説明

基板収納容器

【課題】撓み易い基板を高い寸法精度で支持し、蓋体のフロントリテーナに基板を適切に保持させ、基板のローディング等に支障を来たしたり、基板損傷のおそれを払拭できる基板収納容器を提供する。
【解決手段】半導体ウェーハW収納用の容器本体1と、容器本体1を開閉する蓋体20を備え、容器本体1に、半導体ウェーハWを水平に支持する支持体30を配設し、蓋体20に、半導体ウェーハWの前部周縁両側を保持する一対のフロントリテーナ34を装着する。半導体ウェーハWをローディング・アンローディングする方向における半導体ウェーハWの中心線を中心線Yとし、中心線Yと直交する中心線を中心線Xとした場合、容器本体1の側壁7に対する支持体30の配設領域を、中心線Xに対して前部32側が20°〜30°、中心線Xに対して後部33側が20°〜53°の範囲になるよう設定する。中心線Yを挟んで蓋体20に装着する一対のフロントリテーナ34の取り付け領域を、40°〜110°の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやマスクガラス等の基板を支持する基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の基板収納容器は、図示しないが、例えばφ300mmの半導体ウェーハを複数枚収納するフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備え、半導体ウェーハの保管、工程内の搬送、あるいは輸送等に使用されている。
【0003】
容器本体は、所定の樹脂を含有する成形材料により成形され、両側壁の内面に、半導体ウェーハ用の支持体が一体的又は別体としてそれぞれ配設されており、この左右一対の支持体の相対向する支持片により半導体ウェーハが水平に支持される。この支持体は、容器本体の側壁と一体成形される場合には、成形時の収縮や変形が大きく、高精度に成形することが困難であり、容器本体とは別に成形される場合には、寸法精度に優れるものの、容器本体の側壁に対する位置決め取り付けに支障が生じ、取り付けの際に寸法誤差が生じやすいという特徴がある。
【0004】
蓋体は、容器本体の開口した正面に対応する大きさの矩形に形成され、容器本体の背面壁に対向する裏面に、収納された半導体ウェーハの前部周縁を保持溝により保持するフロントリテーナが装着されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003‐68839号公報
【特許文献2】特表2005‐509304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年、チップサイズの大型化や生産性向上等の観点から、φ450mmの半導体ウェーハが開発され、製造されているが、このφ450mmの半導体ウェーハは、大口径で重いので、自重により大きく弓なりに撓んで反るという特徴がある。このような大口径の半導体ウェーハを容器本体に収納する場合には、支持体の支持片を半導体ウェーハの側部周縁に沿うよう広範囲に亘って大きく長く形成し、しかも、容器本体の正面側では容器本体の側壁内面から支持体の支持片を大きく突出させて半導体ウェーハの撓みを規制するのが効果的である。
【0007】
しかしながら、容器本体の側壁内面から支持体の支持片を大きく突出させると、支持片が変形しやすく、高い寸法精度を得ることのできないおそれがある。この結果、半導体ウェーハの位置精度が低下し、蓋体のフロントリテーナにより半導体ウェーハを適切に保持することができず、半導体ウェーハのローディング・アンローディングに支障を来たしたり、半導体ウェーハの損傷を招くおそれがある。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、撓み易い基板を高い寸法精度で支持することができ、蓋体のフロントリテーナに基板を適切に保持させ、基板のローディング・アンローディングに支障を来たしたり、基板が損傷するおそれを払拭することのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納するフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備え、容器本体の両側壁に、基板を支持片により略水平に支持する支持体をそれぞれ配設し、蓋体には、収納された基板の前部周縁の両側を保持溝により保持する左右一対のフロントリテーナをそれぞれ取り付けたものであって、
基板をローディング・アンローディングする方向における基板の中心線を中心線Yとし、この中心線Yと直交する中心線を中心線Xとした場合に、容器本体の側壁内面に対する各支持体の配設領域を、中心線Xに対して支持体の前部側の角度θ1が20°〜30°、中心線Xに対して支持体の後部側の角度θ2が20°〜53°の範囲になるよう設定し、
