説明

基板収納容器

【課題】容器本体及び蓋体に対する芯出し手段の取り付け作業を削減するとともに、洗浄水などの液体を芯出し手段に残留し難くする。
【解決手段】開口部3を有して精密基板Wを収納する容器本体2と、この開口部3に嵌め合わされる嵌合ケース21を有して開口部3を閉鎖する蓋体4と、容器本体2と蓋体4との芯出しを行う芯出し手段とを有する。この芯出し手段は、開口部3の各コーナー部において、開口部3から露出するように開口部3と一体的に形成される複数の接触部材12と、嵌合ケース21の各接触部材12に対応する位置に形成される複数の突起部25とにより構成される。そして、突起部25と接触部材12とは、異なる材質により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハなどの基板を収納する基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
局部的にクリーンな環境を形成するミニエンバイロメント方式下に用いられる加工装置は、通常のクリーンルームの外環境とは別に区画されたスパークリーンルーム(クリーンクラス1以下)の内環境に設置される。この加工装置は、更に、外環境に設置される基板収納容器用の位置決めステージと、外環境と内環境との境界壁を開閉する少なくとも昇降可能な蓋体開閉器(オープナーともいう)とを備えている。そして、半導体ウェーハなどの精密基板が収納された基板収納容器は、OHT(Overhead Hoist Transfer)、AGV(Auto Guided Vehicle)、又はRGV(Rail Guided Vehicle)などからなる自動搬送機により搬送されて、位置決めステージに設置される。
【0003】
基板収納容器は、前面に設けられた開口部から複数毎の精密基板を整列収納する容器本体と、この容器本体の開口部を閉鎖する蓋体とにより構成されている。蓋体は、容器本体の前面から開口部に嵌合する嵌合ケースと、この嵌合ケースの前面を覆う被覆プレートと、この被覆プレートに穿孔される一対のキー挿入口と、嵌合ケースに内蔵されて蓋体を施錠及び解錠するラッチ機構とにより構成される。この一対のキー挿入口は、蓋体開閉器の標準規格(SEMI STANDERD E62)に対応する位置にそれぞれ穿孔されている。また、ラッチ機構は、例えば、特許文献1に記載されるように、蓋体外部から操作可能な回転プレートと、この回転プレートの回転に連動する複数の動力伝達プレートと、各動力伝達プレートの直線運動に連動する複数の係止クランプと、により構成される。
【0004】
蓋体開閉器は、回転可能なT字型のキーを備え、寸法がSEMI標準規格(FIMS)として規格化されている。そして、蓋体開閉器は、T字型のキーを蓋体に設けられたキー挿入口に挿入して90°回転することで、ラッチ機構の作動により蓋体を施錠又は解錠し、更に、蓋体を係合保持して基板収納容器から取り外すとともに、基板収納容器の開口部に蓋体を嵌合閉鎖する。
【0005】
このように構成される基板収納容器において、蓋体開閉器により蓋体を容器本体から取り外すと、蓋体開閉器に保持された蓋体が自重などによって下方にずれることがあった。また、蓋体開閉器の停止位置の再現精度によっても、この蓋体が左右方向又は上下方向にずれることがあった。そこで、従来の基板収納容器では、容器本体と蓋体との位置を適切な位置に案内するために、容器本体や蓋体とは別部材によって構成された芯出し手段を取り付けていた。そして、この芯出し手段を、穴や溝と突起部や爪との係止や、ネジ止めなどにより、容器本体又は蓋体に取り付けていた。特許文献2に記載された基板収納容器では、芯出し手段として、L字型に延びる位置決めアームが形成された位置決め体を採用している。そして、蓋体の嵌合ケースに窓穴を形成するとともに、この窓穴から位置決めアームが貫通突出するように、位置決め体を蓋体にネジ止めしている。
【特許文献1】特開2000−058633号公報
