説明

基板搬送アーム及び基板搬送装置

【課題】自重で撓んだ状態の基板を破損させずに基板収容容器から取り出すことができる基板搬送アームを提供する。
【解決手段】基板搬送アーム1は、基板収容容器内に水平に置かれた基板の下側に挿入されて、この基板の裏面を支持しつつ基板を前記収容容器から搬出する。基板搬送アーム1は、基板が搬出されるときに基板の裏面を支持する載置面12sを有する載置部と、当該基板搬送アーム1が基板の下側に挿入されるときに、基板の裏面を少なくとも載置面12sの高さにまで押し上げる押上部12rとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやガラス基板の製造ラインでは、加工装置や検査装置に基板を搬送する搬送システムが組み込まれている。たとえば、半導体製造プロセスは、研削工程、イオン注入工程、エッチング工程、洗浄工程、成膜工程及び検査工程といった複数の工程からなり、搬送システムは、これら複数の工程を実行する加工装置や検査装置に半導体基板を搬送する。
【0003】
製造工程間で基板を搬送する際には基板キャリア(基板収容容器)が使用される。搬送システムは、基板搬送アームを用いて、基板キャリアから基板を取り出し、当該基板を加工装置や検査装置に搬入することが一般的である。このような基板搬送アームの構造は、たとえば、特開2005−285823号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−285823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、基板の大型化あるいは薄型化により、基板が自重により撓みやすくなっている。このような基板を基板キャリアから取り出そうとすると、基板搬送アームの先端部が、自重で撓んだ基板の端部と衝突して基板搬送アームもしくは基板を破損させるという問題があった。
【0006】
特許文献1に開示されている基板搬送アームは、基板の両端部分を支持する側部支持アームと、基板の略中央部分を支持する中央部支持アームとを有しており、中央部支持アームと側部支持アームとの間に段差が形成されている。この段差は、基板収容容器に収容されている基板の撓み形状に対応したものである。このような段差により、基板搬送アームは、基板の端部と衝突することがなく、撓んだ状態のままの基板を支持することができる。しかしながら、撓んだ状態のままの基板を基板搬送アームに載置させると、側部支持アームから基板にかかる応力集中が大きくなり、基板が破損するおそれがある。
【0007】
上記に鑑みて本発明の目的は、撓んだ状態の基板を破損させることなく基板収容容器から取り出し、搬送することができる基板搬送アーム及び基板搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による基板搬送アームは、基板収容容器内に水平に置かれた基板の下側に前記基板収容容器の開口部から挿入され、前記基板の裏面を支持しつつ前記基板を前記基板収容容器から搬出する基板搬送アームであって、前記基板が搬出されるときに前記基板が載置される載置面を有する載置部と、当該基板搬送アームが前記基板の下側に挿入されるときに、前記基板の裏面を少なくとも前記載置面の高さにまで押し上げる押上部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明による基板搬送装置は、前記基板搬送アームと、前記基板搬送アームを駆動するアーム駆動部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板搬送アームは、基板の撓みを解消しつつ載置面に基板を載置させる構造を有する。したがって、基板を破損させることなく基板収容容器から取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施の形態1の基板搬送アームであるウエハ搬送アームを概略的に示す斜視図である。
【図2】実施の形態1のウエハ搬送アームの上面を概略的に示す図である。
【図3】実施の形態1のウエハ搬送アームの側面の一部を概略的に示す図である。
【図4】基板収容容器の一例である基板キャリアを表す斜視図である。
【図5】図4の基板キャリアのV−V線に沿った断面図である。
【図6】ウエハを基板キャリアから搬出しようとする従来のウエハ搬送アームを概略的に示す上面視図である。
【図7】自重により撓むウエハを基板キャリアから搬出しようとする実施の形態1のウエハ搬送アームを概略的に示す上面視図である。