中心線Yを挟んで蓋体に左右一対のフロントリテーナを取り付ける取り付け領域を、40°〜110°の範囲としたことを特徴としている。
【0010】
なお、基板を口径450mmの半導体ウェーハとすることができる。
また、容器本体の側壁内面から内方向に突出する支持体前部の支持片の最大長さを30〜50mmとすることができる。
【0011】
また、基板の側部周縁と支持体の支持片とのオーバーラップ量を6〜10mmとすることもできる。
さらに、各フロントリテーナの保持溝を、基板の撓み量が0.8mm以下になるよう形成することが好ましい。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における基板は、単数複数を特に問うものではない。また、容器本体と蓋体とは、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。支持体は、容器本体と一体形成されるタイプでも良いし、容器本体とは別に形成されて後付けされるタイプでも良い。さらに、本発明に係る基板収納容器は、基板の保管、工場内の搬送や輸送等に適宜使用することができる。
【0013】
本発明によれば、容器本体の側壁内面に対する支持体の配設領域が、中心線Xに対して前部側の角度θ1が20°〜30°、後部側の角度θ2が20°〜53°の範囲内なので、基板取り出しの際に基板の撓みでエラーが生じない範囲で基板を支持することができる。また、フロントリテーナに干渉しない範囲で基板を安全に支持することができる。また、基板の支持領域が拡大するので、基板の撓み量を減少させて支持することができ、しかも、基板取り出しの際、基板と支持片との干渉を回避することが可能になる。
【0014】
また、中心線Yを挟んで蓋体の筐体21裏面に左右一対のフロントリテーナを取り付ける取り付け領域が40°〜110°の範囲内なので、基板の撓みをフロントリテーナの保持溝でアライメントできる範囲で基板を保持することが可能になる。また、支持片に基板を支持させた場合の撓み量を取出機等でエラーなく取り出せる範囲に調整でき、基板を保持できるフロントリテーナの保持範囲の拡大が期待できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、撓み易い基板を高い寸法精度で支持することができ、蓋体のフロントリテーナに基板を適切に保持させることができるという効果がある。また、基板のローディング・アンローディングに支障を来たしたり、基板が損傷するおそれを有効に払拭することができる。
また、基板を口径450mmの半導体ウェーハとすれば、撓み易い大口径の半導体ウェーハを高い寸法精度で支持体により支持することができ、蓋体のフロントリテーナに大口径の半導体ウェーハを適切に保持させることができる。
【0016】
また、容器本体の側壁内面から内方向に突出する支持体前部の支持片の最大長さを30〜50mmとすれば、容器本体内に対する支持体の倒れ込みや変形、基板の自重による撓みや倒れ込み等を防ぐことができる。
さらに、基板の側部周縁と支持体の支持片とのオーバーラップ量を6〜10mmとすれば、例え基板が左右方向にずれた場合でも支持片に基板を適切に支持することができ、しかも、基板と支持片との接触領域を少なくできるので、基板の汚染防止が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す断面平面説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態における半導体ウェーハ、支持体の支持片、及びフロントリテーナの保持溝の位置関係を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図3に示すように、半導体ウェーハWを収納する容器本体1と、この容器本体1の開口した正面9を開閉する蓋体20とを備え、容器本体1の両側壁7に、半導体ウェーハWを支持片31により水平に支持する支持体30をそれぞれ配設し、蓋体20には、半導体ウェーハWの前部周縁を保持する左右一対のフロントリテーナ34をそれぞれ装着しており、容器本体1の側壁7内面に対する支持体30の配設領域、及び蓋体20に対する左右一対のフロントリテーナ34を装着する取り付け領域を、それぞれ所定の角度の範囲内に設定するようにしている。
【0019】
半導体ウェーハWは、図2や図3に示すように例えばφ450mmの大口径のシリコンウェーハ等からなり、自重により下方に大きく弓なりに撓み易いという性質がある。このような半導体ウェーハWは、容器本体1の内部上下方向に25枚が専用のロボットにより所定のピッチで整列収納される。
【0020】
