説明

基板接合装置

【課題】単一の真空チャンバで様々な接合技術を選択して使用することが出来ると共に、それらの併用を可能とする。
【解決手段】基板接合装置は、接合すべき一対の基板6、7を互いに対向するよう保持する基板ホルダ2、3と、この基板6、7の接合すべき面に向けて配置したイオン・ラジカル源11、11と、前記の少なくとも一方の基板ホルダ2、3を移動させて基板2、3の接合すべき表面を互いに接触、加圧する移動機構とを有する。そして、前記イオン・ラジカル源11、11は、プラズマ中でガスをイオン化及び/またはラジカル化するプラズマ室12、12と、このプラズマ室12、12で発生したイオンを前記基板6、7の接合すべき面に向けて発射するイオン引出電極14、14と、イオンをトラップし、前記プラズマ室12、12で発生したラジカルのみを前記基板6、7の接合すべき面に向けて発射するイオントラップ電極15、15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の基板を接合する基板接合装置に関し、特に基板の接合面にアルゴンのイオンや水素のラジカルを照射することにより、接合すべき基板の表面を活性化し、その後に接合すべき基板の表面を接触させて基板を接合したり、或いは陽極接合や加熱加圧接合を単一の真空チャンバで実現し得る基板接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板の接合技術の代表的な手段として、陽極接合、加熱加圧接合、表面活性化接合がある。陽極接合は、基板を数百度℃の温度に加熱すると共に、重ね合わせた基板に数百V〜1kVの電圧を印加し、基板に大きな静電引力を発生させ、基板の界面で化学結合させることで接合する技術である。加熱加圧接合は、基板を数百度℃の温度に加熱すると共に、重ね合わせた基板に圧力を加え、基板の界面を拡散結合させることで接合する技術である。また、表面活性化接合は、例えば、真空中でアルゴンイオン等の荷電粒子を基板の接合すべき表面に衝突させ、その表面上の酸化膜などの不純物を除去すると共に、活性化させ、その後この接合面を互いに接触させることにより、一対の基板の表面を分子結合させることで接合する技術である。
【0003】
従来の装置は、前述の陽極接合、加熱加圧接合、表面活性化接合を行う装置がそれぞれ個別の装置となっていた。そのため基板の種類や使用目的に応じた接合技術を実施するためには幾つかの接合装置が必要であり、手数の点や経費の点で不都合があった。また、これら接合技術を併用することも困難であった。さらに、表面活性化接合においても基板の表面を活性化するため手段がイオンの照射による手段に限られている等、必要に応じて適宜の活性化手段を選択或いは併用出来ないという課題があった。
【0004】
【特許文献1】2007−115825号公報
【特許文献2】2006−339363号公報
【特許文献3】2006−222436号公報
【特許文献4】2006−73780号公報
【特許文献5】2005−294800号公報
【特許文献6】2004−342855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の基板接合装置における課題に鑑み、単一の真空チャンバで様々な接合技術を選択して使用することが出来ると共に、それらの併用も可能であり、しかも表面活性化接合においては、接合すべき基板の表面を活性化するイオンの照射とラジカルの照射とを適宜選択及び併用することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、基板ホルダ2、3に保持された基板6、7に向けてそれぞれ必要に応じてイオンとラジカルを適宜選択して照射することが出来るイオン・ラジカル源11、11と基板ホルダ2、3に保持された基板2、3を移動させて活性化された表面を互いに接触させる移動機構とを単一の真空チャンバ1に設け、さらに基板ホルダ2、3には、基板6、7を加熱したり電圧を印加出来るようにして単一の真空チャンバ1において各種の接合技術が選択、併用出来るようにしたものである。
【0007】
本発明による基板接合装置は、接合すべき一対の基板6、7を互いに対向するよう保持する基板ホルダ2、3と、この基板6、7の接合すべき面に向けて配置したイオン・ラジカル源11、11と、前記の少なくとも一方の基板ホルダ2、3を移動させて基板2、3の接合すべき表面を互いに接触、加圧する移動機構とを有する。そして、前記イオン・ラジカル源11、11は、プラズマ中でガスをイオン化及び/またはラジカル化するプラズマ室12、12と、このプラズマ室12、12で発生したイオンを前記基板6、7の接合すべき面に向けて発射するイオン引出電極14、14と、イオンをトラップし、前記プラズマ室12、12で発生したラジカルのみを前記基板6、7の接合すべき面に向けて発射するイオントラップ電極15、15とを有するものである。