【特許文献2】特開2002−368074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の基板収納容器では、芯出し手段が、容器本体又は蓋体と別部材により構成されているため、衝撃や摩擦などで、使用中に芯出し手段が落下するという問題があった。また、この芯出し手段を、穴や溝と突起部や爪との係止やネジ止めなどにより、容器本体又は蓋体に取り付けているため、芯出し手段を取り付けるための作業が増加するという問題があった。更に、この基板収納容器を洗浄すると、容器本体や蓋体に形成された穴や溝に洗浄水が入り込むため、この洗浄水の除去に時間がかかり、しかも、洗浄水が残留すると、基板収納容器に収納された精密基板の汚染や腐食の原因になるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み成されたものであり、容器本体及び蓋体に対する芯出し手段の取り付け作業を削減するとともに、洗浄水などの液体を芯出し手段に残留し難い基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る基板収納容器は、開口部を有して基板を収納する容器本体と、開口部に嵌め合わされる嵌合部を有して開口部を閉鎖する蓋体と、容器本体と蓋体との芯出しを行う芯出し手段とを有する基板収納容器であって、芯出し手段は、開口部及び嵌合部の何れか一方に一体的に形成される突起部と、開口部及び嵌合部の何れか他方に一体的に形成されて突起部が接触する接触部と、を有しており、突起部と接触部とは、異なる材質により形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る基板収納容器によれば、容器本体の開口部及び蓋体の嵌合部の何れか一方に突起部が形成され、この開口部及び嵌合部の何れか他方に接触部が形成されているため、蓋体を容器本体に嵌め合わせると、突起部と接触部とが接触することで容器本体と蓋体との芯出しが行われ、容器本体に対して蓋体が適切な位置に案内される。また、突起部及び接触部が開口部及び嵌合部に一体的に形成されているため、容器本体及び蓋体に芯出し手段を取り付ける作業が削減でき、生産効率を向上させることができる。更に、芯出し手段を形成するために容器本体や蓋体に溝や穴などを形成する必要が無いため、洗浄水などの液体を容器本体や蓋体から除去しやすくすることができる。このため、容器本体や蓋体に残留した洗浄水に起因する基板の汚染や腐食を防止することができる。しかも、突起部と接触部とが異なる材質により形成されているため、突起部及び接触部の磨耗を低減させることができる。このため、この磨耗による生じる粉塵に起因する基板の汚染を抑制することができる。
【0010】
この場合、突起部と接触部とは、異なる硬度の材質で形成されていることが好ましい。この基板収納容器によれば、突起部と接触部とが異なる硬度の材質で形成されているため、突起部及び接触部の磨耗をより低減させることができる。
【0011】
また、突起部は、接触部に接触する接触面が平面状に形成されていることが好ましい。この基板収納容器によれば、接触部と接触する突起部の接触面が平面状に形成されているため、突起部と接触部との接触圧力を分散させることができる。このため、突起部及び接触部の磨耗をより低減させることができるとともに、容器本体に対する蓋体の案内を円滑にすることができる。
【0012】
また、接触部は、開口部及び嵌合部の何れか他方と面一に形成されていることが好ましい。この基板収納容器によれば、接触部が開口部又は嵌合部と面一に形成されているため、洗浄水などの液体を容器本体や蓋体からより除去しやすくすることができる。また、蓋体を容器本体に嵌め合わせる際に、突起部が接触部に引っ掛かるのを防止することができる。
【0013】
また、突起部は、開口部及び嵌合部の何れか一方と異なる材質により形成されており、開口部及び嵌合部の何れか一方を形成する際に一体化されていることが好ましい。この基板収納容器によれば、突起部を開口部及び嵌合部の何れか一方と異なる材質により形成することで、接触部を開口部及び嵌合部の何れか他方と同じ材質により形成することができる。これにより、開口部及び嵌合部の何れか他方は、それ自体が接触部となり得るため、接触部を形成する作業を削減することができる。更に、突起部は、開口部及び嵌合部の何れか一方を成形する際に一体化されるため、容器本体又は蓋体に対する突起部の取り付け作業を削減することができる。
【0014】
また、突起部は、インサート成形により開口部及び嵌合部の何れか一方に一体化されていることが好ましい。この基板収納容器によれば、インサート成形により突起部を開口部又は嵌合部に一体化させるため、材質の異なる突起部と開口部又は嵌合部とを容易に一体化させることができる。
【0015】