容器本体1と蓋体20とは、所定の樹脂を含有する成形材料により複数の部品がそれぞれ射出成形され、この複数の部品の組み合わせで構成される。成形材料の所定の樹脂としては、例えば力学的性質や耐熱性等に優れるポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレナフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマー、あるいは環状オレフィン樹脂等があげられる。所定の樹脂には、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、帯電防止剤、又は難燃剤等が必要に応じて選択的に添加される。
【0021】
容器本体1は、図1や図2に示すように、半導体ウェーハWよりも大きい底板2と、この底板2に半導体ウェーハWの収納空間をおいて上方から対向する天板3と、これら底板2と天板3の後部間を上下に連結する背面壁5と、底板2と天板3の左右両側部間を上下に連結する左右一対の側壁7とを備えたフロントオープンボックスタイプに形成され、開口した横長の正面9を水平横方向に向けた状態で半導体加工装置や気体置換装置上に位置決めして搭載されたり、洗浄槽の洗浄液により洗浄される。
【0022】
容器本体1の底板2の前部両側と後部中央とには、基板収納容器、具体的には容器本体1を位置決めする位置決め具が配設される。この底板2には、複数の位置決め具を露出させるボトムプレートが締結ビス、係止爪や係止フックからなる係止機構、これらの併用等を介して水平に装着され、このボトムプレートの左右両側部には、前後方向に伸びる搬送用のコンベヤレールがそれぞれ選択的に設けられる。
【0023】
容器本体1の天板3の中央部には、工場の天井搬送機構に把持される搬送用のトップフランジ4が締結ビス等を介し水平に装着される。また、容器本体1の背面壁5には、半導体ウェーハWの後部周縁を保持するリヤリテーナ6が装着され、容器本体1の両側壁7の表面には、補強や変形防止の他、指、RVG(Rail Guided Vehicle)、PVG(Person Guided Vehicle)等からなるハンドリング装置のリフトアップ用のレール等を干渉させることのできるグリップ部8が前後方向に伸長してそれぞれ凹み形成される。
【0024】
容器本体1の開口した正面9の周縁には、外方向に張り出すリムフランジ10が膨出形成され、このリムフランジ10内に着脱自在の蓋体20が蓋体開閉装置により自動的に圧入して嵌合される。このリムフランジ10の内周面の上下両側には、蓋体20用の係止穴11がそれぞれ矩形に穿孔される。
【0025】
蓋体20は、図1や図2に示すように、容器本体1の開口した正面9内に嵌合する横長の筐体21と、この筐体21の開口した表面(正面)を被覆する表面プレート24と、これら筐体21と表面プレート24との間に介在して設置される施錠機構25とを備えて構成される。筐体21は、浅底の断面略皿形に形成され、中央部と周壁の左右両側部との間に施錠機構25用の設置空間がそれぞれ区画形成される。この筐体21の周壁の上下両側部には、施錠機構25用の貫通孔22がそれぞれ穿孔され、各貫通孔22がリムフランジ10の係止穴11に対向する。
【0026】
筐体21の裏面周縁部には枠形の嵌合溝が形成され、この嵌合溝には、リップタイプのガスケット23が密嵌されており、このガスケット23が容器本体1のリムフランジ10内に変形して圧接する。このガスケット23は、例えば耐熱性や耐候性等に優れるフッ素ゴム、シリコーンゴム、各種の熱可塑性エラストマー等を成形材料として弾性変形可能な枠形に成形される。また、表面プレート24は、筐体21の開口した表面に対応するよう横長の平板に形成され、左右両側部には、施錠機構25用の操作口がそれぞれ穿孔される。
【0027】
施錠機構25は、表面プレート24の操作口を貫通した蓋体開閉装置の操作ピンに回転操作される左右一対の回転プレート26と、各回転プレート26の回転に伴い上下方向にスライドする複数のスライドプレート27と、各スライドプレート27のスライドに伴い筐体21の周壁から突出してリムフランジ10の係止穴11に係止する出没可能な複数の係止爪28とを備えて構成される。
【0028】
各支持体30は、所定の樹脂、例えば滑り性に優れるポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、あるいはCOP等を含有する成形材料により射出成形される。この成形材料には、容器本体1や蓋体20同様、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、導電性の付与された樹脂等が必要に応じ選択的に添加される。
【0029】
