説明

基板搬送装置、基板搬送方法および表面実装機

【課題】第1位置に停止している基板を第2位置に向けて搬送し、当該第2位置に正確に、かつ安定して停止させる。
【解決手段】基板を基板停止位置から実装作業位置に向けて搬送している最中に中間位置到達時間ATを計測し、これによって基板の搬送状況(突発的要因の発生の有無)を把握する。そして、基板を実装作業位置に搬送させる前に、中間位置到達時間ATに応じて減速開始タイミングT14および減速度bを変更することで減速パターンを制御し、これによって当該基板を正確に実装作業位置に停止位置決めする。このようにフィードフォワード制御によって基板を実装作業位置に搬送しているため、1枚目の基板であっても、2枚目以降の基板であっても、搬送中に突発的な要因によって基板搬送状況は変化しても、それに応じた基板搬送を行うので、基板を安定して実装作業位置に搬送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1位置に停止している基板を第2位置に向けて搬送し、当該第2位置に停止させる基板搬送装置および基板搬送方法、ならびに基板搬送装置により第2位置に位置決めされる基板に部品を実装する表面実装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に電子部品を実装する基板処理システムでは、印刷機、印刷検査機、表面実装機および実装検査機などの基板処理装置が搬送路に沿って並設されており、各基板処理装置が基板搬送路に沿って搬送される基板に対して処理プログラムにしたがって所望の処理を施す。例えば表面実装機では、基板搬送機構によって基板を所定の目標位置まで搬送して停止させた上で、テープフィーダーなどの部品供給部から供給されるIC(Integrated Circuit)等の電子部品が基板に実装される。そして、部品実装の完了後に基板は目標位置から搬出される。このような一連の基板処理動作(基板搬送、部品実装および基板搬出)が繰り返される。
【0003】
そして、同種の基板に対する上記基板処理動作を効率的に行うためには、基板を目標位置に正確に搬送して位置決めする必要がある。そこで、例えば特許文献1に記載の装置では、基板の目標位置に対する実際の基板停止位置の位置ズレ量を求め、この位置ズレ量に応じて基板搬送パラメータを修正して次の基板を搬送している。このようにフィードバック制御により基板搬送の適正化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−27202号公報(図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に記載の装置では、基板搬送の適正化を図るためには、少なくとも1枚の基板について基板処理動作を行う必要があり、1枚目の基板を正確に目標位置に搬送することは難しい。また、基板搬送中の突発的な要因、例えば基板をベルト搬送している際にベルト劣化や基板滑りなどが発生することがあるが、上記特許文献1に記載の装置では、このような突発的な要因に対応することができず、基板を目標位置に安定して搬送して位置決めすることは困難であった。
【0006】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、第1位置に停止している基板を第2位置に向けて搬送し、当該第2位置に正確に、かつ安定して停止させることができることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる基板搬送装置は、第1位置に停止している基板を第2位置に向けて搬送し、第2位置に停止させる基板搬送装置であって、上記目的を達成するため、第1位置から第2位置に至る基板搬送路に沿って基板を搬送する基板搬送手段と、基板搬送路に沿って第1位置と第2位置との中間位置に移動してくる基板を検出する検出手段と、基板搬送手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、第1位置に停止している基板の搬送開始から検出手段により基板が検出されるまでに要する中間位置到達時間を計測する時間計測部と、検出手段により検出された基板を減速させる減速パターンを中間位置到達時間に応じて制御して基板を第2位置に停止させる速度制御部とを含むことを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる基板搬送方法は、第1位置に停止している基板を第2位置に向けて搬送し、第2位置に停止させる基板搬送方法であって、上記目的を達成するため、第1位置に停止している基板の搬送開始から、第1位置から第2位置に至る基板搬送路の中間位置に基板が移動してくるまでに要する中間位置到達時間を計測する工程と、中間位置に搬送された基板を減速させる減速パターンを中間位置到達時間に応じて制御して基板を第2位置に停止させる工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(基板搬送装置および基板搬送方法)では、第1位置に停止している基板が基板搬送手段により基板搬送路に沿って第2位置に向けて搬送されるが、その搬送中に第1位置と第2位置との中間位置で検出手段によって検出される。そして、この基板の搬送開始から検出手段による基板検出までに要する中間位置到達時間が計測される。したがって、基板搬送が予め設定されている加減速パターンからずれる場合はもちろんのこと、第1位置から基板検出位置(第1位置と第2位置との中間位置)に移動する間にベルト劣化や基板滑りなどの突発的な要因が発生した場合、中間位置到達時間が変化してしまう。例えば、基板滑りが発生すると、その分だけ中間位置到達時間が長くなる。そこで、本発明では、各基板を第1位置から第2位置に向けて搬送している最中に中間位置到達時間を求め、これによって基板の搬送状況を把握している。そして、基板を第2位置に搬送させる前に、中間位置到達時間に応じて減速パターンが制御され、これによって当該基板が正確に第2位置に停止させられる。このようにフィードフォワード制御によって各基板が第2位置に搬送されるため、1枚目の基板であっても、2枚目以降の基板であっても、常に基板を正確に第2位置に搬送することができる。また、搬送中に突発的な要因によって基板搬送状況は変化しても、その状況変化を中間位置到達時間によって把握し、それに応じた減速パターンで基板搬送を行っているため、基板を安定して第2位置に搬送することができる。