また、接触部は、開口部及び嵌合部の何れか他方と異なる材質により形成されており、開口部及び嵌合部の何れか他方を成形する際に一体化されていることが好ましい。この基板収納容器によれば、接触部を開口部及び嵌合部の何れか他方と異なる材質により形成することで、突起部を開口部及び嵌合部の何れか一方と同じ材質により形成することができる。これにより、開口部及び嵌合部の何れか一方を突出させるだけで突起部を形成することができるため、突起部を容易に形成することができる。更に、接触部は、開口部及び嵌合部の何れか他方を成形する際に一体化されるため、容器本体又は蓋体に対する接触部の取り付け作業を削減することができる。
【0016】
また、接触部は、インサート成形により開口部及び嵌合部の何れか他方に一体化されていることが好ましい。この基板収納容器によれば、インサート成形により接触部を開口部又は嵌合部に一体化させるため、材質の異なる接触部と開口部又は嵌合部とを容易に一体化させることができる。
【0017】
また、突起部及び接触部は、開口部及び嵌合部に複数形成されていることが好ましい。この基板収納容器によれば、突起部及び接触部が、開口部及び嵌合部に複数形成されるため、容器本体と蓋体との間のガタツキを抑制することができ、容器本体に対して蓋体を円滑に案内することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、容器本体及び蓋体に対する芯出し手段の取り付け作業を削減するとともに、洗浄水などの液体を芯出し手段に残留し難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る基板収納容器の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る基板収納容器は、ミニエンバイロメント方式下に用いられる加工装置において、精密基板の運搬のために用いられるものである。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0020】
図1は、実施形態に係る基板収納容器の斜視図である。図1に示すように、本実施形態の基板収納容器1は、前面に開口部3が形成されたフロントオープンボックスタイプの容器本体2と、この容器本体2の開口部3を閉鎖する蓋体4とを備えている。
【0021】
容器本体2は、略直直方体の箱型に形成されており、半導体ウェーハ(例えば、直径が300mmや450mmのシリコンウェーハ)からなる複数毎の精密基板Wを所定のピッチで上下に整列収納する容器である。容器本体2は、十分な強度や剛性を有するポリカーボネート、ポリエーテルエーテルイミド、シクロオレフィンポリマーなどの熱可塑性樹脂、これらの樹脂に導電性の添加剤や導電性樹脂を添加して導電性を付与した樹脂、又は、これらの樹脂に紫外線吸収剤を添加した樹脂により、透明又は不透明に形成されている。
【0022】
容器本体2の底面には、加工装置の位置決めステージ(不図示)との間で位置決めを行うV溝が形成された複数の位置決め部材及びボトムプレート6が、着脱自在に装着されている。
【0023】
容器本体2の天井(上面)には、基板収納容器1を搬送する搬送ロボット(不図示)に保持されるロボティックフランジ7が装着されている。ロボティックフランジ7には、剛性を高めるために、表面に格子状のリブ8が形成されている。また、ロボティックフランジ7には、正方形の貫通穴9が形成されている。そして、搬送ロボットの係止爪をこの貫通穴9に挿入することで、容器本体2が搬送ロボットに保持される。なお、別の仕様の搬送ロボットを用いる場合は、例えば、搬送ロボットのピックアップ用の爪を、容器本体2の後側からロボティックフランジ7と容器本体2との間の空間に挿入することで、容器本体2が搬送ロボットに保持される。そして容器本体2は、搬送ロボットによりピックアップされて、搬送される。
【0024】
容器本体2の相対する両内側壁には、複数毎の精密基板Wを搭載するために、各精密基板Wの周縁部を支持する複数の支持部材10が、所定のピッチで並設されている。
【0025】
容器本体2の相対する両外側壁には、搬送用のボトムレール(不図示)が選択的に装着されている。
【0026】
