説明

基板搬送装置

【課題】基板の搬送中に振動が発生した場合であっても基板を確実に保持することが可能。
【解決手段】搬送対象の基板Wを載置して、基板Wを所定の搬送方向Dに沿って搬送する搬送ステージ12,13,14を有するFPD検査装置1であって、搬送ステージ12,13,14上で搬送方向Dに沿って移動可能であり、基板Wを保持する保持部23と、保持部23の近傍に設けられ、保持部23で保持された基板Wの主面を押圧する押圧部25と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板や半導体基板やプリント基板等を搬送する基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス基板や半導体基板やプリント基板(以下、基板という)などの製造において、基板を搬送して検査等の処理を行う基板搬送装置がある。基板搬送装置は、基板の検査処理を行う検査処理部と、外部から検査処理部へ基板を搬送または検査処理部から外部へ基板を搬送する搬送部とを有する。
【0003】
搬送部は、基板を支持し、搬送方向に沿って回転可能なローラと、基板を吸着して搬送方向に移動可能な吸着パッドとを備える。搬送部は、ローラに支持された基板を吸着パッドによって吸着保持し、この吸着パッドを移動させることで基板の搬送を行う。また、基板の支持には、ローラに代えて、基板を搬送する搬送面に複数の空気穴を有し、この空気穴から空気を吹き出すことによって基板を浮上させる浮上プレートを用いる場合もある。浮上プレートは、ローラと比して基板の搬送に起因して発生する振動を抑制することができる。
【0004】
上述した基板搬送装置として、弾性体からなり、ベースに取り付けられる基部、および基部からガラス基板に密着する縁面まで末広がりに広がるコーン部を有する吸着パッドと、吸着パッドの周囲を覆う弾性シートと、を備え、弾性シートのベースからの高さが、吸着パッドが基板を吸着保持した状態で基板と当接する高さであるガラス吸着保持装置が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。ガラス吸着保持装置では、弾性シートを上述した高さとなるように調整することで、加減速時の慣性力による基板の加減速方向のずれを弾性シートと基板との摩擦力によって防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−37549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1が開示するガラス吸着保持装置は、加減速方向(基板の搬送方向)に対するずれは防止できるものの、搬送中に基板の面に直交する方向の振動等が生じると、吸着パッドによる基板の保持が解消されてしまうおそれがあった。また、特許文献1では浮上プレートを用いているが、上述したローラを用いて基板を搬送する場合においては、搬送中における振動がより強く生じることととなり、同様の基板の保持が解消されてしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、基板の搬送中に振動が発生した場合であっても基板を確実に保持することが可能な基板搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる基板搬送装置は、搬送対象の基板を載置して、該基板を所定の搬送方向に沿って搬送する搬送ステージを有する基板搬送装置であって、前記搬送ステージ上で前記搬送方向に沿って移動可能であり、前記基板を保持する保持部と、前記保持部の近傍に設けられ、該保持部で保持された前記基板の主面を押圧する押圧部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる基板搬送装置は、上記の発明において、前記保持部は、前記基板の前記搬送方向と平行な一方の端部を保持し、前記押圧部は、前記端部の端面との距離が、該端面と保持部との距離以上である位置を押圧することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる基板搬送装置は、上記の発明において、前記保持部は、前記基板の端部の主面を吸着する1または複数の吸着部を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる基板搬送装置は、上記の発明において、複数の前記保持部を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる基板搬送装置は、上記の発明において、前記押圧部が前記基板を押圧する押圧力の大きさは、前記吸着部が前記基板を吸着する吸着力の大きさより小さいことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる基板搬送装置は、上記の発明において、前記押圧部は、略棒状をなし、先端で前記基板の主面と当接することを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる基板搬送装置は、上記の発明において、前記押圧部は、先端部分に開口端を有し、エアを流通する流路が設けられ、前記流路と連結してエアを吸引する吸引部をさらに有