容器本体は、樹脂を含む成形材料を使用して射出成形され、底部の前部両側と後部中央とには、基板収納容器、具体的には容器本体を位置決めする細長い位置決め具がそれぞれ配設されている。位置決め具は、蓋体開閉装置等の3本一組の第一位置決めピンそれぞれに上方から接触する第一の接触部と、この状態から他の装置等に移し替えられる場合に搬送装置に設置される3本一組の第二位置決めピンそれぞれに上方から接触する第二の接触部とを備えた平面略長方形あるいは楕円形に形成され、容器本体の底部に一体成形されたり、あるいは別部品として後付けされている。
【特許文献1】WO99/39994
【特許文献2】特開2000‐306988号公報
【特許文献3】特開2004‐214269号公報
【特許文献4】特開2006‐128461号公報
【特許文献5】特開2002‐68364号公報
【特許文献6】特開2003‐174080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、容器本体の底部に複数の位置決め具が単に一体形成されたり、あるいは別部品として後付けされているので、以下のような問題がある。
【0005】
先ず、容器本体の底部に複数の位置決め具が一体成形される場合には、成形により位置決め具の肉厚が厚くなるので、成形時の冷却不足で表面に凹凸が生じたり、変形して位置決め作業等に支障を来たすという問題がある。特に、位置決め具は、容器本体に一個ではなく、複数成形されるのが一般的であるから、位置決め精度の低下を招くこととなる。また、容器本体と複数の位置決め具とが一体成形される場合には、これらが同じ成形材料により成形されるので、位置決め具の位置決めピンに接触して滑る滑り性が悪化し、正しい位置に位置決めできないおそれがある。
【0006】
次に、容器本体の底部に複数の位置決め具が別部品として後付けされる場合には、容器本体と位置決め具とを異なる成形材料により成形することができるので、位置決め具の滑り性の向上が期待できるものの、容器本体の底部に位置決め具を後付けする際の取付誤差が累積され、位置決め精度の著しい低下を招くおそれがある。さらに、従来の位置決め具は、第一、第二の接触部を有する平面略長方形あるいは楕円形に単に形成されているので、第一位置決めピンと第二位置決めピンのいずれにも高精度で嵌合させたり、高さを調整することが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、位置決め作業等に支障を来たすのを抑制し、位置決め精度の低下を招くことが少なく、位置決め具の滑り性を向上させることのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納する容器本体の底部に、一対の位置決めピンに挿し嵌められる位置決め具を取り付けたものであって、
位置決め具は、一対の位置決めピンにそれぞれ挿し嵌められて相互に対向する一対の位置決めブロックを含み、各位置決めブロックを対向面が開口した平面略正方形に形成するとともに、断面略V字形に凹ませてその傾斜した内面を位置決めピンの上部に接触可能とし、一対の位置決めブロックの開口した対向面同士を突き合わせて略連通(おおよそ連なり通す)させるようにしたことを特徴としている。
【0009】
なお、容器本体の底部に、位置決め具の位置決めブロックに接触する複数の高さ調整板を並べ設けることができる。
また、容器本体の底部にボトムプレートを間隔をおいて支持させ、このボトムプレートには、位置決め具を露出させる露出孔を設けることができる。
また、一対の位置決めブロックの対向面同士を空間をおいて突き合わせることができる。
【0010】
また、位置決めブロックの両側部から取付フランジをそれぞれ突出させて各取付フランジには位置決めボスを形成し、この位置決めボスを貫通した締結具を容器本体の底部に螺子嵌めすることもできる。
また、容器本体の底部と位置決めブロックのいずれか一方に係止爪を、他方には係止孔をそれぞれ設け、これら係止爪と係止孔とを着脱自在に嵌め合わせることも可能である。
さらに、位置決めブロックを、滑り性に優れる成形材料により成形することも可能である。
【0011】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくともφ200、φ300、φ450mmの半導体ウェーハ、ガラス基板、マスクガラス等が含まれる。また、容器本体は、透明、不透明、半透明、フロントオープンボックスタイプ、トップオープンボックスタイプ等を特に問うものではない。一対の位置決めピンは、例えば半導体加工装置、蓋体開閉装置、気体置換装置、搬送装置等からなる半導体製造装置上に複数設けられることが好ましい。締結具には、少なくともビス、ボルト、これらに機能的に類似する螺子部材が含まれる。