【図8】ウエハを搬出しようとする実施の形態1のウエハ搬送アームを概略的に示す側面図である。
【図9】本発明に係る実施の形態2の基板搬送アームであるウエハ搬送アームを概略的に示す斜視図である。
【図10】実施の形態2のウエハ搬送アームの上面を概略的に示す図である。
【図11】図10のウエハ搬送アームのXI−XI線に沿った断面の一部を概略的に示す図である。
【図12】ウエハを搬出しようとする実施の形態2のウエハ搬送アームを概略的に示す側面図である。
【図13】本発明に係る実施の形態3の基板搬送アームであるウエハ搬送アームを概略的に示す斜視図である。
【図14】実施の形態3のウエハ搬送アームの上面を概略的に示す図である。
【図15】図14のウエハ搬送アームのXV−XV線に沿った断面の一部を概略的に示す図である。
【図16】ウエハを基板キャリアから搬出する際の実施の形態3のウエハ搬送アームを概略的に示す上面視図である。
【図17】ウエハを搬出しようとする実施の形態3のウエハ搬送アームを概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る種々の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1の基板搬送アームであるウエハ搬送アーム1を概略的に示す斜視図である。また、図2は、ウエハ搬送アーム1の上面を概略的に示す図であり、図3は、ウエハ搬送アーム1の側面の一部を概略的に示す図である。
【0014】
図1に示されるように、ウエハ搬送アーム1は、板状部材からなり、後方基端部11と、この後方基端部11から前方に突出する中央アーム部12と、中央アーム部12の左右側方で後方基端部11から前方に突出する補助アーム部13,14とを備えている。
【0015】
中央アーム部12は、ウエハが載置される平坦な載置面12sを有する部分(載置部)と、傾斜面12r及び平坦面12fを含む先端部分(押上部)とで構成されている。図3の側面図に示されるように、傾斜面12rは、載置面12sに対して鋭角θをなし、載置面12sよりも低い位置に形成されている。また、傾斜面12rは、載置面12sよりも前方に形成されており、後方基端部11側から先端に向かうにつれて次第に低くなる高さを有する。平坦面12fは、傾斜面12rよりも先端側に且つ傾斜面12rよりも低い位置に形成されている。
【0016】
一方、補助アーム部13,14は、中央アーム部12の先端部分の傾斜面12rよりも後方基端部11側に形成されており、補助アーム部13,14の全長(Y軸方向長さ)w4は、中央アーム部12の全長(Y軸方向長さ)w3よりも短い。これら補助アーム部13,14は、ウエハが載置される補助載置面13s,14sを有している。これら補助載置面13s,14sの高さは、中央アーム部12の載置面12sの高さとほぼ同じである。また、補助アーム部13,14はそれぞれ吸着孔15,16を有しており、これら吸着孔15,16は、補助アーム部13,14の内部に形成された吸気路17と連通している。この吸気路17はさらに、後方基端部11の吸入孔(図示せず)と連通している。この吸入孔から空気を吸入することで、補助載置面13s,14s上に載置されているウエハ(図示せず)の下面(裏面)を真空吸着することができる。
【0017】
上記ウエハ搬送アーム1の寸法については、たとえば、中央アーム部12、補助アーム部13及び補助アーム部14の幅(X方向長さ)w1を10mm程度、板状のウエハ搬送アーム1の厚みw5を2mm程度、傾斜面12rの載置面12sに対する傾斜角θを30°以下、中央アーム部12の先端部分と補助アーム部13,14との段差(高低差)s3を3mm程度とすることができる。中央アーム部12と補助アーム部13との間隔s1は、中央アーム部12と補助アーム部14との間隔s2とほぼ等しい。また、搬出されるウエハの径(直径)をRとするとき、ウエハ搬送アーム1の全体の横幅(X方向長さ)w2をR−30mm程度、中央アーム部12の基端から先端までの全長(Y方向長さ)w3をR程度、補助アーム部13,14の基端から先端までの全長(Y方向長さ)w4をRの3分の2程度とすることができる。ウエハの径Rとしては、6インチ(150mm)〜12インチ(300mm)の範囲が想定されるが、この範囲に限定されるものではない。
【0018】
このようなウエハ搬送アーム1の構成材料としては、硬質でウエハとの摩擦係数が小さい材料を使用することが好ましく、たとえば、ステンレス鋼(SUS)などの金属材料を使用することができる。あるいは、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、PC(ポリカーボネート)もしくはABS樹脂などの樹脂材料やカーボン材料を使用してもよい。