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる基板搬送装置は、上記の発明において、前記押圧部は、少なくとも前記基板を押圧する部分が弾性部材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる基板搬送装置は、保持部によって保持した基板に対し、保持部の近傍に設けられる押圧部が基板の主面を押圧するようにしたので、基板の搬送中に振動が発生した場合であっても基板を確実に保持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかるフラットパネルディスプレイ(FPD)検査装置の構成を模式的に示す上面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態にかかるFPD検査装置の構成を模式的に示す側面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態にかかるFPD検査装置の要部の構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態にかかるFPD検査装置の要部の構成を示す部分断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態にかかるFPD検査装置の要部の構成を示す側視図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態にかかるFPD検査装置の要部の構成を示す上面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態の変形例1にかかるFPD検査装置の要部の構成を示す部分断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態の変形例2にかかるFPD検査装置の要部の構成を示す模式図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態の変形例3にかかるFPD検査装置の要部の構成を示す模式図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態の変形例4にかかるFPD検査装置の要部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎず、従って、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0019】
まず、本発明の実施の形態にかかる基板搬送装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、基板搬送装置として被検査対象である基板の検査を行うフラットパネルディスプレイ(FPD)検査装置を例に挙げて説明する。FPD検査装置は、露光装置やコーター/ディベロッパー、エッチング装置などの製造装置等に直結して被検査対象となる基板の全数検査を行うようなインライン型であってもよいし、カセット等の基板ストッカーから直接搬入出して一部の基板のみを抜き取り検査するオフライン型(スタンドアローン型)であってもよい。
【0020】
図1は、本実施の形態にかかるフラットパネルディスプレイ(FPD)検査装置の概略構成を示す上面図である。図2は、本実施の形態にかかるFPD検査装置の構成を模式的に示す側面図である。図1に示すように、FPD検査装置1は、搬送された矩形をなす基板Wの欠陥を検出する基板処理部2と、基板処理部2全体の制御を行う制御機構3と、を備える。また、基板処理部2は、移動する基板Wの欠陥を検出する光学ユニット100を保持するガントリー(Gantry)10と、基板Wを搬送する搬送ステージ12,13,14と、を備える。なお、ガントリー10は、門型のフレーム構造で、搬送ステージ12上に跨ぐように設けられる。
【0021】
ガントリー10および搬送ステージ12,13,14は、例えば図2に示すような架台11に固定される。架台11は、例えばブロック状の大理石やスチール材を組み合わせた鋼管フレームなど、耐震性の高い部材によって構成される。加えて、架台11と設置面(例えば床)との間には、例えばスプリングや空気圧ダンパー、油圧ダンパーなどで構成された振動吸収機構11aが設けられる。これにより、ガントリー10および搬送ステージ12,13,14の振動がさらに防止される。
【0022】
光学ユニット100は、搬送ステージ12が形成する搬送経路上に設定された、搬送ステージ12の幅方向に平行な検査ラインL1を通過する基板Wを、顕微鏡101を介して撮像する図示しない撮像部を有する。この光学ユニット100によって取得された画像(高倍率画像)を解析することで、基板Wに欠陥が存在するか否かを検出することができる。光学ユニット100は、検査ラインL1に沿って移動することが可能である。また、図示しない照明部が基板Wに対して光を基板Wに照射して、顕微鏡101がこの反射光を取得し、取得した反射光から得られる画像データをもとに、検査部33が基板W上に形成された膜の膜厚測定を行う。なお、上述した構成は、光学ユニット100と基板Wとを相対的に移動させる構成であれば他の構成であってもよい。例えば、基板Wを搬送ステージ12の上に固定し、光学ユニット100を基板Wの平面上を走査するように構成してもよい。また、光学ユニット100を移動させる構成に代えて、ガントリー10に光学ユニット100を複数並設する構成としてもよい。この場合、移動する基板の一部或いは全体を複数の光学ユニット100によって走査することによって画像を取得することができる。本説明では、光学ユニット100(ガントリー10)が設けられる領域を検査空間PR1という。また、検査空間PR1以外の領域を搬送空間TR1,TR2という。