【0008】
このような本発明による基板接合装置では、接合すべき一対の基板6、7を互いに対向するよう保持する基板ホルダ2、3に保持された基板6、7の接合すべき面に向けてイオンやラジカルを照射するイオン・ラジカル源11、11を真空チャンバ1に備えているため、基板2、3の表面の活性化をイオン照射とラジカル照射の何れかを選択し、或いはその併用により行える。すなわち、イオン引出電極14、14によりプラズマ室12、12からイオンを引き出して基板6、7に発射することにより、イオンによる基板6、7の表面活性化が可能である。また、イオントラップ電極15、15によりプラズマ室12、12で発生したイオンをトラップし、ラジカルのみを基板6、7に発射することにより、ラジカルによる基板6、7の表面活性化が可能である。これらの活性化の後、基板6、7の表面の表面が完全に接合される。
【0009】
さらにこの基板接合装置では、、基板ホルダ2、3にそれに保持した基板6、7を加熱するヒータ4、5が設けられており、また基板6、7に電圧を印加する基板電圧印加用電源28、29が接続されている。これにより、基板ホルダ2、3にそれに保持した基板6、7を加熱したり、電圧を印加することが出来るようにしている。従って、基板2、3の移動によるその表面の接合はもちろん、陽極接合のための基板6、7への電圧の印加や、加熱加圧接合のための基板2、3の加熱や加圧も単一の真空チャンバ1内おいて行える。
【発明の効果】
【0010】
以上説明した通り、本発明による基板接合装置では、基板2、3の表面のイオンによる活性化とラジカルによる活性化を単一真空チャンバ1の中で行えるので、必要に応じて基板2、3の表面の活性化手段を単一真空チャンバ1において適宜選択、併用することが出来る。しかも、基板ホルダ2及び/または3の移動機構を備えることにより、基板の表面の活性化とその後の基板2、3の接合が単一の真空チャンバ1内おいて連続して行える。さらに、基板ホルダ2、3にそれに保持した基板6、7を加熱したり電圧を印加することが出来るので、陽極接合や加熱加圧接合も単一の真空チャンバ1内おいて行える。よって多様な接合手段を選択、併用出来る多目的接合装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、基板ホルダ2、3に保持された基板6、7に向けてそれぞれイオンやラジカルを照射するイオン・ラジカル源11、11と基板ホルダ2、3に保持された基板2、3を移動させて活性化された表面を互いに接触させる移動機構とを単一の真空チャンバ1に設けることで前記の目的を達成するものである。加えて、基板ホルダ2、3にそれに保持した基板6、7を加熱するヒータ4、5を設けたり、基板電圧印加用電源28、29を接続することで前記の目的を達成するものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明による基板接合装置の一実施例を示すもので、基板6、7に向けてそれぞれイオンを照射するイオン・ラジカル源11、11を2基設けたものである。
真空チャンバ1の中には上下に対向して一対の基板ホルダ2、3が配置されている。上側の基板ホルダ2は、ロードセル22を介してエアシリンダ21に連結されたトラスファーロッド26の下端に取り付けられている。トラスファーロッド26の上端にはベローズ23が設けられ、前記エアシリンダ21の動作により上側の基板ホルダ2は上下に移動される。他方、下側の基板ホルダ3は、支持柱27を介して真空チャンバ1の底壁に固定されている。もちろん、前記のような移動機構を有する基板ホルダ2、3を上下逆にしてもよいし、双方の基板ホルダ2、3に移動機構を設けてもよい。
【0013】
真空チャンバ1にはゲートバルブ8を介してターボ分子ポンプ9が接続され、さらにこのターボ分子ポンプ9にはロータリポンプ10が接続されている。真空チャンバ1内はこれらターボ分子ポンプ9とロータリポンプ10とにより排気、減圧され、高真空に維持される。
【0014】
基板ホルダ2、3にはそれぞれ半導体ウエハ等の基板6、7が取り付けられ、これら基板6、7が真空チャンバ1の中で上下に対向している。基板ホルダ2、3にはそれぞれヒータ4、5が設けられ、これらヒータ4、5により前記の基板6、7が加熱される。さらに、この基板ホルダ2、3にはそれに保持した基板6、7に電圧を印加する基板電圧印加用電源28、29が接続されている。
【0015】
