説明

基板支持部材

【課題】 基板に温度ムラに起因するピン跡を残さない基板支持部材を提供する。
【解決手段】 載置台1上で基板Wを支持するために、載置台1に形成された貫通孔5より先端部8が出没可能とされた支持ピン7であって、支持ピン7の先端部8は、ロッド先端部11aに通したコイルスプリング12により支持され、先端部8の先端は基板Wを載置しない状態で1〜2mmほど載置台1よりも突出し、支持ピン7の先端部8は基板Wの自重により縮んで、先端部8の先端平面部と載置台1とが面一となる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板や半導体ウェーハ等の基板を支持する基板支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶表示装置(LCD)の製造工程においてガラス基板にレジスト膜やカラーフィルタ膜を形成するには、基板載置台の上にガラス基板を載置し、この状態でガラス基板の上面に膜材料(塗布液)を塗布している。そして基板載置台にガラス基板を受け渡すには、基板載置台に上下方向の貫通孔を形成し、この貫通孔にピン状の基板支持部材を出没自在に設け、基板支持部材を基板載置台上面よりも上方に突出させ、この状態で基板支持部材の上端にガラス基板を受け渡し、基板支持部材が下降することで基板載置台の上にガラス基板が載置される。
【0003】
ところで、特許文献1及び特許文献2では基板支持部材の改良が提案されている。
特許文献1においては、東レ・デュポン社(登録商標)製のカプトン(登録商標)等のポリイミド樹脂からなるプロキシミティピンを用いて、基板をプロキシミティピン上に載置して熱処理を行う基板加熱装置が開示されている。
【0004】
また特許文献2においては、搬送アーム上に設けた基台に支持材料として繊維状の材質で形成された基板支持部材を用いることで、基板上に蓄えられた熱が基板支持部材から分散化して伝熱するようにし、基板上に残る基板支持部材の転写跡が従来よりもぼやけて目立たなくなるようにした基板の保持装置について開示されている。
【特許文献1】特開2003−218003号公報
【特許文献2】特開2000−012655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、略半円形状、角筒形状、4分割四角形などの先端を持つポリイミド樹脂製のピンとした場合には耐熱性には優れる。また特許文献2のように、繊維をフェルト状や毛玉状にした部分を基板の下面に接触させた場合には、当該接触部分において熱がこもらないという利点はある。しかし、両文献に示す構成の場合では、ピンあるいは繊維の基板との接触部分と非接触部分との間の温度ムラの発生を防止することは難しい。
【0006】
なお、例えば他の構成において、基板の受け渡し動作では、基板を載置台上面に載置した時に基板と基板支持部材が非接触の状態となってしまう。即ち下降させた状態で基板支持部材の先端部は載置台上面よりも下方に位置しており、基板支持部材の上端と基板下面との間には貫通孔の隙間が形成されてしまう。この貫通孔によって形成される空間部分は周囲よりも温度が低く、この部分と対応する基板上でも温度ムラが生じてしまう。
【0007】
上述した点に鑑み、本発明は、基板載置台上に基板が載置された状態で、基板裏面との間に隙間が形成されることのない構成の基板支持部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る基板支持部材は、基板載置部材上で基板を支持するために、基板載置部材に形成された貫通孔より出没可能とされた基板支持部材であって、基板支持部材は基板の自重により縮む構成とした。
【0009】
本発明に係る基板支持部材によれば、基板支持部材は基板の自重により縮む構成としたので、基板載置部材上に基板が載置された場合、基板自身の自重により縮むことになる。このように基板の自重で縮むことから基板載置部材上に基板が載置された状態では、基板載置部材の貫通孔において、支持部材の先端部と基板裏面との間には隙間が形成されず、例えば従来の基板支持部材の構成のように、支持部材自体を下降させて載置台上に基板を載置する場合と比較して、上述した温度ムラの発生を抑えることができる。
【0010】
上述した基板支持部材において、その先端部がアルミニウム又は樹脂から成るようにすることもできる。このように構成することで基板支持部材の耐久性を向上させることができる。
【0011】
また上述した基板支持部材において、その先端部が逆円錐形状とすることもできる。この場合、基板裏面との接触面は円形平面であり、基板との接触面積が大きくなるので温度ムラが少なくなる。さらに逆円錐形状としたことで、例えば円柱形状の場合と比較して、部分的に貫通孔の内壁と基板支持部材との間隙を大きくとれる箇所が形成されるので、基板支持部材が基板載置部材の貫通孔内に収まる際の内壁への接触の危険性がより少なくなる。
【0012】
また上述した基板支持部材においては、その先端部が円錐形状とすることもできる。この場合、基板裏面との接触面は円形平面であり、逆円錐形状の場合と同様基板との接触面積が大きくなり基板表面での温度ムラが少なくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の基板支持部材によれば、基板載置部材上に基板が載置された状態で、基板裏面との間に隙間が形成されない。従って、基板上の塗膜への影響を最小限に抑えられる基板支持部材を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下において、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一機能を有するものは同一の符号とし、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
図1には、基板載置部材(載置台)1に対しガラス基板Wを受け渡し、或いは載置台1から基板Wを受け取る搬送装置2、載置台1から基板Wを持ち上げる昇降装置3が図示されている。
【0016】
搬送装置2のアーム4の内側上面には周辺部基板支持部材6が取り付けられている。この周辺部基板支持部材6は、本体部に対し交換可能に装着され、周辺部基板支持部材6の先端部上面は円形平面とされている。