【0012】
滑り性に優れる成形材料とは、少なくとも容器本体を成形する樹脂材料よりも滑り性に優れるよう、静止摩擦係数が小さい成形材料をいい、樹脂材料と鋼との関係における静止摩擦係数が0.3以下であることが好ましい。この静止摩擦係数が0.3以下の樹脂材料としては、例えばポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、フッ素系樹脂、液晶ポリマー等があげられる。樹脂材料には、摺動性が良好な樹脂を混合したり、フッ素樹脂やマイカ等を添加して静止摩擦係数を小さくすることができる。
【0013】
本発明によれば、例えば半導体製造装置等の一対の位置決めピンに容器本体の位置決め具を挿し嵌め、各位置決めピンに位置決めブロックの傾斜した内面を滑らせて下降させ、位置決めピンの上部に位置決めブロックの谷部を接触させれば、基板収納容器を高精度に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板収納容器の位置決め作業等に支障を来たすのを抑制し、位置決め精度の低下を招くことが少ないという効果がある。
また、容器本体の底部に、位置決め具の位置決めブロックに接触する複数の高さ調整板を並べ設ければ、複数の高さ調整板に対する位置決めブロックの接触量を調整することにより、位置決め具を高さ方向に容易に位置決めすることができる。
【0015】
また、一対の位置決めブロックの対向面同士を空間をおいて突き合わせれば、容器本体の洗浄時等に一対の位置決めブロック間に水滴が溜まるのを抑制し、パーティクルの発生源となるのを防止することができる。
また、位置決めブロックの両側部から取付フランジをそれぞれ突出させて各取付フランジには位置決めボスを形成し、この位置決めボスを貫通した締結具を容器本体の底部に螺子嵌めすれば、容器本体の底部に位置決め具の位置決めブロックを高精度に取り付け、位置決めブロックの位置ずれを防ぐことが可能になる。
【0016】
さらに、位置決めブロックを、滑り性に優れる成形材料により成形すれば、位置決めピンに対する位置決め具の滑り性を向上させ、位置決め作業時における位置決め具の途中停止を防ぐことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る基板収納容器の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図15に示すように、半導体ウェーハWを複数枚収納するフロントオープンボックスの容器本体1と、この容器本体1の開口した正面部29を開閉する蓋体60とを備え、容器本体1の底板2に、容器本体1を位置決めする複数の位置決め具8を後付けし、容器本体1の内部両側には、半導体ウェーハWを水平に支持可能な別体の支持体40をそれぞれ装着するようにしている。
【0018】
半導体ウェーハWは、図3、図12、図13等に示すように、例えば925μmの厚さを有するφ450mmの薄く重いシリコンウェーハからなり、周縁部に図示しない位置合わせや識別用のノッチが平面半円形に切り欠かれており、容器本体1に25枚が整列して収納される。
【0019】
容器本体1と蓋体60とは、所定の樹脂を含有する成形材料によりそれぞれ射出成形される。この成形材料中の所定の樹脂としては、例えば力学的性質や耐熱性等に優れるポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、あるいは環状オレフィン樹脂等があげられる。成形材料には、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、帯電防止剤、又は難燃剤等が必要に応じて選択的に添加される。
【0020】
容器本体1は、図1、図3ないし図6、図10等に示すように、半導体ウェーハWよりも大きい底板2と、この底板2に半導体ウェーハWの収納空間をおいて上方から対向する天板19と、これら底板2と天板19の後部間を上下に連結する背面壁25と、底板2と天板19の左右両側部間を上下に連結する左右一対の側壁27とを備えた不透明のフロントオープンボックスタイプに形成され、開口した横長の正面部29を水平横方向に向けた状態で蓋体開閉装置50上に搭載されたり、洗浄槽の洗浄液により洗浄される。
【0021】