【0019】
図4は、基板収容容器の一例である基板キャリア100を表す斜視図であり、図5は、図4の基板キャリア100のV−V線に沿った断面図である。図4に示されるように、基板キャリア100は、複数枚のウエハWが収容される内部空間を有する。この内部空間においては、水平方向(Y軸方向)に沿って延在する突起部102,103の対が高さ方向(Z軸方向)に沿って配列されている。高さ方向に隣接する突起部102,102の間に溝が形成され、高さ方向に隣接する突起部103,103の間に溝が形成されている。図4及び図5に示されるように、水平方向に対向する一対の溝にウエハWを嵌め込むことでウエハWを基板キャリア100に収容することができる。
【0020】
ウエハWの厚みが薄く加工されると、図5の断面図に概略的に示されるように、ウエハWが自重により撓みやすくなる。たとえば、6インチ径のウエハWの厚みが200μm程度に加工されると、自重によりウエハWの中心部は高さ方向に1.5mm以上撓むことがある。図6は、このようなウエハWを基板キャリア100から搬出しようとするU字形状の従来のウエハ搬送アーム104を概略的に示す上面視図である。このウエハ搬送アーム104は、アーム駆動部112及び駆動アーム111とともにウエハ搬送装置110Cを構成している。図6に示されるように、アーム駆動部112は、駆動アーム111を介して、ウエハ搬送アーム104を基板キャリア100の開口部からウエハWの下側に挿入させようとする。このとき、ウエハWは下方に撓んでいるため、ウエハ搬送アーム104の先端部104a,104bが、ウエハWの下に入り込めずにウエハWの端部Wea,Webと衝突して、ウエハWもしくはウエハ搬送アーム104を破損させるおそれがある。
【0021】
これに対し、図7は、自重により撓むウエハWを基板キャリア100から搬出しようとする本実施の形態のウエハ搬送アーム1を概略的に示す上面視図である。ウエハ搬送アーム1は、アーム駆動部112及び駆動アーム111とともにウエハ搬送装置110を構成している。また、図8(A)〜(C)は、ウエハWを搬出する際のウエハ搬送アーム1の側面を概略的に示す図である。
【0022】
図7に示されるように、アーム駆動部112は、駆動アーム111を介してウエハ搬送アーム1を水平方向に移動させて、ウエハ搬送アーム1を基板キャリア100の開口部からウエハWの下側に挿入させる。このとき、図8(A)に示されるように、中央アーム部12の先端部分の平坦面12fは、ウエハ裏面Wbの周縁端部よりも低くなるように制御されている。その後、ウエハ搬送アーム1の挿入が進行すると、図8(B)に示されるようにウエハWの端部が傾斜面12rに当接して載置面12s上に案内される。このとき、傾斜面12rは、ウエハ裏面Wbを載置面12sの高さにまで押し上げるので、ウエハWの自重による撓みが解消される。さらにウエハ搬送アーム1の挿入が進行すると、図8(C)に示されるように、載置面12sと補助載置面13s,14sとに、撓みが解消されたウエハWが載置される。その後、ウエハ搬送アーム1上にウエハWが完全に載置されると、後方基端部11の吸入孔から空気を吸入することで、補助載置面13s,14sにウエハ裏面Wbが真空吸着される。そして、アーム駆動部112は、ウエハ搬送アーム1を1mm程度上昇させた後、ウエハ搬送アーム1を基板キャリア100から引き出すことにより、ウエハWを基板キャリア100から搬出することができる。
【0023】
以上説明したように実施の形態1のウエハ搬送アーム1は、基板キャリア100へのウエハ搬送アーム1の挿入が深くなるとともに、傾斜面12rがウエハ裏面Wbを持ち上げるので、ウエハWの撓みを解消しつつ載置面12sと補助載置面13s,14sとにウエハWを載置させることができる。補助アーム部13,14は、中央アーム部12の傾斜面12rよりも後方基端部11側に形成されているので、補助載置面13s,14sには、撓みがほとんど解消されたウエハWを案内することができる。それ故、補助アーム部13,14がウエハWの端部と衝突することを確実に防止することができる。
【0024】
また、ウエハWの搬出と撓みの解消とを1ステップで行うことができるので、搬送に要する時間を短縮することができ、製造ラインの生産性を向上させることができる。さらに、ウエハ搬送アーム1は、可動部を持たないシンプルな構造を有しているので、ウエハ搬送アーム1の製造コストや維持コストを抑制することもできる。
【0025】
実施の形態2.