【0010】
ここで、「減速パターンを中間位置到達時間に応じて制御する」とは、例えば第1位置に停止している基板を予め設定した加減速パターンで第2位置に向けて搬送したときに基板の搬送開始から検出手段により基板が検出されるまでに要すると予測される予測時間を記憶部に記憶させておき、その予測時間に対する中間位置到達時間の時間差に基づいて減速パターンを決定することを意味する。このように予測時間を予め記憶させておき、中間位置到達時間と対比することで、基板搬送が予め設定された加減速パターンからずれているか否か、およびベルト劣化や基板滑りなどの突発的な要因が発生したか否かを確実に、しかもずれ量、ベルト劣化量や基板滑り量などを定量的に求めることができ、第2位置への基板の搬送位置決めをさらに正確に、かつより安定して行うことができる。
【0011】
また、時間差が実質的に存在しない、つまり中間位置到達時間が予測時間と完全に一致する、あるいは両者が相違しても計測誤差程度である場合には、基板は予め設定された加減速パターンにしたがって搬送されていると判断することができることから、検出手段により検出された基板をそのまま予め設定された加減速パターンにしたがって搬送してもよい。これによって安定的な基板搬送を行うことができる。
【0012】
一方、基板の滑りなどが発生すると、時間差が実質的に存在する、つまり計測誤差範囲を超えて中間位置到達時間が予測時間よりも長くなることがある。このような場合、基板を確実に第2位置に搬送するためには、検出手段により検出された基板を予め設定された加減速パターンの減速度よりも小さな減速度で搬送して基板の滑り等の突発的な事象が発生するのを未然に防止するのが好適であり、これによって基板搬送をより安定的に行うことができる。
【0013】
このように検出手段により検出された基板を予め設定された加減速パターンの減速度よりも小さな減速度で搬送する場合、検出手段により検出された基板の第2位置への搬送時間が予め設定された加減速パターンで搬送する場合の搬送時間よりも長くなる。このため、基板を第2位置に正確に停止させるためには、検出手段により検出された基板の搬送速度を減速させる減速開始タイミングを予め設定された加減速パターンでの減速開始タイミングよりも早めるのが望ましい。このように減速開始タイミングおよび減速度を制御することで減速パターンを高精度に制御することができ、基板を第2位置で正確に停止させることができる。
【0014】
また、同一品種の基板を複数枚、所定順序で搬送し、しかも予め設定された加減速パターンで基板が第2位置に搬送される場合には、次のように加速度を高めた加減速パターンで搬送することで、複数枚の基板を順番に搬送するのに要するトータル時間を短縮することができる。つまり、第(n−1)番目(nは2以上の自然数)の基板を予め設定された加減速パターンで第2位置に搬送したとき、予め設定された加減速パターンを、第(n−1)番目の基板を搬送する際の加速度よりも大きな加速度を有する加減速パターンに書き換え、第1位置に停止している第n番目の基板を書き換え後の加減速パターンで第2位置に向けて搬送することで、基板搬送時間を短縮することができる。なお、このように加減速パターンを書き換えた場合には、書き換え後の加減速パターンが、本発明の「予め設定された加減速パターン」に相当する。したがって、このように加減速パターンが書き換えられる毎に、書き換え後の加減速パターンに対応する予測時間を演算し、これに書き換えて予測時間を更新するのが望ましい。
【0015】
さらに、本発明にかかる表面実装機は、上記目的を達成するため、部品を供給する部品供給部と、上記した基板搬送装置と、基板搬送装置の第2位置に位置決めされる基板の上方と、部品供給部の上方との間を移動可能に設けられて部品供給部から供給される部品を、基板上に移載するヘッドユニットとを備えることを特徴としている。
【0016】
このように構成された表面実装機では、第2位置に基板が正確に、しかも安定して搬送されて位置決めされる。このため、基板の第2位置への搬送に続いて、当該基板への部品実装をスムーズに行うことができ、部品実装の作業効率を向上させることができる。
【0017】
なお、検出手段をヘッドユニットに取り付け、当該ヘッドユニットと一体的に移動可能に構成することで、当該検出手段は、基板搬送を適正化するための基板検出機能と、基板上のマーク等を検出するマーク検出機能とを発揮することが可能となり、少ない部品点数で高機能な表面実装機が得られる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、第1位置から基板搬送路の中間位置(検出手段により基板を検出する位置)まで基板が移動するのに要する中間位置到達時間を計測し、その計測結果に応じて当該中間位置から第2位置に基板を搬送する際の減速パターンを制御して基板を第2位置に停止させる。このようにフィードフォワード制御によって基板を第2位置に搬送しているため、第1位置に停止している基板を第2位置に正確に、かつ安定して停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる基板搬送装置の第1実施形態を装備した表面実装機の概略構成を示す平面図である。
【図2】基板搬送装置でのコンベアおよびセンサーの配設関係を模式的に示す図である。
【図3】図1に示す表面実装機の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図1の表面実装機における基板搬送の概要を模式的に示す図である。
【図5】図1の表面実装機において基板が予測通りに搬送される場合における基板の加減速パターンを示すグラフである。
【図6】図1の表面実装機において基板が予測通りに搬送されない場合における基板の加減速パターンを示すグラフである。