底板2と天板19とは、図3や図4等に示すように、基本的には容器本体1の正面部29側が広く長く、背面壁25側が狭く短い平面略台形にそれぞれ形成され、正面部29側から背面壁25方向に向かうにしたがい徐々に接近するよう傾斜する。
【0022】
底板2は、有底円筒形を呈する多数の螺子ボス3が配設され、四隅部付近には円筒形のフィルタボス4がそれぞれ穿孔して配設されており、この複数のフィルタボス4に、容器本体1の内外を連通する給気用フィルタ5と排気用フィルタ6とがそれぞれOリングを介し着脱自在に嵌合される。これら給気用フィルタ5と排気用フィルタ6とは、例えば一方向弁が内蔵され、この場合、気体置換装置に接続されて容器本体1内の空気を窒素ガスに置換し、半導体ウェーハWの表面酸化等を防止するよう機能する。
【0023】
底板2の前部両側と後部中央とには、図5ないし図8等に示すように、細長い複数の高さ調整板7がそれぞれ所定のピッチで並設され、この複数の高さ調整板7に、基板収納容器、具体的には容器本体1を蓋体開閉装置50上に位置決めする位置決め具8が締結ビスや底板2の螺子ボス3を介しそれぞれ螺着される。
【0024】
各位置決め具8は、図3ないし図8等に示すように、複数の高さ調整板7間に接触支持される一対の位置決めブロック9を備え、この一対の位置決めブロック9が僅かな水切り空間10をおいて相互に対向して連通されており、この一対の位置決めブロック9が蓋体開閉装置50上に起立した一対の位置決めピン51にそれぞれ上方から嵌挿されて容器本体1を蓋体開閉装置50上に高精度に位置決めするよう機能する。
【0025】
各位置決めブロック9は、容器本体1を成形する樹脂材料よりも滑り性に優れる成形材料を使用して隣接する他の位置決めブロック9に対向する対向面11が開口した平面正方形に射出成形され、断面略V字形に凹み形成されてその凹部を下方に指向させており、この凹部の傾斜した一対の内面12を位置決めピン51の半球形を呈した上部に摺接させるよう機能する。
【0026】
位置決めブロック9の成形材料としては、例えば滑り性、耐熱性、耐薬品性、難燃性のポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等があげられる。この位置決めブロック9の静止摩擦係数は、例えば容器本体1がポリカーボネート製の場合には、容器本体1の対鋼の静止摩擦係数が0.33程度であることから、良好な滑り性を得るため、0.3以下が好ましい。
【0027】
位置決めブロック9の両側部には取付フランジ13がそれぞれ水平に突出形成され、各取付フランジ13には、段差を備えた円筒形の位置決めボス14が一体形成されており、この位置決めボス14を貫通した締結ビスが螺子ボス3に螺挿されることにより、位置決めブロック9が高精度に容器本体1に位置決めされる。
【0028】
位置決めブロック9の周縁部のうち、少なくとも他の位置決めブロック9に近接対向する対向面11の縁には、成形性や洗浄時の水切り性を向上させる観点からテーパが形成される。また、位置決めブロック9の裏面には、左右一対の位置決めボス14間に位置する略蝶番形の支持板15が一体的に装架され、この支持板15が螺着時の位置決めブロック9の姿勢を適正化し、かつ剛性を付与するよう機能する。
【0029】
なお、一対の位置決めピン51は、蓋体開閉装置50上に所定の間隔で一組、合計3本立設される。また、基板収納容器をハンドリングする搬送装置の場合には、別の一組の位置決めピン51が立設されて蓋体開閉装置50に位置決めされた基板収納容器の位置決め具8と接触可能とされ、先の一組の一対の位置決めピン51それぞれに隣接するよう嵌合し、基板収納容器を移し替えることが可能となる。
【0030】
底板2の螺子ボス3には図2、図3、図9等に示すように、底板2を被覆して複数の給気用フィルタ5、排気用フィルタ6、及び位置決め具8をそれぞれ露出させるボトムプレート16が締結ビスを介して水平に螺着される。このボトムプレート16は、底板2よりも一回り小さい類似の形に形成され、周縁部が起立して補強されており、左右両側部に搬送用のコンベヤレールがそれぞれ選択的に形成される。
【0031】
ボトムプレート16の底板2に対向する対向内面には、直線形の強化リブと共に円筒形の複数の螺子ボス3Aと位置決めボス14Aとが配設され、この複数の螺子ボス3Aと位置決めボス14Aとを貫通した締結ビスが底板2の螺子ボス3に螺挿されることにより、ボトムプレート16が底板2に高精度に位置決めされる。また、ボトムプレート16の四隅部付近には、給気用フィルタ5と排気用フィルタ6とを近接して露出させる円形あるいは半円形の露出孔17がそれぞれ穿孔され、ボトムプレート16の前部両側と後部中央とには、位置決め具8を近接して露出させる矩形の露出孔17Aがそれぞれ穿孔される。