容器本体2の開口部3は、精密基板Wを出し入れ(ローディング及びアンローディング)する出し入れ口となる。開口部3は、四隅が丸く湾曲された矩形の開口を形成している。すなわち、開口部3の内側表面3aは、上下左右が平面状に形成されており、その四隅が丸く湾曲されている。そして、この内側表面3aは、容器本体2の前方に向かうに従い徐々に広がるように傾斜して形成されている。すなわち、内側表面3aは、容器本体2の内部に向かうに従い徐々に狭くなるように傾斜して形成されている。また、内側表面3aに隣接する開口部3の表側表面3bは、平面状に形成されている。そして、内側表面3aと表側表面3bとの間には、平面状又は曲面状の傾斜面3cが形成されている。
【0027】
また、開口部3の内側表面3aのうち、内側上面及び内側下面には、後述するラッチ機構5の係止クランプが嵌入されるように、それぞれ一対の係止穴11が凹み形成されている。そして、開口部3の四隅の各コーナー部には、それぞれ芯出し手段となる接触部材12が埋設されている。
【0028】
図2は、開口部の一部拡大図、図3は、接触部材の斜視図である。図2及び図3に示すように、接触部材12は、略L字状の板状部材により形成されており、開口部3のコーナー部の形状と適合するように曲面状に丸く90°屈曲された屈曲部12aと、屈曲部12aの両端からそれぞれ平板上に延びる一対の接触部12bとにより構成されている。そして、内側に屈曲された接続部材13の内側表面13aと、内側表面13aに隣接して開口部3の前方に向けられる一方側面13bとの間には、平面状又は曲面状の傾斜面16が形成されている。そして、接触部材12の内側表面13a、一方側面13b及び傾斜面13cが、開口部3の内側表面3a、表側表面3b及び傾斜面3cと面一に露出されるように、接触部材12と開口部3とが一体化されている。
【0029】
また、容器本体2の奥側に向けられる接触部材12の他方側面13dには、容器本体2を形成する金型内において接触部材12を保持するための一対の保持用凹部14が形成されている。接触部材12の長手方向における両端面には、それぞれ、接触部材12と開口部3との接合強度を高めるための凹部15が形成されている。
【0030】
このような形状の接触部材12は、開口部3と異なる材質により形成されている。すなわち、接触部材12は、高剛性や耐熱性に優れるポリエーテルエーテルケトン、ポリプチレンテレフタレート、ナイロン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂により形成されている。また、接触部材12は、これらの樹脂同士をブレンドしたものや、これらの樹脂を他の樹脂にブレンドしたもの、これらの樹脂にPTFE(Polytetrafluoroethylene)などのフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などの潤滑材や、カーボンフィラー、カーボンパウダー、ガラス繊維、マイカなどの補強材や充填材を添加したものとしてもよい。
【0031】
そして、接触部材12と開口部3との一体化は、例えば、インサート成形により行うことができる。すなわち、まず、開口部3を成形するための金型(不図示)を用意し、射出成形などにより成形された接触部材12をこの金型に挿入する。このとき、接触部材12の内側表面13a、一方側面13b及び傾斜面13cが、開口部3の内側表面3a、表側表面3b及び傾斜面3cから露出するように、接触部材12を位置決めする。接触部材12の位置決めは、例えば、金型に設けられた固定ピンなどで接触部材12の保持用凹部14を保持することで、行うことができる。その後、接触部材12が挿入された金型に樹脂を充填することにより、材質の異なる接触部材12と開口部3とを一体化することができる。このとき、金型に充填された樹脂が接触部材12の凹部15に流れ込むため、接触部材12と開口部3との接続強度が高くなる。また、接触部材19を金型内で位置ずれさせずにしっかりと保持できるので、充填される樹脂の表面への被覆を防止できる。
【0032】
なお、保持用凹部14及び凹部15が形成された接触部材12の代わりに、図4に示すように、保持用凸部17及び凸部18が形成された接触部材19を用いる場合は、例えば、金型に設けられた固定ピンなどで接触部材19の保持用凸部17を保持することで、接触部材19を位置決めする。そして、金型に樹脂を充填しても、接触部材19の凸部18がしっかりと金型に挟み込まれているため、接触部材19を位置ずれさせずにしっかりと金型内で保持でき、充填される樹脂の表面への被覆を防止できる。なお、この保持用凸部17は、開口部3から突出してしまうので、成形後、突出部分を切断して使用される。
【0033】