【図7】図1に示す表面実装機の動作を示すフローチャートである。
【図8】フィードフォワード制御を示すフローチャートである。
【図9】本発明にかかる基板搬送装置の第2実施形態でユーザなどにより設定される搬送データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明にかかる基板搬送装置の第1実施形態を装備した表面実装機の概略構成を示す平面図である。また、図2は基板搬送装置でのコンベアおよびセンサーの配設関係を模式的に示す図である。さらに、図3は図1に示す表面実装機の主要な電気的構成を示すブロック図である。なお、図1および図2では、各図の方向関係を明確にするために、XYZ直角座標軸が示されている。
【0021】
表面実装機1では、基台11上に本発明の「基板搬送手段」に相当する基板搬送機構2が配置されており、基板PBを基板搬送方向Xに搬送可能となっている。より詳しくは、基板搬送機構2は、基台11上において3つのコンベア対を有しており、基板搬送方向Xの上流側(図1、図2の右手側)から下流側(図1、図2の左手側)に向けて搬入コンベア21a、21a、メイン搬送コンベア21b、21bおよび搬出コンベア21c、21cが一列に配置されて基板PBを図1および図2の右手側から左手側へ基板搬送路TPに沿って搬送可能となっている。また、これらのコンベア21a〜21cには、コンベア駆動モーターM1a、M1b、M1cがそれぞれ連結されており、表面実装機1全体を制御するコントローラ3のモーター制御部33により各コンベア駆動モーターM1a、M1b、M1cを駆動制御することで、図2(a)に示すように搬入コンベア21a、21a上の基板停止位置P1で停止している基板PBが図2の2点鎖線で示す作業位置P2に向けて基板搬送路TPに沿って搬送され、さらに部品実装された基板PBを搬出する。
【0022】
また、各コンベア対に対して基板検出用センサーが固定配置されている。つまり、コンベア21a、21aの下方位置には、搬入前の基板PBを検出するためのセンサーSNaが固定配置されており、コンベア21a、21aによって基板搬送方向Xに搬送される基板PBを検出し、基板検出信号が外部入出力部35を介してコントローラ3に出力する。なお、図2(および後の図4)においては、センサーSNa(および後で説明するセンサーSNb)が基板PBを検出している状態にある場合にはクロスハッチングを付す一方、未検出状態ではクロスハッチングを付していない。
【0023】
そして、コントローラ3の演算処理部31は、基板検出用センサーSNaにより基板PBを検出した後にモーター制御部33を介してコンベア駆動モーターM1aを制御し、基板PBを一定距離だけ搬送し、図2に示すように基板検出用センサーSNaから基板搬送方向Xに所定距離だけ進んだ基板停止位置(本発明の「第1位置」に相当)P1に停止させる。なお、本明細書では、基板PBの先端位置を基準として基板PBの位置を特定している。
【0024】
また、コンベア21b、21bの下方位置には、本発明の「第2位置」に相当する実装作業位置(図1および図2中において2点鎖線で示す基板PBの位置)P2に向けて搬送される基板PBを検出するためのセンサーSNbが基板停止位置P1と実装作業位置P2との間の中間位置P3の下方で固定配置されている。このセンサーSNbが中間位置P3に搬送されてきた基板PBを検出すると、基板検出信号が外部入出力部35を介してコントローラ3に出力する。そして、コントローラ3の演算処理部31は、基板検出用センサーSNbによる基板検出に基づいて各種演算処理を行うとともに、当該演算結果に基づいてモーター制御部33を介してコンベア駆動モーターM1bを制御してセンサーSNbに検出された基板PBを実装作業位置P2に搬送して停止させる。なお、その動作については、後で詳述する。
【0025】
さらに、コンベア21c、21cの下方位置には、上記実装作業位置P2で部品が実装され、さらに実装作業位置P2から搬出されてくる基板、いわゆる部品実装基板PBを検出するためのセンサーSNcが固定配置されており、部品実装基板PBを検出し、その基板検出信号が外部入出力部35を介してコントローラ3に出力される。なお、本実施形態では、3つのセンサーSNa〜SNcを設けて基板搬送機構2により搬送される基板PBの現在位置や搬送速度などを検出可能となっており、特に本発明ではセンサーSNbによる基板PBの検出に応じて基板PBの減速開始タイミングや減速度などを制御して基板PBを実装作業位置P2に正確に、しかも安定して搬送する。
【0026】
このようにして実装作業位置P2で停止された基板PBは図略の保持装置により固定保持される。そして、当該基板PBに対して部品収容部5から供給される電子部品(図示省略)がヘッドユニット6に複数搭載された吸着ノズル61により移載される。このようにヘッドユニット6が部品収容部5に装着されるテープフィーダー51の上方と基板PBの上方の間を複数回往復して当該表面実装機1によって基板PBに実装すべき部品の全部について実装処理が完了すると、基板搬送機構2はコントローラ3からの駆動指令に応じてコンベア駆動モーターM1b、M1cが作動して基板PBを搬出する。
【0027】
基板搬送機構2のY軸方向の両側には、上記した部品収容部5が配置されており、これらの部品収容部5に対して1または複数のテープフィーダー51を装着可能に構成されている。また、部品収容部5では、各フィーダー51に対応して電子部品を一定ピッチで収納・保持したテープを巻回したリール(図示省略)が配置されており、各フィーダー51による電子部品の供給が可能となっている。なお、この実施形態では、部品収容部5は、メイン搬送コンベア21b、21bに対してフロント(+Y)側とリア(−Y)側のそれぞれ上流部と下流部の合計4箇所に設けられており、各部品収容部5では、実装プログラムに基づいて実行される基板PBへの部品実装に応じた適切なフィーダー51がオペレータにより装着される。
【0028】