【0032】
ボトムプレート16の後部には、露出孔17Aの近傍に位置する複数の識別孔18が穿孔され、この複数の識別孔18に図示しない着脱自在の情報識別パッドが選択的に挿入されることにより、基板収納容器の種類や半導体ウェーハWの枚数等が蓋体開閉装置50等に識別される。
【0033】
天板19と側壁27の稜線近傍部、換言すれば、天板19の両側部には図10等に示すように、側壁27の上面上に位置する一対の螺子ボス3Bがそれぞれ前後に並べて配設され、この複数対の螺子ボス3Bに、工場の天井搬送機構に把持される搬送用のトップフランジ20が締結ビスを介し水平に螺着される。一対の螺子ボス3Bは、トップフランジ20の裏面に接触あるいは近接する補強用の連結リブ21が架設され、各螺子ボス3Bが有底円筒形に形成されてその外周面には容器本体1の中心部前方向に傾斜して伸びる補強リブ22が一体形成される。
【0034】
トップフランジ20は、図1、図3、図4等に示すように、容器本体1の正面部29側が広く長く、背面壁25側が狭く短い平面多角形の平板に形成され、前部中央には、天井搬送機構の一対の保持爪に貫通して干渉保持される保持孔23が平面矩形に穿孔される。
【0035】
トップフランジ20の両側端部には、下方に突出して天板19の複数の螺子ボス3Bに対向する螺子孔24と位置決めボス14Bとがそれぞれ並設され、これら複数の螺子孔24と位置決めボス14Bとを貫通した締結ビスが天板19の螺子ボス3Bに螺挿されることにより、天板19にトップフランジ20が高精度に位置決めされ、かつこれら19・20の間に天井搬送機構のフォークが後方から進入するための狭小な保持空間が区画形成される。
【0036】
背面壁25は、図5や図6等に示すように、中央部に透明の覗き窓26が二色成形法等により縦長に形成され、この覗き窓26により、容器本体1の内部が外部から視覚的に観察・把握される。
【0037】
各側壁27は、図5等に示すように、底板2と天板19の形に応じ、前部側が略直線的な板形に形成され、後部側が底板2と天板19の内方向に傾斜したり、湾曲して形成されており、この後部が背面壁25の側部に一体的に連結される。各側壁27の表面には、補強や変形防止の他、指等を干渉させることのできる略台形のグリップ部28が前後方向に伸長して凹み形成される。
【0038】
容器本体1の正面部29は、図1、図3ないし図5、図10、図11等に示すように、周縁に外方向に張り出すリムフランジ30が三角形の小さな保持リブを介して膨出形成され、このリムフランジ30内に着脱自在の蓋体60が蓋体開閉装置50により嵌合される。このリムフランジ30は、その内周面に正面枠形の取付溝31が切り欠かれ、この取付溝31に、蓋体60を包囲して圧接するリップタイプのガスケット32が密嵌されており、内周面の上下両側部には、ガスケット32の後方に位置する係止穴33がそれぞれ穿孔される。
【0039】
ガスケット32は、例えば耐熱性や耐候性等に優れるフッ素ゴム、シリコーンゴム、各種の熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系等)等を成形材料として弾性変形可能な枠形に成形され、蓋体60に対向する対向面には、容器本体1の正面部29方向に伸びる先細りの突片34がエンドレスに一体形成される。この突片34は、容器本体1の正面部29方向に向かうに従い徐々に容器本体1の内方向に傾斜し、蓋体60の周壁外周面に屈曲しながら圧接して気密性を確保する。
【0040】
リムフランジ30の外周面のうち、少なくとも上部と左右両側部とには、略枠形を呈する前後一対の枠リブ35が間隔をおいて配列形成され、この一対の枠リブ35の間には、強度を確保する複数のXリブ36が並べて連結架設される。一対の枠リブ35間の上部と左右両側部とのうち、少なくとも両側部には、複数のXリブ36を前後に二分する板形の強度保持リブ37がそれぞれ選択的に一体形成され、この強度保持リブ37がリムフランジ30の剛性をさらに向上させる。また、リムフランジ30の外周面下部には、ボトムプレート16の前方に整合して位置する搬送用のコンベヤレール38が設けられる。
【0041】
各支持体40は、所定の樹脂、例えば滑り性に優れるポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、あるいはCOP等を含有する成形材料により射出成形される。この成形材料には、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、導電性の付与された樹脂等が必要に応じて選択的に添加される。