【0023】
照明部は、光学ユニット100内から基板Wに向けて照明光を照明する落射照明光、または基板Wの光学ユニット100側と反対方向から基板Wに向けて照明光を照射する透過照明光を照射する。照明部は、光学ユニット100の外部、例えば、搬送ステージ12の検査ラインL1に沿って照明光を照射可能に設けられる。この照明部は、光学ユニット100の移動に伴って移動するものであってもよいし、検査ラインL1に沿って延びる照明部材によって構成されるものであってもよい。
【0024】
また、光学ユニット100は、たとえば基板Wの欠陥部分に対してレーザ照射や塗布修正等の欠陥修正を行う欠陥修正ユニット、顕微鏡101に代えて観察・画像保存する高解像カメラからなる撮像ユニット、配線等の寸法測定、膜厚測定、色測定などを行う測定ユニットなどの処理を所定の位置で施す他の処理ユニットに適宜置き替えることができる。すなわち、処理ユニットには、光学ユニット、欠陥修正ユニット、撮像ユニット、測定ユニット等が含まれる。また、本実施の形態にかかるFPD検査装置1は、基板Wを載置するステージ上で、上述した処理ユニットが基板Wに対して各処理を行う構成も含んでもよい。
【0025】
搬送ステージ12,13,14は、例えば複数の板状部材が基板Wの搬送方向Dと垂直な方向に並設された、すのこ状に組み合わされた構造を有する。この搬送ステージ12,13,14を搬送方向Dに沿って並べることで、基板Wの搬送経路が形成される。各搬送ステージ12,13,14の板状部材には、上面で基板Wを保持し、搬送方向Dに回転可能なフリーローラ121,131,141がそれぞれ設けられる。なお、フリーローラ121,131,141は、ラグランジュ点のように基板Wの撓み振動が発生しにくい間隔で配置されることが好ましい。また、搬送ステージの搬送方向Dに垂直な方向の長さ(幅)は、載置される基板Wにおける同一方向の長さ(幅)より小さい。
【0026】
ここで、搬送ステージ13に搬送された基板Wは、所定の位置に載置されるように位置決めされる。基板Wの位置決め方法としては、搬送ステージ13上に搬入された基板Wを支持して搬送ステージ13に載置するリフトピン、および搬送ステージ13に載置された基板Wを整列させる整列機構等を用いる方法が挙げられる。
【0027】
なお、搬送ステージ12,13,14は、エア供給部からのエアの供給によって鉛直上方に向けてエアを吹き出す複数の吹出穴が設けられ、このエアによって基板を支持する浮上プレートによって構成されてもよい。
【0028】
また、搬送ステージ12,13,14の搬送方向Dに平行な方向の外縁側には、搬送方向Dに駆動し、基板Wを吸着保持して搬送する基板搬送機構20が設けられる。
【0029】
図3は、基板搬送機構20を模式的に示す斜視図である。また、図4は、基板搬送機構20を模式的に示す部分断面図である。基板搬送機構20は、搬送ステージの搬送方向Dに平行な一方の端部側に設けられ、搬送方向Dに平行に延びる搬送軸21上を移動する搬送部22を有する。搬送部22は、搬送方向Dに沿って設けられ、基板Wの搬送方向Dに平行な一方の端部を保持する複数(本実施の形態では2つ)の保持部23と、保持部23(吸着部24)の近傍に設けられ、基板Wの主面を押圧する押圧部25とを有する。また、各保持部23は、図示しないポンプによる吸気によって基板Wを吸着保持する略円筒状をなす複数の吸着部24を有する。基板搬送機構20は、例えば、搬送軸21としてリニアモータガイドを用いるとともに、搬送部22としてリニアモータを用いることによって実現される。なお、基板搬送機構20は、リニアモータおよびリニアモータガイドのほか、ボールねじを用いた構成によっても実現可能である。
【0030】
吸着部24は、吸着部24の上面に設けられ、基板Wの主面と接触して基板Wの吸着保持を行う吸着パッド241を有する。吸着パッド241には、一方で吸着パッド241と連結し、他方で図示しないポンプと連結してエアを流通する流路242が設けられる。吸着パッド241は、このポンプによる吸引によって、基板Wを吸着する。
【0031】
押圧部25は、棒状をなし、アクチュエータ251によって搬送ステージ12,13,14の上面と垂直な方向に昇降可能であり、先端部252aで基板Wの主面と当接する押圧ピン252を有する。押圧ピン252は、少なくとも先端部252aが、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)材等の耐摩擦性を有する樹脂を用いて形成される。また、先端部252aは、先端に向かって縮径している。
【0032】