支持体30は、図1ないし図3に示すように、容器本体1の側壁7内面に着脱自在に装着される枠体と、この枠体から上下方向に並んだ状態で突出し、半導体ウェーハWの側部周縁を下方から水平に支持する複数の支持片31とを備えて構成される。各支持片31は、半導体ウェーハWの側部周縁に沿うよう略半円弧形に湾曲形成され、半導体ウェーハWの側部周縁とのオーバーラップ量が6〜10mmの範囲内に設定される。
【0030】
半導体ウェーハWの側部周縁とのオーバーラップ量が6〜10mmの範囲なのは、この範囲内であれば、例え半導体ウェーハWが左右方向にずれた場合でも、支持片31に半導体ウェーハWを確実に支持することができ、しかも、半導体ウェーハWとの接触領域を減少させることができるので、半導体ウェーハWの汚染防止が期待できるからである。
【0031】
容器本体1の正面9側に位置する支持片31の前部32の容器本体1内に突出する最大長さは、30〜50mmの範囲内に設定される。これは、支持片31前部32の最大長さが30〜50mmの範囲内であれば、支持体30の倒れ込みや変形、半導体ウェーハWの自重による撓みや倒れ込みを防止することができるからである。
【0032】
一対のフロントリテーナ34は、筐体21の裏面両側にそれぞれ装着され、容器本体1内に収納された半導体ウェーハWの前部周縁の両側を保持溝36により保持することにより、半導体ウェーハWの位置ずれ、がたつき、損傷を防止し、半導体ウェーハWの輸送の安全に資するよう機能する。
【0033】
各フロントリテーナ34は、例えば支持体30と同様の成形材料により変形した縦長の平面略台形に成形され、半導体ウェーハWの前部周縁に傾斜して対向する対向面35が半導体ウェーハWの前部周縁に沿うよう湾曲形成されており、この対向面35には、半導体ウェーハWの前部周縁の側方を傾斜面で保持する保持溝36が上下に並べて配列形成される。各保持溝36は、半導体ウェーハWの撓みが少ない支持片31の前部32近傍に位置し、半導体ウェーハWの撓み量(サグ)が0.8mm以下、好ましくは0.6mm以下になるよう断面U字形あるいはV字形に形成される。
【0034】
各フロントリテーナ34の内側部には、筐体21の裏面中央部方向に伸びる複数の弾性片37が上下に並べて形成され、各弾性片37が屈曲してその先端部には、半導体ウェーハWの前部周縁の中央寄りを傾斜面で保持する保持溝36Aが一体形成される。この保持溝36Aも、半導体ウェーハWの撓み量(サグ)が0.8mm以下になるよう断面U字形あるいはV字形に形成される。
【0035】
ところで、半導体ウェーハWをローディング・アンローディングする方向における半導体ウェーハWの中心線を中心線Yとし、この中心線Yと直交する中心線を中心線Xとした場合、容器本体1の側壁7内面に対する各支持体30の配設領域は、半導体ウェーハWの撓みを防止する観点から、中心線Xに対して支持体30の前部32側の角度θ1が20°〜30°、中心線Xに対して支持体30の後部33側の角度θ2が20°〜53°の範囲内になるよう設定される(図2参照)。
【0036】
これは、支持体30の前部32側の角度θ1が20°以上であれば、半導体ウェーハW取り出しの際に半導体ウェーハWの撓みでエラーが生じない範囲で半導体ウェーハWを支持することができるという理由に基づく。また、支持体30の前部32側の角度θ1が30°以下であれば、広範囲に亘るフロントリテーナ34に干渉しない範囲で半導体ウェーハWを安全に支持することができるという理由に基づく。
【0037】
中心線Xに対して支持体30の後部33側の角度θ2が20°〜53°の範囲内なのは、支持体30の後部33側の角度θ2が20°以上であれば、半導体ウェーハWの支持領域を拡大し、半導体ウェーハWの撓み量を減少させつつ支持することができるという理由に基づく。また、支持体30の後部33側の角度θ2が53°以下であれば、半導体ウェーハW取り出しの際、半導体ウェーハWと支持片31との干渉を回避することができるという理由に基づく。
【0038】
このように容器本体1の側壁7内面に対する支持体30の配設領域を所定の角度の範囲内に設定すれば、支持体30の前後部で半導体ウェーハWの非支持領域が僅かに撓むものの、半導体ウェーハWを自動的、かつ安全に取り出すことができる。
【0039】
半導体ウェーハW、支持体30の支持片31、フロントリテーナ34の保持溝36は、図3に示すように、支持体30の前部32近傍にフロントリテーナ34の保持溝36が位置し、支持片31の半導体ウェーハW下面から保持溝36における半導体ウェーハWの下端までの距離T1の範囲内に保持溝36が位置する関係にあるので、半導体ウェーハWを保持することが可能になる。
【0040】
これに対し、半導体ウェーハWの中央部においては、半導体ウェーハWが大きく撓んで支持片31からの距離T2が長くなるので、保持溝36の位置を下方にずらすか、保持溝36の傾斜面を長くしなければならない。しかしながら、保持溝36の傾斜面を長くすると、隣接する保持溝36と保持溝36とを干渉しない範囲に形成する必要がある。