【0042】
各支持体40は、図3、図12、図13等に示すように、容器本体1の側壁27内面に対向する枠体41と、この枠体41から上下に並んだ状態で突出し、半導体ウェーハWを支持する複数の支持片42とを備え、各支持片42を、枠体41から水平横方向に突出して半導体ウェーハWの少なくとも周縁部の側部前方を水平に支持する前部支持片43と、枠体41から水平横方向に突出して半導体ウェーハWの少なくとも周縁部の側部後方を水平に支持する後部支持片44とから形成しており、容器本体1の両側壁27内面にそれぞれ着脱自在に装着される。
【0043】
蓋体60は、図1、図3、図11、図14、図15等に示すように、容器本体1の開口したリムフランジ30内に嵌合する横長の筐体61と、この筐体61の開口した表面(正面)を被覆する表面プレート76と、これら筐体61と表面プレート76との間に介在される施錠機構80とを備えて構成される。
【0044】
筐体61は、基本的には枠形の周壁を備えた浅底の断面略皿形に形成され、中央部62が裏面側から表面側に向け正面略箱形に突出形成されており、この中央部62と周壁の左右両側部との間に複数の螺子ボスと共に施錠機構80用の設置空間がそれぞれ区画形成される。この筐体61の周壁外周面の丸まった四隅部付近には、蓋体60の着脱を容易化する複数本のドアガイド63がそれぞれ配設され、周壁の上下両側部には、施錠機構80用の貫通孔64がそれぞれ穿孔されており、各貫通孔64がリムフランジ30の係止穴33に対向する。
【0045】
筐体61の中央部62の隆起した表面には、上下方向に指向する複数本の強化リブ65が所定のピッチをおいて並設され、中央部62の凹んだ裏面には、左右水平方向に指向する保護棚板66が上下方向に所定のピッチで並設されており、各保護棚板66が収納された複数枚の半導体ウェーハWの周縁部前方を非接触で仕切るよう機能する。保護棚板66の表裏面には、位置ずれした半導体ウェーハWの周縁部前方に干渉可能な三角形の小さな干渉リブ67が複数配列形成される。
【0046】
筐体61の裏面両側部には、筐体61に剛性を付与して反りを防止する格子リブ68がそれぞれ縦長に一体形成され、各格子リブ68と複数の保護棚板66との間には、半導体ウェーハWを弾発的に保持するフロントリテーナ69がそれぞれ着脱自在に装着される。
【0047】
各フロントリテーナ69は、格子リブ68と保護棚板66との間に押さえ爪を介し着脱自在に装着され、かつ施錠機構80の後方に位置して蓋体60の変形を防止する縦長の枠体70(図15等参照)を備え、この枠体70の保護棚板66に近接する縦桟部には、保護棚板66方向に傾斜しながら伸びる弾性片71が上下に並べて一体形成されており、各弾性片71の先端部には、半導体ウェーハWの周縁部前方をV溝により保持する小さな保持ブロック72が一体形成される。
【0048】
筐体61の裏面周縁部には枠形の嵌合溝73が形成され、この嵌合溝73には、リムフランジ30のガスケット32との間に複数の貫通孔64や施錠機構80を挟むリップタイプのガスケット74が密嵌されており(図11参照)、このガスケット74がリムフランジ30内に圧接する。このガスケット74は、例えば耐熱性や耐候性等に優れるフッ素ゴム、シリコーンゴム、各種の熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系等)等を成形材料として弾性変形可能な枠形に成形され、ガスケット32の後方に位置する。
【0049】
ガスケット74の外周面には、容器本体1の正面部29から背面壁25方向に指向する断面略へ字形の屈曲突片75がエンドレスに一体形成され、この屈曲突片75が容器本体1の内方向から外方向に伸びてリムフランジ30の内周面に屈曲しながら圧接し、気密性を確保するよう機能する。
【0050】
表面プレート76は、筐体61の開口した表面に対応するよう横長の平板に形成され、左右両側部には、施錠機構80用の操作口77と共に複数の取付孔がそれぞれ穿孔されており、この複数の取付孔を貫通した締結ビスが筐体61の螺子ボスに螺挿されることにより、筐体61の表面に位置決め固定される。この表面プレート76の周縁部には、筐体61の周壁外周面に係合する複数の係合リブ78が所定のピッチをおいて配列形成される。
【0051】
施錠機構80は、表面プレート76の操作口77を貫通した蓋体開閉装置50の操作ピンに回転操作される左右一対の回転プレート81と、各回転プレート81の回転に伴い上下方向にスライドする複数のスライドプレート84と、各スライドプレート84のスライドに伴い筐体61から突出してリムフランジ30の係止穴33に係止する複数の係止爪87とを備えて構成され、フロントリテーナ69の前方に位置する。