これら基板6、7に向けてイオンとラジカルを発射する一対のイオン・ラジカル源11、11が設けられている。これらイオン・ラジカル源11、11は、石英ガラス等、熱的、化学的に安定した材料からなる円筒容器状のプラズマ室12、12を有し、このプラズマ室12、12の周囲は高周波コイル13、13で囲まれている。この高周波コイル13、13には高周波電源30、30が接続されている。
【0016】
このプラズマ室12、12には、マスフローコントローラ20とバルブ19を介してアルゴンや水素等のガスをプラズマ室12、12に供給するガス供給源16、16が接続されている。マスフローコントローラ20を通してアルゴンや水素等の希薄ガスをプラズマ室12、12に送り、前記の高周波電源30、30で高周波コイル13、13に高周波を流すことにより、プラズマ室12、12にプラズマが形成されて、その中のアルゴンガス分子が電離し、アルゴンイオンが発生する。或いは水素ガス分子がラジカル化され、水素ラジカルが発生する。ラジカルは不対電子を持つ通常の原子や分子よりエネルギーレベルの高い原子や分子である。
【0017】
基板6、7に向いたプラズマ室12、12の先端側には、窓状の開口部が設けられており、この先にイオン引出電極14とイオントラップ電極15、15が設けられている。イオン引出電極14は、プラズマ室12、12内で発生したイオンを加速して基板6、7に向けてそれぞれ発射するための電極であり、イオン引出電源31、31により負の電位が与えられる。イオントラップ電極15、15は、イオンをトラップし、イオンの発射を抑えて電荷的に中性のラジカルのみを前記基板6、7の接合すべき面に向けて発射するための電極であり、イオントラップ電源32、32により正の電位が与えられる。
【0018】
例えば、プラズマ室12、12からアルゴン等のイオンを発射する場合、ガス供給源16、16からプラズマ室12、12にアルゴンを供給し、同プラズマ室12、12を希薄ガス雰囲気とする。この状態で高周波電源30、30で高周波コイル13、13に高周波を流すことにより、プラズマ室12、12にプラズマが形成される。このプラズマの中でアルゴンガス分子が電離し、アルゴンイオンが発生する。このときイオン引出電源31によりイオン引出電極14、14に負の電位を与ええることにより、アルゴンイオンがプラズマ室12、12の先端側の窓状の開口部から引き出され、基板6、6に向けて発射される。
【0019】
他方、プラズマ室12、12から水素等のラジカルを発射する場合、ガス供給源16、16からプラズマ室12、12に水素を供給し、同プラズマ室12、12を希薄ガス雰囲気とする。この状態で高周波電源30、30で高周波コイル13、13に高周波を流すことにより、プラズマ室12、12にプラズマが形成される。このプラズマの中で水素ガス分子がラジカル化され、不対電子を持つラジカル水素が発生する。このときイオントラップ電源32、32によりイオントラップ電極15、15に正の電位を与ええることにより、イオンの放出が抑えられ、プラズマ室12、12の先端側の窓状の開口部からラジカルのみが基板6、6に向けて発射される。
【0020】
このようにしてイオン或いはラジカルにより基板6、7の表面を活性化し、その後、前述した移動機構により基板6を移動させて、基板6、7の表面を互いに接触させることにより、基板6、7の表面が互いに接合される。基板ホルダ2、3に備えたヒータ4、5は、前記基板6、7の表面を活性化する際、或いはその基板6、7の表面を接合する際に基板6、7を所要の温度に加熱するために使用される。
【0021】
前記ような基板6、7の接合時の基板6の移動のため、イオン・ラジカル源11、11は、基板6の移動経路から外れた位置に配置されている。すなわち上側の基板6に向けたイオン・ラジカル源11は、基板6に向けて斜め下方に配置され、イオンやラジカルを基板6に対して或る程度の確度をもって入射するように配置されている。また、下側の基板7に向けたイオン・ラジカル源11は、基板7に向けて斜め上方に配置され、やはりイオンやラジカルを基板7に対して或る程度の確度をもって入射するように配置されている。
【0022】
この基板接合装置では、イオンとラジカルの何れかの基板6、7の表面の活性化手段の選択あるいはその併用が可能である。また、基板ホルダ2、3にそれぞれヒータ4、5が設けられ、これらヒータ4、5により前記の基板6、7が加熱されるので、表面活性化接合だけでなく、加熱加圧接合も行える。さらに、この基板ホルダ2、3にはそれに保持した基板6、7に電圧を印加する基板電圧印加用電源28、29が接続されているので、陽極接合も行える。このため、様々なケースでの基板6、7の接合試験や接合工程の検討に応用出来る。
【0023】