また、FPD検査装置1が、少なくとも基板処理部2を囲み、光学ユニット100の上方に設けられるクリーンな空気(以下、クリーンエアという)を送り込むFFU(Fan Filter Unit)を有する外装を備えていれば、クリーンルームを形成することができるので好ましい。このクリーンルームは、基板の搬入口および搬出口ならびに下部のダクト以外、密閉された内部空間である。
【0033】
FFUは、例えば、パーティクルなどのダストが除去されたクリーンエアを送出する。この結果、特に光学ユニット100の移動領域を、ダストの少ないクリーンな状態とする。また、光学ユニット100近傍に集中して送出されたクリーンな空気は、クリーンルーム内でダウンフローを形成したのち、排気口から排気される。
【0034】
制御機構3は、制御部30、入力部31、出力部32、検査部33および記憶部34を備える。制御機構3は、ROM、RAM、通信機能等を備えたコンピュータで実現される。
【0035】
制御部30は、FPD検査装置1全体の制御を行う。入力部31は、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタン等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から入力する。出力部32は、ディスプレイ等を用いて構成される。
【0036】
検査部33は、光学ユニット100によって取得された画像またはそのスペクトルをもとに基板Wの測定および/または検査を行う。
【0037】
記憶部34は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、FPD検査装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる検査プログラムを含む各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成される。
【0038】
上述したFPD検査装置1では、外部から搬送ステージ13に搬入された基板Wに対して、制御部30の制御のもと、基板搬送機構20によって吸着保持して搬送方向Dに搬送し、光学ユニット100が基板Wの欠陥検査等の検査処理を行う。
【0039】
図5は、フリーローラ131、吸着部24(吸着パッド241)および押圧ピン252によって基板Wを支持した際の支持状態を示す側視図である。図5に示すように、フリーローラ131に支持された基板Wは、基板Wの端部で吸着部24の吸着パッド241によって吸着保持される。この状態において、制御部30は、アクチュエータ251を駆動して押圧ピン252を上昇させ、先端部252aを基板Wの主面に当接させる。
【0040】
このとき、吸着パッド241が基板Wを吸着する吸着力をF1とし、押圧ピン252が基板Wを押圧する押圧力をF2とする。このとき、吸着力F1と押圧力F2との関係が、F1>F2となる。ここで、押圧力F2は、吸着力F1の半分以下、例えば1/2〜1/3程度の力であることが好ましい。なお、押圧ピン252は、基板Wの主面に対して直交する方向から当接するものとして説明したが、上述した力の関係が成り立てば、基板の主面に対して傾斜して当接するものであってもよい。
【0041】
図6は、吸着部24(吸着パッド241)と押圧ピン252との配置を示す上面図である。図6に示すように、吸着パッド241の開口中心と押圧ピン252の中心(先端部252aの頭頂部)との間の距離をd1とし、吸着パッド241の直径をd2とする。このとき、距離d1は、直径d2の2〜5倍である。より好ましくは、距離d1が、直径d2の2〜3倍である。この関係が成り立つように吸着パッド241および押圧ピン252が配設される。なお、このとき、押圧ピン252は、基板Wの端面との距離が、この端面と吸着部24との距離以上である位置に配設される。
【0042】
上述したような力および距離の関係で吸着部24および押圧部25が配置され、吸着パッド241によって吸着保持された基板Wに対して押圧ピン252が吸着の方向と反対方向の力を加えることによって、吸着パッド241近傍における基板Wの剛性を高めることで、基板上の振動が吸着パッドに伝達しない。これにより、吸着パッド241と基板Wとの吸着保持状態が解除されることなく、安定した基板Wの保持と搬送とを実現することができる。
【0043】
このとき、押圧ピン252は、頭頂部に向かって縮径する先端部252aによって、基板Wに対して点接触している。これにより、押圧ピン252は、基板Wの振動に対して常に一定の押圧力が基板Wに加わるため、吸着パッド241に対する安定した振動遮断効果を得ることができる。一方、押圧ピン252の上端が面である場合、押圧ピン252は基板Wと面接触するため、基板上の振動によっては押圧ピン252の基板Wに対する接触位置や接触面積が変化し、加える押圧力が不安定になってしまい、安定した振動遮断効果を得られないおそれがある。
【0044】
上述した実施の形態では、吸着部によって吸着保持した基板に対し、吸着部近傍に設けられる押圧ピンが基板を押圧するようにしたため、基板と吸着部との間の吸着エラーを防止することができる。特に、近年の基板の大型化に伴い、基板上における振動が生じやすくなっているため、発生した振動が吸着部に伝達することを防止することによって、安定した基板の搬送に有効な効果を奏する。
【0045】