図5は、蓋体の一部拡大図である。図1及び図5に示すように、蓋体4は、容器本体2の開口部3を閉鎖するものであり、シールガスケット20を介して開口部3を閉鎖する嵌合ケース21と、嵌合ケース21に内蔵されるラッチ機構23とを備えている。
【0034】
嵌合ケース21は、容器本体2の開口部3に嵌め合わされるものである。嵌合ケース21は、容器本体2と同様の材質で形成されている。すなわち、嵌合ケース21は、十分な強度や剛性を有するポリカーボネート、ポリエーテルエーテルイミド、シクロオレフィンポリマーなどの熱可塑性樹脂、これらの樹脂に導電性の添加剤や導電性樹脂を添加して導電性を付与した樹脂、又は、これらの樹脂に紫外線吸収剤を添加した樹脂により、透明又は不透明に形成されている。
【0035】
嵌合ケース21は、中空構造の薄い箱型に形成されている。なお、開口部3に嵌め合わされたときに、基板収納容器1の外側となる面が嵌合ケース21の前面となり、基板収納容器1の内側となる面が嵌合ケース21の裏面となる。
【0036】
嵌合ケース21の外周面は、四隅が丸く湾曲された矩形断面を有しており、開口部3と略合致する形状に形成されている。すなわち、嵌合ケース21の外周面は、上下左右が略平面状に形成されており、その四隅が丸く湾曲されている。
【0037】
嵌合ケース21の裏面には、複数毎の精密基板Wの前部周縁を弾発的に保持するフロントリテーナ(不図示)が装着される。嵌合ケース21の上側壁及び下側壁には、後述するラッチ機構5の係止クランプが出没できるように、それぞれ一対の出没孔24が穿孔されている。そして、嵌合ケース21の上下左右の各側壁には、それぞれ、一対の突起部25が一体的に形成されている。
【0038】
突起部25は、蓋体4を容器本体2に嵌め合わせる際に開口部3の接触部材12と接触することで、蓋体4と容器本体2との芯出しを行う芯出し手段である。突起部25は、嵌合ケース21と同一の材質により形成されている。すなわち、突起部25は、接触部材12と異なる材質により形成されている。そして、突起部25は、嵌合ケース21が突出して形成されており、蓋体4が容器本体2に嵌め合わされる際、接触部材12の接触部12bに対応する位置に配置されている。このため、突起部25は、嵌合ケース21の各面に2つずつ形成されており、突起部25が接触する接触部材12の接触部12bは、開口部3の各面に2つずつ形成されている。
【0039】
各突起部25は、嵌合ケース21が突出して形成されており、その頂部に、平面状の突出面26が形成されている。なお、突出面26は、接触部材12と接触する接触面となる。そして、各突起部25は、縦断面が台形に形成されており、突出量(突出高さ)が、前方に向かうに従い徐々に増加する(高くなる)ように傾斜して形成されている。すなわち、突起部25は、突出量(突出高さ)が、蓋体4を容器本体2に嵌め合わせる方向に向けて徐々に減少する(低くなる)ように傾斜して形成されている。なお、突起部25の形成は、例えば、嵌合ケース21を成形する金型に突起部25の形状の凹部を形成しておき、この金型に樹脂を充填することで行うことができる。
【0040】
被覆プレート22には、嵌合ケース21に内蔵されたラッチ機構5を操作するためのキーが挿入される左右一対のキー挿入口27が穿孔されている。キー挿入口27は、蓋体開閉器の標準規格に対応するように、それぞれ長方形に形成されている。そして、被覆プレート22の丸まった四隅付近には、複数の固定穴28が穿孔されており、この固定穴28に、被覆プレート22と嵌合ケース21とを締結する螺子などの締結具が着脱自在に取り付けられている。
【0041】
図6は、ラッチ機構を示した斜視図であり、嵌合ケースから被覆プレートを取り外してラッチ機構を露出させた状態を示している。図6に示すように、ラッチ機構23は、上下方向に軸支されており、一対のラッチ機構23が左右方向に並設されている。各ラッチ機構23は、蓋体開閉器のキーにより回転される回転プレート31と、この回転プレート31に連結されて嵌合ケース21の上下方向にスライド可能な動力伝達プレート32と、この動力伝達プレート32に連結されて出没孔24から出没する係止クランプ33とを備えている。
【0042】