また、表面実装機1では、基板搬送機構2の他に、ヘッド駆動機構7が設けられている。このヘッド駆動機構7はヘッドユニット6を基台11の所定範囲にわたりX軸方向およびY軸方向に移動するための機構であり、X軸方向およびY軸方向への移動に、それぞれX軸モーターM2およびY軸モーターM3が使用される。そして、ヘッドユニット6の移動により吸着ノズル61で吸着された電子部品が部品収容部5の上方位置から基板PBの上方位置に搬送される。すなわち、このヘッドユニット6では、鉛直方向Zに延設された不図示の実装用ヘッドが8本、X軸方向(基板搬送機構2による基板PBの搬送方向)に等間隔で列状配置されている。また、実装用ヘッドのそれぞれの先端部には、吸着ノズル61が装着されている。
【0029】
各実装ヘッドはヘッドユニット6に対してZ軸モーターM4を駆動源とするノズル昇降駆動機構により昇降(Z軸方向の移動)可能に、かつR軸モーターM5を駆動源とするノズル回転駆動機構によりノズル中心軸回りに回転可能となっている。これらの駆動機構のうちノズル昇降駆動機構は吸着もしくは装着を行う時の下降位置と、搬送や撮像を行う時の上昇位置との間で実装ヘッドを昇降させるものである。一方、ノズル回転駆動機構は部品吸着ノズルを、電子部品の実装方向への合致のためやR軸方向の吸着ズレの補正のため等、必要に応じて回転させるための機構であり、回転駆動により電子部品を実装時における所定のR軸方向に位置させることが可能となっている。
【0030】
そして、ヘッド駆動機構7によってヘッドユニット6が部品収容部5の上方に移動し、Z軸モーターM4によって吸着ノズル61が吸着対象部品を搭載するフィーダー51の部品吸着位置上方に位置されるとともに、吸着ノズル61が下降して部品収容部5から供給される電子部品に対して吸着ノズル61の先端部が接して吸着保持し、吸着ノズル61が上昇する。こうして吸着ノズル61で電子部品を吸着保持したままヘッドユニット6が基板PBの上方に搬送され、所定位置において所定方向に向けて電子部品を基板PBに移載する。
【0031】
なお、搬送の途中において、搬送路の側方の2つの部品収容部5のX方向中間に配置される部品認識カメラC1の上方をヘッドユニット6が通過し、部品認識カメラC1が各吸着ノズル61に吸着された電子部品を下方から撮像することで、各吸着ノズル61における吸着ずれが検出され、各電子部品を基板PBに移載する際に吸着ずれに見合った位置補正がされる。
【0032】
また、ヘッドユニット6のX軸方向の両側部には、基板認識カメラC2がそれぞれ固定されており、ヘッド駆動機構7によりヘッドユニット6をX軸方向およびY軸方向に移動させることで任意の位置で基板PBの上方から撮像可能となっている。このため、各基板認識カメラC2は、実装作業位置上にある基板PBに付された複数のフィデューシャルマークを撮影して基板位置、基板方向を画像認識する。
【0033】
このように構成された表面実装機1全体を制御するコントローラ3は、演算処理部31と、ハードディスクドライブなどの記憶部32と、モーター制御部33と、画像処理部34と、外部入出力部35と、サーバー通信制御部36とを備えている。これらの構成要素のうち演算処理部31はCPU等により構成されており、
・基板停止位置P1に停止している基板PBの搬送を開始してからセンサーSNbで搬送中の基板PBが検出されるまでに要する時間(以下「中間位置到達時間」という)を計測する時間計測部、
・予め設定された加減速パターン(図6(a)、(c))で基板PBを搬送したときに予想される中間位置到達時間(後で述べる「予測時間」に相当)と、上記時間計測部で実測される中間位置到達時間との時間差を求める時間差演算部、
・基板PBの搬送速度を制御する速度制御部
として機能するとともに、記憶部32に書き込まれた実装プログラムにしたがって表面実装機1の各部を制御して部品実装を行う。
【0034】
記憶部32には、上記した実装プログラム以外に、ロット内の最初の基板を搬送させる際に用いる標準加減速パターンを特定するための各種情報(標準加速度a0、標準加速時間、搬送速度V1、減速開始タイミングT04、減速度b0など)、中間位置到達時間の予測値ET、搬送加速度(加速度aおよび減速度b)の最小値および最大値、搬送速度の最小値および最大値などが記憶されている。
【0035】
表面実装機1の電気的構成に戻って説明を続ける。モーター制御部33には、図3に示すように、コンベア駆動モーターM1a〜M1c、X軸モーターM2、Y軸モーターM3、Z軸モーターM4およびR軸モーターM5が電気的に接続されており、各モーターを駆動制御する。
【0036】
また、画像処理部34には部品認識カメラC1および基板認識カメラC2が電気的に接続されており、これら各カメラC1,C2から出力される撮像信号がそれぞれ画像処理部34に取り込まれる。そして、画像処理部34では、取り込まれた撮像信号に基づいて、部品画像の解析ならびに基板画像の解析がそれぞれ行われる。
【0037】
この表面実装機1では、表示/操作ユニット4が設けられて実装プログラムや部品情報などを表示する。また、表示/操作ユニット4は、作業者がコントローラ3に対して搬送加速度や搬送速度の最大値および最小値などの各種データや指令などの情報を入力するためにも使用される。さらに、表面実装機1には、実装プログラムなどを作成するデータ作成装置(サーバーPC)や他の表面実装機等との間で実装プログラムや部品情報などの各種データの授受を行うためにサーバー通信制御部36が設けられている。
【0038】
次に、上記のように構成された表面実装機1において、複数の基板PBを含むロットの1枚目の基板PBを実装作業位置P2に搬送する際の概要動作を、基板滑り等が発生せず予測通り(つまり、予め設定した加減速パターン通り)に搬送される場合と、ベルト劣化や基板滑りなどの要因により基板搬送に遅れが生じて予測通りに搬送されない場合とに分けて図4ないし図6を参照しつつ説明する。その後で、本実施形態での基板搬送方法について図7および図8をさらに参照しつつ説明する。
【0039】