【0017】
載置台1には厚み方向に貫通孔5が形成され、この貫通孔5に昇降装置3に設けたピン状をなす本実施の形態に係る基板支持部材7が挿通されている。
【0018】
支持ピン7は、図2に示すように、チューブ10の下端にて載置台1とチャック9の間隔を調整することにより交換可能に装着されている。チューブ10の中にはロッド11が挿入されており、ロッド11の先端部11aは更に細い径のロッドとなっている。そしてロッド先端部11aの下端部にはコイルスプリング12が装着され、ロッド先端部11aには、コイルスプリング12によって昇降可能な先端部8が取り付けられている。
なお図2に示す状態では、コイルスプリング12が縮んで先端部8の下端がチューブ10の上端にひっかかっており、図示しないが載置台1上に基板Wが載置されている状態を示している。因みに載置台1上から基板Wがはずされた状態は、コイルスプリング12が伸びて先端部8の下端がチューブの上端から離れた状態となる。
【0019】
支持ピン7の先端部8の直径(基板W裏面と接触する面の径)は、貫通孔5の内径よりも若干小さく形成されており、面積的には支持ピン7の先端部表面積が貫通孔5の先端部表面積よりも若干小さくなっている。つまり、支持ピン7の径寸法を、支持ピン7の垂直方向における摺動性を妨げない範囲で可能な限り貫通孔5の内径に近づけた。これにより支持ピン7の先端部8の側面と載置台1の貫通孔5の側面との間に形成される空間が限りなく小さり、温度の低下の要因となる隙間が小さくなるので、温度ムラが基板へと転写されることを抑えられる。
【0020】
このような支持ピン7を用いた実際の基板Wの載置動作を、図3(a)(b)を用いて説明する。図3(a)は支持ピン7上に基板Wが載置される前の状態、図3(b)は基板Wが載置された後の状態を図示している。載置前では、載置台1の貫通孔5において、支持ピン7の先端部8は載置台1上面よりも突出している(例えば1〜2mm)。
【0021】
この状態で、例えば図示しないロボットにより載置台1上に基板Wが載置されると、支持ピン7のコイルスプリング12が基板Wの自重が先端部8に伝わり、両方の重みでコイルスプリング12が沈む。この際、先端部8の先端は基板Wの裏面に接触し、先端部8の先端と載置台1の上面が面一状態となる。なおコイルスプリング12は、基板Wを押し上げる程の力を有さない程度のコイルスプリング定数を設定しているので、再度基板Wを押し上げることはない。
【0022】
このように、本実施の形態の支持ピン7によれば、コイルスプリング12で支持された先端部8の先端面が基板Wの裏面に接触し(載置台1表面と面一状態で)、例えば支持ピン自体を垂直方向に昇降させて基板を載置する場合のように、支持ピンの先端部と基板W裏面との間に隙間が形成されない。従って、例えば支持ピンと基板Wにより形成される隙間部分と対応する基板W上で温度ムラが生じることもなく塗布ムラの発生を抑えることができる。
【0023】
上述した実施の形態の支持ピン7においては、その先端部8がアルミニウム又は樹脂から成るように構成することもできる。これにより支持ピン7自体の耐久性を高めることができる。
【0024】
上述した実施の形態の支持ピン7においては、その先端部8の形状を円柱形状としたが、これ以外にも図4に示すように逆円錐形状とすることもできる。この場合は、基板W裏面と接触する面は上述した円柱形状の場合と同様に円形平面であり円柱形状の場合と同様の作用を得ることができる。
さらに逆円錐形状の場合は、例えば円柱形状の場合と比較して長さ方向において全ての径が同径ではないので(長さ方向にいくに従って径が短くなる)、部分的に貫通孔5の側壁(内壁)と支持ピン7の先端部8側面との間に隙間が形成される。これにより支持ピン7が載置台1の貫通孔5内に収まる際に貫通孔5の測壁へ接触する危険性を低くできる。
【0025】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【産業上の利用可能性】
【0026】
半導体メモリなど大型半導体の需要が増える一方、価格に対する値下げ要求も厳しくなり、半導体の大型ウェーハ化と歩留向上が課題となる中、本発明の基板支持部材を使うことにより塗布膜ムラ改善が見込めるので大型ウェーハを使った場合でも歩留改善が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る基板支持部材を搬送装置と昇降装置に取り付けた場合を示した図
【図2】基板支持部材の一実施の形態を示す断面図
【図3】(a)は基板載置前の基板支持部材の位置を示す図 (b)は基板載置後の基板支持部材の位置を示す図
【図4】基板支持部材の他の実施の形態を示す断面図
【符号の説明】
【0028】
1…載置台、 2…搬送装置、 3…昇降装置、 4…アーム、 5…貫通孔、 6…周辺部基板支持部材、 7…基板支持部材、 8…先端部、 10…チューブ、 11…ロッド、 11a…ロッド先端部、 12…コイルスプリング、 W…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板載置部材上で基板を支持するために、前記基板載置部材に形成された貫通孔より出没可能とされた基板支持部材であって、前記基板支持部材は前記基板の自重により縮む構成であることを特徴とする基板支持部材。
【請求項2】
請求項1に記載の基板支持部材において、前記基板支持部材の先端がアルミニウム又は樹脂から成ることを特徴とする基板支持部材。
【請求項3】
請求項1に記載の基板支持部材において、前記基板支持部材の先端部が円柱形状であることを特徴とする基板支持部材。
【請求項4】
請求項1に記載の基板支持部材において、前記基板支持部材の先端部が逆円錐形状であることを特徴とする基板支持部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−251073(P2007−251073A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75841(P2006−75841)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】