回転プレート31は、断面が略凸字型の中実円板、すなわち、中央部が片側に突出した中実円板に形成されている。そして、回転プレート31には、突出した中央部に、被覆プレート22のキー挿入口27に対向するキー穴34が形成されている。このキー穴34は、略長方形に凹み形成されている。なお、回転プレート31には、キー穴34と蓋体開閉器のキーとの寸法誤差を吸収する吸収機構35が取り付けられている。そして、回転プレート31の周縁部には、2つの嵌合溝36が約180°の間隔をおいて形成されている。この嵌合溝36は、中心角が約90°の略円弧状の溝であって、その半径が徐々に大きくなるように湾曲して形成されている。
【0043】
各動力伝達プレート32は、細長い縦長の略長方形に形成されている。そして、動力伝達プレート32は、長手方向の中心軸の延長線が回転プレート31の中心を通るように、嵌合ケース21に設けられたガイド支持片37を介してスライド可能に配設されている。また、各動力伝達プレート32には、長手方向に沿って、小判型の複数のガイド穴38が所定の間隔をおいて穿孔されており、各ガイド穴38には、嵌合ケース21から突出した円柱形のガイドピン39が嵌入されている。なお、このガイドピン39には、ガイド穴38との間に介在して摩擦に伴う樹脂粉の発生を抑制する円筒形の回転ローラ40が選択的に嵌入される。
【0044】
各動力伝達プレート32の一端部における幅方向の中心部には、回転プレート31の嵌合溝36に遊嵌される円柱形の嵌合ピン41が突出形成されている。このため、回転プレート31が回転すると、各動力伝達プレート32は、上下方向にスライドする。なお、この嵌合ピンには、嵌合溝36との間に介在して摩擦に伴う樹脂粉の発生を抑制する円筒形の回転ローラ42が選択的に嵌入される。
【0045】
各係止クランプ33は、一対のアームを有する断面略T字型に形成されており、蓋体4の出没孔24の近傍に回転可能、揺動可能に軸支されている。各係止クランプ33は、一方のアームが動力伝達プレート32の他端部に回転可能に軸支されており、他方のアームには、摩擦に伴う樹脂粉の発生を抑止する円筒形の回転ローラが回転可能に嵌入されており、この回転ローラが蓋体4の開閉時に、開口部3の係止穴11に出没孔24を介して嵌入する。
【0046】
このような構成のラッチ機構23は、蓋体4のキー挿入口27に蓋体開閉器のキーが挿入されて90°回転すると、各回転プレート31が回転して動力伝達プレートを上下方向、換言すると、蓋体4の出没孔24に向かってスライドする。すると、各係止クランプ33が弧を描きながら揺動して蓋体4の出没孔24から突出し、この突出した各係止クランプ33が容器本体2の係止穴11に嵌入する。これにより容器本体2の開口部3を閉鎖した蓋体4を、強固に施錠することができる。なお、施錠と逆の操作を行うことで、蓋体4を解錠することができる。
【0047】
このように、本実施形態に係る基板収納容器1によれば、蓋体4の嵌合ケース21に突起部25が形成され、容器本体2の開口部3に接触部材12が形成されているため、蓋体4を容器本体2に嵌め合わせると、突起部25と接触部材12とが接触することで容器本体2と蓋体4との芯出しが行われ、容器本体2に対して蓋体4が適切な位置に案内される。また、突起部25及び接触部材12が開口部3及び嵌合ケース21に一体的に形成されているため、容器本体2及び蓋体4に芯出し手段を取り付ける作業が削減でき、生産効率を向上させることができる。更に、芯出し手段を形成するために容器本体2や蓋体4に溝や穴などを形成する必要が無いため、洗浄水などの液体を容器本体2や蓋体4から除去しやすくすることができる。このため、容器本体2や蓋体4に残留した洗浄水に起因する精密基板Wの汚染や腐食を防止することができる。しかも、突起部25と接触部材12とが異なる材質により形成されているため、突起部25及び接触部材12の磨耗を低減させることができる。このため、この磨耗による生じる粉塵に起因する精密基板Wの汚染を抑制することができる。
【0048】
また、基板収納容器1によれば、突起部25と接触部材12とが異なる硬度の材質で形成されているため、突起部25及び接触部材12の磨耗をより低減させることができる。
【0049】
また、基板収納容器1によれば、接触部材12と接触する突起部25の突出面26が平面状に形成されているため、突起部25と接触部材12との接触圧力を分散させることができる。このため、突起部25及び接触部材12の磨耗をより低減させることができるとともに、容器本体2に対する蓋体4の案内を円滑にすることができる。
【0050】