図4は図1の表面実装機における基板搬送の概要を模式的に示す図である。また、図5は図1の表面実装機において基板が予測通りに搬送される場合における基板の加減速パターンを示すグラフである。また、図6は、図1の表面実装機において基板が予測通りに搬送されない場合における基板の加減速パターンを示すグラフである。このように1枚目の基板PBを搬送する場合には、標準加減速パターンが記憶部32から読み出され、これを「予め設定された加減速パターン」とし、この加減速パターンで基板搬送を行う(図5(a)および図6(a))。なお、これら図5および図6中の符号T01、T02、T03、T04およびT05は予め設定された加減速パターンにおける代表的な動作タイミングを示し、符号T11、T12、T13、T14およびT15は当該加減速パターンにしたがって基板PBを実際に搬送した際の上記動作タイミングT01、T02、T03、T04およびT05にそれぞれ対応する動作タイミングを示している。つまり、基板搬送が予め設定された加減速パターン通りに実行される場合には、実際の動作タイミングT11、T12、T13、T14およびT15は、それぞれ動作タイミングT01、T02、T03、T04およびT05と一致する。
【0040】
また、図4の左半分に示す図は、1枚目の基板PBが標準加減速パターン通りに搬送される場合の基板搬送動作の予測図であり、各動作タイミングT11、T12、T13、T15での基板PBの搬送状況およびセンサーSNa、SNbのON/OFF状況を示している。そして、その動作パターンは図5(b)に示す通りである。一方、図4の右半分に示す図は、1枚目の基板PBが標準加減速パターン通りに搬送されない場合の実際の基板搬送動作を模式的に示すものであり、各動作タイミングT11、T12、T13、T15での基板PBの搬送状況およびセンサーSNa、SNbのON/OFF状況を示している。そして、その動作パターンは図6(b)に示す通りである。
【0041】
表面実装機1では、コントローラ3は、基板PBを検出した旨の検出信号がセンサーSNaにより出力されると、コンベア21a、21aの搬送速度Vを減速してセンサーSNaにより検出された位置から所定距離だけ進んだ基板停止位置P1で停止させる(タイミングT01、T11)。こうして、コントローラ3は当該基板PBへの部品実装の開始準備が完了するまで基板停止位置P1で待機させる。
【0042】
待機中の1枚目の基板PBに対する部品実装が可能となると、コントローラ3は実装プログラムにしたがって装置各部を制御して予め設定された加減速パターンで基板PBを実装作業位置P2に搬送して位置決めする。ここで、コンベア劣化や基板滑りなどの要因により搬送遅れが発生しない場合には、図4の左半分および図5(b)に示すように、1枚目の基板PBは予め設定された加減速パターン通りに搬送される。すなわち、搬入コンベア21a,21aと、メイン搬送コンベア21b、21bとが駆動されて基板PBは加速度a1(=標準加速度a0)で搬送され(タイミングT12)、搬送速度Vが搬送速度V1となった時点より等速で搬送される。そして、コントローラ3はタイミングT14より減速度b1(=標準減速度b0)で基板PBを減速させ、タイミングT15で基板PBを実装作業位置P2で停止させる。
【0043】
ここで、コンベア劣化や基板滑りなどの要因が発生しない間、タイミングT11、T12、T14、T15はそれぞれ対応するタイミングT01、T02、T04、T05と完全に一致しており、基板PBを正確に、かつ安定して実装作業位置P2に搬送することができる。しかしながら、例えば図6(b)に示すように基板滑りが発生して搬送遅れが生じると、そのまま標準加減速パターンで基板PBを搬送させてしまうと、基板PBは実装作業位置P2に到達するまでに停止させられてしまう。
【0044】
そこで、本実施形態では、基板停止位置P1から実装作業位置P2に基板PBを搬送している途中の中間位置P3でセンサーSNbによって基板PBを検出し、その検出結果に基づいて減速パターンを制御している。すなわち、基板PBの先端部がセンサーSNbの直上位置P3に達すると、センサーSNbから基板PBを検出した旨の検出信号がコントローラ3に与えられる(タイミングT13)。このように構成された表面実装機1では、図5(b)に示すように標準加減速パターン通りに基板PBが搬送されている場合、基板停止位置P1に停止している基板PBの搬送を開始してからセンサーSNbで検出されるまでに要する時間、つまり中間位置到達時間ATは一定の予測時間ET(=T03−T01)となる。すなわち、基板PBがセンサーSNbの直上位置P3に到達した段階で予測時間ETに対する中間位置到達時間ATの時間差ΔT3(=T13−T03)はゼロとなる。一方、ベルト劣化や基板滑りなどの突発的な要因が発生して標準加減速パターン通りに搬送されない場合には、例えば図4の右半分および図6(b)に示すように、中間位置到達時間AT(=T13−T11)は予測時間ETよりも時間差ΔT3だけ長くなる。したがって、時間差ΔT3に基づいて突発的な要因の発生の有無を確認することができる。
【0045】
また、中間位置P3に基板PBを搬送している間に基板滑りなどが発生する場合には、標準減速度b0で基板PBを搬送する際にも基板滑りが発生して基板PBは実装作業位置P2の手前で停止させられてしまう可能性がある。そこで、上記したように中間位置到達時間ATを予測時間ETとの対比結果に基づいて突発的な要因の発生を確認した場合には、減速度b1を予め設定された加減速パターンの減速度b1よりも小さい値に変更するのが望ましい。このような減速度b1の変更によって、センサーSNbの直上位置P3から実装作業位置P2に基板PBを搬送させるのに要する搬送時間は多少長くなるものの、基板PBの滑りを確実に防止しながら基板PBを実装作業位置P2に正確に位置決め停止させることができる。なお、本実施形態では、減速度b1を標準減速度b0よりも小さい値に変更するのに対応し、図6(b)に示すように、減速開始タイミングT14を標準加減速パターンの減速開始タイミングT04よりも時間差ΔT4だけ早めている。このように、本実施形態では、減速開始タイミングT14および減速度b1を変更することで減速パターン(図6(b)中の破線)を制御して基板PBを実装作業位置P2で正確に停止させて位置決めしている。このように搬送速度V1で中間位置P3に搬送されてきた基板PBを減速パターン(減速開始タイミングT14および減速度b1)で搬送して実装作業位置P2に停止させる場合、当該減速パターンにしたがって搬送される距離Dは、