また、吸着部の吸着エラー(基板保持状態の解消)の対策として、予期される振動を計算したうえで設定された安全率をもとに吸着固定力を算出し、吸着パッドの吸着力設定に反映することが挙げられる。しかしながら、振動源は多岐に渡るため、すべての現象を考慮した計算が困難である。このため、設定される安全率を高くするなどして対応せざるを得ないが、要因が限定できないために安全率を高めても吸着エラーを防止できない場合や、設定された安全率にするための過剰な装置構成が必要となり、装置の大型化、コストの増大を引き起こす場合がある。また、吸着エラーが発生した場合、振動源を特定して振動の伝搬経路の遮断、減衰または振動源自体の隔離を行わなければならず、大掛かりな装置改造を余儀なくされる場合もあった。
【0046】
一方で、本実施の形態によれば、吸着部近傍に設けられる押圧ピンにより、簡易な構成で吸着部に伝達する振動を防止し、吸着エラーの発生を抑制し、安定した基板の搬送を行うことができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、オフライン型のFPD検査装置に適用されるものとして説明したが、インライン型のFPD検査装置にも適用可能である。インライン型の場合は、搬送ステージ13の光学ユニット100側と異なる側から基板が搬送されるため、吸着部24(吸着パッド241)を下降または搬送ステージ13の上面から退避させる構成を加えることが好ましい。
【0048】
上述した実施の形態にかかる基板の搬送において、各吸着パッドに置き換え、シール材等によって基板を保持して搬送させる構成であってもよいし、基板を挟持して基板を搬送させる構成であっても適用可能である。
【0049】
ここで、上述した押圧ピン252に対して少なくとも先端部252aがゴム等の弾性部材からなるものであってもよい。弾性部材によって振動の高周波成分を減衰させることができる。このため、基板で発生する振動が高周波である場合に振動が吸着パッドに伝達することを防止することによって、安定した基板の搬送に有効な効果を奏する。また、弾性によって基板と当接させる力(押圧力)の調整が容易になる。なお、弾性部材は、固有振動数が20〜30Hz以下の低い固有振動数であればゴムに限らず適用できる。
【0050】
この場合、弾性部材は、弾性変形によって基板に対して圧接することが可能であるため、押圧ピンの先端部が頭頂部に向けて縮径しない形状(先端が平面)であっても適用できる。
【0051】
図7は、本実施の形態の変形例1にかかるFPD検査装置の要部の構成を示す部分断面図である。なお、図1等で上述したものと同じ構成要素には同じ符号を付してある。変形例1では、押圧部26が、先端部分に開口端を有し、エアを流通する流路262が設けられた押圧ピン261を有する。流路262は、エアを吸引する吸引部263と連結することによって、押圧ピン261の先端部分で当接した基板Wを吸引して吸着保持する。
【0052】
このとき、吸着部24側の流路242と押圧部26側の流路262とは、異なる流路である。また、各流路242,262は、エアの吸引量が異なり、具体的には、流路242側の吸引量は、流路262の吸引量より大きい。すなわち、基板Wに対する吸着パッド241による吸着力は、押圧ピン261による吸着力と比して大きい。
【0053】
変形例1では、上述した実施の形態のような吸着力F1と押圧力F2との関係を維持するとともに、押圧ピン261の基板Wに対する当接状態を一段と確実なものとするため、一層安定した基板の搬送が可能となる。
【0054】
図8は、本実施の形態の変形例2にかかるFPD検査装置の吸着部と押圧部との配置を示す模式図である。なお、図1等で上述したものと同じ構成要素には同じ符号を付してある。変形例2では、上述した実施の形態のように各吸着部24の近傍であって、図1等で示す保持部23で保持する一群の吸着部24の一部を覆うように複数の押圧ピン252が設けられる押圧部27を有する。なお、各押圧ピン252は、基板Wの端面Sとの距離をd3とし、この端面Sと保持部23との距離をd4とすると、d3≧d4となる位置に設けられる。
【0055】
押圧部27は、図8に示すように、複数の押圧ピン252が、一群の吸着部24を覆うように弧状をなして配設される。このとき、各押圧ピン252は、吸着部24と押圧ピン252との距離が、上述した距離d1となるように配置される。また、吸着部24の近傍に位置する(押圧力が及ぶ)押圧ピン252からの押圧力の合計が上述した吸着力F1と押圧力F2との関係を満たすように、押圧ピン252の押圧力(基板Wに対する上昇高さ)が調整される。
【0056】
図9は、本実施の形態の変形例3にかかるFPD検査装置の吸着部と押圧部との配置を示す模式図である。なお、図1等で上述したものと同じ構成要素には同じ符号を付してある。変形例3では、上述した実施の形態のように各吸着部24の近傍であって、各吸着部24を覆うように複数の押圧ピン252が設けられる押圧部28を有する。なお、各押圧ピン252は、基板Wの端面Sとの距離をd3とし、この端面Sと保持部23との距離をd4とすると、d3≧d4となる位置に設けられる。
【0057】