次に、本発明に係る実施の形態2について説明する。図9は、実施の形態2の基板搬送アームであるウエハ搬送アーム2を概略的に示す斜視図である。また、図10は、ウエハ搬送アーム2の上面を概略的に示す図であり、図11は、図10のウエハ搬送アーム2のXI−XI線に沿った断面の一部を概略的に示す図である。
【0026】
図9に示されるように、ウエハ搬送アーム2は、板状部材からなり、後方基端部21と、この後方基端部21から前方に突出する中央アーム部22と、中央アーム部22の左右側方で後方基端部21から前方に突出する補助アーム部23,24とを備えている。
【0027】
このウエハ搬送アーム2の外形寸法は、中央アーム部22の先端部分の平坦面22fと傾斜面22rとに流体排出孔27a,27bが形成されている点を除いて、上記ウエハ搬送アーム1の外形寸法と同じである。また、このウエハ搬送アーム2の構成材料には、上記実施の形態1のウエハ搬送アーム1の構成材料と同じものを使用することができる。
【0028】
中央アーム部22は、ウエハが載置される平坦な載置面22sを有する部分(載置部)と、傾斜面22r及び平坦面22fを含む先端部分(押上部)とで構成されている。中央アーム部22は、ドライエアなどの流体を上方に噴出する流体排出孔27a,27bを有している。流体排出孔27a,27bの径rは、たとえば1mm程度にすることができる。一方の流体排出孔27aは、平坦面22fに形成され、他方の流体排出孔27bは傾斜面22rに形成されている。図10に示されるように、流体排出孔27a,27bは、中央アーム部22の内部に形成された流体供給路28と連通している。この流体供給路28はさらに後方基端部21の流体導入孔(図示せず)と連通している。この流体導入孔に圧縮空気などの流体を導入することで、流体排出孔27a,27bから流体を噴出させることができる。
【0029】
また、補助アーム部23,24は、ウエハが載置される補助載置面23s,24sを有している。これら補助載置面23s,24sの高さは、中央アーム部22の載置面22sの高さとほぼ同じである。また、補助アーム部23,24はそれぞれ吸着孔25,26を有しており、これら吸着孔25,26は、それぞれ、補助アーム部23,24の内部に形成された吸気路25h,26hと連通している。これら吸気路25h,26hはさらに、後方基端部21の吸入孔(図示せず)と連通している。この吸入孔から空気を吸入することで、補助載置面23s,24s上に載置されているウエハ(図示せず)の下面(裏面)を真空吸着することができる。
【0030】
このウエハ搬送アーム2は、図7に示したアーム駆動部112と駆動アーム111とを用いて駆動されることにより基板キャリア100からウエハWを搬出することができる。図12(A)〜(C)は、ウエハWを搬出しようとする実施の形態2のウエハ搬送アーム2を概略的に示す側面図である。
【0031】
ウエハ搬送アーム2を基板キャリア100の開口部からウエハWの下側に挿入させるとき、図12(A)に示されるように、中央アーム部22の先端部分の平坦面22fは、ウエハ裏面Wbの周縁端部よりも低くなるように制御されている。その後、ウエハ搬送アーム2の挿入が進行すると、図12(B)に示されるようにウエハWの端部が傾斜面22rに当接するとともに、流体排出孔27a,27bからウエハ裏面Wbに流体Arが噴出される。このとき、傾斜面22rと流体Arの圧力とにより、ウエハ裏面Wbは載置面22sの高さにまで押し上げられるので、ウエハWの自重による撓みが解消される。さらにウエハ搬送アーム2の挿入が進行すると、図12(C)に示されるように、載置面22sと補助載置面23s,24sとに、撓みが解消されたウエハWが載置される。その後、ウエハ搬送アーム2上にウエハWが完全に載置されると、流体Arの供給を中止し、後方基端部21の吸入孔から空気を吸入することで、補助載置面23s,24sにウエハ裏面Wbが真空吸着される。そして、アーム駆動部112は、ウエハ搬送アーム2を1mm程度上昇させた後、ウエハ搬送アーム2を基板キャリア100から引き出すことにより、ウエハWを基板キャリア100から搬出することができる。