D=(T04−T03−ΔT3−ΔT4)×V1+V1/(2×b1)
である。この距離Dは、中間位置P3から実装作業位置P2までの距離であり、固定値であるため、上記式を変形することで、時間差ΔT4は、
ΔT4=(T04−T03−ΔT3)+V1/(2×b1)−D/V1
となる。なお、図4ないし図6では、1枚目の基板PBについて説明しているが、2枚目以降の基板PBについても基本的に同様の処理が実行される。
【0046】
以上のように、本実施形態では、基板PBを基板停止位置P1から実装作業位置P2に向けて搬送している最中に中間位置到達時間ATを計測し、これによって基板PBの搬送状況(突発的要因の発生の有無)を把握している。そして、基板PBを実装作業位置P2に搬送させる前に、中間位置到達時間ATに応じて制御パラメータ(減速開始タイミングおよび減速度)を変更することで減速パターンを制御し、これによって当該基板PBを正確に実装作業位置P2に停止位置決めする。このようにフィードフォワード制御によって基板PBを実装作業位置P2に搬送しているため、1枚目の基板PBであっても、2枚目以降の基板PBであっても、常に基板PBを正確に実装作業位置P2に搬送することができる。また、搬送中に突発的な要因によって基板搬送状況は変化しても、その状況変化を中間位置到達時間ATによって把握し、それに応じた基板搬送を行っているため、基板PBを安定して実装作業位置P2に搬送することができる。
【0047】
また、本実施形態では、図5(c)および図6(c)に示すように、1枚目の基板搬送が完了すると、2枚目の基板搬送に先立って加減速パターンを更新している。これは2枚目の基板搬送時間を短縮することを狙ったものであり、その詳しい動作については、次に説明する上記動作の具体的な制御フローと併せて以下に説明する。
【0048】
図7は図1に示す表面実装機の動作を示すフローチャートである。また、図8はフィードフォワード制御を示すフローチャートである。コントローラ3は記憶部32に記憶されている実装プログラムにしたがって装置各部を制御しており、基本的にはロット中の1枚目の基板PBについては図5(a)や図6(a)に示す標準加減速パターンにより基板停止位置P1で待機している基板PBを実装作業位置P2に搬送し、部品実装動作を実行する。そのため、ステップS1でコントローラ3の演算処理部31はモーター制御部33を介して各コンベア駆動モーターM1a、M1bを作動させて標準加減速パターンで基板PBの搬送を開始する(タイミングT11)。また、搬送開始と同時に、演算処理部31は、中間位置到達時間ATを求めるために、経過時間の計測を開始する(ステップS2)。そして、基板PBがセンサーSNbの直上位置P3に達して当該センサーSNbから検出信号が出力される(ステップS3)と、演算処理部31は中間位置到達時間ATを確定させるとともにフィードフォワード制御を行う(ステップS4)。
【0049】
このフィードフォワード制御では、図8に示すように、予測時間ETに対する中間位置到達時間ATの時間差ΔT3を演算処理部31が算出し(ステップS41)、時間差ΔT3が実質的にないか否かを判断する(ステップS42)。ここで、「時間差ΔT3が実質的にない」とは、計測誤差等を含む誤差範囲内に入っており、誤差を考慮すると時間差ΔT3は実質的にゼロであることを意味しており、このように判断した場合には、演算処理部31は予め設定された加減速パターン(1枚目の場合には、標準加減速パターンであり、2枚目以降は後述するように書き換えられた加減速パターン)のまま維持する(ステップS43)。そして、予め設定された加減速パターンのタイミングT04と一致する減速開始タイミングT14で減速を開始する(ステップS44)。このときの減速度bは減速度b0であり、タイミングT15で基板PBは実装作業位置P2に停止させられて位置決めされる(ステップS45)。こうして、予め設定された加減速パターン通りに基板PBが実装作業位置P2に正確に搬送される。
【0050】
一方、ステップS42で時間差ΔT3が実質的に存在する(誤差範囲を超えている)場合には、演算処理部31は、減速開始タイミングT14を予め設定されている加減速パターン(1枚目の場合には、標準加減速パターンであり、2枚目以降は後述するように書き換えられた加減速パターン)の減速開始タイミングT04よりも時間ΔT4だけ早めるとともに、減速度bを変更して減速パターンを変化させる(ステップS46)。なお、この実施形態では、基板PBがロットの1枚目であるか、2枚目以降であるかに応じて減速度bの変更態様を相違させている。すなわち、1枚目である場合には、減速度bを減速度b0よりも小さい値、より具体的には基板PBの滑りが発生しない減速度bminに変更する。また、2枚目以降についても、一律に減速度bminに設定してもよいが、基板滑りなどが発生するのを抑制しつつ搬送時間の短縮化を図るために、本実施形態では、次のように2枚目以降の減速度bを減速度bminよりも高く設定している。すなわち、n枚目(nは2以上の自然数)である場合、(n−1)枚目の減速度を「bn−1」としたとき、
b=(b0+bn−1)/2
とする。
【0051】
こうして変更された減速開始タイミングT14で減速を開始し(ステップS47)、変更後の減速度bで基板PBの搬送速度を減速させて基板PBを実装作業位置P2に停止させて位置決めする(ステップS48)。
【0052】
上記のようにして基板PBが実装作業位置P2に正確に位置決めされると、当該基板PBは図略の保持装置により固定保持される。そして、実装作業位置P2で固定された基板PBに対して部品収容部5から供給される電子部品(図示省略)がヘッドユニット6に複数搭載された吸着ノズル61により移載される(ステップS49)。このようにヘッドユニット6が部品収容部5の上方と基板PBの上方の間を複数回往復して当該表面実装機1によって基板PBに実装すべき部品の全部について実装処理が完了すると、演算処理部31からの駆動指令に応じてコンベア駆動モーターM1b、M1cが作動して基板PBを搬出する。
【0053】