押圧部28は、図9に示すように、複数の押圧ピン252が、各吸着部24を覆うように弧状をなして配設される。このとき、各押圧ピン252は、吸着部24と押圧ピン252との距離が、上述した距離d1となるように配置される。また、吸着部24の近傍に位置する(押圧力が及ぶ)押圧ピン252からの押圧力の合計が上述した吸着力F1と押圧力F2との関係を満たすように、押圧ピン252の押圧力(基板Wに対する上昇高さ)が調整される。
【0058】
上述した変形例3にかかる各押圧ピンの昇降駆動は、各押圧ピンごとに駆動するものであってもよいし、複数の押圧ピンを一体的に駆動するものであってもよい。一体的に押圧ピンを駆動する場合は、押圧ピンの配置位置に応じて、基板Wに加える押圧力が上述したものとなるように、互いの押圧ピンの配設高さが調節されていることが好ましい。
【0059】
また、上述した変形例3の押圧ピン252の配置において、押圧ピン252の先端部252aが弾性部材の場合は、図10に示す変形例4のように、弧状をなす弾性部材291(押圧部29)によって各吸着部24を覆うようにすることもできる。なお、弾性部材291は、基板Wの端面Sとの距離をd3とし、この端面Sと保持部23との距離をd4とすると、d3≧d4となる位置に設けられる。また、変形例1にかかる押圧ピン252の配置の場合でも同様に、弧状の弾性部材と基板Wの端面Sとによって一群の吸着部24を覆うようにすることができる。これにより、弾性部材が、基板W上で伝達される振動を減衰させて、安定した基板の搬送に有効な効果を奏する。
【0060】
また、上述した実施の形態および変形例にかかる押圧ピンの数は、上述した吸着部との距離および吸着力との関係を満たせば、任意に設定可能である。また、本実施の形態では、搬送部が搬送ステージの外縁側に設けられ、吸着部が基板の端部側を吸着保持するものとして説明したが、搬送部(搬送軸)が搬送ステージの中央部に設けられ、吸着部が基板の中央部を保持するものである場合は、押圧ピンは、保持部(吸着部)を介して両側に配置されるものであってもよいし、保持部(吸着部)の全周を取り囲む円環状に配置されるものであってもよい。
【0061】
以上のように、本発明にかかる基板搬送装置は、基板の搬送中に振動が発生した場合であっても基板を確実に保持することに有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 FPD検査装置
2 基板処理部
3 制御機構
10 ガントリー
11 架台
11a 振動吸収機構
12,13,14 搬送ステージ
20 基板搬送機構
21 搬送軸
22 搬送部
23 保持部
24 吸着部
25,26,27,28,29 押圧部
30 制御部
31 入力部
32 出力部
33 検査部
34 記憶部
100 光学ユニット
101 顕微鏡
121,131,141 フリーローラ
241 吸着パッド
242,262 流路
251 アクチュエータ
252,261 押圧ピン
252a 先端部
263 吸引部
291 弾性部材
L1 検査ライン
PR1 検査空間
TR1,TR2 搬送空間
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象の基板を載置して、該基板を所定の搬送方向に沿って搬送する搬送ステージを有する基板搬送装置であって、
前記搬送ステージ上で前記搬送方向に沿って移動可能であり、前記基板を保持する保持部と、
前記保持部の近傍に設けられ、該保持部で保持された前記基板の主面を押圧する押圧部と、
を備えたことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記基板の前記搬送方向と平行な一方の端部を保持し、
前記押圧部は、前記端部の端面との距離が、該端面と保持部との距離以上である位置を押圧することを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記基板の端部の主面を吸着する1または複数の吸着部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
複数の前記保持部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記押圧部が前記基板を押圧する押圧力の大きさは、前記吸着部が前記基板を吸着する吸着力の大きさより小さいことを特徴とする請求項3または4に記載の基板搬送装置。
【請求項6】
前記押圧部は、略棒状をなし、先端で前記基板の主面と当接することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の基板搬送装置。
【請求項7】
前記押圧部は、先端部分に開口端を有し、エアを流通する流路が設けられ、
前記流路と連結してエアを吸引する吸引部をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の基板搬送装置。
【請求項8】
前記押圧部は、少なくとも前記基板を押圧する部分が弾性部材からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−62363(P2013−62363A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199653(P2011−199653)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】