また、基板収納容器1によれば、接触部材12の内側表面13a、一方側面13b及び傾斜面13cが、開口部3の内側表面3a、表側表面3b及び傾斜面3cと面一に形成されているため、洗浄水などの液体を容器本体2や蓋体4からより除去しやすくすることができる。また、蓋体4を容器本体2に嵌め合わせる際に、突起部25が接触部材12に引っ掛かるのを防止することができる。
【0051】
また、基板収納容器1によれば、接触部材12を開口部3と異なる材質により形成することで、突起部25を嵌合ケース21と同じ材質により形成することができる。これにより、嵌合ケース21の一部を突出させるだけで突起部25を形成することができるため、突起部25を容易に形成することができる。更に、接触部材12は、開口部3を成形する際に開口部3と一体化されるため、接触部材12を開口部3に取り付ける作業を削減することができる。
【0052】
また、基板収納容器1によれば、インサート成形により接触部材12を開口部3に一体化させるため、材質の異なる接触部材12と開口部3とを容易に一体化させることができる。
【0053】
また、基板収納容器1によれば、突起部25及び接触部材12が、開口部3及び嵌合ケース21に複数形成されるため、容器本体2と蓋体4との間のガタツキを抑制することができ、容器本体2に対して蓋体4を円滑に案内することができる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、接触部材12が、開口部3と面一に形成されるものとして説明したが、例えば、図7に示すように、接触部材12の一部が開口部3から突出されるものとしてもよい。この場合、接触部材12の傾斜面16が開口部3の前方に向けられることで、開口部3と突出面26との段差がスローブ状となるため、突起部25が接触部材12に引っ掛かるのを抑制することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、突起部25の形状が、突出面26が平面状であって縦断面が台形であるものとして説明したが、例えば、細長い形状であってもよく、縦断面が三角形であってもよい。また、上記実施形態では、突起部25及び接触部12bを、嵌合ケース21及び開口部3の各面にそれぞれ2つずつ形成するものとして説明したが、面ごとに形成する数を変えてもよい。なお、突起部と接触部との接触面圧を低くするために、突起部を複数に分けることが好ましく、また、接触部との接触を円滑にするために、接触部と接触する突起部の接触面を平面状又は曲面状に形成することが好ましい。
【0056】
また、上記実施形態では、接触部材12を開口部3と異なる材質で形成するものとして説明したが、突起部を嵌合ケース21と異なる材質で形成するものとしてもよい。この場合、突起部25は、嵌合ケース21と異なる素材となるため、インサート成形により、突起部25を嵌合ケース21に一体化させることができる。この基板収納容器によれば、突起部が嵌合ケース21と異なる材質により形成することで、接触部材を開口部3と同じ材質により形成することができる。これにより、開口部3は、それ自体が接触部となり得るため、接触部材を形成する作業を削減することができる。そして、インサート成形により突起部を嵌合ケースに一体化させるため、材質の異なる突起部と嵌合ケースとを容易に一体化させることができる。
【0057】
また、上記実施形態では、容器本体2の開口部3に接触部材12を設け、蓋体4の嵌合ケース21に突起部25を設けるものとして説明したが、図8に示す基板収納容器100のように、突起部101を容器本体2の開口部3に設け、接触部材102を蓋体4の嵌合ケース21に設けてもよい。この場合、開口部3の一部を突出させて突起部101を形成し、嵌合ケース21の各コーナー部に接触部材102をインサート成形で一体化することで、基板収納容器100が構成される。
【0058】
また、上記実施形態では、固定ピンを用いて、接触部材を金型内で保持するものとして説明したが、これに限らず、充填される樹脂の樹脂圧によって突出量が変化する可動ピンを用いて、接触部材を金型内に保持するものとしてもよい。
【0059】
なお、突起部25及び接触部材12の材質は特に限定されるものではないが、突起部25と接触部材12とは、硬度差のある樹脂を選択するのが好ましい。また、突起部25と接触部材12とは、摩擦発熱による変形もしくは溶融限界の指標となる限界PV値がなるべく大きな値の樹脂を選択することが好ましい。すなわち、限界PV値の小さい樹脂からなる部材が、摩擦により一方的に削られて、芯出し手段のガタツキが大きくならないように選択することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施形態に係る基板収納容器の斜視図である。