図2は、本発明による基板接合装置の他の実施例を示すもので、基板6、7に向けてそれぞれイオンやラジカルを照射するイオン・ラジカル源11を1基設けたものである。それ以外は基本的に図1により前述した実施例と同じであり、同じ部分は同じ符合で示している。同じ部分の説明は省略し、以下に相違点を中心に説明する。
【0024】
この実施例では、イオン・ラジカル源11が1基であり、このイオン・ラジカル源11が基板ホルダ2、3に保持されて対向して配置された基板6、7の間に挿入される。イオン・ラジカル源11にはそのプラズマ室12の側壁の上下の位置に窓状の開口部を有していると共に、同プラズマ室12で発生するイオンを引き出すイオン引出電極14、14とイオンをトラップするイオントラップ電極15、15とがそのプラズマ室12の側壁の開口部の上下にそれぞれ設けられている。従って、このイオン・ラジカル源11からはその上下に配置された基板6、7に向けてイオンやラジカルを発射することが出来る。
【0025】
しかし、イオン・ラジカル源11が基板ホルダ2、3に保持されて対向して配置された基板6、7の間に挿入されるため、基板6、7の表面を接合する時にイオン・ラジカル源11が邪魔になる。そのため、イオン・ラジカル源11は移動機構18により基板6、7が対向した位置から退避できるようになっている。この移動機構はベローズ17を備え、この伸縮により、イオン・ラジカル源11を図2において左右に所要のストロークで移動させることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明による基板接合装置では、接合すべき基板の表面をイオンの照射だけでなく、ラジカルを照射して活性化することが出来るので、単一の真空チャンバで幾つかの活性手段を用いた接合が可能となる。さらに、加熱加圧接合や陽極接合も単一の真空チャンバで行うことが出来るので、多目的な接合装置として基板の接合という技術分野での産業上の利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による基板接合装置の一実施例を示す概略縦断側面図である。
【図2】本発明による基板接合装置の他の実施例を示す概略縦断側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 真空チャンバ
2 基板ホルダ
3 基板ホルダ
4 ヒータ
5 ヒータ
6 基板
7 基板
11 イオン・ラジカル源
12 プラズマ室
14 イオン引出電極
15 イオントラップ電極
18 イオン・ラジカル源の移動機構
28 基板電圧印加用電源
29 基板電圧印加用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空状態に保持された真空チャンバ(1)内にて基板(6)、(7)の表面を互いに接触させて接合させる基板接合装置において、接合すべき一対の基板(6)、(7)を互いに対向するよう保持する基板ホルダ(2)、(3)と、この基板(6)、(7)の接合すべき面に向けて配置したイオン・ラジカル源(11)、(11)と、前記の少なくとも一方の基板ホルダ(2)、(3)を移動させて基板(2)、(3)の接合すべき表面を互いに接触、加圧する移動機構とを有し、前記イオン・ラジカル源(11)、(11)は、プラズマ中でガスをイオン化及び/またはラジカル化するプラズマ室(12)、(12)と、このプラズマ室(12)、(12)で発生したイオンを前記基板(6)、(7)の接合すべき面に向けて発射するイオン引出電極(14)、(14)と、イオンをトラップし、前記プラズマ室(12)、(12)で発生したラジカルのみを前記基板(6)、(7)の接合すべき面に向けて発射するイオントラップ電極(15)、(15)とを有することを特徴とする基板接合装置。
【請求項2】
基板ホルダ(2)、(3)にそれに保持した基板(6)、(7)を加熱するヒータ(4)、(5)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板接合装置。
【請求項3】
基板ホルダ(2)、(3)にそれに保持した基板(6)、(7)に電圧を印加する基板電圧印加用電源(28)、(29)が接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の基板接合装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−10263(P2009−10263A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171938(P2007−171938)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(390027683)株式会社エイコー・エンジニアリング (14)
【Fターム(参考)】