【0052】
各回転プレート81は、基本的には断面略凸字形の円板に形成され、周縁部付近に一対の係合溝孔82が間隔をおいてそれぞれ略半円弧形に切り欠かれており、筐体61表面の左右両側部にそれぞれ軸支されてフロントリテーナ69の前方近傍に位置する。この回転プレート81の表面側に突出した中心部には、表面プレート76の操作口77に対向する正面略小判形の操作穴83が穿孔され、この操作穴83に蓋体開閉装置50の操作ピンが着脱自在に挿入される。
【0053】
各スライドプレート84は、筐体61の上下方向に指向する縦長の板に形成され、筐体61表面の左右両側部に複数のガイドピン85を介しそれぞれ支持されてフロントリテーナ69の前方近傍に位置しており、末端部が回転プレート81の表面周縁部付近に対向する。このスライドプレート84の末端部には嵌入ピンが突出形成され、この嵌入ピンには、回転プレート81の係合溝孔82に遊嵌するローラ86が回転可能に嵌合される。
【0054】
各係止爪87は、筐体61の貫通孔64付近に揺動可能に軸支されるとともに、スライドプレート84の先端部に揺動可能に軸支され、スライドプレート84のスライドにより貫通孔64から突出あるいは退没する。この係止爪87には円筒形のローラ88が回転可能に軸支され、このローラ88が貫通孔64から突出してリムフランジ30の係止穴33内に摺接・係止する。
【0055】
上記構成において、蓋体開閉装置50上に基板収納容器を位置決めする場合には、蓋体開閉装置50上に起立した複数の位置決めピン51に容器本体1の位置決め具8をそれぞれ上方から嵌挿し、各位置決めピン51の上部に位置決めブロック9の傾斜した内面12を滑らせて下降させ、位置決めピン51の上端部に位置決めブロック9の谷部を接触させれば、蓋体開閉装置50上に基板収納容器を高精度に位置決めすることができる(図3参照)。
【0056】
上記構成によれば、容器本体1の底部に複数の位置決め具8を一体成形するのではなく、後付けするので、位置決め具8の肉厚を薄肉化することができ、しかも、成形時の冷却不足で位置決め具8の表面に凹凸が生じたり、変形して位置決め作業等に支障を来たすのを有効に防止することができる。特に、個別に成形した一対の位置決めブロック9を突き合わせて平面略長方形の細長い位置決め具8を構成するので、位置決め具8の長手方向を所定の向きと平行に配置することができる他、位置決め具8の品質の安定化が大いに期待できる。
【0057】
また、位置決めブロック9を容器本体1よりも滑り性の良好な成形材料により略均一な肉厚の小型部品に成形するので、位置決めピン51の上端部に位置決めブロック9の谷部を適切に接触させ、基板収納容器の大きさにかかわらず、正しい位置に位置決めすることができる。
【0058】
また、容器本体1の底部に位置決め具8を単に螺着するのではなく、複数の高さ調整板7や位置決めボス14を介して螺着するので、位置ずれや取付誤差の累積を生じることがなく、さらには、容器本体1の半導体ウェーハWを支持する高さ寸法や傾き等を確認して位置決めブロック9が取り付けられるそれぞれの位置の高さ調整板7にて個別の位置調整も可能になる。また、基板収納容器が蓋体開閉装置50に搭載されるときと、搬送装置に搭載されるときの位置決めを別々に調整することも可能になる。
【0059】
なお、上記実施形態における容器本体1やトップフランジ20は、樹脂を含む成形材料により成形しても良いが、アルミニウム、SUS、チタン合金等の金属を用いて形成しても良い。また、容器本体1の底部に位置決め具8を螺着するのではなく、係止機構(例えば、相互に嵌合する係止爪と係止孔等)を介して取り付けても良い。また、水切り性に特に支障を来たさなければ、一対の位置決めブロック9を直接接触させて連通しても良い。また、位置決めブロック9の周縁部に、成形性や洗浄時の水切り性を向上させる観点からテーパを形成しても良い。
【0060】