次に、図7に戻って動作説明を続ける。フィードフォワード制御(ステップS4)において時間差ΔT3が実質的になく予想通り、つまり搬送遅れが発生せずに予め設定された加減速パターン通りに基板が搬送されたか否かを、演算処理部31は判断する(ステップS5)。そして、予測と異なった(つまり、予め設定された加減速パターンによれば、搬送遅れが発生する)と判断した際には、加減速パターンを規定する制御量(加速度a0、減速開始タイミングT04、減速度b0)を上記ステップS46で再計算された結果に基づいて再設定し、この加減速パターン(図6(c))を新たな「予め設定された加減速パターン」として書き換える。例えば同図に示すように、1枚目の基板搬送時に基板滑り等が発生した場合には、2枚目の基板PBを搬送する加減速パターンの加速度を加速度a2(<a1)に設定するとともに、減速度を減速度b2(<b1)に設定し、これを本発明の「予め設定された加減速パターン」として書き換え、これによって2枚目の基板搬送時に基板滑り等が発生するのを防止してもよい。また、このように書き換えられた「予め設定された加減速パターン」で基板搬送を行った場合の予測時間ETを求め、予測時間ETを更新する(ステップS6)。
【0054】
一方、予測と同じと判断した際には、演算処理部31は、より速い基板搬送を実現するために、制御量(加速度、減速開始タイミング、減速度)を新たに決定し、加減速パターンを書き換えるとともに、当該書き換えられた加減速パターンで基板搬送を行った場合の予測時間ETを求め、予測時間ETを更新する(ステップS7)。ここで、新たな加速度anは次のようにして決定してもよい。すなわち、1枚目の基板PBについては加速度a1(=標準加速度a0)で加速されるが、n枚目以降(nは2以上の自然数)の基板PBについては、1枚前の加速度(an−1)よりも大きな値に設定してもよく、n枚目の加速度anを次式
an=(amax+an−1)/2
ただし、amaxは加速度の上限値である、装置構成によって決まる値である、
に基づいて決定してもよい。また、減速度bnについても、加速度anと同様に、1枚前の減速度(bn−1)よりも大きな値に設定してもよく、n枚目の減速度bnを次式
b=(bmax+bn−1)/2
ただし、bmaxは減速度の上限値であり、装置構成によって決まる値である、
に基づいて決定してもよい。
【0055】
こうして書き換えられた加減速パターンが本発明の「予め設定された加減速パターン」に相当し、加減速パターンの書換および予測時間ETの再設定が完了すると、次のステップS8でロット内に含まれる全基板PBについて部品実装が完了したか否かを演算処理部31が判断し、未実装の基板PBが残っており、生産を継続させる場合には、書き換えられた加減速パターンを「予め設定された加減速パターン」として位置P1に待機している次の基板PBの搬送を開始する(ステップS9)とともに、ステップS2に戻って上記一連の処理を繰り返す。
【0056】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、搬送遅れが発生した場合に、減速開始タイミングT14を加減速パターンの減速開始タイミングT04よりも早めるとともに減速度を同加減速パターンの減速度よりも小さくして減速パターンを制御して基板PBを実装作業位置P2に停止させているが、種々の要因により搬送が早まる場合には、次のように減速パターンを制御すればよい。このような場合には、タイミングT13がタイミングT03よりも早く、時間差ΔT3(=T13−T03)がマイナス値となる。そこで、減速開始タイミングT14および減速度bを変更して減速パターンを制御してセンサーSNbで検出された基板PBを実装作業位置P2で停止させればよく、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0057】
また、上記実施形態では、搬送速度V1、加速度aの最大値amax、減速度bの最大値bmaxおよび減速度bの最小値bminを固定化しているが、基板の品種によって基板滑りが生じやすい場合や生じ難い場合がある。そこで、例えば図9に示すように、表面実装機1の表示/操作ユニット4の表示部41に搬送加速度(加速度、減速度)および搬送速度の最大値および最小値を表示させるとともに、各値をユーザやオペレータが表示/操作ユニット4の操作部(図示省略)を介して適宜設定できるように構成してもよい。また、基板の品種を示す基板情報、例えば基板IDを入力したり、バーコードなどの基板識別情報に読み取らせることで基板品種に最適な搬送加速度および搬送速度が設定されるように構成してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、中間位置到達時間ATを計測するために専用のセンサーSNbを設けているが、例えばヘッドユニット6に固定された基板認識カメラC2が中間位置P3の直上に位置するようにヘッドユニット6を位置決めし、基板認識カメラC2により基板PBを検出して中間位置到達時間ATを求めるように構成してもよい。このように基板認識カメラC2が、フィデューシャルマークを撮像する機能のみならず、本発明の「検出手段」としても機能するように構成することで、センサーSNbが不要となり、装置コストの低減を図ることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、3組のコンベア対により基板搬送機構2を構成しているが、コンベア対の個数はこれに限定されるものではなく、任意のコンベア構成により基板PBを搬送する基板搬送装置に対しても本発明を適用することができる。
【0060】
また、コントローラ3により各モーターを制御するにあたって、モーターの回転状況に応じたパルス信号を出力するエンコーダを付設し、各エンコーダから出力されるパルス信号をコントローラ3に与えるように構成してもよい。
【0061】