【0041】
上記に鑑み、撓む半導体ウェーハWの前部中央をフロントリテーナ34の保持溝36に確実に保持させる観点から、中心線Yを挟んで蓋体20の筐体21裏面に左右一対のフロントリテーナ34を装着する取り付け領域は、図2に示すように、角度θ3、角度θ4が40°〜110°の範囲に設定される。これは、角度θ3が40°以上であれば、半導体ウェーハWの撓みを保持溝36の傾斜面でアライメントできる領域で半導体ウェーハWを保持することができるからである。このとき、半導体ウェーハWの撓み量が0.8mm以下なので、半導体ウェーハWを保持溝36で掬い上げてアライメントすることができる。
【0042】
また、角度θ4が110°以下であれば、支持片31に半導体ウェーハWを支持させた場合の撓み量を専用のロボットでエラーなく取り出せる範囲にすることができ、半導体ウェーハWを保持できるフロントリテーナ34の保持範囲を拡大することができる。これにより、基板収納容器の輸送時に半導体ウェーハWをより安全に保持でき、半導体ウェーハWの回転やその際の擦れ、振動や衝撃による半導体ウェーハWの破損を有効に防止することができる。
【0043】
上記構成によれば、例え容器本体1の側壁7内面から支持体30の支持片31の前部32が大きく長く突出していても、支持片31が変形したり、寸法精度が低下するのを防止することができる。したがって、半導体ウェーハWの位置精度が低下するのを抑制防止することができるので、蓋体20のフロントリテーナ34により半導体ウェーハWを適切に保持することができ、半導体ウェーハWのローディング・アンローディングに支障を来たしたり、半導体ウェーハWの損傷を招くおそれを払拭することができる。
【0044】
なお、上記実施形態の容器本体1の背面壁5には、透明の覗き窓を二色成形法等により縦長に形成することができる。また、上記実施形態では支持体30の支持片31を連続した略半円弧形に形成したが、支持片31を、前部支持片と後部支持片とに分割形成し、これら前部支持片と後部支持片との間に空隙を区画形成しても良い。さらに、左右一対のフロントリテーナ34を枠体等を介して一体化しても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 容器本体
7 側壁
9 正面
20 蓋体
21 筐体
30 支持体
31 支持片
32 前部
33 後部
34 フロントリテーナ
35 対向面
36 保持溝
36A 保持溝
37 弾性片
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納するフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備え、容器本体の両側壁に、基板を支持片により略水平に支持する支持体をそれぞれ配設し、蓋体には、収納された基板の前部周縁の両側を保持溝により保持する左右一対のフロントリテーナをそれぞれ取り付けた基板収納容器であって、
基板をローディング・アンローディングする方向における基板の中心線を中心線Yとし、この中心線Yと直交する中心線を中心線Xとした場合に、容器本体の側壁内面に対する各支持体の配設領域を、中心線Xに対して支持体の前部側の角度θ1が20°〜30°、中心線Xに対して支持体の後部側の角度θ2が20°〜53°の範囲になるよう設定し、
中心線Yを挟んで蓋体に左右一対のフロントリテーナを取り付ける取り付け領域を、40°〜110°の範囲としたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
基板を口径450mmの半導体ウェーハとした請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
容器本体の側壁内面から内方向に突出する支持体前部の支持片の最大長さを30〜50mmとした請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
基板の側部周縁と支持体の支持片とのオーバーラップ量を6〜10mmとした請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
【請求項5】
各フロントリテーナの保持溝を、基板の撓み量が0.8mm以下になるよう形成した請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−108715(P2011−108715A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259616(P2009−259616)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】