【0032】
以上説明したように実施の形態2においては、基板キャリア100へのウエハ搬送アーム2の挿入が深くなるとともに、傾斜面22rと流体Arの圧力とによりウエハ裏面Wbが持ち上げられるので、ウエハWの撓みを解消しつつ載置面22sと補助載置面23s,24sとにウエハWを載置させることができる。補助アーム部23,24は、中央アーム部22の傾斜面22rよりも後方基端部21側に形成されているので、補助載置面23s,24sには、撓みがほとんど解消されたウエハWを案内させることができる。それ故、補助アーム部23,24がウエハWの端部と衝突することを確実に防止することができる。
【0033】
また、ウエハWの搬出と撓みの解消とを1ステップで行うことができるので、搬送に要する時間を短縮することができ、製造ラインの生産性を向上させることができる。
【0034】
実施の形態3.
次に、本発明に係る実施の形態3について説明する。図13は、実施の形態3の基板搬送アームであるウエハ搬送アーム3を概略的に示す斜視図である。また、図14は、ウエハ搬送アーム3の上面を概略的に示す図であり、図15は、図14のウエハ搬送アーム3のXV−XV線に沿った断面の一部を概略的に示す図である。
【0035】
図13に示されるように、ウエハ搬送アーム3は、板状部材からなり、後方基端部31と、この後方基端部31から前方に突出する中央アーム部32と、中央アーム部32の左右側方で後方基端部31から前方に突出する補助アーム部33,34とを備えている。このウエハ搬送アーム3の構成材料には、上記実施の形態1のウエハ搬送アーム1の構成材料と同じものを使用することができる。
【0036】
中央アーム部32は、平坦面32sを有する。補助アーム部33,34は、それぞれ、ウエハが載置される平坦な載置面33s,34sを有している。図15に示されるように、中央アーム部32の平坦面32sは、載置面33sよりも低い位置に形成されている。載置面33s,34sの高さはほぼ同じである。
【0037】
中央アーム部32は、ドライエアなどの流体を上方に噴出する流体排出孔37,37,…,37を有している。これら流体排出孔37,37,…,37は、平坦面32sの全体に亘って配列されている。流体排出孔37の径rは、たとえば1mm程度にすることができる。さらに図14に示されるように、流体排出孔37,37,…,37は、中央アーム部32の内部に形成された流体供給路38と連通している。この流体供給路38はさらに後方基端部31の流体導入孔(図示せず)と連通している。この流体導入孔に圧縮空気などの流体を導入することで、流体排出孔37,37,…,37から流体を噴出させることができる。
【0038】
補助アーム部33,34の先端は、中央アーム部32の先端よりも後方基端部31側に位置しており、補助アーム部33,34の全長(Y軸方向長さ)w9は、中央アーム部32の全長(Y軸方向長さ)w8よりも短い。また、補助アーム部33,34はそれぞれ吸着孔35,36を有しており、これら吸着孔35,36は、補助アーム部33,34の内部に形成された吸気路35h,36hとそれぞれ連通している。これら吸気路35h,36hはさらに、後方基端部31の吸入孔(図示せず)と連通している。この吸入孔から空気を吸入することで、載置面33s,34s上に載置されているウエハ(図示せず)の下面(裏面)を真空吸着することができる。
【0039】
上記ウエハ搬送アーム3の寸法については、たとえば、中央アーム部32、補助アーム部33及び補助アーム部34の幅(X方向長さ)w6を10mm程度、板状のウエハ搬送アーム3の厚みw10を2mm程度、中央アーム部32と補助アーム部33,34との段差(高低差)s6を3mm程度とすることができる。中央アーム部32と補助アーム部33との間隔s4は、中央アーム部32と補助アーム部34との間隔s5とほぼ等しい。また、搬出されるウエハの径(直径)をRとするとき、ウエハ搬送アーム3の全体の横幅(X方向長さ)w7をR−30mm程度、中央アーム部32の基端から先端までの全長(Y方向長さ)w8をR程度、補助アーム部33,34の基端から先端までの全長(Y方向長さ)w9をRの3分の2程度とすることができる。ウエハの径Rとしては、6インチ(150mm)〜12インチ(300mm)の範囲が想定されるが、この範囲に限定されるものではない。