さらに、表面実装機1に装備された基板搬送装置に対して本発明を適用しているが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、基板停止位置(待機位置)P1から印刷位置(作業位置)P2に基板を搬送して半田ペーストなどを印刷する印刷装置に対して本発明を適用してもよい。また、印刷装置および表面実装機を組み合わせた実装ライン装置に設けられる基板搬送装置に対しても本発明を適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
1…表面実装機
2…基板搬送機構(基板搬送手段)
3…コントローラ(制御手段)
6…ヘッドユニット
31…演算処理部(制御手段、時間計測部、時間差演算部、速度制御部)
32…記憶部
51…テープフィーダー(部品供給部)
AT…中間位置到達時間
C2…基板認識カメラ
ET…予測時間
P1…基板停止位置
P2…実装作業位置
P3…中間位置
PB…基板
SNb…基板検出用センサー(検出手段)
T04、T14…減速開始タイミング
TP…基板搬送路
X…基板搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1位置に停止している基板を第2位置に向けて搬送し、前記第2位置に停止させる基板搬送装置であって、
前記第1位置から前記第2位置に至る基板搬送路に沿って基板を搬送する基板搬送手段と、
前記基板搬送路に沿って前記第1位置と前記第2位置との中間位置に移動してくる前記基板を検出する検出手段と、
前記基板搬送手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記第1位置に停止している前記基板の搬送開始から前記検出手段により前記基板が検出されるまでに要する中間位置到達時間を計測する時間計測部と、
前記検出手段により検出された前記基板を減速させる減速パターンを前記中間位置到達時間に応じて制御して前記基板を前記第2位置に停止させる速度制御部とを含む
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1位置に停止している基板を予め設定した加減速パターンで前記第2位置に向けて搬送したときに前記基板の搬送開始から前記検出手段により前記基板が検出されるまでに要すると予測される予測時間を記憶する記憶部と、前記予測時間に対する前記中間位置到達時間の時間差を算出する時間差算出部とをさらに含み、
前記速度制御部は前記時間差に基づいて前記減速パターンを決定する請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記速度制御部は、前記検出手段により検出された前記基板を減速させる減速開始タイミングおよび前記減速開始タイミング後の減速度を制御して前記減速パターンで前記検出手段により検出された前記基板を前記第2位置に搬送する請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記時間差が実質的に存在しないときには、前記検出手段により検出された前記基板を前記予め設定された加減速パターンにしたがって搬送する請求項2または3に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記時間差が実質的に存在し、前記中間位置到達時間が前記予測時間よりも長いときには、前記検出手段により検出された前記基板を前記予め設定された加減速パターンの減速度よりも小さな減速度で搬送する請求項2ないし4のいずれか一項に記載の基板搬送装置。
【請求項6】
同一品種の基板を複数枚、所定順序で搬送する請求項2ないし5のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記制御手段は、第(n−1)番目(nは2以上の自然数)の基板を前記予め設定された加減速パターンで第2位置に搬送したとき、前記予め設定された加減速パターンを、第(n−1)番目の基板を搬送する際の加速度よりも大きな加速度を有する加減速パターンに書き換え、前記第1位置に停止している第n番目の基板を書き換え後の加減速パターンで前記第2位置に向けて搬送する基板搬送装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記加減速パターンの書き換えに応じて前記第1位置に停止している前記第n番目の基板の搬送開始から前記検出手段により前記基板が検出されるまでに要する時間を演算し、前記予測時間を前記演算時間に書き換える請求項6に記載の基板搬送装置。
【請求項8】
第1位置に停止している基板を第2位置に向けて搬送し、前記第2位置に停止させる基板搬送方法であって、
前記第1位置に停止している基板の搬送開始から、前記第1位置から前記第2位置に至る基板搬送路の中間位置に前記基板が移動してくるまでに要する中間位置到達時間を計測する工程と、
前記中間位置に搬送された前記基板を減速させる減速パターンを前記中間位置到達時間に応じて制御して前記基板を前記第2位置に停止させる工程と
を備えることを特徴とする基板搬送方法。
【請求項9】
部品を供給する部品供給部と、
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の基板搬送装置と、
前記基板搬送装置の前記第2位置に位置決めされる基板の上方と、前記部品供給部の上方との間を移動可能に設けられて前記部品供給部から供給される部品を、前記基板上に移載するヘッドユニットと
を備えることを特徴とする表面実装機。
【請求項10】
前記検出手段は前記ヘッドユニットに取り付けられて前記ヘッドユニットと一体的に移動可能である請求項9に記載の表面実装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−73998(P2013−73998A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210245(P2011−210245)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【特許番号】特許第5139569号(P5139569)
【特許公報発行日】平成25年2月6日(2013.2.6)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】