【図2】開口部の一部拡大図である。
【図3】接触部材の斜視図である。
【図4】他の接触部材の斜視図である。
【図5】蓋体の一部拡大図である。
【図6】ラッチ機構を示した斜視図である。
【図7】開口部の一部拡大図である。
【図8】他の基板収納容器の斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1…基板収納容器、2…容器本体、3…開口部、3a…内側表面、3b…表側表面、3c…傾斜面、4…蓋体、5…ラッチ機構、6…ボトムプレート、7…ロボティックフランジ、8…リブ、9…貫通穴、10…支持部材、11…係止穴、12…接触部材、12a…屈曲部、12b…接触部、13a…内側表面、13b…一方側面、13c…傾斜面、14…保持用凹部、15…凹部、17…保持用凸部、18…凸部、19…接触部材、20…シールガスケット、21…嵌合ケース(嵌合部)、22…被覆プレート、23…ラッチ機構、24…出没孔、25…突起部、26…突出面(接触面)、27…キー挿入口、28…固定穴、31…回転プレート、32…動力伝達プレート、33…係止クランプ、34…キー穴、35…吸収機構、36…嵌合溝、37…ガイド支持片、38…ガイド穴、39…ガイドピン、40…回転ローラ、41…嵌合ピン、42…回転ローラ、100…基板収納容器、101…突起部、102…接触部材、W…精密基板。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有して基板を収納する容器本体と、前記開口部に嵌め合わされる嵌合部を有して前記開口部を閉鎖する蓋体と、前記容器本体と前記蓋体との芯出しを行う芯出し手段とを有する基板収納容器であって、
前記芯出し手段は、前記開口部及び前記嵌合部の何れか一方に一体的に形成される突起部と、前記開口部及び前記嵌合部の何れか他方に一体的に形成されて前記突起部が接触する接触部と、を有しており、
前記突起部と前記接触部とは、異なる材質により形成されていることを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記突起部と前記接触部とは、異なる硬度の材質で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記突起部は、前記接触部に接触する接触面が平面状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記接触部は、前記開口部及び前記嵌合部の何れか他方と面一に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記突起部は、前記開口部及び前記嵌合部の何れか一方と異なる材質により形成されており、前記開口部及び前記嵌合部の何れか一方を形成する際に一体化されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の基板収納容器。
【請求項6】
前記突起部は、インサート成形により前記開口部及び前記嵌合部の何れか一方に一体化されていることを特徴とする請求項5に記載の基板収納容器。
【請求項7】
前記接触部は、前記開口部及び前記嵌合部の何れか他方と異なる材質により形成されており、前記開口部及び前記嵌合部の何れか他方を成形する際に一体化されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の基板収納容器。
【請求項8】
前記接触部は、インサート成形により前記開口部及び前記嵌合部の何れか他方に一体化されていることを特徴とする請求項7に記載の基板収納容器。
【請求項9】
前記突起部及び前記接触部は、前記開口部及び前記嵌合部に複数形成されていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の基板収納容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−27861(P2010−27861A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187619(P2008−187619)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】