【0040】
図16は、自重により撓むウエハWを基板キャリア100から搬出する際のウエハ搬送アーム3を概略的に示す上面視図である。ウエハ搬送アーム3は、アーム駆動部112及び駆動アーム111とともにウエハ搬送装置110Bを構成している。また、図17(A)〜(C)は、ウエハWを搬出しようとする実施の形態3のウエハ搬送アーム3を概略的に示す側面図である。
【0041】
図16に示されるように、アーム駆動部112は、駆動アーム111を介してウエハ搬送アーム3を水平方向に移動させて、ウエハ搬送アーム3を基板キャリア100の開口部からウエハWの下側に挿入させる。このとき、図17(A)に示されるように、中央アーム部32の平坦面32sは、ウエハ裏面Wbの周縁端部よりも低くなるように制御されている。その後、ウエハ搬送アーム3の挿入が進行すると、図17(B)に示されるように、流体排出孔37,…,37からウエハ裏面Wbに流体Arが噴出される。この流体Arの圧力により、ウエハ裏面Wbはほぼ載置面33s,34sの高さにまで押し上げられるので、ウエハWの自重による撓みが解消される。さらにウエハ搬送アーム3の挿入が進行すると、図17(C)に示されるように、載置面33s,34sとに、撓みが解消されたウエハWが載置される。その後、ウエハ搬送アーム3上にウエハWが完全に載置されると、流体Arの供給を中止し、後方基端部31の吸入孔から空気を吸入することで、載置面33s,34sにウエハ裏面Wbが真空吸着される。そして、アーム駆動部112は、ウエハ搬送アーム3を1mm程度上昇させた後、ウエハ搬送アーム3を基板キャリア100から引き出すことにより、ウエハWを基板キャリア100から搬出することができる。なお、流体排出孔37の個数および流体排出量は、たとえば、流体Arがウエハ裏面Wbを持ち上げる力がウエハWの全重量の1/3程度となるよう調整されればよい。
【0042】
以上説明したように実施の形態3においては、基板キャリア100へのウエハ搬送アーム3の挿入が深くなるとともに、流体Arの圧力によりウエハ裏面Wbが持ち上げられるので、ウエハWの撓みを解消しつつ載置面33s,34sにウエハWを載置させることができる。補助アーム部33,34の先端は、中央アーム部32の先端付近の流体排出孔37,37,37よりも後方基端部31側に形成されているので、載置面33s,34sには、撓みがほとんど解消されたウエハWを案内することができる。それ故、補助アーム部33,34がウエハWの端部と衝突することを確実に防止することができる。
【0043】
また、ウエハWの搬出と撓みの解消とを1ステップで行うことができるので、搬送に要する時間を短縮することができ、製造ラインの生産性を向上させることができる。
【0044】
以上、図面を参照して本発明に係る種々の実施の形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な形態を採用することもできる。たとえば、上記実施の形態のウエハ搬送アーム1〜3の構造は、ウエハを搬送するものであるが、これに限定されるものではない。他の基板(たとえば、ガラス基板)を搬送するアーム構造に実施の形態のウエハ搬送アーム1〜3の構造を適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1,2,3 ウエハ搬送アーム(基板搬送アーム)、 11 後方基端部、 12 中央アーム部、 12f 平坦面、 12r 傾斜面、 12s 載置面、 13,14 補助アーム部、 13s,14s 補助載置面、 15,16 吸着孔、 17 吸気路、 21 後方基端部、 22 中央アーム部、 22f 平坦面、 22r 傾斜面、 22s 載置面、 23,24 補助アーム部、 