また、容器本体1の側壁27外面には、必要に応じ、握持操作用のハンドルを設けることもできる。また、ボトムプレート16、例えばその後部に、バーコードやRFIDシステムのRFタグを取り付けるための取付部を形成することもできる。さらに、施錠機構80のローラ88を円筒形ではなく、多角形の筒形に形成してその平坦面を係止穴33内に係止させ、蓋体60の施錠の安定化や確実化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す底面図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す断面側面図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体と位置決め具との関係を模式的に示す側面図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における上下逆にした容器本体の底板を模式的に示す斜視説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体と位置決め具とを模式的に示す底面説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における位置決め具の位置決めブロックを模式的に示す斜視説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における位置決めブロックの裏面側を模式的に示す斜視説明図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるボトムプレートの内側を模式的に示す斜視説明図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体の天板を模式的に示す斜視説明図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるリムフランジ、ガスケット、及び蓋体の関係を模式的に示す部分断面説明図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器の実施形態における半導体ウェーハの支持状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図13】本発明に係る基板収納容器の実施形態における支持体と半導体ウェーハとを模式的に示す正面図である。
【図14】本発明に係る基板収納容器の実施形態における筐体の表面側を模式的に示す斜視説明図である。
【図15】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の裏面側を模式的に示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 容器本体
2 底板
3 螺子ボス
7 高さ調整板
8 位置決め具
9 位置決めブロック
10 水切り空間(空間)
11 対向面
12 内面
13 取付フランジ
14 位置決めボス
15 支持板
50 蓋体開閉装置
51 位置決めピン
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納する容器本体の底部に、一対の位置決めピンに挿し嵌められる位置決め具を取り付けた基板収納容器であって、
位置決め具は、一対の位置決めピンにそれぞれ挿し嵌められて相互に対向する一対の位置決めブロックを含み、各位置決めブロックを対向面が開口した平面略正方形に形成するとともに、断面略V字形に凹ませてその傾斜した内面を位置決めピンの上部に接触可能とし、一対の位置決めブロックの開口した対向面同士を突き合わせて略連通させるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
容器本体の底部に、位置決め具の位置決めブロックに接触する複数の高さ調整板を並べ設けた請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
一対の位置決めブロックの対向面同士を空間をおいて突き合わせた請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
位置決めブロックの両側部から取付フランジをそれぞれ突出させて各取付フランジには位置決めボスを形成し、この位置決めボスを貫通した締結具を容器本体の底部に螺子嵌めするようにした請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
【請求項5】
位置決めブロックを、滑り性に優れる成形材料により成形した請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−16140(P2010−16140A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174068(P2008−174068)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】