23s,24s 補助載置面、 25,26 吸着孔、 25h,26h 吸気路、 27a,27b 流体排出孔、 28 流体供給路、 31 後方基端部、 32 中央アーム部、 32s 平坦面、 33,34 補助アーム部、 33s,34s 載置面、 35 吸着孔、 35h,36h 吸気路、 37 流体排出孔、 38 流体供給路、 110,110B ウエハ搬送装置、 111 駆動アーム、 112 アーム駆動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板収容容器内に水平に置かれた基板の下側に前記基板収容容器の開口部から挿入され、前記基板の裏面を支持しつつ前記基板を前記基板収容容器から搬出する基板搬送アームであって、
前記基板が搬出されるときに前記基板が載置される載置面を有する載置部と、
当該基板搬送アームが前記基板の下側に挿入されるときに、前記基板の裏面を少なくとも前記載置面の高さにまで押し上げる押上部と
を備えることを特徴とする基板搬送アーム。
【請求項2】
請求項1に記載の基板搬送アームであって、
前記押上部は、前記載置面よりも低い位置で前記載置部よりも前方に形成された傾斜面を有し、
前記傾斜面は、該傾斜面の後方から先端に向かうにつれて低くなる高さを有し、当該基板搬送アームが前記基板の下側に挿入されるときに前記挿入が進むにしたがって前記基板の裏面を押し上げる
ことを特徴とする基板搬送アーム。
【請求項3】
請求項2に記載の基板搬送アームであって、
前記押上部は、流体を上方に噴出する流体排出孔を有し、
前記流体排出孔は、当該基板搬送アームが前記基板の下側に挿入されるときに、前記基板の裏面に前記流体を噴出する
ことを特徴とする基板搬送アーム。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の基板搬送アームであって、
前記載置部の側方で前記押上部よりも後方に配置された補助アーム部をさらに備え、
前記載置部と前記押上部とは、単一のアーム部を構成し、
前記補助アーム部は、前記載置面と同じ高さの補助載置面を有し、
前記補助載置面は、前記基板が搬出されるときに前記基板の裏面を支持する
ことを特徴とする基板搬送アーム。
【請求項5】
請求項4に記載の基板搬送アームであって、前記補助載置面には、前記基板が搬出されるときに前記基板の裏面を吸着する吸気孔が形成されていることを特徴とする基板搬送アーム。
【請求項6】
請求項1に記載の基板搬送アームであって、
前記押上部は、流体を上方に噴出する流体排出孔を有し、
前記載置部は、前記押上部の側方で前記流体排出孔の少なくとも1つよりも後方に配置されており、
前記流体排出孔は、当該基板搬送アームが前記基板の下側に挿入されるときに前記基板の裏面に前記流体を噴出する
ことを特徴とする基板搬送アーム。
【請求項7】
請求項6に記載の基板搬送アームであって、
前記押上部の上面には、前記流体排出孔が形成されており、
前記押上部の上面は、前記載置面よりも低い位置に形成されている
ことを特徴とする基板搬送アーム。
【請求項8】
請求項6または7に記載の基板搬送アームであって、前記載置面には、前記基板が搬出されるときに前記基板の裏面を吸着する吸気孔が形成されていることを特徴とする基板搬送アーム。
【請求項9】
請求項1から8のうちのいずれか1項に記載の基板搬送アームであって、前記基板は、半導体ウエハであることを特徴とする基板搬送アーム。
【請求項10】
請求項1から9のうちのいずれか1項に記載の基板搬送アームと、
前記基板搬送アームを駆動するアーム駆動部と
を備えることを特徴とする基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−79789(P2012−79789A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221328(P2010−221328)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】